説明

カラートナー用顔料組成物、それを含有してなるカラートナー用着色樹脂組成物及びカラートナー

【課題】トナー用として使用した場合に発色性、透過性に優れ、長時間の使用においても安定した画像濃度を与える顔料組成物、着色樹脂組成物、及びそれを使用したトナーを提供すること。
【解決手段】少なくとも有機顔料、下記一般式(1)で表される化合物、及び酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を含有するトナー用顔料組成物。
一般式(1)

A−Bm

(式中Aは、有機色素残基、置換されていてもよい複素環残基、置換されていてもよい芳香族残基、又は置換されていてもよい多環化合物残基を表し、Bは、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、又は、一般式(5)で示される塩基性置換基を表し、mは、1〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラートナー用顔料組成物及びそれを含有してなるカラートナー用着色樹脂組成物、カラートナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真感光体や静電記録体等の静電荷像担持体上に形成された静電潜像を現像する方法としては、大別すると、電気絶縁性液体に微細トナーが分散された液体現像剤を用いる方法(湿式現像法)及び結着樹脂中に有機顔料等の着色剤が分散された乾式トナーを用いる方法(乾式現像法)の二つの方法が知られている。
【0003】
これらの方法のうち、オフィス用あるいはパーソナル用の複写機、プリンター、それらの複合機については、乾式トナーを用いるものが主流となっており、近年ではフルカラー機能を有する機種も広く普及している。しかしこれまでに実用化された乾式トナーにより得られる画像は、オフセット印刷や液体現像剤等と比べると、色再現性、発色性、透過性等の画像品質が劣っているのが現状である。これは有機顔料等の着色剤をトナー中に微細化された状態で均一に分散させるのが困難であることが一因である。また、分散の不均一なトナーは長期間の使用により、帯電量が増加し画像濃度が低下することも課題となっている。
【0004】
一般に乾式トナーは、各種結着樹脂と染料、顔料等の着色剤を溶融混練し、冷却した後、粉砕、分級工程、更には外添剤を添加、混合する後処理工程を経て製造される粉砕法や、各種重合法、ケミカルミリング法等の化学的な方法で製造される。これらいずれのトナー製造法においても、通常の顔料を印刷インキのような微細な状態に分散し、且つ均一な粒径のトナー粒子を得ることが困難なのが現状である。
【0005】
以上のような乾式トナーの品質を改良するため、従来より顔料の選定、処理について多くの検討がなされている。
【0006】
特許文献1には、異種構造カップラー成分、及び/又は異種構造ジアゾ成分と混合カップリングを行った後に、ロジン類で表面処理を行った黄色モノアゾ顔料組成物を調製することにより顔料に耐熱性を付与し、鮮明性、透明性に優れたイエロートナーを得る方法が開示されている。確かにこの方法を用いることで耐熱性に優れた顔料組成物を得ることはできるが、同方法を用いた顔料組成物は結着樹脂との分散性が充分ではなく、トナーの鮮明性、透明性、耐久性が充分なレベルとは言い難い。
【0007】
特許文献2には、特定の銅フタロシアニン誘導体を使用することにより、特定の樹脂と顔料の分散性を飛躍的に向上させることが開示されている。しかし、懸濁重合法に代表されるケミカルトナー製造法においては銅フタロシアニン誘導体が水系分散液中に溶出することから、トナーの造粒が充分ではなく、結果的に所望の形状のトナーを得られない、環境安全面での負荷が掛かる、顔料の表面偏在によるトナー耐久性の悪化という欠点を有している。また、粉砕トナー製造法においても、顔料の親水性が大きくなることで、高湿環境において画像濃度が低下し、耐久性の不具合が発生する。
【0008】
特許文献3には、有機顔料、顔料誘導体、水溶性の無機塩及び溶剤を機械的に混練し、無機塩及び溶剤を水洗により除去して成るペースト顔料を、常温固体の樹脂を加熱混練し、水分を除去する、いわゆるフラッシング法を利用した樹脂被覆顔料が開示されている。この方法を用いトナーを作成すると確かに透明性に優れたトナーを作成することができる。しかし、同方法ではフラッシング工程の際、多量の樹脂を使用するために、後工程での材料選択性の自由度が小さいという課題がある。トナーの材料選択性の自由度が小さいことは、近年のトナーへの高品位化要求を満たすには、大きな弊害となる。
【0009】
特許文献4には、アゾ系顔料にアゾ系色素とオリゴマー又はポリマーを結合させた樹脂型誘導体を表面処理することにより、着色力、透明性に優れ、且つ重合トナーにおいてはトナー表面への顔料の偏在が抑制されたトナーを得る方法が開示されている。同方法を用いトナーを作成すると確かに着色力、透明性に優れたトナーを作成することができる。しかし、樹脂型誘導体を作製することによる製造コストの上昇、及びアゾ系色素に結合できるオリゴマー及びポリマーが限定されるという課題がある。
【0010】
また特許文献5及び6には、顔料を界面活性剤により表面処理することにより、結着樹脂への分散性が改善されたトナーが開示されている。しかし、同方法を用いた顔料組成物は結着樹脂との分散性が充分ではなく、トナーの鮮明性、透明性が充分なレベルとは言い難いのが現状である。
【0011】
このように顔料の分散性を改良し、高鮮明性、高透明性を有するトナーを得るための技術が種々提案されているが、これらの方法では、顔料の分散性に対しては十分な効果が得られず、例え得られたとしてもその製造法が煩雑であること、トナーの耐久性が充分でない等、依然として種々の問題を有している。したがって、これらの問題を解決し、着色剤が微細に分散した、発色性、透過性、更には耐久性に優れたカラートナーを、簡便かつ安定して製造することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−171165号公報
【特許文献2】特開2004−341397号公報
【特許文献3】特開平11−84731号公報
【特許文献4】特開2003−255613号公報
【特許文献5】特開昭61−59349号公報
