説明

カメラの可動ミラー衝撃吸収機構

【課題】簡単な構造で、衝撃吸収性能に優れかつ可動ミラーを確実に動作させることが可能な衝撃吸収機構を提供する。
【解決手段】可動ミラーが退避位置からファインダ導光位置に回動するときに押圧移動されて衝撃吸収を行う第1緩衝部材と、可動ミラーがファインダ導光位置から退避位置に回動するときに押圧移動されて衝撃吸収を行う第2緩衝部材の少なくとも一方に補助押圧部を設ける。補助押圧部は、第1緩衝部材と第2緩衝部材の一方が可動ミラーに当接して押圧移動される移動中に、該一方の緩衝部材に対して、付勢部材の付勢力で緩衝待機位置へ向けて復帰移動される他方の緩衝部材から、可動ミラーによる押圧移動方向への移動力を補助的に付与させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一眼レフカメラに設けられる可動ミラーの駆動装置に関し、特に可動ミラーの衝撃吸収機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラの内部には、撮影光路上に挿入されて被写体光をファインダ光学系へ反射させるファインダ導光位置(ダウン位置)と、撮影光路から退避して被写体光をシャッタ側へ通過させる退避位置(アップ位置)に昇降回動可能な可動ミラー(クイックリターンミラー)が設けられている。可動ミラーがファインダ導光位置と退避位置に回動するときの衝撃でバウンド(振動)すると、ファインダの観察像が安定せず観察性能に悪影響を及ぼす。また、可動ミラーを用いて測距用のセンサや測光用のセンサに被写体光を導く構造のカメラでは、可動ミラーがバウンドしている間は正確な測距や測光を行うことができず、連写性能が制限される。そのため、可動ミラーの回動時の衝撃を吸収してバウンドを抑制させる衝撃吸収機構が提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-131755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動ミラーの衝撃吸収機構は、アップ位置やダウン位置への回動中に可動ミラーが当接する緩衝部材を備えている。緩衝部材は可動ミラーによる押圧移動と反対方向へ移動付勢されており、この付勢力に抗して可動ミラーが緩衝部材を押圧移動することで衝撃吸収を行う。緩衝部材に作用する付勢力を強めれば可動ミラーの移動エネルギーの吸収効率は高くなるが、付勢力が強すぎると可動ミラーへの負荷が過大になり、可動ミラーのアップ位置やダウン位置に対応する位置まで緩衝部材を確実に移動させられなくなるおそれがある。換言すれば、緩衝部材が可動ミラーのアップ位置やダウン位置への到達に対する妨げになるおそれが生ずる。一方、緩衝部材に作用する付勢力が弱すぎると、十分な衝撃吸収性能が得られない。そこで、高い衝撃吸収性能を有しつつ、可動ミラーを確実に動作させることが可能な衝撃吸収機構が望まれている。これを解決するには、可動ミラーとは別に、ミラーアップ動作やミラーダウン動作の最終段階で緩衝部材を所定の位置まで移動させる独立した駆動機構を設けることが考えられるが、部品点数が増加して構成が複雑化し、コストアップやカメラの大型化を招いてしまうというデメリットがある。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、部品点数が少ない簡単な構造でありながら、衝撃吸収性能に優れかつ可動ミラーを確実に動作させることが可能で、連写性能向上に寄与するカメラの可動ミラー衝撃吸収機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による可動ミラー衝撃吸収機構は、撮影光路上に位置して被写体光を観察光学系に反射させるファインダ導光位置と、撮影光路から退避して被写体光を撮像用受光媒体側に通過させる退避位置との間で回動可能に支持された可動ミラーと、第1の付勢部材によって緩衝待機位置に保持され、可動ミラーが退避位置からファインダ導光位置に回動するとき、該可動ミラーに当接して第1の付勢部材の付勢力に抗して押圧移動されて可動ミラーに対する衝撃吸収を行う第1緩衝部材と、第2の付勢部材によって緩衝待機位置に保持され、可動ミラーがファインダ導光位置から退避位置に回動するとき、該可動ミラーに当接して第2の付勢部材の付勢力に抗して押圧移動されて可動ミラーに対する衝撃吸収を行う第2緩衝部材と、第1緩衝部材と第2緩衝部材の少なくとも一方に形成され、第1緩衝部材と第2緩衝部材の一方が可動ミラーに当接して押圧移動される移動中に、該一方の緩衝部材に対して、付勢部材の付勢力で緩衝待機位置へ向けて復帰移動される他方の緩衝部材から可動ミラーによる押圧移動方向への移動力を付与させる補助押圧部を有することを特徴としている。
【0007】
補助押圧部は、第1緩衝部材と第2緩衝部材のそれぞれに設けられた擦動接触面として構成することができる。具体的には、第1緩衝部材には、第2緩衝部材が可動ミラーに当接して押圧移動される移動の途中で該第2緩衝部材に対して第1の付勢部材の付勢力により当接し、該当接部分を擦動させながら第2緩衝部材に対して可動ミラーによる押圧移動方向の分力を与える第1の擦動接触面を形成する。第2緩衝部材には、第1緩衝部材が可動ミラーに当接して押圧移動される移動の途中で該第1緩衝部材に対して第2の付勢部材の付勢力により当接し、該当接部分を擦動させながら第1緩衝部材に対して可動ミラーによる押圧移動方向の分力を与える第2の擦動接触面を形成する。
【0008】
第1緩衝部材に、第1の付勢部材によって緩衝待機位置に保持されるときに第2緩衝部材の緩衝待機位置方向への移動を制限する位置に進出する第1の移動制限部を設け、この第1の移動制限部の外面の一部として第1の擦動接触面を形成するとよい。また、第2緩衝部材に、第2の付勢部材によって緩衝待機位置に保持されるときに第1緩衝部材の緩衝待機位置方向への移動を制限する位置に進出する第2の移動制限部を設け、この第2の移動制限部の外面の一部として第2の擦動接触面を形成するとよい。
