説明

カフ内圧モニター装置

【課題】カフに連通するパイロットバルーンを有する医療器具のカフ内圧を容易かつ正確にモニターすることができるカフ内圧モニター装置を提供する。
【解決手段】カフ内圧モニター装置1は、カフ101に連通され該カフ101の内圧の昇降に応じて膨張収縮するパイロットバルーン102を収納する、少なくとも1つのモニター平面部2を有するハウジング10を備える。ハウジング10に収納されたパイロットバルーン102は、カフ101の内圧の昇降に応じて膨張収縮するのでモニター平面部2に圧接する圧接面102bが大小に変化するので、この圧接面102bの変化を目視してモニターできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフに連通するパイロットバルーンを有する医療器具のカフの内圧をモニターするためのカフ内圧モニター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気管内挿管は、気道閉塞、陽圧換気の適応、意識障害などに伴う誤嚥の予防、気道内分泌物や出血の吸引、全身麻酔を行うとき、心肺停止の際などに行われている。このような気管内挿管のために、咽頭より挿入される気管内チューブあるいは気管を切開しそこに挿入される気管切開チューブが開発されている。
【0003】
これらのチューブは各種あるが、その中には、チューブ先端部分に風船状のカフを備えたカフ付気管内チューブやカフ付気管切開チューブがあり、これらチューブ壁内に埋め込まれている細い管を通してカフとパイロットバルーンとを連通し、さらにパイロットバルーンには一方向弁を介してシリンジを接続できるようにしたものがある。このタイプのものは、シリンジの先端を強く挿入すると先端が一方向弁を開状態にするのでカフへの空気の注入、脱気ができ、シリンジをはずすと一方向弁が閉状態となるのでカフ側へ注入してある空気が漏れなくなる。
【0004】
これにより、気管内に挿管したチューブのカフを適度に膨らませて、気管壁とチューブの隙間を密閉し、陽圧換気の空気の漏れと、分泌物の肺への流入を防止することができる。しかしながら、カフに過量に空気を注入すると、気管粘膜の血流を圧迫し、虚血による粘膜損傷が起きる。逆にカフへの空気注入量が少ないと、陽圧換気時に、気管壁とカフの隙間から漏れが生じる。このようにカフ内圧の管理は重要であり、最適なカフの拡張は人工呼吸時の気圧内圧が維持できる最小圧とされており、カフ内圧管理では20−25mmHg(27−34cmHO)で管理することが推奨されている。
【0005】
また、最初に気管内チューブや気管切開チューブを装着したり、交換したりするときは、医師や看護師が頸部に聴診器を当てて空気の漏れを確認したり、内圧計を用いたりしてカフ内圧が最適になるように調整されている。しかし、その後の装着中は、カフ素材によって空気の透過速度の違いはあるものの、多かれ少なかれ、空気が漏れてカフが収縮したり、体動などによりカフがずれたり、カフやその接続部の不具合で事故的にカフが収縮する可能性がある。このため、できるだけ常時カフの拡張状況をモニターすることが望ましい。また、実際の臨床現場では、1日に数回の頻度で、カフ内の空気を入れ替えることが推奨されているが、例えば在宅で行う場合、本人や家族が行うことが多いためカフを適切に拡張させた状態に管理することは容易ではない。
【0006】
また、医療機関における通常のカフ内圧の管理では、頸部に聴診器を当てて空気の漏れを確認するようなことは少なく、内圧計を使用することが多い。しかし、内圧計は高価であり、また、常時、大きな内圧計を接続したままであると、装着者の行動が制限される上に、装着者の動作により接続部が外れて空気が漏れるリスクが高い。また、モニターしたい時に内圧計を使用する場合は、毎回、内圧計を取り出してチューブに接続することになるので手間がかかる。その上、内圧計や接続チューブには死腔があるために、カフに圧力がかかった状態で内圧計を接続するたびに少量ではあるが、毎回、空気を漏らすことになり、数mlの空気でカフを拡張させている現状を考えるとこの漏れは無視できない。
【0007】
また、別のカフ内圧管理の方法として、気管内チューブや気管切開チューブのチューブ壁内に埋め込まれている細い管を通してカフとパイロットバルーンとを連通したものを用いる方法がある。これに使用されるパイロットバルーンは、カフと連通しているほかにシリンジとの接続側に一方向弁を有しており、シリンジの先端を強く挿入すると先端が一方向弁を開状態にするのでパイロットバルーンを介してカフへの空気の注入、脱気ができ、シリンジをはずすと一方向弁が閉状態となるのでカフおよびパイロットバルーン側へ注入してある空気が漏れなくなる。
【0008】
