説明

カラム保持機構および向流クロマトグラフ装置

【課題】カラムの自転と公転とが非同期で作動する向流クロマトグラフ装置を提供する。
【解決手段】向流クロマトグラフ装置は、互いに反対方向に等しい角速度で自転する第1、第2カラム4、6を備え、各カラム4、6は公転しながら自転する。各カラム4、6の螺旋状流路内で溶液とした試料混合物から目的物質を分離する。第1カラム4下端にはロワーシャフト21が備えられ、ロワーシャフト21は試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の給液口15eを保持する。ロワーシャフト21には第1の回転シール機構34が回転自在に組み付けられ、第1の回転シール機構34は供給管36を給液口15eに液密に連通させる。第2カラム6下端にはロワーシャフト31が備えられ、ロワーシャフト31は分離した物質が溶解した移動相となる溶媒及び移動相となる溶媒の排液口15fを保持する。ロワーシャフト31には第2の回転シール機構35が回転自在に組み付けられ、第2の回転シール機構35は排液管37を給液口15fに液密に連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、惑星運動するカラムを作動させながら溶液に溶解させた試料混合物からの目的物質の分離を行うためのカラム保持機構およびこの機構を備えた向流クロマトグラフ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料混合物から目的物質を分離するため、固定相となる溶媒と移動相となる溶媒との間の目的物質の分配係数と他の共存試料物質の分配係数との差を利用して溶液に溶解した試料混合物から目的物質を分離する向流クロマトグラフ装置が発展しつつある。向流クロマトグラフ装置は、固定相となる溶媒および移動相となる溶媒とが導入される螺旋状の流路を有し、この螺旋状流路は例えばフローチューブが螺旋状に形成されることで形成される。螺旋状流路を備えたカラムは、螺旋外部の公転軸のまわりを公転しながら螺旋内を貫通する自転軸を中心に自転し、螺旋状流路内には試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒が流通する。螺旋状流路の配置としては、自転軸が公転軸に対して略垂直をなすように螺旋状流路を配置したタイプの向流クロマトグラフ装置(特許文献1参照)や、自転軸が公転軸に対して略平行をなすように螺旋状流路を配置した向流クロマトグラフ装置(特許文献2参照)などがあり、このように配置された螺旋状流路を惑星運動させることにより、固定相としてカラム内に導入された溶媒が螺旋状流路内に一定の割合で保持され、螺旋状流路内に導入された試料溶液中の目的物質は、固定相として導入された溶媒と移動相として導入された溶媒との間で分配され、他の共存試料物質と分離された後、移動相となる溶媒と共に溶出することができる。
【0003】
特許文献3に示される向流クロマトグラフ装置が開発された。この向流クロマトグラフ装置は、公転軸と略平行な自転軸を有するカラムを備え、これらカラムが公転軸及び自転軸に基づいて惑星運動する。惑星運動するカラムは、公転速度に同期しつつ公転方向と反対方向(逆方向)に自転しており、改善が図られている。
更に最近は、特許文献4に示される汎用型の向流クロマトグラフ装置が開発された。この装置は従来のカラムの公転と同じ方向(順方向)の自転を行うカラムと、逆方向に自転するカラムとを交互に装着し、フローチューブの捩れを解消しながら回転するため、対角線上に位置する同方向に自転するカラムどうしをフローチューブで連結することでそれぞれの回転に特徴的な分離を行うことが可能である。即ち、順方向の自転では従来の向流クロマトグラフ装置と同じ有機溶媒−水系二相溶媒の使用による分離ができ、逆方向の自転では水性二相溶媒の使用による分離ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−064533号公報
【特許文献2】特開平11−183455号公報
【特許文献3】国際公開第2009/008103号
【特許文献4】特開2010−203971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の汎用型の向流クロマトグラフ装置では、公転に同期して公転方向とは逆方向に自転するカラムは相対的には全く回転していない。即ち、装置の外に立ってカラムを見た場合、カラムの自転はカラムの公転による回転と相殺され、全く回転しない状態となる。そのため、逆方向の自転による水性二相溶媒でのより効率的なタンパク質分離効果を検証するためには、非同期型逆回転機構を付け加えることが必要となった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカラム保持機構は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、
公転軸と同軸に配置されると共に回転自在に支持された公転軸パイプと、
この公転軸パイプの近傍に公転軸と略並行に配置されて前記公転軸を中心として公転軸パイプと一体的に公転するカラムと、
前記公転軸パイプから出され前記カラムを通って再び公転軸パイプに戻るフローチューブと
を備え、前記カラムを自転可能に支持したカラム保持機構であって、
前記カラムは少なくとも2つ設けられ、前記カラムと前記公転軸パイプとの間を中継するフローチューブを断絶して捩れを解消すると共に、前記断絶されたチューブを液密に連通させる回転シール機構を設けたことを特徴とする。
回転シール機構は、好ましくはOリングを備え、さらにオイルシール、条溝、それらの組み合わせを備えてもよい。このとき、Oリングは同心リング状に複数個配置することが好ましい。
また、少なくとも2つのカラムからなるカラム群を少なくとも2組備えることもできる。
このカラムは自転軸の一端側から他端側にフローチューブを螺旋状に形成したものを備えることができ、2つのカラムのうち、一方に、前述した自転軸の一端側から他端側にフローチューブを螺旋状に形成したものを備え、他方については、フローチューブを螺旋状に形成しない構造としてもよい。
さらに、カラムは、公転速度と非同期に自転させてもよい。
また、本発明のクロマトグラフ装置は、上述のカラム保持機構を備えることを特徴とし、さらに、カラム保持機構は、上壁、側壁及び底壁によって囲まれ、底壁面の法線方向に配向された公転軸を中心に公転することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカラム保持機構によれば、螺旋状流路の自転と公転とを非同期で作動させることができる。また、螺旋状流路を有するカラムの自転が公転に対して非同期で作動可能となったことにより、試料溶液の分離時の公転速度および自転速度の組み合わせのバラエティが増え、分離効率がよく用途の範囲が広がる向流クロマトグラフ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】自転方向の異なる2つのカラムを備えた向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した説明図である。
【図2】自転方向の異なる2つのカラムを備えた向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した斜視図である。
【図3】同方向に自転する2つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する2つのカラムとを公転軸のまわりに交互に配置した向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した斜視図である。
【図4】公転方向と反対まわりに自転するカラムとこのカラムと反対方向に自転する保持体とを1つずつ備えた向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した説明図である。
【図5】公転方向と反対まわりに自転するカラムとこのカラムと反対方向に自転する1つの保持体とを備えたカラムおよび保持体の保持機構を概略的に示した斜視図である。
【図6】公転方向と異なる方向に自転する2つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する2つの保持体とを公転軸まわりに交互に配置したカラムおよび保持体の保持機構を概略的に示した斜視図である。
【図7】公転方向と同方向に自転するカラムとこのカラムと反対方向に自転する保持体とを1つずつ備えたカラム保持機構を概略的に示した説明図である。
【図8】公転方向と同方向に自転する1つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する1つの保持体とを備えたカラム保持機構を概略的に示した斜視図である。
