説明

カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、カラムスペーサ及び液晶表示素子

【課題】カラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、及び、光反応開始剤を含有し、前記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、少なくとも下記一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ、樹脂酸価が30以上150未満であるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【化1】


式(1)中、Rは、水素又はメチル基を表し、Xは、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジンからなる群より選択される一種のモノマーの重合体からなり、Xの数平均分子量は、500〜1万である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は、2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するためのスペーサを具備し、これらの他に透明電極や偏光板及び液晶物質を配向させる配向層等から構成されている。現在スペーサとしては、主に粒子径が数μm程度の微粒子スペーサが用いられている。しかし、従来の液晶表示素子の製造方法では、ガラス基板上に微粒子スペーサをランダムに散布していたことから、画素部内に微粒子スペーサが配置されてしまうことがあった。画素部内に微粒子スペーサがあると、スペーサ周辺の液晶配向の乱れから光が漏れて画像のコントラストが低下したりする等、画像品質を低下させることがあるという問題がある。これに対して、微粒子スペーサが画素部に配置されないような微粒子スペーサの配置方法が種々検討されているが、いずれも操作が煩雑であり実用性に乏しいものであった。
【0003】
また、近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、ガラス基板の液晶封入面上に、所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル用基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても、液晶の封入が容易であることから、今後はODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
しかし、ODF法において微粒子スペーサを用いると、液晶の滴下時、又は、対向基板の貼り合わせ時に散布した微粒子スペーサが液晶の流動とともに流されて、基板上における微粒子スペーサの分布が不均一となる問題が生じる。微粒子スペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、従来の微粒子スペーサに代って、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したカラムスペーサが提案され、実用化されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
このようなカラムスペーサを用いれば、画素部内にスペーサが配置されてしまう問題や、ODF法においてスペーサムラが生じてしまう問題を解決することができる。
【0005】
しかしながら、カラムスペーサを用いてODF法により製造した大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題となっていた。この「重力不良」の現象は、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げ、その際にカラムスペーサから基板が浮き上がってしまい、このスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が重力によって下方への流動することにより生じると考えられる。
【0006】
このような「重力不良」を解消するためには、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げる際に、いったん圧縮されていたカラムスペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基板とカラムスペーサとの間に隙間が生じないようにすれば解決可能であると考えられる。しかし、従来の方法では、カラムスペーサに高い変形回復力を持たせるためには、カラムスペーサを形成する樹脂を高度に架橋し圧縮時に塑性変形を起こりにくくする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。このような硬い樹脂によりカラムスペーサを形成した場合には、カラムスペーサを圧縮変形させる課程において、大きな圧力が必要であり、得られた液晶表示素子においては、圧縮されたカラムスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。このようなカラムスペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を生じてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【特許文献2】特開2002−251007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、及び、光反応開始剤を含有し、前記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、少なくとも下記一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ、樹脂酸価が30以上150未満であるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物である。
【化1】

式(1)中、Rは、水素又はメチル基を表し、Xは、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジンからなる群より選択される一種のモノマーの重合体からなり、Xの数平均分子量は、500〜1万である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物として、特定の構造と樹脂酸価とを持つアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体と、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物とを併用することにより、優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを有するカラムスペーサを得ることができ、このようなカラムスペーサによれば加熱時の液晶の膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に制御可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0011】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、少なくとも上記一般式(1)で表される構造単位を有する。
上記一般式(1)中、Rは、水素又はメチル基を表し、Xは、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジンからなる群より選択される一種のモノマーの重合体を表す。
このような一般式(1)で表される構造単位(以下、マクロモノマーともいう)を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を含有する本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、製造するカラムスペーサ中に上記マクロモノマー部位同士の相互作用による擬似架橋構造を導入することができるため、カラムスペーサに圧縮変形に対する高度な回復性を発現させることができ、高温時の液晶膨張による重力不良や低温時の液晶収縮による低温発泡を防止することが可能となる。
更に、上記マクロモノマーを構成する原料の種類や分子量等を適宜選択することで、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の親水/疎水(極性)を自在に制御することができるため、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物中での相溶性や現像性を好適なものに制御することができる。
【0012】
上記マクロモノマー中、(X)で表される重合体の数平均分子量の下限は500であり、上限は1万である。500未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ中にマクロモノマー同士の相互作用による擬似架橋構造を導入できないため、製造するカラムスペーサに圧縮変形に対する高度な回復率が発現せず、重力不良や低温発泡が生じる。1万を超えると、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の相溶性が低下するため相分離が生じる。好ましい下限は1000であり、好ましい上限は8000である。
