説明

カバー部材

【課題】 コンバインやバインダー等の刈取機に備えられるデバイダの前端部に取り付けられるカバー部材において、カバー部材の収納場所を小さなものにすることができるように構成し、カバー部材の取り付け及び取り外しの操作性を良いもにする。
【解決手段】 デバイダ1の前端部を覆うカバー部5と、デバイダ1の前端部を弾性的に挟持して自身をデバイダ1の前端部を保持させる挟持部6とを備えて、一つのデバイダ1の前端部に取り付けられるカバー部材4を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやバインダー等の刈取機に備えられるデバイダにおいて、デバイダの前端部に取り付けられるカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインやバインダー等の刈取機に備えられるデバイダは、作物の列の間に分け入るものなので、一般に三角形状に構成されており、デバイダの前端部が尖った状態となっている(特許文献1の図1,2,7の7参照)。これにより、トラックの荷台に載せての運搬時等において、デバイダの前端部を破損しないように、特許文献1に開示されているように、デバイダの前端部にカバー部材(特許文献1の図6及び図7の15,15A)を取り付けておくことがある。
【0003】
特許文献1では、横長の板材を断面J字状に折り曲げてカバー部材(特許文献1の図6及び図7の15,15A)を構成しており、複数のデバイダの前端部に亘ってカバー部材を配置して、ボルト及びナット(特許文献1の図6及び図7の16,17)により、デバイダの前端部にカバー部材を取り付けている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−101800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、カバー部材が横長で比較的大きなものであり、デバイダの前端部からカバー部材を取り外した場合に、カバー部材の収納場所に大きなスペースが必要になるので、改善の余地がある(特許文献1では、特許文献1の図8に示すように、グレンタンク(特許文献1の図1の9)の下部のサイドカバー(特許文献1の図1及び図8の9C)の内面に、カバー部材(特許文献1の図1及び図8の15)を収納している)。
【0006】
特許文献1では、ボルト及びナットによりデバイダの前端部にカバー部材を取り付けており、カバー部材の取り付け及び取り外しの際に、ボルト及びナットの締め付け及び緩み操作を行う必要があるので、カバー部材の取り付け及び取り外しの操作性と言う面で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、コンバインやバインダー等の刈取機に備えられるデバイダの前端部に取り付けられるカバー部材において、カバー部材の収納場所を小さなものにすることができるように構成することを目的としており、カバー部材の取り付け及び取り外しの操作性が良いものとなるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、カバー部材において次のように構成することにある。
デバイダの前端部を覆うカバー部と、デバイダの前端部を弾性的に挟持して自身をデバイダの前端部を保持させる挟持部とを備えて、一つのデバイダの前端部に取り付けられるカバー部材を構成する。
【0009】
(作用)
本発明の第1特徴によると、カバー部材は一つのデバイダの前端部に取り付けられて、この一つのデバイダの前端部を覆うものであり、複数のデバイダの前端部に亘って取り付けられるものではなくなる。これにより、カバー部材は一つのデバイダの前端部を覆う程度の小さく軽いものでよくなるので、特許文献1のように、カバー部材の収納場所に大きなスペースを確保する必要がない(例えば、運転部に備えられた小袋にカバー部材を入れておいたり、運転者の衣服のポケットに入れておいたりすることができる)。
【0010】
本発明の第1特徴によると、カバー部材の挟持部によりデバイダの前端部を弾性的に挟持することによって、デバイダの前端部にカバー部材を保持することができるのであり、カバー部材の取り付け及び取り外しの為に、ボルト及びナットの締め付け及び緩み操作を行う必要がない。
本発明の第1特徴によると、カバー部材は一つのデバイダの前端部を覆う程度の小さく軽いものでよいので、カバー部材の挟持部によりデバイダの前端部を弾性的に挟持する程度の保持力により、デバイダの前端部にカバー部材を無理なく保持することができる。
【0011】
本発明の第1特徴によると、他のデバイダの前端部とは関係なく独立して、一つのデバイダの前端部にカバー部材を取り付けることができる。これにより、複数のデバイダの前端部の全てにカバー部材を取り付けたり、複数のデバイダのうち必要なデバイダの前端部にだけカバー部材を取り付けたりすることができる。
【0012】
特許文献1のように、複数のデバイダの前端部に亘ってカバー部材を取り付けると、2個のデバイダの間の空間にカバー部材が存在することになるので、カバー部材が作業の邪魔になる場合がある。
本発明の第1特徴によると、他のデバイダの前端部とは関係なく独立して、一つのデバイダの前端部にカバー部材を取り付けることができるので、2個のデバイダの間の空間にカバー部材が存在するような状態が生じることはなく、カバー部材が作業の邪魔になるようなことがない。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、コンバインやバインダー等の刈取機に備えられるデバイダの前端部に取り付けられるカバー部材において、カバー部材は一つのデバイダの前端部を覆う程度の小さく軽いものでよくなるように構成することができ、カバー部材の収納場所に大きなスペースを確保する必要がなくなって、刈取機のスペースの有効活用に貢献することができた。