【0009】
第1緩衝部材と第2緩衝部材はそれぞれ任意の態様で動作させることができるが、例えば次のように構成することが好ましい。第1緩衝部材は、可動ミラーの回動軸と略平行な軸を中心として回動可能な回動部材からなり、この第1緩衝部材の回動方向に対して傾斜する面として第1の擦動接触面が形成される。第2緩衝部材は、可動ミラーの回動軸と略直交する平面に沿って直進移動可能な直進移動部材からなり、この第2緩衝部材の直進移動方向に対して傾斜する面として第2の擦動接触面が形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可動ミラーがファインダ導光位置に回動するときの衝撃吸収部材である第1緩衝部材と、可動ミラーが退避位置に回動するときの衝撃吸収部材である第2緩衝部材という2つの緩衝部材を備えた可動ミラー衝撃吸収機構において、可動ミラーに当接して押圧移動される側の緩衝部材を、可動ミラーによる押圧状態が解除されて緩衝待機位置へ復帰移動する側の緩衝部材で補助的に押圧する関係としたため、独立した駆動機構を別途設けることなく緩衝部材を確実に移動させることが可能となり、部品点数が少ない簡単な構造で高い衝撃吸収性能が得られ、カメラの連写性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した一眼レフカメラの光学系の概略を示す図である。
【図2】ミラーダウン状態でのミラーボックスの前方斜視図である。
【図3】ミラーアップ状態でのミラーボックスの前方斜視図である。
【図4】ミラーダウン状態でのミラーボックスの後方斜視図である。
【図5】ミラーダウン状態でのミラーボックスの後方斜視図である。
【図6】ミラーアップ状態でのミラーボックスの後方斜視図である。
【図7】ダウン吸収レバーの緩衝用ダボにミラーシートの当接部を当接させた状態のミラー衝撃吸収機構の斜視図である。
【図8】アップ吸収レバーの緩衝用ダボにミラーシートの当接部を当接させた状態のミラー衝撃吸収機構の斜視図である。
【図9】押さえ板を外してミラー衝撃吸収機構を露出させた状態のミラーボックスの左側面図である。
【図10】ミラーダウン状態のミラー衝撃吸収機構の側面図である。
【図11】可動ミラーがダウン位置からアップ位置に回動する途中の状態のミラー衝撃吸収機構の側面図である。
【図12】可動ミラーがダウン位置からアップ位置に回動する途中の状態のミラー衝撃吸収機構の側面図である。
【図13】ミラーアップ状態のミラー衝撃吸収機構の側面図である。
【図14】可動ミラーがアップ位置からダウン位置に回動する途中の状態のミラー衝撃吸収機構の側面図である。
【図15】可動ミラーがアップ位置からダウン位置に回動する途中の状態のミラー衝撃吸収機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す一眼レフカメラ(以下、カメラ)10は、カメラボディ11の前面に交換式のレンズ鏡筒12を着脱させるレンズマウント13を有し、その内方にミラーボックス14が設けられている。
【0013】
ミラーボックス14内には可動ミラー(クイックリターンミラー)15が設けられる。可動ミラー15は、ミラーシート16上にメインミラー15aを固定的に支持し、ミラーシート16の背面側にサブミラー17を回動可能に支持した構造になっており、ミラーシート16の両側に突出する一対のミラーシートヒンジ16xがミラーボックス14の両側壁に軸支されている。可動ミラー15の後方にはフォーカルプレーンシャッタ(以下、シャッタ)18が設けられ、シャッタ18の後方にはイメージセンサ(撮像用受光媒体)19が設けられている。なお、本実施形態のカメラ10は、撮像用受光媒体にイメージセンサ19を用いるデジタルカメラであるが、撮像用受光媒体として銀塩フィルムを用いるカメラに対しても本発明は適用が可能である。
【0014】
可動ミラー15は、ミラーシートヒンジ16xを軸として、レンズ鏡筒12内の撮影レンズ12aからイメージセンサ19に至る撮影光路上に約45度の角度で斜設されるダウン位置(ファインダ導光位置:図1の実線、図2、図4、図5、図10)と、撮影光路から上方に退避したアップ位置(退避位置:図1の二点鎖線、図3、図6、図13)の間で往復回動される。図4及び図6に示すように、可動ミラー15を挟んで位置するミラーボックス14の両側壁のうち一方の内面からダウン位置決めダボ20が突出しており、このダウン位置決めダボ20に対してミラーシート16の一側部に設けたストッパ部16a(図7、図8)を当接させることで、可動ミラー15のダウン位置が定められる。ダウン位置決めダボ20は、ミラーボックス14に対する取付位置の微調整が可能である。また、ミラーボックス14内には、可動ミラー15をアップ位置に回動させたときミラーシート16の上面が当接可能な上方ストッパ21が設けられている。可動ミラー15の上方には、ペンタプリズムや接眼レンズなどにより構成されるファインダ光学系22が設けられている。
【0015】
