説明

カラオケ採点方法及びカラオケ採点システム

【課題】楽曲ごとの歌唱の難易度を考慮した公平な採点を行うことができるカラオケ採点方法を提供する。
【解決手段】カラオケコマンダはユーザの歌唱音声を採点し、この採点した実点数、ユーザID、楽曲番号等を含む採点結果をホストサーバへ送信する。ホストサーバは受信した採点結果に含まれる実点数を全楽曲集計データに記録する。全楽曲集計データは、各カラオケコマンダから送信された採点結果の実点数を楽曲ごとに集計したものである。ホストサーバは、全楽曲集計データに記録されている当該採点結果に係る楽曲の平均点数及び標準偏差と、全楽曲の平均点数及び標準偏差とを用いて、当該採点結果の実点数を楽曲の難易度に応じて補正した補正点数を算出し、この算出した補正点数のデータを採点結果送信元のカラオケコマンダに返信する。カラオケコマンダは、ホストサーバから受信した補正点数を歌唱に対する採点の最終結果として表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの歌唱の巧拙を採点するカラオケ採点方法及びカラオケ採点システムシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラオケの歌唱の巧拙を採点する採点機能を有するカラオケ採点システムが実用化されている。また、採点結果を集計したデータに基づき、採点結果の点数に順位を付け、その順位をユーザに通知するランキング機能を有するカラオケ採点システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、この種のカラオケ採点システムでは、採点結果のサンプル数を多くしてランキング機能の面白みを増すために、採点対象となった全楽曲の採点結果を店舗単位や、地方単位、あるいは全国といった規模で一括して集計し、全楽曲の採点結果を対象とする総合的な順位を算出することが行われている。
【特許文献1】特開2006−11235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、カラオケ楽曲には、上手く歌うことが難しい楽曲や簡単な楽曲があり、楽曲ごとに歌唱の難易度にばらつきがある。例えば、図14に示すグラフは、難易度の異なる楽曲A,Bを歌の上手さ(歌唱力)のそれぞれ異なる複数のユーザが歌唱した場合の採点結果の点数を、ユーザの歌唱力を横軸、採点結果の点数を縦軸にとって示すものである。このグラフで示すように、採点結果の点数が総じて高い点数に分布する傾向にある楽曲Aは、歌唱の難易度が低い簡単な楽曲であることが分かる。一方、採点結果の点数が総じて低い点数に分布する傾向にある楽曲Bは、歌唱の難易度が高い難しい楽曲であることが分かる。ここで、歌唱力が平均レベルよりも高いXさんが難しい楽曲Bを歌唱した場合の得点と、歌唱力が平均レベルより低いYさんが簡単な楽曲Aを歌唱した場合の得点とを比較してみると、歌唱力が高いはずであるXさんの得点が歌唱力の低いYさんの得点よりも低いという結果になっている。このケースでは、採点結果の点数の高低が必ずしもユーザの歌唱力の高低を絶対に評価するものではないことを示している。
【0004】
このように、簡単な楽曲を歌唱すれば高得点を得やすく、難しい楽曲を歌唱すると高得点を得にくい傾向があるため、異なる難易度の楽曲の採点結果の点数を単純に比較しても、ユーザの歌唱力を公平に評価することはできない。また、上述のように全楽曲の採点結果の集計に基づいて総合的な順位を付ける場合においても、楽曲の難易度によって楽曲ごとの採点結果の点数の平均値や標準偏差にばらつきがあるため、採点結果の点数を単純に比較しただけでは、ユーザの歌唱力を公平に評価したランキングにはならない。
【0005】
また、歌唱した楽曲の難易度によって採点結果の点数や順位が左右されてしまうようだと、例えば、採点順位に応じた賞品が提供されるカラオケイベントなどに参加したとき等、採点で高得点を獲得し高い順位にランクされたいがために、自分が好きではなくとも簡単な楽曲ばかりを歌唱せざるを得ないといった事態を招くおそれがある。このような状態では、自分の好きな楽曲を楽しんで歌うといったカラオケ本来の楽しみをなくさせてしまうことにもなりかねない。
【0006】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされており、楽曲ごとの歌唱の難易度を考慮した公平な採点を行うことができるカラオケ採点方法及びカラオケ採点システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のカラオケ方法は、採点手順と、蓄積手順と、補正点数算出手順と、提示手順とを有することを特徴とする。採点手順では、カラオケ楽曲の演奏中に入力されたユーザの歌唱を採点する。蓄積手順では、採点手順において算出した採点結果の実点数を楽曲ごとに対応付けて採点結果データベースに統計的に蓄積する。補正点数算出手順では、ある楽曲の歌唱に対する採点結果が採点手順において算出された際、採点結果データベースに蓄積されたデータによる、全楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差と、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差とに基づき、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする当該採点結果の実点数の偏差値と、全楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする補正点数の偏差値とが等しくなるような補正点数を算出する。提示手順では、補正点数算出手順において算出した補正点数を、歌唱に対する採点の最終結果としてユーザに対して提示する。
【0008】
歌唱の採点が行われた全楽曲の実点数の集合に関する統計値と、特定の楽曲に対応する実点数の集合に関する統計値とを比較すれば、全楽曲の平均的な難易度に対する当該楽曲の難易度を推定できる。そこで本発明では、実点数の集合の平均値と標準偏差を用いて、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする当該採点結果の実点数の偏差値と、全楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする補正点数の偏差値とが等しくなるような補正点数を算出する。このようにすることで、楽曲ごとの難易度によって生じる実点数の統計的特徴を考慮した態様にて、ユーザの歌唱の巧拙を正確かつ公平に採点することができる。また、このような手法で補正された点数をユーザに提示することで、ユーザは自身の歌唱力を正確に把握することができ、好適である。
