説明

カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、カラムスペーサ及び液晶表示素子

【課題】優れた機械的強度を有し、液晶表示素子の製造過程におけるラビング処理によって削られることがなく、かつ柔軟性を有するカラムスペーサを形成することができ、かつ、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性高分子化合物、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び、光反応開始剤を含有するカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、
前記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物の含有量は、前記アルカリ可溶性高分子化合物100重量部に対して150重量部を超えて2000重量部以下であり、かつ、前記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物のうち10〜80重量%が多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物であるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械的強度を有し、液晶表示素子の製造過程におけるラビング処理によって削られることがなく、かつ柔軟性を有するカラムスペーサを形成することができ、かつ、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は、2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するためのスペーサを具備し、これらの他に透明電極や偏光板及び液晶物質を配向させる配向層等から構成されている。現在スペーサとしては、主に粒子径が数μm程度の微粒子スペーサが用いられている。しかし、従来の液晶表示素子の製造方法では、ガラス基板上に微粒子スペーサをランダムに散布していたことから、画素部内に微粒子スペーサが配置されてしまうことがあった。画素部内に微粒子スペーサがあると、スペーサ周辺の液晶配向の乱れから光が漏れて画像のコントラストが低下したりする等、画像品質を低下させることがあるという問題がある。これに対して、微粒子スペーサが画素部に配置されないような微粒子スペーサの配置方法が種々検討されているが、いずれも操作が煩雑であり実用性に乏しいものであった。
【0003】
また、近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、ガラス基板の液晶封入面上に、所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル用基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても、液晶の封入が容易であることから、今後はODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
しかし、ODF法において微粒子スペーサを用いると、液晶の滴下時、又は、対向基板の貼り合わせ時に散布した微粒子スペーサが液晶の流動とともに流されて、基板上における微粒子スペーサの分布が不均一となる問題が生じる。微粒子スペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、従来の微粒子スペーサに代って、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したカラムスペーサが提案され、実用化されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
このようなカラムスペーサを用いれば、画素部内にスペーサが配置されてしまう問題や、ODF法においてスペーサムラが生じてしまう問題を解決することができる。
【0005】
このようなカラムスペーサを形成した基板を用いて液晶表示素子を製造する場合、通常、カラムスペーサの上に更に液晶の配向を規制するための配向膜を形成した後、該配向膜にラビング処理を施す必要がある。
しかしながら、従来のカラムスペーサは、露光時の光硬化反応やポストベーク時の熱反応の条件によっては、ラビング処理時に表面が削られてしまうことがあり、カラムスペーサの高さにバラツキが生じてセルギャップが不均一となり、製造する液晶表示素子の表示品質の低下を招くことがあった。
【0006】
また、従来のカラムスペーサ用樹脂組成物からなるカラムスペーサを用いてODF法により製造した大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題となっていた。この「重力不良」の現象は、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げ、その際にカラムスペーサから基板が浮き上がってしまい、このスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が重力によって下方への流動することにより生じると考えられる。
このような「重力不良」を解消するためには、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げる際に、いったん圧縮されていたカラムスペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基板とカラムスペーサとの間に隙間が生じないようにすれば解決可能であると考えられる。
【0007】
しかし、従来の方法では、カラムスペーサに高い変形回復力を持たせるためには、カラムスペーサを形成する樹脂を高度に架橋し圧縮時に塑性変形を起こりにくくする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。このような硬い樹脂によりカラムスペーサを形成した場合には、カラムスペーサを圧縮変形させる課程において、大きな圧力が必要であり、得られた液晶表示素子においては、圧縮されたカラムスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。このようなカラムスペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を生じてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【特許文献2】特開2002−251007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた機械的強度を有し、液晶表示素子の製造過程におけるラビング処理によって削られることがなく、かつ柔軟性を有するカラムスペーサを形成することができ、かつ、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルカリ可溶性高分子化合物、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び、光反応開始剤を含有するカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物の含有量は、上記アルカリ可溶性高分子化合物100重量部に対して150重量部を超えて2000重量部以下であり、かつ、上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物のうち10〜80重量%が多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物であるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物を一定量含有させるとともに、該分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物の一部を特定の化合物とすることにより、優れた機械的強度を有し、ラビング処理によって表面が削られることがなく、かつ柔軟性を有するカラムスペーサを製造することができ、かつ、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を得ることができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び、光反応開始剤を含有する。
【0012】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に含有される上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物は、含有量がアルカリ可溶性高分子化合物100重量部に対して150重量部を超えて2000重量部以下であり、かつ、上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物のうち10〜80重量%が多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物である。
