説明

カベルゴリンの調製

本発明は、カベルゴリンとエチルベンゼンを含む溶媒とを合わせて溶媒和物を形成し、そしてこの溶媒和物からカベルゴリンI型を得ることにより、カベルゴリンI型を調製する方法を開示している。カベルゴリンと第一の溶媒とを合わせて溶液を形成し、そしてこの溶液にさらに第二の溶媒を入れ、その後結晶化してカベルゴリンI型を形成することにより、カベルゴリンI型を調製する方法も開示されている。カベルゴリンおよびエチルベンゼンおよび必要に応じて、n−ヘプタンを含むカベルゴリンの溶媒和物形態も、さらに開示されている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、カベルゴリンの調製、特に、カベルゴリンの新規な溶媒和物形態、およびカベルゴリンI型の調製におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カベルゴリンは、エルゴリン誘導体であり、式1の構造(((6-アリルエルゴリン-8β-イル)-カルボニル)-1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチル尿素)を有する。これは、CNS障害、可逆性閉塞性気道疾患、プロラクチン阻害を含む多くの疾患の治療、眼内圧の制御、および緑内障の治療について公知である。
【0003】
多くの異なる型のカベルゴリンが公知であり、例として、PCT特許公開番号WO01/72747公報には、II型が、そしてPCT特許公開番号WO01/72746公報には、VII型が記載されている。
【0004】
カベルゴリンI型の調製は、PCT特許公開番号WO01/70740、WO03/078392、およびWO03/078433公報に記載されている。PCT特許公開番号WO01/70740公報から、トルエン/ジエチルエーテル混合物を含む溶媒から結晶性カベルゴリンI型を調製することが公知である。PCT特許公開番号WO03/078392およびWO03/078433公報から、カベルゴリンとトルエンとの溶媒和物を調製し、そして溶媒和物の乾燥により結晶性I型を得ることが公知である。
【0005】
しかしながら、高純度を有するI型の結晶性カベルゴリンを調製することが望まれる。
【0006】
相対的に小さい(結晶化後)粒径を有し、そして最終医薬製品に望ましい粒径を得るために粉砕を全くまたは比較的ほとんど必要としない、カベルゴリンI型を調製することもまた望まれる。粉砕および他のこのような加工処理は、これにより、純粋な多形型カベルゴリンを多形混合物に変換することになる傾向があるので、望ましくない。PCT特許公開番号WO03/078433公報および他の参考文献に記載の方法が有する1つの問題は、相対的に大きな粒径を有するカベルゴリンI型の結晶が形成されることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
中間体溶媒和物の最終カベルゴリンI型への変換が迅速かつ効率的であるカベルゴリンの調製方法を提供することもまた望まれる。この変換について公知の方法(例えば、PCT特許公開番号WO03/078433公報に記載の方法)に伴う困難性は、溶媒和物から溶媒を除去するために、長引いた乾燥期間(すなわち、48時間余り)が必要であることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カベルゴリンとエチルベンゼンを含む溶媒とを合わせて溶媒和物を形成し、そしてこの溶媒和物からカベルゴリンI型を得ることにより、カベルゴリンI型を調製する方法を開示している。カベルゴリンと第一の溶媒とを合わせて溶液を形成し、そしてこの溶液にさらに第二の溶媒を入れ、その後結晶化してカベルゴリンI型を形成することにより、カベルゴリンI型を調製する方法も開示されている。カベルゴリンおよびエチルベンゼン、および必要に応じて、n−ヘプタンを含むカベルゴリンの溶媒和物形態も、さらに開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
したがって、本発明は、カベルゴリンのI型を調製する方法を提供する。この方法では、カベルゴリンが溶媒(例えば、エチルベンゼン)に溶解されて、溶液(例えば、ゲル)を形成する。カベルゴリンI型を形成するために、必要に応じて、第二の溶媒が添加される。
【0010】
本発明の1つの好ましい方法では、カベルゴリンI型は、カベルゴリンおよびエチルベンゼンの溶媒和物(必要に応じて、n−ヘプタンをさらに含む)を形成し、そしてこの溶媒和物からカベルゴリンI型を得ることにより得られる。
【0011】
本発明のさらなる方法は、エチルベンゼンを含む溶媒にカベルゴリンを溶解して溶媒和物を形成する工程、およびこの溶媒和物を乾燥させてカベルゴリンI型を得る工程を含む。
【0012】
実施例により詳細に記載した本発明の方法では、カベルゴリンが、エチルベンゼンを含む溶媒中に溶解され、そしてこの溶液が、−5℃以下の温度に冷却される。溶媒は、好ましくは、少なくとも75容量%のエチルベンゼンを含み、そして特定の実施態様では、エチルベンゼンである。
【0013】
また、本発明によって、本発明の方法により得られるカベルゴリンI型、およびカベルゴリンと溶媒(例えば、エチルベンゼン)と必要に応じて第二の溶媒(例えば、n−ヘプタン)とを含むカベルゴリンの溶媒和物形態が提供される。
【0014】
本発明の1つの実施態様では、カベルゴリンがエチルベンゼンに溶解される。これは、好都合には、室温、代表的には約25〜30℃にて行われ、そして得られた溶液は、好ましくは、濾過されて、粒状物が除去される。次いで、溶液の温度は、約−5℃以下、好ましくは−10℃以下に下げられ、そしてカベルゴリンの沈殿物が形成される。これは、攪拌によって、および種添加(例えば、結晶性カベルゴリンI型を用いる)によっても促進され得る。次に、貧溶媒(すなわち、カベルゴリン−エチルベンゼン溶媒和物が非常に不溶性である溶媒)が添加される。貧溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラブチルメチルエーテル、またはこれらの溶媒の混合物を含むことが好ましい。より好ましくは、貧溶媒は、ヘプタンを含む。最も好ましくは、貧溶媒は、n−ヘプタンを含む。
【0015】
貧溶媒の添加により、カベルゴリン−エチルベンゼン溶媒和物の形成および沈殿を生じ、スラリーが形成される。このスラリーを濾過して溶媒和物を回収し、必要に応じて(例えば、さらなる貧溶媒を用いて)洗浄し、次いで乾燥させることにより、I型カベルゴリンが高純度で得られ得る。
