説明

カメラ用支持装置

【課題】カメラマンの姿勢が揺れた場合でも、揺れの少ない映像を撮影し得るカメラ用支持装置を提供する。
【解決手段】このカメラ用支持装置10は、カメラ1の下部に装着されるベース3と、そのベース3の前後それぞれにカメラ1のレンズ2の中心軸CLに対して直交且つ水平な支軸4、5を介して揺動可能に取付けられた二つのリンク6、7と、各リンク6、7に支軸4、5の位置よりも上部に取付けられて、各リンク6、7相互を引き合う方向に力を付勢する付勢ばね8と、各リンク6、7の下端に取付けられて、付勢ばね8で引張り方向に力を付与される肩当て用ベルト11とを備え、カメラ1に装着した状態にあっては、肩当て用ベルト11とベース3との間に隙間が確保され、且つ肩当て用ベルト11を各リンク6、7に取り付けている部分12、13相互の間隔が、二つの支軸4、5相互の間隔よりも常に広くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラマンがカメラを支持するために用いるカメラ用支持装置に係り、特に、カメラマン自身の肩の上に撮影用カメラを支持する際に、カメラマンの姿勢の揺れや振動を吸収するために好適なカメラ用支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカメラ用支持装置としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の技術では、カメラ用支持装置として、テレビカメラの下部の凹み部に取り付ける肩パットが開示されている。この肩パットは、芯材をクッション材で被覆して、カメラ下部の凹み部に収まる大きさに形成されており、カメラマンの肩に当たる部分には凹みを設けている。そして、そのクッション材の表面には、ゴムを被覆することによってクッション性を確保するとともに、表面を滑り難くすることで、カメラマンが自身の肩の上に支持するカメラを安定させられるようになっている。また、この肩パットは、カメラ下部の凹み部に収まる大きさなので、撮影をしない時はそのまま平坦な場所に置くことができるようになっている。
【0003】
また、他のカメラ用支持装置として、テレビカメラに用いられる振動吸収装置が知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に記載の技術では、カメラ、モニター、および、そのカメラとモニターとを支持する機体から構成されるカメラユニットと、そのカメラユニットの重心位置より僅かに上で、機体の軸方向に対して直交且つ垂直に設けられた二つの支軸に対して揺動可能であり、更に、機体の支軸に対して回転可能に取り付けられて、平行リンクおよびばねを組み合わせた複数のユニットからなるアームと、そのアームを鉛直軸に対して揺動可能に取り付けてカメラマンの体に固定するためのベストと、を備えて構成される振動吸収装置が開示されている。
【特許文献1】特開平8−275037号公報
【特許文献2】米国特許第4017168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に開示される肩パットは、テレビカメラ下部の凹み部に取り付けてカメラマンの肩で直に支持するので、例えばカメラマンが立った姿勢で撮影をする場合には、肩の前後方向の僅かな揺れが、そのままカメラで撮影した映像の上下方向の揺れになる。そのため、望遠で遠くの被写体を撮影するときに、映像が揺れないように撮影することは困難である。さらに、カメラマンが歩いて移動しながら撮影を行う場合には、芯材をクッション材で被覆してはいるものの、肩の上下の大きな動きに対し肩パットのクッション部は、そのタワミ量が肩の上下動に対し比較的に微小である。そのため、映像の揺れを抑える程の十分な効果は期待できない。
【0005】
