説明

カラーコーンおよび把持器具

【課題】単純な構造で把持が容易となるとともに、手指の負傷を防止し、設置、回収作業を効率化し、かつ、複数重ねて収納しても密着することのないカラーコーンを提供すること。
【解決手段】コーン本体110の先端部は開放孔111が設けられ、該開放孔111よりも大径の略球状の把手部130が引張ワイヤー140の一端に連結され、引張ワイヤー140の他端が内部に固定されるて開放孔111に把手部130を密着させる方向に付勢されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上あるいは工事現場等における立入禁止区画などを表示するために設置されるカラーコーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基盤と、該基盤上に立設され中空状のコーン本体とを備えたカラーコーンが周知である。
周知のカラーコーン500は、図8に示すように、基盤520上に立設されたコーン本体510が通常円錐状であり、先端部が丸みを帯びて先細形状となっているため、手で把持する場合に滑り易く、特に設置時や回収時に不便であり、例えばトラックの荷台から走行しながら設置、回収作業は低速で行わねばならず、作業効率が悪いという問題があった。
【0003】
また、周知のカラーコーン500は、底面が開口した空洞となっており、図9に示すように、収納、運搬時には複数のカラーコーン500を重ね合わせているが、複数重ねて収納されたカラーコーン500同士が密着し外れにくいという問題があり、これも作業効率を低下させる要因となっていた。
【0004】
上記把持の問題を解消するために、カラーコーンの先端部に把持用の凹部を設けたものや、密着の問題を解消するために、コーン本体あるいは基盤に間隔保持用の凸部を設けたものが公知である(例えば特許文献1、特許文献2等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−220650号公報(全頁、全図)
【特許文献2】登録実用新案公報3143580号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、公知の把持用の凹部を設けたものは、把手部の先細形状自体は変わらず、指で引っかけて滑りをなくすものであるため、設置、回収時に指にかかる負担が大きく、不注意により手指を負傷する虞があるという問題があった。
さらに、大量のカラーコーンを設置、回収する場合には指に非常に大きな負担を与え、負傷の虞もあるため、トラックの荷台から走行しながら設置、回収作業を行う際は、依然として低速で行わなければならないという問題があった。
【0007】
また、公知のコーン本体あるいは基盤に間隔保持用の凸部を設けたものは、前記の把持用の構成とは全く別途に設けられる構成であり、把持の問題と密着の問題を1つの構成で同時に解決するものではなかった。
【0008】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、単純な構造で把持が容易となるとともに、手指の負傷を防止し、設置、回収作業を効率化し、かつ、複数重ねて収納しても密着することのないカラーコーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本請求項1に係る発明は、基盤と、該基盤上に立設され中空状のコーン本体とを備えたカラーコーンにおいて、前記コーン本体の先端部には開放孔が設けられるとともに、該開放孔よりも大径の略球状の把手部が設けられ、該把手部が、引張ワイヤーの一端に連結され、前記引張ワイヤーが、他端を内部に固定されるとともに、常時は前記開放孔に前記把手部を密着する方向に付勢し、前記把手部が持ち上げられた際には伸長して前記開放孔と前記把手部との間隔をあけて前記コーン本体を引き上げることにより、前記課題を解決するものである。
【0010】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたカラーコーンの構成に加えて、前記把手部が、下方に開口部を有する把手部本体と、把手部本体内部に設けられ前記開口部から出没可能なスライドピンとからなり、前記引張ワイヤーが、前記スライドピンの先端に連結されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のカラーコーンを上方に持ち上げるための把持器具であって、前記係合部が、前記カラーコーンの把手部の側方から把手部の曲面に沿って係合するように構成され、前記受け部が、前記係合部の下端部から延長されて前記把手部の下方に延長されるように構成されるとともに、スライドピンが嵌合する中央溝を有し、前記持ち手部が、係合部の上端部から延長され、直接手で把持するように構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項4に係る発明は、請求項3に記載された把持器具の構成に加えて、前記持ち手部の上方に、手首に固定する固定部を有することにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1に係る発明のカラーコーンは、コーン本体の先端部に設けられた開放孔に密着している把手部をつかむことにより、滑ったり指に負担をかけることなくコーン本体を持ち上げることが可能であり、かつ、持ち上げた際には引張ワイヤーでコーン本体を吊り下げることができ、コーン本体が設置部や他の物体に接触して姿勢が変わっても把手部を握る手が滑ることはないため、把持が容易となるとともに、手指の負傷も防止され、大量のカラーコーンを設置、回収する場合でも疲労が少なく、トラックの荷台から走行しながら設置、回収作業を高速で行うことができ、設置、回収作業を効率化することができる。
【0014】
