説明

カテーテルおよびカテーテルキット

【課題】患者への苦痛や負担を和らげることができるカテーテル10を提供する。
【解決手段】カテーテル10およびカテーテルキットは、導入チューブ20の先端部27に抜け防止の拡張収縮可能なバルーン50が装備され、ガイドワイヤーWを挿通可能な挿入補助棒60を使用して体内に挿入され、導入チューブ20には、カテーテル本体11を体内に挿入する際に挿入補助棒60を挿入するメインルーメン21と、バルーン50へ流体を送るサブルーメン25とが設けられ、バルーン50は、ゴム風船状で、導入チューブ20の先端部27に、先端部27から先に伸びるよう装着され、拡張すると導入チューブ20の先端の導出口28より先に位置して導出口28が連通する導出管路51を有し、挿入した挿入補助棒60の先端部63を受けて保持する受け部500を外周部52に有し、受け部500は、挿入補助棒60の先端部63にガイドワイヤーWを通すガイドワイヤー通路520を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入チューブの先端部に抜け防止のための拡張収縮可能なバルーンが装備され、ガイドワイヤーを挿通可能な挿入補助棒を使用して体内に挿入して、臓器の内部に流動食ないし栄養剤等を導入するカテーテルおよびカテーテルキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
すなわち、同文献には、カテーテル本体である導入チューブの先端部に、拡張するとカテーテル本体の先端より前にせり出す抜け防止のためのバルーンが取り付けられ、バルーンは、導入チューブに重なるよう折り返すことなく接着されている技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、このような従来の技術では、バルーンがカテーテル本体である導入チューブの先端部に折り返されてはいないけれども、全体としては重ねて設けてあり、全体として挿入する部分の肉厚が厚くなり、形態的に挿入時に先端部が導入チューブよりも太いものとなり、挿入しにくく、取り扱いが面倒であり、また、患者に苦痛を与えるおそれがあるという問題点があった。
【0004】
そこで、本願の出願人は、特許文献2に示した発明によってこの問題点を解決した。
【0005】
【特許文献1】特開2004−41349号公報
【特許文献2】特許第3806726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術では、体外から挿入したカテーテルを胃瘻や腸瘻等の瘻孔から臓器内に挿入する際に、臓器への刺激をできる限り少なくしながら導入チューブの先端部が瘻孔から外れずに臓器内に挿入することは必ずしも容易ではない。
このような課題に対しては、予めガイドワイヤーを臓器内まで挿入しておき、そのガイドワイヤーに沿って導入チューブを臓器内に確実に挿入する方法があるが、特許文献2のように導入チューブの挿入側の先端部に抜け防止のためのバルーンを装備し、臓器内への挿入時に導入チューブの挿入側の先端部を細くして患者への苦痛や負担を和らげることができるようにしたカテーテルでは、ガイドワイヤーを使用して容易に確実に挿入することができ、かつ、患者への苦痛や負担を和らげるようにしたカテーテルはなかった。
【0007】
本発明は、このような導入チューブの先端部に抜け防止のためのバルーンを有するカテーテルの挿入操作を改善することを課題としてなされたもので、導入チューブの先端のバルーン部分が細くなり、挿入し易く操作性が容易であり、ガイドワイヤーに沿って容易かつ確実に臓器内への挿入が可能であり、患者への苦痛や負担を和らげることもできるようにしたカテーテルおよびカテーテルキットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。 [1] 導入チューブ(20)の先端部に抜け防止のための拡張収縮可能なバルーン(50)が装備され、ガイドワイヤー(W)を挿通可能な挿入補助棒(60)を使用して体内に挿入する、臓器の内部に流動食ないし栄養剤等を導入するためのカテーテル(10)において、
前記導入チューブ(20)には、カテーテル本体(11)を体内に挿入する際に前記挿入補助棒(60)が挿入されるメインルーメン(21)と、前記バルーン(50)へ流体を導通させるサブルーメン(25)とが設けられ、