【0013】
このようなマクロモノマーとしては特に限定されず、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジンからなる群より選択される一種のモノマーを原料モノマーとして、従来公知のアニオンリビング重合法等により重合し、その後エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド等のモノエポキシ化合物と反応させて生成した重合体の方末端に、アクリロイル基やメタクリロイル基等の重合性不飽和二重結合を有する化合物を反応させることで得ることができる。
具体的には、P.Dreyfuss & R.P.Quirk、Encycl. Polym.Sci.Eng., 7、551(1987)、P.F.Rempp,& E.Franta, Adv.Polym.Sci.,58,1(1984)、川上雄資「化学工業」38,56(1987)、山下雄也「高分子」31、988(1982)、小林四郎「高分子」30、625(1981)、伊藤浩一「高分子加工」35,262(1986)、東貴四郎、津田隆「機能材料」1987No.10,5等の総説及びそれに引例の文献・特許等に記載の方法に従って合成することができる。
【0014】
また、上記マクロモノマーとしては、市販されているものを用いることもでき、市販されているマクロモノマーとしては、例えば、「AS−6S」、「AN−6S」、「AA−6」(以上、いずれも東亜合成化学社製)等が挙げられる。
【0015】
上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体において、上記マクロモノマーの含有量としては特に限定されないが、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の総量100重量部に対して、好ましい下限は2重量部、好ましい上限は30重量部である。2重量部未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサに上述したマクロモノマーによる効果が充分に得られないことがあり、30重量部を超えると、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体が相分離することがある。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0016】
上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、上記マクロモノマーと、不飽和二重結合を有する単官能化合物とが共重合されたものである。
【0017】
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体等が挙げられる。
【0018】
また、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等からなる成分を含有してもよい。
【0019】
更に、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、アルカリ可溶性官能基として、側鎖にカルボキシル基を含有することが好ましい。上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の側鎖にカルボキシル基を導入する方法としては、例えば、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物を従来公知の方法により共重合する方法が挙げられる。
【0020】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0021】
上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体が側鎖に上記カルボキシル基を含有する場合、上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比としては特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。10重量%未満であると、上記カルボキシル基を側鎖に有することによる上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体へのアルカリ可溶性付与が殆ど得られず、40重量%を超えると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際の現像時の膨潤が著しくなり、カラムスペーサパターンの形成が困難となることがある。より好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0022】
また、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、更に重合性不飽和基を有することが好ましい。アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体が重合性不飽和基を有する場合、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物とも架橋を形成するため、硬化物の強度が強まり、重力不良や低温発泡を効果的に抑制できるだけでなく、感度の向上、耐薬品性の向上等の効果が得られる。上記重合性不飽和基としては特に限定されず、例えば、スチリル基、アクリル基、メタクリル基等のアニオン重合性基;スチリル基、ビニロキシ基等のカチオン重合性基;(メタ)アクリル基やビニルエーテル基等のラジカル重合性不飽和基等が挙げられる。なかでも、ラジカル重合性不飽和基が好適に用いられる。
【0023】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、樹脂酸価が30以上、150未満である。30未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の現像性が低下してしまい、150以上であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際の現像時に流失することがある。好ましい下限は40であり、好ましい上限は120である。なお、本明細書において、「樹脂酸価」とは、樹脂(又は化合物)1gを中和するのに必要なKOH重量を意味する。
【0024】
上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量としては特に限定されないが、好ましい下限は3000、好ましい上限は10万である。3000未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際の現像性が低下することがあり、10万を超えると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際の解像度が低下することがある。より好ましい下限は5000、より好ましい上限は5万である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(カラム:昭和電工社製「Shodex LF−804」、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流速:1mL/min、ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0025】
このようなアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を合成する方法としては特に限定されず、例えば、上述したマクロモノマー、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物、及び、必要に応じて不飽和二重結合を有する単官能化合物をラジカル重合開始剤、必要に応じて分子量調節剤を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により共重合する方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
更に、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体が重合性不飽和基を有する場合、その導入方法としては、例えば、上述した方法で得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体に、重合性不飽和結合と反応性官能基とを一分子内に有する化合物を、反応性官能基を介して上記共重合体に付加又は反応させることで得ることができる。
上記重合性不飽和結合と反応性官能基とを有する化合物としては特に限定されず、例えば、2−メタクリロイルエチルイソシアネート、2−アクリロイルエチルイソシアネート等の(メタ)アクリル基とイソシアネート基とを一分子内に有する化合物;メタクリル酸グリシジル、「サイクロマーM100」及び「サイクロマーA100」(いずれもダイセル化学社製)等の(メタ)アクリル基とエポキシ基とを一分子内に有する化合物等が挙げられる。
【0026】