また、常時はコーン本体の開放孔に把手部が密着しているため、複数重ねて収納した際には把手部によって間隔を保持することができ、他の構成を付加することなくカラーコーン同士の密着を防止でき、設置、回収作業の効率を向上することができる。
【0015】
本請求項2に係る発明のカラーコーンは、請求項1に係るカラーコーンが奏する効果に加えて、把手部をつかんでコーン本体を持ち上げた際にスライドピンが把手部の開口部から突出することで、把手部をつかんでいる手指が直接引張ワイヤーに触れることを防止することができるため、さらに手指の負傷が防止される。
【0016】
また、スライドピンが把手部の内部に没することができるため、複数重ねて収納した際に、必要以上にカラーコーン同士の間隔が開くことがなく、複数重ねた収納時の高さを抑制することができる。
【0017】
本請求項3に係る発明の把持器具は、カラーコーンの把手部を下方から支えて持ち上げる形状に形成されているため、把手部を直接手で把持する必要がなく、大量のカラーコーンを設置、回収する場合でもさらに疲労が少なく、手指への負傷の虞もさらに軽減されるため、トラックの荷台から走行しながらの設置、回収作業をさらに高速で行うことができ、設置、回収作業を効率化することができる。
【0018】
本請求項4に係る発明の把持器具は、請求項3に係る把持器具が奏する効果に加えて、固定部によって手首に固定することにより、さらに疲労が軽減されるとともに、手指への負傷の虞も軽減されるため、設置、回収作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例であるカラーコーンの斜視図。
【図2】図1のカラーコーンの断面図。
【図3】図1のカラーコーンの把手部近傍の拡大断面図。
【図4】図1のカラーコーンを複数重ねた説明断面図。
【図5】本発明の一実施例であるカラーコーンと把持器具の持ち上げ時の説明図。
【図6】本発明の一実施例である把持器具の斜視図。
【図7】図6の3面図。
【図8】従来のカラーコーンの斜視図。
【図9】従来のカラーコーンを複数重ねた説明断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のカラーコーンは、基盤と、該基盤上に立設され中空状のコーン本体とを備えたカラーコーンにおいて、コーン本体の先端部には開放孔が設けられるとともに、該開放孔よりも大径の略球状の把手部が設けられ、該把手部が引張ワイヤーの一端に連結され、引張ワイヤーが他端をコーン本体の内部に固定されるとともに、常時は開放孔に把手部を密着する方向に付勢し、把手部が持ち上げられた際には伸長して開放孔と把手部との間隔をあけてコーン本体を引き上げるように構成され、単純な構造で把持が容易となるとともに、手指の負傷を防止し、設置、回収作業を効率化し、かつ、複数重ねて収納しても密着することがないという効果を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明の実施例であるカラーコーンについて図面に基づいて説明する。
カラーコーン100は、図1、図2に示すように、略正方形の基盤120と、該基盤120上に立設され先端部に開放孔111が設けられた中空円錐台状のコーン本体110と、開放孔111よりも大径の略球状の把手部130とから構成されている。
なお、本実施例では、基盤120とコーン本体110とは一体に形成されている。
【0022】
把手部130は、下方に開口部を有する把手部本体131と、把手部本体131内部に設けられ開口部から出没可能なスライドピン132とからなり、スライドピン132の突出側の先端には引張ワイヤー140の一端が連結され、引張ワイヤー140の他端はコーン本体110の内部を通って基盤120の内部に固定されている。
スライドピン132は製造時に把手部本体131内部に収納され、開口部から突出部のみが出没して把手部本体131内部から脱落することが無い形状に形成されている。
【0023】
引張ワイヤー140は、ばね鋼材、形状記憶合金、合成樹脂等で構成されており、図3に示すように、常時はコーン本体110の内部に螺旋状に沿い、スライドピン132を下方に引っ張って開放孔111に把手部130を密着する方向に付勢するような形状が付与され、把手部130が持ち上げられた際には伸長して開放孔111と把手部130との間隔をあけてコーン本体110を引き上げるように構成されている。
【0024】
以上の構成により、図3に示すように、把手部130を上方に引き上げることで内部の引張ワイヤー140が直線状となってコーン本体110を上方に持ち上げることができるため、滑ったり指に負担をかけることなくコーン本体110を持ち上げることが可能であり、かつ、持ち上げた際には引張ワイヤー140でコーン本体110を吊り下げることができ、コーン本体110が設置部や他の物体に接触して姿勢が変わっても把手部130を握る手が滑ることはないため、把持が容易となるとともに、手指の負傷も防止され、大量のカラーコーンを設置、回収する場合でも疲労が少なく、トラックの荷台から走行しながらの作業でも、設置、回収作業を高速で行うことができる。
【0025】
また、把手部130をつかんでコーン本体110を持ち上げた際にスライドピン132が把手部本体131の開口部から突出することで、把手部130をつかんでいる手指が直接引張ワイヤー140に触れることを防止することができ、手指の負傷が防止される。
【0026】
また、カラーコーン100を複数重ねた際、図4に示すように、上方に重ねられたカラーコーン100のスライドピン132b、132cが下方の把手部本体131a、131bにその先端が押されて把手部本体131b、131c内に没するため、複数のカラーコーン100は把手部本体131a、131b、131cの高さ分の間隔で重ねられることとなる。
【0027】
このことで、各カラーコーン100のコーン本体110は引張ワイヤー140が介在できる僅かな隙間を残して重ねることができるため、高さ方向のスペースの増加を極力抑えつつ、カラーコーン100同士の密着を防止することができ、設置、回収作業の効率を向上することができる。