【特許文献6】特開平3−267947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、トナー用として使用した場合に有機顔料が均一に且つ微細に分散され、発色性、透過性、耐久性に優れた顔料組成物、及びそれを使用した着色樹脂組成物、更にそれを使用したトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、鋭意検討した結果、有機顔料に一般式1又で表される化合物、及び酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を表面処理することにより、顔料が結着樹脂中に良好に分散し、発色性、透過性、更には耐久性に優れたカラートナーを製造できることを見出した。
【0015】
即ち本発明は、少なくとも有機顔料と、下記一般式(1)で表される化合物、及び酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を含有するトナー用顔料組成物に関する。
【0016】
一般式(1)

A−Bm
(式中Aは、有機色素残基、複素環残基、芳香族残基、又は多環化合物残基を表し、Bは、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、又は、一般式(5)で示される塩基性置換基を表し、mは、1〜4の整数を表す。)
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Xは−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表す。
nは、1〜10の整数を表す。
R1、R2は、それぞれ独立に、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基、炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基、またはR1 とR2 とで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。
R3は、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
Yは、−NR8−Z−NR9−、NH、または直接結合を表す。
R8、R9は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
Zは、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキレン基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニレン基、または炭素数20以下の置換されていてもよいアリーレン基を表す。
Pは、下記一般式(6)で示される置換基または下記一般式(7)で示される置換基を表す。
Qは、水酸基、アルコキシル基、−NR10R11、下記一般式(6)で示される置換基または下記一般式(7)で示される置換基を表す。
R10、R11は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
式(6)および式(7)において、R1〜R7およびnは、上に定義した通りのものである。)
【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
また本発明は、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂が、スチレン−アクリル樹脂およびロジンエステル類から選ばれた少なくとも一種を含有する、上記トナー用顔料組成物に関する。
【0025】
また本発明は、一般式(1)で表される化合物を表面に吸着してなる有機顔料が、さらに、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂で被覆されてなる、上記トナー用顔料組成物に関する。
【0026】
また本発明は、少なくとも有機顔料、一般式(1)で表される化合物、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤からなる混合物を機械的に混練した後に、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を加え更に混練してなる、上記トナー用顔料組成物に関する。
【0027】
また本発明は有機顔料が、フタロシアニン系有機顔料、アゾ系有機顔料、キナクリドン系有機顔料から選ばれた少なくとも一種を含有する、上記トナー用顔料組成物に関する。
【0028】
また本発明は、さらに結着樹脂を含有する上記着色樹脂組成物に関する。
【0029】
また本発明は、上記トナー用顔料組成物を含有するトナーに関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、有機顔料に一般式(1)で表される化合物、及び酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を表面処理することにより、顔料が結着樹脂中に良好に分散され、発色性、透過性、更には耐久性に優れたカラートナー用着色樹脂組成物及びカラートナーを製造できる。本発明の顔料組成物は、結着樹脂と顔料組成物を混練し、冷却した後、粉砕、分級工程、更には外添剤を添加、混合する後処理工程を経て製造される粉砕トナー、及び各種ケミカルトナーいずれの製造においても上記効果を発揮する。ケミカルトナー製造では既知の懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法、エステル伸長重合法においても使用できる。
【0031】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0032】
まず、本発明における一般式(1)で表される化合物について説明する。
A−Bm
(式中Aは、有機色素残基、複素環残基、芳香族残基、又は多環化合物残基を表し、Bは、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、又は、一般式(5)で示される塩基性置換基を表し、mは、1〜4の整数を表す。)