このような多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物によると、ラビング処理により削られることのない優れた機械的強度を有するカラムスペーサが得られる。なお、本明細書において、「ラビング処理により削られない」とは、ラビング処理後の基板をSEMにより観察した際に、カラムスペーサの削れや破壊、剥がれが観察されないことを意味する。
この理由としては明確ではないが、一般に多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、高い硬化性に加えて、その硬化物は柔軟性を併せ持っており、いわゆる強靱性を有する。また、基材との密着性も良好であることから、このような多官能ウレタン(メタ)アクリレートを添加することにより柔軟性の低下を抑えながらラビングに耐えうる強度を得られると考えられる。
従って、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて製造したカラムスペーサは、液晶表示素子の製造におけるラビング処理により削られることがなく、セルギャップのバラツキが発生することがない。
一方、ウレタン(メタ)アクリレートではない、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル化によって得られる多官能アクリレートを含有することによっても耐ラビング性を改善することは可能であるが、この場合、カラムスペーサの柔軟性が著しく低下してしまう。
【0013】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、例えば、アルキレン直鎖及び脂環構造を有し、2以上のイソシアネート基を含む化合物と、分子内に1以上の水酸基を有する3官能、4官能及び/又は5官能の(メタ)アクリレート化合物とを反応させることで得られる化合物が好適に用いられる。
【0014】
なかでも、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。これは多官能であると架橋点が多く、特に6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが充分な耐ラビング性が発現しやすいためである。このような多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の市販品としては特に限定されず、例えば、ニューフロンティアR−1150(第一工業製薬社製)、KAYARAD DPHA−40H(日本化薬社製)等が挙げられる。
【0015】
上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物における上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量の下限は10重量%、上限は80重量%である。10重量%未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの強度が不充分となり、ラビング処理時に形成したカラムスペーサ表面に削れや破壊、剥がれが生じ、80重量%を超えると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物のアルカリ可溶性が低下し、カラムスペーサ製造時に現像残りが発生する。好ましい下限は15重量%、好ましい上限は50重量%である。
【0016】
また、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物として、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性及びプロピレンオキサイド変性からなる群より選択される少なくとも1種の変性がされた多官能(メタ)アクリレート化合物(以下、変性多官能(メタ)アクリレート化合物ともいう)を含有することが好ましい。なお、本明細書において、カプロラクトン変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、カプロラクトンの開環体又は開環重合体が導入されることを意味する。また、エチレンオキサイド変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、エチレンオキサイドセグメントが導入されることを意味する。更に、プロピレンオキサイド変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、プロピレンオキサイドセグメントが導入されることを意味する。
【0017】
このような変性多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、製造されるカラムスペーサが特に優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを有するものとなり、このようなカラムスペーサを用いて製造した液晶表示素子に加熱時の液晶膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制可能である。
なお、上記「重力不良」とは、液晶表示素子の使用中に液晶セル内の液晶が加熱されて膨張してセルギャップを押し広げたときに、カラムスペーサが基板から浮き上がってしまい、カラムスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる現象をいう。また、上記「低温発泡」とは、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が低下し、わずかの衝撃をきっかけにて気泡が発生する現象をいう。
【0018】
上記変性多官能(メタ)アクリレート化合物がカプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート化合物である場合、該多官能(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性した化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性した化合物等が挙げられる。なかでも、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性した化合物は、重合反応の進行が速く、露光感度を向上させやすいことから特に好適である。
これらの変性多官能(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記変性多官能(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性の変性度としては、ベースとなる多官能(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとした場合、多官能(メタ)アクリレート化合物1モルに対して好ましい下限は0.5nモル、好ましい上限は5nモルである。0.5nモル未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をカラムスペーサ用途に用いた場合、製造するカラムスペーサの柔軟性が不充分となることがあり、5nモルを超えると、カラムスペーサを製造する際の露光時の反応性が低下し、製造するカラムスペーサのパターニングが困難となることがある。より好ましい下限は1nモル、より好ましい上限は3nモルである。
【0020】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性する具体的な方法としては特に限定されず、例えば、多価アルコールとカプロラクトンを反応させ、カプロラクトン変性アルコールを合成した後、(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法;(メタ)アクリル酸とカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後、アルコールとエステル化反応させる方法;(メタ)アクリル酸、カプロラクトン、並びに、多価アルコールを一括反応させる方法等が挙げられる。
【0021】
また、上記変性多官能(メタ)アクリレート化合物が、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート化合物である場合、該多官能(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されず、例えば、上述した3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性した化合物等が挙げられる。なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、或いは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートにカルボキシル基を付加させた化合物を、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性したものであることが好ましい。
【0022】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物のエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性の変性度としては、ベースとなる多官能(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとした場合、多官能(メタ)アクリレート化合物1モルに対して好ましい下限は0.5nモル、好ましい上限は15nモルである。0.5nモル未満であると、製造するカラムスペーサの柔軟性が不充分となることがあり、15nモルを超えると、アルカリ現像液への親和性が高くなり、膨潤による解像性の低下が起こりやすくなる。より好ましい下限は3nモル、より好ましい上限は10nモルである。