レンズマウント13にレンズ鏡筒12を装着した状態でレンズ鏡筒12内の撮影レンズ12aを通してミラーボックス14内に入射する被写体光は、可動ミラー15がダウン位置にあるときには、可動ミラー15のメインミラー15aにより反射されてファインダ光学系22に入り、カメラボディ11後面側のファインダ窓22aを通して被写体像を観察することができる。この状態では、ファインダ光学系22を構成するペンタプリズムの後方に設けた測光ユニット23による測光が可能である。また、可動ミラー15のダウン位置では、サブミラー17はミラーシート16に対して斜め下方に向けて突出し、サブミラー17によって被写体光の一部がミラーボックス14の下方の測距ユニット24に導かれ、被写体距離を検出することができる。一方、可動ミラー15がアップ位置にあるときには、撮影レンズ12aを通してミラーボックス14内に入射する被写体光は可動ミラー15で反射されずにシャッタ18側に進み、シャッタ18を開くことでイメージセンサ19の受光面上に光を入射させることができる。可動ミラー15のアップ位置では、サブミラー17はミラーシート16の背面側に格納される。カメラボディ11の後面に設けたLCDモニタ25には、イメージセンサ19により得られる被写体の電子画像や、電子画像以外の各種の情報を表示することができる。
【0016】
図3及び図5に示すように、ミラーボックス14の一側部(前方から見て左側の側部)には、可動ミラー15の昇降回動を行わせるミラー駆動機構30が設けられている。ミラー駆動機構30は、モータ31と、モータ31の駆動力を伝達する減速ギヤ列32と、遊星ギヤ機構を介して減速ギヤ列32からの回転駆動力が伝達されるカムギヤ33と、カムギヤ33によって回動位置が制御されるミラー駆動レバー34を備えている。ミラー駆動レバー34は、ミラーシートヒンジ16xの軸線と略平行な軸34xを中心として往復回動可能にミラーボックス14に支持されており、ミラーシート16の側部に設けたミラーシートボス16bを保持している。このミラー駆動レバー34による保持部分がミラーシートボス16bを下方に押圧することで可動ミラー15をダウン位置に向けて回動させ、ミラーシートボス16bを上方に押圧することで可動ミラー15をアップ位置に向けて回動させる。ミラー駆動レバー34は、可動ミラー15をダウン位置へ押圧する方向へ回動付勢されており、カムギヤ33が特定の回転位置にあるとき、該カムギヤ33に形成したミラー制御カム(周面カム)によって、付勢力に抗してミラー駆動レバー34がミラーアップ方向へ押圧回動される。詳しくは、カムギヤ33は初期位置から一方向にのみ回転される一回転カムギヤであり、カムギヤ33が初期位置にあるときには、該カムギヤ33のミラー制御カムがミラー駆動レバー34を押圧せず、ミラー駆動レバー34に作用する付勢力によって可動ミラー15がダウン位置に保持されている。カムギヤ33が初期位置から途中まで回転されると、カムギヤ33のミラー制御カムがミラー駆動レバー34を押圧回動させ、ミラー駆動レバー34が可動ミラー15をアップ位置に回動させる。この途中位置からカムギヤ33が初期位置に戻るまでの間に、カムギヤ33のミラー制御カムがミラー駆動レバー34に対する押圧を解除して、可動ミラー15がダウン位置に復帰される。
【0017】
ミラーボックス14の一側部にはさらに、シャッタ18のチャージ動作を行わせるシャッタチャージレバー35が備えられている。カムギヤ33は、上述のミラー駆動カムに加えて、シャッタチャージレバー35の動作を制御するシャッタチャージカムを有し、初期位置から一回転することでシャッタチャージレバー35を往復回動させてシャッタチャージを行わせる。シャッタチャージ機構は本発明の特徴とは関係がないため、詳細な説明を省略する。
【0018】
ミラーボックス14の他側部(前方から見て右側の側部)には、可動ミラー15がダウン位置とアップ位置に回動するときの衝撃を吸収して可動ミラー15のバウンド(振動)を抑制させるミラー衝撃吸収機構40が備えられている。ミラー衝撃吸収機構40は、ダウン吸収レバー(第1緩衝部材)41、ダウン吸収ばね(第1の付勢部材)42、アップ吸収レバー(第2緩衝部材)43及びアップ吸収ばね(第2の付勢部材)44を備え、これらの各部材は、ミラーボックス14の側部に固定される押さえ板45(図4)によって脱落しないように保持されている。
【0019】
ダウン吸収レバー41は、ミラーボックス14に突設されミラーシートヒンジ16xと略平行な軸41xによって回動可能に支持されている。ダウン吸収レバー41は軸41xを中心とする略扇形をなし、扇の周縁部に近い位置にミラーボックス14の内方側に向けて突出する緩衝用ダボ41aを有する。ミラーボックス14には軸41xを中心とする円弧状の貫通孔14aが形成されていて、ダウン吸収レバー41の緩衝用ダボ41aは、貫通孔14aに挿通されてミラーボックス14の内部に突出している(図2、図3、図5及び図9参照)。緩衝用ダボ41aは、ミラーシート16の先端部近傍の側部に設けた緩衝当接部16cの移動軌跡上(ミラーシートヒンジ16xを中心とする可動ミラー15の回動軌跡上)に位置しており、緩衝当接部16cの下面側に当接可能となっている。
【0020】
また、扇形をなすダウン吸収レバー41の要付近の位置に、軸41xから離れる外径方向に突出する制御腕部(第1の移動制限部)41bが設けられている。図8に示すように、制御腕部41bの一側には回動規制面41cが形成され、回動規制面41cに隣接する位置に傾斜カム面(補助押圧部、第1の擦動接触面)41dが形成されている。回動規制面41cは概ね軸41xを中心とする半径方向に向く面であり、傾斜カム面41dはダウン吸収レバー41の回動方向に対して傾斜する面である。より詳しくは、傾斜カム面41dは、回動規制面41cとの境界部分から離れるにつれて徐々に軸41xからの距離を大きくする方向に傾斜する面である。傾斜カム面41dに続く制御腕部41bの先端には下降規制凸部41eが形成されている。
【0021】