【0009】
また、本発明のカラオケ採点方法によって採点した補正点数を集計して、この集計データを採点結果の順位付けに用いることもできる。このようにすることで、難易度の異なる複数の楽曲に対する採点結果を一括で集計した場合においても、楽曲の難易度の差による点数差を補正した公平な点数に基づいて順位付けを行うことができるので、ユーザの歌唱力を正確かつ公平に反映した順位を算出できる。
【0010】
つぎに、請求項2に記載のカラオケ採点方法は、採点履歴蓄積手順と、受付手順と、補正点数再算出手順と、履歴提示手順とを更に有することを特徴とする。
採点履歴蓄積手順では、採点手順において算出された採点結果の実点数と、この実点数に対して前記補正点数算出手順において算出した歌唱当時の補正点数とを、これらの点数に該当の楽曲の識別情報に対応付けて当該歌唱を行ったユーザの識別情報に対応する採点履歴として個人用採点履歴データベースに蓄積する。受付手順では、ユーザに対応する採点履歴の閲覧要求を受け付ける。
【0011】
そして、補正点数再算出手順では、受付手順において受け付けた閲覧要求に応じて、個人用採点履歴データベースに蓄積された当該ユーザに対応する採点履歴の実点数及びこの実点数に対応する楽曲の識別情報に基づき、この実点数に対する補正点数を現時点での採点結果データベースに蓄積されたデータに基づいて新たに算出する。履歴提示手順では、補正点数再算出手順において新たに算出した補正点数と、個人用採点履歴データベースに蓄積されている当該楽曲の歌唱当時に算出された過去の補正点数とをユーザに対して提示する。
【0012】
このように構成されたカラオケ採点方法によれば、個人用採点履歴データベースに蓄積された個人の採点履歴をユーザからの閲覧要求に応じて閲覧可能である。さらに、この閲覧においては、ユーザが歌唱した当時に算出された過去の補正点数と、当該歌唱当時の実点数を現在の採点結果データベースの統計水準によって新たに補正した補正点数とを比較することができる。これにより、歌唱に対する採点結果を用いた新たなサービスをユーザに対して提供することができる。このサービスによって、ユーザが歌唱した当時の統計水準に基づく歌唱力の評価が、現在の水準ではどの程度変化しているのかをユーザが把握できるので便利である。
【0013】
以上で説明した請求項1,2に記載のカラオケ採点方法は、例えばカラオケ楽曲の演奏を行うカラオケ装置単体によって実現するものであってもよいし、複数のカラオケ装置がネットワークに接続されて構成された、いわゆるカラオケネットワークシステムによって実現するものであってもよい。
【0014】
そして、後者の場合、請求項3に記載のように、カラオケ楽曲の演奏中に入力されたユーザの歌唱の採点する採点手段を備える複数のカラオケ装置と、各カラオケ装置に対してデータを提供するホストサーバとが通信可能に接続されてなるカラオケ採点システムとして構成することが考えられる。
【0015】
このうち、カラオケ装置は、採点手段により採点した歌唱の実点数と当該採点に係る楽曲の識別情報とを対応付けた採点結果をホストサーバに対して送信する採点結果送信手段と、採点結果送信手段により送信した採点結果に対する応答としてホストサーバから返信されてくる補正点数を取得する補正点数取得手段と、補正点数取得手段により取得した補正点数を、歌唱に対する採点の最終結果としてユーザに対して提示する提示手段とを備える。
【0016】
一方、ホストサーバは、各カラオケ装置から送信されてくる採点結果を受信する採点結果受信手段と、採点結果受信手段により受信した採点結果の実点数を楽曲ごとに対応付けて統計的に蓄積する採点結果データベースと、補正点数算出手段と、補正点数算出手段により算出した補正点数を、当該採点結果送信元のカラオケ装置に対して送信する補正点数送信手段とを備える。このうち、前記補正点数算出手段は、採点結果受信手段により採点結果を受信した際、採点結果データベースに蓄積されたデータによる、全楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差と、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差とに基づき、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする当該採点結果の実点数の偏差値と、全楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする補正点数の偏差値とが等しくなるような補正点数を算出する。
【0017】
このように構成されたカラオケ採点システムによれば、歌唱に対する採点を行うカラオケ装置と、採点結果データベースに基づいて補正点数を算出するホストサーバとが連携することで、請求項1に記載のカラオケ採点システムと同様の作用・効果を実現できる。ただし、ホストサーバには複数のカラオケ装置からそれぞれ採点結果がアップロードされてくるため、採点結果データベースにより多くの採点結果のサンプルを蓄積できる。したがって、カラオケ装置単体で本発明のカラオケ採点システムを実現する場合と比較して、より多くのサンプルに基づく、より正確かつ公平な採点を実現できる。
【0018】
つぎに、請求項4に記載のカラオケ採点システムは以下のような特徴を有する。カラオケ装置では、カラオケ楽曲の演奏を、歌唱するユーザの識別情報に対応付けて実行可能に構成されており、採点結果送信手段は、採点結果を当該採点結果に係る歌唱を行ったユーザの識別情報に対応付けてホストサーバへ送信する。さらに、ユーザに対応する採点履歴の閲覧要求を受け付ける受付手段と、受付手段による閲覧要求を当該ユーザの識別情報に対応付けてホストサーバへ送信する閲覧要求送信手段と、閲覧要求送信手段によって送信した閲覧要求に対する応答としてホストサーバから送信されてくる新たな補正点数と過去の補正点数とを取得する採点履歴取得手段と、採点履歴取得手段により取得した新たな補正点数と過去の補正点数とを比較可能な態様でユーザに対して提示する履歴提示手段とを更に備える。
【0019】
