説明

カップ部を有する衣類

【課題】 土台脇部からカップ脇側、前中心側上部にかけて、一気にバストを押さえることができ、ノンワイヤータイプであってもワイヤータイプと同様に造形できる、カップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】 本発明のカップ部を有する衣類は、一対のカップ101、土台部102およびバック部103を含み、土台部102は、一対のカップ部101の下辺部に配置され、バック部103は、土台部102の脇側に取り付けられ、一対のカップ部101の双方の脇側下縁部の曲率と、土台部102における前記一対のカップ部の脇側下縁部に配置される部分の曲率とが略同一であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジャー等のカップ部を有する衣類としては、カップ部の下縁部にワイヤーを配置したワイヤータイプの衣類と、ワイヤーを有していないノンワイヤータイプの衣類がある。ノンワイヤータイプの衣類は、ワイヤータイプの衣類に比べて、着用感が楽であるという利点がある。しかし、ノンワイヤータイプのブラジャーでは、ワイヤーによる補正効果がないため、造形力が不十分であった。そのため、バストの谷間ができない、脇がすっきりしない、バストトップが寄せられず離れたままである、横長なバストシルエットになる、バストが持ち上がらない、などの問題があった。ブラジャー着用時にバストを寄せて、良好な造形性を得るための技術としては、カップ部に裏当を設け、前記裏当を体側部から人体中央部にかけて順次、低伸張部、中立部、高伸張部とすることにより、カップ部内で脇側を押えてバストを寄せる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、土台脇側を含めた体側部側の身頃体に低伸張部を形成することにより、バストを寄せる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−246204号公報
【特許文献2】特開2007−162146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ノンワイヤータイプのブラジャーでは、カップ部内で脇側を押えようとしても、ワイヤーでバージスラインが規定されていないために、バスト脇を押さえて中央に寄せる力が十分に得られないという問題がある。また、バスト脇側に隣接する体側部を押さえても、体側部から前中心方向に働くバストを寄せる力がカップ部で分断されるため、バストを寄せる力は十分に得られない。そのため、効果的にバストを寄せて造形するためには、上記の技術では十分とはいえなかった。
【0005】
そこで、本発明は、土台脇部からカップ脇側、前中心側上部にかけて、一気にバストを押さえることができ、ノンワイヤータイプであってもワイヤータイプと同様にバストを造形できる、カップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、土台部およびバック部を含み、
前記土台部は、前記一対のカップ部の下辺部に配置され、
前記バック部は、前記土台部の脇側に取り付けられ、
前記一対のカップ部の双方の脇側下縁部の曲率と、前記土台部における前記一対のカップ部の脇側下縁部に配置される部分の曲率とが略同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカップ部を有する衣類は、一対のカップ部の双方の脇側下縁部の曲率と、土台部における前記一対のカップ部の脇側下縁部に配置される部分の曲率とが略同一である。そのため、脇側において、土台部からカップ部にかけての屈曲がなく、土台脇部からカップ脇側、前中心側上部にかけて、押す力が分断されずに一気にバストを押さえることができる。これにより、本発明のカップ部を有する衣類は、ノンワイヤータイプであってもワイヤータイプと同様にバストを造形できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第1の実施形態に係るブラジャーの斜視図である。
【図2】図2(a)、(b)は、前記第1の実施形態に係るブラジャーのカップ部付近の背面図である。
【図3】図3(a)は、前記第1の実施形態に係るブラジャーのカップ部および土台部の展開図、図3(b)は、従来のブラジャーの一例のカップ部および土台部の展開図である。
【図4】図4は、前記第1の実施形態に係るブラジャーの変形例のカップ部付近の背面図である。
【図5】図5(a)、(b)は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第2の実施形態に係るブラジャーの斜視図である。
【図6】図6は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第3の実施形態に係るブラジャーのカップ部付近の背面図である。
【図7】図7は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第4の実施形態に係るブラジャーの正面図である。
【図8】図8は、前記第4の実施形態に係るブラジャーをI―I方向に見た断面図である。
【図9】図9(a)、(b)は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第5の実施形態に係るブラジャーのカップ部付近の背面図である。