【図9】公転方向と同方向に自転する2つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する2つの保持体とを公転軸まわりに交互に配置した向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構について概略的に示した斜視図である。
【図10】二相溶媒を使用して目的物質を分離するカラムを備えた向流クロマトグラフ装置の構成を概略的に示した説明図である。
【図11】向流クロマトグラフ装置に回転自在に搭載されたロータリーフレームユニットを上から観察した平面図である。
【図12】カラムの一端に装着された回転シール機構を、自転軸を含む平面で部分的に切断した部分断面図である。
【図13】条溝の形成されたテンショナシャフトを有する回転シール機構を、自転軸を含む平面で部分的に切断した部分断面図である。
【図14】オイルシールを備えたテンショナシャフトを有する回転シール機構を、自転軸を含む平面で部分的に切断した部分断面図である。
【図15】条溝およびオイルシールを備えたテンショナシャフトを有する回転シール機構を、自転軸を含む平面で部分的に切断した部分断面図である。
【図16】公転速度と自転速度との関係について、従来のクロマトグラフ装置および本願のクロマトグラフ装置の特性を示した説明図である。
【図17】図16で描画された公転速度および自転速度を合成した総合的なカラム回転速度を横軸として特性ラインをプロットした説明図である。
【図18】中継するフローチューブの両端に回転シール機構を設けたクロマトグラフ装置の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の向流クロマトグラフ装置について説明する。本発明は、螺旋状流路を有するカラムの自転と公転とを非同期で作動させることができ、試料溶液中の目的物質の分離時の公転速度および自転速度の組み合わせのバラエティが増え、分離効率がよく用途の範囲が広がる向流クロマトグラフ装置を提供することを目的とする。この目的を達成するため本発明は、公転軸と同軸に配置されると共に回転自在に支持された公転軸パイプと、この公転軸パイプの近傍に公転軸と略並行に配置されて前記公転軸を中心として公転軸パイプと一体的に公転するカラムと、前記公転軸パイプから出され前記カラムを通って再び公転軸パイプに戻るフローチューブとを備え、前記カラムを自転可能に支持したカラム保持機構であって、前記カラムは少なくとも2つ設けられ、前記カラムと前記公転軸パイプとの間を中継するフローチューブを断絶して捩れを解消すると共に、前記断絶されたチューブを液密に連通させる回転シール機構を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、非同期型逆回転機構を達成するために、新たに回転シール機構を考案、製作して向流クロマトグラフ装置に組み込んだものである。回転シール機構は、例えばカラム下部に取り付けられ、機構内に導入された送液チューブが機構内で一旦断絶されて捩れが解消され、再び近傍に導入された送液チューブを接続した構成になっており、送液チューブ断絶部はチューブ内を流れる溶液が高速回転で液漏れを生じない構造となっている。非同期型逆回転機構を設置した結果、カラムは公転速度に対して非依存的に自転速度を設定することが可能になった。これは、従来型の同期型逆回転機構に加え、向流クロマトグラフ装置に新たな分離機構の可能性を示すものであり、水性二相溶媒によるタンパク質の分離効率が更に向上することが期待されるものである。
本発明のクロマトグラフ装置は螺旋状流路を有する1つ又は複数のカラムを備えることができる。例えば、図1〜10に示す向流クロマトグラフ装置が可能である。以下に各実施態様についてより具体的に説明する。
図1は、自転方向の異なる2つのカラムを備えた向流クロマトグラフ装置を自転軸および公転軸を含む平面で切断してその構成を概略的に示した説明図である。また、図2は、図1に示した自転方向の異なる2つのカラムを備えた向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した斜視図である。
図1および図2に示すように、本発明の向流クロマトグラフ装置は、公転軸Rと略平行な自転軸S1を有し公転軸Rを中心に公転しつつ公転方向と同方向に角速度γで自転する第1カラム4、自転軸S2を有し公転軸Rを中心に公転しつつ公転方向と反対方向に角速度γで自転する第2カラム6、カラム4へフローチューブを導入しカラム6からのフローチューブ15を外部へ導出するための公転軸パイプ2などを備える。フローチューブ15は第1、第2カラム4、6の近傍で一旦断絶され、この断絶部には回転シール機構34、35が設けられている。回転シール機構34、35は断絶されたフローチューブの一方と他方とを相対的に回転自在にかつ液密に連通させる。第1、第2カラム4、6はそれぞれフローチューブにより形成される螺旋状流路を備え、螺旋状流路は互いに連通している。回転シール機構34、35はそれぞれ第1カラム4、第2カラム6の下部に組み付けられており、従って第1、第2カラム4、6の下部でフローチューブ15は一旦断絶している。フローチューブについて、公転軸パイプ2内から第1カラム4下部に配置された回転シール機構34までの部分は試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を螺旋状流路へ供給する供給管36として機能し、第2カラム6下部に配置された回転シール機構35から公転軸パイプ2内までの部分は螺旋状流路を経た液体を排出するための排液管37として機能する。
【0011】
第1カラム4は、フローチューブ15とこのフローチューブ15が巻かれるホルダ17とを備え、フローチューブ15はホルダ17の一端側から他端側に螺旋状に巻かれている。ホルダ17は両端部にフランジ17a、17bが設けられたリール形状に形成され、両フランジ17a、17b間にフローチューブ15が巻きつけられてフローチューブ15が螺旋状に形成された螺旋部15bが形成される。この螺旋部15b内に試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を流通させる螺旋状流路が形成され、この螺旋状流路で溶液とした試料混合物からの目的物質の分離が実行される。
【0012】
上側フランジ17aおよび下側フランジ17bにはそれぞれアッパーシャフト20、ロワーシャフト21が設けられ、アッパーシャフト20およびロワーシャフト21の中心を自転軸S1が貫通する。アッパーシャフト20およびロワーシャフト21はそれぞれフローチューブ15を折り曲げて保持し、フローチューブ15の螺旋部15bが維持される。アッパーシャフト20はホルダ17内に向かうフローチューブ15を上側フランジ17aの中心部から周縁部へ向けて折り曲げ、折り曲げられたフローチューブ15は上側フランジ17aの周縁部に穿たれた開口17cを通り両フランジ間に通される。両フランジ間で螺旋状に形成されたフローチューブ15は下側フランジ17bの周縁部に穿たれた開口17dを通り、開口17dから延出したフローチューブ15の端部はロワーシャフト21によって下側フランジ17bの中心部で自転軸S1に合わせて折り曲げられて保持される。ロワーシャフト21によって保持されたフローチューブ15の端部開口は外部から供給される試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を螺旋状流路に導く給液口15eとなる。
【0013】
螺旋部15bによって形成される螺旋状流路の容量や構成部材等は適宜定めることができる。例えば、螺旋状流路は、略40mlの容量を有し、内径0.8mmのポリテトラフルオロエチレン(以降、PTFEという)製チューブを螺旋状に形成して構成することができる。なお、ここでは内径が0.8mmのPTFEチューブを用いて容量が略40mlの螺旋部15bを形成したが、カラムのスペックはこれに限らず、適宜変更してよい。例えば、内径が1.2mmのより太めのPTFEチューブを用いてチューブ断面積を増やすことで容量が略70mlの螺旋部を作製することができ、処理能力の向上が期待できる。
【0014】
ロワーシャフト21には第1の回転シール機構34が組み付けられている。第1の回転シール機構34はロワーシャフト21に対して回転自在に組み付けられ、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の供給管36をロワーシャフト21に保持されたフローチューブ15の給液口15eに液密に連通させる。第1の回転シール機構34が供給管36を給液口15eに連通させることにより、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を螺旋部15bの螺旋状流路に供給することができ、ロワーシャフト21は供給管36に対して自在に回転することができる。これにより、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を漏出させることなく第1カラム4に供給でき、かつ第1カラム4の自転速度を、公転速度に拘束されることなく自由に定めることが可能となる。