【0023】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物をエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性する具体的な方法としては特に限定されず、例えば、多価アルコールとエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとを反応させ、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性アルコールを合成した後、このエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法;(メタ)アクリル酸とエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとを反応させ、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸を合成した後、アルコールとエステル化反応させる方法;(メタ)アクリル酸、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、並びに、多価アルコールを一括反応させる方法等が挙げられる。
【0024】
上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物において、上述した変性多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は90重量%である。20重量%未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて製造するカラムスペーサが優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを有することが困難となる。90重量%を超えると、カラムスペーサの強度が不足し、ラビングによって削れや破壊、剥がれが生じることがある。より好ましい下限は40重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0025】
ここで、上述した変性多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する場合に限らず、その他の方法によっても、優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを兼ね備えたカラムスペーサは、ラビング処理により削られやすいという問題がある。しかしながら、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物として、上述した多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するものであるため、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて製造したカラムスペーサが、上記変性多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することによって、又は、その他の方法によって、優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを兼ね備えたものであったとしても、機械的強度に優れたものとなり、ラビング処理により削られることを防止することができる。
【0026】
ここで、一般的に入手しやすい分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物はアルカリ現像液に対する溶解性が低く、現像工程での現像液廃液の濁りが生じ、異物不良等の問題となることがある。この改善策としては、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物へカルボキシル基を導入し、アルカリ現像液への溶解性を向上させることが好ましい。例えば、分子内にカルボキシル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アートレジンUN−5507、HCN−1(根上工業社製)が挙げられる。
【0027】
また、上記変性多官能(メタ)アクリレート化合物となる多官能(メタ)アクリレート化合物(変性する前の化合物)が、分子内に1以上のカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物である場合には、このような化合物を含有する本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサが圧縮変形からの回復性に優れたものとなり、このようなカラムスペーサを用いて製造した液晶表示素子に加熱時の液晶膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制可能である。更にフォトリソグラフの手法によりカラムスペーサとなるパターン形成する際に、現像残渣を生ずることなく、シャープな解像性を得ることができる。また、現像液に対する溶解性が高いために、現像液をリサイクルして使用する際には、現像液の回収フィルター詰りが生じにくく、高いプロセス適性を生み出すことができる。
【0028】
上記分子内に1以上のカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性等した化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性等した化合物等が挙げられる。なかでも、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性等させた化合物は、重合反応の進行が速く、露光感度を向上させやすいことから特に好適である。
これらの分子内に1以上のカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
このような分子内に1以上のカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性の変性度、並びに、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性の変性度としては、先述した変性多官能(メタ)アクリレートにおいて説明した内容と同様である。
【0030】
分子内に1以上のカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリル基の一部に、カルボキシル基を有する化合物を付加反応させることによりカルボン酸を導入した(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。このようなカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することで、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、フォトリソグラフの手法によるパターン形成時の露光感度を得るために必要な速やかな重合反応性と、現像時の解像性を得るために必要なアルカリ現像液との親和性に優れたものとなる。
【0031】
上記カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を得る方法としては特に限定されず、例えば、I)水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の水酸基に、無水コハク酸やテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物を付加する方法、II)3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリル基に、チオサリチル酸等のチオール基とカルボキシル基とを有する化合物を、エン−チオール反応により付加する方法等が挙げられる。
【0032】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物においては、重合反応の進行が速く、露光感度を向上させやすいことから、分子内の(メタ)アクリル基の数の好ましい下限は3である。
また、上記カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内のカルボキシル基の好ましい上限は2である。3以上であると、現像液への溶解性・膨潤性が高くなり、例えば、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が現像パターンの剥離や、膨潤性による解像度の低下が起こりやすくなる。
【0033】