本発明の第1特徴によると、カバー部材の取り付け及び取り外しの為に、ボルト及びナットの締め付け及び緩み操作を行う必要がないので、カバー部材の取り付け及び取り外しの操作性を良いものにすることができた。
【0014】
本発明の第1特徴によると、複数のデバイダの前端部の全てにカバー部材を取り付けたり、複数のデバイダのうち必要なデバイダの前端部にだけカバー部材を取り付けたりすることができる点、並びに、2個のデバイダの間の空間にカバー部材が存在するような状態が生じない点により、刈取機の作業性を高めることができた。
【0015】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のカバー部材において次のように構成することにある。
カバー部材の全体を弾性体で構成する。
【0016】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、カバー部材の全体を弾性体(例えば合成ゴムや合成樹脂等)で構成しており、カバー部材のカバー部や挟持部を弾性体で一体的に形成することができる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、カバー部材のカバー部や挟持部を弾性体で一体的に形成することができて、構造の簡素化及び生産の低コスト化を図ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1(イ)及び図2は、刈取機の一例である自脱型のコンバインにおいて、機体の前部に備えられた刈取部(図示せず)の前部下部に支持されたデバイダ1を示している。刈取フレーム26に連結された平板状の支持部材2(縦向きに配置された壁状)と、平面視三角形状で横向きに配置された案内部材3とを備えて、デバイダ1が構成されており、支持部材2の上部に案内部材3が連結されている。
【0019】
図1(イ),2,3,4に示すように、カバー部材4が合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)により一体的に構成されている。カバー部材4は、前部及び上部に相当するカバー部5、カバー部5から後方に延出された一対の挟持部6を主たる部分として構成され、外面が全体的に球状に形成されている。一対の挟持部6に平面状の底部11が形成され、底部11から斜めに前底部12が形成されており、底部11を下にしてカバー部材4を置くことにより、カバー部材4が転がらないように置くことができる。
【0020】
図1(イ),2,3,4に示すように、カバー部5及び一対の挟持部6の間に幅狭のスリット状の空間が構成されており、スリット状の空間の横幅に相当する幅狭の凹部7がカバー部5の内側に形成されている。スリット状の空間の横幅に相当する幅狭の上壁部8が凹部7の上部から斜めに延出され、スリット状の空間の横幅に相当する幅狭の下壁部9が凹部7の下部から斜めに延出されており、外方に斜めに開く横壁部10が形成されて、一対の横壁部10により開口部が形成されている。
【0021】
以上のように構成されたカバー部材4において、一つのデバイダ1(支持部材2)の前端部にカバー部材4を取り付ける場合、図1(イ)(ロ),2,3に示すように、デバイダ1(支持部材2)の前端部を、一対の横壁部10(一対の挟持部6)の間に挿入して凹部7に入り込ませて、一つのデバイダ1(支持部材2)の前端部にカバー部材4を取り付ける。
この場合、一対の挟持部6の間隔L1が、デバイダ1(支持部材2)の前端部の横幅(板厚)よりも少し小さいものに設定されており、一対の挟持部6によりデバイダ1(支持部材2)の前端部を弾性的に挟持することによって、デバイダ1(支持部材2)の前端部にカバー部材4が保持される。
【0022】
図1(ロ)及び図2に示すように、カバー部5及び一対の挟持部6の間に幅狭のスリット状の空間が、充分に上下高さのあるものに構成されている。これにより、デバイダ1(支持部材2)の前端部を、一対の横壁部10の間に挿入して凹部7にまで入り込ませた状態において、上壁部8とデバイダ1(支持部材2)の前端部の上部との間、並びに、下壁部9とデバイダ1(支持部材2)の前端部の下部との間に隙間が生じており、デバイダ1(支持部材2)の前端部に対して、カバー部材4が図2の紙面上下方向に少し動ける状態となっている。
【0023】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に代えて、図5(イ)(ロ),6,7,8に示すように構成してもよい。
図5(イ),6,7,8に示すように、カバー部材13が合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)により一体的に構成されている。カバー部材13は、前部に相当するカバー部14、カバー部14の上部から斜めに延出された上挟持部15、カバー部14の下部から延出された下挟持部16、上及び下挟持部15,16の図7の紙面右側部分に亘って接続された縦壁部17(挟持部に相当)、上挟持部15の図7の紙面右側部に接続された凸部18を主たる部分として構成されている。
【0024】
図5(イ),6,7,8に示すように、吊るし用又は紐通し用等の開口部19が、凸部18に形成されている。幅狭の凹部20がカバー部14の内側に形成されており、幅狭の上壁部21が凹部20の上部から斜めに延出され、幅狭の下壁部22が凹部20の下部から斜めに延出されている。カバー部14(凹部20)の図8の紙面右側部に低い縦壁部23(挟持部に相当)が備えられ、上挟持部15(上壁部21)の図7の紙面左側部に低い縦壁部24(挟持部に相当)が備えられて、下挟持部16(下壁部22)の図7の紙面左側部に低い縦壁部25(挟持部に相当)が備えられており、縦壁部23,24,25が連続的に形成されている。カバー部14(凹部20)、上挟持部15(上壁部21)及び下挟持部16(下壁部22)の図7の紙面右側部は、縦壁部17によって塞がれているのに対して、カバー部14(凹部20)、上挟持部15(上壁部21)及び下挟持部16(下壁部22)の図7の紙面左側部は、開放されている。
