説明

カプセル充填用組成物

【課題】難油溶性の粉末状物質をより高い含有率で分散性よく含有させることが可能なカプセル充填用組成物を提供する。
【解決手段】粉末状物質を油脂に懸濁させたカプセル充填用組成物であって、前記油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合は70質量%〜100質量%である。また、上記構成において、油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合が98質量%以上であり、炭素数8の脂肪酸の割合が66質量%以上であるものとすれば、カプセル皮膜への充填性に極めて優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトカプセル等のカプセル皮膜内に充填されるカプセル充填用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なソフトカプセルでは、水溶性のカプセル皮膜内に、油状で非水溶性の充填用組成物が充填されている。このような充填用組成物は、例えば、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、スクワレン、卵黄油等のように、カプセルに充填しようとする目的物質自体が油状である場合、油溶性の目的物質が溶媒としての油脂に溶解されている場合、及び、難油溶性の目的物質が分散媒としての油脂に懸濁されている場合に大別される。ここで、充填用組成物が難油溶性の目的物質の懸濁液である場合、目的物質を高い安定性で良好に分散させることが重要である。そのため、従来の充填用組成物には、難油溶性物質と油脂との親和性を高めるために、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤(界面活性剤)が添加されている。また、目的物質と油脂との比重の違いに起因する分離を抑制し、分散状態の安定化を図るために、ワックス類(ミツロウ、ライスワックス、キャンデリラワックス等)や硬化油等の安定化剤が添加されている。
【0003】
本出願人は、油脂類に対する酸化防止剤として知られていたアスコルビン酸脂肪酸エステルが、優れた分散安定化作用を示すことを見出し、動物性油脂や植物性油脂を分散媒とする難油溶性物質の懸濁液に、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルを分散剤として添加したカプセル充填用組成物を提案している(特許文献1参照)。これによれば、従来公知の分散剤より低濃度の添加で、懸濁液の分散状態をより良好なものとすることができる。
【0004】
また、一般的には難油溶性物質の含有率を増加させると充填用組成物の粘度が上昇し、カプセル皮膜内への充填性が低下してしまうところ、特許文献1の技術によれば、難油溶性の目的物質の濃度の増加に伴う粘度の上昇が小さく、目的物質の含有率を高めることができる。例えば、かさ比重の比較的大きいローヤルゼリーの粉末(かさ比重0.75g/ml)や乳糖の粉末(かさ比重0.94g/ml)であれば、含有率を60質量%まで高めることができ、かさ比重が小さい酢のエキス末(かさ比重0.44g/ml)であっても、含有率を30質量%まで高めることが可能である。
【0005】
しかしながら、カプセル充填用組成物に対しては、常に、目的物質の含有率を更に高めることが要請されている。カプセル充填用組成物における目的物質の含有率が高ければ、ソフトカプセルを小型化しても所定量を含有させることができるため、ソフトカプセルが飲みやすいものとなるからである。また、所定量の目的物質を摂取するために必要なソフトカプセルの個数も、少なくて済むからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、難油溶性の粉末状物質をより高い含有率で分散性よく含有させることが可能なカプセル充填用組成物の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるカプセル充填用組成物は、「粉末状物質を油脂に懸濁させたカプセル充填用組成物であって、前記油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合は70質量%〜100質量%である」ものである。
【0008】
従来のカプセルでは、難油溶性の粉末状物質を油脂に懸濁させる場合、油脂として、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、ヤシ油等の植物性油脂や、魚油、サメ肝油、馬油、卵黄油等の動物性油脂が使用されている。これらの油脂は、ヤシ油を除けば、概ね炭素数16〜18の長鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするものであり、ヤシ油の構成脂肪酸は、60質量%〜70質量%が炭素数12〜14の中・長鎖脂肪酸である。