一方、特許文献2に開示されるような、リンクおよびばねを組み合わせて構成される振動吸収装置では、振動を吸収する効果は高いものの、装置全体の重量が大きいため、長時間の撮影や、報道の撮影のように機動性が求められる撮影現場では使用することが困難であり、なおかつ脱着に手間が掛かるという問題点があった。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、比較的に軽量であり、カメラマンの肩の動きをカメラに直接伝えることを防止または抑制し、さらに、カメラマンの姿勢が前後に揺れても、揺れの少ない映像を撮影可能であり、撮影終了時には速やかに平坦面上に置くことができるカメラ用支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、カメラマンが自身の肩の上にカメラを支持するための支持装置であって、前記カメラの下部に装着されるベースと、そのベースに基端部が枢支された一対のリンクと、これら一対のリンク相互の下端部に張り渡された可撓性の肩当て用ベルトと、その肩当て用ベルトに引張り力を付与するように前記一対のリンクに力を付勢する付勢ばねとを備え、前記一対のリンクは、それぞれの前記基端部が、前記カメラに装着されるレンズの中心軸に対して直交且つ水平に設けられるとともに前後に離間して配置された二つの支軸のそれぞれを介してその軸回りに揺動可能に枢支されており、前記カメラに装着した状態にあっては、前記肩当て用ベルトと前記ベースとの間に常に隙間が確保されるとともに、前記肩当て用ベルトを前記一対のリンクに取り付けている部分相互の間隔が、前記二つの支軸相互の間隔よりも常に広く確保されるように構成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係るカメラ用支持装置によれば、カメラに装着した状態にあっては、肩当て用ベルトとベースとの間に常に隙間が確保されているので、例えばカメラマンが歩きながら撮影をする場合には、肩当て用ベルトに引張り力を付与する付勢ばねの力によってカメラの重量が相殺され、肩の上下方向の振動をカメラに伝えることを防止または抑制することができる。
【0008】
また、肩当て用ベルトを一対のリンクに取り付けている部分相互の間隔が、一対のリンクを枢支している、二つの支軸相互の間隔よりも常に広くなっているので、一対のリンクは、カメラマンの肩の前後方向への動きに応じて、カメラマンの肩に対してカメラが前方に移動するときには、前側リンクが起きて後側リンクが伏せるように揺動し、カメラマンの肩に対してカメラが後方に移動するときには、後側リンクが起きて前側リンクが伏せるように揺動する。したがって、カメラマンが立った姿勢で撮影する場合には、カメラマンの肩が前後に動くと、ベースの前後一対のリンクが揺動してカメラに前後方向の力が加わることを防止することができる。
【0009】
つまり、肩当て用ベルトを一対のリンクに取り付けている部分相互の間隔が、一対のリンクをそれぞれ枢支する、二つの支軸相互の間隔よりも常に広くなるように構成することで、肩に対してカメラが前に移動すると、カメラのレンズ中心軸の前側および後側それぞれのリンクは、前側のリンクが起きて後側のリンクが伏せるため、カメラのレンズの中心軸は上を向き、逆に、肩に対してカメラが後ろに移動すると、前後一対のリンクは、後側のリンクが起きて前側のリンクが伏せるため、カメラのレンズの中心軸は下を向く。この動きは、カメラマンの上体の傾きに対して逆の動きとなる。そのため、カメラのレンズの揺動を防止または抑制することができるのである。
【0010】
そして、本発明に係るカメラ用支持装置は、ベース、二つの支軸、一対のリンク、肩当て用ベルトおよび付勢ばね等から構成されているので、例えば上記特許文献2に記載の技術に比べて、その構成が簡素であり、装置の質量を比較的に小さくすることができる。そのため、持ち運びも容易である。また、付勢ばねの力によって肩当て用ベルトに引張り力が付与されているので、このカメラ用支持装置をカメラマンの肩から外した際には、二つのリンクの下方が前後方向に広がる。そのため、この広がった状態の一対のリンクを脚として、平坦な場所に置くこともできる。