説明

カメラ解像度自動測定方法及び自動調節方法並びに画像検査方法及び装置

【課題】 撮像素子を備えるカメラの解像度の簡便且つ精度良い測定乃至は調節方法と、その方法を利用した画像検査方法及び画像検査装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 周期的な模様を備えた対象物をカメラで撮影する工程;撮影によって得られた画像データVと同画像データを解像度を求める方向に1画素ずつずらした画像データVnとの自己相関係数を求める工程;自己相関係数のピークを検出し、検出された2つのピーク間のずらし画素数の差と、ピーク間領域の数と、模様の周期とに基づいて前記カメラの解像度を求める工程を含んでいるカメラ解像度自動測定方法、及び当該方法を利用するカメラ解像度自動調節方法、画像検査方法並びに画像検査装置を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ解像度自動測定方法及び自動調節方法並びに画像検査方法及び装置に関し、詳細には、撮像素子を備えたカメラの解像度を自動的に測定又は調節するカメラ解像度自動測定方法及びカメラ解像度自動調節方法と、そのようなカメラ解像度自動測定方法又は調節方法を利用して、撮影された画像に基づいて対象物を検査する画像検査方法及び画像検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1〜3に見られるように、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルなどのディスプレイパネルにおいては、通常、セル工程の最終検査でCCDなどの撮像素子を備えたカメラでディスプレイパネルを撮影して、その撮影画像に基づいてディスプレイパネルにおける欠陥画素等の欠陥の有無を画像処理若しくは肉眼によって検査することが行われている。
【0003】
これらの検査においては、撮影された画像に基づいてディスプレイパネルの欠陥の有無が検査されるので、カメラの解像度が最適な値に調節されていることが極めて重要である。しかし、本発明者が知る限り、カメラの解像度を自動的に測定乃至は調節する簡便で精度の高い方法はこれまで提案されていない。
【0004】
カメラの解像度の測定は、通常、複数個のマークを描いた治具を用意し、これをカメラで撮影することによって行われている。すなわち、治具に描かれたマーク間の距離は既知であるので、撮影されたマーク間に入っている画素数を調べ、前記既知のマーク間の距離を前記画素数で除すことによって1画素あたりの距離、すなわち、解像度を求めることができる。
【0005】
しかし、従来から行われているこの方法では、撮影されたマークの位置を検出する精度や安定性に依存して、求められる解像度の精度や安定性が影響を受けるという欠点がある。特に、撮影条件によって撮影されたマークが薄くなったりボケたりすると、マークの位置を検出する二値化の閾値の僅かな変化で解像度の計測値がバラつき、求められる解像度の安定性や精度が落ちる結果となる。したがって、上記従来の方法ではマーク位置を検出する閾値の設定には非常な困難が伴う。また、上記方法では、カメラで撮影する視野内に最低2つのマークが映らないと解像度の測定ができなくなるので、設定すべき解像度や前提となる視野が大きく異なる場合には、それに合ったマークを描いた治具を用意しなければならず、煩雑で、汎用性に欠けるという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−72816号公報
【特許文献2】特開2009−156857号公報
【特許文献3】特開2009−156858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の解像度の測定方法が備える欠点を解消するために為されたもので、撮像素子を備えるカメラの解像度を、簡便に且つ精度良く、測定乃至は調節することができる汎用性のある方法と、その方法を利用した画像検査方法及び画像検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、解像度測定用の治具に描かれるマークを周期的な模様とし、この周期的な模様をカメラで撮影して、撮影された画像データの自己相関係数を求めることによって、模様の周期に対応する画素数が得られること、そしてこの画素数と前記マークの周期に基づいて撮影したカメラの解像度を自動的に測定できることを見出して