ダウン吸収ばね42は、軸41xを囲むコイル部42aと、ミラーボックス14の側面に形成したばね掛け部14bに係合するばね腕部42bと、ダウン吸収レバー41に形成したばね掛け部41fに係合するばね腕部42cを有するトーションばねであり、ダウン吸収レバー41を図9ないし図15の時計方向に回動付勢する。このダウン吸収ばね42によるダウン吸収レバー41の付勢方向は、ミラーシート16の緩衝当接部16cに対して緩衝用ダボ41aを接近(当接)させる方向であり、当該付勢方向へのダウン吸収レバー41の回動端を定める回動規制突起14cがミラーボックス14の側面に突設されている。この回動規制突起14cに当接するダウン吸収レバー41の回動端を緩衝待機位置と呼ぶ。ダウン吸収レバー41は、この緩衝待機位置を一方の回動端として、ダウン吸収ばね42の付勢力に抗して回動規制突起14cから離れる方向に回動することができる。ダウン吸収レバー41は、図13や図14に示す緩衝待機位置を起点として所定の位置までは、ダウン位置方向へ回動する可動ミラー15(ミラーシート16)の緩衝当接部16cに当接して押圧されながら、ダウン吸収ばね42の付勢力に抗して回動される。この所定の位置とは、可動ミラー15のダウン位置に対応した位置であり、可動ミラー15がダウン位置まで達するとストッパ部16aがダウン位置決めダボ20に当接してそれ以上の回動が規制されるため、ダウン吸収レバー41に対してそれ以上は緩衝当接部16cからの押圧力が及ばなくなる。可動ミラー15による押圧移動力を受けるダウン吸収レバー41の当該回動範囲を緩衝移動域と呼ぶ。ダウン吸収レバー41はさらに、緩衝移動域よりも先のオーバー移動域まで回動可能である。図10は、ダウン吸収レバー41がオーバー移動域にある状態を示しており、可動ミラー15がダウン位置決めダボ20に当接してダウン位置よりも先への回動が規制されているのに対し、ダウン吸収レバー41は、緩衝用ダボ41aをミラーシート16の緩衝当接部16cから離間させていて、可動ミラー15との間の当接関係が解除されている。なお、ダウン吸収レバー41はオーバー移動域において、図10の位置よりもさらに反時計方向に回動することができる。
【0022】
アップ吸収レバー43は、ミラーボックス14の側面に突設した上下2つのガイドピン14dとガイドピン14eを挿通させるガイド孔43aを有し、ガイド孔43aでガイドピン14d、14eの案内を受けることによって、上下方向に直進移動可能に支持されている。このアップ吸収レバー43の直進移動方向は、ダウン吸収レバー41の回動軸41xの軸線と略直交する平面内に設定されている。換言すれば、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43は、互いに平行な平面に沿って回動及び移動が可能に支持されている。アップ吸収レバー43の上端部付近には、ミラーボックス14の内方側に向けて突出する緩衝用ダボ43bを有し、下端部付近にはばね掛け部43cが設けられている。ミラーボックス14には上下方向への長孔である貫通孔14fが形成されていて、アップ吸収レバー43の緩衝用ダボ43bは、貫通孔14fに挿通されてミラーボックス14の内部に突出している(図2、図3及び図9参照)。緩衝用ダボ43bは、ミラーシート16の緩衝当接部16cの移動軌跡上(ミラーシートヒンジ16xを中心とする可動ミラー15の回動軌跡上)に位置しており、緩衝当接部16cの上面側に当接可能となっている。
【0023】
アップ吸収レバー43の側部には側方腕部43dが突出している。側方腕部43dは、アップ吸収レバー43の移動方向である上下方向に対して略直交する方向に突出され、その先端部付近に下方へ曲げられた鈎状の先端肉厚部(第2の移動制限部)43eが形成されている。先端肉厚部43eには、回動規制面43fと傾斜カム面(補助押圧部、第2の擦動接触面)43gと下降移動規制面43hが形成されている(図10ないし図15参照)。回動規制面43fと傾斜カム面43gは、ガイド孔43aを有するアップ吸収レバー43の本体部側を向く連続した面であり、回動規制面43fはアップ吸収レバー43の移動方向と略平行な平面として形成され、傾斜カム面43gはアップ吸収レバー43の直進移動方向に対して傾斜する面として形成されている。より詳しくは、傾斜カム面43gは、回動規制面43fとの境界部分から離れて下方に進むにつれて徐々にアップ吸収レバー43の本体部から離間する方向(側方腕部43dの先端に接近する方向)に傾斜する面である。下降移動規制面43hは、傾斜カム面43gに続けて形成される下方を向く面であり、アップ吸収レバー43の移動方向と略直交する平面となっている。回動規制面43fと傾斜カム面43gと下降移動規制面43hはダウン吸収レバー41の制御腕部41bと同一平面内に位置しており、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43の相対位置関係に応じて制御腕部41bと先端肉厚部43eを互いに当接させることが可能である。
【0024】
アップ吸収ばね44は引張ばねからなり、その一端部がアップ吸収レバー43に形成したばね掛け部43cに掛けられ、他端部がミラーボックス14の側面に形成したばね掛け部14gに掛けられ、アップ吸収レバー43を下方に向けて移動付勢している。このアップ吸収ばね44によるアップ吸収レバー43の付勢方向は、ミラーシート16の緩衝当接部16cに対して緩衝用ダボ43bを接近(当接)させる方向であり、アップ吸収レバー43は、ガイドピン14eに対してガイド孔43aの上端部を当接させることで、アップ吸収ばね44の付勢方向への移動が規制される。このアップ吸収ばね44の付勢方向(下方)へのアップ吸収レバー43の移動端を緩衝待機位置と呼ぶ。アップ吸収レバー43の緩衝待機位置では、ダウン吸収レバー41のうち軸41xを中心とする制御腕部41bの回動軌跡上に側方腕部43dの先端肉厚部43eが進出し、回動規制面41cに対して回動規制面43fを当接させることで、ダウン吸収ばね42の付勢方向へのダウン吸収レバー41の回動を規制する(図10、図11)。より詳しくは、ダウン吸収レバー41の回動規制面41cとアップ吸収レバー43の回動規制面43fが対向して当接可能となるのは、アップ吸収レバー43が緩衝待機位置にあり、かつダウン吸収レバー41が上述のオーバー移動域にあるという関係を満たした状態である。よって、アップ吸収レバー43の回動規制面43fに対する回動規制面41cの当接で回動規制されるとき、ダウン吸収レバー41は、緩衝用ダボ41aをミラーシート16の緩衝当接部16cから離間させるオーバー移動域に保持される。