【0016】
貧溶媒の添加により溶液を生じ、次いで、この溶液を、種々の経路による乾燥によって結晶化し、カベルゴリンI型が得られ得ることもまた、本発明によって意図される。
【0017】
第一のエチルベンゼン含有溶媒と第二の貧溶媒との比は、一般には4〜10:5〜20容量、好ましくは5〜7:8〜15容量、より好ましくは5〜7:10〜12容量の範囲である。特に良好な結果は、約5〜6:11の溶媒比で得られている。
【0018】
上記方法は、有利には、相対的に小さな粒径、代表的には、80ミクロン(μm)未満、好ましくは、70μm未満の体積平均径(VMD)を有するカベルゴリンI型を得ることが分かった。以下により詳細に記載する特定の例では、約50μmのVMDを有するカベルゴリンI型が得られている。結晶化後産物の粉砕は、多形純度の喪失を生じる傾向があり、したがって、この相対的に小さな粒径は、小さな粒径のカベルゴリンI型を高純度で有する医薬製品の調製において、著しい利点である。
【0019】
本発明の方法の別の利点は、湿潤溶媒和物が濾過により一旦回収されれば、これは、迅速に乾燥されてカベルゴリンI型の結晶を形成し得、そしてこれまでに可能であったよりも速く乾燥され得ることである。
【0020】
乾燥は、多くの種々の様式で達成され得る。例えば、乾燥は、減圧下、900mbar以下、800mbar以下、および700mbar以下の圧力下で実施されている。全ての場合において、乾燥した純粋なI型が30時間以内で得られた。また、乾燥は、高温にて、例えば50℃以上、好ましくは60℃以上にて実施され得ることも意図される。別の選択肢は、乾燥が、不活性ガス雰囲気(代表的には、窒素および/またはアルゴン、または他の不活性ガスを、80容積%以上の濃度で含む)下で実施されることである。窒素または他の不活性ガスブランケットが用いられ得るか、またはこのような不活性ガスの気流下で乾燥が実施され得る。不活性ガスを用いる乾燥は、20時間未満に完了し得ることが分かっている。この時間は、当該技術分野で必要とされた時間に比べて著しく減少した時間である。これは、特に、大規模にI型カベルゴリンを調製する場合に、有利である。
【0021】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0022】
(実施例1−カベルゴリンI型の調製)
カベルゴリン(2g、純度99.9%:HPLCピーク面積率による)を、25〜30℃にて、10容量のエチルベンゼンに溶解した。この溶液を、0.1μmフィルタを擦りながら通して濾過し、そして濾液を、攪拌しながら−23〜−17℃の冷却器中に置いた。30分後、この溶液に純粋なカベルゴリンI型種結晶を添加した。さらに16時間、−23〜−17℃にて溶液の攪拌を続けた。
【0023】
この期間の後、n−ヘプタンの予め濾過した溶液(22容量)を、これもまた−23〜−17℃にて、エチルベンゼンスラリーに10分間にわたって滴下した。
【0024】
n−ヘプタンの添加が終わると、このスラリーを、−23〜−17℃にてさらに3.5時間攪拌した。次いで、固体を濾過により集め、そして2容量の冷n−ヘプタンで洗浄した。エチルベンゼン/n−ヘプタン溶媒和物の試料により、DSC曲線を得た。この曲線は、52.8℃および71.9℃の2つのピークの存在を示した。
【0025】
次いで、この固体を窒素のブランケット下で15時間乾燥させた。この期間の後、DSCは、101.5℃の1つのピークの存在を示した。得られた固体は、純粋なカベルゴリンI型であった。回収重量は86%であり、そしてHPLCピーク面積率による純度は99.9%であった。
【0026】
(実施例2−カベルゴリンの乾燥)
実施例2は、7つの異なる乾燥工程を用いて、実施例1に記載した方法を繰り返す。種々の乾燥タイプについて、それらの乾燥が完了するまでの時間と共に、以下の表1に記載する。
【0027】
【表1】

【0028】
全ての実験はカベルゴリンI型を生成した。このことは、DSCおよびDRIFT分光学によって確認した。
【0029】
(実施例3−粒径分析)
実施例3は、実施例1に記載した方法を繰り返し、そして得られたカベルゴリンI型の粒径を測定した。この粒径データを、1)WO03/078433(すなわち、トルエンおよびヘプタンからのカベルゴリンI型の調製)に従って得られたカベルゴリンI型の粒径、および2)市販のII型の粒径と比較した。結果を以下の表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2で使用したX10は、アンダーサイズ累積率が10である粒径と定義される(すなわち、下位10%にある粒子が、記載した粒径以下である)。X50は、メジアン粒径を意味し、そしてX90は、アンダーサイズ累積率が90である粒径と定義される(すなわち、下位90%にある粒子が、記載した粒径以下である)。
【0032】
本発明の説明の文脈(特に特許請求の範囲の文脈)においては、用語「a」および「an」および「the」および同様の言及の使用は、本明細書中で他に示されていない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、および「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、他に記載されていない限り、無制限の用語(すなわち、「を含むが、限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の記載は、本明細書中に他に示されていない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する簡略な表記法であるのに過ぎず、そして各個別の値は、それらが個々に本明細書中に記載されているのと同様に、明細書中に組み込まれている。本明細書中に記載した全ての方法は、本明細書中に他に示されていない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書中に示される任意および全ての例、または例示の用語(例えば、「例えば」)の使用は、本発明を良好に説明するために過ぎず、他に請求されていない限り、本発明の範囲に限定を述べているわけではない。明細書中のどの用語も、本発明の実施に必須であるような任意の請求されていないエレメントを示していると解釈されるべきではない。
【0033】