前記バルーン(50)は、ゴム風船状で、前記導入チューブ(20)の先端部(27)に、該先端部(27)から先に伸びるように装着され、拡張したとき、前記導入チューブ(20)の先端の導出口(28)より先に位置して該導出口(28)が連通する導出管路(51)を形成し、前記挿入した挿入補助棒(60)の先端部(63)を内部に受けて保持する受け部(500)が外周部(52)に設けられ、
前記受け部(500)は、前記ガイドワイヤー(W)を通すためのガイドワイヤー通路(520)によって外部と内部とが通じるように形成されていることを特徴とするカテーテル(10)。
【0009】
[2] 前記受け部(500)は、前記バルーン(50)に一体に形成されていることを特徴とする項[1]に記載のカテーテル(10)。
【0010】
[3] 前記受け部(500)は、前記挿入補助棒(60)の先端部(63)を受ける面の少なくとも一部に補強部(512)を有することを特徴とする項[1]または[2]に記載のカテーテル(10)。
【0011】
[4] 項[1]に記載のカテーテル(10)と挿入補助棒(60)とを組み合わせたことを特徴とするカテーテルキット。
【0012】
前記本発明は次のように作用する。
カテーテル(10)は、臓器の内部に流動食ないし栄養剤等の流体物を導入するためのものであり、胃瘻や腸瘻等の瘻孔から臓器内に導入チューブ(20)を通して流動食ないし栄養剤等の流体物を注入する。
【0013】
カテーテル(10)を臓器内に挿入するときは、予めガイドワイヤー(W)の先端側を胃瘻や腸瘻等の瘻孔から臓器内に挿入しておく。一方、カテーテル(10)は、導入チューブ(20)の先端に装備されたゴム風船状のバルーン(50)を収縮させておく。
バルーン(50)は、導入チューブ(20)にメインルーメン(21)と併設されたサブルーメン(25)からバルーン(50)内の流体を抜くことにより、収縮して空気の抜けたゴム風船のような状態になる。
【0014】
この状態で、ガイドワイヤー(W)に沿わせてカテーテル本体(11)の導入チューブ(20)および挿入補助棒(60)を臓器内に挿入するが、挿入補助棒(60)を導入チューブ(20)に挿入し、挿入補助棒(60)の先端部(63)をバルーン(50)の外周部(52)の受け部(500)に嵌合させておくとガイドワイヤー(W)を通すことが極めて容易になる。
【0015】
導入チューブ(20)に挿入補助棒(60)を挿入するときは、その先端部(63)を導入チューブ(20)の先端部(27)よりも先に出るようにする。この挿入補助棒(60)の先端部(63)をバルーン(50)の外周部(52)の受け部(500)が受け止めるようにする。
【0016】
続いて挿入補助棒(60)を押し進めると、バルーン(50)が導入チューブ(20)の先端部(27)より先に伸びるよう押し伸ばされて、先端の細い錐状の状態となる。挿入補助棒(60)の先端部(63)が先端部(27)よりも先に出る度合いを大きくすると、それにともなってバルーン(50)がより引っ張られて細くなる。
【0017】
受け部(500)には、その内部から外部に向かってガイドワイヤー(W)を通すガイドワイヤー通路(520)が形成されているので、ガイドワイヤー(W)の末端側をこのガイドワイヤー通路(520)から挿入することができる。挿入したガイドワイヤー(W)は、受け部(500)内で挿入補助棒(60)の先端部(63)から挿入補助棒(60)内に進入するので、ガイドワイヤー(W)を挿入補助棒(60)の他端部側の把持頭部(62)から出るようにすることができる。
【0018】
このようにガイドワイヤー(W)を通し、かつ、前記のようにバルーン(50)を導入チューブ(20)の先端部(27)より先に細く伸びた状態で、ガイドワイヤー(W)に沿って導入チューブ(20)の先端部(27)を胃瘻や腸瘻の瘻孔から臓器内に挿通すると円滑に優しく挿入することができ、装着が容易で患者に負担を掛けることがなく、医療事故の発生の心配もなくなる。
【0019】
このようにしてカテーテル本体(11)の先端部(27)が胃瘻や腸瘻の瘻孔から臓器内に挿入された後に、バルーン(50)を、胃瘻や腸瘻より大きく拡張させることにより、導入チューブ(20)の抜け防止をする。
【0020】
バルーン(50)内への流体の入出は、カテーテル本体(11)の導入チューブ(20)の注入端部側に取り付けられたカテーテルヘッド(30)に設けられた流体導通栓部(31)を通して行なわれる。カテーテルヘッド(30)には、流体導通栓部(31)から連通路(32)が形成されている。この連通路(32)は、バルーン(50)へ流体を導通させるサブルーメン(25)の端部に連通している。流体導通栓部(31)は、注射筒(I)を装着したときにのみサブルーメン(25)を外部に導通させる。