上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物に対するカルボキシル基の導入量としては特に限定されないが、好ましい下限は酸価5KOHmg/g、好ましい上限は酸価50KOHmg/gである。酸価が5KOHmg/g未満であると、現像工程での現像液廃液の濁りが生じ、異物不良を生じてしまう恐れがある。50KOHmg/gを超えると、アルカリへの溶解性が高すぎて、現像工程でスペーサパターンが消失してしまう場合がある。
なお、本明細書において、上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物の酸価は、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物1gを有機溶剤へ溶かし、フェノールフタレインを指示薬として水酸化カリウムで滴定するとき、中和までに要する水酸化カリウムのmg数で示すものとする。
【0034】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物における上記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物の含有量は、上記アルカリ可溶性高分子化合物100重量部に対して150重量部を超えて2000重量部以下である。含有量がこの範囲を外れると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の硬化物に柔軟性が得られず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子に低温発泡及び重力不良による色ムラ等が発生してしまう。好ましい下限は200重量部、好ましい上限は1000重量部である。
【0035】
また、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、上述した変性多官能(メタ)アクリレート化合物に加えて、反応性、現像性等を調整するために、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性された部位を有さない重合性不飽和結合を有する化合物(以下、単に重合性不飽和結合含有化合物ともいう)を、例えば、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて製造するカラムスペーサの柔軟性や現像性を損なわない範囲で併用してもよい。
【0036】
上記重合性不飽和結合含有化合物としては特に限定されず、例えば、2官能のものとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
また、3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0038】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が上記重合性不飽和結合含有化合物を含有する場合、その配合量としては特に限定されないが、上記変性多官能(メタ)アクリレート化合物との合計量の40重量%未満であることが好ましい。40重量%を超えると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて得られるカラムスペーサの柔軟性が損なわれ、重力不良及び低温発泡の抑制効果が低下することがある。より好ましい上限は30重量%である。
【0039】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に用いられるアルカリ可溶性高分子化合物は、レジスト現像として一般的な、アルカリ現像においてアルカリ現像液に溶解性を有するものである。本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に用いられるアルカリ可溶性高分子化合物としては特に限定されないが、分子鎖中にカルボン酸、ジカルボン酸無水物、又は、カルボン酸塩を含有することで、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液への溶解性を有する高分子化合物が好ましい。
このようなアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合した共重合体等のアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物が挙げられる。
【0040】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0041】
また、上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等からなる成分を含有してもよい。
【0042】
更に、上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物は、現像時の溶解性を制御する等の目的で水酸基を有する単官能不飽和化合物を含有してもよい。水酸基を有する単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、分子内に水酸基を1つ有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物において、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。10重量%未満であると、アルカリ可溶性を付与することが困難であり、40重量%を超えると、現像時の膨潤が著しくパターンの形成が困難となることがある。より好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0044】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により重合する方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
【0045】
また、上記アルカリ可溶性高分子化合物としては、特に、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体(A1)が好適である。
側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体(A1)としては、例えば、少なくとも酸性官能基を有する構成単位と水酸基を有する構成単位とからなる主鎖を有し、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物が該イソシアネート化合物のイソシアネート基を介して上記酸性官能基の少なくとも一部にアミド結合している及び/又は上記水酸基の少なくとも一部にウレタン結合している重合体が好適である。
【0046】
上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体(A1)としては、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)及び(1e)で表される構造単位からなる共重合体も好適である。
【0047】
【化1】

【0048】
式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)及び(1e)中、A及びAは、水素、下記式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)を表し、A又はAのいずれか一方が水素である場合、他方は下記式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)のいずれかである。Rは、水素及び/又はメチル基を表し、Rは、アルキル基、フェニル基、アルキル基若しくはアルコキシ基を含むフェニル基、ヒドロキシアルキル基又は脂環式炭化水素を表し、Rは、ニトリル基又はフェニル基を表し、Rは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はラジカル重合性基含有脂肪族炭化水素を表す。また、a、b、c、d、eは、各成分のモル比率(%)を表し、a+b+c+d+e=100とするとき、a、b及びdは0〜90、cは5〜50、eは5〜60である。
【0049】
【化2】

【0050】
このような共重合体を含有することにより、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を硬化してなるカラムスペーサは、圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立させることができる。また、上記共重合体は、セグメントの極性が低いため組成物中での相溶性に優れる。これにより、カラムスペーサの製造時の現像処理において現像ムラ等の不具合が生じることもない。
【0051】
なかでも、柔軟性の高いウレタン結合を構造中に有するため高い架橋性を保ったまま柔軟性が付与できる、ウレタン結合が適度な極性を有するため組成物中での相溶性に優れる等の理由から、上記共重合体中のA及び/又はAは、上記式(2b)で表されることが好ましい。
【0052】
また、具体的には、例えば、サイクロマーP(ダイセル化学社製)等が市販されており、更に、サイクロマーP中に含有される水酸基及びカルボキシル基の一部にイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、アルコール化合物等を反応させることによって上記共重合体を得ることもできる。
【0053】