式(1)中、Aの有機色素残基を構成する有機色素としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられる。
【0033】
式(1)中、Aの複素環残基を構成する複素環としては、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アルリジン、アクリドン、アントラキノン等が挙げられる。
【0034】
式(1)中、Aの芳香環残基を構成する芳香族としては、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン、ベンジルアルコール、フタリルアルコール等の芳香族アルコール、エチルベンゼン、アセトアセトアニリド類等が挙げられる。
【0035】
式(1)中、Aの多環化合物残基を構成する多環化合物としては、ナフトールAS、ナフトールAS−BS、ナフトールAS−BO、ナフトールAS−CAなどのナフトール類等が挙げられる。
【0036】
次に一般式(2)、式(3)、式(4)、および式(5)で示される塩基性置換基について説明する。
【0037】
【化1】

【0038】
【化2】

【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
R1〜R11における炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル、シクロペンチル基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0042】
R1〜R11における炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基、トリフルオロエテニル基、1−クロロエテニル基、2,2−ジブロモエテニル基、4−ヒドロキシ−1−ブテニル基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0043】
R1〜R11における炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、トリル基、キシリル基、p−シクロヘキシルフェニル基、p−クメニル基、m−カルボキシフェニル基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0044】
R1とR2とで一体となって、更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環構造としては、インドール基、ベンズイミダゾロン基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ピロール基、キノリン基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0045】
Zにおける炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルメチレン基、クロロメチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0046】
Zにおける炭素数1〜36の置換されていてもよいアルケニレン基としては、ビニレン基、1−メチルビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0047】
Zにおける炭素数20以下の置換されていてもよいアリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、4−メチル−1,2−フェニレン基、4−クロロ−1,2−フェニレン基、4−ヒドロキシ−1,2−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、p,p’−ビフェニリレン基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0048】
Qにおけるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
式(6)および式(7)において、R1〜R7は、上に定義した通りのものである。
【0049】
式(2)〜式(5)および式(6)、式(7)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジーsec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明において、一般式(1)で表される化合物は一般式(2)〜(5)のいずれかの塩基性置換基を有さなくてはならない。これらの塩基性置換基を持つ化合物(1)は、後述の酸価5〜60mgKOH/gの樹脂と、酸−塩基相互作用により好適に吸着し、結着樹脂との分散性の向上によるトナーの画像濃度や透明性、及び耐久性の向上を達成することができる。一般式(1)以外の化合物を使用した場合、化合物によっては画像濃度や透明性の向上を達成することはできるが、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂と併用してもトナーの耐久性が充分なレベルとは言い難い。
【0051】
本発明において、一般式(1)で表される化合物の好ましい処理量は特に限定されないが、顔料100重量部に対して0.5〜15重量部であることが好ましく、更に好ましくは顔料100重量部に対して1.0〜10重量部である。処理量が0.5重量部よりも少ない場合、上記範囲の場合と比較して、顔料の結着樹脂中への分散性を向上する効果が低い。また、15重量部を超える量を処理しても、処理量の増加に伴う特性の著しい向上を得ることは困難である。
【0052】
次に、本発明における酸価5〜60mgKOH/gの樹脂について説明する。
【0053】
本発明における酸価5〜60mgKOH/gの樹脂は、結着樹脂として機能する。
【0054】
本発明において、使用することができる樹脂としては、酸価が5〜60mgKOH/gのものであれば、公知のものを広く使用することができる。例えば、スチレン−アクリル樹脂に代表されるスチレン系共重合体や、不均化ロジン、重合ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、水添ロジン等をエステル化したロジンエステル類、ロジン変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0055】
