カバーフィルム貼着装置
【課題】 作業者がカバーフィルム貼着装置において貼着の用に供しないカバーフィルム片の除去の際の作業の手間を軽減することであり、さらにカバーフィルム片の除去の際に貼着用溶剤の気体が作業者に与える悪影響を軽減することである。
【解決手段】 長尺のカバ−フィルムが巻かれた巻回体から切断手段に前記カバーフィルムを送り、前記切断手段に依って前記カバーフィルムを切断してカバーフィルム片とし、貼着手段に依って薄切検体が添付されたスライドグラスに前記カバーフィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記スライドガラスへの貼着の用に供しない前記カバーフィルム片を前記切断手段から前記貼着手段に至る部分から下方に導いて取り除く除去手段を備えたことを特徴とする。
【解決手段】 長尺のカバ−フィルムが巻かれた巻回体から切断手段に前記カバーフィルムを送り、前記切断手段に依って前記カバーフィルムを切断してカバーフィルム片とし、貼着手段に依って薄切検体が添付されたスライドグラスに前記カバーフィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記スライドガラスへの貼着の用に供しない前記カバーフィルム片を前記切断手段から前記貼着手段に至る部分から下方に導いて取り除く除去手段を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明はカバーフィルムの貼着装置に関し、更に詳細にはスライドガラスに貼付され、封入剤が滴下された検体標本に、長尺のカバーフィルムが巻回された巻回体から引き出して所定長さに切断したカバーフィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、貼着の用に供しないカバーフィルム片の処理手段を備えたカバーフィルム貼着装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
病理検査において、生体材料を薄切した薄切片をスライドガラスに添付してから染色処理を施した後に、薄切片の保護のためにカバーフィルム片（以下、フィルム片と称する）をスライドガラス表面に貼着して顕微鏡にて観察することが行われている。
フィルム片をスライドガラスに貼着するカバーフィルム貼着装置（以下、貼着装置と称する）は、主として、複数枚の貼着前のスライドガラスと貼着後のスライドガラスの収容に使用されるバスケットが待機するバスケット待機手段、前記バスケットが収容されたバスケット収容槽、カバーフィルム（以下、フィルムと称する）が収容されたカバーフィルム供給手段（以下、供給手段と称する）、前記供給手段から供給されたフィルムを所定長に切断するための切断手段、及びバスケットから供給されたスライドガラスに溶剤を滴下して所定長のフィルム片を貼着する貼着手段とから構成される。
【０００３】
この貼着装置によってスライドガラスにフィルム片を貼着するには、バスケット待機手段に収容されているバスケットからスライドガラスをフィルム片を貼着する貼着手段に載置して、供給手段からフィルムを切断手段に供給して所定長に切断し、その切断されたフィルム片を事前に溶剤によって濡れているスライドガラスに適切な力を加えて貼着する。貼着後前記バスケットに貼着済みのスライドガラスを収容する。
【０００４】
ところで、この貼着装置において、巻回体からのフィルムの供給が不可能になった場合には、使用中の巻回体をフィルムが十分の長さ分巻回されている新しい巻回体と交換することになる。作業者はこの貼着装置内の巻回体取り付け場所にある使用中の巻回体を取り外して、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付け、この巻回体からフィルムの先頭を取り出して、貼着装置に備えられた送りローラを介して切断手段に送る。その後、切断手段によって所定の長さに切断されたフィルム片はカバーフィルム貼着手段に送られてフィルム片の貼着が行われる。
【０００５】
また、この貼着装置を長期間稼動しない場合には、貼着装置の巻回体取り付け場所に巻回体を載置したままにしておくと、巻回体に巻回されたフィルムや巻回体から引き出されたフィルムが湿気や有機溶剤の蒸気によってフィルムの一面側に塗付されている接着剤の品質が劣化して貼着の品質に悪影響を与える恐れがあるので、巻回体から送りローラを介して切断手段に送られているフィルムを巻回体に巻き戻してから、その巻回体を巻回体取り付け場所から取り外して、フィルムの劣化が少ない雰囲気中に保管することがある。貼着作業を再開する場合には、前述した新しい巻回体を取り付ける際と同様の作業を行う。