溶液重合法により上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を合成する場合、使用する溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコール等の脂肪族アルコール類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の極性を有する有機溶剤等が挙げられる。
【0027】
また、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の非水系の分散重合により上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を合成する場合、使用する媒体としては特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の液状の炭化水素や、その他の非極性の有機溶剤等が挙げられる。
【0028】
上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を製造する場合に用いるラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化物、アゾ開始剤等の従来公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
上記ラジカル重合開始剤の使用量としては特に限定されないが、例えば、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の全単量体成分100重量部に対して好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は5.0重量部であり、より好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0029】
また、上記分子量調節剤としては特に限定されず、例えば、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン系の連鎖移動剤等を用いることができる。なかでも、炭素数8以上の長鎖アルキルメルカプタンが、臭気や着色の少なさの点で好適である。
【0030】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する。
上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の3官能のモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
更に、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物として、3官能以上のエポキシアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物も好適である。
【0033】
また、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、カプロラクトン変性された(メタ)アクリレート化合物であってもよい。上記カプロラクトン変性された(メタ)アクリレート化合物を用いることで、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサは、圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立させることができる。
なお、カプロラクトン変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイルオキシ基との間に、カプロラクトンの開環体又は開環重合体が導入されることを指す。また、カプロラクトン変性体とは、このようなカプロラクトン変性が施された化合物を意味する。
【0034】
上記(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性する具体的な方法としては特に限定されず、例えば、触媒の存在下に高温でアルコールとカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性アルコールを合成した後に、このカプロラクトン変性アルコールと(メタ)アクリル酸とを酸性触媒の存在下脱水溶媒を使用してエステル化反応させる方法や、(メタ)アクリル酸とカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後に、アルコールとエステル化反応させる方法等が挙げられる。
【0035】
上記カプロラクトン変性された(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、3官能のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適である。
また、上記カプロラクトン変性された(メタ)アクリレート化合物の4官能以上のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適である。
これらの3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。カプロラクトン変性を行った分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、一般にカプロラクトン変性を行わない化合物に比べて反応性が低下するため、分子内の官能基数が多いものが感度的に有利となるからである。
【0037】
上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、上述の方法により(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性して用いてもよいし、日本化薬社製の「KAYARAD DPCA−120」(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、新中村化学工業社製の「NKエステル AD−TMP−4CL」(カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)等の市販品を用いてもよい。
【0038】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体と上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物との配合比としては特に限定されないが、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の配合量の好ましい下限は25重量部、好ましい上限は900重量部である。25重量部未満であると、充分に光硬化せずにフォトリソグラフィーによりカラムスペーサのパターンを形成することができないことがあり、900重量部を超えると、カラムスペーサを製造する際のアルカリ現像液への溶解性が不足し、現像性が不充分となることがある。より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は500重量部である。
【0039】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有する。
上記光反応開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等の従来公知の光反応開始剤を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物における上記光反応開始剤の配合量としては、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が光硬化しないことがあり、50重量部を超えると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際に、フォトリソグラフィーにおいてアルカリ現像できないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0041】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、酸素による反応障害を軽減するために反応助剤が含有されていてもよい。このような反応助剤と水素引き抜き型の光反応開始剤とを併用することにより光照射したときの硬化速度を向上させることができる。
【0042】
上記反応助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系;トリ−n−ブチルホスフィン等のホスフィン系;s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等のスルホン酸のもの等が挙げられる。これらの反応助剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい
【0043】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することが好ましい。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、熱架橋剤として働き、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することで、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