【0021】
バルーン(50)内の流体を抜くときは、注射筒(I)内に流体を吸い込むようにしてバルーン(50)をぺしゃんこに潰すことができる。
【0022】
カテーテル本体(11)を体内に挿入した装着状態において、ゴム風船状に膨らませたバルーン(50)は、導入チューブ(20)の先端の導出口(28)より先に位置し、この導出口(28)が連通する導出管路(51)から流動食ないし栄養剤等を臓器内に導出する。膨らんだバルーン(50)が臓器の内壁に接するようなことがあっても、導入チューブ(20)が直接に臓器の内壁に接することはない。このバルーン(50)は、柔らかいゴム風船状であるので臓器に対して良くない作用をすることがない。
【0023】
カテーテル(10)と挿入補助棒(60)とを組み合わせたカテーテルキットは、そのまま医療に利用できるので便利であり、また操作の失敗がなく安全である。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかるカテーテルおよびカテーテルキットによれば、予め臓器内に先端部を通したガイドワイヤーをバルーンに設けられた受け部のワイヤー通路を経由して挿入補助棒に通しておくことにより、臓器内への導入チューブの挿入を容易に確実に行うことができる。
【0025】
また、カテーテル装着時に、バルーンは、導入チューブの先端部より先に伸びるように押し伸ばされ、先端の細い錐状に変形された状態で導入チューブの先端部を胃瘻や腸瘻の瘻孔から臓器内に挿通するので、円滑に優しく挿入することができ、装着がより容易で患者に負担を掛けることがなく、医療事故の発生原因の心配もなくなる。
【0026】
カテーテルと挿入補助棒とを組み合わせたカテーテルキットとすれば、そのまま医療に利用できるので便利であり、また適切な用具であるので操作の失敗がなく安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
各図は本発明の一実施の形態を示している。
図1は、カテーテル10に注射筒Iをセットした状態を説明する図であり、図2は、カテーテル10の構造を示す正面図である。また、図3は、挿入補助棒60の構成を示す正面図であり、図4は、図3に示す挿入補助棒60の平面図である。図に示すように、カテーテル10は、導入チューブ20の先端に抜け防止のための拡張収縮可能なバルーン50が装備されて成り、臓器の内部に流動食ないし栄養剤を導入するためのものである。
【0028】
カテーテル10は、導入チューブ20とバルーン50とから成るカテーテル本体11に、カテーテルヘッド30を取り付けたものである。
【0029】
カテーテルヘッド30には、導入チューブ20の入口側に漏斗状に拡径した注入口15が形成されている。カテーテルヘッド30は、注入口15の下端部が導入チューブ20の入口に連通するようにカテーテル本体11に取付けられている。体内に注入する流動食ないし栄養剤等は、注入口15からカテーテル本体11を介して体内に注入される。また、カテーテルヘッド30には、後述する注射筒Iを装着するための流体導通栓部31と前記の注入口15を塞ぐことができる蓋33が設けられている。この蓋33は、カテーテルヘッド30から延びるベルト34に設けられている。
【0030】
カテーテル本体11の導入チューブ20には、メインルーメン21と、バルーン50へ流体を導通させるサブルーメン25とが設けられている。メインルーメン21は、一端が前記の導入チューブ20の入口であり、もう一方の端部は導入チューブ20の先端部27の出口となっている。
【0031】
また、サブルーメン25は、流体を通すことが出来る程度の極めて細い管路として形成されており、導入チューブ20の入口側から出口側までメインルーメン21に並行して延びている。このサブルーメン25は、導入チューブ20の入口側ではカテーテルヘッド30に形成された連通路32に連通している。この連通路32は、前記の流体導通栓部31に連通している。
【0032】
流体導通栓部31は、注射筒Iをセットしたときにのみサブルーメン25を外部に導通させるよう構成されている。例えば、流体導通栓部31は、逆止弁を有していて、注射筒Iを差し込むと流体が流通するようになっている。
【0033】
カテーテル本体11のバルーン50は、ゴム風船状であり、導入チューブ20の先端部27に、該先端部27から先に伸びるように装着されている。すなわち、バルーン50の弾性薄膜がメインルーメン21の先端部27を内外から挟むように接合され、流体が抜かれたとき、先端部27を輪状に取り巻いたドーナツをつぶした様な形状をしている。バルーン50は導入チューブ20の先に全体として錐状に伸びるよう変形可能である。