上記アルカリ可溶性高分子化合物としては、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物と、ブロックイソシアネート基含有不飽和化合物とを含有する共重合体(A2)も好適である。このような構造を有する共重合体(A2)を含有する本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いて製造したカラムスペーサは、弾性に優れ、圧縮変形からの回復率に優れたものとなり、製造した表示素子には後述する重力不良が生じることを抑制できる。この理由は、明確ではないが、以下の通りであると考えられる。すなわち、カラムスペーサを製造する際のポストベーク工程において、アルカリ可溶性高分子化合物中のブロックイソシアネート基、カルボキシル基(及び水酸基)が反応することで、アルカリ可溶性高分子化合物の可塑剤的な挙動が抑制され、製造するカラムスペーサの圧縮変形における塑性変形が抑えられるためと考えられる。
【0054】
上記アルカリ可溶性高分子化合物としては、側鎖にエポキシ基を有するアルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体(A3)も好適である。このような共重合体(A3)としては、例えば、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物、エポキシ基含有不飽和化合物、及び、これら以外のその他の不飽和化合物の共重合体が挙げられる。
【0055】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有する。
上記光反応開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等、従来公知の光反応開始剤が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記光反応開始剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は15重量%である。0.1重量%未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が光硬化しないことがあり、15重量%を超えると、フォトリソグラフィーにおいてアルカリ現像できないことがある。より好ましい下限は0.3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0057】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、酸素による反応障害を軽減するために反応助剤を含有してもよい。このような反応助剤と水素引き抜き型の光反応開始剤とを併用することにより光照射したときの硬化速度を向上させることができる。
【0058】
上記反応助剤としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系;トリ−n−ブチルホスフィン等のホスフィン系;s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等のスルホン酸のもの等を用いることができる。これらの反応助剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することが好ましい。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、熱架橋剤として働き、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することで、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
【0060】
上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるもの等が挙げられる。これらの2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
また、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デュラネート17B−60PX、デュラネートE−402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0062】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物が含有されている場合、その配合量としては、上記アルカリ可溶性高分子化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が充分に熱硬化しないことがあり、50重量部を超えると、得られる硬化物の架橋度が高くなりすぎて後述する弾性特性を満たさないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0063】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、粘度を調整するために希釈剤により希釈されてもよい。
上記希釈剤としては、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物との相溶性、塗工方法、乾燥時の膜均一性、乾燥効率等を考慮して選択すればよく特に限定されないが、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をスピンコーター、スリットコーターを用いて塗工する場合には、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が好適である。これらの希釈剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、基板との密着性を向上するためのシランカップリング剤等、従来公知の添加剤が含有されていてもよい。
【0065】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物を一定量含有し、かつ、該分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物の一部が多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物であるため、液晶表示素子の製造過程におけるラビング処理によって、表面が削られることのない優れた機械的強度を有するカラムスペーサを製造することができる。
【0066】
なお、本明細書において硬化物とは、光照射(及び加熱)により本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をほぼ完全に硬化させたときの硬化物を意味する。ほぼ完全に硬化させる条件は、少なくとも、50mJ/cmの紫外線を照射し、更に、加熱する場合は、200〜250℃の温度で20分程度熱処理を加えることによりほぼ完全に硬化させることができる。
【0067】
更に、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立したカラムスペーサを製造することができる。このようなカラムスペーサを用いれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制した液晶表示素子を得ることができる。
このような本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、光照射(及び加熱)により硬化させたときの硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎて、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサがセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いた基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0068】
なお、本明細書において15%圧縮とは、カラムスペーサの高さの変形率が15%となるように圧縮することを意味する。更に、弾性係数及び回復率は、以下の方法により測定したものである。
すなわち、まず、基板上に形成したカラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮する。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとする。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定する。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとする。弾性係数及び回復率は、下記式(1)及び下記式(2)により算出することができる。
【0069】
弾性係数E=F/(D×S) (1)
回復率R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0070】
式(1)中、Fは荷重(N)を表し、Dはカラムスペーサの高さの変形率を表し、Sはカラムスペーサの断面積(m)を表す。