【0009】
本発明者らは、粉末状物質を懸濁させる油脂として、構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合が70質量%〜100質量%である油脂を使用することにより、従来に比べて、高い含有率で粉末状物質を含有させることができ、且つ、分散状態の安定性に優れると共に、カプセル皮膜への充填性についても実用的なカプセル充填用組成物が得られることを見出し、本発明に至ったものである。ここで、一般的に、炭素数6〜12の脂肪酸を中鎖脂肪酸と称しているが、本発明では、中鎖脂肪酸のうち、特に炭素数8,10の脂肪酸を、主な構成脂肪酸とする油脂を使用する。
【0010】
なお、油脂に懸濁させる「粉末状物質」としては、医薬成分、生薬成分、健康食品成分、栄養補助成分の粉末を、特に限定することなく使用することができる。例えば、ローヤルゼリー、ブルーベリー、酢、プロポリス、アガリクス、ウコン、オリゴ糖、食物繊維、水溶性ビタミン、カルシウム等の粉末を挙げることができる。
【0011】
本発明にかかるカプセル充填用組成物は、上記構成に加え、「前記油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合は98質量%以上であり、炭素数8の脂肪酸の割合は66質量%以上である」ものとすることができる。
【0012】
このように、構成脂肪酸のほとんどが炭素数8,10の脂肪酸であり、しかも、その内の66質量%以上が炭素数8の脂肪酸である油脂を分散媒とすることにより、詳細は後述するように、カプセル皮膜への充填性が非常に良好なカプセル充填用組成物を提供することができる。
【0013】
本発明にかかるカプセル充填用組成物は、上記構成に加え、「前記油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸の割合は90質量%以下である」ものとすることができる。
【0014】
例えば、ローヤルゼリーを内容物とする場合など、カプセルを冷蔵保存することが推奨される場合がある。本発明者らは、構成脂肪酸のほとんどが炭素数8の脂肪酸である油脂を分散媒とした場合、カプセル充填用組成物の充填性は極めて良好であるものの、冷蔵保存によって油脂が結晶化し、斑点状に白濁することを見出した。油脂が結晶化しても品質が劣化する訳ではないが、透明で光沢のある外観を重要視するソフトカプセルの場合など、このような結晶化は望ましくない場合もある。
【0015】
上記構成とすることにより、すなわち、構成脂肪酸のほとんどが炭素数8,10の脂肪酸である油脂において、構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸の割合を90質量%以下に抑え、その分炭素数10の脂肪酸の割合を所定値以上に確保することにより、詳細は後述するが、粉末状物質を高含有率で含有し、分散状態の安定性及びカプセル皮膜への充填性に優れると共に、冷蔵保存しても油脂が結晶化しないカプセル充填用組成物を、提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の効果として、難油溶性の粉末状物質をより高い含有率で分散性よく含有させることが可能なカプセル充填用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態であるカプセル充填用組成物(以下、単に「充填用組成物」と称することがある)について説明する。本実施形態の充填用組成物は、粉末状物質を油脂に懸濁させたものであって、油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合が70質量%〜100質量%であるものである。
【0018】
充填用組成物には、乳化剤(界面活性剤)や、粉末状物質と油脂との比重の違いに起因する分離を抑制する安定化剤等の添加剤を添加しても良い。ここで、乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を使用可能である。また、安定化剤としては、ミツロウ等のワックス類や硬化油を使用可能である。
【0019】
上記構成の充填用組成物は、次のように調製する。まず、油脂及び添加剤を加熱し、完全に溶解させた後に常温まで放冷する。この溶液に粉末状物質を投入し、十分に混合して懸濁液とする。最後に、懸濁液を減圧下で脱泡処理する。
【実施例】
【0020】