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、周期的な模様を備えた対象物をその模様の周期の方向をカメラの解像度を求める方向と一致させて撮影位置にセットする工程;前記周期的な模様を撮像素子を備えた前記カメラによって撮影する工程;撮影によって得られた画像データVと、同画像データを解像度を求める方向に1画素ずつずらした画像データVn(ただし、nはずらし画素数であり、n=0、1、2・・・)との自己相関係数を求める工程;前記周期的な模様に対応する自己相関係数のピークを検出する工程;検出された自己相関係数のピークから2つのピークを選択する工程;選択された2つのピーク間のずらし画素数の差と、選択された2つのピーク間に存在するピーク間領域の数と、前記模様の周期とに基づいて前記カメラの解像度を求める工程を含んでいるカメラ解像度自動測定方法を提供することによって上記の課題を解決するものである。
【0010】
本発明のカメラ解像度自動測定方法は、その好ましい態様において、自己相関係数のピークを検出する工程が、求められた自己相関係数を予め定められた閾値と比較し、前記閾値を超える自己相関係数をピークとして検出する工程を含んでいる。閾値としては、通常、ノイズをピークとして検出することがないように、ノイズレベルよりも十分に大きい値が選ばれる。
【0011】
また、本発明のカメラ解像度自動測定方法においては、解像度の測定に用いられる2つのピーク間のずらし画素数の差が大きいほど、測定される解像度の精度は高まるので、検出された自己相関係数のピークから選択される2つのピークは、ずらし画素数の差が最も大きな2つのピークであるのが好ましい。
【0012】
なお、本発明のカメラ解像度自動測定方法で用いられる周期的な模様を備えた対象物としては、通常、周期的な模様を描いた専用の治具が用いられるが、例えば、検査対象物に周期的な模様があり、その周期が既知であるか、測定することができる場合には、検査対象物自体を周期的な模様を備えた対象物として用いることができる。周期的な模様としては、一方向に沿って一定間隔で周期的に存在し、撮像素子を備えたカメラで撮影することができる模様であれば、どのような模様であっても良いが、通常は、一方向に沿って周期的に配列されている線状若しくは短冊状の模様が好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記したカメラ解像度自動測定方法によってカメラの解像度を自動的に求める工程、求められた解像度と予め定められた目標解像度との差を求める工程、前記差と予め定められた許容誤差とを比較する工程、前記差が前記許容誤差よりも大きい場合には、前記差に相当する距離だけ前記カメラと対象物との相対的な距離を変更する工程、前記差が前記許容誤差よりも小さい場合には解像度自動調節終了信号を出す工程を含むカメラ解像度自動調節方法を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0014】
求められた解像度と目標解像度との差が許容誤差よりも大きく、前記差に相当する距離だけ前記カメラと対象物との相対的な距離が変更された場合には、再度、カメラによって対象物の周期的な模様を撮影して解像度を求める工程が実行され、それに後続する工程が、求められた解像度と目標解像度との差が許容誤差よりも小さくなるまで繰り返されることになる。
【0015】
また、本発明は、上記のカメラ解像度自動調節方法によってカメラの解像度を自動調節し、その後、検査対象物を前記カメラで撮影して、その撮影された画像に基づいて検査対象物の検査を行う画像検査方法を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0016】
さらに、本発明は、カメラによって対象物を撮影し、撮影された画像に基づいて対象物の検査を行う画像検査装置であって、少なくとも、撮影位置にセットされた周期的な模様を有する対象物を撮影する撮像素子を備えたカメラと、画像処理装置とを備え;前記画像処理装置は、前記カメラによって撮影された周期的な模様を有する対象物の画像データVと、同画像データをカメラの解像度を求める方向に1画素ずつずらした画像データVn(ただし、nはずらし画素数であり、n=0、1、2・・・)との自己相関係数を求める手段、求められた自己相関係数のピークを検出する手段、検出された自己相関係数のピークから2つのピークを選択する手段、選択された2つのピーク間のずらし画素数の差Δnを求める手段、選択された2つのピーク間に存在するピーク間領域の数Nを求める手段、前記対象物の周期的な模様の周期Tの入力を受け付ける手段、及び前記Δn、N、Tに基づいて前記カメラの解像度を求める手段を備えている画像検査装置を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0017】