したがって、パイロットバルーンの膨らみを手で触れてその膨らみ具合、つまりカフの内圧の具合を感じることで、おおよその拡張状況を推測してカフの内圧管理をすることができる。しかしながら、この方法では管理を行う者の経験による感覚や感触等を頼りにしており、また、経験や感覚等には個人差が生じるため、定量性に乏しい。更に、パイロットバルーンの構成材料や気管切開チューブの製造具合等によっても感覚等が異なってしまうため、カフへの所定量の空気の供給および一定の内圧の保持が確実に行われているかどうか曖昧であり、正確性に欠けてしまうという問題があった。
【0009】
また、この方法では、パイロットバルーンはカフ内圧をモニターするために何度となく押しつぶされ、それによってそのたびにカフが拡張してしまうので、挿管されている患者は不愉快な思いをすることがある。また、睡眠中や生活活動での体動によりパイロットバルーンが何かに触れて押しつぶされる可能性も高いので、できるだけパイロットバルーンの拡張を変動させないことが好ましい。
【0010】
そのためカフ内圧をカフと連通するパイロットバルーンを用いてモニターするための技術として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。すなわち、特許文献1に記載された技術は、逆止弁(一方向弁)よりもカフ側にインジケータを設け、インジケータ本体に複数の指標室を形成し、複数の指標室それぞれにゴム等からなって膨縮度の異なる指標体を配設したもので、各指標体はカフと連通させたものである。各指標体はカフ内圧によって膨張度が異なるので、その各指標体の膨張度合を観察してカフの内圧を判断するものである。
【0011】
【特許文献1】特開2008−79704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来の技術では、インジケータの構造が複雑であり、製造費も高価になる。また、それによってディスポーザブル製品としての供給は現実的でないという問題点があった。
【0013】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、カフに連通するパイロットバルーンを有する医療器具のカフの不用意な拡張を防止することができるとともに、常時、簡便に、かつ、正確にカフ内圧をモニターすることができ、構造が簡易で安価な上にメンテナンスの必要がほとんどなく、電源も必要としないカフ内圧モニター装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。[1] カフ(101)に連通され該カフ(101)の内圧の昇降に応じて膨張収縮するパイロットバルーン(102)を有する医療器具(100)の前記カフ(101)の内圧をモニターするカフ内圧モニター装置(1)において、
前記パイロットバルーン(102)を収納する、少なくとも1つのモニター平面部(2)を有するハウジング(10)を備え、
前記ハウジング(10)に収納されたパイロットバルーン(102)は、前記カフ(101)の内圧の昇降に応じて前記モニター平面部(2)に圧接する圧接面(102b)が大小に変化し、
前記モニター平面部(2)は、前記パイロットバルーン(102)の圧接面(102b)の変化を目視できるものとしたことを特徴とするカフ内圧モニター装置(1)。
【0015】
[2] 前記モニター平面部(2)は、透明ないし半透明であることを特徴とする[1]に記載のカフ内圧モニター装置(1)。
【0016】
[3] 前記モニター平面部(2)は、前記カフ(101)の内圧が所定の値に達したときに前記圧接面(102b)の輪郭に重なる位置に内圧表示マーク(20)を設けたことを特徴とする[1]または[2]に記載のカフ内圧モニター装置(1)。
【0017】
前記本発明は次のように作用する。
カフ内圧モニター装置(1)は、そのハウジング(10)にパイロットバルーン(102)を収納した状態で使用する。パイロットバルーン(102)は、カフ(101)に連通されているのでカフ(101)の内圧の昇降に応じて膨張収縮する。カフ(101)の内圧を変える際には、カフ(101)に連通するパイロットバルーン(102)を通して空気をカフ(101)に出し入れさせる。
【0018】
カフ(101)の内圧が上がるに応じてハウジング(10)に収納されたパイロットバルーン(102)が膨張すると、パイロットバルーン(102)は少なくとも1つのモニター平面部(2)に接する。さらにカフ(101)の内圧が上がり続けるとパイロットバルーン(102)も膨張を続け、モニター平面部(2)に圧接する圧接面(102b)の面積が大きくなっていく。逆に、カフ(101)の内圧を下げて行くに応じて、パイロットバルーン(102)は収縮して行くのでモニター平面部(2)への圧接面(102b)の面積が小さくなる。
【0019】
このように、ハウジング(10)に収納されたパイロットバルーン(102)は、カフ(101)の内圧の昇降に応じてモニター平面部(2)に圧接する圧接面(102b)が大小に変化し、この圧接面(102b)の変化をモニター平面部(2)で目視できるのでカフ(101)の内圧を容易かつ正確にモニターすることができる。また、パイロットバルーン(102)はハウジング(10)に収納されて保護されているので、不用意な外力がかかって押しつぶされ、それによってカフ(101)の内圧が上がってしまうような事態の起こることを防止することができる。