【0025】
一方、側方腕部43dの先端肉厚部43eが制御腕部41bの回動軌跡上から外れた状態(図13)では、ダウン吸収レバー41に対するオーバー移動域での保持が解除され、ダウン吸収レバー41はダウン吸収ばね42による付勢方向(緩衝待機位置)への回動が可能となる。ダウン吸収レバー41がこの緩衝待機位置にあるときには、制御腕部41bが側方腕部43dの先端肉厚部43eの移動軌跡上に進出し、下降規制凸部41eを下降移動規制面43hに当接させることで、アップ吸収ばね44の付勢方向(緩衝待機位置)へのアップ吸収レバー43の移動を規制する(図14)。この下降規制凸部41eと下降移動規制面43hの当接状態では、ダウン吸収ばね42の付勢方向と反対方向(図14の反時計方向)へのダウン吸収レバー41の回動は可能である。
【0026】
図10以下を参照してミラー衝撃吸収機構40の動作を説明する。図10は可動ミラー15がダウン位置にある状態を示している。このとき、ミラー駆動機構30を構成するミラー駆動レバー34によってミラーシートボス16bが下方に押圧され、ミラーシート16のストッパ部16aがダウン位置決めダボ20に当接することで可動ミラー15がダウン位置に保持されている。アップ吸収レバー43は、アップ吸収ばね44の付勢力によって緩衝待機位置に保持され、制御腕部41bの回動規制面41cに対して側方腕部43dの回動規制面43fを当接させることで、ダウン吸収ばね42の付勢方向(時計方向)へのダウン吸収レバー41の回動を規制している。ダウン吸収レバー41は、緩衝用ダボ41aをミラーシート16の緩衝当接部16cから離間させたオーバー移動域にあって、ダウン吸収レバー41は、ミラーシート16の位置決めに関与せず、ダウン位置決めダボ20によるミラーシート16の位置決めを妨げない。より詳しくは、ミラーシート16を側面視している図10では、その一方の側部に設けたストッパ部16aと、他方の側部に設けた緩衝当接部16cが同じ位置にあるものとして示している。そして、アップ吸収レバー43によって回動規制されたダウン吸収レバー41は、ダウン位置決めダボ20よりも、ミラーダウン方向(図10の反時計方向)へ進んだ位置に緩衝用ダボ41aを位置させている。このダウン位置決めダボ20と緩衝用ダボ41aの相対位置関係により、ダウン位置決めダボ20がストッパ部16aに当接し、緩衝用ダボ41aが緩衝当接部16cに当接しない状態(オーバー移動域)が得られる。
【0027】
ミラー駆動機構30のミラー駆動レバー34により可動ミラー15がダウン位置からアップ位置へ向けて回動されると、やがて、図11に示すように、ミラーシート16の緩衝当接部16cの上面がアップ吸収レバー43の緩衝用ダボ43bに対して当接する。図11の時点では可動ミラー15はアップ位置に達しておらず、図13に示すアップ位置まで可動ミラー15が回動する間に、ミラーシート16の緩衝当接部16cが緩衝用ダボ43bを押し上げて、アップ吸収ばね44の付勢力に抗してアップ吸収レバー43を緩衝待機位置から上方に押圧移動させる。つまり、可動ミラー15のミラーアップ動作においては、図11から図13までがアップ吸収レバー43による衝撃吸収効果の得られる範囲である。
【0028】
アップ吸収レバー43が緩衝待機位置から上方に押圧移動されると、図12に示すように、側方腕部43dの回動規制面43fがダウン吸収レバー41の制御腕部41bとの対向位置から上方に退避する。回動規制面43fに続いて形成された傾斜カム面43gは、下方に進むにつれて制御腕部41bから離れる方向に傾斜する面なので、回動規制面43fによる回動規制が解除されたダウン吸収レバー41は、ダウン吸収ばね42の付勢力によって、傾斜カム面43gに対して制御腕部41bを擦動させながら時計方向へ僅かに回動する。すると、図12のように、ダウン吸収レバー41の傾斜カム面41dがアップ吸収レバー43の先端肉厚部43e(傾斜カム面43gと下降移動規制面43hの境界部)に当接した状態になる。この時点で可動ミラー15はアップ位置に達していない。
【0029】
図12の状態になると、アップ吸収レバー43に対して、ミラーシート16の緩衝当接部16cによる押し上げ力と共に、ダウン吸収ばね42の付勢力で緩衝待機位置へ回動するダウン吸収レバー41の制御腕部41bによる押し上げ力も作用するようになる。具体的には、ダウン吸収レバー41がダウン吸収ばね42の付勢力によって図12の時計方向に回動すると、先端肉厚部43eに対して傾斜カム面41dを擦動させながら、傾斜カム面41dの傾斜形状に応じてアップ吸収レバー43を上方へ押し上げようとする分力が生ずる。図11に示す緩衝当接部16cと緩衝用ダボ43bの当接開始から図12の状態になるまで、アップ吸収レバー43に対するアップ吸収ばね44の移動抵抗は徐々に大きくなっている。ここでダウン吸収レバー41がアップ吸収レバー43を補助的に上方へ押圧することで、可動ミラー15に対するアップ吸収レバー43の負荷が過大にならず、可動ミラー15のアップ位置に対応する上昇位置までアップ吸収レバー43を確実に移動させることができる。つまり、可動ミラー15のアップ位置への到達をアップ吸収レバー43が妨げることがない。なお、傾斜カム面41dを用いてダウン吸収レバー41がアップ吸収レバー43を押圧している間は、アップ吸収レバー43に対し、ガイド孔43aとガイドピン14d、14eの案内による直進移動方向と交差する方向への押圧分力も作用するため、ガイド孔43aとガイドピン14d、14e間のバックラッシュが吸収されて、アップ吸収レバー43がガタつくことなく円滑に移動できるという効果も得られる。