【0015】
第2カラム6はフローチューブ15とこのフローチューブ15を保持するホルダ25とを備える。ホルダ25は両端部にフランジ25a、25bが設けられたリール形状に形成され、各フランジ25a、25bの周縁部には開口25c、25dが穿たれている。上側フランジ25a、および下側フランジ25bにはそれぞれアッパーシャフト30、ロワーシャフト31が設けられ、アッパーシャフト30およびロワーシャフト31の中心を自転軸S2が貫通している。アッパーシャフト30はホルダ25内に向かうフローチューブ15を上側フランジ25aの中心部から周縁部に折り曲げ、折り曲げられたフローチューブ15は開口25cを通りフランジ間に通される。両フランジ25a、25b間に通されたフローチューブ15が巻かれて螺旋部15dが形成され、この螺旋部15d内に試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を流通させる螺旋状流路が形成される。この螺旋状流路で試料混合物からの目的物質の分離が実行される。両フランジ間で螺旋状に形成されたフローチューブ15は下側フランジ25bの周縁部に穿たれた開口25dを通り、開口25dから延出したフローチューブ15の端部はロワーシャフト31によって下側フランジ25bの中心部で自転軸S2に合わせて折り曲げられて保持される。ロワーシャフト31によって保持されたフローチューブ15の端部開口は螺旋部15d内の分離された試料物質を移動相となる溶媒と共に溶液を排出するための排液口15fとなる。
【0016】
ロワーシャフト31には第2の回転シール機構35が組み付けられている。第2の回転シール機構35はロワーシャフト31に対して回転自在に組み付けられ、分離された試料物質を移動相となる溶媒と共にカラム外部に排液するための排液管37をロワーシャフト31に保持されたフローチューブ15の排液口15fに液密に連通させる。第2の回転シール機構35が排液管37を排液口15fに液密に連通させることにより、フローチューブ15内の液体を外部に排出することができ、ロワーシャフト31は排液管37に対して自在に回転することができる。これにより、液体を漏出させることなく第2カラム6から排出でき、第2カラム6の自転速度を、公転速度に拘束されることなく自由に定めることが可能となる。
【0017】
第1カラム4のアッパーシャフト20から延出したフローチューブ15は公転軸パイプ2の傍を通過して第2カラム6に導かれる。第1、第2カラム4、6との間を中継するフローチューブ15の中継部15cは、上に突き出たアーチ状となり、中継部15cが捩れることはない。
【0018】
フローチューブ15、供給管36、排液管37の材質は特に制限されないが、耐磨耗性、耐薬品性、耐腐食性、硬度などに優れたものが好ましい。構成材料としては、例えばフッ素樹脂が好ましく、上述のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)以外にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(E/TFE)などを用いることができる。
【0019】
以上のように、本態様では第1カラム4は公転しながら公転方向と同方向に自転し、第2カラム6は公転しながら公転方向と反対方向に自転する。ここで、第1カラム4の自転方向と第2カラム6の自転方向とは逆方向であるが角速度は同じγに合わせられているため中継部15cが捩れることなく、さらに第1、第2の回転シール機構34、35を備えたから第1、第2カラム4、6を公転に対して非同期で自転させることができる。
【0020】
上述したように、図1、2では自転方向が反対のカラムがそれぞれ1個の態様を例示したが、自転方向が反対のカラムの個数はそれぞれ1個に限らず、それぞれ2個以上にすることもできる。
図3は、同方向に自転する2つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する2つのカラムとを公転軸のまわりに交互に配置した向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した斜視図である。
図3に示すように、公転軸Rの周囲には、第1カラム41、第2カラム42、第3カラム43、第4カラム44が、公転軸Rの周りで略等間隔を隔てて設けられている。第1〜第4カラム41〜44は、それぞれの自転軸S1〜S4が公転軸Rと略平行をなすように配置され、第1、第3カラム41、43は公転方向と同方向に自転し、第2、第4カラム42、44は公転方向と反対方向に自転する。
【0021】
フローチューブ48は、螺旋状に形成された螺旋部48b、第1カラム41のアッパーシャフト41aから第2カラム42のアッパーシャフト42aまでの第1中継部48c、螺旋部48d、第2カラム42のロワーシャフト42bから第3カラム43のロワーシャフト43bまでの第2中継部48e、螺旋部48f、第3カラム43のアッパーシャフト43aから第4カラム44のアッパーシャフト44aまでの第3中継部48g、螺旋部48h、などから構成される。
【0022】
第1〜第3中継部48c、48e、48gはそれぞれ螺旋部48b、48d、48f、48hの間を中継する。このとき第1カラム41と第2カラム42とは互いに反対方向に同期して自転し、第2カラム42と第3カラム43とは相互に反対方向に同期して自転し、また第3カラム43と第4カラム44とは相互に反対方向に同期して自転するため、第1〜第3中継部48c、48e、48gは捩れることはない。
【0023】
第1カラム41のロワーシャフト41bには第1の回転シール機構51が回転自在に組み付けられ、第1の回転シール機構51は公転軸パイプから導出された供給管54をロワーシャフト41bに保持されたフローチューブ48の給液口(図示省略)に液密に連通させる。これによりロワーシャフト41bは供給管54に対して自在に回転することができ、供給管54から試料溶液、固定相となる溶媒および移動相となる溶媒がフローチューブ48内に導かれる。
第4カラム44のロワーシャフト44bには第2の回転シール機構52が回転自在に組み付けられ、第2の回転シール機構52はフローチューブ48内の液体を外部に排出するための排液管55を、ロワーシャフト52に保持されたフローチューブ48の排液口(図示省略)に液密に連通させる。これによりロワーシャフト44bは排液管55に対して自在に回転することができ、螺旋部48hによって形成される螺旋状流路から、分離された試料物質が移動相となる溶媒と共に排液管55に導かれる。
公転軸Rの周囲にバランスよく第1〜第4カラム41〜44を配置したことにより、総カラム容量を増やすことができ、目的物質の効率よい分離が期待できる。
【0024】
上記では、複数の螺旋状流路を有したカラムを公転させつつ自転させたが、本発明の態様はこれに限らない。
図4は、公転方向と反対まわりに自転するカラムとこのカラムと反対方向に自転する保持体とを1つずつ備えた向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した説明図であり、図5は図4に示された機構の概略的な斜視図である。図4および図5では、カラムの一方はフローチューブが螺旋状に巻かれ、他方はフローチューブが螺旋状ではなく直線状に形成された態様を示す。以降、フローチューブが直線状に形成されたカラムを保持体という。
図4および図5に示すように、向流クロマトグラフ装置は公転軸R、この公転軸Rと略平行な自転軸S、カラム64、保持体66などを有する。公転軸Rは公転軸パイプ62の中心を軸方向に貫通し、2つの自転軸S1、S2はカラム64、保持体66の中心を貫通している。カラム64は公転軸パイプ62を中心に公転しつつ公転方向と反対方向に自転し、保持体66は公転軸パイプ62を中心に公転しつつカラム64の自転方向と反対方向に自転する。公転軸パイプ62は中空に形成され、フローチューブは公転軸パイプ62内を通されてカラム64や保持体66側に導入される。カラムが公転方向と反対方向に自転するこの本態様は、例えば水性二相溶媒を用いて目的物質の分離精製を実行するために用いることができる。
【0025】
カラム64は、フローチューブ68とこのフローチューブ68が巻かれるホルダ70とを備え、フローチューブ68はホルダ70の一端側から他端側に螺旋状に形成されている。ホルダ70は両端部にフランジ70a、70bが設けられたリール形状に形成され、両フランジ70a、70b間にフローチューブ68が巻きつけられてフローチューブ68が螺旋状に形成された螺旋部68dが形成される。