【0020】
モニター平面部(2)が透明ないし半透明なものの場合には、圧接面(102b)の大小の変化を極めて容易に目視することができる。
【0021】
また、モニター平面部(2)に内圧表示マーク(20)を設けることにより、カフ(101)の内圧をより容易かつ正確にモニターすることができる。すなわち、カフ(101)の内圧が所定の値に達したときにパイロットバルーン(102)がモニター平面部(2)に圧接している圧接面(102b)の輪郭に重なる位置に内圧表示マーク(20)を設けておけばよい。内圧の所定の値とは、例えばカフ内圧管理に適切とされる圧力範囲の中央値、あるいは下限値と上限値、あるいは下限値と中央値と上限値等である。また、内圧表示マーク(20)は、カフ内圧が前記下限値において圧接面(102b)の輪郭に重なる位置から前記上限値において圧接面(102b)の輪郭に重なる位置までの間であって、前記中央値を含む所定の幅をもったものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるカフ内圧モニター装置によれば、カフに連通したパイロットバルーンを有する既存のカフ付医療器具のパイロットバルーンをハウジングに収納して保護できるため、パイロットバルーンが不用意に押しつぶされることによるカフの不用意な拡張を防止することができるとともに、パイロットバルーンが膨張してモニター平面部に圧接する圧接面の大小の変化を目視することにより、カフの内圧を常時、簡便に、かつ、正確にモニターすることができる。
【0023】
また、ハウジングの構造が単純であり、その材料も特殊なものを必要としないので、安価な上に故障がほとんどなく、メンテナンスの必要がほとんどなく、電源を必要としないのでモニター中にコストのかかることがない。
【0024】
また、装置はパイロットバルーンよりも少し大きい程度であり、小さいので使用する患者の邪魔にならず非常に高い実用性が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
図1から図4は本発明の一実施の形態を示している。
図1に示すように、本実施の形態に係るカフ内圧モニター装置1は、既存の医療器具100でカフ101に連通されカフ101の内圧の昇降に応じて膨張収縮するパイロットバルーン102を有するもの、例えば気管内チューブ100に取り付けてカフ101の内圧をモニターすることができるものである。カフ101とパイロットバルーン102とは、チューブ110の壁内に埋め込まれた細管120によって連通している。
【0026】
図3にも示したように、パイロットバルーン102は、細管120が接続されている部分とはほぼ反対側になる部分にシリンジ接続口102aを有している。このシリンジ接続口102aには、図1に示したように送気口130を接続することができる。送気口130は、不図示のシリンジを接続するものであり、内部には一方向弁140(逆止弁)が配設されている。この一方向弁140は、シリンジの先端を強く押し込むと開状態となり、シリンジをはずすと閉状態になるものである。
【0027】
図2は、カフ内圧モニター装置1のハウジング10の斜視図である。ハウジング10は箱形に形成されている。1aで示した面はハウジング10の正面であり、1bで示した面はハウジング10の上面であり、1dと1eで示したそれぞれの面はハウジング10の側面であり、1cで示した面はハウジング10の下面である。上面1bにはパイロットバルーン102とカフ101を連通する細管120を通すための上部開口1gが孔設されており、下面1cにはパイロットバルーン102のシリンジ接続口102a側を露出させるために設けた下部開口1hが孔設されている。上部開口1gは、ハウジング10内にパイロットバルーン102を収納するときにパイロットバルーン102をハウジング10内に入れるための開口でもある。したがって、上部開口1gは、パイロットバルーン102を折りたたんで通すことができるだけの大きさを有している。
【0028】
ハウジング10は、正面1a、上面1b、下面1c、側面1d、側面1e、および背面1fの少なくとも1つを着脱可能とし、着脱したところからパイロットバルーン102を収納するようにしてもよい。パイロットバルーン102をハウジング10に収納する際には、細管120を上部開口1gに通し、シリンジ接続口102aが下部開口1hを臨むようにする。
【0029】
このハウジング10は、例えば硬質プラスチックで作られており、正面1aは、ハウジング10に収納したパイロットバルーン102によってカフ101の内圧をモニターする際に、パイロットバルーン102を見るための透明ないし半透明のモニター平面部2を有している。モニター平面部2は、カフ101の内圧の昇降によって膨張収縮するパイロットバルーン102を目視によってモニターするためのものである。モニター平面部2は、正面1a全体を透明ないし半透明としたものである。モニター平面部2は、正面1aの全面とする必要はなく、例えば正面1aの周辺部を不透明なものとして、該周辺部から中心寄りの部分をモニター平面部2として透明ないし半透明にしてもよい。モニター平面部2は、本実施の形態においては正面1aに設けたようにハウジング10の少なくとも1箇所に設けておけばよいが、背面1fにも設けてもよいし、側面1d、1eにも設けてもよい。