本発明の画像検査装置は、その好ましい態様において、画像処理装置が、自己相関係数のピークを検出する手段として、求められた自己相関係数を予め定められた閾値と比較し、前記閾値を超える自己相関係数をピークとして検出する手段を備えており、また、検出された自己相関係数のピークから2つのピークを選択する手段として、ずらし画素数の差が最も大きな2つのピークを選択する手段を備えている。
【0018】
さらに、本発明の画像検査装置は、その好ましい態様において、前記カメラと撮影位置にセットされた対象物との距離を調節する距離調節手段を備えるとともに、前記画像処理装置が、求められた解像度と予め設定されている目標解像度との差を求める手段、及び、前記差を予め設定されている許容誤差と比較し、前記差が前記許容誤差よりも大きい場合には、前記差に相当する距離だけ前記カメラと対象物との距離を変更する距離変更命令を前記距離調節手段に出し、前記差が前記許容誤差よりも小さい場合には、解像度自動調節終了信号を出す手段とを備えている。本発明の画像検査装置が、上記のような手段を備えている場合には、カメラの解像度を予め定められた目標解像度に自動的に合わせることができるという利点が得られる。
【0019】
本発明の画像検査方法及び画像検査装置が対象とする検査対象物は、主として、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、ELディスプレイパネル、LEDを用いるディスプレイパネル、FEDパネルなどのディスプレイパネルであり、これらの検査に適用されるのが最も好ましいが、検査対象物はディスプレイパネルに限られず、その機能や外観をカメラ撮影画像に基づいて検査することができる限り、どのような対象物であっても良い。なお、本発明の画像検査方法及び画像検査装置で行われる検査は、撮影された画像に基づいて欠陥や不都合の有無を人が判断する検査であっても良いし、撮影された画像データをコンピュータで画像処理して人手を介さずに欠陥や不都合の有無を判断する自動検査であっても良い。また、検査対象物がディスプレイパネルである場合、検査は点灯検査であっても非点灯検査であっても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明のカメラ解像度自動測定方法によれば、画像データの自己相関係数に基づいて治具に描かれている周期的な模様の周期を求めるようにしているので、模様が薄い場合やボケている場合、或いは一部が欠落しているような場合でも、模様の周期に対応した画素数を正確に求めることができ、解像度を精度良く、安定して測定することができるという利点が得られる。また、本発明のカメラ解像度自動測定方法によれば、数周期以上の模様の画像が得られれば模様の周期を精度良く求めることができるので、予想される視野の大きさや解像度に合わせて模様の周期をある程度短くしておくことによって、視野の大きさや解像度ごとに治具の模様を変える必要がなくなり、治具の汎用性が増すという利点が得られる。
【0021】
さらに、本発明のカメラ解像度自動測定方法によれば、カメラで撮影した画像のできるだけ広い範囲を利用してカメラの解像度を測定することができるので、撮影視野で得られる最大の測定精度を得ることができるという利点が得られる。また、本発明のカメラ解像度自動調節方法によれば、精度よく求められた解像度に基づいて、より正確にカメラの解像度を目標解像度に合わせることができるという利点が得られる。
【0022】
また、本発明の画像検査方法及び画像検査装置によれば、カメラの解像度を自動的に測定することができるとともに、対象物毎に最適な解像度が変化する場合でも、目標解像度を設定するだけで、自動的に目標解像度に合わせることができるので、簡便に最適な解像度で対象物の画像検査を行うことができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の画像検査装置の一例を示す図である。
【図2】画像検査装置に治具をセットした状態を示す図である。
【図3】治具の一例を示す平面図である。
【図4】画像データV、V、V等を模式的に示す図である。
【図5】自己相関係数とずらし画素数nとの関係をプロットした図である。