【0044】
上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるものが挙げられる。これらの2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デュラネート17B−60PX、デュラネートE−402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0046】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物が含有されている場合、その配合量としては、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が充分に熱硬化しないことがあり、50重量部を超えると、得られる硬化物の架橋度が高くなりすぎて後述する弾性特性を満たさないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0047】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、粘度を調整するために希釈剤により希釈されていてもよい。
上記希釈剤としては特に限定されず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組との相溶性、塗工方法、乾燥時の膜均一性、乾燥効率等を考慮して選択すればよく、例えば、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組をスピンコーター、スリットコーター等を用いて塗工する場合には、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が好適である。これらの希釈剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
また、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、基板との密着性を向上させるためにシランカップリング剤等の従来公知の添加剤が含有されていてもよい。
【0049】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いれば、光硬化(及び熱硬化)させることにより圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立したカラムスペーサを製造することができる。このようなカラムスペーサを用いれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制した液晶表示素子を得ることができる。
【0050】
このような本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、カラムスペーサとして用いる場合、光照射及び加熱により硬化させたときの硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎてセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0051】
なお、本明細書において硬化物とは、光照射(及び加熱)により本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をほぼ完全に硬化させたときの硬化物を意味する。ほぼ完全に硬化させる条件は、少なくとも、50mJ/cmの紫外線を照射し、更に、200〜250℃の温度で20分程度熱処理を加えることによりほぼ完全に硬化させることができる。
【0052】
また、本明細書において、15%圧縮とは、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの高さの変形率が15%となるように圧縮することを意味する。また、弾性係数及び回復率は、以下の方法により測定したものである。
即ち、まず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて基板上に形成したカラムスペーサを、10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮する。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとする。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定する。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとする。弾性計数及び回復率は、下記式(1)及び下記式(2)により算出することができる。
【0053】
弾性係数E=F/(D×S) (1)
回復率R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
式(1)中、Fは荷重(N)を表し、Dはカラムスペーサの高さの変形率を表し、Sはカラムスペーサの断面積(m)を表す。
【0054】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、光反応開始剤、及び、必要に応じて、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物、希釈剤等を従来公知の方法により混合する方法が挙げられる。
【0055】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗工して塗膜を形成する塗膜形成工程と、得られた塗膜に所定のパターンが形成されたマスクを介して活性光線を照射し、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光反応開始剤とを反応させて光硬化させ光硬化物を得る光硬化工程と、上記光硬化工程後の光硬化物をアルカリ現像して所定のパターンを形成する現像工程とを有する方法が好適である。
【0056】
上記カラムスペーサの製造方法では、まず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗工して塗膜を形成する塗膜形成工程を行う。塗工の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート等の従来公知の塗工法を用いることができる。塗工した後、一定時間乾燥させることにより塗膜が形成される。
【0057】
次いで、得られた塗膜上に、所定のパターンが形成されたマスクを介して紫外線等の活性光線を照射し、光照射部において、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物と光反応開始剤とを反応させて光硬化物を得る光硬化工程を行う。
上記活性光線の照射量としては、少なくとも、紫外線の場合で100mJ/cm以上であることが好ましい。100mJ/cm未満であると、光硬化が不充分で現像工程においてアルカリ処理したときに露光部まで溶解しパターンが形成されないことがある。
【0058】
次いで、光硬化工程後の光硬化物をアルカリ現像して所定のパターンを形成する現像工程を行う。現像方法としては特に限定されず、水酸化カルシウム等のアルカリ溶液で未露光部分を溶解した後、純水で洗浄する等の従来公知の方法を用いることができる。
【0059】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する場合には、更に、現像工程後のパターン化された光硬化物を加熱することにより、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体と、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物とが反応する。
上記加熱の条件としては、上記パターンの大きさや厚さ等を考慮して適宜決定すればよいが、少なくとも、200℃、20分間以上であることが好ましい。
このような本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなり、25℃における15%圧縮時の弾性係数の下限が0.2GPa、上限が1.0GPaであるカラムスペーサもまた、本発明の1つである。
【0060】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなる本発明のカラムスペーサの高さをセルギャップより若干高くなるように設計して、ODF法等の従来公知の方法により製造することにより、重力不良による色ムラのない液晶表示素子が得られる。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、又は、本発明のカラムスペーサを用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
(1)アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の合成