これらの樹脂において、スチレン−アクリル樹脂、及びロジンエステル類が特に好ましい。理由は定かではないが、有機顔料への処理時における被覆均一性、一般式(1)で表される化合物との親和性、トナーの結着樹脂との相溶性等が考えられる。
【0056】
これらの樹脂の酸価が5未満となると、有機顔料への処理時における、塩基性置換基との親和性が充分ではなく、塩基性置換基をもつ一般式(1)で表される化合物の弊害により、トナーの耐久性が不充分となる。酸価が60mgKOH/gを超えると、顔料組成物と結着樹脂との分散性が不充分となる、負帯電性トナーとして使用する場合には低湿環境においてトナーの負帯電性が大きくなりすぎてカブリが起きる、等の問題が発生する。また、樹脂の親水性が大きくなることや、塩基性置換基をもつ一般式(1)で表される化合物の影響をトナーが受け易くなることで、高湿環境において画像濃度が低下し、耐久性の不具合が発生する。
【0057】
本発明において、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂の好ましい処理量は、樹脂の分子量や分子構造に左右される為、一概にはいえないが、顔料100重量部に対して少なくとも1.0〜15.0重量部の範囲内であれば好適な効果を得ることができる。処理量が1.0重量部よりも少ない場合、樹脂が有機顔料に均一に被覆されず、上記範囲の場合と比較して、トナーの耐久性向上の効果が充分な効果が発揮されない場合がある。また、15重量部を超える量を処理しても、処理量の増加に伴う特性の著しい向上を得ることは困難である。
【0058】
これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0059】
本発明の顔料組成物を製造する際に、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を処理する方法は、後述の顔料を製造する工程のいずれかにおいてであれば特に限定されないが、ソルベントソルトミリングを行う際に有機顔料、一般式(1)で表される化合物とともに混練する方法が、処理時における被覆均一性の観点から好ましい。
【0060】
特に好ましくは、ソルベントソルトミリングを行う際に、少なくとも、有機顔料、一般式(1)で表される化合物、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤からなる混合物を機械的に混練した後に、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を加え更に混練する方法である。有機顔料が結着樹脂に均一に且つ微細に分散され、発色性、透過性、耐久性に優れたトナーを調製するために非常に効果が高く、好適である。
【0061】
ソルベントソルトミリングにおける、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂の処理形態は、樹脂が有機顔料表面に被覆されていれば特に限定されない。例えば、ソルトミリングを行う際に、ニーダー等を樹脂のガラス転移点以上に加熱した後、常温固体の樹脂を添加する方法、樹脂溶液を作成した後に、樹脂溶液をニーダー等に添加する方法、樹脂エマルジョンを作成した後に、樹脂エマルジョンをニーダー等に添加する方法等が挙げられる。これらのうち、大気汚染や排液処理の環境負荷の観点から、ソルトミリングを行う際に、ニーダー等を樹脂のガラス転移点以上に加熱した後、常温固体の樹脂を添加する方法が好ましい。
【0062】
本発明の顔料組成物は、使用する有機顔料の種類によらず、トナー用に使用した場合、発色性、透過性、耐久性等の諸特性を向上することができる。有機顔料の中でもフタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、キナクリドン顔料から選ばれたいずれかを使用した場合、トナー用としての適性が高く、特に好ましい。
【0063】
本発明で使用することのできるフタロシアニン顔料としては、C.I.Pigment Blue 15,C.I.Pigment Blue 15:1,C.I.Pigment Blue 15:2,C.I.Pigment Blue 15:3,C.I.Pigment Blue 15:4,C.I.Pigment Blue 15:6等が挙げられる。その中でもC.I.Pigment Blue 15:3がトナー用に使用した場合の適性が高く、特に好ましい。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0064】
本発明で使用することのできるモノアゾ顔料としては、C.I.Pigment Orange 1,C.I.Pigment Yellow 2,C.I.Pigment Yellow 65,C.I.Pigment Yellow 73,C.I.Pigment Yellow 74,C.I.Pigment Yellow 75,C.I.Pigment Yellow 130,C.I.Pigment Yellow 150,C.I.Pigment Yellow 151,C.I.Pigment Red 3,C.I.Pigment Red 5,C.I.Pigment Red 8,C.I.Pigment Red 10,C.I.Pigment Red 17,C.I.Pigment Red 22,C.I.Pigment Red 23,C.I.Pigment Red 31,C.I.Pigment Red 32,C.I.Pigment Red 114,C.I.Pigment Red 146,C.I.Pigment Red 147,C.I.Pigment Red 150,C.I.Pigment Red 170,C.I.Pigment Red 175,C.I.Pigment Red 176,C.I.Pigment Red 184,C.I.Pigment Red 185,C.I.Pigment Red 208,C.I.Pigment Yellow 213,C.I.Pigment Yellow 214,C.I.Pigment Red 245,C.I.Pigment Red 258,C.I.Pigment Red 268,C.I.Pigment Red 269,C.I.Pigment Violet 32,C.I.Pigment Violet 50等が挙げられる。