本発明の好ましい実施態様は、本明細書中に記載されており、本発明の実施のために本発明者らに知られている最良の態様を含む。これらの好ましい実施態様の変形は、前出の記載を読むことによって当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形も適宜用いると考え、そして本発明者らは、本発明が、本明細書中に詳細に記載した以外にも実施され得ることを意図する。したがって、本発明は、適用される法によって許容されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の全ての改変および等価物を包含する。さらに、上記エレメントのそれらの全ての可能な変形での任意の組み合わせは、本明細書中で他に示されていない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カベルゴリンI型の調製方法であって、カベルゴリンとエチルベンゼンとを含む溶媒和物を形成する工程、および該溶媒和物からI型を得る工程を含む、方法。
【請求項2】
前記カベルゴリンI型が、乾燥により、該溶媒和物から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥が、900mbar以下の圧力下で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥が、50℃以上の温度で生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥が、不活性ガス雰囲気下で生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性ガスが、窒素ガスまたはアルゴンガスからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記不活性ガス雰囲気が、80%不活性ガスを含むガス混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガス雰囲気が、5%以下の酸素を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒和物が、カベルゴリンを溶媒に溶解することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、エチルベンゼンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、少なくとも75容量%のエチルベンゼンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒和物が、−5℃以下の温度に冷却される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
カベルゴリンI型の調製方法であって、カベルゴリンを、エチルベンゼンを含む第一の溶媒に溶解して溶液を形成する工程、および該溶液からI型を得る工程を含む、方法。
【請求項14】
前記溶液に第二の溶媒を添加する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第二の溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラブチルメチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第二の溶媒がヘプタンである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第二の溶媒がn−ヘプタンである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液を乾燥してカベルゴリンI型を得る工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥工程が、900mbar以下の圧力下で実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥工程が、50℃以上の温度で生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥工程が、不活性ガス雰囲気下で生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記不活性ガスが、窒素およびアルゴンからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記不活性ガス雰囲気が、80%不活性ガスを含むガス混合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記不活性ガス雰囲気が、5%以下の酸素を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
カベルゴリンI型の調製方法であって、
a)カベルゴリンを第一の溶媒に溶解して溶液を形成する工程;および
b)該溶液に第二の溶媒を添加してカベルゴリンI型を得る工程
を含む、方法。
【請求項26】
カベルゴリンI型の調製方法であって、
a)カベルゴリンを、エチルベンゼンを含む第一の溶媒に溶解して溶液を形成する工程;および
b)該溶液に、n−ヘプタンを含む第二の溶媒を添加してカベルゴリンI型を得る工程
を含む、方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法により得られる、カベルゴリンI型。
【請求項28】
請求項13に記載の方法により得られる、カベルゴリンI型。
【請求項29】
カベルゴリンおよびエチルベンゼンを含む、カベルゴリンの溶媒和物形態。
【請求項30】
n−ヘプタンをさらに含む、請求項29に記載の溶媒和物形態。

【公表番号】特表2007−535526(P2007−535526A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510117(P2007−510117)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001649
【国際公開番号】WO2005/105796
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(503429076)レゾリューション ケミカルズ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】