【0034】
図2から分かるように、バルーン50は、拡張したとき、導入チューブ20の先端の導出口28より先に位置したドーナツ形となり、導出口28が連通する導出管路51が中央部に形成されるようになっている。バルーン50は、柔軟性があり、弾性変形可能な材質から成り、例えばシリコーンゴムによって作られている。
【0035】
図1、図2および図7に示すように、バルーン50の収縮したときの外周部52には、導入チューブ20のメインルーメン21から挿通される挿入補助棒60の受け部500が設けられている。
【0036】
図3に示すように、挿入補助棒60は、ロッド部61の末端側を把持頭部62に嵌入させて固定部64で固定したものである。先端部63は受け部500に嵌まり込む形状となっている。把持頭部62からロッド部61の先端部63までは、ガイドワイヤーWを挿通可能なガイドワイヤー導入路65が貫通している。これに対し、受け部500は、挿入補助棒60の先端部63を受け止め、図5から分かるように角度的に変位しても外れない形状に形成されている。
【0037】
この受け部500は、図1および図2に示すように、バルーン50を膨らませたときに導出管路51に干渉しない位置に設けられている。受け部500は、バルーン50と一体に成形されているので、材質はバルーン50と同じであり、柔軟性を有し、弾性変形が可能なものであればよい。本実施の形態では、材質は上記のようにシリコーンゴムである。
【0038】
受け部500は、挿入補助棒60の先端部63が嵌まり込む嵌入部510(内部)と、受け部500の外部と該嵌入部510とを通じるように形成されたガイドワイヤー通路520とを有している。このガイドワイヤー通路520は、ガイドワイヤーWを通すためのものである。これにより、ガイドワイヤーWを受け部500の外部からこのガイドワイヤー通路520に通し、さらに嵌入部510に嵌入した挿入補助棒60の先端部63からガイドワイヤー導入路65に通すことができる。
【0039】
嵌入部510は、横断面の形状が挿入補助棒60の先端部63の横断面の形状と相似形になっている。例えば、円形や楕円形であり、挿入補助棒60の先端部63の横断面が円形であれば、嵌入部510は、内径が挿入補助棒60の先端部63の外径よりも僅かに大きい円形である。なお、嵌入部510の横断面の形状は、挿入補助棒60の先端部63の横断面の形状と相似形でなくてもよく、例えば、先端部63が嵌入可能な多角形でもよい。
【0040】
嵌入部510の入口である嵌入口511からやや奥に入ったところから嵌入部510の突き当たりまでには、補強部512が設けられている。この補強部512は、嵌入部510の内壁面を硬化処理して形成しても良いし、嵌入部510よりも硬度の高い別部材を取り付けてもよい。
【0041】
嵌入部510の突き当たりからは、受け部500の終端で外部に抜ける前記のガイドワイヤー通路520が形成されている。このガイドワイヤー通路520は、ガイドワイヤーWの径よりも大きい径の貫通孔である。これにより、ガイドワイヤーWは、カテーテル10の導入チューブ20に挿入補助棒60を挿入した状態で、挿入補助棒60のガイドワイヤー導入路65と挿入補助棒60のガイドワイヤー導入路65に挿通されたガイドワイヤー通路520を通って受け部500の外部に延び出ることができる。
【0042】
図5は、挿入補助棒60の把持頭部62を押して先端部63を突き出すようにした状態を示している。この状態では、受け部500の終端が引っ張られて尖端状になっている。また、バルーン50も図1においてめくれ上がっている反対側も引かれているので全体として先の尖った錐状になる。この状態で受け部500の外からガイドワイヤー通路520にガイドワイヤーWを挿入すると、図6に示すようにガイドワイヤーWは、受け部500から挿入補助棒60の先端部63を通ってガイドワイヤー導入路65内を延び、把持頭部62から先端が延び出た状態にすることができる。
【0043】
次に作用を説明する。
カテーテル10は、臓器の内部に流動食ないし栄養剤等を導入するためのものであり、胃瘻や腸瘻等の瘻孔から臓器内に導入チューブ20を通して流動食ないし栄養剤等を注入する。カテーテル10は、カテーテルヘッド30よりも下の導入チューブ20およびバルーン50が臓器内に挿入される。臓器内にカテーテル10を挿入するに先立って、カテーテル10を挿入しようとする胃瘻や腸瘻にはガイドワイヤーWが挿入されている。