【図10】図10は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例を示す斜視図である。(a)は、第6の実施形態に係るブラキャミソールの一例、(b)は、第7の実施形態に係るブラキャミソールの一例、(c)は、前記第7の実施形態に係るブラキャミソールの変形例である。
【図11】図11(a)、(b)は、カップ下縁部と土台部との縫着方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1および図2に、本発明のカップ部を有する衣類の第1の実施形態に係るブラジャー100を示す。図1は、ブラジャー100の斜視図、図2は、ブラジャー100のカップ部付近の背面図である。本実施形態のブラジャー100は、一対のカップ部101、土台部102、一対のバック部103および一対の肩ストラップ104を備えたいわゆるフルカップのブラジャーである。一対のカップ部101の下縁部には、土台部102が設けられている。一対のカップ部101の下縁部は、バージスラインに沿うように形成されており、土台部102によって連結されている。土台部102の脇側には、一対のバック部103の一端が取り付けられている。一対のバック部103の他端は、連結係止部(図示せず)が取り付けられて、背中心付近で着脱自在になっている。
【0011】
図2(a)に示すように、本実施形態において、カップ部101は、上カップ部用部材101Aおよび下カップ部用部材で構成され、前記下カップ部用部材は、脇側部材101B、中央部材101C、前中心側部材101Dとで構成されている。前記各部材は、縫着されて固着されている。
【0012】
図2(b)には、カップ部101を構成する部材間の辺について、符号を付して示している。本実施形態のブラジャー100において、脇側部材101Bの下縁部(脇側下縁部)L1の曲率と、土台部102における脇側下縁部L1に配置される部分(脇側上縁部)L3の曲率とは、略同一である。図3(a)に、本実施形態の土台部102およびカップ部101の展開図を、図3(b)に、従来品のブラジャーの土台部およびカップ部の展開図を示す。図3(b)において、二点鎖線で示すラインは、図3(a)におけるL1のラインである。図3(b)に示すように、従来のブラジャーでは、土台部の上縁部よりもカップ部の下縁部の曲率を大きくしていた。これにより、土台部とカップ部とを固着した際、土台部とカップ部との固着部分で屈曲して、カップ部の下縁部から立体的に丸みを持たせていた。これに対し、本実施形態では、図3(a)に示すように、カップ部101の脇側下縁部L1の曲率と、土台部102における脇側上縁部L3の曲率とが、略同一である。これにより、土台部102とカップ部101とを固着した際、脇側部分において、土台部102からカップ部101にかけて、屈曲なくフラットにすることができる。このように、脇側部分において、土台部102からカップ部101へのつながりがフラットであることにより、土台脇部、カップ脇部および前中心側方向にかけて、バストを押す力が分断されずに働くため、図2で示す矢印方向にバストを一気に押すことができる。
【0013】
図11(a)、(b)に、カップ部101の下縁部と土台部102との縫着方法の一例を示す。図11(b)は、従来の縫着方法の一例である。図11(b)に示すように、従来は、生地を重ねて縫着しており、生地の縫着部分には段差が生じていた。そこで、本実施形態では、図11(a)に示すように、カップ部101の下縁部と土台部102とは、生地をつき合わせて縫着されていることが好ましい。図11(a)において、カップ部101と土台部102との間の波線は、縫着箇所を示す。これにより、カップ部と土台部との間に段差が生じないため、土台部からカップ部にかけてのバストを押す力が分断されるのをより防ぐことができる。カップ部と土台部の端は、強度を高めるため、テープ109等でパイピングされていることが好ましい。さらに、縫着部分の強度を高めるために、生地をつき合わせた部分に、マーキゼット等の補強布110を重ねて縫着することが好ましい。
【0014】
本実施形態において、脇側部材101Bおよび土台部102は、カップ部101のその他の部分を形成する素材に比べて形状安定性が高い素材で形成されている。前記形状安定性が高い素材として、例えば、適度な剛性があって伸縮性の少ないダブルラッセル、パワーネット、圧縮不織布、樹脂シート等を用いることができる。これにより、土台部102からカップ部101の脇側にかけて、広い範囲でバストを押さえることができる。そして、この押さえる力が、前述のとおり、土台脇部、カップ脇部および前中心側方向にかけて分断されずに働く。
【0015】
本実施形態において、バストを押さえることができるようにするために、土台部102には一定程度の幅を有していることが好ましい。この幅は、約1.0〜5.0cmの範囲であることが好ましく、製造効率の観点から、約1.5〜2.0cmの範囲であることがより好ましい。
【0016】
本実施形態において、脇側部材101Bは、丸みが出ないような形状に設計されている。これにより、バストの脇側が平らな面で押さえられるため、バストの脇側をさらに押さえることができる。
【0017】
本実施形態において、上カップ部用部材101Aと脇側部材101Bとが合わさる辺L9、および、脇側部材101Bと中央部材101Cとが合わさる辺L10においても、各部材の曲率が略同一であることが好ましい。これにより、脇側部分において、土台部102からカップ部101へのつながりがフラットであることに加え、カップ脇側もフラットにすることができるため、バストを前中心側に寄せる効果をより高めることができる。