粉末状物質としてローヤルゼリー粉末を使用し、構成脂肪酸組成の異なる油脂を使用して、表1に示す組成(質量%)の組成物R1,S1−1〜S1−6を調製した。ローヤルゼリー粉末としては、生ローヤルゼリーを凍結乾燥した粉末(かさ比重0.75g/ml)を使用し、組成物におけるローヤルゼリー粉末の含有率は、従来のソフトカプセルの充填用組成物におけるローヤルゼリーの含有率より高い62.5質量%とした。また、乳化剤(界面活性剤)として大豆レシチンを、安定化剤としてミツロウを添加した。何れの組成物においても、ローヤルゼリー粉末、油脂、乳化剤、安定化剤の質量%は同一であり、異なっているのは油脂の種類のみである。
【0021】
ここで、組成物R1の油脂は、従来のソフトカプセルにおいて粉末状物質の分散媒として多用されているサフラワー油であり、構成脂肪酸のほとんど全てが炭素数16〜18の長鎖脂肪酸である。これに対し、組成物S1−1〜S1−6は本実施形態の充填用組成物であり、何れも、油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合は70質量%〜100質量%である。ここで、組成物S1−1〜S1−5の油脂の構成脂肪酸は、ほとんど全て(98質量%〜100質量%)が炭素数8,10の中鎖脂肪酸である。一方、組成物S1−6の油脂の構成脂肪酸は、炭素数8,10の中鎖脂肪酸のほか、炭素数6の中鎖脂肪酸を約2質量%、炭素数12の中鎖脂肪酸を約20質量%含有し、残りは炭素数14以上の長鎖脂肪酸である。
【0022】
【表1】

【0023】
調製された上記の組成物R1,S1−1〜S1−6について、次のように、充填性、及び、分散安定性の評価を行った。その結果を、表1に合わせて示す。
【0024】
<充填性の評価>
充填用組成物の粘度を測定し、ロータリーダイ式のソフトカプセル成形においてカプセル皮膜に充填用組成物を充填しやすい流動性を考慮し、粘度が10000mPa・s以下の場合を「◎」(極めて良好)、10000mPa・sを超えるが15000mPa・s以下の場合を「○」(良好)、15000mPa・sを超えるが20000mPa・s以下の場合を「△」(実用的ではあるが充填性の良好さにやや劣る)、20000mPa・sを超える場合を「×」(不良)と評価した。ここで、粘度は、B型粘度計を使用し(No.4ローター,回転速度6rpm)、温度25℃で測定した。
【0025】
<分散安定性の評価>
充填用組成物10gを、20mlのサンプル瓶に入れ、40℃に保持した恒温槽内で100時間放置し、ローヤルゼリー粉末と油脂相とが分離する相分離の有無を目視で観察した。相分離が全く観察されなかった場合を「○」、高さ1mm未満の油脂相の分離が確認された場合を「△」、高さ1mm以上の油脂相の分離が確認された場合を「×」として評価した。
【0026】
表1に示すように、従来のソフトカプセルで多用されているサフラワー油を分散媒とした組成物R1では、ローヤルゼリー粉末の含有率を62.5質量%とすると、粘度が著しく高くなり、カプセル皮膜への充填性は不良であった。これに対し、本実施形態の組成物S1−1〜S1−6は、何れも実用的な充填性を備えており、分散安定性も良好であった。そのうち、油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合が98質量%以上であり、炭素数8の脂肪酸の割合が66質量%以上である組成物S1−1〜S1−5は、充填性が極めて良好であった。
【0027】
次に、ローヤルゼリーの含有率をどこまで高めることができるかを、表2に示す組成の組成物S2−1〜S2−4を用いて検討した。ここでは、分散媒として、組成物S1−3と同一の油脂、すなわち、構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸の割合が99質量%で、炭素数10の脂肪酸の割合が9質量%である油脂を使用した。また、上記と同一の乳化剤及び安定化剤を、同一の割合(質量%)で添加した。なお、組成物S2−1からS2−4までローヤルゼリー粉末の含有率を高めており、これに伴い油脂の含有率を低下させている。また、組成物S2−1は組成物S1−3と同一である。
【0028】
【表2】

【0029】
調製した組成物S2−1〜S2−4について、上記と同様の方法で、充填性、及び、分散安定性の評価を行った。その結果を、表2に合わせて示す。
【0030】