【0026】
上側フランジ70aおよび下側フランジ70bにはそれぞれアッパーシャフト80、ロワーシャフト81が設けられ、それぞれの中心を自転軸S1が貫通する。アッパーシャフト80およびロワーシャフト81はそれぞれフローチューブ68を保持し、螺旋部68dが維持される。アッパーシャフト80はホルダ70内に向かうフローチューブ68を上側フランジ70aの中心部から周縁部へ向けて折り曲げ、折り曲げられたフローチューブ68は上側フランジ70aの周縁部に穿たれた開口70cを通り両フランジ間に通される。両フランジ間で螺旋状に形成されたフローチューブ68は下側フランジ70bの周縁部に穿たれた開口70dを通り、開口70dから延出したフローチューブ68の端部はロワーシャフト81によって下側フランジ70bの中心部で自転軸S1に合わせて折り曲げられて保持される。
【0027】
保持体66はフローチューブ68とこのフローチューブ68を保持するホルダ72とを備える。ホルダ72は両端部にフランジ72a、72bが設けられたリール形状に形成され、各フランジの周縁部には開口72c、72dが穿たれている。上側フランジ72a、および下側フランジ72bにはそれぞれアッパーシャフト84、ロワーシャフト85が設けられ、アッパーシャフト84およびロワーシャフト85の中心を自転軸S2が貫通する。アッパーシャフト84はホルダ72内に向かうフローチューブ68を上側フランジ72の中心部から周縁部に折り曲げ、折り曲げられたフローチューブ68は開口72cを通りフランジ間に通される。両フランジ間で直線状に形成されたフローチューブ68は下側フランジ72bの周縁部に穿たれた開口72dを通り、開口72dから延出したフローチューブ68の端部はロワーシャフト85によって下側フランジ72bの中心部で自転軸S2に合わせて折り曲げられて保持される。
【0028】
保持体66のアッパーシャフト84から延出したフローチューブ68は公転軸パイプ62の傍を通過してカラム64に導かれる。保持体66とカラム64との間を中継するフローチューブ68の中継部68cは、例えば上に突き出るようにアーチ状となり、中継部68cがこのような単純な形状に形成されることにより中継部68cが捩れることはない。
【0029】
保持体66は公転しながら公転方向と同方向に自転し、カラム64は公転しながら公転方向と反対方向に自転する。自転の角速度は公転の角速度ωと異なるγにされている。保持体66の自転方向とカラム64の自転方向とは逆方向にされ角速度は同じγにされている。
【0030】
ロワーシャフト85には第1の回転シール機構87が組み付けられている。第1の回転シール機構87はロワーシャフト85に対して回転自在に組み付けられ、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の供給管89をロワーシャフト85に保持されたフローチューブ68の給液口68eに液密に連通させる。第1の回転シール機構87が供給管89を給液口68eに連通させることにより、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を流路68bに供給することができ、ロワーシャフト85は供給管89に対して自在に回転することができる。
ロワーシャフト81には第2の回転シール機構86が組み付けられている。第2の回転シール機構86はロワーシャフト81に対して回転自在に組み付けられ、螺旋状流路内の液体をカラム外部に排液するための排液管88をロワーシャフト81に保持されたフローチューブ68の排液口68fに液密に連通させる。第2の回転シール機構86が排液管88を排液口68fに液密に連通させることにより、フローチューブ68内の液体を外部に排出することができ、ロワーシャフト81は排液管88に対して自在に回転することができる。
【0031】
上述したように、図4、5ではカラムと保持体とがそれぞれ1個の態様を例示したが、カラムと保持体との個数はそれぞれ1個に限らず、それぞれ2個以上にしてもよい。
図6は公転方向と異なる方向に自転する2つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する2つの保持体とを公転軸まわりに交互に配置した向流クロマトグラフ装置のカラムおよび保持体の保持機構を概略的に示した斜視図である。
図6に示すように、公転軸Rの周囲には、第1保持体91、第1カラム92、第2保持体93、第2カラム94が略等間隔を隔てて設けられている。第1、第2保持体91、93、第1、第2カラム92、94は、それぞれの自転軸S1〜S4が公転軸Rと略平行をなすように配置され、第1、第2保持体91、93は公転方向と同方向に自転し、第1、第2カラム92、94は第1、第2保持体91、93の自転方向と反対方向に自転する。
この態様では、フローチューブ98はストレート形状の流通部98b、第1中継部98c、螺旋部98d、第2中継部98e、ストレートに形成された流通部98f、第3中継部98g、螺旋部98hから構成される。
【0032】
ロワーシャフト91bには第1の回転シール機構90が組み付けられている。第1の回転シール機構90はロワーシャフト91bに対して回転自在に組み付けられ、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の供給管97をロワーシャフト91bに保持されたフローチューブ98の給液口(図示省略)に液密に連通させる。第1の回転シール機構90が供給管97を給液口に連通させることにより、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を流路98bに供給することができ、ロワーシャフト91bは供給管97に対して自在に回転することができる。
また、ロワーシャフト94bには第2の回転シール機構95が組み付けられている。第2の回転シール機構95はロワーシャフト94bに対して回転自在に組み付けられ、目的物質分離後の液体をカラム外部に排液するための排液管99をロワーシャフト94bに保持されたフローチューブ98の排液口(図示省略)に液密に連通させる。第2の回転シール機構95が排液管99を排液口に液密に連通させることにより、フローチューブ98内の液体を外部に排出することができ、ロワーシャフト94bは排液管99に対して自在に回転することができる。
【0033】
上記図4〜6では、公転方向と反対方向に自転するカラムを備えた態様について例示したが、公転方向と同方向に自転するカラムを備えてもよい。
図7は公転方向と同方向に自転するカラムとこのカラムと反対方向に自転する保持体とを1つずつ備えた向流クロマトグラフ装置のカラム保持機構を概略的に示した説明図である。また、図8は、図7に示された公転方向と同方向に自転する1つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する1つの保持体とを備えた機構の概略的な斜視図である。
図7および図8に示すようにこの態様では、公転軸Rと略平行な自転軸S1を備え公転軸Rを中心に公転しつつ公転方向と同方向に自転するカラム101と、公転軸パイプ100を中心に公転しつつ公転方向と反対方向に自転する保持体103などを備える。カラム101は、フローチューブ105とホルダ107とを備え、フローチューブ105はホルダ107の両フランジ107a、107b間で巻きつけられて螺旋部105bが形成される。保持体103のアッパーシャフト120から延出したフローチューブ105はカラム101に接続されている。図7、8に示される態様では、保持体103は公転しながら公転方向と反対方向に自転し、カラム101は公転しながら公転方向と同方向に自転する。保持体103の自転方向とカラム101の自転方向とは逆方向にされ角速度は同じγに合わせられている。
【0034】
ロワーシャフト111には第1の回転シール機構123が組み付けられている。第1の回転シール機構123はロワーシャフト111に対して回転自在に組み付けられ、試料溶液、固定相の溶媒及び移動相の溶媒の供給管126をロワーシャフト111に保持されたフローチューブ105の給液口105eに液密に連通させる。また、ロワーシャフト121には第2の回転シール機構124が組み付けられている。第2の回転シール機構124は、ロワーシャフト121に対して回転自在に組み付けられ、目的物質分離後の液体をカラム外部に排液するための排液管127をロワーシャフト121に保持されたフローチューブ105の排液口105fに液密に連通させる。
【0035】
上述したように、図7、8では、公転方向と同方向に自転するカラム101と、公転方向と逆方向に自転する保持体103とがそれぞれ1個の態様を例示したが、カラムと保持体との個数はそれぞれ1個に限らず、それぞれ2個以上にすることもできる。