一方、ホストサーバでは、個人用採点履歴データベースと、閲覧要求受信手段と、補正点数再算出手段と、履歴送信手段とを更に備える。個人用採点履歴データベースは、採点結果受信手段により受信した採点結果の実点数と、この実点数に対して補正点数算出手段により算出した歌唱当時の補正点数とを、これらの点数に該当の楽曲の識別情報に対応付けて当該歌唱を行ったユーザの識別情報に対応する採点履歴として蓄積する。閲覧要求受信手段は、各カラオケ装置から送信されてくる閲覧要求を受信する。補正点数再算出手段は、閲覧要求受信手段により受信した閲覧要求に応じて、個人用採点履歴データベースに蓄積された当該ユーザに対応する採点履歴の実点数及びこの実点数に対応する楽曲の識別情報に基づき、この実点数に対する補正点数を現在の採点結果データベースに蓄積されたデータに基づいて新たに算出する。履歴送信手段は、補正点数再算出手段により新たに算出した補正点数と、個人用採点履歴データベースに蓄積されている当該楽曲の歌唱当時に算出された過去の補正点数とを当該閲覧要求の送信元のカラオケ装置に対して送信する。
【0020】
このように構成されたカラオケ採点システムによれば、請求項2に記載のカラオケ採点システムと同様に、個人用採点履歴データベースに蓄積された個人の採点履歴をユーザからの閲覧要求に応じて閲覧可能である。さらに、この閲覧においては、ユーザが歌唱した当時に算出された過去の補正点数と、当該歌唱当時の実点数を現在の採点結果データベースの統計水準によって新たに補正した補正点数とを比較することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[カラオケ採点システム1の構成の説明]
図1は、実施形態のカラオケ採点システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、カラオケ採点システム1は、ユーザにカラオケサービスを提供するカラオケ店舗等にそれぞれ設置される複数のカラオケコマンダ2(本発明のカラオケ装置に相当)が、WAN(Wide Area Network)200を介してホストサーバ5に接続されることによって形成されている。
【0023】
カラオケコマンダ2は、ユーザから指定されたカラオケ楽曲の再生を行うための装置である。カラオケコマンダ2は、ハードウェア構成として、CPU21、RAM22、ROM23、ハードディスクドライブ24(以下、HDD24と表記する)、操作部25、表示部26、マイクロホン27、再生部28、ネットワーク通信部29等を備える。
【0024】
CPU21は、ROM23やRAM22に記憶されたプログラムやデータに従って、カラオケコマンダ2各部に対する制御及び各種演算を実行する装置であり、後述する採点処理や個人履歴表示処理等の各種処理は、このCPU21によって実行される。RAM22は、CPU21から直接アクセスされるメインメモリとして利用される記憶装置である。このRAM22には、各種プログラムがHDD24から読み込まれ、また、CPU21による各種演算処理の結果やHDD24から読み込まれたデータもRAM22に記憶される。後述する各種処理を実行する際には、各処理をCPU21に実行させるためのプログラムがHDD24からRAM22に読み込まれる。そして、RAM22に記憶されたプログラムに従って、CPU21が各処理を実行することになる。
【0025】
ROM23は、カラオケコマンダ2の電源スイッチを切っても記憶内容を保持する記憶装置であり、BIOSや通常であれば更新されない読み出し専用のデータ等を記憶している。HDD24は、カラオケ演奏用の楽曲データや、プログラム、各種データ等を保存しておくための記憶装置である。操作部25は、ユーザからの各種指示を入力するための入力装置であり、複数のキースイッチ等によって構成される。表示部26は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置によって構成され、各種映像を表示する。マイクロホン27は、ユーザの歌唱音声を電気信号に変換するための入力装置である。
【0026】
再生部28は、演奏データ(MIDIデータ)に基づく演奏再生を行うMIDI音源、MIDI音源により生成されたオーディオ信号及びマイクロホン27から入力されたオーディオ信号をスピーカへ出力する音声制御部、画像データに基づく映像の再生を制御する映像再生部等を備える。
【0027】
ネットワーク通信部29は、カラオケコマンダ2をWAN200へ接続して外部と通信を行うための通信インタフェースである。カラオケコマンダ2は、このネットワーク通信部29を介して、ホストサーバ5との間で情報通信を行う。
【0028】
なお、本実施形態のカラオケコマンダ2は、ユーザによる歌唱を採点する周知の歌唱採点機能を備えている。この歌唱採点機能は、マイクロホン27から入力されてくる音声信号から抽出した歌唱の音程やテンポを採点基準となるメロディに照合し、その適合度合を点数化することで採点結果とするものである。さらに、カラオケコマンダ2は、本発明の特徴的な処理として、ユーザの歌唱を上記歌唱採点機能で採点した点数(以下、実点数と称する)をホストサーバ5へ送信することで、この実点数をホストサーバ5にて統計的に補正した補正点数を取得し、この補正点数を歌唱に対する採点の最終結果としてユーザに提示する処理を実行する。この処理の詳細な内容については後述する。
【0029】
ホストサーバ5は、WAN200を介して通信可能に接続された各カラオケコマンダ2から送信されてくるカラオケ歌唱の採点結果やユーザの歌唱履歴等を一元管理するデータベース機能を備えたカラオケサービス用のサーバ装置であり、適宜な処理能力を有する情報処理装置等で構成される。ホストサーバ5は、各カラオケコマンダ2から送信されてくるカラオケ歌唱の採点結果やユーザの歌唱履歴等を、全楽曲集計データ(図3参照)や個人用履歴データ(図4参照)等に蓄積する。なお、これらのデータの詳細な内容については後述する。そして、各カラオケコマンダ2からの要求に応じて、これらのデータを利用した演算結果をカラオケコマンダ2に対して提供する。
【0030】
[歌唱の採点に関する処理の説明]
つぎに、カラオケコマンダ2とホストサーバ5とが連携してユーザの歌唱に対する採点を行う一連の処理の流れを、図2のラダーチャートに基づき説明する。
【0031】
図2は、カラオケコマンダ2が歌唱の採点を行い、その採点結果に基づいてホストサーバ5が補正点数を統計的に算出し、その補正点数をカラオケコマンダ2が表示するまでの一連の処理の手順を示すラダーチャートである。
【0032】
