説明

カビの防除方法及び液状カビ防除組成物

【課題】カビ胞子を殺すことによってカビを防除する方法およびカビ防除組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるアミンオキシドから選ばれる1種又は2種以上を対象物に適用することを特徴とするカビの防除方法
【化1】


(式中、Rは炭素数3〜22のアルキル基又は炭素数3〜22のアルケニル基であり、 Rはメチル基またはエチル基、R3はメチル基またはエチル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビの防除方法(殺カビ方法)及びカビ防除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本は高温多湿であるので微生物が繁殖し易く、浴室のタイル目地およびシャワーカーテン、マンションの壁、カーテン、ソファー等へのカビの繁殖が問題になっている。このため、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物等の防カビ剤が塗料、接着剤、インキ、プラスチック、タイルの目地等に添加されている。
【0003】
しかしながら、これらの防カビ剤の効果は一時的なものであり、カビの繁殖を永久的に防止することは出来ない。
【0004】
繁殖したカビを殺して除去する目的で、次亜塩素酸ナトリウムが用いられている。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは特異的な臭気を有していること、酸性物質と混合すると有毒なガスを発生すること、次亜塩素酸ナトリウムが付着すると衣服等が変色すること等の問題がある。
【0005】
このため、カビを殺す目的で、70〜80%エタノールの製剤がスプレーとして市販されている。カビの胞子は常に空気中を漂っていて、対象物に付着して繁殖するので、カビの防除を行うためには、エタノール製剤の噴霧を頻繁に行う必要がある。しかし、エタノールは引火性が強くて危険であること、また、高濃度のエタノールは中毒を起こす危険性があることから、その使用は限定され、カビを防除することは出来ていない。
【0006】
また、四級アンモニウム塩とキレート剤の混合物を対象物に接触させ、乾燥させる方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法はカビの繁殖を抑制するものであって、カビ胞子を殺す効果は示されていない。
【0007】
特許文献2は、2つのピリジニウム塩を有する化合物が胞子の発芽を抑制できると記載されているが、その効果は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−107933
【特許文献2】特開2006−22013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、カビ胞子を殺すことによってカビを防除する方法およびカビ防除組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、アミンオキサイドが強力な殺胞子活性を有することを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものであり、以下のカビ防除方法及び液状カビ防除組成物を提供する。
項1.下記式(1)で表されるアミンオキシドから選ばれる1種を対象物に適用することを特徴とするカビの防除方法
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは炭素数3〜22のアルキル基又は炭素数3〜22のアルケニル基であり、 Rはメチル基またはエチル基、R3はメチル基またはエチル基である。)
項2.
下記式(1)で表されるアミンオキシドから選ばれる1種を含有することを特徴とする液状カビ防除組成物
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rは炭素数3〜22のアルキル基又は炭素数3〜22のアルケニル基であり、 Rはメチル基またはエチル基、R3はメチル基またはエチル基である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、アミンオキシドをカビ胞子に接触させることにより、カビ胞子は非可逆的な傷害を受け、発芽できなくなる。本発明の好ましい実施形態においては、アミンオキシドを含有する液状組成物を対象物に噴霧し、または、液状組成物を染み込ませた紙や布で対象物を拭いて使用する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のカビ防除方法及び液状カビ防除組成物は、カビ胞子の発芽を抑制することによりカビを防除することができる。従って、カビ防除方法は、カビ胞子の発芽抑制方法を包含し、液状カビ防除組成物は、カビ胞子の発芽を抑制する液状組成物を包含する。
【0017】
本発明において用いられるアミンオキシドは特に限定されないが、RがC6〜C18の直鎖又は分岐を有するアルキル基であることがより好ましく、C8〜C14の直鎖又は分岐を有するアルキル鎖であることがさらに好ましい。C6〜C18のアルキル基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
【0018】
本発明の好ましいアミンオキシドとしては、ラウリルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0019】
本発明において、カビ胞子に接触させるアミンオキシドの濃度は、アミンオキシドの種類によっても異なるので限定ではないが、一般に、10〜100000ppm、好ましくは100〜50000ppm、更に好ましくは1000〜10000ppmである。これ以下の濃度では殺カビ効果が弱く、これ以上の濃度にしても効果は増強しない。
【0020】
本発明における液状組成物のアミンオキシド濃度は、0.001〜99重量%、好ましくは0.01〜50重量%、更に好ましくは0.1〜20重量%である。この液状組成物をそのまま、或いは、水で適宜希釈して使用する。
【0021】