【0071】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上述したアルカリ可溶性高分子化合物、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物、光反応開始剤、並びに、必要に応じて添加される2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物、希釈剤等を従来公知の方法により混合する方法が挙げられる。
【0072】
次に、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する方法を説明する。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する場合には、まず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を所定の厚さになるように基板上に塗工して被膜を形成する。
上記塗工の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート、スリット&スピン、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート等の従来公知の塗工法を用いることができる。
【0073】
次いで、形成した被膜上に、所定のパターンが形成されたマスクを介して、紫外線等の活性光線を照射する。これにより、光照射部においては、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物中に含まれるアルカリ可溶性高分子化合物と光反応開始剤とが反応して光硬化する。
上記活性光線の照射量としては特に限定されないが、紫外線の場合で50mJ/cm以上であることが好ましい。50mJ/cm未満であると、光硬化が不充分で続くアルカリ処理を行ったときに露光部まで溶解しパターンが形成されないことがある。
【0074】
次いで、光硬化後の光硬化物をアルカリ現像して基板上に本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の光硬化物からなる所定のパターンのカラムスペーサを製造する。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、上述したアルカリ可溶性高分子化合物を含有するため、優れたアルカリ現像性を有し、また、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するため、製造するカラムスペーサの機械的強度が優れたものとなる。更に、上述した変性多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、その硬化物が圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率とを有し、所定のパターンを形成した際に殆ど残滓が生じることがなく、かつ、解像性に優れるシャープなパターンのカラムスペーサを形成することができる。
【0075】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する場合には、更に、現像処理後のパターン化された光硬化物を加熱することにより、含有されるアルカリ可溶性高分子化合物と2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物とが反応する。
上記加熱の条件としては、上記パターンの大きさや厚さ等を考慮して適宜決定すればよいが、少なくとも、200℃、20分間以上であることが好ましい。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサもまた、本発明の1つである。
【0076】
本発明のカラムスペーサは、25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎてセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。このような弾性係数を有するカラムスペーサは、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が、上述した変性多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することで得ることができる。
【0077】
このような弾性係数を有する本発明のカラムスペーサは、その高さをセルギャップより若干高くなるように設計して、ODF法等の従来公知の方法により製造することにより、低温発泡を生ずることなく重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制することができる液晶表示素子を得ることができる。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、又は、本発明のカラムスペーサを用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、優れた機械的強度を有し、液晶表示素子の製造過程におけるラビング処理によって削られることがなく、かつ柔軟性を有するカラムスペーサを形成することができ、かつ、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
(1)アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物の重合
3Lのセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、メタクリル酸メチル10重量部、メタクリル酸8重量部、メタクリル酸n−ブチル12重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル10重量部、アゾビスバレロニトリル0.4重量部、及び、n−ドデシルメルカプタン0.8重量部を3時間かけて連続的に滴下した。その後、90℃にて30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続し、アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物溶液(固形分40重量%)を得た。
得られたアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は約20000であった。
【0081】
(2)カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の調製
得られたアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1モルにカプロラクトン12モルを付加したもの、日本化薬社製、DPCA−120)50重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)12重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュアー907)20重量部、多官能ブロックイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート17B−60PX)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル135重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0082】
(3)カラムスペーサの作製
透明導電膜が形成されたガラス基板上に、得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、オーブン中で100℃、2分間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、ドットパターンマスクを介して200mJ/cmの紫外線を照射した後、0.04%KOH溶液により60秒間現像し、純水にて30秒間洗浄してカラムスペーサのパターンを形成した。さらに、220℃、1時間のベーキング処理を行った。得られたカラムスペーサの径は12μm、高さは3.0μmであり、このような形状のカラムスペーサを1平方ミリあたり100ヶの密度で形成した。
【0083】
(4)液晶表示素子の製造
得られたカラムスペーサが形成されたガラス基板上に、配向膜を形成し、ラビングを施した。次に、シール剤(積水化学工業社製)を長方形の枠を描く様にディスペンサーで塗布し、液晶(チッソ社製、JC−5004LA)の微小滴をガラス基板の枠内全面に滴下した。続いて、真空貼合により、対向するガラス基板を貼り合わせ、シール部に高圧水銀ランプを用いて紫外線を50mW/cmで60秒照射して硬化した。最後に、液晶アニールを120℃にて1時間行い、液晶表示素子を作製した。
【0084】
(実施例2)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を75重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を25重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0085】