図9は公転方向と同方向に自転する2つのカラムとこのカラムと反対方向に自転する2つの保持体とを公転軸まわりに交互に配置した向流クロマトグラフ装置について概略的に示した斜視図である。
図9に示すように、公転軸Rの周囲には、第1カラム131、第1保持体132、第2カラム133、第2保持体134が設けられ、第1、第2カラム131、133、第1、第2保持体132、134はそれぞれの自転軸S1〜S4が公転軸Rと略平行をなすように配置される。フローチューブ136は、螺旋部136b、第1中継部136c、流通部136d、第2中継部136e、螺旋部136f、第3中継部136g、流通部136h、などから構成される。
【0036】
ロワーシャフト131bには第1の回転シール機構141が組み付けられている。第1の回転シール機構141はロワーシャフト131bに対して回転自在に組み付けられ、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の供給管145をロワーシャフト131bに保持されたフローチューブ136の給液口(図示省略)に液密に連通させる。また、ロワーシャフト134bには第2の回転シール機構142が組み付けられている。第2の回転シール機構142はロワーシャフト134bに対して回転自在に組み付けられ、試料溶液をカラム外部に排液するための排液管146をロワーシャフト134bに保持されたフローチューブ136の排液口(図示省略)に液密に連通させる。
【0037】
次に、図3に示したような、公転方向に自転する2つのカラムと公転方向と反対方向に自転する2つのカラムとの合計4つのカラムを備えた向流クロマトグラフ装置のさらに具体的な構成について説明する。
図10は、向流クロマトグラフ装置について、公転軸および自転軸を含む平面で切断してその構成を概略的に示した説明図である。
図10に示すように、向流クロマトグラフ装置160は、装置本体164、ロータリーフレームユニット(回転カラムユニット)166、公転軸パイプ167、第1、第2回転シール機構191、192等を備え、装置本体164の上部は蓋168によってカバーされている。装置本体164はロータリーフレームユニット166の収容スペース170を内部に備え、このスペース170内にロータリーフレームユニット166が収められている。ロータリーフレームユニット166は、中心に公転軸パイプ167を備える。公転軸パイプ167の上下両端は装置本体164に軸支され、ロータリーカラムフレームユニット166は公転軸パイプ167の中心を貫通する公転軸Rを中心に回転自在に保持される。
【0038】
装置本体164は側壁172、および底部174を備え、その内部に断面略円形状の収容スペース170を有する。底部174には動力供給部177が備えられ、動力供給部177は、モータ、このモータの駆動を制御するモータコントローラ等を備える。動力供給部は、モータの動力を基にして、カラムを公転させるための公転用動力と、後述するカラムを自転させるための自転用動力とを発生させる動力発生機構を備える。このような構成から、動力供給部は、公転軸パイプ167を中心にロータリーフレームユニット166を公転軸Rまわりに回転させる動力を供給するとともに、各カラムに自転するための動力を供給することができる。なお、図示はしないが、装置本体164の外側にはモータの回転数を調節するための操作部を設けてもよく、ユーザはこの操作部を操作することで、モータコントローラを介してカラムの公転角速度および自転角速度を調節することができる。
【0039】
蓋168は装置本体164の上部に着脱自在に装着される。蓋168には、供給管194を向流クロマトグラフ装置160内部に導入するための導入孔等が形成されている。公転軸パイプ167は、中空状に形成され上側軸端部および下側軸端部は開口し、外周面には上側の第1開口180と下側の第2開口181とが形成され、各開口180、181はそれぞれ内側の中空部183に連通している。公転軸パイプ167の上側軸端部の開口から供給管194が中空部183に導かれ、中空部183に導かれた供給管194は第1開口180から第1カラム211の近傍に導出される。第1カラム211の近傍に導出された供給管194は第1の回転シール機構191によって第1カラム211の螺旋状流路に連通される。第4カラム214の螺旋状流路には第2の回転シール機構192を介して排液管195が連通し、排液管195は第2開口181から公転軸パイプ167の中空部183に導かれる。第2開口181から公転軸パイプ167の中空部183に導かれた排液管195は公転軸パイプ167の下側軸端部を通して装置本体164の外部に導出される。
【0040】
ロータリーフレームユニット166は公転軸パイプ167や第1〜第4カラムのほか、各カラムを支持するフレーム238や軸受け、試料溶液や固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の給液口、分離した物質を溶出する移動相となる溶媒の排液口などを備える。ロータリーフレームユニット166は公転軸パイプ167を中心に回転可能に軸支され、ロータリーフレームユニット166は後述する第1〜第4カラム(図11参照)をベアリングなどの軸受けを用いて回転自在に軸支している。これにより第1〜第4カラムは惑星運動することができる。第1〜第4カラムは例えばスパーギヤを介して公転軸パイプ167から供給される供給動力によって駆動制御される。第1〜第4カラムの給液口および排液口はロータリーフレームユニット166の上側に備えてもよいし下側に備えてもよいが、ここでは下側に備えたものを例示する。
【0041】
図11はロータリーフレームユニット166を上側から観察した平面図である。図11に示すように、ロータリーフレームユニット166は第1〜第4カラム211〜214を備え、第1〜第4カラム211〜214は公転軸パイプ167のまわりに略等間隔を隔てて配置されている。第1〜第4カラム211〜214は、螺旋部の巻き数(ピッチ数)が同一であり、それぞれの重量が同一になるように調整され、ロータリーフレームユニット166が安定して回転できるように構成されている。
【0042】
フローチューブ200は、各カラムの螺旋部(図示省略)のほか、第1中継部200c、第2中継部200e、第3中継部200g、などから構成される。図示しない導入孔を介して装置内部に導入された試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の供給管194は、上端の開口から公転軸パイプ167内に導かれて第1開口180まで公転軸パイプ167内を通される。試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を供給する供給管194は、第1の回転シール機構191を介して第1カラム211の下端に保持されたフローチューブ200の給液口に液密に連通される。フローチューブ内の液体を外部へ排出するための排液管195は、第2の回転シール機構を介して第4カラム214の下端に保持されたフローチューブ200の排液口に液密に連通される。第2の回転シール機構192に一端が保持された排液管195は第2開口181から公転軸パイプ167内の中空部183に収納され、公転軸パイプ167の下端の開口まで公転軸パイプ167内を通される。公転軸パイプ167の下端から導出された排液管は底部174側から装置本体164の外部まで導かれる。
【0043】
第1カラム211には第1の回転シール機構191が装着されている。第1の回転シール機構191は、第1カラム211のロワーシャフトに対して回転自在に組み付けられ、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の供給管194をロワーシャフトに保持されたフローチューブ200の給液口に液密に連通させる。第1の回転シール機構191が供給管194を給液口に連通させることにより、試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒を螺旋状流路に供給することができ、カラム211は供給管194に対して自在に回転することができる。
第4カラム214には第2の回転シール機構192が装着されている。第2の回転シール機構192は、第4カラム214のロワーシャフトに対して回転自在に組み付けられ、螺旋状流路内の液体をカラム外部に排液するための排液管195をロワーシャフトに保持されたフローチューブ200の排液口に液密に連通させる。第2の回転シール機構192が排液管195を排液口に液密に連通させることにより、フローチューブ200内の液体を外部に排出することができ、第4カラム214は排液管195に対して自在に回転することができる。
【0044】