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によれば、比較的に軽量であり、カメラマンの肩の動きをカメラに直接伝えることを防止または抑制し、さらに、カメラマンの姿勢が前後に揺れても、揺れの少ない映像を撮影可能であり、撮影終了時には速やかに平坦面上に置くことができるカメラ用支持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るカメラ用支持装置の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図1は、本発明に係るカメラ用支持装置の一実施形態の説明図であり、同図は、カメラに装着した状態での断面図を示している。
図1に示すように、このカメラ用支持装置10は、板状のベース3を備えており、このベース3上にカメラ1の下部が載置され、さらに、止めねじ(不図示)によって着脱可能に装着されるようになっている。なお、同図に示すカメラ1にはレンズ2が装着されている。なおまた、同図の符号Gはレンズ2を含むカメラ1の重心位置である。
【0013】
このベース3には、その中央部分に開口部3aが形成されている。そして、この開口部3aを同図紙面奥行き方向に跨いで、二つの支軸としての後側支軸4と前側支軸5とがレンズ2の中心軸CLの前側および後側それぞれに設けられている。これら後側支軸4と前側支軸5は、カメラマンの肩の前後に配置する上で必要な所定の間隔を隔てて設けられており、各軸の軸線は、中心軸CLに対して直交且つ水平に配置されている。そして、ベース3には、これら後側支軸4および前側支軸5を介して、一対のリンクとしての後側リンク6および前側リンク7それぞれの基端部が、各軸まわりに揺動可能に枢支されている。
【0014】
これら一対の、後側リンク6および前側リンク7は、このカメラ用支持装置10をカメラマンの肩の上で支持した状態でのカメラマンの肩の中心を通る垂直軸線KCに対して左右対称に配置されている。また、これら一対のリンク6、7は、左右対称形状であり、垂直軸線KC側を向く面が凹となる湾曲形状に形成されている。さらに、これら一対のリンク6、7の湾曲形状凸側の面の上部には、各支軸4、5よりも上方の位置に張り出したばね掛け6a,7aがそれぞれに設けられている。そして、これらばね掛け6a,7aには、一本の付勢ばね8が取付けられている。
【0015】
この付勢ばね8は、円筒コイルばねであり、その円筒状のコイル部分は、カメラ1下部の凹み部1a内に収まるように配置されている。そして、この付勢ばね8は、後側リンク6と前側リンク7の上端同士を引き寄せる方向に力を付勢するようにばね掛け6a,7a相互に掛け渡されている。さらに、一対の、後側リンク6および前側リンク7の下端部には、帯状の部材の端部を固定可能に構成された、ベルト取付け部後12およびベルト取付け部前13がそれぞれに設けられており、これらベルト取付け部後12およびベルト取付け部前13に、可撓性をもつ帯状の肩当て用ベルト11が張り渡されている。
【0016】
ここで、このカメラ用支持装置10は、同図に示すカメラ1に装着した状態にあっては、付勢ばね8によって一対のリンク6、7の上端同士が引き寄せられることで、肩当て用ベルト11とベース3との間には、対向方向に広い隙間S1が確保されるようになっている。また、肩当て用ベルト11を一対のリンク6、7に取り付けている部分相互の間隔K1は、付勢ばね8の力によって肩当て用ベルト11に引張り方向に力が付与されているため、一対のリンク6、7相互の下方が、二つの支軸4、5相互の間隔ZKよりも広く前後方向に広がるようになっている。
【0017】
このとき、肩当て用ベルト11が張りきらないようにしておくことで、ベース3の開口部3a内面および後側リンク6の湾曲形状凸側の面、並びに、ベース3の開口部3a内面および前側リンク7の湾曲形状凸側の面が相互に当接した状態となり、この当接した状態が保持されるようになっている。また、このとき、後側リンク6下端のベルト取付け部後12、および、前側リンク7下端のベルト取付け部前13は、カメラ1下面に対する高さ方向の位置が相互に同じ位置になるように設定されている。これにより、同図に示すように、この状態での一対のリンク6、7を脚として、平坦面GL上に、このカメラ用支持装置10を取り付けたままの状態のカメラ1を置くことができるようになっている。