まず、カラオケコマンダ2は、ユーザから予約されたカラオケ楽曲の演奏を開始する。なお、本実施形態のカラオケコマンダ2は、本実施形態のカラオケ採点システム1へログインするためのアカウントを有するユーザからのログイン手続きを受け付けることにより、演奏する楽曲の予約や演奏、採点といった種々のカラオケサービスを当該ログインユーザの識別情報(ユーザID)に対応付けることができる。より具体的には、ユーザがカラオケコマンダ2の使用を開始する際、当該カラオケコマンダ2に対するログイン手続きを行う。カラオケコマンダ2へのログイン手続きは、そのカラオケコマンダ2専用の操作端末として対応付けられているリモコン等を用いて、認証用のユーザID及びパスワードを入力することで行われる。そして、カラオケコマンダ2は、自装置にログインしたユーザとの対応付けを行う。具体的には、自カラオケコマンダ2を利用中のログインユーザとして、当該ログインユーザのユーザIDをRAM22等に記憶する。
【0033】
カラオケコマンダ2は、ユーザから予約されたカラオケ楽曲の演奏を開始した後、マイクロホン27を介して入力されるユーザの歌唱音声を採点する。採点は、ユーザの歌唱音声と採点基準のメロディとの適合度合を点数化することにより行う。そして、歌唱期間中の採点結果を集計し、当該歌唱に対する実点数を、例えば満点を100点とする採点方法で算出する。
【0034】
カラオケコマンダ2は、この採点した実点数と、歌唱したユーザのユーザIDと、歌唱した楽曲の楽曲番号と、歌唱した日時とを示す情報を、当該ユーザの歌唱の採点結果としてホストサーバ5へ送信する。ホストサーバ5は、カラオケコマンダ2から採点結果を受信すると、この採点結果に含まれる実点数を当該楽曲の実点数のサンプルとして全楽曲集計データに記録する。
【0035】
ここで、ホストサーバ5が管理する全楽曲集計データの詳細な内容について、図3に基づき説明する。図3は、ホストサーバ5が記憶する全楽曲集計データの一例を模式的に示す説明図である。
【0036】
全楽曲集計データは、各カラオケコマンダ2から送信されてくる採点結果の実点数をその採点された楽曲ごとに集計したデータファイルであり、ホストサーバ5が備えるデータベース内に格納されている。図3に示すように、全楽曲集計データには、楽曲の識別情報である「楽曲番号」の欄に続けて、「蓄積データ数」、「平均点数」、「標準偏差」、「1」,「2」…「n」といった欄が設けられている。「蓄積データ数」の欄には、楽曲ごとに蓄積されている実点数のサンプル数が記録されている。また、「平均点数」の欄には、楽曲ごとの実点数の総和を蓄積データ数で割った平均値が記録されている。「標準偏差」の欄には、楽曲ごとの実点数の集合に対する標準偏差の値が記録されている。また、「1」,「2」…「n」の各欄には、楽曲ごとの個々の実点数が記録されている。
【0037】
さらに、全楽曲集計データには、個々の楽曲ごとの実点数を全て集計した、全楽曲の平均点数及び標準偏差の値が記録されている。
ホストサーバ5は、カラオケコマンダ2から採点結果が送信されてくると、その採点結果に含まれる実点数を全楽曲集計データの該当する楽曲番号の欄に記録すると共に、楽曲ごとの平均点数及び標準偏差と、全楽曲の平均点数及び標準偏差とを算出し、これを全楽曲集計データに記録する。
【0038】
図2のラダーチャートの説明に戻る。ホストサーバ5は、カラオケコマンダ2から通知された採点結果を全楽曲集計データに登録した後、この全楽曲集計データに記録されている当該採点結果に係る楽曲の平均点数及び標準偏差と、全楽曲の平均点数及び標準偏差とを用いて、当該採点結果の実点数を楽曲の難易度に応じて統計的に補正した補正点数を算出する。ここでは、難易度が相対的に高い楽曲に対しては、実点数よりも高い補正点数が算出され、難易度が相対的に低い楽曲に対しては、実点数よりも低い補正点数が算出される。なお、この補正点数の算出方法についての詳細な内容は後述する。ホストサーバ5は、補正点数の算出後、当該ユーザの採点結果及び補正点数等に関する各種データを、個人用履歴データに記録する。
【0039】
ここで、ホストサーバ5が管理する個人用履歴データの詳細な内容について、図4に基づき説明する。図4は、ホストサーバ5が記憶する個人用履歴データの一例を模式的に示す説明図である。
【0040】
個人用履歴データは、個々のユーザごとの歌唱の採点履歴をユーザIDに対応付けて集約したデータファイルであり、ホストサーバ5が備えるデータベース内に格納されている。図4に示すように、個人用履歴データは、ユーザIDに対応付けて、「履歴数」、当該ユーザが歌唱した楽曲の識別情報である「楽曲番号」、「歌唱日」、「歌唱時刻」、「実点数」、「補正点数」、「歌唱時の楽曲毎の平均点数」、「歌唱時の楽曲毎の標準偏差」、「歌唱時の全楽曲の平均点数」、「歌唱時の全楽曲の標準偏差」といった欄が設けられている。そして、このような構成を有するレコードが個々のユーザごと用意され、それぞれホストサーバ5のデータベース内に格納されている。
【0041】
「履歴数」の欄には、当該ユーザの歌唱した楽曲の登録件数が記録されている。また、「歌唱日」と「歌唱時刻」の欄には、当該楽曲が歌唱された日付と時刻がそれぞれ記録されている。また、「実点数」の欄には、当該楽曲の歌唱当時にカラオケコマンダ2によって採点された実点数が記録されている。また、「補正点数」の欄には、当該楽曲の歌唱当時にホストサーバ5によって算出された上述の補正点数が記録されている。また、「歌唱時の楽曲毎の平均点数」、「歌唱時の楽曲毎の標準偏差」、「歌唱時の全楽曲の平均点数」及び「歌唱時の全楽曲の標準偏差」の各欄には、当該楽曲の歌唱当時における全楽曲集計データに基づく、当該楽曲の平均点数及び標準偏差と全楽曲の平均点数及び標準偏差とが、それぞれ記録されている。
【0042】
ホストサーバ5は、カラオケコマンダ2から通知された採点結果と全楽曲集計データとに基づく補正点数の算出後、個人用履歴データの当該ユーザに対応するレコードの上記各欄に、当該採点結果に係る楽曲に関する各データを追加する。
【0043】
図2のラダーチャートの説明に戻る。ホストサーバ5は、個人用履歴データの記録後、当該採点結果に係る補正点数の当該楽曲内での順位と、全楽曲での順位とを算出する。なお、順位の算出にあたっては、過去に算出した全ユーザに対する補正点数を楽曲ごとに集約してデータベースに蓄積しておき、この蓄積した補正点数の集合と、新たに算出した補正点数とを比較することで、楽曲別の順位と全楽曲での順位を算出することが考えられる。
【0044】
つぎに、ホストサーバ5は、算出した補正点数、楽曲別の順位、全楽曲での順位の各データを、採点結果送信元のカラオケコマンダ2に対して返信する。
カラオケコマンダ2は、ホストサーバ5から補正点数を受信すると、この受信した補正点数の当該カラオケ店舗内の順位を算出する。なお、カラオケ店舗内の順位の算出にあたっては、過去に当該カラオケ店舗内の各カラオケコマンダ2で行われた歌唱に対する補正点数を集約してカラオケコマンダ2内のデータベースに蓄積しておき、この蓄積した補正点数の集合と、新たに受信した補正点数とを比較することで、カラオケ店舗内の順位を算出することが考えられる。