【0030】
やがて、側方腕部43dの全体が制御腕部41bの回動軌跡上から上方に退避するまでアップ吸収レバー43が上方に移動されると、ダウン吸収レバー41に対する回動の制限が完全に解除され、ダウン吸収レバー41はダウン吸収ばね42の付勢力によって、回動規制突起14cに当接する緩衝待機位置まで回動される(図13)。ダウン吸収レバー41が緩衝待機位置にあるとき、緩衝用ダボ41aは、ダウン位置決めダボ20よりも上方、すなわち可動ミラー15のミラーアップ方向(図13の時計方向)へ進んだ位置(可動ミラー15がダウン位置へ回動する際には、ミラーシート16のストッパ部16aとダウン位置決めダボ20の当接よりも先に、ミラーシート16の緩衝当接部16cと緩衝用ダボ41aの当接が生じる位置)にある。
【0031】
図13に示す可動ミラー15のアップ位置では、ミラーシート16の上面が上方ストッパ21に当接して、それ以上の上方への回動が規制される(図1)。なお、アップ吸収レバー43は、ガイドピン14dにガイド孔43aの下端部が当接する位置まで上方に移動可能であるが、アップ吸収レバー43がこの上方移動端まで達するよりも前に可動ミラー15が上方ストッパ21に当接するようになっている。すなわち、ダウン吸収レバー41と同様にアップ吸収レバー43も、可動ミラー15(ミラーシート16)の緩衝当接部16cによって緩衝用ダボ43bが押圧される緩衝移動域の先に、上方ストッパ21によりアップ位置に停止された状態の可動ミラー15の緩衝当接部16cから緩衝用ダボ43bを離間させることが可能なオーバー移動域を有している。
【0032】
図13に示すように、ダウン吸収レバー41が緩衝待機位置まで回動されると、制御腕部41bの下降規制凸部41eがアップ吸収レバー43の下降移動規制面43hの直下に近接して位置する。図13は、アップ位置まで回動された可動ミラー15によってアップ吸収レバー43が上方に押し上げられた状態を示しており、下降規制凸部41eと下降移動規制面43hの間にわずかな隙間がある。この状態からアップ吸収レバー43が下方へ移動しようとすると、下降移動規制面43hが下降規制凸部41eに当接し(図14参照)、アップ吸収レバー43の下方への移動が規制される。
【0033】
以上のように、可動ミラー15がダウン位置からアップ位置に回動するとき、アップ吸収レバー43の緩衝用ダボ43bにミラーシート16の緩衝当接部16cが当接することで、可動ミラー15に対してアップ吸収ばね44の負荷が作用して衝撃が吸収される。そして、可動ミラー15がアップ位置まで達してからのアップ吸収レバー43の可動範囲(下方への移動量)が、ダウン吸収レバー41の制御腕部41b(下降規制凸部41e)とアップ吸収レバー43の側方腕部43dの先端肉厚部43e(下降移動規制面43h)の当接関係によって極めて小さく制限されている。これにより、可動ミラー15がアップ位置に回動したときのアップ吸収レバー43の反発移動が抑えられ、可動ミラー15におけるバウンド(振動)の発生時間を短くし、バウンドの発生回数を少なくすることができる。つまり、可動ミラー15に対する衝撃吸収性能が高くなる。加えて、可動ミラー15がアップ位置に達する直前で、緩衝待機位置へ向けて回動するダウン吸収レバー41の傾斜カム面41dによってアップ吸収レバー43を補助的に上方へ押圧することによって、アップ吸収レバー43を確実に可動ミラー15のアップ位置に対応した位置まで移動させることができる。
【0034】
以上のミラーアップ動作とは逆に、ミラー駆動機構30のミラー駆動レバー34により可動ミラー15が図13のアップ位置から回動され、ダウン位置に近付くと、ミラーシート16のストッパ部16aがダウン位置決めダボ20に当接するよりも前に、ミラーシート16の緩衝当接部16cがダウン吸収レバー41の緩衝用ダボ41aに当接する(図14)。この時点で、ダウン吸収レバー41はダウン吸収ばね42の付勢力によって緩衝待機位置に保持されており、アップ吸収レバー43は下降移動規制面43hと下降規制凸部41eの当接によって下方への移動が制限されている。
【0035】
図14の位置から図15に示すダウン位置まで可動ミラー15が回動する間に、ミラーシート16の緩衝当接部16cが緩衝用ダボ41aを押し下げて、ダウン吸収ばね42の付勢力に抗してダウン吸収レバー41を図14の緩衝待機位置から反時計方向に回動させる。そして、ダウン吸収レバー41が緩衝待機位置から始まる緩衝移動域を回動している間、可動ミラー15の回動に対してダウン吸収ばね42の負荷が作用し、可動ミラー15は、ダウン吸収レバー41及びダウン吸収ばね42によって衝撃吸収されながらダウン位置へ回動する。その結果、アップ位置からダウン位置に回動するときの可動ミラー15のバウンド(振動)の発生が軽減される(バウンドの発生時間が短くなり、バウンドの回数が少なくなる)。
【0036】