【0018】
次に、このカメラ用支持装置10をカメラマンの肩の上で支持した状態について説明する。なお、図2は、カメラ用支持装置を装着したレンズ2付きのカメラ1を、カメラマンの肩の上で支持した状態を示す断面図である。
同図に示すように、カメラマンが自身の肩の上でこのカメラ用支持装置10を装着したレンズ2付きのカメラ1を支持したときには、カメラ1およびレンズ2の荷重が肩当てベルト11に懸かる。ここで、このカメラ用支持装置10は、同図に示す肩の上での支持状態にあっては、肩当て用ベルト11とベース3との間には、付勢ばね8の力によってカメラ1およびレンズ2の荷重が相殺され、対向方向に隙間S2が確保されるように構成されている。
【0019】
そのため、肩当てベルト11は同図に示すように肩に沿ってたわみ、付勢ばね8によって付勢された力に抗して、ベルト取付け部後12とベルト取付け部前13を引き寄せながら重力に対してバランスする位置で隙間S2が確保されて止まる。また、このときの肩当て用ベルト11を一対のリンク6、7に取り付けている部分相互の間隔K2は、一対のリンク6、7相互の下方が各支軸4、5相互の間隔ZKよりも広く前後方向に広がった位置で留まるようになっている。
【0020】
次に、このカメラ用支持装置をカメラマンの肩の上で支持した状態のときに、カメラマンの姿勢が前傾または後傾した状態について説明する。なお、図3は、カメラ用支持装置を装着したカメラを、カメラマンの肩の上で支持した状態でカメラマンの姿勢が前傾した状態を示している。
このカメラ用支持装置10において、カメラマンが立った姿勢で撮影を行う場合に、カメラマンの姿勢が前に傾くと、図3に示すように、カメラ1およびレンズ2を合わせた重心位置Gが、同図に示すようにカメラマンの肩の中心を通る垂直軸線KCに対して前に移動し、レンズ2の中心軸CLの向きは下方に移動しようとする。
【0021】
このとき、後側リンク6は後側支軸4を中心に時計回りに回転し、前側リンク7は前側支軸5を中心に時計回りに回転する。ここで、後側支軸4と前側支軸5との間隔は、ベルト取付け部後12とベルト取付け部前13との間隔よりも狭いため、ベルト取付け部後12を基準とした後側支軸4の高さは下がり、ベルト取付け部前13を基準とした前側支軸5の高さは上がることになる。即ち、カメラマンがカメラを支持した状態では、ベルト取付け部後12およびベルト取付け部前13を互いに結んだ線と、後側支軸4および前側支軸5を互いに結んだ線とは平行であるが、カメラマンの姿勢が前に傾いたときには、ベルト取付け部後12およびベルト取付け部前13を互いに結んだ線に対して、後側支軸4および前側支軸5を互いに結んだ線が平行でなく、前側支軸5の部分が上向くので、これによりカメラマンの肩を基準とするレンズ2の中心軸CLの向きは上を向くこととなる。
【0022】
一方、カメラマンの姿勢が後ろに傾いたときはこの逆で、カメラ1およびレンズ2を合わせた重心位置Gがカメラマンの肩の中心を通る垂直軸線KCに対して後ろに移動し、レンズ2の中心軸CLの向きは上方に移動しようとする。
このとき、後側リンク6は後側支軸4を中心に反時計回りに回転し、前側リンク7は前側支軸5を中心に反時計回りに回転する。ここで、後側支軸4と前側支軸5との間隔は、ベルト取付け部後12とベルト取付け部前13との間隔よりも狭いため、ベルト取付け部後12を基準とした後側支軸4の高さは上がり、ベルト取付け部前13を基準とした前側支軸5の高さは下がることになる。即ち、カメラマンがカメラを支持した状態では、ベルト取付け部後12およびベルト取付け部前13を互いに結んだ線と、後側支軸4および前側支軸5を互いに結んだ線とは平行であるが、カメラマンの姿勢が後に傾いたときには、ベルト取付け部後12およびベルト取付け部前13を互いに結んだ線に対して、後側支軸4および前側支軸5を互いに結んだ線が平行でなく、前側支軸5の部分が下向くので、これによりカメラマンの肩を基準とするレンズ2の中心軸CLの向きは下を向くこととなる。