【０００６】
特に、バスケットに収容されているスライドガラスを貼着するためのフィルムが不足した場合には、新しいフィルムがスライドガラスに貼着されるまでスライドガラスは空気中に晒されることになり、その時間が長い場合には、スライドガラスに添付された薄切片が乾燥してひび割れしたりして、貴重な薄切片保護の面から好ましくない。
【０００７】
そこで、特開２００５−３００３２３が出願された。それによると、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付ける際に、バスケット内に収容され得る最大枚数のスライドガラス全てに対してフィルム片を貼着できる長さのフィルムを冗長カバーフィルムとして確保することによって、解決している。
具体的には、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付ける際に、巻回体から引き出したフィルムを送りローラに至るまで複数個のガイドローラを介して引き回しておき、巻回体に巻回されているフィルムがなくなっても、複数個のガイドローラによって引き回されている冗長カバーフィルムによって、バスケット待機手段に置かれているバスケットに入れられたスライドガラスの全てを貼着できるという技術である。
【特許文献１】特開２００５−３００３２３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
図２において、巻回体から引き出したカバーフィルム４の先頭部分は巻回体交換の際の冗長カバーフィルムの確保の作業のために手指の汚れや傷が付いて、貼着に不適の場合が多く、該当する部分を除去するためにフィルム支え台１３から切断手段を介しフィルム支え台１４に載置されているフィルムをカバーフィルム切断手段８（以下、切断手段８と称する）によって切断して切断したフィルム片を廃棄することがある。また、貼着用のフィルム片は、切断後に巻回体と切断手段との間にあるフィルムの先頭を基点としてフィルムをカバーフィルム貼着手段１６の方向に所定の長さ分を送ってから、切断手段８によって切断して得ている。つまり、フィルムの切断動作は所定長さのフィルム片を得るための所定長さの基点出し動作も兼ねている。この基点出しにおいては、作業者は切断手段８とフィルム支え台１４との間の隙間の長さよりも短くなるように注意してフィルムをフィルム支え台１４の方に送っている。
前記切断作業によって発生したフィルム片はスライドガラスへの貼着の用に供しないフィルム片なのでフィルム支え台１４上に残らないようにしなければならない。貼着に不適なフィルム片の長さが切断手段８とフィルム支え台１４との間の隙間よりも短い場合にはその前記隙間から下方に落下して除去される。しかし、フィルム片の長さが前記隙間よりも長い場合には前記隙間から落下することなくフィルム支え台１４上に残るので、作業者が切断手段８およびカバーフィルム貼着手段１６を覆っている扉を開けて取り除いている。このフィルム片の除去作業の際にフィルム片の貼着に使用するキシレン等の有害な溶剤の気体に作業者が晒される恐れがある。また、フィルム片の除去作業は作業者にとっては手間が掛る作業でもある。さらに、フィルム片の基点出し動作において、前記隙間よりもフィルム片の長さが短くなるように確認しながら作業をすることは、面倒であり手間が掛かる。
つまり、本発明が遂行する課題は、作業者がカバーフィルム貼着装置において貼着の用に供しないフィルム片の除去の際の作業の手間を軽減することであり、さらにフィルム片の除去の際に貼着用溶剤の気体が作業者に与える悪影響を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者は、前記課題を解決するには、フィルムを切断する際の切断手段とフィルム貼着側のフィルム支え台との間の隙間を制御することが有効であると考え検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、長尺のカバ−フィルムが巻かれた巻回体から切断手段に前記カバーフィルムを送り、前記切断手段に依って前記カバーフィルムを切断してフィルム片とし、貼着手段に依って薄切検体が添付されたスライドグラスに前記フィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記スライドガラスへの貼着の用に供しない前記フィルム片を前記切断手段から前記貼着手段に至る部分から下方に導いて取り除く除去手段を備えたことを特徴とするカバーフィルム貼着装置にある。
【００１０】