【0045】
そして、カラオケコマンダ2は、ホストサーバ5から受信した補正点数、楽曲別の順位、及び全楽曲での順位と、自ら算出した店舗内の順位とを、歌唱に対する採点の最終結果として表示部26に表示する。
【0046】
[カラオケコマンダ2が実行する採点処理の説明]
つぎに、図2のラダーチャートに示す上述の一連の処理のうち、カラオケコマンダ2が実行する処理の詳細な内容について、図5及び図6に基づき説明する。
【0047】
図5は、カラオケコマンダ2が実行する採点処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、カラオケコマンダ2がログインユーザから予約された楽曲を採点モードで演奏する際に実行される処理である。
【0048】
カラオケコマンダ2は、まず、歌唱の採点を実行する採点モードで予約楽曲の演奏を開始し(S100)、マイクロホン27から入力されるユーザの歌唱音声を採点する(S110)。そして、当該楽曲の演奏が終了したか否かを判定する(S120)。当該楽曲の演奏が継続している間(S120:NO)、S110で歌唱音声の採点を継続する。その後、当該楽曲の演奏が終了したと判定した場合(S120:YES)、歌唱期間中の採点結果を集計し、当該歌唱に対する実点数を算出する(S130)。
【0049】
そして、当該歌唱をしたユーザの識別情報であるユーザIDと、歌唱した楽曲の識別情報である楽曲番号と、当該歌唱に対する実点数と、歌唱した日時とを示すデータを採点結果としてホストサーバ5へ送信する(S140)。つづいて、ホストサーバ5からの補正点数及び順位の応答を受信するまでの間、待機する(S150−S160:NO)。
【0050】
S160でホストサーバ5からの応答を受信したと判定した場合(S160:YES)、ホストサーバ5から受信した補正点数のカラオケ店舗内での順位を算出する(S170)。そして、ホストサーバ5から受信した補正点数、楽曲別の順位、及び全楽曲での順位と、S170で算出した店舗内の順位とを歌唱に対する採点の最終結果として、ユーザ名や楽曲名と共に表示部26に所定時間(例えば、5秒間)だけ表示し(S180)、本処理を終了する。
【0051】
図6は、上記S180での採点結果の表示例を模式的に示す説明図である。
図6に示すように、採点結果の表示画面には、歌唱者の名前及び歌唱した楽曲の名称と共に、採点結果の点数(補正点数)、店舗内での順位、楽曲別の順位、全国順位(全楽曲での順位)とが表示される。
【0052】
[ホストサーバ5が実行する採点補正・履歴記録処理の説明]
つぎに、図2のラダーチャートに示す上述の一連の処理のうち、ホストサーバ5が実行する処理の詳細な内容について、図7〜図9に基づき説明する。
【0053】
図7は、ホストサーバ5が実行する採点補正・履歴記録処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、ホストサーバ5において常時繰り返し実行される処理である。
ホストサーバ5は、まず、カラオケコマンダ2から採点結果の通知を受信するまで待機する(S200−S210:NO)。なお、採点結果の通知は、上述の採点処理(図5参照)のS140において送信されるものである。その後、カラオケコマンダ2から採点結果の通知を受信したと判定した場合(S210:YES)、データベースに格納している全楽曲集計データ(図3参照)の該当の楽曲の欄に、当該採点結果の実点数を記録する(S220)。
【0054】
つぎに、全楽曲集計データの当該楽曲に関する各欄のデータから、当該楽曲毎の平均点数及び標準偏差の値と、全楽曲の平均点数及び標準偏差の値とを読み出し、これらの値を用いて当該採点結果に含まれる実点数に対する補正点数を算出する(S230)。具体的には、これらの値を用いて、全楽曲集計データにおける当該楽曲の実点数の集合に対する当該採点結果の実点数の偏差値と、全楽曲集計データにおける全楽曲の実点数の集合を母集団とする補正点数の偏差値とが等しくなるような補正点数を算出する。すなわち、下記の式(1)の等式が成り立つものとして、補正点数xを算出する。これにより、採点結果の実点数を、当該楽曲ごとの偏差値の水準から全楽曲の偏差値の水準に見合った点数へと補正することができる。
【0055】
【数1】

そして、上記式(1)を変形することで、補正点数xは下記の式(2)によって算出できる。
【0056】
【数2】

なお、上記式(1),(2)において、μは全楽曲の平均点数を示し、σは全楽曲の標準偏差を示している。また、当該採点結果に該当する楽曲iの実点数を示し、μiは楽曲iの平均点数を示し、σiは楽曲iの標準偏差を示している。
【0057】
ここで、上記式(2)による補正点数の算出結果の具体例について、図8及び図9を参照して説明する。
全楽曲の実点数の集合が、図8に示すような平均点数80点の点数分布を呈していた仮定する。ここで、ある楽曲Aの実点数の集合が、同じく図8に示すような平均点数87点の点数分布を呈していたと仮定する。この場合、楽曲Aの実点数は、全楽曲の平均点数である80点よりも高い点数の範囲に多く分布しており、楽曲Aは比較的簡単な楽曲であると推定できる。
【0058】
今、楽曲Aを歌唱したXさんの実点数が92点であったとする。Xさんの実点数は、楽曲Aの平均点数87点を上回っているが、Xさんの実点数に対する補正点数は88点となり、実点数よりも低い点数に下方補正されている。ただし、Xさんの補正点数は全楽曲の平均点数を上回っている。一方、楽曲Aを歌唱したYさんの実点数が82点であったとする。Yさんの実点数は、全楽曲の平均点数80点を上回っている反面、楽曲Aの平均点数87を下回っている。この場合、Yさんの実点数に対する補正点数は68点となり、全楽曲の平均点数80点を下回る点数に下方補正されている。
【0059】
つぎに、図9では、ある楽曲Bの実点数の集合が、平均点数75点の点数分布を呈していた場合を想定している。この場合、楽曲Bの実点数は、全楽曲の平均点数である80点よりも低い点数の範囲に多く分布しており、楽曲Bは比較的難しい楽曲であると推定できる。
【0060】
今、楽曲Bを歌唱したXさんの実点数が78点であったとする。Xさんの実点数は、楽曲Bの平均点数75点を上回っているが、全楽曲の平均点数80点を下回っている。この場合、Xさんの実点数は、全楽曲の平均点数80点を上回る点数にまで上方補正され、補正点数は88点となる。一方、楽曲Bを歌唱したYさんの実点数が73点であったとする。Yさんの実点数は、全楽曲の平均点数及び楽曲Bの平均点数の何れも下回っている。この場合、Yさんの実点数は上方補正されて補正点数が76点となるが、全楽曲の平均点数80点より低い点数のままである。