その中でもC.I.Pigment Yellow 74,C.I.Pigment Red 150,C.I.Pigment Red 176,C.I.Pigment Red 185,C.I.Pigment Red 269,C.I.Pigment Violet 32がトナーとして使用した際の適性が高く、特に好ましい。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本発明で使用することのできるキナクリドン顔料としては、C.I.Pigment Red 122,C.I.Pigment Red 202,C.I.Pigment Red 206,C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。その中でもC.I.Pigment Red 122,C.I.Pigment Red 202,C.I.Pigment Violet 19がトナーとして使用した際の適性が高く、特に好ましい。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本発明で使用する各種顔料の形態は特に限定されない。市販の顔料をそのまま使用してもよく、合成して使用してもよい。また、必要に応じてアシッドペースティングやソルベントソルトミリング、ドライミリング等の方法により顔料化を行い、所望の粒子径に調整してから使用してもよい。
【0067】
本発明で使用するモノアゾ顔料は、公知の方法によって合成することができる。その一例として、各種芳香族アミンのジアゾ化物を、アセトアセトアニリド化合物を含んだスラリー中に添加する方法が挙げられる。まず、アセトアセトアニリド化合物をpHが10以上のアルカリ性水溶液中で溶解し、それを予め調製した酢酸水溶液に注入してpH3〜6の懸濁液を調製する。一方、各種芳香族アミンを塩酸水溶液中に添加してpHが2以下の懸濁液を調製し、それを5℃以下に冷却した後、亜硝酸ナトリウムを加えてジアゾ化を行う。ジアゾ化終了後、反応混合物にスルファミン酸を加えて亜硝酸を除去し、ジアゾ化物の水溶液を調製する。以上で調製したジアゾ化物の水溶液を、10〜50℃において30〜90分かけてアセトアセトアニリド化合物のスラリー中に添加することでカップリング反応を行い、得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥、粉砕して顔料を得ることができる。
【0068】
アシッドペースティングにより顔料化を行う場合、粗製顔料を濃硫酸に溶解し、それを大過剰の水と混合することにより微細な顔料粒子を析出させる。その後濾過、水洗を繰り返し、乾燥することにより顔料を得ることができる。
【0069】
アシッドペースティングの方法は特に限定されないが、例えば粗製顔料をその5〜30重量倍の98%−硫酸に溶解し、得られた硫酸溶液をその5〜30重量倍の水と混合する方法が挙げられる。その際、粗製顔料を硫酸に溶解する温度は、原料の分解やスルホン化等の反応を発生しない範囲であれば特に限定されないが、例えば3〜40℃の範囲で行うことができる。また、粗製顔料の硫酸溶液と水を混合する方法や温度等の条件も特に限定されないが、例えば0℃〜60℃の範囲で行うことができる。
【0070】
硫酸溶液と水の混合方法は特に限定されず、顔料を完全に析出させることができればどのような方法で混合しても良い。例えば硫酸溶液を予め調製した氷水に注入する方法や、アスピレーター等の装置を使用して流水中に連続的に注入する等の方法で析出させることができる。以上の方法で得られたスラリーを濾過、洗浄して酸性成分を除去する。その際、必要に応じて顔料スラリーに各種アルカリを添加し、pHを調整しても良い。濾別された顔料の水ケーキを乾燥、粉砕することで顔料を得ることができる。
【0071】
ソルベントソルトミリングにより顔料化を行う場合、粗製顔料、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤の少なくとも三成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強力に混練する。混練後の混合物を水中に投入し、各種攪拌機で攪拌してスラリー状とする。これを濾過することにより、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤を除去する。以上のスラリー化と濾過、水洗を繰り返し、微細化された有機顔料を得ることができる。
【0072】
ソルベントソルトミリングで使用することのできる水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、有機顔料の1重量倍以上、好ましくは20重量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が1重量倍よりも少ない場合、均一な粒子径に顔料化することが困難である。一方、20重量倍よりも多い場合、混練後に水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤を除去するために多大な労力を要すると同時に、一回に処理できる顔料の量が少なくなるため、生産性の点で好ましくない。
【0073】
ソルベントソルトミリングによる顔料化方法では混練に伴って発熱することが多いため、安全性の点から、沸点が120〜250℃程度の水溶性の溶剤を使用することが好ましい。その例としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0074】
ドライミリングにより顔料化を行う場合、粗製顔料を各種粉砕機で乾式粉砕することにより微細化する。この方法において、粉砕は粉砕メディア同士の衝突や摩擦を通じて進行する。ドライミリングを行うために使用する装置は特に限定されないが、その例としてはビーズ等の粉砕メディアを内蔵した乾式粉砕装置であるボールミルやアトライター、振動ミル等が挙げられる。これらの装置を使用して乾式粉砕する際、必要に応じて粉砕容器の内部を減圧したり、窒素ガス等の不活性ガスを充填させて行ってもよい。また、ドライミリングした後に、上記のソルベントソルトミリングや溶剤中での攪拌処理等を行ってもよい。
【0075】