また、本発明は、前記除去手段が、前記切断手段から前記貼着手段に至る部分に配置されているカバーフィルム支え台であって、前記切断手段と前記カバーフィルム支え台との隙間を調節自在であるカバーフィルム貼着装置にある。
【００１１】
また、本発明は、前記カバーフィルム支え台が、回転自在であるカバーフィルム貼着装置にある。
【００１２】
さらに、本発明は、スライドガラスへの貼着の用に供しないフィルム片を下方に取り除くようにカバーフィルム支え台の回転を制御する制御手段を有したカバーフィルム貼着装置にある。
【発明の効果】
【００１３】
貼着の用に供しないフィルム片の切断による除去作業の際に、従来のように切断手段とフィルム支え台との隙間よりも短く切断するように注意を払う必要がなく、カバーフィルムの先頭を切断手段から進行を遮っているフィルム支え台に当接したことを確認してから切断するので、手間ではない。しかも、フィルム支え台の下側にフィルム片が位置するのでフィルム支え台の上にフィルム片が残ることはなく落下する。その結果、扉を開けてフィルム片を取り除く手間もなく、作業者が有機溶剤に晒されることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
本発明のカバーフィルム貼着装置について図１によって説明する。図１は（ａ）に本発明の装置の概要を示す正面図を、（ｂ）に前記装置を上方から見た平面図を、（ｃ）にフィルム片の除去手段の拡大正面図を示している。
本発明の貼着装置は、主として、カバーフィルム４を貼着手段１６に供給するカバーフィルム供給手段１、カバーフィルム４を切断する切断手段８、およびフィルム片を貼着する貼着手段１６とを備え、それぞれ基台１７に支承されている。カバーフィルム供給手段１は、少なくとも長尺のカバーフィルムが巻回された巻回体２、冗長フィルム分を引き回すガイドローラ群３および巻回体２を支承する引き出しローラ６を備える。貼着手段１６は、少なくともフィルム片を貼着ローラ１２に送るカバーローラ１１、スライドガラス１０上に溶剤を滴下する分注手段（図示せず）およびスライドガラス上に載置されたフィルム片を上から押圧して貼着する貼着ローラとから構成される。
さらに、本発明の貼着装置は、巻回体２からカバーフィルム４を切断手段８に送る送りローラ７、送りローラ７と切断手段８の間に位置するカバーフィルム４を支える支え台１３、および切断手段とカバーローラ１１の間に位置する貼着の用に供する切断前のカバーフィルム４および切断後のフィルム片を支えるフィルム支え台１４とが基台１７に支承されている。
なお、フィルム支え台１４は、一対の送りローラ７の当接面と一対のカバーローラ１１の当接面とを含む平面に対して、フィルム支え台１４の切断手段８側の部分が傾斜角Ｄを形成するように基台１７に回転自在に支承されている。なお、傾斜角Ｄは、、一対の送りローラ７の当接面と一対のカバーローラ１１の当接面とを含む平面に対して上側になす角度を＋とし、下側になす角度を−とすると、−３６０度から＋３６０度の間を形成自在である。
【００１５】
貼着の用に供しないフィルム片の処理をする場合には、フィルム４の先頭部分の進行を遮るようにフィルム支え台１４を傾斜角度Ｄが＋になるように回転させて切断手段８とフィルム支え台１４の隙間を長くする。フィルム４の先頭部分の進行を遮るために、好ましくは、傾斜角Ｄが鋭角になるようにフィルム支え台１４を回転させて停止させる。
切断手段８とフィルム支え台１４の隙間が長くなったら、フィルム４の進行を遮っているフィルム支え台１４にフィルム４の先頭が当接するまで、送りローラ７によってフィルム４を切断手段８を超えて送り、切断手段８によって切断する。切断されたフィルム片は、前記隙間から下方に載置された廃棄容器１５内に落下する。貼着の用に供しない部分が長い場合には、フィルム４をフィルム支え台１４に当接するまで送ってから切断する動作を繰り返す。
なお、好ましくは、フィルム４の先頭がフィルム支え台１４に当接してからフィルム支え台１４の切断手段側の部分でフィルム４の先頭部分上面を押さえるように傾斜角度Ｄを小さくすることで、フィルム４の切断が安定して行われる。
さらに、好ましくは、切断手段８とフィルム支え台１４の間に幅の狭い板をフィルム４の進行をさえぎらないように配置することで、フィルム４の切断の際に、フィルム支え台１３と前記幅の狭い板によって切断手段８を挟んでフィルム４を支えることになり、安定してフィルム４を切断することができる。
また、フィルムの切断後、傾斜角度Ｄをー側に近づけることまたはーにすることでフィルム支え台１４は切断されたフィルム片をより安定して下方に導くことができる。
【００１６】