【0061】
図7のフローチャートの説明に戻る。S230で当該採点結果の実点数に対する補正点数を算出した後、個人用履歴データ(図4参照)の該当のユーザに対応するレコードの各欄に、当該採点結果に係る楽曲番号、歌唱日、歌唱時刻、実点数、補正点数、歌唱時における当該楽曲の平均点数及び標準偏差、歌唱時における全が曲の平均点数及び標準偏差をそれぞれ記録する(S240)。
【0062】
つぎに、S240で算出した補正点数の当該楽曲別の順位と、全楽曲での順位とを算出する(S250)。そして、補正点数、楽曲別の順位及び全楽曲での順位を、当該採点結果の送信元であるカラオケコマンダ2に対して返信し(S260)、本処理を終了する。
【0063】
[採点履歴の閲覧に関する処理の説明]
つぎに、カラオケコマンダ2とホストサーバ5とが連携して個人の採点履歴の表示を行う一連の処理の流れを、図10のラダーチャートに基づき説明する。
【0064】
図10は、カラオケコマンダ2が個人の採点履歴の閲覧要求をユーザから受け付け、その閲覧要求に応じてホストサーバ5が履歴データをカラオケコマンダ2へ送信し、その採点履歴をカラオケコマンダ2が表示するまでの一連の処理の手順を示すラダーチャートである。
【0065】
まず、カラオケコマンダ2は、ユーザから個人の採点履歴(以下、個人履歴とも称する)の表示を指示されると、当該ユーザのユーザIDを含む個人履歴の送信要求をホストサーバ5に対して送信する。
【0066】
ホストサーバ5は、カラオケコマンダ2から個人履歴の送信要求を受信すると、個人用履歴データ(図4)から個人履歴送信要求に含まれるユーザIDに該当するレコードを読み出す。つぎに、この読み出したレコードに含まれる各楽曲の実点数に対して、現在の全楽曲集計データ(図3参照)に基づく最新の補正点数を再計算する。そして、当該ユーザの個人用履歴データから読み出した各楽曲の楽曲番号、歌唱当時の補正点数、及び再計算した補正点数を履歴データとして個人履歴要求元のカラオケコマンダに対して返信する。
【0067】
カラオケコマンダ2は、ホストサーバ5から履歴データを受信すると、その内容を表示部26に表示する。
[カラオケコマンダ2が実行する個人履歴表示処理の説明]
つぎに、図10のラダーチャートに示す上述の一連の処理のうち、カラオケコマンダ2が実行する処理の詳細な内容について、図11及び図12に基づき説明する。
【0068】
図11は、カラオケコマンダ2が実行する個人履歴表示処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、カラオケコマンダ2が個人履歴の表示の指示をユーザから受け付けることで開始される。
【0069】
カラオケコマンダ2は、まず、ユーザから受け付けた個人履歴の表示のための指示に基づき、個人履歴の送信要求をホストサーバ5に対して送信する(S300)。この個人履歴の送信要求には、個人履歴の表示を指示したユーザのユーザIDが含まれる。
【0070】
個人履歴の送信要求をホストサーバ5に対して送信した後、ホストサーバ5から履歴データの応答受信するまで待機する(S310−S320:NO)。そして、ホストサーバ5から履歴データの応答を受信したと判定した場合(S320:YES)、この受信した履歴データをRAM22に記録する(S330)。
【0071】
つぎに、ホストサーバ5から受信した履歴データに含まれる各楽曲の再計算された補正点数に基づき、この補正点数の店舗内での順位をそれぞれ算出する(S340)。そして、履歴データに含まれる各楽曲の歌唱当時の補正点数と、再計算された新たな補正点数と、新たな補正点数による店舗内順位とを、当該楽曲の名称やユーザ名称と共に表示部26に表示する(S350)。なお、このとき表示するのは、履歴データに含まれる各楽曲のうち、5楽曲分の情報である。
【0072】
図12は、上記S350での個人履歴の表示例を模式的に示す説明図である。
図12に示すように、採点結果の表示画面には、歌唱者の名前と共に、歌唱した各楽曲の名称、当該楽曲の歌唱当時の補正点数、再計算した新たな補正点数、新たな補正点数による店舗内での順位等が表示される。また、ホストサーバ5から受信した履歴データに5楽曲分以上のデータが含まれている場合には、個人履歴の表示画面を次の楽曲のページへと切り替えるための操作をユーザに対して案内する旨の表示を行う。なお、本実施形態では、カラオケコマンダ2の操作部25、あるいはカラオケコマンダ2に備えられたリモコンに設けられている演奏楽曲の予約をするための「選曲」ボタンを押下することで、個人履歴の表示画面を次のページへと切り替えることができるように構成されているものと想定する。また、楽曲の演奏を中止するための「演奏停止」ボタンを押下することで、個人履歴の閲覧を終了することができるように構成されているものと想定する。
【0073】
図11のフローチャートの説明に戻る。S350で個人履歴を表示した後、「選曲」ボタンが押下されたか否かを判定する(S360)。ここで、「選曲」ボタンが押下されたと判定した場合(S360:YES)、RAM22に記憶した履歴データに基づいて、現在表示中の個人履歴を次の5楽曲分の内容へと切り替え(S370)、S360の処理へ戻る。
【0074】
一方、S360で「選曲」ボタンが押下されていないと判定した場合(S360:NO)、「演奏停止」ボタンが押下されたか否かを判定する(S380)。ここで、「演奏停止」ボタンが押下されていないと判定した場合(S380:NO)、S360の処理へ戻る。一方、「演奏停止」ボタンが押下されたと判定した場合(S380:YES)、個人履歴の表示を終了した後(S390)、本処理を終了する。
【0075】
[ホストサーバ5が実行する履歴データ送信処理の説明]
つぎに、図10のラダーチャートに示す上述の一連の処理のうち、ホストサーバ5が実行する処理の詳細な内容について、図13に基づき説明する。
【0076】
図13は、ホストサーバ5が実行する履歴データ送信処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、ホストサーバ5において常時繰り返し実行される処理である。