【0030】
このようなモニター平面部2を有するハウジング10に収納されたパイロットバルーン102は、カフ101の内圧の昇降に応じて膨張すると、モニター平面部2に圧接する。モニター平面部2に圧接するパイロットバルーン102の圧接面102bは、その面積の大きさがカフ101の内圧の昇降によって変化する。したがって、圧接面102bをモニターすることによって、カフ101の内圧をモニターすることができる。
【0031】
モニター平面部2には、カフ101の内圧モニターをより正確に行えるように、カフ101の内圧が所定の値に達したときに圧接面102bの輪郭に重なる位置に内圧表示マーク20が設けられている。内圧の所定の値とは、例えばカフ101内圧管理に適切とされる圧力範囲である20−25mmHg(27−34cmHO)の中央値である。あるいは、下限値と上限値、下限値と中央値と上限値等でもよい。
【0032】
また、内圧表示マーク20は、カフ101内圧が下限値において圧接面102bの輪郭に重なる位置から前記上限値において圧接面102bの輪郭に重なる位置までの間であって、中央値を含む所定の幅(大きさ)をもったものにしてもよい。この場合、圧接面102bの輪郭が、内圧表示マーク20に掛かってさえいればカフ101の内圧が適切な範囲内にあることが一目瞭然に分かる。
【0033】
次に作用を説明する。
カフ内圧モニター装置1は、カフ101に連通されたパイロットバルーン102をハウジング10に収納した状態で使用する。ハウジング10に収納する際は、ハウジング10の着脱可能部分を取り外し、上面1bの上部開口1gに細管120を通し、パイロットバルーン102のシリンジ接続口102aが下部開口1hを臨むように配置する。すなわち、図3に示したような向きにパイロットバルーン102をハウジング10に収納する。
【0034】
カフ101の内圧を上げるためには、シリンジを送気口130に接続してシリンジの先端側をパイロットバルーン102のシリンジ接続口102aに向けて強く押し込む。これにより、シリンジの先端側が一方向弁140を開状態にするので、シリンジによってパイロットバルーン102側へ空気を注入すればよい。パイロットバルーン102とカフ101は細管120によって連通しているので、シリンジによってパイロットバルーン102側へ空気を注入するとカフ101の内圧が上昇する。
【0035】
この状態でシリンジを外すと、一方向弁140が閉状態となり、パイロットバルーン102側の空気は一方向弁140を通過して逆流することができないので、カフ101の内圧が保たれる。また、カフ101の内圧を下げるときは、シリンジの先端側をパイロットバルーン102のシリンジ接続口102aに向けて強く押し込んで一方向弁140を開状態にしたままで、シリンジによって空気を抜けばよい。
【0036】
カフ101の内圧を上げ続けるとパイロットバルーン102が膨張し続けて、パイロットバルーン102がハウジング10に圧接するようになる。図4に示したように、パイロットバルーン102はハウジング10に圧接して、ハウジング10内にしっかりと保持される。
【0037】
図5は、注入空気量を変えてパイロットバルーン102の膨らみとカフ101の内圧とを測定した結果を示している。図示されたグラフからわかるように、パイロットバルーン102の膨らみおよびカフ101の内圧のいずれもが注入空気量の増加にほぼ比例して増加していることがわかる。すなわち、パイロットバルーン102の膨らみをモニターすることにより、カフ101の内圧をモニターすることができることが分かる。このモニターは、パイロットバルーン102が膨張してモニター平面部2に圧接すると現れる圧接面102bによって行われる。
【0038】
図6は、擬似気管200(内径20mmのアクリルチューブ)内にカフ101を入れて空気を注入したときの圧接面102bの様子を示す説明図である。図示したものは、上から下へ順に5ml、6ml、7ml、8mlの空気を注入したものであり、注入空気量が大きくなるに応じて圧接面102bの大きさが大きくなっていることが明瞭に分かる。7mlの空気注入量のときにカフ内圧が最適値となる場合、7mlの空気を注入したときの圧接面102bの輪郭に重なる位置に内圧表示マーク20が設けられているので、カフ内圧が最適値よりも大きいか小さいか、どの程度大きいか小さいかを容易に判断することができる。
【0039】
図7は、上から下へ順にハウジング10のモニター平面部2の内壁面が未処理であるものと、内壁面にグリセリンを塗布したものと、内壁面に真空用グリースを塗布したものとを比較した説明図である。これらから、モニター平面部2の内壁面が未処理のものよりも、内壁面にグリセリンや真空用グリースを塗布したものの方が圧接面102bの見え具合の良いことがわかる。したがって、実際の使用には、モニター平面部2の内壁面に真空用グリース等を塗布しておくことが好ましい。