【0025】
以上のように構成されたカバー部材13において、一つのデバイダ1(支持部材2)の前端部にカバー部材13を取り付ける場合、図5(イ)(ロ),6,7に示すように、デバイダ1(支持部材2)の前端部を、上及び下挟持部15,16の間に挿入して凹部20に入り込ませて、一つのデバイダ1(支持部材2)の前端部にカバー部材13を取り付ける。
【0026】
この場合、図6及び図7に示すように、上及び下挟持部15,16(上及び下壁部21,22)の上下間隔が、デバイダ1(支持部材2)の前端部の上下間隔と同じか少し小さいものに設定され、縦壁部17と縦壁部23,24,25との間隔が、デバイダ1(支持部材2)の前端部の横幅(板厚)よりも少し小さいものに設定されている。これにより、上及び下挟持部15,16(上及び下壁部21,22)により、デバイダ1(支持部材2)の前端部を図6及び図7の紙面上下方向から弾性的に挟持し、縦壁部17と縦壁部23,24,25とにより、デバイダ1(支持部材2)の前端部を図6及び図7の紙面左右方向から弾性的に挟持することによって、デバイダ1(支持部材2)の前端部にカバー部材13が保持される。
【0027】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、カバー部材4の全体を合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)により一体的に構成するのではなく、以下のように構成してもよい。
(1)カバー部材4において、挟持部6を合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)により構成し、これ以外の部分を金属や他の硬質の部材で構成する。
(2)カバー部材4において、全体を金属や他の硬質の部材で一体的に構成し、挟持部6の内面に合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)を貼り付ける。
(3)カバー部材4において、全体を金属や他の硬質の部材で構成し、挟持部6をカバー部5に揺動自在に支持して、挟持部6を挟み込み側に付勢するバネ(図示せず)を備える(例えば洗濯バサミのような構成)。
【0028】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明の実施の第1別形態]において、カバー部材13の全体を合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)により一体的に構成するのではなく、以下のように構成してもよい。
(1)カバー部材13において、上及び下挟持部15,16、縦壁部17,23,24,25を合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)により構成し、これ以外の部分を金属や他の硬質の部材で構成する。
(2)カバー部材13において、全体を金属や他の硬質の部材で一体的に構成し、上及び下挟持部15,16、縦壁部17,23,24,25の内面に合成ゴムや合成樹脂、硬質のスポンジ等(弾性体に相当)を貼り付ける。
(3)カバー部材13において、全体を金属や他の硬質の部材で構成し、上及び下挟持部15,16をカバー部14に揺動自在に支持して、上及び下挟持部15,16を挟み込み側に付勢するバネ(図示せず)を備える(例えば洗濯バサミのような構成)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(イ)デバイダの前端部からカバー部材を取り外した状態、及び(ロ)デバイダの前端部にカバー部材を取り付けた状態を示す斜視図
【図2】デバイダの前端部にカバー部材を取り付けた状態を示す縦断側面図
【図3】デバイダの前端部にカバー部材を取り付けた状態を示す縦断背面図
【図4】カバー部材の底面図
【図5】発明の実施の第1別形態において、(イ)デバイダの前端部からカバー部材を取り外した状態、及び(ロ)デバイダの前端部にカバー部材を取り付けた状態を示す斜視図
【図6】発明の実施の第1別形態において、デバイダの前端部にカバー部材を取り付けた状態を示す縦断側面図
【図7】発明の実施の第1別形態において、デバイダの前端部にカバー部材を取り付けた状態を示す縦断背面図
【図8】発明の実施の第1別形態において、カバー部材の側面図
【符号の説明】
【0030】
1 デバイダ
5,14 カバー部
6,15,16,17,23,24,25 挟持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイダの前端部を覆うカバー部と、デバイダの前端部を弾性的に挟持して自身をデバイダの前端部を保持させる挟持部とを備えて、
一つのデバイダの前端部に取り付けられるカバー部材。
【請求項2】
全体が弾性体で構成された請求項1に記載のカバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−178339(P2008−178339A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14021(P2007−14021)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】