【0018】
本実施形態のブラジャーにおいて、前中心側部材101Dの下縁部(前中心側下縁部)L2の曲率と、土台部102における前中心側下縁部L2に配置される部分(前中心側上縁部)L4の曲率とは、略同一である。これにより、前中心側においても、土台部102からカップ部101にかけて、屈曲なくフラットになるため、脇側から寄せてきたバストを押さえず、前中心側にボリュームを出すことができる。
【0019】
本実施形態のブラジャーにおいて、中央部材101Cおよびバストトップ周辺部は、肌側と反対側にゆるやかに凸となるように、丸みを帯びている。これにより、寄せてきたバストに丸みをつけ、きれいなシルエットに整えることができる。
【0020】
中央部材101Cおよびバストトップ周辺部に丸みを付けるためには、上カップ部用部材101Aと中央部材101Cとが合わさる辺L11、中央部材101Cと前中心側部材101Dとが合わさる辺L12、前中心側部材101Dと上カップ部用部材101Aとが合わさる辺L13、中央部材101Cと土台部102とが合わさる辺(カップ部の中央下縁部)L14において、各部材が、縫着後に丸みが出るパターンで形成されていることが好ましい。
【0021】
本実施形態のブラジャーにおいて、中央部材101C、前中心側部材101Dに使用する素材は、特に制限されないが、肌当たりが柔らかい素材を用いることが、着用感を良くする点で好ましい。前記柔らかい素材としては、例えば、不織布、ウレタン、ダンボールニット、パワーネット等を用いることができる。
【0022】
本実施形態のブラジャーでは、左右のカップ部101におけるそれぞれのバストトップ点T同士の間隔が狭く設定されている。従来では、ノンワイヤータイプのブラジャーでは、造形力がないため、左右のバストのバストトップが離れ、横長なシルエットになっていた。一方、左右のバストのバストトップを寄せるために、カップ部のバストトップ点の間隔を狭く設定しても、従来のノンワイヤータイプのブラジャーではバストを寄せることができないため、カップ部とバストがフィットせず、きれいなシルエットをつくることができなかった。これに対し、本発明によれば、前述のとおり、ノンワイヤータイプのブラジャーであるにもかかわらず、バストを土台脇側から前中心側にかけて押して寄せることができる。このため、左右のカップのバストトップ点同士の間隔を狭く設計しても、寄せられたバストがカップにフィットする。これにより、横長なバストシルエットになるのを防ぎ、きれいなシルエットをつくることができる。
【0023】
本実施形態のブラジャーでは、連結係止部として、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))を使用することができるが、他の種類の係止具を使用してもよい。また、バック部103が連結係止部を有していなくてもよい。例えば、連結係止部を前中心に設けてフロントホックタイプとしてもよい。また、連結係止部がないタイプ、バック部を結んで係止するタイプであってもよい。
【0024】
連結係止部としては、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))、グリッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどを、デザインや用途に応じて適宜選択して使用することができる。なお、上記のフック・アンド・アイやグリッパー、ボタンを用いる場合には、複数の留め位置を予め設けておくことにより、締め付け具合を微調整できるようにしておくことも好ましい。なお、上記以外の他の種類の係止具を使用してもよい。
【0025】
本実施形態においては、肩ストラップ104の一端はカップ部101に取り付けられ、他端はバック部103の上辺部に取り付けられた円環、Z環、エイト環などの係止具108Aを通って反転し、エイト環からなる長さ調節具108Bに導入されることによって、肩ストラップ104の長さ調整が可能な状態で、肩ストラップ104の他端側が、バック部103の上辺部に取り付けられている。また、肩ストラップ104の一端は、バック部103の上辺部に直接固着されても良い。肩ストラップ104の態様はこれに限定されず、例えば、前記一対のカップ部101の上部同士を互いに繋ぐように取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。肩ストラップ104の取り付け位置は、カップ部101の形状やブラジャーのデザインによって決定することができる。肩ストラップ104は、カップ部101を肩から吊り下げるものであればよい。紐や布テープであってもよいし、タンクトップのような幅の広い、いわゆるラウンドタイプのストラップであってもよい。肩ストラップ104の態様は一対のカップ部101に対応して一対の肩ストラップ104をそれぞれカップ部101上部とバック部103に取り付ける態様に限定されず、例えば、スポーツタイプのブラジャーの肩ストラップのように、背中側で2本の肩ストラップ104が一体となりバック部103に取り付けられる態様であってもよい。
【0026】
なお、本実施形態において、カップ部101は、部材を接ぎ合わせて形成されているが、本発明はこれに限られず、カップ部101が一体成型されていてもよい。また、カップ部のみではなく、土台部およびカップ部が一体成型されていてもよい。