可動ミラー15がストッパ部16aをダウン位置決めダボ20に当接させるダウン位置に達した瞬間を図15に示している。可動ミラー15のミラーダウン動作においては、図14から図15までがダウン吸収レバー41による衝撃吸収効果の得られる範囲(緩衝移動域)である。ダウン吸収レバー41は、図15の位置からさらに反時計方向に進んだオーバー移動域まで慣性で回動される。図15の状態では、ダウン吸収レバー41の下降規制凸部41eが側方腕部43dの下降移動規制面43hの下方位置から既に退避しており、下方への移動規制が解除されたアップ吸収レバー43が、アップ吸収ばね44の付勢力によって緩衝待機位置へ向けて移動され、傾斜カム面43gを制御腕部41b(回動規制面41cと傾斜カム面41dの境界部)に当接させている。そしてダウン吸収レバー41に対して、慣性による移動力と共に、アップ吸収ばね44の付勢力で緩衝待機位置へ移動するアップ吸収レバー43の側方腕部43d(先端肉厚部43e)による押し下げ力も作用するようになる。具体的には、アップ吸収レバー43がアップ吸収ばね44の付勢力によって図15の下方に移動すると、制御腕部41bに対して傾斜カム面43gを擦動させながら、傾斜カム面43gの傾斜形状に応じてダウン吸収レバー41を反時計方向に回動させようとする分力が生ずる。図14に示す緩衝当接部16cと緩衝用ダボ41aの当接開始から図15の状態になるまで、ダウン吸収レバー41に対するダウン吸収ばね42の移動抵抗は徐々に大きくなっているが、アップ吸収レバー43がダウン吸収レバー41を補助的に押圧することで、可動ミラー15のダウン位置に対応する位置までダウン吸収レバー41を確実に回動させることができる。つまり、可動ミラー15のダウン位置への到達をダウン吸収レバー41が妨げることがない。
【0037】
ダウン吸収レバー41がオーバー移動域まで回動すると、図10に示すように、制御腕部41bの全体がアップ吸収レバー43の先端肉厚部43eの上下方向の移動軌跡上から退避し、制御腕部41bによる下方への移動規制が解除されたアップ吸収レバー43が、アップ吸収ばね44の付勢力によって、ガイドピン14eに対してガイド孔43aの上端部を当接させる緩衝待機位置まで移動される。そしてダウン吸収レバー41は、ダウン吸収ばね42の付勢力によって、回動規制面41cをアップ吸収レバー43の回動規制面43fに当接させ、緩衝用ダボ41aをミラーシート16の緩衝当接部16cから離間させたオーバー移動域に保持される。つまり、ダウン吸収レバー41は、可動ミラー15がダウン位置へ向けて回動するときには、緩衝当接部16cに緩衝用ダボ41aを当接させている緩衝移動域で緩衝部材として機能し、可動ミラー15がダウン位置に達した状態では、アップ吸収レバー43によってミラーシート16に対する非当接位置(オーバー移動域)に保持され、ダウン位置決めダボ20による可動ミラー15の位置決めを妨げない。
【0038】
以上のように、本実施形態のカメラ10では、可動ミラー15がダウン位置とアップ位置の間で回動するときに、ミラー衝撃吸収機構40を構成するダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43をミラーシート16に当接させて可動ミラー15のバウンドを抑制する。これにより、ファインダ光学系22を介して被写体を観察するときの像振れの発生や、測光ユニット23や測距ユニット24を用いての演算処理の遅滞を防ぐことができ、カメラ10におけるファインダの観察性能や連写性能の向上を図ることができる。そしてミラー衝撃吸収機構40では、アップ吸収レバー43に対してミラーアップ状態での可動範囲を制限する手段をダウン吸収レバー41が兼ねており、ダウン吸収レバー41に対してミラーダウン状態での可動範囲を制限する手段をダウン吸収レバー41が兼ねているため、ダウン吸収レバー41やアップ吸収レバー43の可動範囲の制限を行う部材を別途設けずに済み、部品点数が少なくシンプルな構造で優れた衝撃吸収性能を得ることができる。
【0039】
加えて、可動ミラー15がアップ位置に回動するときには、衝撃吸収を行うアップ吸収レバー43を、ダウン吸収レバー41で補助的にミラーアップ状態対応の位置(図13)まで押圧移動させ、可動ミラー15がダウン位置に回動するときには、衝撃吸収を行うダウン吸収レバー41を、アップ吸収レバー43で補助的にミラーダウン状態対応の位置(図10)まで押圧移動させる。これにより、可動ミラー15の駆動力だけに依存せずに、ダウン吸収レバー41やアップ吸収レバー43を確実に衝撃吸収後の位置まで移動させることができる。この構成によると、ダウン吸収ばね42やアップ吸収ばね44の付勢力を強めに設定した場合でもダウン位置やアップ位置への可動ミラー15の回動が妨げられないため、ダウン吸収レバー41やアップ吸収レバー43による衝撃吸収性能の設定自由度が向上する。そして、これらの補助的な押圧移動をダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43が相互に行う関係としたため、押圧移動させるための機構を別途設ける必要がなく、部品点数が増加しない。
【0040】
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示実施形態のミラー衝撃吸収機構40では、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43の一方と他方に傾斜カム面41d、43gを設け、この2つの傾斜カム面41d、43gを用いて、ミラーアップ時とミラーダウン時のそれぞれでダウン吸収レバー41やアップ吸収レバー43の補助的な押圧移動を行わせるように構成している。これと異なり、傾斜カム面41d、43gのいずれか一方のみを設け、ミラーアップ時のアップ吸収レバー43の移動とミラーダウン時のダウン吸収レバー41の移動のいずれか一方だけがアシストされるように構成することも可能である。つまり本発明は、ミラーダウン時に衝撃吸収を行う第1緩衝部材(ダウン吸収レバー41)と、ミラーアップ時に衝撃吸収を行う第2緩衝部材(アップ吸収レバー43)の2つの緩衝部材のうち、少なくとも一方を他方が補助的に押圧移動させるものであれば成立する。
【0041】
また、図示実施形態ではダウン吸収レバー41が軸41xを回動中心とする回動部材であり、アップ吸収レバー43が直進移動部材であるが、ミラーアップ時とミラーダウン時に作用するそれぞれの緩衝部材の移動態様(移動方向)は、これと異なる組み合わせであってもよい。
【0042】