本発明で用いる結着樹脂としては、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂として、あるいは、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂と併用して、トナー用の結着樹脂として公知のものであればいずれも使用することができる。それらの結着樹脂としては、ポリスチレン系重合体、スチレン−アクリル系樹脂等のポリスチレン系共重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらのうち、低温定着性等のトナーの特性からポリエステル樹脂を使用することが好ましい。
【0076】
本発明で用いるポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の炭素数2〜10の脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、下記一般式8で示されるビスフェノール誘導体等のジオール類が挙げられる。また、耐オフセット性、耐ブロッキング性の改善効果があるため、3級脂肪酸のグリシジルエステルを上記脂肪族ジオールとともに用いることが好ましい。また架橋成分として、グリセリン、ソルビット、ソルビタン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等を使用してもよい。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
一般式8
【0077】
【化6】

【0078】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、x+yは2〜10である。)
ポリエステルを構成する酸成分としては、モノカルボン酸として、不均化ロジン、そして二価のカルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はその無水物;また更に炭素数16〜18のアルキル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。架橋成分として有効な三価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、オクタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられる。また定着性、耐オフセットのバランスを両立させる目的でモノカルボン酸の不均化ロジンと二価のカルボン酸を併用して用いることも好ましい。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0079】
ポリエステル樹脂としては、上記アルコール成分及び酸成分から合成されたホモポリエステル或いはコポリエステルを単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してももよい。
【0080】
また、本発明で使用されるポリエステル樹脂は特に限定されるものではないが、軟化温度が115〜150℃であることが好ましく、更に好ましくは120〜145℃である。軟化温度が115℃未満では、樹脂の凝集力が極端に低下し、一方、150℃を超えるとその樹脂を使用したトナーの溶融流動及び低温定着性が低下するため、高速複写機用トナーバインダーには適さなくなり、好ましくない。
【0081】
また、ポリエステル樹脂の酸価は10〜60mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは15〜55mgKOH/gである。酸価が10mgKOH/g未満の場合、負帯電性トナーとして使用する場合にはトナーの負帯電性が小さくなることにより画像濃度が低下するため好ましくない。これに対し酸価が60mgKOH/gを超える場合、負帯電性トナーとして使用する場合には低湿環境においてトナーの負帯電性が大きくなりすぎてカブリが発生する、あるいは樹脂の親水性が大きくなることにより高湿環境において画像濃度が低下する、等の不具合を発生する場合があり好ましくない。
【0082】
ポリエステル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g以下であることが好ましく、更に好ましくは15mgKOH/g以下である。水酸基価が20mgKOH/gを超える場合には、親水性が大きくなり高湿環境において画像濃度が低下するため、好ましくない。
【0083】
また、トナーの凝集防止の点からは、ポリエステル樹脂の示差走査熱量計(DSC)によって測定されるガラス転移温度(Tg)は45〜70℃であることが好ましく、更に好ましくは50〜65℃である。更に、樹脂の真密度は1.1〜1.3g/cm3であることが好ましい。樹脂の真密度が上記範囲である場合、同じ濃度の画像を形成するために使用するトナーの量が少なくて済み、結果的に経済的な複写を行うことができる。
【0084】
本発明のトナーには、必要に応じて荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤の使用により帯電量の安定したトナーを得ることができる。本発明のトナーにおいては、荷電制御剤として従来知られた正又は負の荷電制御剤のいずれも使用可能である。
【0085】
本発明のトナーが正帯電性トナーである場合に使用する正の荷電制御剤の例としてはニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、有機錫オキサイド、四級アンモニウム塩化合物、四級アンモニウム塩を官能基としてスチレン・アクリル樹脂に共重合したスチレン・アクリル系ポリマー等が挙げられるが、中でも四級アンモニウム塩化合物が好ましい。本発明において使用できる四級アンモニウム塩化合物としては、四級アンモニウム塩と有機スルホン酸あるいはモリブデン酸とからなる造塩化合物が挙げられる。有機スルホン酸としてはナフタレンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0086】