【図6】本発明のカメラ解像度自動調節方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0025】
図1は、本発明の画像検査装置の一例を示す図である。図1において、1は画像検査装置であり、2はカメラ、3はカメラ2が取り付けられている可動台、4は可動台3を上下動自在に支持する支柱、5は可動台3を支柱4に沿って上下動させるZステージである。カメラ2はCCDなどの撮像素子を備えたカメラであり、ラインカメラであっても良いし、エリアカメラであっても良いが、検査対象物を移動させながら撮影して画像検査を行うにはラインカメラが好ましく、中でもTDI(Time Delay and Integration)ラインカメラを用いるのが好ましい。
【0026】
6はカメラ2のレンズ系、7はレンズ系6を駆動してカメラ2のフォーカスを調整するフォーカス調整部、8は画像処理装置、9は画像処理装置8の入出力部である。カメラ2と画像処理装置8とは信号線で結ばれている。画像処理装置8は、カメラ2で撮影された画像データを受け取って適宜の画像処理を行う画像処理手段を備えるとともに、その結果を入出力部9のモニタ画面等の適宜の出力装置に出力したり、通信手段を介して他のコンピュータに送信したりする機能を備えている。また、画像処理装置8はZステージ5及びフォーカス調整部7とも信号線で結ばれており、Zステージ5に命令を送ってカメラ2を上下方向に移動させたり、フォーカス調整部7に命令を送って、カメラ2のフォーカスを調整する手段を備えている。10はコンベア、11はコンベア10を構成する回転ローラ、12はコンベア10上に載置されている検査台、13は検査台12にセットされている検査対象物、14は撮影位置にある検査対象物13を照らすバックライトである。なお、検査対象物13を照らす光源をカメラ2側に配置することも適宜可能である。
【0027】
画像検査時には、コンベア10を稼動して検査対象物13を図中矢印方向に移動させながら、カメラ2直下の撮影位置を順次通過させ、カメラ2で検査対象物13を撮影することによって画像検査が行われる。なお、検査対象物13を移動させながら検査する代わりに、検査対象物13を撮影位置にセットして、静止状態で検査対象物を撮影して画像検査を行うようにしても良い。
【0028】
上記のような本発明の画像検査装置1において、カメラ解像度の自動測定は以下のようにして行われる。すなわち、まず、図2に示すように、検査対象物13に代えて、周期的な模様を備えた治具15を、その模様の周期の方向をカメラ2の解像度を求める方向と一致させて検査台12の上に載置し、カメラ2直下の撮影位置にセットする。カメラ2がラインカメラである場合には、解像度を求める方向とはカメラ2の撮像素子が整列している方向であるので、治具15は、その周期的な模様の周期の方向がカメラ2の撮像素子が整列している方向と一致するように撮影位置にセットされる。このようなセットは、例えばカメラ2に対して検査台12を予め位置決めしておいて、その検査台12の所定位置に治具15を載置することで行うことができる。或いは、治具15に位置決め用のマークを付しておき、このマークを画像検査装置1に設けられた位置決め用カメラで撮影し、その撮影データに基づいて、例えばXYθステージなどを利用して、治具15の位置を調整することによって行うようにしても良い。
【0029】
なお、図示の例では治具15は検査台12上に載置されているが、検査台12を用いずに治具15をコンベア10上に直接載置しても良いし、他の適宜の手段を用いて治具15を撮影位置にセットしても良い。ただし、撮影位置にセットされた状態での治具15の上面の高さは、画像検査時に撮影位置を通過する検査対象物13の上面の高さと一致していることが必要である。いずれにせよ、治具15が撮影位置にセットされた状態でコンベア10は停止状態にあり、治具15はカメラ2に対して静止している。
【0030】
図3は治具15の一例を示す平面図である。図3に示すとおり、治具15は一定の周期Tで繰り返される周期的な線状の模様16を備えている。治具15上に模様16を形成するには印刷等の適宜の方法で行えば良い。治具15に設けられる模様16としては、それが周期的である限り、線状模様に限られず、短冊状や、矩形、その他の模様であっても良いが、短冊状若しくは線状の模様とするのが簡便であり好ましい。なお、検査対象物13が、端子や配線パターンとして周期的な模様を備えている場合には、わざわざ治具15を用意する必要はなく、検査対象物13自体を解像度測定用の治具として用いることができる。