また、図示実施形態ではダウン吸収レバー41を付勢するダウン吸収ばね42がトーションばねであり、アップ吸収レバー43を付勢するアップ吸収ばね44が引張ばねであるが、付勢部材の態様はこれに限定されない。例えばアップ吸収ばね44をトーションばねで緩衝待機位置へ移動付勢したり、ダウン吸収レバー41を引張ばねで緩衝待機位置へ移動付勢したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 一眼レフカメラ
11 カメラボディ
12 レンズ鏡筒
13 レンズマウント
14 ミラーボックス
14a 貫通孔
14b ばね掛け部
14c 回動規制突起
14d ガイドピン
14e ガイドピン
14f 貫通孔
14g ばね掛け部
15 可動ミラー(クイックリターンミラー)
15a メインミラー
16 ミラーシート
16a ストッパ部
16b ミラーシートボス
16c 緩衝当接部
16x ミラーシートヒンジ(可動ミラーの回動軸)
17 サブミラー
18 フォーカルプレーンシャッタ
19 イメージセンサ(撮像用受光媒体)
20 ダウン位置決めダボ
21 上方ストッパ
22 ファインダ光学系
22a ファインダ窓
23 測光ユニット
24 測距ユニット
25 LCDモニタ
30 ミラー駆動機構
31 モータ
32 減速ギヤ列
33 カムギヤ
34 ミラー駆動レバー
34x ミラー駆動レバーの軸
35 シャッタチャージレバー
40 ミラー衝撃吸収機構
41 ダウン吸収レバー(第1緩衝部材)
41a 緩衝用ダボ
41b 制御腕部(第1の移動制限部)
41c 回動規制面
41d 傾斜カム面(補助押圧部、第1の擦動接触面)
41e 下降規制凸部
41f ばね掛け部
41x ダウン吸収レバーの軸
42 ダウン吸収ばね(第1の付勢部材)
42a コイル部
42b 42c ばね腕部
43 アップ吸収レバー(第2緩衝部材)
43a ガイド孔
43b 緩衝用ダボ
43c ばね掛け部
43d 側方腕部
43e 先端肉厚部(第2の移動制限部)
43f 回動規制面
43g 傾斜カム面(補助押圧部、第2の擦動接触面)
43h 下降移動規制面
44 アップ吸収ばね(第2の付勢部材)
45 押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路上に位置して被写体光を観察光学系に反射させるファインダ導光位置と、撮影光路から退避して被写体光を撮像用受光媒体側に通過させる退避位置との間で回動可能に支持された可動ミラー;
第1の付勢部材によって緩衝待機位置に保持され、上記可動ミラーが退避位置からファインダ導光位置に回動するとき、該可動ミラーに当接して上記第1の付勢部材の付勢力に抗して押圧移動され、可動ミラーに対する衝撃吸収を行う第1緩衝部材;
第2の付勢部材によって緩衝待機位置に保持され、上記可動ミラーがファインダ導光位置から退避位置に回動するとき、該可動ミラーに当接して上記第2の付勢部材の付勢力に抗して押圧移動され、可動ミラーに対する衝撃吸収を行う第2緩衝部材;及び
上記第1緩衝部材と第2緩衝部材の少なくとも一方に形成され、第1緩衝部材と第2緩衝部材の一方が上記可動ミラーに当接して押圧移動される移動中に、該一方の緩衝部材に対して、上記付勢部材の付勢力で上記緩衝待機位置へ向けて復帰移動される他方の緩衝部材から上記可動ミラーによる押圧移動方向への移動力を付与させる補助押圧部;
を有することを特徴とするカメラの可動ミラー衝撃吸収機構。
【請求項2】
請求項1記載のカメラの可動ミラー衝撃吸収機構において、上記補助押圧部は、
上記第1緩衝部材に設けられ、上記第2緩衝部材が上記可動ミラーに当接して押圧移動される移動の途中で該第2緩衝部材に対して上記第1の付勢部材の付勢力により当接し、該当接部分を擦動させながら第2緩衝部材に対して上記可動ミラーによる押圧移動方向の分力を与える第1の擦動接触面;及び
上記第2緩衝部材に設けられ、上記第1緩衝部材が上記可動ミラーに当接して押圧移動される移動の途中で該第1緩衝部材に対して上記第2の付勢部材の付勢力により当接し、該当接部分を擦動させながら第1緩衝部材に対して上記可動ミラーによる押圧移動方向の分力を与える第2の擦動接触面;
を有するカメラの可動ミラー衝撃吸収機構。
【請求項3】
請求項2記載のカメラの可動ミラー衝撃吸収機構において、
上記第1緩衝部材は、上記第1の付勢部材によって上記緩衝待機位置に保持されるときに上記第2緩衝部材の緩衝待機位置方向への移動を制限する位置に進出する第1の移動制限部を有し、上記第1の擦動接触面は該第1の移動制限部の外面の一部として形成され、
上記第2緩衝部材は、上記第2の付勢部材によって上記緩衝待機位置に保持されるときに上記第1緩衝部材の緩衝待機位置方向への移動を制限する位置に進出する第2の移動制限部を有し、上記第2の擦動接触面は該第2の移動制限部の外面の一部として形成されているカメラの可動ミラー衝撃吸収機構。
【請求項4】
請求項2または3記載のカメラの可動ミラー衝撃吸収機構において、上記第1緩衝部材は、上記可動ミラーの回動軸と略平行な軸を中心として回動可能であり、上記第1の擦動接触面は上記第1緩衝部材の回動方向に対して傾斜する面であり、
上記第2緩衝部材は、上記可動ミラーの回動軸と略直交する平面に沿って直進移動可能であり、上記第2の擦動接触面は上記第2緩衝部材の直進移動方向に対して傾斜する面であるカメラの可動ミラー衝撃吸収機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−54084(P2013−54084A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190289(P2011−190289)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】