一方、負帯電性トナーである場合に使用する負の荷電制御剤の例としてはモノアゾ染料の金属錯体、含クロム有機染料、スルホン酸を官能基としてスチレン・アクリル樹脂に共重合したスチレン・アクリル系ポリマー、サリチル酸誘導体の金属塩化合物、サリチル酸誘導体金属錯体、フェノール系縮合物、ホスホニウム系化合物等が挙げられるが、中でもサリチル酸誘導体の金属塩化合物、サリチル酸誘導体金属錯体、フェノール系縮合物、ホスホニウム系化合物等が好ましい。サリチル酸誘導体の金属塩化合物及びサリチル酸誘導体金属錯体に用いられる金属としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、チタン、クロム、アルミニウム、ケイ素等が挙げられる。またサリチル酸誘導体としては、tert−ブチル基、tert−オクチル基を有するものが好ましく、具体的には、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−フェニルサリチル酸が特に好ましい化合物として挙げられる。またフェノール系縮合物としてはカリックスアレン化合物が好ましい。これらの荷電制御剤はいずれも公知の製造方法で得られるものを使用することができる。
【0087】
また、本発明のトナーにおいては、離型剤を用いることができる。離型剤の例としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス類等が挙げられる。上記離型剤は樹脂中に均一に好ましく分散、分配配合することが困難であることが多いため、10μm以下に粉砕した上でトナーを製造することが好ましい。
【0088】
本発明のトナーにおいては、必要に応じて滑剤、流動化剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等の外添剤を使用することができる。これら外添剤は、従来トナーの製造にあたり使用されている公知の外添剤のいずれのものでも使用することができる。これら外添剤の例としては、滑剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛等が、流動化剤としては、乾式法あるいは湿式法で製造したシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物及びこれらを疎水性化処理したもの等が、研磨剤としては窒化珪素、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タングステンカーバイド、炭酸カルシウム及びこれらを疎水化処理したもの等が、導電性付与剤としては酸化錫等が挙げられる。
【0089】
本発明のトナーにおいて使用する流動化剤としては、上記で例示したもののうち、疎水化処理されたシリカ、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物微粉体を使用するすることが好ましい。これら微粉体の疎水化処理方法としては、シリコンオイルやテトラメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤による処理等が挙げられる。
【0090】
本発明のトナーは一成分系現像剤として使用してもよく、キャリアと混合して二成分系現像剤として使用してもよい。二成分系現像剤に用いるキャリアとしては、従来公知のいずれのものを使用してもよい。その例としては、鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のような磁性粉体等、あるいはこれらの表面を樹脂等で処理したもの等が挙げられる。キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらのなかでは、スペントトナーの形成が少ないためシリコーン含有樹脂が特に好ましい。これらキャリアの重量平均粒径は30〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0091】
本発明に係るトナーは、粉砕法や各種重合法等、従来から公知のトナーの製造方法を用いて製造することができる。粉砕法による製造例としては以下の方法が挙げられる。例えば前述の顔料及び/又は顔料組成物、結着樹脂、必要に応じて荷電制御剤、離型剤を、混合機により充分混合した後、熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化を経て着色樹脂組成物を得る。得られた着色樹脂組成物をハンマーミル等の粉砕機を用いて粗粉砕し、必要に応じて前述の外添剤と混合した後、ジェットミル等により微粉砕し分級する方法によりトナーを製造することができる。
【0092】
着色樹脂組成物を製造する際に、各種原料を混合するために使用するための混合機としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等従来公知のいずれの混合機を用いてもよい。また、これらを溶融混練するために使用する混練機としては、加熱ニーダー、バンバリーミキサー等のバッチ式混練機を使用してもよく、1軸あるいは2軸のエクストルーダー等の連続式混練機を使用してもよい。
【0093】
着色樹脂組成物を製造する際に各種原料を溶融混練する温度は100〜200℃が好ましく、より好ましくは120〜180℃である。100℃未満の場合顔料及び/又は顔料組成物の分散が不十分であり、200℃を超える場合、結着樹脂が熱劣化するため好ましくない。また、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料等の耐熱性の低い顔料については、混練温度が150℃を超えてしまうと変色してしまう場合があり、150℃を超える温度で混練することは好ましくない場合がある。
【0094】
荷電制御剤は、上記溶融混練の工程で各種原料と混合して使用してもよく、着色樹脂組成物を調製した後に混合、または混合後、再度溶融混練して使用してもよい。このうち溶融混練の工程で使用した場合、荷電制御剤を着色樹脂組成物中に均一に分散することができるため、より好ましい。
【0095】
また、離型剤も同様に、上記溶融混練の工程で各種原料と混合して使用してもよく、着色樹脂組成物を調製した後に混合、または混合後、再度溶融混練して使用してもよい。このうち溶融混練の工程で使用した場合、耐久性の高いトナーを得ることができるため、より好ましい。
【0096】
