説明

カメラモジュール

【課題】鏡筒を弾支するヒンジスプリングを、金属に比べて容易且つ精密に製作することが可能な弾性樹脂射出物を用いて製作することにより、装置の製造コスト、製造工程および工程時間を減少させることが可能なカメラモジュールの提供。
【解決手段】外部事物のイメージを集めるためのレンズが内蔵された円筒型鏡筒110と、レンズの光軸方向に鏡筒110が上下運動するように鏡筒110を収容するハウジング120と、ハウジング120に設置され、鏡筒110を光軸方向に線形運動させるためのオートフォーカスアクチュエータと、弾性を持つ樹脂で射出成形され、鏡筒110の線形運動を案内するように鏡筒110の上部を支持するための環状のヒンジスプリング140とを含んでなる、カメラモジュール100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル機器用カメラモジュールに係り、より具体的には、イメージのフォーカシングのために上下に駆動される鏡筒(lens barrel)をより安定的に支持することができ、軽量の弾性樹脂で成形されたヒンジスプリングを備えたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話やノートブックなどのモバイル機器は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの撮像素子が実装されたカメラモジュールを備えている。この種のカメラモジュールは、高画素および高機能化に伴い、一般な高仕様のデジタルカメラと類似した性能を備えている。このようなモバイル機器用カメラモジュールは、イメージの焦点を合わせるために、VCM(Voice Coil Motor)型または圧電素子(piezo)型のオートフォーカスアクチュエータを利用している。
【0003】
VCM型アクチュエータは、永久磁石の磁場と、コイルに流れる電流による電場との相互作用から発生する電磁気力によってレンズ付き鏡筒を上下に駆動することにより、オートフォーカシング機能を行う。これに対し、圧電素子型アクチュエータは、電流印加の際に所定の振幅で振動する圧電素子によって鏡筒を上下に駆動することにより、オートフォーカシング機能を行う。このようなオートフォーカスアクチュエータを備えたカメラモジュールの一例が特許文献1に開示されており、従来の技術のレンズアクチュエータは図6および図7に示されている。
【0004】
図6および図7に示すように、特許文献1に開示されている従来の技術のレンズアクチュエータにおいて、レンズを内蔵したキャリア11が光軸方向に駆動できるように、キャリア11は2つの板バネ14、15によって上/下部が支持される構成を取っている。
【0005】
すなわち、従来の技術のレンズアクチュエータにおいて、キャリア11が磁石とコイルによって光軸方向に上下運動することができるように、キャリア11が鋼鉄または銅合金などの薄板金属材の上部/下部板バネ14、15によって弾支されることにより、ケース13内の所定の位置に保持されている。
【0006】
ところが、前述した構成を持つ従来の技術のレンズアクチュエータは、キャリアが上下運動し得るように、金属材質の薄型板バネを製作しなければならず、図7に示したような形状の板バネを製作することが非常に難しいという問題点があった。すなわち、プレス加工などによって金属材質の板バネを加工製作する場合、キャリアの運動時に変形する部位を精密に加工することが難しく、これにより各板バネの弾性が変化するおそれがあった。
【0007】
また、従来の技術のレンズアクチュエータは、板バネを金属材質で製作するため、製造コスト、製造工程および工程時間が増大するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公開第2008−0039239号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、鏡筒を弾支するヒンジスプリングを、金属に比べて容易且つ精密に製作することが可能な弾性樹脂射出物を用いて製作することにより、装置の製造コスト、製造工程および工程時間を減少させることが可能なカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、外部事物のイメージを集めるためのレンズが内蔵された円筒型鏡筒と、前記レンズの光軸方向に前記鏡筒が上下運動するように前記鏡筒を収容するハウジングと、前記ハウジングに設置され、前記鏡筒を前記光軸方向に線形運動させるためのオートフォーカスアクチュエータと、弾性を持つ樹脂で射出成形され、前記鏡筒の線形運動を案内するように前記鏡筒の上部を支持するための環状のヒンジスプリングとを含んでなる、カメラモジュールを提供する。
【0011】
ここで、前記ヒンジスプリングは、前記鏡筒の上下運動の際に弾性変形する部位が薄い厚さを持つように形成されることを特徴とする。
【0012】
また、前記ヒンジスプリングは、環状に配置される多数の縁部と、前記ヒンジスプリングを前記鏡筒に結合させるための2つの鏡筒結合部と、前記ヒンジスプリングを前記ハウジングに結合させるための2つのハウジング結合部と、前記各縁部を前記鏡筒結合部または前記ハウジング結合部に連結し、前記縁部より薄い厚さをもって前記鏡筒の上下運動の際に変形する弾性変形部とを含んでなることを特徴とする。
【0013】