【0044】
導入チューブ20の先端に装備されたゴム風船状のバルーン50は、カテーテル10の装着時には収縮され、導入チューブ20の先端部27より先に伸びるよう押し伸ばして、先端の細い錐状の状態で、ガイドワイヤーWを通した状態にしてからカテーテル10の先端部27が瘻孔から臓器内に挿入される。挿入後にバルーン50は胃瘻や腸瘻より大きく拡張されて、導入チューブ20の抜け防止をする。
【0045】
図1に示すように、カテーテル10を患者に装着する前に、注射筒Iをカテーテルヘッド30の流体導通栓部31に差し込み、導入チューブ20にメインルーメン21と併設されたサブルーメン25からバルーン50内の流体を完全に抜く。これにより、バルーン50が収縮して流体の抜けたゴム風船のような状態になる。バルーン50は中心部に導出管路51を形成するので、ドーナツをつぶしたような形状になる。バルーン50内の流体を抜くときは、注射筒Iを用い流体を吸い込むようにしてバルーン50がぺしゃんこにつぶれるまで流体を抜く。
【0046】
バルーン50内への流体の入出は、導入チューブ20の注入端部側の流体導通栓部31を通して行なわれる。バルーン50へ流体を導通させるサブルーメン25の端部に接続した流体導通栓部31は、注射筒Iをセットして注射筒Iを差し込んだときのみサブルーメン25を外部に導通させる。
【0047】
バルーン50から流体を抜いた状態で、導入チューブ20のメインルーメン21に挿入補助棒60を挿通すると、挿入補助棒60の先端部63は、バルーン50の外周部52の受け部500に嵌め込んで受け止められる。挿入補助棒60を押し進めると、バルーン50は、導入チューブ20の先端部27より先に伸びるよう押し伸ばされ、先端の細い錐状の状態に変形する。
【0048】
この状態で予め臓器内に挿入してあるガイドワイヤーWに沿って導入チューブ20の先端部27を胃瘻や腸瘻の瘻孔から臓器内に挿通すると円滑に優しく挿入することができ、装着が容易で患者に負担を掛けることがなく、医療事故の発生の心配もなくなる。
【0049】
図5は、挿入補助棒60を突き出した状態であり、バルーン50の一部は挿入補助棒60のロッド部61の先端部63に沿って、全体として先端のとがった形状となる。
【0050】
前記のように、この状態にしたカテーテル10を予め臓器内に挿入してあるガイドワイヤーWに沿わせて通す。カテーテル10に通す方のガイドワイヤーW端部は、体外に出ており図7に示すように、カテーテル10の受け部500の終端からガイドワイヤー通路520に通す。
【0051】
受け部500の内部では、挿入補助棒60のロッド部61の先端部63が嵌入部510の突き当たりに当接しているので、ガイドワイヤー通路520は、ロッド部61の先端部63側で挿入補助棒60のガイドワイヤー導入路65と連通している。このため、ガイドワイヤー通路520を通したガイドワイヤーWは、スムーズに挿入補助棒60のガイドワイヤー導入路65に通すことができる。
【0052】
ガイドワイヤーWの端部が挿入補助棒60の把持頭部62から延び出た状態が図6に示されている。この図6に示した状態にしてからガイドワイヤーWに沿って導入チューブ20の先端部27を胃瘻や腸瘻の瘻孔から臓器内に挿通することにより、確実に、円滑に、かつ、優しくカテーテル本体11を臓器内に挿入することができる。
【0053】
図6の状態でカテーテル10の導入チューブ20を臓器内に挿入したら、挿入補助棒60およびガイドワイヤーWを抜き出し、図1に示すように、流体導通栓部31に注射筒Iをセットして、バルーン50内にサブルーメン25から流体を注入し、バルーン50を膨らませる。このようにして膨らんだバルーン50は、図2に示すように中心部に導出管路51を形成したドーナツ形状をしている。カテーテルヘッド30の注入口15には栄養管等を接続する。
【0054】
カテーテル10の装着状態において、ゴム風船状のバルーン50は、導入チューブ20の先端の導出口28より先に位置し、この導出口28が連通する導出管路51から流動食ないし栄養剤等を臓器内に導出する。この状態では、受け部500は、導出管路51に干渉しない位置にあるので、流動食ないし栄養剤等の導出の妨げになることはない。臓器の内壁にバルーン50が接するようなことがあっても、導入チューブ20が直接接することはなく、バルーン50が柔らかいゴム風船状であるので臓器に対して良くない作用をすることがない。
【0055】