貼着の用に供しないフィルム片の処理が終わったら、前記角度が０度になるようにフィルム支え台１４を回転させて停止させる。貼着の用に供しないフィルム片の処理によって、フィルム片の所定長さを得るための基点出しがなされているので、送りローラ７で所定長さ分だけフィルム４を切断手段８を介してカバーローラ１１に送り、切断手段８で切断することで貼着に適したフィルム片を得ることができる。その後の貼着動作は従来と同様に行われる。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明に係るカバーフィルム貼着装置を説明する概略図である。（ａ）は正面図を、（ｂ）は上方からの平面図を、（ｃ）は除去手段を拡大した正面図を示す。
【図２】従来のカバーフィルム貼着装置を説明する概略図である。
【符号の説明】
【００１８】
１ カバーフィルム供給手段
２ 巻回体
３ａ、３ｂ、３ｃ、３ｄ ガイドローラ
４ カバーフィルム
５ カバーフィルム終端検出センサ
６ 引き出しローラ
７ 送りローラ
８ カバーフィルム切断手段
９ カバーフィルム片
１０ スライドガラス
１１ カバーローラ
１２ 貼着ローラ
１３、１４ カバーフィルム支え台
１５ 廃棄用容器
１６ 貼着手段
１７ 基台
Ｄ 傾斜角度
【技術分野】
【０００１】
本発明はカバーフィルムの貼着装置に関し、更に詳細にはスライドガラスに貼付され、封入剤が滴下された検体標本に、長尺のカバーフィルムが巻回された巻回体から引き出して所定長さに切断したカバーフィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、貼着の用に供しないカバーフィルム片の処理手段を備えたカバーフィルム貼着装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
病理検査において、生体材料を薄切した薄切片をスライドガラスに添付してから染色処理を施した後に、薄切片の保護のためにカバーフィルム片（以下、フィルム片と称する）をスライドガラス表面に貼着して顕微鏡にて観察することが行われている。
フィルム片をスライドガラスに貼着するカバーフィルム貼着装置（以下、貼着装置と称する）は、主として、複数枚の貼着前のスライドガラスと貼着後のスライドガラスの収容に使用されるバスケットが待機するバスケット待機手段、前記バスケットが収容されたバスケット収容槽、カバーフィルム（以下、フィルムと称する）が収容されたカバーフィルム供給手段（以下、供給手段と称する）、前記供給手段から供給されたフィルムを所定長に切断するための切断手段、及びバスケットから供給されたスライドガラスに溶剤を滴下して所定長のフィルム片を貼着する貼着手段とから構成される。
【０００３】
この貼着装置によってスライドガラスにフィルム片を貼着するには、バスケット待機手段に収容されているバスケットからスライドガラスをフィルム片を貼着する貼着手段に載置して、供給手段からフィルムを切断手段に供給して所定長に切断し、その切断されたフィルム片を事前に溶剤によって濡れているスライドガラスに適切な力を加えて貼着する。貼着後前記バスケットに貼着済みのスライドガラスを収容する。
【０００４】
ところで、この貼着装置において、巻回体からのフィルムの供給が不可能になった場合には、使用中の巻回体をフィルムが十分の長さ分巻回されている新しい巻回体と交換することになる。作業者はこの貼着装置内の巻回体取り付け場所にある使用中の巻回体を取り外して、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付け、この巻回体からフィルムの先頭を取り出して、貼着装置に備えられた送りローラを介して切断手段に送る。その後、切断手段によって所定の長さに切断されたフィルム片はカバーフィルム貼着手段に送られてフィルム片の貼着が行われる。
【０００５】
また、この貼着装置を長期間稼動しない場合には、貼着装置の巻回体取り付け場所に巻回体を載置したままにしておくと、巻回体に巻回されたフィルムや巻回体から引き出されたフィルムが湿気や有機溶剤の蒸気によってフィルムの一面側に塗付されている接着剤の品質が劣化して貼着の品質に悪影響を与える恐れがあるので、巻回体から送りローラを介して切断手段に送られているフィルムを巻回体に巻き戻してから、その巻回体を巻回体取り付け場所から取り外して、フィルムの劣化が少ない雰囲気中に保管することがある。貼着作業を再開する場合には、前述した新しい巻回体を取り付ける際と同様の作業を行う。
【０００６】
特に、バスケットに収容されているスライドガラスを貼着するためのフィルムが不足した場合には、新しいフィルムがスライドガラスに貼着されるまでスライドガラスは空気中に晒されることになり、その時間が長い場合には、スライドガラスに添付された薄切片が乾燥してひび割れしたりして、貴重な薄切片保護の面から好ましくない。