装置本体164の底部174と一体に固定された公転軸パイプ167を回転自在に支持する支持部には、カラムの公転軸と中心を同一とする固定平歯車(回転不能な平歯車)320が設けられ、この固定平歯車320はロータリーフレームユニット166のロータリーフレーム238に設けられたトランスファードリブンギア322、323及び第1ドリブンギア324、325と係合している。
第1ドリブンギア324、325は、第1ドリブンギア324、325と同様にロータリーフレーム238に設けられた第2ドリブンギア327、328と係合し、第1ドリブンギア324、325の回転を第2ドリブンギア327、328に伝達することができる。
トランスファードリブンギア322、323及び第2ドリブンギア327、328は第1〜第4カラム211〜214それぞれに備えられたカラム側平歯車331〜334に係合している。
例えば、第1、第3カラム211、213はそれぞれ第1ドリブンギア324、325及び第2ドリブンギア327、328を介して固定平歯車320に接続されており、ロータリーフレーム238が前記カラムの公転軸を中心に回転すると、第1ドリブンギア324、325は固定平歯車320を中心に回転し、この時発生する第1ドリブンギア324、325の自転が第1、第3カラム211、213を回転させる動力となる。
即ち、第1ドリブンギア324、325の回転は第2ドリブンギア327、328を介して第1、第3カラム211、213に備えられたカラム側平歯車331、333に伝達され、第1、第3カラム211、213はその公転方向と同方向に自転することができる。
第2、第4カラム212、214は、それぞれトランスファードリブンギア322、323を介して固定平歯車320に接続されており、ロータリーフレーム238が前記カラムの公転軸を中心に回転すると、トランスファードリブンギア322、323は固定平歯車320を中心に回転し、この時発生するトランスファードリブンギア322、323の自転が第2、第4カラム212、214を回転させる動力となる。
即ち、トランスファードリブンギア322、323の回転はカラム212、214に備えられたカラム側平歯車332、334に伝達され、第2、第4カラム212、214はその公転方向と反対方向に自転することができる。
第1ドリブンギア324、325及びカラム側平歯車331、333は、例えば、第1、第3カラム211、213が公転数に対して同期的に自転するようにギア比を選択することも可能であり、また、第1、第3カラム211、213が公転数に対して非同期で自転するようにギア比を適宜選択することもできる。
トランスファードリブンギア322、323及びカラム側平歯車332、334は、第1、第3カラム211、213の自転速度γに対して第2、第4カラム212、214の自転速度がγに合致するように適宜選択される。
これにより、第1〜第4カラム211〜214間の第1〜第3中継部200c、200e、200gが捩れることなく第1〜第4カラム211〜214を公転に対して例えば非同期で自転させることができる。
【0045】
図12は自転軸を含む平面で第1の回転シール機構191の周囲を切断した断面図である。なお、第2の回転シール機構は、供給管が排液管に置き替わる以外は以下の第1の回転シール機構と基本的に同一構造であるためその詳細な説明は省略する。
図12に示すように、第1の回転シール機構191は第1カラム211下部に備えられたロワーシャフト220に組み付けられている。ロワーシャフト220の下端部にはチューブホルダ221が設けられ、チューブホルダ221は試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の流通が可能なように管状に形成されている。チューブホルダ221は、フローチューブ200の端部を保持しており、給液口として機能する。なお、第4カラム214の下端部に具備されたチューブホルダ221は排液口として機能する。
【0046】
第1の回転シール機構191は、ボールベアリング260、テンショナシャフト262、スプリングテンショナ264、フランジ267、Oリング272、メインシャフト274などから構成されている。
ロワーシャフト220はベアリングケース240によってロータリーフレーム238に対して回転自在に軸支され、ベアリングケース240はロータリーフレーム238にボルト/ナットで固定されている。
【0047】
ベアリングケース240はロータリーフレーム238に固定され、ロワーシャフト220を軸支する部分はボールベアリングによって回転自在とされ、これにより第1カラム211はロータリーフレーム238上で自転することができる。カラム211のロワーシャフト220の下側にはメインシャフト274を組み付けるためのジョイントプレート268が組み付けられ、このジョイントプレート268を介してメインシャフト274が組み付けられる。メインシャフト274の外表面にはOリングを装着するためのリング状のスロット274aが例えば2つ同心状に形成され、大径および小径それぞれのスロット274aにOリングが嵌め込まれる。Oリングは個数は2つに限られるものではなく、1つや3つ以上でもよい。
【0048】
フランジ267はボルト/ナットでロータリーフレーム238に組みつけられ、スプリングテンショナ264およびバネ269によって付与される付勢力によってテンショナシャフト262はメインシャフト274側に押し付けられる。テンショナシャフト262にはメインシャフト274が当接する受入開口262aが形成され、この開口262a内にはOリング272が嵌入される装着スロット262bが形成されている。テンショナシャフト262とスプリングテンショナ264との間にはボールベアリング260が介装され、これによりテンショナシャフト262はスプリングテンショナ264に対して回転自在となる。テンショナシャフト262がスプリングテンショナ264に対して回転自在となることで、テンショナシャフト262はメインシャフト274の回転に影響されることがなくなる。以上のような構成から、テンショナシャフト262は公転と同様に回転し、メインシャフト274はカラムと同様に回転することとなる。
【0049】
ロータリーフレーム238にはフランジ267も固定され、フランジ267にはさらにフランジキャップ265が固定される。これによりフランジキャップ265はロータリーフレーム238に対して動かないように固定され、この固定されたフランジキャップ265にスプリングテンショナ264がねじなどで押圧を調整可能に固定される。また、スプリングキャップ265とスプリングテンショナ264の嵌合部279にそれぞれねじ形状を設け、それらを螺合させる構造とすることでスプリングテンショナ264を押圧の調整をしながら固定することができる。スプリングテンショナ264にはスプリング269が嵌入され、このスプリング269の付勢力によってテンショナシャフト262がメインシャフト274に押圧される。テンショナシャフト262は供給管194を保持するためのホルダ278を備え、ホルダ278が保持した供給管194から供給される供給液が流通開口276に流れ込む。
【0050】
メインシャフト274とテンショナシャフト262との間には、合計3環のOリング272が介装され、これらのOリング272によって、メインシャフト274に穿設された流通開口275とテンショナシャフト262に穿設された流通開口276とから試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒が漏れないようにシールされる。メインシャフト274の流通開口275に、テンショナシャフト262の流通開口276が合わせられ、メインシャフト274とテンショナシャフト262との間には、流通開口275、276の中心を基準として径サイズの異なる3つのOリング272が同心円状に配置され、これらのOリング272によってメインシャフト274の流通開口275と、テンショナシャフト262の流通開口276とが液密に連通することができる。
【0051】
メインシャフト274にはスパーギア(カラム側平歯車)280が設けられ、このスパーギア280はカラムの自転に同期して回転する。
スパーギア280は、ロータリーフレーム238と一体に固定されたシャフト288にベアリングを介して回転自在に軸支されるアイドラシャフト289に一体に設けられたスパーギア281と係合している。
前記アイドラシャフト289の下側にはスパーギア283が一体に設けられ、スパーギア281と同期して回転する。
スパーギア284はテンショナシャフト262に一体に設けられ、スパーギア281と係合しているので、スパーギア281が回転することにより動力が伝達され、テンショナシャフト262は回転する。
スパーギア280、スパーギア281、スパーギア283及びスパーギア284の歯数はカラム211の自転速度が前記カラムの公転速度ωと異なった場合においてもテンショナシャフト262の自転速度が前記公転速度と同じになるように決められ、組み合わされている。即ち、種々の歯数の歯車の組合せにより、カラム211が前記公転速度と同速度で自転可能であると共に前記公転速度と異なった回転で自転でき、カラム211の自転速度をほぼ無段階的(連続的)に変えることが出来る。