カテーテル10を体内に挿入したままにしておくときは、カテーテルヘッド30に設けられた蓋33で注入口15を塞いでおけばよい。これにより、導入チューブ20のメインルーメン21にほこり等が進入することを防ぐことができ、メインルーメン21内を清潔に保っておくことができる。
【0056】
カテーテル10の導入チューブ20を臓器内から抜く場合には、流体導通栓部31に注射筒Iを装着してバルーン50内の流体を抜いてから引き出せばよい。
【0057】
カテーテル10と挿入補助棒60とを組み合わせたカテーテルキットは、そのまま医療に利用できるので便宜であり、また適切な用具であるので操作の失敗がなく安全である。
【0058】
なお、嵌入部510の突き当たりから受け部500の終端で外部に抜けるガイドワイヤー通路520は、受け部500を貫通した孔としたが、受け部500の外側から切り込まれ、嵌入部510の突き当たりから受け部500の終端まで通じるように形成された溝であってもよい。
【0059】
また、バルーン50と受け部500とは、上記のように一体に成形することが好ましいが、受け部500をバルーン50とは別体の部材とし、バルーン50に固着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカテーテルキットの構成を示す説明図である。
【図2】図1におけるカテーテルの構成を示す説明図である。
【図3】図1における挿入補助棒の構成を示す説明図である。
【図4】図3の挿入補助棒の平面図である。
【図5】図1におけるカテーテルのバルーンに設けた受け部に挿入棒を挿入して、バルーンを細く伸ばした状態を示す説明図である。
【図6】図5の状態でガイドワイヤーを挿入補助棒に挿入した状態を示す説明図である。
【図7】図6における破線の円で囲んだ部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0061】
I…注射筒
W…ガイドワイヤー
10…カテーテル
11…カテーテル本体
15…注入口
20…導入チューブ
21…メインルーメン
25…サブルーメン
27…先端部
28…導出口
30…カテーテルヘッド
31…流体導通栓部
32…連通路
33…蓋
34…ベルト
50…バルーン
51…導出管路
52…外周部
60…挿入補助棒
61…ロッド部
62…把持頭部
63…先端部
65…ガイドワイヤー導入路
500…受け部
510…嵌入部
511…嵌入口
512…補強部
520…ガイドワイヤー通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入チューブの先端部に抜け防止のための拡張収縮可能なバルーンが装備され、ガイドワイヤーを挿通可能な挿入補助棒を使用して体内に挿入する、臓器の内部に流動食ないし栄養剤等を導入するためのカテーテルにおいて、
前記導入チューブには、カテーテル本体を体内に挿入する際に前記挿入補助棒が挿入される導出管路と、前記バルーンへ流体を導通させるサブルーメンとが設けられ、
前記バルーンは、ゴム風船状で、前記導入チューブの先端部に、該先端部から先に伸びるように装着され、拡張したとき、前記導入チューブの先端の導出口より先に位置して該導出口が連通するメインルーメンを形成し、前記挿入した挿入補助棒の先端部を内部に受けて保持する受け部が外周部に設けられ、
前記受け部は、前記ガイドワイヤーを通すためのガイドワイヤー通路によって外部と内部とが通じるように形成されていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記受け部は、前記バルーンに一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記受け部は、前記挿入補助棒の先端部を受ける面の少なくとも一部に補強部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
請求項1に記載のカテーテルと挿入補助棒とを組み合わせたことを特徴とするカテーテルキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−125251(P2009−125251A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302545(P2007−302545)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(391016705)クリエートメディック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】