【0027】
以上、第1の実施形態としては、フルカップのブラジャーを例示して説明したが、本発明は、3/4カップや1/2カップのブラジャー等にも適用することができる。
【0028】
図4に、前記第1の実施形態に係るブラジャー100の変形例(ブラジャー200)を示す。図4は、前記変形例のカップ部付近の背面図である。
【0029】
本例において、カップ部201は、上カップ部用部材201Aと、下カップ部用部材とで構成され、下カップ部用部材が、脇側部材201Bおよび前中心側部材201Cの2つの部材で構成されている。本例において、脇側部材201Bの下縁部のうち、脇寄りの一部分L5の曲率と、土台部102における前記下縁部L5に配置される部分L7の曲率とが、略同一である。また、前中心側部材201Cの下縁部のうち、前中心寄りの一部分L6の曲率と、土台部102における前記下縁部L6に配置される部分L8の曲率とが、略同一である。その他は、第1の実施形態と同様である。このように、カップ部において、例えば、部材の数や形状等の構成が変更されても、カップ部の脇側下縁部の曲率と、土台部におけるカップ部の脇側下縁部に配置される部分の曲率とを略同一にすることにより、本発明の効果を得ることができる。したがって、本発明は、様々なカップのバリエーションに対応することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図5に、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第2の実施形態に係るブラジャー300を示す。図5は、ブラジャー300の斜視図である。
【0031】
本実施形態のブラジャー300は、3/4カップタイプのブラジャーである他は、第1の実施形態と同様であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。図5(a)、(b)に示すように、カップ部101の各部材は、仕様に応じて、様々な形状にすることができる。このように、本発明は、様々なカップタイプのブラジャーに適用することができる。
【0032】
(第3の実施形態)
図6に、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第3の実施形態に係るブラジャー400を示す。図6は、ブラジャー400のカップ部付近の背面図である。
【0033】
本実施形態において、カップ部401は、内カップ405と表カップ406とで構成されている。内カップ405と表カップ406とは、任意の位置で固着されており、カップ部401の下縁部には、土台部402が設けられている。内カップ405の上辺は、着用時にバストトップ点が隠れるようなバストトップ点際の位置を通る曲線に沿うように設計されている。その他の内カップ405の構造は、前記上辺の形状の変化に合わせて、各部材の形状が変化している点、および肩ストラップが表カップ406の上辺についている点の他は、第1の実施形態のカップ部101と同様である。これにより、内カップ405は、その上辺は、着用時にバストトップが隠れるのに必要なラインを有しつつ、面積を小さくすることができる。こうすることによって、造形力を有する内カップ405の面積を小さくすることができるため、より軽い着用感を出すことができる。また、前中心側のバストを覆うのは表カップ406のみであるため、前中心側に寄せられたバストがカップによって押さえられることがなく、前中心においてボリュームを出し、かつ、自然なシルエットに整えることができる。本実施形態において、さらに、上脇のバストも寄せたい場合には、上カップ部用部材101Aにも前記形状安定性が高い素材を用いることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、表カップ406を有する場合について説明したが、本発明は、これに限られず、内カップ405のみでカップ部401が形成されていてもよい。
【0035】
(第4の実施形態)
図7に、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第4の実施形態に係るブラジャー500を示す。図7は、ブラジャー500の正面図である。
【0036】
本実施形態のブラジャー500において、カップ部501は、内カップ505と表カップ506とで構成されている。本実施形態の内カップ505は、第3の実施形態の内カップ405とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本実施形態のブラジャー500において、表カップ506は、土台部502の下辺P1および脇上辺P2に固着され、かつ、内カップ505の下縁部には固着されていない。
【0037】
図8は、ブラジャー500をI−I方向に見た断面図である。表カップ506は、土台部502の下辺P1および脇上辺P2に固着され、かつ、内カップ505の下縁部には固着されていない。すなわち、内カップ505と表カップ506とは、分離している。これにより、表カップ506を引き上げる力を、土台部502の下辺P1からカップ部全体にかけることができる。前記表カップを引き上げる力は、土台部502を支点として、内カップ505下部を押し上げることができる。そのため、土台部502のずり上がりを防ぎつつ、バストを土台部502付近から持ち上げることができる。また、内カップ505の下縁部を引き上げるのではなく、内カップ505とは別の部材である表カップ506によってバストを持ち上げるため、カップ部下縁部がずり上がってバージスラインとずれてしまったり、カップ部が引きつれたりすることなく、バストを持ち上げることができる。これにより、本実施形態では、バストを前中心に寄せることができるのに加え、さらに、バストを持ち上げることができるため、造形力をより高めることができる。なお、表カップ506と内カップ505とは、前記の他、さらに、バック部103の取り付け位置である脇側において固着されていてもよい。