【0040】
このように、ハウジング10に収納されたパイロットバルーン102は、カフ101の内圧の昇降に応じてモニター平面部2に圧接する圧接面102bが大小に変化するので、この圧接面102bの変化をモニター平面部2で目視することにより、カフ101の内圧を容易かつ正確にモニターすることができる。
【0041】
また、パイロットバルーン102はハウジング10に収納されて保護されているので、不用意な外力を受けて押しつぶされ、それによってカフ101の内圧が上がってしまうというような事態の起こることを防止することができる。
【0042】
さらに、モニター平面部2に内圧表示マーク20を設けることにより、カフ101の内圧をより容易かつ正確にモニターすることができる。
【0043】
モニター平面部2は、透明ないし半透明なものにすることが好ましいが、不透明なものにハウジング10の内部でのパイロットバルーン102の膨張度合いが分かるように、長孔を穿設してもよい。
【0044】
なお、ハウジング10は、四角形の薄い箱状の六面体としたが、五角形、六角形、その他多角形の薄い柱状のものでもよく、患者やカフ内圧モニター装置1を取り扱うものが触れても痛くないように丸みをつけてもよい。また、薄い円柱状のものでもよい。
【0045】
また、ハウジング10の形状は、全体が面で構成されている必要はなく、モニター平面部2と該モニター平面部2に向かい合う部分を面状とし、これらを柱状の部材で連結固定したものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカフ内圧モニター装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るカフ内圧モニター装置のハウジングを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るカフ内圧モニター装置のハウジングをパイロットバルーンに装着した状態を説明する模式図である。
【図4】ハウジング内のパイロットバルーンが膨張してモニター平面部に圧接している状態を示す斜視図である。
【図5】注入空気量を変えてパイロットバルーンの膨らみとカフの内圧とを測定した結果をグラフで示す説明図である。
【図6】擬似気管内にカフを入れて空気を注入したときの圧接面の大きさの変化を示す説明図である。
【図7】ハウジングのモニター平面部の内壁面が未処理ものと、内壁面にグリセリンを塗布したものと、内壁面に真空用グリースを塗布したものとで圧接面の見え方を比較した説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1…カフ内圧モニター装置
2…モニター平面部
1a…正面
1b…上面
1c…下面
1d…側面
1e…側面
1f…背面
1g…上部開口
1h…下部開口
10…ハウジング
20…内圧表示マーク
100…気管内チューブ
101…カフ
102…パイロットバルーン
102a…シリンジ接続口
102b…圧接面
110…チューブ
120…細管
130…送気口
140…一方向弁
200…擬似気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフに連通され該カフの内圧の昇降に応じて膨張収縮するパイロットバルーンを有する医療器具の前記カフの内圧をモニターするカフ内圧モニター装置において、
前記パイロットバルーンを収納する、少なくとも1つのモニター平面部を有するハウジングを備え、
前記ハウジングに収納されたパイロットバルーンは、前記カフの内圧の昇降に応じて前記モニター平面部に圧接する圧接面が大小に変化し、
前記モニター平面部は、前記パイロットバルーンの圧接面の変化を目視できるものとしたことを特徴とするカフ内圧モニター装置。
【請求項2】
前記モニター平面部は、透明ないし半透明であることを特徴とする請求項1に記載のカフ内圧モニター装置。
【請求項3】
前記モニター平面部は、前記カフの内圧が所定の値に達したときに前記圧接面の輪郭に重なる位置に内圧表示マークを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のカフ内圧モニター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−148545(P2010−148545A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327043(P2008−327043)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(391016705)クリエートメディック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】