説明

カメラ装置

【課題】カメラ筐体の組み立て精度と無関係にカメラ取付面と光軸の寸法精度の維持が得られるようにしたカメラ装置を提供すること。
【解決手段】フロントフレーム2に略L字断面の4本のコーナー部2B、2C、2D、2Eを設け、リアフレーム3には、4枚の板材からなるカバー部3B、3C、3D、3Eを設け、4本のコーナー部2B、2C、2D、2Eの間に4枚のカバー部3B、3C、3D、3Eが入り込むようにしてフロントフレーム2とリアフレーム3を組み合わせてカメラの筐体が形成されるようにしたもの。
カメラの取付面がフロントフレーム2の4本のコーナー部2B、2C、2D、2Eだけになるので、カメラ取付面と光軸の寸法精度が高く保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像センサーにCCD撮像素子を用いたカメラ装置に係り、特に、産業用に好適なカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用カメラは、半導体製造や各種検査装置などのFA(Factory Automation)や医用・バイオ、マテリアル、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)など、さまざまな産業分野において画像入力用として用いられている。
FA分野などにおいては、製造過程の半製品や出荷前の製品などの被検査物をカメラで撮像することで画像データを取得し、この取得した画像データに基づいて、被検査物に生じる欠陥を光学的に検査したり、被検査物の特定の部分の大きさを光学的に計測したりする。
【0003】
それゆえ、故障等により、代替のカメラと交換するような場合には、カメラ野光軸にズレが生じないようなカメラ取付時の位置合わせが重要になる。
このような産業用カメラの従来例について、図6と図7により説明すると、ここで図6はカメラの正面(レンズ側)から見た斜視図で、図7は後面から見た斜視図であり、このときカメラ装置を全体としてカメラ本体10と表記して説明する。
【0004】
まず、このカメラ本体10は、浅い箱型のフロントフレーム20と同じく浅い箱型のリアフレーム30を用い、これらの下側に、同じく浅い箱型のボトムフレーム40を上向きにして下から組み付けることにより、フロントフレーム20とリアフレーム30が所望の間隔で連結された状態にし、これに、下向きコの字形のカバー50を上から組み合わせることにより箱形の筐体(カメラのケース)を形成させたものである。
【0005】
このとき、フロントフレーム20の外側にはレンズマウントMを設けて撮像用のレンズが取り付けられるようにし、その上で内側にはセンサー基板を設け、これに画像センサ−(CCDセンサ−)を取り付ける。
また、リアフレーム30の内側には制御基板とリア基板を設け、その外側には、端子やコンセントなどの回路接続用の端子部Tを設けてカメラ装置として完成させたものである。
【0006】
ここで、フロントフレーム20の周辺面には、カメラ本体10を他の機器等に取り付ける際に使用する取付孔20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g、20hが各辺ごとに2個づつ設けられ、同様にリアフレーム30の周辺面にも各辺ごとに2個づつの取付孔30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30hが設けられ、これにより、カメラ筐体の上面と下面、右側面と左側面の何れの面でもカメラ本体10の取付面とすることができるようになっている。
【0007】
例えば、取付孔20c、20d、30c、30dの4個を用いた場合は、カメラ本体1の底面を取付面とすることができ、取付孔20a、20b、30a、30bを用いた場合には、カメラ本体1の右側面を取付面とすることができる。
従って、この従来技術によれば、撮像対象やカメラ設置場所に応じて任意の姿勢でカメラを支持させることができ、常に最善のモニタポジションによる撮像が可能になる。
【0008】
なお、この種のカメラ装置に関連する技術については、例えば特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−277021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術は、光軸と取付面の寸法精度に配慮がされているとは言えず、製品仕様(スペック)の維持に問題があった。
上記したように、近年、産業用カメラの用途が多様化し、このため小型で高解像度のカメラが一般化した結果、カメラの底面、上面及び両側面の4面を取付面とし、これらの取付面と光軸に高い寸法精度が要求される場合が多く、このため、光軸に対する取付面の平行度や光軸と取付面の寸法については製品仕様として誤差範囲が保証されていなければならない。
【0011】
しかしながら、上記従来技術の場合、カメラ本体を固定するための取付孔が、フロントフレームとリアフレームに分れて設けられているため、フロントフレームとリアフレームの組立誤差がカメラ取付面と光軸の寸法精度に影響してしまうのを抑えることができず、従って、保証した製品仕様の維持に問題が生じてしまうのである。
【0012】