ホストサーバ5は、まず、カラオケコマンダ2から個人履歴の送信要求を受信するまで待機する(S400−S410:NO)。なお、個人履歴の送信要求は、上述の個人履歴表示処理(図11参照)のS300において送信されるものである。その後、カラオケコマンダ2から個人履歴の送信要求を受信したと判定した場合(S410:YES)、個人用履歴データ(図4)から当該個人履歴送信要求に含まれるユーザIDに該当するレコードを読み出す(S420)。
【0077】
つぎに、この読み出したレコードに含まれる各楽曲の実点数に対して、現在の全楽曲集計データ(図3参照)に基づく最新の補正点数をそれぞれ再計算する(S430)。なお、補正点数の算出方法については、上述の採点補正・履歴記録処理(図7参照)のS230における上記式(2)を用いた補正点数の算出方法と同様である。そして、当該ユーザの個人用履歴データから読み出した各楽曲の楽曲番号、歌唱当時の補正点数、及び再計算した補正点数を履歴データとして個人履歴要求元のカラオケコマンダに対して返信する(S440)。
【0078】
[効果]
上記実施形態のカラオケ採点システム1によれば、以下のような効果を奏する。
歌唱の採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする当該採点結果の実点数の偏差値と、全楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする補正点数の偏差値とが等しくなるような補正点数を算出することで、採点結果の実点数を、当該楽曲ごとの偏差値の水準から全楽曲の偏差値の水準に見合った点数へと補正することができる。これにより、楽曲ごとの難易度によって生じる実点数の統計的特徴を考慮した態様にて、ユーザの歌唱の巧拙を正確かつ公平に採点することができる。また、このような手法で補正された点数をユーザに提示することで、ユーザは自身の歌唱力を正確に把握することができ、好適である。
【0079】
また、このようにして算出した補正点数を集計し、この集計データを採点結果の順位付けに用いることで、難易度の異なる複数の楽曲に対する採点結果を一括で集計した場合においても、楽曲の難易度の差による点数差を補正した公平な点数に基づいて順位付けを行うことができる。
【0080】
さらに、上記施形態のカラオケ採点システム1では、個人用履歴データに蓄積された個人の採点履歴をユーザからの閲覧要求に応じて閲覧可能である。また、この閲覧においては、ユーザが歌唱した当時に算出された過去の補正点数と、当該歌唱当時の実点数を現在の採点結果データベースの統計水準によって新たに補正した補正点数とを比較することができる。これにより、歌唱に対する採点結果を用いた新たなサービスをユーザに対して提供することができる。このサービスによって、ユーザが歌唱した当時の統計水準に基づく歌唱力の評価が、現在の水準ではどの程度変化しているのかをユーザが把握できるので便利である。
【0081】
なお、上記実施形態のカラオケ採点システム1は、本発明のカラオケ採点方法を、歌唱に対する採点を行う複数のカラオケコマンダ2と、採点結果データベースに基づいて補正点数を算出するホストサーバ5とが接続されたシステムに適用したものである。このようなシステムでは、ホストサーバ5に複数のカラオケコマンダ2からそれぞれ採点結果がアップロードされてくるため、全楽曲集計データにより多くの採点結果のサンプルを蓄積できる。したがって、カラオケ楽曲の演奏を行うカラオケ装置単体で本発明のカラオケ採点システムを実現する場合と比較して、より多くのサンプルに基づく、より正確かつ公平な採点を実現できる。
【0082】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
【0083】
例えば、上記実施形態のカラオケ採点システム1は、本発明のカラオケ採点方法を複数のカラオケコマンダ2とホストサーバ5とが接続されたシステムに適用したものである。これに対し、本発明のカラオケ採点方法をカラオケ楽曲の演奏を行うカラオケ装置単体で実現してもよい。具体的には、上記実施形態のカラオケ採点システム1におけるホストサーバ5が備えるデータベース機能をカラオケ装置に備えるように構成し、ホストサーバ5による全楽曲集計データ(図3参照)や個人用履歴データ(図4参照)の蓄積や、採点結果の実点数に対する補正点数の算出を、カラオケ装置単体で実行できるようにすればよい。このように構成されたカラオケ装置によれば、カラオケ装置がネットワークに接続されずに単体で稼働するような環境においても、本発明のカラオケ採点方法による正確かつ公平な採点を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】カラオケ採点システム1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】歌唱の採点に関する一連の処理の手順を示すラダーチャートである。
【図3】全楽曲集計データの一例を模式的に示す説明図である。
【図4】個人用履歴データの一例を模式的に示す説明図である。
【図5】カラオケコマンダ2が実行する採点処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】採点結果の表示例を模式的に示す説明図である。
【図7】ホストサーバ5が実行する採点補正・履歴記録処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】補正点数の算出結果の具体例を模式的に示す説明図である。
【図9】補正点数の算出結果の具体例を模式的に示す説明図である。
【図10】採点履歴の閲覧に関する一連の処理の手順を示すラダーチャートである。
【図11】カラオケコマンダ2が実行する個人履歴表示処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】個人履歴の表示例を模式的に示す説明図である。
【図13】ホストサーバ5が実行する履歴データ送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】歌唱の難易度が異なる楽曲を歌唱力の異なるユーザがそれぞれ歌唱した際の採点結果の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1…カラオケ採点システム、2…カラオケコマンダ、21…CPU、22…RAM、23…ROM、24…ハードディスクドライブ(HDD)、25…操作部、26…表示部、27…マイクロホン、28…再生部、29…ネットワーク通信部、5…ホストサーバ、200…WAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラオケ楽曲の演奏中に入力されたユーザの歌唱を採点する採点手順と、