【0031】
図3において、17はカメラ2による撮影領域であり、カメラ2がラインカメラ又はTDIラインカメラである場合、カメラ2の撮像素子は、図中矢印で示す方向に整列しており、この整列方向が解像度を求める方向である。治具15の周期的な模様16の周期の方向は、同じく図中矢印で示す方向であり、カメラ2の解像度を求める方向と一致している。
【0032】
治具15が、その模様の周期の方向をカメラ2の解像度を求める方向と一致させて撮影位置にセットされると、画像処理装置8は、フォーカス調整部7に信号を送り、治具15の模様16にカメラ2のフォーカスを合わせた後、カメラ2に対して撮影命令を出す。カメラ2が撮影した模様16の画像データは画像処理装置8に送られ、画像データVとして適宜の記憶装置に記憶される。
【0033】
図4は、画像データV、V、V・・・を模式的に示す図であり、各画像データV、V、V・・・における凸部は模様16に対応するピークである。なお、図4では便宜上、画像データVまでしか示していない。図4において18はカメラ2の撮像素子に対応する画素列である。画素列18の個々の画素x、x+1、x+2・・・はそれぞれ対応する画像データを有しており、画素列18を構成する全画素が有する画像データの全体が画像データV、V、V・・・を構成している。なお、図中「n」はずらし画素数を表し、例えば画像データVにおいてはn=0、つまり、ずらし画素数は0である。
【0034】
画像データVはずらし画素数nが1、すなわち、画像データVを1画素だけずらした画像データである。図に示すとおり、画像データVにおいては、個々の画素が有する画像データと画素x、x+1、x+2・・・との対応関係は、画像データVにおける対応関係と比べて1画素分ずつだけずれており、例えば、画像データVにおいて画素xに対応していた画像データは、画像データVにおいては画素x+1に対応し、画像データVにおいて画素x+1に対応していた画像データは、画像データVにおいては画素x+2に対応している。画像データVから1画素分ずらした画像データVを得ることは、画像処理装置8内でソフトウエア的或いはハードウエア的に容易に行うことができる。
【0035】
同様に、図4において、画像データV、V、Vは、それぞれ画像データV、V、Vを1画素分だけずらした画像データであり、それぞれのずらし画素数nは2、3、4である。このような画像データV、V、Vを得ることも画像処理装置8内で行われる。
【0036】
画像処理装置8は、上述した画像データVと、画像データVを1画素ずつずらした画像データVnとの自己相関係数を計算する手段を備えている。ただし、画像データVnにおいて、nの値は0、1、2、3・・・と変化するので、画像処理装置8は、画像データVと画像データVとの自己相関係数、画像データVと画像データVとの自己相関係数、画像データVと画像データVとの自己相関係数・・・というように、画像データVと、画像データVを0から始まり1画素ずつずらした画像データV、V、V、V・・・との自己相関係数を順次計算する。
【0037】
図5は、上述のようにして求められた自己相関係数と、ずらし画素数nとの関係をプロットした図である。便宜上、正の自己相関係数の部分だけを示してある。周期的な模様の画像はその周期の整数倍だけずれた画像と高い相関を有しているので、図5において、自己相関係数が高くピークP0、P1、P2・・・を示しているずらし画素数の位置は、画像データVから治具15上の模様16の周期Tの整数倍(0、1、2・・・倍)に相当する画素数だけずれた位置であると判断される。
【0038】
画像処理装置8は、計算によって求められた自己相関係数に基づいてピークP0、P1、P2・・・を検出する手段を備えている。すなわち、画像処理装置8は、計算で求められた自己相関係数と予め定められた閾値19とを比較し、閾値19よりも高い自己相関係数をピークとして検出する。閾値19は、ノイズをピークとして検出しないように、ノイズよりも十分に高いレベルに設定するのが好ましい。図5に示す例においては、閾値19は自己相関係数0.3のレベルに設定されており、画像処理装置8は自己相関係数が0.3を超えるピークP0〜P7をピークとして検出する。
【0039】