本発明の目的は、カメラ筐体の組み立て精度と無関係にカメラ取付面と光軸の寸法精度の維持が得られるようにしたカメラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、箱形の筐体の前面部にレンズマウントを備え、後面部に端子部を備えたカメラ装置において、前記前面部が、後方に向いた浅い箱形の前底板部と、この前底板部の4角の各々から立ち上がった形で延長されている略L字断面の4本のコーナー部とを備え、前記後面部が、前方に向いた浅い箱形の後底板部と、この後底板部の4角の間の中間部分にある端縁から立ち上がった形で延長されている4枚の板材からなるカバー部とを備え、前記前面部と前記後面部を向い合せにし、前記コーナー部の間に前記カバー部が入り込んだ形にして組み合わせることにより前記筐体が形成され、前記コーナー部だけで前記筐体の取付面が形成されるようにして達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、他の機器等に取り付ける際に使用するカメラの取付面が単一の部材で形成されているので、取付面と光軸の寸法精度がカメラ筐体の組立精度に影響されることがない。
従って、本発明によれば、カメラの取付面と光軸の間の寸法精度を保証した製品仕様に乱れの虞がなく、仕様通りのカメラ装置が容易に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るカメラ装置の一実施の形態を前方から見た斜視図である。
【図2】本発明に係るカメラ装置の一実施の形態を後方から見た斜視図である。
【図3】本発明に係るカメラ装置の一実施の形態における筐体部分だけの分解図である。
【図4】本発明に係るカメラ装置の一実施の形態の内部構造部分も含めた分解図断面図である。
【図5】本発明に係るカメラ装置の一実施の形態の断面図である。
【図6】従来技術によるカメラ装置の一例を前方から見た斜視図である。
【図7】従来技術によるカメラ装置の一例を後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るカメラ装置について、図示の実施形態により詳細に説明する。
ここで、図1〜図5は、何れも本発明の実施形態1を示したもので、これらの図において、1はカメラ本体、2はカメラ筐体の前部構造体となるフロントフレーム、3は後部構造体となるリアフレームであり、ここでフロントフレーム2とリアフレーム3は、図3に示すように、相互に突出部と切欠き部を備え、一方の突出部が他方の切欠き部に入り込んだ形で組み合わせが可能な形状に作られ、これにより向い合せにして組み付けると箱形になってカメラの筐体が形成されるようにしてある。
【0017】
このときフロントフレーム2には、その前方の外面にレンズマウントMが設けられ、リアフレーム3には、その後方の外面から回路接続用の端子やコンセントなどが突出した形の端子部Tが設けられており、従って、これらフロントフレーム2とリアフレーム3を組み合わせることにより、図1と図2に示す通りの小型のカメラ装置が得られることになる。
そこで、次に、これらフロントフレーム2とリアフレーム3の詳細について説明する。
【0018】
まず、フロントフレーム2は、特に図3に表されているように、浅い箱形をした前底板部2Aと、この前底板部2Aの4角(コーナー)から立ち上がった形で延長されている略L字断面の4本のコーナー部2B、2C、2D、2Eとで形成されている。
従って、この場合、4本のコーナー部2B、2C、2D、2Eが上記したフロントフレーム2の突出部を形成し、これらコーナー部2B、2C、2D、2Eの間が上記したフロントフレーム2の切欠き部を形成していることになる。
【0019】
次に、リアフレーム3は、同じく図3から明らかなように、浅い箱形をした後底板部3Aと、この後底板部3Aの4角の間の中間部分にある端縁から立ち上がった形で延長されている4枚の板材からなるカバー部3B、3C、3D、3Eとで形成されている。
従って、この場合、4枚のカバー部3B、3C、3D、3Eが上記したリアフレーム3の突出部を形成し、これらカバー部3B、3C、3D、3Eの間が上記したリアフレーム3の切欠き部を形成していることになる。
【0020】
そこで、図3に示すように、フロントフレーム2とリアフレーム3を向い合せにした状態から、4本のコーナー部2B、2C、2D、2Eの間に4枚のカバー部3B、3C、3D、3Eが入り込むようにしてフロントフレーム2とリアフレーム3を組み合わせてやれば、図1と図2に示すように、カメラの筐体が形成される。
ここで、フロントフレーム2のコーナー部2B、2C、2D、2Eの長さ寸法と、リアフレーム3のカバー部3B、3C、3D、3Eの長さ寸法を等しくすることにより、すき間無く筐体が形成できることになる。
【0021】
そして、更に、フロントフレーム2の前底板部2Aの端縁からコーナー部2B、2C、2D、2Eの端部までの長さ寸法と、リアフレーム3の後底板部3Aの端縁からカバー部3B、3C、3D、3Eの端部までの長さ寸法の和をカメラ筐体に必要な長さ(奥行)寸法に等しくして、所望の大きさのカメラ装置が得られるようにする。
このとき、図4に示すように、フロントフレーム2には、その内側にセンサー基板部が取り付けてあり、同様にリアフレーム3にはリア基板部が取り付けてある。
【0022】
そこで、フロントフレーム2とリアフレーム3を組み合わせると、内部は図5の上から見た断面図に示すようになる。
まず、センサー基板は、センサー金具Aとセンサー金具Bによりフロントフレーム2に保持されるが、このときセンサー金具Aはフロントフレーム2に直接、取り付けられているので、レンズマウントMに装着した撮像用のレンズとセンサー基板の正確な位置関係が保証されることになる。
一方、リア基板は、制御基板と共にリアフレーム3の内側に、端子部Tのネジを利用して取り付けられている。
【0023】
次に、取付孔20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20Hと、取付孔30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G、30Hについて説明する。
まず、これらの取付孔20A〜20Hと取付孔30A〜30Hは、カメラ筐体の上面と下面、右側面と左側面の何れの面でもカメラ装置1の取付面とすることができるようにするためのものであり、従って、この点では、図6と図7により説明した従来技術における取付孔20a〜20h及び取付孔30a〜30hと変わりはない。