また、前記鏡筒結合部は、前記鏡筒に固定されるように挿嵌される突起が一体に設けられることを特徴とする。
【0014】
また、前記鏡筒は、前記ハウジングの突起が挿嵌される溝を設けるように、外壁に2つの結合突起が互に離隔して突設されることを特徴とする。
【0015】
また、前記鏡筒の上下運動の際に、前記鏡筒に結合した前記鏡筒結合部は前記光軸方向に対して平行に上下運動し、前記鏡筒結合部を前記縁部に連結する前記弾性変形部は撓みまたは捩れ変形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒンジスプリングを、所定の弾性を持つ樹脂などの材料で一挙に射出成形して製作することにより、従来の板バネに比べてヒンジスプリングの製作時間および工程数を減らすことができる。また、従来の金属材質の板バネに代えて軽量の樹脂材質のヒンジスプリングを使用することにより、カメラモジュールの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な実施例に係るカメラモジュールの概略断面図である。
【図2】図1の鏡筒の概略斜視図である。
【図3】図1の鏡筒の概略底面斜視図である。
【図4】図1のヒンジスプリングの概略斜視図である。
【図5】図1のヒンジスプリングの概略斜視図である。
【図6】従来の技術のカメラモジュールの概略断面図である。
【図7】図6のカメラモジュールの概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例に係るカメラモジュールについて詳細に説明する。
【0019】
図1〜図5に示すように、本発明の好適な実施例に係るカメラモジュール100は、鏡筒110、ハウジング120、回路基板130、ヒンジスプリング140およびフィルムサスペンション150を含んでなる。
【0020】
鏡筒110は、内蔵された多数のレンズによって外部事物のイメージをカメラモジュール100内のイメージセンサ131へ伝達するためのもので、その内部に多数のレンズが順次積層されており、多数回巻線された多数のコイル111が外周面に備えられる。
【0021】
コイル111は、ハウジング120に結合した永久磁石121と向かい合うように鏡筒110に設置される。コイル111に流れる電流による電場と永久磁石121の磁場との間に発生する電磁気力によって鏡筒110を上下に線形運動させる。
【0022】
また、鏡筒110は、外周壁の両側にはヒンジスプリング140が結合する一対の結合突起112が対向して突設される。一対の結合突起112は、ヒンジスプリング140が挿嵌されるように直六面体状に突出する。図2に示すように、一対の結合突起112は鏡筒110の対向する外周壁に備えられる。
【0023】
ハウジング120は、鏡筒110を収容するためのもので、内壁には鏡筒110のコイル111に対向するように永久磁石121が固着される。また、ハウジング120の中央部位には赤外線をフィルタリングするためのIRフィルター122が設置される。また、ハウジング120の内周壁にはヒンジスプリング140が固着される。
【0024】
回路基板130は、その上面に電気的に連結されたイメージセンサ131から発生する電気信号をカメラ付き携帯電話、PDAまたはノートブックコンピュータなどのモバイル機器へ伝達するためのもので、上面には所定のプリント基板の製作工程によって形成された回路パターンが備えられる。
【0025】
ここで、回路基板130の中央部位にイメージセンサ131が設置されるが、イメージセンサ131は、回路基板130の回路パターンにワイヤボンディングによって電気的に連結される。
【0026】
ヒンジスプリング140は、鏡筒110が光軸方向に線形運動するように鏡筒110を支持するためのものである。本発明の好適な実施例に係るヒンジスプリング140は、全体的に環状をし、所定の弾性を持つように樹脂などによって射出成形される。
【0027】
図4に示すように、ヒンジスプリング140は、縁部141と、これらの縁部141を連結する弾性変形部142と、ヒンジスプリング140を鏡筒110に結合させる鏡筒結合部143と、ヒンジスプリング140をハウジング120に結合させるハウジング結合部144とから構成される。
【0028】
縁部141は、全体的に環状を持つように形成される。各縁部141を鏡筒結合部143またはハウジング結合部144に連結する部位には弾性変形部142が形成される。ここで、縁部141は、弾性変形部142より厚く形成されて鏡筒110を支持することが好ましく、鏡筒110の線形運動の際に弾性変形部142より少なく変形する。
【0029】
弾性変形部142は、各縁部141を鏡筒結合部143およびハウジング結合部144に連結するためのもので、縁部141より薄く形成されて鏡筒110の線形運動の際に多く変形する。実質的に鏡筒110の線形運動の際に、弾性変形部142が捩れ変形することにより、鏡筒110の線形運動を案内する。
【0030】
鏡筒結合部143は、ヒンジスプリング140を鏡筒110の結合突起112に結合させるためのもので、鏡筒110に設けられた一対の結合突起112間の溝に挿嵌される突起143aが設けられる。ここで、互に対向して設けられた一対の鏡筒結合部143は、鏡筒110の両側に設けられた結合突起112に嵌合される。
【0031】