【０００７】
そこで、特開２００５−３００３２３が出願された。それによると、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付ける際に、バスケット内に収容され得る最大枚数のスライドガラス全てに対してフィルム片を貼着できる長さのフィルムを冗長カバーフィルムとして確保することによって、解決している。
具体的には、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付ける際に、巻回体から引き出したフィルムを送りローラに至るまで複数個のガイドローラを介して引き回しておき、巻回体に巻回されているフィルムがなくなっても、複数個のガイドローラによって引き回されている冗長カバーフィルムによって、バスケット待機手段に置かれているバスケットに入れられたスライドガラスの全てを貼着できるという技術である。
【特許文献１】特開２００５−３００３２３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
図２において、巻回体から引き出したカバーフィルム４の先頭部分は巻回体交換の際の冗長カバーフィルムの確保の作業のために手指の汚れや傷が付いて、貼着に不適の場合が多く、該当する部分を除去するためにフィルム支え台１３から切断手段を介しフィルム支え台１４に載置されているフィルムをカバーフィルム切断手段８（以下、切断手段８と称する）によって切断して切断したフィルム片を廃棄することがある。また、貼着用のフィルム片は、切断後に巻回体と切断手段との間にあるフィルムの先頭を基点としてフィルムをカバーフィルム貼着手段１６の方向に所定の長さ分を送ってから、切断手段８によって切断して得ている。つまり、フィルムの切断動作は所定長さのフィルム片を得るための所定長さの基点出し動作も兼ねている。この基点出しにおいては、作業者は切断手段８とフィルム支え台１４との間の隙間の長さよりも短くなるように注意してフィルムをフィルム支え台１４の方に送っている。
前記切断作業によって発生したフィルム片はスライドガラスへの貼着の用に供しないフィルム片なのでフィルム支え台１４上に残らないようにしなければならない。貼着に不適なフィルム片の長さが切断手段８とフィルム支え台１４との間の隙間よりも短い場合にはその前記隙間から下方に落下して除去される。しかし、フィルム片の長さが前記隙間よりも長い場合には前記隙間から落下することなくフィルム支え台１４上に残るので、作業者が切断手段８およびカバーフィルム貼着手段１６を覆っている扉を開けて取り除いている。このフィルム片の除去作業の際にフィルム片の貼着に使用するキシレン等の有害な溶剤の気体に作業者が晒される恐れがある。また、フィルム片の除去作業は作業者にとっては手間が掛る作業でもある。さらに、フィルム片の基点出し動作において、前記隙間よりもフィルム片の長さが短くなるように確認しながら作業をすることは、面倒であり手間が掛かる。
つまり、本発明が遂行する課題は、作業者がカバーフィルム貼着装置において貼着の用に供しないフィルム片の除去の際の作業の手間を軽減することであり、さらにフィルム片の除去の際に貼着用溶剤の気体が作業者に与える悪影響を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者は、前記課題を解決するには、フィルムを切断する際の切断手段とフィルム貼着側のフィルム支え台との間の隙間を制御することが有効であると考え検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、長尺のカバ−フィルムが巻かれた巻回体から切断手段に前記カバーフィルムを送り、前記切断手段に依って前記カバーフィルムを切断してフィルム片とし、貼着手段に依って薄切検体が添付されたスライドグラスに前記フィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記スライドガラスへの貼着の用に供しない前記フィルム片を前記切断手段から前記貼着手段に至る部分から下方に導いて取り除く除去手段を備えたことを特徴とするカバーフィルム貼着装置にある。
【００１０】
また、本発明は、前記除去手段が、前記切断手段から前記貼着手段に至る部分に配置されているカバーフィルム支え台であって、前記切断手段と前記カバーフィルム支え台との隙間を調節自在であるカバーフィルム貼着装置にある。
【００１１】
また、本発明は、前記カバーフィルム支え台が、回転自在であるカバーフィルム貼着装置にある。