本発明の液状組成物には、適宜、界面活性剤(非イオン、陰イオン、陽イオン、両性)、溶剤、保湿剤、香料、増粘剤等を添加することができる。本発明に用いられる非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレアート、ソルビタントリオレアート)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ひまし油誘導体、グリセリンアルキレート、POE−ソルビタンエステル類(例えば、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレアート、POE−ソルビタンモノステアレート等)、POR−脂肪酸エステル類、POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウルリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル等)、プルロニック類、POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−モノセチルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−グリセリンエーテル等)、テトロニック類、POE―ひまし油誘導体(例えば、POE−ひまし油、POE−硬化ひまし油、POE−硬化ひまし油イソステアレート等)、アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等)、POE−プロピレングリコールエステル、POE−脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0022】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸(例えば、ラウリル酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等)、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム等)、リン酸エステル塩(例えば、POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等)、スルホコハク酸塩(例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等)、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等)、N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等)、硫酸化油(例えば、ロート油等)、POE−アルキルエーテルカルボン酸、POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0023】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等)、アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等)、アルキル四級アンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等)、ジアルキルモリホニウム塩、アルキルアミン塩(例えば、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等)、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミノアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0024】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等)等が挙げられる。
【0025】
溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤、高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、パルミチルアルコール、イソステアリルアルコール等)、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等)、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリグリセリン、ポリグリセリン等)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、グリセリンモノプロピルエーテル、グリセリンモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0026】
増粘剤としては、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸ナトリウム、グアーガム、タマリントガム、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ラポナイト等が挙げられる。
【0027】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。
【0028】
着色料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、コバルトバイオレット、チタン酸コバルト、群青、パール顔料、金属粉末顔料、有機顔料、クロロフィル、β−カロチン等が挙げられる。
【0029】
香料としては、ジャコウ、ライム、ビャクダン、ハッカ、バニリン、シトロネラール、オイゲノール、リナロール、クマリン、ケイ皮酸エチル等が挙げられる。
【0030】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の液状組成物は、以上に列挙した添加剤の1種以上と適宜併用することで、各目的により適した殺菌剤とすることが出来る。
【実施例】
【0032】
実施例1、比較例1
ラウリルジメチルアミンオキシドまたはハイジェニアを水で希釈し、各々の100ppm溶液を調製した。
【0033】
黒麹黴(Aspergillus niger JCM16264)の胞子を、600nmの吸光度が約0.1となるように、0.01%ツイーン80を含有する生理食塩液に懸濁して実験に用いた。
【0034】
四級アンモニウム塩溶液20mlまたは滅菌蒸留水20mlに、黒麹かびの懸濁液0.2mlを添加した。5分後、1mlを採取し、セルロースアセテート膜のメンブランフィルター(ADVANTEC製、径:47mm、孔径:0.45μm)をセットしたろ過器でろ過して、胞子をメンブランフィルターに捕捉した。直ちに、滅菌蒸留水50mlで洗浄した後、ろ過器からメンブランフィルターを取り出し、ポテトデキストロース寒天培地の上に置いて、30℃で2日間培養した。視覚により、カビの生育状態を表1に示す0〜4の5段階に設定し数値化した。
【0035】
また、黒麹カビの胞子を添加した滅菌水の0.1mlをポテトデキストロース寒天培地に接種して30℃で24時間培養し、培地上に形成したコロニー数から試験に用いたカビの胞子数を測定したところ、10個/mlであった。
【0036】
表2に示すように、ラウリルジメチルアンモニウムを接触させたことによって、胞子の発芽は抑制された。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアミンオキシドから選ばれる1種又は2種以上を対象物に適用することを特徴とするカビの防除方法
【化1】

(式中、Rは炭素数3〜22のアルキル基又は炭素数3〜22のアルケニル基であり、 Rはメチル基またはエチル基、R3はメチル基またはエチル基である。)
【請求項2】
下記式(1)で表されるアミンオキシドから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする液状カビ防除組成物
【化2】

(式中、Rは炭素数3〜22のアルキル基又は炭素数3〜22のアルケニル基であり、 Rはメチル基またはエチル基、R3はメチル基またはエチル基である。)