【0052】
上記の回転シール機構はメインシャフト274およびテンショナシャフト262に計3環のOリング272を同心円状に配置して液体をシールしたが、回転シール機構の構造は上記に限らず他の態様でもよい。例えばOリングの数を2環や1環としてもよいし、図13〜15に示すような態様の回転シール機構でもよい。
例えば、図13は条溝の形成されたテンショナシャフトを有する回転シール機構を、自転軸を含む平面で部分的に切断した部分断面図である。図13に示すように、テンショナシャフト370に条溝を設けてもよい。メインシャフト274を受け入れるテンショナシャフト370の嵌合部に条溝372を形成したことにより、メインシャフト274との接触面積を低減できより低負荷な回転シール機構とすることができる。
また、図14はオイルシールを備えたテンショナシャフトを有する回転シール機構を、自転軸を含む平面で部分的に切断した部分断面図である。図14に示すように、テンショナシャフト390にオイルシール392を設けてもよい。オイルシール392としては例えばバネやリップなどのメカニカルな機構を有するものが一般的に知られているが、他の構造のものを用いてもよい。テンショナシャフト390にオイルシール392を備えたことにより、より精度高いシールが可能となる。
テンショナシャフトにオイルシールと条溝との両方を設けてもよい。図15は条溝およびオイルシールを備えたテンショナシャフトを有する回転シール機構を、自転軸を含む平面で部分的に切断した部分断面図である。図15に示すように、テンショナシャフト410にオイルシール412と条溝414とを設けた構造としてもよい。メインシャフト274の外周に当接するようにオイルシール412設けたことにより、より精度高いシールが可能となる。また、メインシャフト274との当接部に条溝414を設けたことにより、メインシャフト274との接触面積を低減できより低負荷な回転シール機構とすることができる。
前述の図13及び図15に示された条溝部は、条溝に代わりラビリンス形状としてもよい。
【0053】
図16は公転速度と自転速度との関係について、従来のクロマトグラフ装置および本願のクロマトグラフ装置の特性を示した説明図である。図16に示すように、従来の向流クロマトグラフ装置では公転速度と自転速度との比例が固定的であったのに対して、本発明の向流クロマトグラフ装置では、自転速度は公転速度とは関係なく任意に定めることが可能であり、公転軸側から自転軸側に動力を伝達する伝達機構(ギヤ比など)を調整することにより異なる特性ラインを有する様々な向流クロマトグラフ装置を製作することができる。
図3に示したような公転方向と同じ方向に自転する2個のカラムと公転方向と反対方向に自転する2個のカラムとが公転軸周りに交互に配置された合計4個のカラムを有する場合では、例えば図中の実線ライン(■、□)、(●、○)、(▲、△)の特性ラインがプロットされる。
例えば、カラムの公転速度が2rad/secのときに自転速度を1rad/secまたは−1rad/sec(+:公転方向と同方向、−:公転方向と反対方向)とした場合、■印および□印の特性ラインが描画される。また、公転速度が2rad/secのときに自転速度を3rad/secまたは−3rad/secとした場合、●印および○印の特性ラインが描画される。公転速度が0.5rad/secのときに自転速度を3rad/secまたは−3rad/secとした場合、▲印および△印の特性ラインが描画される。
また、図4、5に示したような公転方向と同じ方向に自転する保持体と公転方向と反対方向に自転する1個のカラムとが公転軸対称に配置されたクロマトグラフ装置の場合では、例えば図中の☆、◇、◎の特性ラインがプロットされる。
例えば、公転速度が4rad/secのときに自転速度を−3rad/secとした場合、☆印の特性ラインが描画され、公転速度が2rad/secのときに自転速度を−2.5rad/secとした場合では、◇印の特性ラインが描画され、公転速度が1rad/secのときに自転速度を−2rad/secとした場合には、◎印の特性ラインが描画される。
これに対して、フローチューブが捩れないようにするために公転速度に自転速度が同期させた従来の向流クロマトグラフ装置では、公転速度が1rad/secのときに自転速度が1rad/secまたは−1rad/secとなるような特性ラインがプロットされる。
あるいは、公転速度に自転速度が同期しないように設定できる従来の非同期型向流クロマトグラフ装置では、公転速度が0.5rad/secのとき自転速度が1.5rad/secとなるような特性ラインがプロットされる。
【0054】
図17は、図16で描画された公転速度および自転速度を合成した総合的なカラム回転速度を横軸として特性ラインをプロットした説明図である。図17に示すように、各カラムの公転速度が2rad/secのときに自転速度を1rad/secまたは−1rad/secとした場合では、各カラムの総合的な回転速度は3rad/secまたは1rad/secとなり、■印および□印の特性ラインが描画される。各カラムの公転速度が2rad/secのときに自転速度を3rad/secまたは−3rad/secとした場合では、各カラムの総合的な回転速度は5rad/secまたは−1rad/secとなり、●印および○印の特性ラインが描画される。各カラムの公転速度が0.5rad/secのときに自転速度を3rad/secまたは−3rad/secとした場合では、各カラムの総合的な回転速度は3.5rad/secまたは−2.5rad/secとなり、▲印および△印の特性ラインが描画される。
また、公転方向と同じ方向に自転する保持体と公転方向と反対方向に自転する1個のカラムとが公転軸対称に配置されたクロマトグラフ装置について、公転速度が4rad/secのときに自転速度を−3rad/secとした場合ではカラムの総合的な回転速度が1rad/secとなり☆印の特性ラインが描画され、公転速度が2rad/secのときに自転速度を−2.5rad/secとした場合ではカラムの総合的な回転速度が−0.5rad/secとなり◇印の特性ラインが描画され、さらに、公転速度が1rad/secのときに自転速度を−2rad/secとした場合ではカラムの総合的な回転速度が−1rad/secとなり◎印の特性ラインが描画される。
以上のように、本発明の向流クロマトグラフ装置では、無限のバリエーションを有するのに対し、従来の向流クロマトグラフ装置では、カラムの総合的な回転速度は公転速度に関わらず2rad/secや0rad/secに常に一定であったり、カラムの総合的な回転速度と公転速度の比率が2:1で限定され、カラムの公転および自転によって実現される分離環境のバリエーションがない。
【0055】
本発明の向流クロマトグラフ装置を用いた分離システムは、例えば、有機溶媒―水系二相溶媒または水性二相溶媒等を構成する上下層のいずれか一方の層を移動相として供給する溶媒供給源、溶媒供給源からの移動相となる溶媒や生体関連物質等の試料混合物を少量の二相溶媒に溶解した試料溶液を送り出すためのポンプ、ポンプから送り出された試料溶液に含まれる目的物質を分離する本発明の向流クロマトグラフ装置160、向流クロマトグラフ装置により分離された目的物質を検出するディテクタなどから構成される。
【0056】
溶媒供給源から移動相となる溶媒がポンプに送られ、ポンプによって向流クロマトグラフ装置160に移動相となる溶媒が液送される。向流クロマトグラフ装置160内へ送られた移動相となる溶媒は、螺旋部内に導入される。螺旋部から移動相となる溶媒とともに排出される目的物質は排出部を介してディテクタに送られて検出され、その結果は、例えばインテグレータに送られチャート化される。
【0057】
分離時の手順は、まず、有機溶媒−水系二相溶媒または水性二相溶媒を構成する上下層のいずれか一方の層(移動相としない層)を固定相として螺旋状流路内に導入する。その後、固定相及び移動相として使用する二相溶媒の少量に目的物質を含む試料混合物を溶解させた試料溶液を固定相となる溶媒と密着して導入する。ロータリーフレームユニットを作動させてカラムの公転及び自転を開始させた後、移動相となる溶媒を溶媒供給源からポンプで先に導入した試料溶液に密着させて液送する。移動相となる溶媒と共に螺旋状流路内に導入された試料溶液中の生体関連物質等は、例えば、予め螺旋状流路内に導入されていた固定相と新たにポンプで液送されて螺旋状流路内に導入された移動相との間で分配を繰り返した後、他の共存する試料物質と分離され、移動相となる溶媒とともに溶出する。有機溶媒―水系二相溶媒を、公転方向と同方向に自転する螺旋状流路と組み合わせて用いることにより、天然物からの生理活性物質の単離・精製、有機合成物質からの目的物質の精製などに広く用いることが期待される。特に、有機溶媒によりエマルションを形成しやすい物質の単離・精製には有用性が期待できる。また、水性二相溶媒を、公転方向と反対方向に自転する螺旋状流路と組み合わせて用いることにより、タンパク質、酵素、核酸など有機溶媒では変性してしまう物質の単離・精製を行うことが可能である。また、生理活性物質などの中にはカラム充填剤との相互作用により失活する物質も多く、本発明の向流クロマトグラフ装置はこのような物質の分離・精製にも利用することができる。さらには、本発明の向流クロマトグラフ装置は、血液や細胞などの分離も可能である。また、本発明の向流クロマトグラフ装置は、回転機構が簡単なため、従来の向流クロマトグラフ装置と比較して廉価に製造することができる。