前記採点手順において算出した採点結果の実点数を楽曲ごとに対応付けて採点結果データベースに統計的に蓄積する蓄積手順と、
ある楽曲の歌唱に対する採点結果が前記採点手順において算出された際、前記採点結果データベースに蓄積されたデータによる、全楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差と、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差とに基づき、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする当該採点結果の実点数の偏差値と、全楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする補正点数の偏差値とが等しくなるような前記補正点数を算出する補正点数算出手順と、
前記補正点数算出手順において算出した補正点数を、歌唱に対する採点の最終結果としてユーザに対して提示する提示手順とを有すること
を特徴とするカラオケ採点方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカラオケ採点方法において、
前記採点手順において算出された採点結果の実点数と、この実点数に対して前記補正点数算出手順において算出した歌唱当時の補正点数とを、これらの点数に該当の楽曲の識別情報に対応付けて当該歌唱を行ったユーザの識別情報に対応する採点履歴として個人用採点履歴データベースに蓄積する採点履歴蓄積手順と、
ユーザに対応する採点履歴の閲覧要求を受け付ける受付手順と、
前記受付手順において受け付けた閲覧要求に応じて、個人用採点履歴データベースに蓄積された当該ユーザに対応する採点履歴の実点数及びこの実点数に対応する楽曲の識別情報に基づき、この実点数に対する前記補正点数を現時点での前記採点結果データベースに蓄積されたデータに基づいて新たに算出する補正点数再算出手順と、
前記補正点数再算出手順において新たに算出した補正点数と、前記個人用採点履歴データベースに蓄積されている当該楽曲の歌唱当時に算出された過去の補正点数とをユーザに対して提示する履歴提示手順とを更に有すること
を特徴とするカラオケ採点方法。
【請求項3】
カラオケ楽曲の演奏中に入力されたユーザの歌唱の採点する採点手段を備える複数のカラオケ装置と、前記各カラオケ装置に対してデータを提供するホストサーバとが通信可能に接続されてなるカラオケ採点システムにおいて、
前記カラオケ装置は、
前記採点手段により採点した歌唱の実点数と当該採点に係る楽曲の識別情報とを対応付けた採点結果を前記ホストサーバに対して送信する採点結果送信手段と、
前記採点結果送信手段により送信した採点結果に対する応答として前記ホストサーバから返信されてくる補正点数を取得する補正点数取得手段と、
前記補正点数取得手段により取得した補正点数を、歌唱に対する採点の最終結果としてユーザに対して提示する提示手段とを備え、
前記ホストサーバは、
前記各カラオケ装置から送信されてくる前記採点結果を受信する採点結果受信手段と、
前記採点結果受信手段により受信した採点結果の実点数を楽曲ごとに対応付けて統計的に蓄積する採点結果データベースと、
前記採点結果受信手段により前記採点結果を受信した際、前記採点結果データベースに蓄積されたデータによる、全楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差と、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合の平均値及び標準偏差とに基づき、当該採点結果に係る楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする当該採点結果の実点数の偏差値と、全楽曲に対応する実点数の集合を母集団とする補正点数の偏差値とが等しくなるような前記補正点数を算出する補正点数算出手段と、
前記補正点数算出手段により算出した補正点数を、当該採点結果送信元の前記カラオケ装置に対して送信する補正点数送信手段とを備えること
を特徴とするカラオケ採点システム。
【請求項4】
請求項3に記載のカラオケ採点システムにおいて、
前記カラオケ装置では、
カラオケ楽曲の演奏を、歌唱するユーザの識別情報に対応付けて実行可能に構成されており、
前記採点結果送信手段は、前記採点結果を当該採点結果に係る歌唱を行ったユーザの識別情報に対応付けて前記ホストサーバへ送信し、
さらに、ユーザに対応する採点履歴の閲覧要求を受け付ける受付手段と、
前記受付手段による閲覧要求を当該ユーザの識別情報に対応付けて前記ホストサーバへ送信する閲覧要求送信手段と、
前記閲覧要求送信手段によって送信した閲覧要求に対する応答として前記ホストサーバから送信されてくる新たな補正点数と過去の補正点数とを取得する採点履歴取得手段と、
前記採点履歴取得手段により取得した新たな補正点数と過去の補正点数とを比較可能な態様でユーザに対して提示する履歴提示手段とを更に備え、
前記ホストサーバでは、
前記採点結果受信手段により受信した採点結果の実点数と、この実点数に対して前記補正点数算出手段により算出した歌唱当時の補正点数とを、これらの点数に該当の楽曲の識別情報に対応付けて当該歌唱を行ったユーザの識別情報に対応する採点履歴として蓄積する個人用採点履歴データベースと、
前記各カラオケ装置から送信されてくる前記閲覧要求を受信する閲覧要求受信手段と、
前記閲覧要求受信手段により受信した閲覧要求に応じて、個人用採点履歴データベースに蓄積された当該ユーザに対応する採点履歴の実点数及びこの実点数に対応する楽曲の識別情報に基づき、この実点数に対する前記補正点数を現在の前記採点結果データベースに蓄積されたデータに基づいて新たに算出する補正点数再算出手段と、
前記補正点数再算出手段により新たに算出した補正点数と、前記個人用採点履歴データベースに蓄積されている当該楽曲の歌唱当時に算出された過去の補正点数とを当該閲覧要求の送信元のカラオケ装置に対して送信する履歴送信手段とを更に備えること
を特徴とするカラオケ採点システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−237503(P2009−237503A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86917(P2008−86917)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】