次に、画像処理装置8は、検出したピークP0〜P7の中から2個のピークを選択する。選択する2個のピークとしては、互いに隣接する2個のピークであっても良いし、互いに1個又は2個以上のピークを隔てて隣接する2個のピークであっても良い。しかし、カメラ2の解像度を精度良く測定するには、ずらし画素数nの差Δnが大きな2個のピーク、すなわち、図5に示すプロット図でなるべく互いに離れた位置にある2個のピークを選択するのが好ましく、このようなピークとしては、通常、ずらし画素数nが0であるピークP0と、ずらし画素数nが最も大きなピーク(本例においてはピークP7)を2個のピークとして選択するのが好ましい。このような選択は、画像処理装置8において、検出された各ピークのずらし画素数を比較することによって容易に行うことができる。
【0040】
画像処理装置8は、続いて、上記のようにして選択した2つのピークのずらし画素数の差を求める。例えば、選択した2つのピークがピークP0とピークP7である場合には、ピークP0のずらし画素数は0であるので、ピークP7のずらし画素数をn(P7)とすると、n(P7)がそのまま両ピーク間のずらし画素数の差Δnということになる。また、選択した2つのピークが例えばピークP1とP6である場合には、ピークP1のずらし画素数n(P1)とピークP6のずらし画素数n(P6)との差、n(P6)−n(P1)が両ピーク間のずらし画素数の差Δnということになり、画像処理装置8はこの差を演算によって求めることになる。
【0041】
次に、画像処理装置8は、選択した2つのピーク間に存在するピーク間領域の数Nを求める。例えば、選択した2つのピークがピークP0とピークP7である場合には、7−0=7が選択した2つのピーク間に存在するピーク間領域の数Nということになり、また、選択した2つのピークが例えばピークP1とP6である場合には、6−1=5が選択した2つのピーク間に存在するピーク間領域の数Nということになる。
【0042】
さらに、画像処理装置8は、上記の選択した2つのピーク間のずらし画素数の差Δn、2つのピーク間に存在するピーク間領域の数N、及び治具15の模様16の周期Tに基づいて、カメラ2の解像度を、
解像度=(N×T)/Δn
として算出する。治具15の模様16の周期Tは予め測定しておいて、入出力部9を介して画像処理装置8に入力しておけば良い。
【0043】
以上のような自己相関係数の計算、自己相関係数のピークの検出、検出されたピークからの2つのピークの選択、選択された2つのピーク間のずらし画素数の差Δn及び選択された2つのピーク間に存在するピーク間領域の数Nの算出、さらには、カメラ解像度の計算は、すべて画像処理装置8に組み込まれているプログラムに基づいて画像処置装置8によって自動的に行われる。したがって、画像処理装置8は、上記のような各手順を実行する各手段を、ハードウエア及び/又はソフトウエアとして、自身に備えているということになる。
【0044】
なお、上記のようなカメラ解像度の自動測定は1度だけ行って、その結果をカメラ2の解像度としても良いし、複数回行ってその平均値をカメラ2の解像度としても良い。解像度の測定を複数回行う場合には、カメラ2による模様16の撮影をその都度行うようにしても良いし、一度の撮影によって得られた同じ画像データVに対して、自己相関係数の検出されたピークから選択される2つのピークの組み合わせをその都度変化させてカメラ2の解像度を複数回求めるようにしても良い。画像処理装置8は、上記のようにして求めたカメラ2の解像度を入出力部9のモニタ画面に表示するか、モニタ画面以外の適宜の出力装置に出力する。
【0045】
なお、以上はカメラ2がラインカメラである場合について説明したが、カメラ2がTDIラインカメラであっても、最終段の画素列18に蓄積される画像データを画像データVとすれば良く、カメラ2がラインカメラである場合と同様である。さらに、カメラ2がエリアカメラであっても、エリアカメラにおける水平方向又は垂直方向の画素列の画像データを画像データVとして、上述したのと同様にそれぞれの方向における解像度を求めることができる。
【0046】
以上のとおり、本発明のカメラ解像度自動測定方法によれば、周期的な模様16を備えた治具15を撮影位置にセットして、その周期的な模様16をカメラ2で撮影するだけで、精度良くカメラ2の解像度を自動的に測定することができる。このようなカメラ解像度の自動測定方法を用いる本発明の画像検査方法又は画像検査装置においては、撮影に使用するカメラの解像度を精度良く簡便に自動測定することができるので、測定された精度の高い解像度に基づいて、精度の良い画像検査を行うことができるという利点が得られる。
【0047】