3L容のセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)60重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、メタクリル酸6重量部、メタクリル酸メチル16重量部、メタクリル酸n−ブチル16重量部、AS−6S(東亞合成化学社製)2重量部、アゾビスバレロニトリル0.2重量部、及び、n−ドデシルメルカプタン0.8重量部を3時間かけて連続的に滴下した。その後、90℃にて30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続し、アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は約18000であった。
更に、得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体の樹脂酸価を測定したところ、97であった。
【0064】
(2)カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の調製
得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液100重量部(固形分率40wt%)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、「DPCA−120」)80重量部、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリティケミカルズ社製)10重量部とDETX−S(日本化薬製)10重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル120重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0065】
(実施例2)
AS−6Sに代えて、AA−6(東亞合成化学社製)を使用し、実施例1と同様にしてアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は約17000であった。
更に、得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体の樹脂酸価を測定したところ、100であった。
その後、得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0066】
(実施例3)
AS−6Sに代えて、AN−6S(東亞合成化学社製)を使用し、実施例1と同様にしてアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は約19000であった。
更に、得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体の樹脂酸価を測定したところ、98であった。
その後、得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0067】
(比較例1)
原料モノマーとして、メタクリル酸6重量部、メタクリル酸メチル17重量部、メタクリル酸n−ブチル17重量部を用いた以外は実施例1と同様にしてアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は約19000であった。
更に、得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル酸共重合体の樹脂酸価を測定したところ、95であった。
その後、得られたアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0068】
(評価)
実施例1〜3、比較例1で得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて、以下の方法により、カラムスペーサの作製及び評価を行った。結果を表1に示した。
【0069】
(1)カラムスペーサの作製
透明導電膜が形成されたガラス基板上に、各実施例及び比較例で得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、80℃、3分間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、30μm角のドットパターンマスクを介して200mJ/cmの紫外線を照射した後、0.04%KOH溶液により60秒間現像し、純水にて30秒間洗浄してカラムスペーサのパターンを形成した。
その後、220℃、1時間のベーキング処理を行った後、形成されたカラムスペーサの断面積は30μm×30μm(900μm)、高さは3.0μmであった。
【0070】
(2)カラムスペーサの評価
(圧縮特性)
温度25℃に調整した室内において、カラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮した。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとした。
次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとした。得られた各値を用いて、下記式(1)及び下記式(2)により15%圧縮時の圧縮弾性係数E及び15%圧縮変形したときの回復率Rを算出した。なお、式(1)中、Eは圧縮弾性係数(Pa)を表し、Fは、荷重(N)を表し、Dは、カラムスペーサの高さ変形率=(H−H)/Hを表し、Sは、カラムスペーサの断面積(m)を表す。
【0071】
E=F/(D×S) (1)
R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0072】
(3)液晶表示素子の製造
カラムスペーサが形成されたガラス基板上に、シール剤(積水化学工業社製)を長方形の枠を描く様にディスペンサーで塗布した。続いて、液晶(チッソ社製、JC−5004LA)の微小滴をガラス基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方のガラス基板を重ねあわせてシール部に高圧水銀ランプを用い紫外線を50mW/cmで60秒照射した。その後、液晶アニールを120℃にて1時間行い熱硬化させ、液晶表示素子を作製した。
【0073】
(4)液晶表示素子の評価
液晶表示素子を点灯表示し、セルギャップの均一性を表示画面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
また、液晶表示素子を垂直に立てた状態で、60℃の条件下にて60時間放置した。放置後、クロスニコル間に液晶表示装置を設置し、目視により表示画像を観察し、重力不良の発生について以下の基準により評価した。
更に、液晶表示素子を−20℃の条件下にて24時間放置した。放置後、クロスニコル間に液晶表示装置を設置し、目視により観察し、低温発泡の発生について以下の基準により評価した。
セルギャップの評価
〇:均一
×:色ムラあり
重力不良の評価
〇:均一
×:色ムラあり
低温発泡の評価
〇:発泡なし
×:発泡あり
【0074】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、
アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、及び、光反応開始剤を含有し、
前記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、少なくとも下記一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ、樹脂酸価が30以上150未満である
ことを特徴とするカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【化1】

式(1)中、Rは、水素又はメチル基を表し、Xは、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジンからなる群より選択される一種のモノマーの重合体からなり、Xの数平均分子量は、500〜1万である。
【請求項2】
アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、更に重合性不飽和基を有することを特徴とする請求項1記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、カプロラクトン変性体であることを特徴とする請求項1又は2記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなり、25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.2〜1.0GPaであることを特徴とするカラムスペーサ。
【請求項6】
請求項1、2、3若しくは4記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、又は、請求項5記載のカラムスペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示素子。


【公開番号】特開2006−335824(P2006−335824A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160155(P2005−160155)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】