【0023】
つまり、このカメラ用支持装置10は、カメラ1に装着した状態にあっては、肩当て用ベルト11とベース3との間に常に隙間を確保するとともに、肩当て用ベルト11を一対のリンク6、7に取り付けている部分であるベルト取付け部後12とベルト取付け部前13相互の間隔が、一対のリンク6、7を枢支する二つの支軸4、5相互の間隔よりも常に広くなるように設定することで、これにより、一対のリンク6、7が、カメラマンの肩の前後方向への動きに応じて、カメラマンの肩に対してカメラ1が前方に移動するときには、前側リンク7が起きて後側リンク6が伏せるように揺動し、カメラマンの肩に対してカメラ1が後方に移動するときには、後側リンク6が起きて前側リンク7が伏せるように揺動するようになっている。これにより、カメラマンの姿勢の前後の揺れに対してレンズ2の中心軸CLの向きを補正可能になっている。
【0024】
次に、このカメラ用支持装置10の作用および効果について説明する。
上述したように、このカメラ用支持装置10によれば、カメラ1に装着した状態にあっては、肩当て用ベルト11とベース3との間に常に隙間(S1〜S2)が確保されているので、カメラマンが歩きながら撮影をする場合には、付勢ばね8の力によってカメラ1およびレンズ2の重量が相殺され、肩の上下方向の振動をカメラ1に伝えることを防止または抑制することができる。
【0025】
すなわち、カメラマンが歩行しながら撮影を行う場合には、カメラマンの肩の位置は上下に移動することが考えられる。その際、カメラ1およびレンズ2の荷重が肩当てベルト11に懸かると、肩当てベルト11は図2に示すように肩に沿ってたわみ、付勢ばね8により付勢された力に抗して、ベルト取付け部後12とベルト取付け部前13を引き寄せながら重力に対してバランスする位置で止まる。
【0026】
そして、カメラマンの肩が上下動する場合、カメラ1およびレンズ2は慣性力によりその位置に留まろうとするため、肩当て用ベルト11に懸かる力は、カメラマンの肩が上に上がる場合は増大し、カメラマンの肩が下に下がる場合は減少する。
そして、肩が上に上がり、肩当て用ベルトにかかる力が増大した場合には、ベルト取付け部後12とベルト取付け部前13に懸かる力が増大し、後側リンク6と前側リンク7とは互いに引き寄せられるため、付勢ばね8が引っ張られる。このとき、肩当て用ベルト11の長さは一定であるから、カメラマンの肩とベース3間の距離が減少する。
【0027】
逆に、肩が下に下がり、肩当て用ベルトにかかる力が減少した場合には、ベルト取付け部後12とベルト取付け部前13に懸かる力が減少し、後側リンク6と前側リンク7を引き寄せる力が減少して開くため、付勢ばね8の引張り力が減少する。このとき、肩当て用ベルト11の長さは一定であるから、カメラマンの肩とベース3間の距離が増大する。したがって、このカメラ用支持装置によれば、カメラマンの肩の上下動に対して、カメラ1およびレンズ2の上下動を緩和することができる。
【0028】
さらに、このカメラ用支持装置10によれば、肩当て用ベルト11を一対のリンク6、7に取り付けている部分であるベルト取付け部後12とベルト取付け部前13相互の間隔が、一対のリンク6、7を枢支する二つの支軸4、5相互の間隔よりも常に広くなっており、これにより、一対のリンク6、7は、カメラマンの肩の前後方向への動きに応じて、カメラマンの肩に対してカメラ1が前方に移動するときには、前側リンク7が起きて後側リンク6が伏せるように揺動し、カメラマンの肩に対してカメラ1が後方に移動するときには、後側リンク6が起きて前側リンク7が伏せるように揺動するので、上述したように、カメラマンの姿勢が前後に揺れても、カメラマンの姿勢の傾きと逆方向にレンズ2の中心軸CLの向きを補正することができる。したがって、揺れの少ない映像を撮影することができる。
【0029】