図6は、本発明によるカメラ解像度自動調節方法の手順を示すフローチャートである。図6に示すとおり、オペレーターが指令するなどして本発明の画像検査装置1におけるカメラ解像度自動調節機能がスタートすると、画像処理装置8は、まず、Zステージ5を作動させて、設定されている目標解像度となる大凡の位置へカメラ2を移動させる。目標解像度は、検査対象物13の種類、型番などによって予め定められており、画像処理装置8は、指定された検査対象物13に対応する目標解像度を画像処理装置8内の記憶装置から読み出すか、或いは、入出力部9を介して入力された目標解像度に基づいて、カメラ2と検査対象物13との大凡の距離を計算し、カメラ2をその位置へと移動させる。このとき、撮影位置には検査対象物13ではなく、周期的な模様16を備えた治具15がセットされていることは勿論である。なお、検査対象物13が、端子や配線パターンなどの周期的な模様を備えている場合には、検査対象物13をそのまま治具15の代わりに用いても良いことは先に述べたとおりである。
【0048】
続いて、画像処理装置8は、フォーカス調整部7を作動させてカメラ2のフォーカスを治具15の模様16に合わせ、治具15の模様16をカメラ2によって撮影して、周期的な模様16の画像データVを取得する。画像処理装置8は、取得した画像データVに基づいて、上述したカメラ解像度自動測定方法の手順に従って、カメラ2の解像度を自動的に計算する。
【0049】
次に、画像処理装置8は、求められた解像度と目標解像度とを比較し、両者の差が予め定められた許容誤差よりも大きいか否かを判断する。求められた解像度と目標解像度との差が許容誤差よりも大きく許容誤差内でない場合には、画像処理装置8は、求められた解像度と目標解像度との差に基づいて、カメラ2の移動距離を計算し、Zステージ5を再度作動させて、計算で求められた移動距離分だけカメラ2を上昇又は下降させる。その後、上述したのと同様の手順で、フォーカス合わせと画像データの取得、並びに解像度の計算と目標解像度との比較が行われ、求められた解像度と目標解像度との差が予め定められた許容誤差内に収まるまで、同様の手順が繰り返えされる。求められた解像度と目標解像度との差が許容誤差よりも小さく、許容誤差内に収まると、画像処理装置8はカメラ解像度の自動調節が終了したと判断し、終了信号を例えば入出力部9のモニタ画面などに出力し、カメラ解像度自動調節を終了する。
【0050】
上述したような本発明のカメラ解像度自動調節方法の各手順は、すべて画像処理装置8に組み込まれているプログラムに基づいて画像処置装置8によって自動的に実行される。したがって、画像処理装置8は、上記のような各手順を実行する各手段を、ハードウエア及び/又はソフトウエアとして、自身に備えているということになる。
【0051】
以上のとおり本発明のカメラ解像度自動調節方法によれば、画像検査装置のカメラの解像度を自動的に目標解像度に合わせることができるので極めて便利であり、また、そのような本発明のカメラ解像度自動調節方法を実行する手段を備えた本発明の画像検査装置によれば、常に設定された最適の解像度で検査対象物の画像検査を実施することができるという利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したとおり、本発明のカメラ解像度自動測定方法及び自動調節方法によれば、簡便かつ精度良くカメラの解像度を測定したり、目標解像度に合わせることが可能となる。また、本発明のカメラ解像度自動測定方法及び自動調節方法を用いる本発明の画像検査方法や、本発明のカメラ解像度自動測定方法及び自動調節方法を実行する手段を備えた本発明の画像検査装置によれば、所定の解像度で精度良く検査対象物の画像検査を行うことができる。したがって、本発明は、液晶ディスプレイパネルを初め、種々のディスプレイパネルの製造に係わる産業分野において、多大なる産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0053】
1 画像検査装置
2 カメラ
3 可動台
4 支柱
5 Zステージ
6 レンズ系
7 フォーカス調整部
8 画像処理装置
9 入出力部
10 コンベア
11 回転ローラ
12 検査台
13 検査対象物
14 バックライト
15 治具
16 模様
17 撮影領域
18 画素列
19 閾値
T 周期