表2に示すように、ローヤルゼリー粉末の含有率が67質量%を越える組成物S2−4は粘度が高過ぎ、カプセル充填用組成物として適していなかったものの、組成物S2−1〜S2−3は何れも充填性、分散安定性ともに良好であり、ローヤルゼリー粉末の含有率を65.6質量%まで高めることが可能であった。特許文献1に関して上述したように、ローヤルゼリーを内容物とする従来のソフトカプセルでは、ローヤルゼリー粉末の含有率が60質量%でも、それ以前の従来製品と比べれば十分に高含有率と言えるものであった。そして、ソフトカプセルの技術分野において、目的物質の含有率をより高めることが常に要請され続けているとはいえ、1質量%であっても含有率を高めることは非常に困難なことである。従って、構成脂肪酸の組成が特定の範囲内にある油脂を分散媒とする上記構成とすることにより、充填用組成物におけるローヤルゼリー粉末の含有率を65.6質量%まで高めることができたことは、極めて意義が高い。
【0031】
ところで、ローヤルゼリーを内容物とするソフトカプセルは、冷蔵保存することが推奨される場合がある。そこで、上記の組成物S1−1〜S1−6、及び、S2−1〜S2−3について、次の方法で低温安定性を評価した。
【0032】
<低温安定性の評価>
充填用組成物をソフトカプセル皮膜に充填したソフトカプセルを、10℃の温度下で100時間静置した。その後、ソフトカプセルの外観を肉眼で観察し、結晶化による油脂の白濁が少しでも観察された場合を「×」で、そのような白濁が全く観察されなかった場合を「○」で評価した。その結果を、表3及び表4に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
表3及び表4から明らかなように、構成脂肪酸のほとんどが炭素数8の脂肪酸である油脂を分散媒とした組成物S1−1(炭素数8の脂肪酸99質量%)、及びS1−2(炭素数8の脂肪酸97質量%)では、低温保存によって油脂が結晶化することが認められた。そして、その他の組成物ではそのような結晶化は観察されなかったことから、少なくとも構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸の割合が90質量%以下であれば、低温保存によって油脂が結晶化しない充填組成物とできることが確認された。従って、ローヤルゼリーを内容物とする場合など、冷蔵保存が推奨されるカプセルを提供する場合、或いは、外観が重視されるソフトカプセルとする場合は、充填用組成物の分散媒として、構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸の割合が90質量%以下である油脂を使用することが望ましい。
【0036】
次に、粉末状物質としてブルーベリー粉末を使用し、構成脂肪酸組成の異なる油脂を使用して、表5に示す組成(質量%)の組成物R3、S3−1〜S3−5を調製した。ブルーベリー粉末としては、ブルーベリーエキスを真空乾燥した粉末(かさ比重0.40g/ml)を使用し、組成物におけるブルーベリーの含有率は50.0質量%とした。また、上記と同様に、乳化剤(界面活性剤)として大豆レシチンを、安定化剤としてミツロウを添加した。何れの組成物においても、ブルーベリー粉末、油脂、乳化剤、安定化剤の質量%は同一であり、異なっているのは油脂の種類のみである。
【0037】
また、組成物R3の油脂は、従来のソフトカプセルにおいて粉末状物質の分散媒として多用されているサフラワー油(構成脂肪酸のほとんど全てが炭素数16〜18の長鎖脂肪酸)である。これに対し、組成物S3−1〜S3−5は本実施形態の充填用組成物であり、何れも、油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合は70質量%〜100質量%である。ここで、組成物S3−1〜S3−4の油脂の構成脂肪酸は、ほとんど全て(98質量%〜100質量%)が炭素数8,10の中鎖脂肪酸である。一方、組成物S3−5の油脂は上記の組成物S1−6の油脂と同一であり、構成脂肪酸は、炭素数8,10の中鎖脂肪酸のほか、炭素数6の中鎖脂肪酸を約2質量%、炭素数12の中鎖脂肪酸を約20質量%含有し、残りは炭素数14以上の長鎖脂肪酸である。
【0038】
【表5】

【0039】
調製された組成物R3、S3−1〜S3−5について、上記と同様の方法で充填性、及び、分散安定性の評価を行った。その結果を、表5に合わせて示す。
【0040】
表5に示すように、従来のソフトカプセルで多用されているサフラワー油を分散媒とした組成物R3では、ブルーベリー粉末の含有率を50.0質量%とすると、粘度が著しく高くなり、カプセル皮膜への充填性は不良であった。これに対し、本実施形態の組成物S3−1〜S3−5は、何れも実用的な充填性を備えていると共に、分散安定性も良好であった。そのうち、構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合が98質量%以上であり、且つ、炭素数8の脂肪酸の割合が66質量%以上である組成物S3−1〜S3−4は、充填性が極めて良好であった。