また、このカメラ用支持装置10は、ベース3、二つの支軸4、5、一対のリンク6、7、肩当て用ベルト11および付勢ばね8等から構成されているので、例えば上記特許文献2に記載の技術に比べて、その構成が簡素であり、装置の質量を比較的に小さくすることができる。そのため、持ち運びも容易である。
また、このカメラ用支持装置10によれば、カメラ用支持装置10を装備したカメラ1をカメラマンの肩から外した場合、図1に示すように、肩当て用ベルト11には肩からの力が懸からないため、後側リンク6と前側リンク7とは、付勢ばね8の力によって、後側リンク6が後側支軸4を中心として時計回りに回転し、前側リンク7が前側支軸5を中心として反時計回りに回転して、下方が広がった状態となる。
【0030】
この下方が広がった状態において、肩当て用ベルト11は上述のように張りきらないようにしてあり、また、ベース3および後側リンク6、ベース3および前側リンク7が相互に当接した状態で保持され、さらに、後側リンク6下端のベルト取付け部後12、および、前側リンク7下端のベルト取付け部前13は、カメラ1下面に対する高さ方向の位置が相互に同じ位置になるように設定されているので、撮影終了時には速やかに、この状態の一対のリンク6、7を脚として、このカメラ用支持装置10を取り付けたままの状態のカメラ1を平坦面GL上に置くことができる。
【0031】
以上説明したように、このカメラ用支持装置10によれば、簡素な構成であるため比較的に軽量であり、カメラマンの肩の動きをカメラ1に直接伝えることを防止または抑制し、カメラマンの姿勢の前後方向での揺れに対してレンズ2の中心軸CLの向きを補正することで、揺れの少ない映像の撮影が可能であり、撮影終了時には速やかに平坦面GL上に置くことができる。
【0032】
なお、本発明に係るカメラ用支持装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るカメラ用支持装置の一実施形態の説明図であり、同図は、カメラに装着した状態での断面図を示している。
【図2】本発明に係るカメラ用支持装置の一実施形態の説明図であり、同図は、図1のカメラ用支持装置をカメラマンの肩の上で支持した状態を示している。
【図3】本発明に係るカメラ用支持装置の一実施形態の説明図であり、同図は、図1のカメラ用支持装置をカメラマンの肩の上で支持した状態でカメラマンの姿勢が前傾した状態を示している。
【符号の説明】
【0034】
1 カメラ
2 レンズ
3 ベース
4 後側支軸(支軸)
5 前側支軸(支軸)
6 後側リンク(リンク)
7 前側リンク(リンク)
8 付勢ばね
10 カメラ用支持装置
11 肩当て用ベルト
12 ベルト取付け部後
13 ベルト取付け部前
G 重心位置
CL (レンズの)中心軸
GL 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラマンが自身の肩の上にカメラを支持するための支持装置であって、
前記カメラの下部に装着されるベースと、そのベースに基端部が枢支された一対のリンクと、これら一対のリンク相互の下端部に張り渡された可撓性の肩当て用ベルトと、その肩当て用ベルトに引張り力を付与するように前記一対のリンクに力を付勢する付勢ばねとを備え、
前記一対のリンクは、それぞれの前記基端部が、前記カメラに装着されるレンズの中心軸に対して直交且つ水平に設けられるとともに前後に離間して配置された二つの支軸のそれぞれを介してその軸回りに揺動可能に枢支されており、
前記カメラに装着した状態にあっては、前記肩当て用ベルトと前記ベースとの間に常に隙間が確保されるとともに、前記肩当て用ベルトを前記一対のリンクに取り付けている部分相互の間隔が、前記二つの支軸相互の間隔よりも常に広く確保されるように構成されていることを特徴とするカメラ用支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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