n ずらし画素数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な模様を備えた対象物をその模様の周期の方向をカメラの解像度を求める方向と一致させて撮影位置にセットする工程;前記周期的な模様を撮像素子を備えた前記カメラによって撮影する工程;撮影によって得られた画像データVと、同画像データを解像度を求める方向に1画素ずつずらした画像データVn(ただし、nはずらし画素数であり、n=0、1、2・・・)との自己相関係数を求める工程;前記周期的な模様に対応する自己相関係数のピークを検出する工程;検出された自己相関係数のピークから2つのピークを選択する工程;選択された2つのピーク間のずらし画素数の差と、選択された2つのピーク間に存在するピーク間領域の数と、前記模様の周期とに基づいて前記カメラの解像度を求める工程を含んでいるカメラ解像度自動測定方法。
【請求項2】
自己相関係数のピークを検出する前記工程が、求められた自己相関係数を予め定められた閾値と比較し、前記閾値を超える自己相関係数をピークとして検出する工程を含んでいる請求項2記載のカメラ解像度自動測定方法。
【請求項3】
検出された自己相関係数のピークから2つのピークを選択する前記工程が、ずらし画素数の差が最も大きな2つのピークを選択する工程である請求項1又2記載のカメラ解像度自動測定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のカメラ解像度自動測定方法によってカメラの解像度を自動的に求める工程、求められた解像度と予め定められた目標解像度との差を求める工程、前記差と予め定められた許容誤差とを比較する工程、前記差が前記許容誤差よりも大きい場合には、前記差に相当する距離だけ前記カメラと対象物との相対的な距離を変更する工程、前記差が前記許容誤差よりも小さい場合には解像度自動調節終了信号を出す工程を含むカメラ解像度自動調節方法。
【請求項5】
請求項4記載のカメラ解像度自動調節方法によってカメラの解像度を自動調節し、その後、検査対象物を前記カメラで撮影して、その撮影された画像に基づいて検査対象物の検査を行う画像検査方法。
【請求項6】
検査対象物がディスプレイパネルである請求項5記載の画像検査方法。
【請求項7】
カメラによって対象物を撮影し、撮影された画像に基づいて対象物の検査を行う画像検査装置であって、少なくとも、撮影位置にセットされた周期的な模様を有する対象物を撮影する撮像素子を備えたカメラと、画像処理装置とを備え;前記画像処理装置は、前記カメラによって撮影された周期的な模様を有する対象物の画像データVと、同画像データをカメラの解像度を求める方向に1画素ずつずらした画像データVn(ただし、nはずらし画素数であり、n=0、1、2・・・)との自己相関係数を求める手段、求められた自己相関係数のピークを検出する手段、検出された自己相関係数のピークから2つのピークを選択する手段、選択された2つのピーク間のずらし画素数の差Δnを求める手段、選択された2つのピーク間に存在するピーク間領域の数Nを求める手段、前記対象物の周期的な模様の周期Tの入力を受け付ける手段、及び前記Δn、N、Tに基づいて前記カメラの解像度を求める手段を備えている画像検査装置。
【請求項8】
前記自己相関係数のピークを検出する手段が、求められた自己相関係数を予め定められた閾値と比較し、前記閾値を超える自己相関係数をピークとして検出する手段である請求項7記載の画像検査装置。
【請求項9】
検出された自己相関係数のピークから2つのピークを選択する前記手段が、ずらし画素数の差が最も大きな2つのピークを選択する手段である請求項7又8記載の画像検査装置。
【請求項10】
さらに前記カメラと撮影位置にセットされた対象物との距離を調節する距離調節手段を備えるとともに、前記画像処理装置が、求められた解像度と予め設定されている目標解像度との差を求める手段、及び、前記差を予め設定されている許容誤差と比較し、前記差が前記許容誤差よりも大きい場合には、前記差に相当する距離だけ前記カメラと対象物との距離を変更する距離変更命令を前記距離調節手段に出し、前記差が前記許容誤差よりも小さい場合には、解像度自動調節終了信号を出す手段とを備えている請求項7〜9のいずれかに記載の画像検査装置。
【請求項11】
ディスプレイパネルの検査装置である請求項7〜10のいずれかに記載の画像検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194000(P2012−194000A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56994(P2011−56994)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000153018)株式会社日本マイクロニクス (349)
【Fターム(参考)】