【0038】
本実施形態においては、表カップ506は、内カップ505の上辺に重なる位置から、肩ストラップ104の取り付け位置までの領域の少なくとも一部において、伸縮性が高い素材で形成されている伸縮部506Aを有するが、本発明はこれに限定されない。伸縮部506Aに使用される素材としては、例えば、パワーネット、ストレッチ織物、フライス、天竺、ストレッチレース等があげられる。これにより、肩ストラップ104のバストを持ち上げる力を、表カップ506に効率よく伝えることができる。また、伸縮部506Aが着用者の動きに合わせて伸縮するため、カップまたは土台部102がずり上がるのを防ぐことができる。伸縮部506Aは、前記範囲内において広く設けるほど、表カップ506の安定性を高めることができる。
【0039】
本実施形態において、表カップ506に使用する素材は、特に制限されないが、非伸縮性または難伸縮性の素材で形成されていることが好ましい。前記難伸縮性の素材は、前記伸縮部506Aに使用される素材よりも伸縮性が低いものであればよい。前記非伸縮性または難伸縮性の素材としては、例えば、織物、チュールレース等を用いることができる。これにより、表カップ506に、内カップ505ごとバストを引き上げる力を付与することができる。また、このように、本発明は、表カップに使用できる素材が幅広いため、デザインの自由度を高めることができる。
【0040】
(第5の実施形態)
図9に、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第5の実施形態にかかるブラジャー600を示す。図9は、ブラジャー600のカップ部付近の裏面図である。
【0041】
本実施形態では、内カップ605の肌側にパッド受けが設けられており、パッドを使用できる。その他は、第4の実施形態と同様である。図9(a)に示すブラジャー600は、内カップ605の肌側面全面とほぼ同じ面積のパッド受け610Aを有し、前記肌側面の略中央部にパッドを挿入するための開口部を有している。また、図9(b)に、パッド受け610Aの変形例であるパッド受け610Bを有する場合を示す。パッド受け610Bは、内カップ605の脇側に設けられ、前中心側が開口部となっている。パッド受け610Bは、上辺を内側(内カップ側)に折り返して形成されていてもよい。この折り返し部分の内側にパッドを入れ込んで装着してもよいし、前記開口部からパッドを挿入し、パッド受け610Bと内カップ605との間に挟み込んで装着してもよい。このように、パッドを使用することにより、バストを脇から押さえる力をさらに付加することができる。
【0042】
(第6の実施形態)
次に、図10(a)に本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ブラキャミソール700の斜視図を示す。
【0043】
このブラキャミソール700のブラジャー相当部分は、図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、ブラキャミソール700が、土台部102の下側に、身頃701を有している。本例では、身頃701が本発明におけるバック部を兼ねているが、バック部を別途設けてその下に身頃701を取りつけてもよい。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第1の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラキャミソールとすることもできる。
【0044】
(第7の実施形態)
図10(b)に本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ブラキャミソール800の斜視図を示す。このブラキャミソール800は、キャミソールの身頃内側にブラジャー相当部分が設けられており、前記ブラジャー相当部分は、図6で示したブラジャー400の内カップ405および土台部402とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本実施形態においては、ブラキャミソール800は、ブラジャー相当部分を覆うように身頃801を有している。そして、内カップ405の上部と身頃部801とは、テープ状部材808によって係止されている。また、バック部103は連結係止部を有しておらず、連結係止部の操作をすることなく着脱ができる態様である。ここでは、第3の実施形態に係るブラジャー400の内カップ405および土台部402とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラキャミソールとすることもできる。本実施形態の構成にすることにより、カップ部のデザインにかかわらず、着用時の外観のバリエーションを多様にすることができる。また、カップ部が、アウター着用時において、アウターのシルエットに影響を及ぼすことを軽減できる。