【0041】
この結果は、ローヤルゼリー粉末を粉末状物質とした組成物R1、及びS1−1〜S1−6による上記の検討結果と、同一の傾向を示している。従って、粉末状物質の相違によって含有させられる割合は異なるとしても、分散媒として構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合が70質量%〜100質量%である油脂を使用することにより、サフラワー油など長鎖脂肪酸を構成脂肪酸とする油脂を分散媒とした従来の充填用組成物より、難油溶性の粉末状物質を多く含有させても、実用的な充填性を備えると共に分散安定性も良好な充填用組成物とすることができること、及び、構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合が98質量%以上であり、且つ、炭素数8の脂肪酸の割合が66質量%以上である油脂を使用することにより、充填性が極めて良好な充填用組成物とすることができることは、粉末状物質の相違によらない共通の傾向であると考えられた。
【0042】
次に、ブルーベリー粉末の含有率をどこまで高めることができるかを、表6に示す組成の組成物S4−1〜S4−4を用いて検討した。分散媒としては、組成物S1−3、及び、S2−1〜S2−4と同一の油脂を使用した。また、上記と同一の乳化剤及び安定化剤を同一の割合(質量%)で添加した。なお、組成物S4−1からS4−4までブルーベリー粉末の含有率を高めており、これに伴い油脂の含有率を低下させている。
【0043】
【表6】

【0044】
調製した組成物S4−1〜S4−4について、上記と同様の方法で、充填性、及び、分散安定性の評価を行った。その結果を、表6に合わせて示す。
【0045】
表6に示すように、ブルーベリー粉末の含有率が64.5質量%を越える組成物S4−4は粘度が高過ぎ、カプセル充填用組成物として適していなかったものの、組成物S4−1〜S4−3は何れも充填性、分散安定性ともに良好であり、ブルーベリー粉末の含有率を62.5質量%まで高めることが可能であった。この含有率は、ブルーベリー粉末のかさ比重がかなり小さいこと、サフラワー油を分散媒とした従来の充填用組成物では、50.0質量%のブルーベリー粉末を懸濁させることが不可能であった事実を考慮すると、極めて高い含有率である。
【0046】
上記のように、本実施形態のカプセル充填用組成物によれば、難油溶性の粉末状物質を、従来に比べて非常に高い含有率で、分散安定性よく懸濁させ、且つ、ソフトカプセル皮膜に充填性よく充填できるカプセル充填用組成物を提供することができる。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記の実施形態では、充填用組成物をソフトカプセル皮膜に充填する場合を例示したが、これに限定されず、ハードカプセル皮膜に充填しても構わない。また、カプセル皮膜の基剤は特に限定されず、ゼラチンを基剤とするものの他、本出願人を含め種々提案されている、非ゼラチンの基剤を使用したカプセル皮膜に、本発明の充填用組成物を充填することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特許第3559277号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状物質を油脂に懸濁させたカプセル充填用組成物であって、
前記油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合は70質量%〜100質量%である
ことを特徴とするカプセル充填用組成物。
【請求項2】
前記油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸との和の割合は98質量%以上であり、炭素数8の脂肪酸の割合は66質量%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のカプセル充填用組成物。
【請求項3】
前記油脂の構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸の割合は90質量%以下である
ことを特徴とする請求項2に記載のカプセル充填用組成物。

【公開番号】特開2012−144450(P2012−144450A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1988(P2011−1988)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(503315676)中日本カプセル 株式会社 (9)
【Fターム(参考)】