(実施例3)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を150重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を50重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0086】
(実施例4)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を300重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を100重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0087】
(実施例5)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を600重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を200重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0088】
(実施例6)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を100重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を100重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0089】
(実施例7)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を50重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を150重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0090】
(比較例1)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を36重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を4重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0091】
(比較例2)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を660重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を220重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0092】
(比較例3)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を200重量部とし、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0093】
(比較例4)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を180重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を20重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0094】
(比較例5)
実施例1においてカルボキシル基含有高分子化合物溶液100重量部に対して、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)の配合量を20重量部、10官能ウレタンアクリレート化合物(日本化薬社製、DPHA−40H)の配合量を180重量部とした以外は実施例1と同様にして、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0095】
(評価)
実施例1〜7及び比較例1〜5で得られたカラムスペーサ及び液晶表示素子について以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0096】
(1)カラムスペーサの評価(15%圧縮)
温度25℃に調整した室内において、カラムスペーサを10mN/秒の荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮した。ここで1mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとした。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとした。得られた各値を用いて、下記式(1)及び下記式(2)により15%圧縮時の圧縮弾性係数E及び15%圧縮変形したときの回復率Rを算出した。
【0097】
弾性係数E=F/(D×S) (1)
回復率R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0098】
(2)耐ラビング性の評価
カラムスペーサを形成した基板にラビング装置によりラビングを施した後に、SEMによりカラムスペーサの削れや破壊、剥がれを観察することにより評価した。
ラビングは、直径80mmのラビングロールにレーヨン製ラビング布YA−20−R(吉川化工社製)を貼付し、ラビングロール回転数780rpm、ステージ送り速度60mm/秒、押し込み量0.9mmの条件で、順目方向に3回施した。
SEM観察により、以下の基準により評価した。
耐ラビング性の評価
〇:削れ、破壊、剥がれなし
×:削れ、破壊、剥がれあり
【0099】
(3)液晶表示素子の評価
液晶表示素子を点灯表示し、セルギャップの均一性を表示画面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
また、液晶表示素子を垂直に立てた状態で、60℃の条件下にて60時間放置した。放置後、クロスニコル間に液晶表示装置を設置し、目視により表示画像を観察し、重力不良の発生について以下の基準により評価した。
更に、液晶表示素子を−20℃の条件下にて24時間放置した。放置後、引き続き−20℃の条件下にてクロスニコル間に液晶表示装置を設置し、目視により観察し、低温発泡の発生について以下の基準により評価した。
セルギャップの評価
〇:均一
×:色ムラあり
重力不良の評価
〇:均一
×:色ムラあり
低温発泡の評価
〇:発泡なし
×:発泡あり
【0100】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、優れた機械的強度を有し、液晶表示素子の製造過程におけるラビング処理によって削られることがなく、かつ柔軟性を有するカラムスペーサを形成することができ、かつ、低温発泡及び重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できる液晶表示素子を得ることができるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性高分子化合物、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物、及び、光反応開始剤を含有するカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、
前記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物の含有量は、前記アルカリ可溶性高分子化合物100重量部に対して150重量部を超えて2000重量部以下であり、かつ、前記分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物のうち10〜80重量%が多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物である
ことを特徴とするカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物は、分子内にカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物は、カプロラクトン変性、エチレンオキサイド変性及びプロピレンオキサイド変性からなる群より選択される少なくとも1種の変性がされた多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
硬化させて得られる硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.2〜1.0GPaであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラムスペーサ。
【請求項7】
請求項1、2、3、4若しくは5記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、又は、請求項6記載のカラムスペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示素子。


【公開番号】特開2009−222799(P2009−222799A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64618(P2008−64618)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】