ハウジング結合部144は、ヒンジスプリング140をハウジング120に結合させるためのもので、ハウジング120との結合力を高めるために大きい結合面積を持つように形成されることが好ましく、本実施例では、ハウジング結合部144は「コ」字状の板形状を有する。
【0032】
ヒンジスプリング140をさらに具体的に説明するために、上述したようにヒンジスプリング140の各部位を区別して説明したが、本発明のヒンジスプリング140は、所定の弾性を持つ樹脂などで一体に射出成形される。樹脂を用いた射出成形は、従来の技術の金属板を成形することより工程難易度が非常に低く、工程時間および工程数を減らすことができるという利点を持つ。
【0033】
フィルムサスペンション150は、鏡筒110の下側部に設置され、鏡筒110の上下線形運動を案内する。このフィルムサスペンション150を介して、鏡筒110に設置されたコイル111に電流を伝達することができる。
【0034】
上述したような構成を持つヒンジスプリング140は、鏡筒110の両側にそれぞれ設置され、鏡筒110の上下線形運動を案内する。図5に示すように、鏡筒110の上下運動の際に、ヒンジスプリング140の弾性変形部142が変形することにより、鏡筒110の安定的な線形運動を案内することができる。
【0035】
すなわち、鏡筒110の運動の際に、縁部141は非常に少なく変形するが、これらの縁部141を連結する弾性変形部142が上下に撓みまたは捩れ変形することにより、鏡筒110を案内する。
【0036】
前述した構成を持つ本発明の好適な実施例のヒンジスプリング140は、所定の弾性を持つ樹脂などの材料で一挙に射出成形されて製作できるため、従来の板バネに比べてヒンジスプリング140の製作時間および工程数を減らすことができる。また、従来の金属材質の板バネに代えて軽量の樹脂材質のヒンジスプリング140を使用することにより、カメラモジュール100の軽量化を実現することができる。
【0037】
一方、本発明の実施例では、レンズのフォーカシングのために、鏡筒110を上下駆動するためのオートフォーカスアクチュエータとしてコイル111と永久磁石121を使用したが、これとは異なり、印加される電流によって振動して鏡筒110を運動させる圧電素子型のアクチュエータを使用してもよい。
【0038】
以上、本発明の好適な実施例を参照して本発明のカメラモジュールについて説明したが、本発明の思想から逸脱することなく多様な修正、変更および変形を加え得ることは、当業者には明白である。
【符号の説明】
【0039】
100 カメラモジュール
110 鏡筒
111 コイル
112 結合突起
120 ハウジング
121 永久磁石
130 回路基板
131 イメージセンサ
140 ヒンジスプリング
141 縁部
142 弾性変形部
143 鏡筒結合部
144 ハウジング結合部
150 フィルムサスペンション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部事物のイメージを集めるためのレンズが内蔵された円筒型鏡筒と、
前記レンズの光軸方向に前記鏡筒が上下運動するように前記鏡筒を収容するハウジングと、
前記ハウジングに設置され、前記鏡筒を前記光軸方向に線形運動させるためのオートフォーカスアクチュエータと、
弾性を持つ樹脂で射出成形され、前記鏡筒の線形運動を案内するように前記鏡筒の上部を支持するための環状のヒンジスプリングとを含んでなることを特徴とする、カメラモジュール。
【請求項2】
前記ヒンジスプリングは、前記鏡筒の上下運動の際に弾性変形する部位が薄い厚さを持つように形成されることを特徴とする、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記ヒンジスプリングは、
環状に配置される多数の縁部と、
前記ヒンジスプリングを前記鏡筒に結合させるための2つの鏡筒結合部と、
前記ヒンジスプリングを前記ハウジングに結合させるための2つのハウジング結合部と、
前記各縁部を前記鏡筒結合部または前記ハウジング結合部に連結し、前記縁部より小さい厚さをもって前記鏡筒の上下運動の際に変形する弾性変形部とを含んでなることを特徴とする、請求項1または2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記鏡筒結合部は、前記鏡筒に固定されるように挿嵌される突起が一体に設けられることを特徴とする、請求項3に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記鏡筒は、前記ハウジングの突起が挿嵌される溝を設けるように、外壁に2つの結合突起が互に離隔して突設されることを特徴とする、請求項4に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記鏡筒の上下運動の際に、前記鏡筒に結合した前記鏡筒結合部は前記光軸方向に対して平行に上下運動し、前記鏡筒結合部を前記縁部に連結する前記弾性変形部は撓みまたは捩れ変形することを特徴とする、請求項5に記載のカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−148082(P2010−148082A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82176(P2009−82176)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】