【００１２】
さらに、本発明は、スライドガラスへの貼着の用に供しないフィルム片を下方に取り除くようにカバーフィルム支え台の回転を制御する制御手段を有したカバーフィルム貼着装置にある。
【発明の効果】
【００１３】
貼着の用に供しないフィルム片の切断による除去作業の際に、従来のように切断手段とフィルム支え台との隙間よりも短く切断するように注意を払う必要がなく、カバーフィルムの先頭を切断手段から進行を遮っているフィルム支え台に当接したことを確認してから切断するので、手間ではない。しかも、フィルム支え台の下側にフィルム片が位置するのでフィルム支え台の上にフィルム片が残ることはなく落下する。その結果、扉を開けてフィルム片を取り除く手間もなく、作業者が有機溶剤に晒されることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
本発明のカバーフィルム貼着装置について図１によって説明する。図１は（ａ）に本発明の装置の概要を示す正面図を、（ｂ）に前記装置を上方から見た平面図を、（ｃ）にフィルム片の除去手段の拡大正面図を示している。
本発明の貼着装置は、主として、カバーフィルム４を貼着手段１６に供給するカバーフィルム供給手段１、カバーフィルム４を切断する切断手段８、およびフィルム片を貼着する貼着手段１６とを備え、それぞれ基台１７に支承されている。カバーフィルム供給手段１は、少なくとも長尺のカバーフィルムが巻回された巻回体２、冗長フィルム分を引き回すガイドローラ群３および巻回体２を支承する引き出しローラ６を備える。貼着手段１６は、少なくともフィルム片を貼着ローラ１２に送るカバーローラ１１、スライドガラス１０上に溶剤を滴下する分注手段（図示せず）およびスライドガラス上に載置されたフィルム片を上から押圧して貼着する貼着ローラとから構成される。
さらに、本発明の貼着装置は、巻回体２からカバーフィルム４を切断手段８に送る送りローラ７、送りローラ７と切断手段８の間に位置するカバーフィルム４を支える支え台１３、および切断手段とカバーローラ１１の間に位置する貼着の用に供する切断前のカバーフィルム４および切断後のフィルム片を支えるフィルム支え台１４とが基台１７に支承されている。
なお、フィルム支え台１４は、一対の送りローラ７の当接面と一対のカバーローラ１１の当接面とを含む平面に対して、フィルム支え台１４の切断手段８側の部分が傾斜角Ｄを形成するように基台１７に回転自在に支承されている。なお、傾斜角Ｄは、、一対の送りローラ７の当接面と一対のカバーローラ１１の当接面とを含む平面に対して上側になす角度を＋とし、下側になす角度を−とすると、−３６０度から＋３６０度の間を形成自在である。
【００１５】
貼着の用に供しないフィルム片の処理をする場合には、フィルム４の先頭部分の進行を遮るようにフィルム支え台１４を傾斜角度Ｄが＋になるように回転させて切断手段８とフィルム支え台１４の隙間を長くする。フィルム４の先頭部分の進行を遮るために、好ましくは、傾斜角Ｄが鋭角になるようにフィルム支え台１４を回転させて停止させる。
切断手段８とフィルム支え台１４の隙間が長くなったら、フィルム４の進行を遮っているフィルム支え台１４にフィルム４の先頭が当接するまで、送りローラ７によってフィルム４を切断手段８を超えて送り、切断手段８によって切断する。切断されたフィルム片は、前記隙間から下方に載置された廃棄容器１５内に落下する。貼着の用に供しない部分が長い場合には、フィルム４をフィルム支え台１４に当接するまで送ってから切断する動作を繰り返す。
なお、好ましくは、フィルム４の先頭がフィルム支え台１４に当接してからフィルム支え台１４の切断手段側の部分でフィルム４の先頭部分上面を押さえるように傾斜角度Ｄを小さくすることで、フィルム４の切断が安定して行われる。
さらに、好ましくは、切断手段８とフィルム支え台１４の間に幅の狭い板をフィルム４の進行をさえぎらないように配置することで、フィルム４の切断の際に、フィルム支え台１３と前記幅の狭い板によって切断手段８を挟んでフィルム４を支えることになり、安定してフィルム４を切断することができる。
また、フィルムの切断後、傾斜角度Ｄをー側に近づけることまたはーにすることでフィルム支え台１４は切断されたフィルム片をより安定して下方に導くことができる。
【００１６】