【0045】
図10(c)に、ブラキャミソール800の変形例(ブラキャミソール900)を示す。本例において、身頃部901は、ブラジャー相当部を覆う部分と、その下に取り付けられる部分とに分かれ、前記ブラジャー相当部を覆う部分は、2枚の略三角形状の部材が、前中心部において一部が交差して重なるようにして設けられている。その他は、ブラキャミソール800と同様である。このように、本発明は、様々なバリエーションの衣類に用いることができる。
【0046】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャー、およびブラキャミソールをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、ボディスーツ、ブラスリップ、水着、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。また、前中心を係脱自在のホックで連結するフロントホックタイプの衣類にも適用できる。そして、上記では、実施の具体例として、ノンワイヤータイプのカップ部を有する衣類について説明したが、本発明は、ワイヤータイプのカップ部を有する衣類にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のカップ部を有する衣類は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、スポーツ衣類、アウターなど、各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
100、200、300、400、500、600 ブラジャー
101、201、401、501 カップ部
101A、201A 上カップ部用部材
101B、201B 脇側部材
101C 中央部材
101D、201C 前中心側部材
102、402、502 土台部
103 バック部
104 肩ストラップ
108A 係止具
108B 長さ調節具
109 テープ
110 補強布
405、505、605 内カップ
406、506 表カップ
506A 伸縮部
610A、601B パッド受け
700、800、900 ブラキャミソール
701、801、901 身頃部
808 テープ状部材

P1 土台部下辺
P2 脇上辺

L1、L5 カップ部の脇側下縁部
L2、L6 カップ部の前中心側下縁部
L3、L7 土台部の脇側上縁部
L4、L8 土台部の前中心側上縁部
L9、L10、L11、L12、L13 内カップ部材間の辺
L14 カップ部の中央下縁部

T バストトップ点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、土台部およびバック部を含み、
前記土台部は、前記一対のカップ部の下辺部に配置され、
前記バック部は、前記土台部の脇側に取り付けられ、
前記一対のカップ部の双方の脇側下縁部の曲率と、前記土台部における前記一対のカップ部の脇側下縁部に配置される部分の曲率とが略同一であることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記一対のカップ部内の脇側部分および前記土台部が、前記一対のカップ部のその他の部分を形成する素材に比べて形状安定性が高い素材で形成されていることを特徴とする、
請求項1記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記一対のカップ部の双方の前中心側下縁部の曲率と、前記土台部における前記一対のカップ部の前中心側下縁部に配置される部分の曲率とが略同一であることを特徴とする、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記一対のカップ部上辺が、着用時にバストトップ点が隠れるようなバストトップ点際の位置を通る曲線に沿うことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
さらに、表カップを含み、
前記表カップが、前記一対のカップ部の肌側と反対側に配置され、
前記表カップが、前記土台部の下辺および脇上辺に固着され、かつ、前記一対のカップ部の下縁部には固着されていないことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
さらに、肩ストラップを含み、
前記肩ストラップは、前記表カップの上部に取り付けられ、
前記表カップが、前記カップ部の上辺に重なる位置から前記肩ストラップの取り付け位置までの領域の少なくとも一部において、伸縮性が高い素材で形成されていることを特徴とする、請求項5記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
前記表カップのバストを覆う部分が、非伸縮性または難伸縮性の素材で形成されていることを特徴とする、請求項6記載のカップ部を有する衣類。
【請求項8】
衣類がブラジャーであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項9】
衣類が、さらに衣類本体部を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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