【0058】
次に本発明の作用について説明する。本発明の向流クロマトグラフ装置160は公転軸パイプ167を中心に回転するロータリーフレームユニット166、第1、第2の回転シール機構191、192などを備え、ロータリーフレームユニット166は第1〜第4カラム211〜214と試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒の給液口および分離した物質を含む移動相となる溶媒及び移動相となる溶媒の排液口とを備える。第1、第2の回転シール機構191、192はそれぞれロータリーフレームユニット166の給液口および排液口に供給管194、排液管195を相対回転自在に液密に連通させ、各カラム211〜214の螺旋状流路に試料溶液、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒が流通可能となる。ロータリーフレームユニット166に備えられた給液口および排液口に第1、第2回転シール機構191、192を介して供給管194、排液管195が相対回転自在に連通することにより、ロータリーフレームユニット166の回転と螺旋状流路の自転により発生する給液口および排液口の回転差での不具合(給液管、排液管の捩れ)が第1、第2の回転シール機構191、192によって解消され、各螺旋状流路の自転を公転と無関係に制御することが可能となり、公転に対して非同期で各螺旋状流路を自転させることができる。
【0059】
本発明の向流クロマトグラフ装置によれば、螺旋状流路を公転に対して非同期で自転させることにより、螺旋状流路の自転に伴い発生するアルキメデスのスクリュー効果やコリオリの力などの力学的物理量が目的物質の分離に及ぼす影響を解析できることが期待される。また、捩れ解消用の配管システムは必要としないため、システムをよりコンパクトにすることができる。
また、カラムの自転がカラムの公転と非同期で駆動することにより、様々な態様の分離条件を設定し、最適な条件で分離を行うことが可能である。例えば、カラムの自転速度が20rad/secに対して公転速度を15rad/secとなるようにスパーギヤを選択してロータリーフレームに組み付けることや、カラムの自転が10rad/secに対して公転を25rad/secとなるようにスパーギヤを選択してロータリーフレームに組み付けることもできる。使用するギヤは、目的とする自転/公転の比に従って適宜決めればよい。カラムの公転速度に対する自転速度を少しずつ変えて目的物質の分離に与える影響を分析することにより、カラムの自転に伴って発生するアルキメデスのスクリュー効果やコリオリの力などの力学的物理量の影響の解析が期待できる。
【0060】
なお、上記では、回転シール機構として、Oリングやオイルシール、条溝、ボールベアリングなどを備えたものを例示したが、回転シール機構の構成はこれに限らない。例えば、より過酷な使用環境に対応するためにオイルシールよりも構造が複雑なメカニカルシールを備えた回転シール機構を用いてもよいし、磁性流体などの非接触型の回転シール機構を用いることもできる。シール機構としてどのようなものを用いるかは自転速度や公転速度、使用環境、環境温度などに基づいて決定することが好ましい。
【0061】
また、上記では、メインシャフトからスパーギヤを介してカラムを公転に対して非同期に自転させたが、カラムを自転させるための動力の供給方式はこれに限らない。例えばカラム毎にモータを備え、このモータから供給される動力を用いてカラム自転させてもよい。モータを用いることにより、カラムの自転速度を自在に制御できるため、例えば最適な自転速度を効率的に見い出せることが期待できる。この場合、例えば図18に示すように、第1、第2のカラム301、302の自転をそれぞれモータ制御するときでは、第1、第2カラム301、302それぞれのアッパーシャフト301a、302aおよびロワーシャフト301b、302bに回転シール機構306を組み合わせることにより、第1、第2のカラム301、302はそれぞれ自由自在に自転することができる。このような構造とすることにより、第1、第2カラム間の自転を同期させる必要がなくなり、より細やかな制御性に富む向流クロマトグラフ装置の提供が期待できる。
【符号の説明】
【0062】
2 公転軸パイプ
4 第1カラム
6 第2カラム
15 フローチューブ
15e 給液口
15f 排液口
21 ロワーシャフト
31 ロワーシャフト
34 第1の回転シール機構
35 第2の回転シール機構
36 供給管
37 排液管
160 向流クロマトグラフ装置
166 ロータリーフレームユニット
167 公転軸パイプ
191 第1の回転シール機構
192 第2の回転シール機構
194 供給管
195 排液管
200 フローチューブ
211 第1カラム
212 第2カラム
213 第3カラム
214 第4カラム
220 ロワーシャフト
221 チューブホルダ
238 ロータリーフレーム
240 ベアリングケース
260 ボールベアリング
262 テンショナシャフト
264 スプリングテンショナ
267 フランジ
269 バネ
272 Oリング
274 メインシャフト
R 公転軸
S 自転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転軸と同軸に配置されると共に回転自在に支持された公転軸パイプと、
この公転軸パイプの近傍に公転軸と略並行に配置されて前記公転軸を中心として公転軸パイプと一体的に公転するカラムと、
前記公転軸パイプから出され前記カラムを通って再び公転軸パイプに戻るフローチューブと
を備え、前記カラムを自転可能に支持したカラム保持機構であって、
前記カラムは少なくとも2つ設けられ、前記カラムと前記公転軸パイプとの間を中継するフローチューブを断絶して捩じれを解消すると共に、前記断絶されたチューブを液密に連通させる回転シール機構を設けたことを特徴とする前記カラム保持機構。
【請求項2】
前記回転シール機構はOリングを備えたことを特徴とする請求項1に記載のカラム保持機構。
【請求項3】
前記Oリングは同心リング状に複数個配置されたことを特徴とする請求項2に記載のカラム保持機構。
【請求項4】
オイルシール、条溝、又は条溝とオイルシールとの組み合わせをさらに備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載のカラム保持機構。
【請求項5】
少なくとも2つのカラムからなるカラム群を少なくとも2組備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のカラム保持機構。
【請求項6】
前記カラムは、自転軸の一端側から他端側にフローチューブが螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカラム保持機構。
【請求項7】
前記2つのカラムのうち、一方は、自転軸の一端側から他端側にフローチューブが螺旋状に形成されており、他方は螺旋状に形成されていないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカラム保持機構。
【請求項8】
前記カラムは、公転速度とは非同期に自転することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のカラム保持機構。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のカラム保持機構を備えたことを特徴とするクロマトグラフ装置
【請求項10】
前記カラム保持機構は、上壁、側壁及び底壁によって囲まれ、底壁面の法線方向に配向された公転軸を中心に公転することを特徴とする請求項8に記載のクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−159434(P2012−159434A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20078(P2011−20078)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)