【0024】
ところで、これらの取付孔20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20Hは、何れもフロントフレーム2の4本のコーナー部2B、2C、2D、2Eの各々の根本部分に設けてある。
このとき、他方の取付孔30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G、30Hは、何れもコーナー部2B、2C、2D、2Eの各々の先端部分の近傍に設けてあるが、ここで、これらコーナー部2B、2C、2D、2Eは何れもフロントフレーム2の一部である。
【0025】
そうすると、この実施形態の場合、取付孔20A〜20Hと取付孔30A〜30Hは同一の部材であるフロントフレーム2に設けられていることになり、しかも、このフロントフレーム2には、レンズマウントMとセンサー基板も取り付けられているので、取付孔20A〜、30A〜により決まるカメラ取付面と、レンズとセンサー基板の相互位置により決まる光軸の関係は固定されていて変化することはない。
従って、この実施形態によれば、カメラ筐体の組み立てに際してフロントフレーム2にリアフレーム3を取り付けたとしても、フロントフレーム2とリアフレーム3の組立誤差がカメラ取付面と光軸の寸法精度に影響してしまう虞は全く無い。
【0026】
このとき、フロントフレーム2のコーナー部2B、2C、2D、2Eは、何れもフロントフレーム2の前底板部2Aに対して片持ち梁(カンチレバー)状になっているが、しかし、これらコーナー部2B、2C、2D、2Eは、何れもL字形断面をした、いわゆるアングル部材(山形部材)になっているので、小型のカメラの場合、あまり長くなくて済むことと相俟って、曲げ応力に対してかなりの耐力が容易に持たせられるので、寸法精度の維持に問題はない。
【0027】
次に、フロントフレーム2とリアフレーム3によるカメラ筐体の組み立てについて、更に詳細に説明する。
まず、フロントフレーム2とリアフレーム3の固定には、図3に示されているように、フロントフレーム2の上下にある取付部2F、2G(図では見えない)と、リアフレーム3の上下のカバー部3C、3Eの先端にある取付部3F、3Gを用いる。そして、図1と図2に示されているように、ネジ部材により固定している。
【0028】
このとき、リアフレーム3の取付部3F、3Gには窪みが形成してあり、この中にリアフレーム3の取付部3F、3Gが入り込むことにより、固定用のネジ部材の頭がカメラ筐体の表面から突出しないようにしてある。
次に、フロントフレーム2とリアフレーム3の夫々が当接する部分では、図4の破線の円により囲った部分Sに示す通り、重ね合わせ接合が適用され、これにより当接している部分にすき間が生じないようにしている。
【0029】
更に、これらフロントフレーム2とリアフレーム3を組み合わせて筐体にしたとき、リアフレーム3のカバー部3B、3C、3D、3Eの表面が、フロントフレーム2のコーナー部2B、2C、2D、2Eの表面から若干、へこんだ状態になるように各部の寸法を設定し、これによりカメラ筐体の上面と下面、右側面と左側面の夫々におけるカメラ本体10の取付面の位置精度がコーナー部2B、2C、2D、2Eの表面だけで決まり、リアフレーム3の組み立て精度がカメラ本体10の取付面の位置精度に影響ないようにしている。
【0030】
従って、この実施形態によれば、カメラ筐体の組み立てに際してフロントフレーム2にリアフレーム3を取り付けたとしても、フロントフレーム2とリアフレーム3の組立誤差がカメラ取付面と光軸の寸法精度に影響する虞が無いので、保証した製品仕様が確実に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、産業用の撮像装置に利用することができるが、監視用の撮像装置においても適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:カメラ本体
2:フロントフレーム
2A:前底板部
2B、2C、2D、2E:コーナー部
2F、2G:取付部
3:リアフレーム
3A:後底板部
3B、3C、3D、3E:カバー部
3F、3G:取付部
20B、20C、20D、20E:取付孔(コーナー部の根本部分にある
取付孔)
30B、30C、30D、30E:取付孔(コーナー部の先端部分にある
取付孔)
M:レンズマウント
S:部分(重ね合わせ接合部分)
T:端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形の筐体の前面部にレンズマウントを備え、後面部に端子部を備えたカメラ装置において、
前記前面部が、
後方に向いた浅い箱形の前底板部と、この前底板部の4角の各々から立ち上がった形で延長されている略L字断面の4本のコーナー部とを備え、
前記後面部が、
前方に向いた浅い箱形の後底板部と、この後底板部の4角の間の中間部分にある端縁から立ち上がった形で延長されている4枚の板材からなるカバー部とを備え、
前記前面部と前記後面部を向い合せにし、前記コーナー部の間に前記カバー部が入り込んだ形にして組み合わせることにより前記筐体が形成され、
前記コーナー部だけで前記筐体の取付面が形成されていることを特徴とするカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242745(P2012−242745A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114855(P2011−114855)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】