貼着の用に供しないフィルム片の処理が終わったら、前記角度が０度になるようにフィルム支え台１４を回転させて停止させる。貼着の用に供しないフィルム片の処理によって、フィルム片の所定長さを得るための基点出しがなされているので、送りローラ７で所定長さ分だけフィルム４を切断手段８を介してカバーローラ１１に送り、切断手段８で切断することで貼着に適したフィルム片を得ることができる。その後の貼着動作は従来と同様に行われる。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明に係るカバーフィルム貼着装置を説明する概略図である。（ａ）は正面図を、（ｂ）は上方からの平面図を、（ｃ）は除去手段を拡大した正面図を示す。
【図２】従来のカバーフィルム貼着装置を説明する概略図である。
【符号の説明】
【００１８】
１ カバーフィルム供給手段
２ 巻回体
３ａ、３ｂ、３ｃ、３ｄ ガイドローラ
４ カバーフィルム
５ カバーフィルム終端検出センサ
６ 引き出しローラ
７ 送りローラ
８ カバーフィルム切断手段
９ カバーフィルム片
１０ スライドガラス
１１ カバーローラ
１２ 貼着ローラ
１３、１４ カバーフィルム支え台
１５ 廃棄用容器
１６ 貼着手段
１７ 基台
Ｄ 傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項１】
長尺のカバ−フィルムが巻かれた巻回体から切断手段に前記カバーフィルムを送り、前記切断手段に依って前記カバーフィルムを切断してカバーフィルム片とし、貼着手段に依って薄切検体が添付されたスライドグラスに前記カバーフィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記スライドガラスへの貼着の用に供しない前記カバーフィルム片を前記切断手段から前記貼着手段に至る部分から下方に導いて取り除く除去手段を備えたことを特徴とするカバーフィルム貼着装置。
【請求項２】
除去手段が、前記切断手段から前記貼着手段に至る部分に配置されているカバーフィルム支え台であって、前記切断手段と前記カバーフィルム支え台との隙間を調節自在である請求項１記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項３】
カバーフィルム支え台が、回転自在である請求項１または請求項２記載のカバーフィルム貼着装置
【請求項４】
スライドガラスへの貼着の用に供しないカバーフィルム片を下方に取り除くようにカバーフィルム支え台の回転を制御する制御手段を有した請求項３記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項１】
長尺のカバ−フィルムが巻かれた巻回体から切断手段に前記カバーフィルムを送り、前記切断手段に依って前記カバーフィルムを切断してカバーフィルム片とし、貼着手段に依って薄切検体が添付されたスライドグラスに前記カバーフィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記スライドガラスへの貼着の用に供しない前記カバーフィルム片を前記切断手段から前記貼着手段に至る部分から下方に導いて取り除く除去手段を備えたことを特徴とするカバーフィルム貼着装置。
【請求項２】
除去手段が、前記切断手段から前記貼着手段に至る部分に配置されているカバーフィルム支え台であって、前記切断手段と前記カバーフィルム支え台との隙間を調節自在である請求項１記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項３】
カバーフィルム支え台が、回転自在である請求項１または請求項２記載のカバーフィルム貼着装置
【請求項４】
スライドガラスへの貼着の用に供しないカバーフィルム片を下方に取り除くようにカバーフィルム支え台の回転を制御する制御手段を有した請求項３記載のカバーフィルム貼着装置。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００８−２４１６７７（Ｐ２００８−２４１６７７Ａ）
【公開日】平成２０年１０月９日（２００８．１０．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１１２３８７（Ｐ２００７−１１２３８７）
【出願日】平成１９年３月２６日（２００７．３．２６）
【出願人】（０００１４８０２５）サクラ精機株式会社 (28)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１０月９日（２００８．１０．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年３月２６日（２００７．３．２６）
【出願人】（０００１４８０２５）サクラ精機株式会社 (28)
【Ｆターム（参考）】
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