なお、カラーコーン100を複数重ねた際、引張ワイヤー140は、その弾性によって下方のカラーコーン100の把手部本体131a、131bに沿って外方変形し、重ね合わせた時の全体の高さを大きくすることはない。
【0028】
なお、上記実施例の説明および図面では省略したが、製造時にスライドピン132の把手部本体131内部への収納のための構造は、例えば把手部本体131を上下や左右の2片に分割しておき、スライドピン132の収納後に固着するようにすれば良く、いかなる構造であっても良い。
【0029】
コーン本体110の形状は、図示のような円錐状に限定されるものではなく、上記の作用を奏するものであれば角錐状であっても良い。
基盤120の形状も、図示のような略正方形に限定されるものではなく、上記の作用を奏するものであれば円や多角形状であっても良い。
また、把手部本体131の形状は、図示のような球状に限定されるものではなく、上記の作用を奏するものであれば多面体形状等、他の形状であっても良い。
さらに、把手部本体131の内部に発光手段およびそのための電気回路等を内蔵しても良い。
【0030】
また、引張ワイヤー140は、図示では2本としているが、安定的に持ち上げるために3本以上を円周上等間隔に設けても良い。
また、引張ワイヤー140はコーン本体110の内部に螺旋状に沿うように設けられ形状を変化させることで張力を発生させているが、直線状で伸縮可能な材料であっても良く、カラーコーン100を複数重ねたときに邪魔にならない基盤120付近あるいは把手部本体131の内部に巻き取り手段を設けて張力を発生させても良い。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の実施例であるカラーコーンの把持器具について図面に基づいて説明する。
把持器具150は、図5乃至図7に示すように、カラーコーン100の把手部本体131の側方から把手部本体131の曲面に沿って係合するように構成された係合部151と、係合部151の下端部から延長されて把手部本体131の下方に延長されるように構成された受け部152と、係合部151の上端部から延長され、直接手で把持できるように構成された持ち手部153とから構成され、受け部152の中央部にはスライドピン132が嵌合する中央溝154を有し、持ち手部153の上方に手首に固定する固定部155を有している。
【0032】
固定部155は、例えば布製ぼ帯状部材を手首に巻いて面ファスナー等で固定するように構成されており、固定部155を手首に固定して持ち手部153および係合部151を手で把持することで把持器具150をしっかりと手に持つことができる。
【0033】
この把持器具150の受け部152の先端を把手部130の下半分に当てて下方に滑り込ませることで、図5に示すように、スライドピン132が中央溝154に嵌合して係合部151全体が把手部130と係合し、カラーコーン100の把手部130を持ち上げることができる。
【0034】
このことで、把手部130を直接手で把持する必要がなく、大量のカラーコーン100を設置、回収する場合でも疲労が少なく、手指への負傷の虞も軽減されるため、設置、回収作業をさらに高速で行うことができ効率化することができる。
また、手首に固定することにより、さらに疲労が軽減されるとともに、誤って把持器具150を落下させることもなく、安全に作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
100、500 ・・・カラーコーン
110、510 ・・・コーン本体
111 ・・・開放孔
120、520 ・・・基盤
130 ・・・把手部
131 ・・・把手部本体
132 ・・・スライドピン
140 ・・・引張ワイヤー
150 ・・・把持器具
151 ・・・係合部
152 ・・・受け部
153 ・・・持ち手部
154 ・・・中央溝
155 ・・・固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤と、該基盤上に立設され中空状のコーン本体とを備えたカラーコーンにおいて、
前記コーン本体の先端部には開放孔が設けられるとともに、該開放孔よりも大径の略球状の把手部が設けられ、
該把手部が、引張ワイヤーの一端に連結され、
前記引張ワイヤーが、他端を内部に固定されるとともに、常時は前記開放孔に前記把手部を密着する方向に付勢し、前記把手部が持ち上げられた際には伸長して前記開放孔と前記把手部との間隔をあけて前記コーン本体を引き上げることを特徴とするカラーコーン。
【請求項2】
前記把手部が、下方に開口部を有する把手部本体と、把手部本体内部に設けられ前記開口部から出没可能なスライドピンとからなり、
前記引張ワイヤーが、前記スライドピンの先端に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカラーコーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカラーコーンを上方に持ち上げるための係合部と受け部と持ち手部とを有する把持器具であって、
前記係合部が、前記カラーコーンの把手部の側方から把手部の曲面に沿って係合するように構成され、
前記受け部が、前記係合部の下端部から延長されて前記把手部の下方に延長されるように構成されるとともに、スライドピンが嵌合する中央溝を有し、
前記持ち手部が、係合部の上端部から延長され、直接手で把持するように構成されていることを特徴とする把持器具。
【請求項4】
前記持ち手部の上方に、手首に固定する固定部を有することを特徴とする請求項3に記載の把持器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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