一方、重合法でトナーを製造する場合、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法、エステル伸長重合法等、従来から公知の方法を用いて製造することができる。また、これらの重合法でトナーを製造する際に、前述の着色樹脂組成物を原料として使用し、加工することも可能である。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。以下の例においては、「部」は、特に言及がない限り「重量部」を意味する。
【0098】
(実施例1〜30、比較例1〜12 フタロシアニン顔料又はフタロシアニン顔料組成物の調製)
実施例1
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部、下記化合物(a)0.5部、塩化ナトリウム600部、及びジエチレングリコール100部を井上製作所製ラボ3Lニーダー中で、内容物の温度を110〜120℃に保って4時間湿式摩砕した後に、ニーダー内のドウ中にペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)を5.0部添加し、1時間湿式摩砕を行った。内容物を取り出した後、3000部の70℃に加熱した水中で60分間攪拌することで塩化ナトリウムとジエチレングリコールを溶解し、このスラリーを濾過、水洗してジエチレングリコール及び塩化ナトリウムの除去を行なった。得られた顔料の含水ケーキを再度、3000部の70℃に加熱した水中で60分間攪拌して再度スラリー状とし、濾過、精製を行なった。90℃で24時間乾燥後、粉砕して103部の顔料組成物Aを得た。
化合物(a)A1−[SO2NH(CH2)3N(C25)2]2、A1は銅フタロシアニン残基
(一般式(1)で表され、mは2、Bは一般式(2)、XはSO2、nは3、R1及びR2
がエチル基である。)
【0099】
実施例2
化合物(a)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例1と同様にして104部の顔料組成物Bを得た。
【0100】
実施例3
化合物(a)の添加量を5.0部とし、それ以外は実施例1と同様にして108部の顔料組成物Cを得た。
【0101】
実施例4
化合物(a)の添加量を10部とし、それ以外は実施例1と同様にして113部の顔料組成物Dを得た。
【0102】
実施例5
化合物(a)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例1と同様にして118部の顔料組成物Eを得た。
【0103】
実施例6
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例3と同様にして104部の顔料組成物Fを得た。
【0104】
実施例7
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を7.5部とし、それ以外は実施例3と同様にして110部の顔料組成物Gを得た。
【0105】
実施例8
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例3と同様にして113部の顔料組成物Hを得た。
【0106】
実施例9
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例3と同様にして118部の顔料組成物Iを得た。
【0107】
実施例10
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)1.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして104部の顔料組成物Jを得た。
【0108】
実施例11
ジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)の添加量を5.0部とし、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物Kを得た。
【0109】
実施例12
ジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例3と同様にして113部の顔料組成物Lを得た。
【0110】
実施例13
ジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例3と同様にして118部の顔料組成物Mを得た。
【0111】
実施例14
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにエステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物Nを得た。
【0112】
実施例15
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにマルキードNO.1(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価25)5.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物Oを得た。
【0113】
実施例16
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにマルキードNO.8(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価39)5.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物Pを得た。
【0114】
実施例17
化合物(a)0.5部の代わりに下記化合物(b)0.5部を使用し、それ以外は実施例1と同様にして103部の顔料組成物Qを得た。
【0115】
化合物(b)A1−[CH2NHCOCH2NH(CH2)3N(C492]3 、A1は銅フタロシアニン残基
(一般式(1)で表され、mは3、Bは一般式(2)、XはCH2NHCOCH2、nは3、R
1及びR2がブチル基である。)
【0116】
実施例18
化合物(b)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例17と同様にして104部の顔料組成物Rを得た。
【0117】
実施例19
化合物(b)の添加量を5.0部とし、それ以外は実施例17と同様にして108部の顔料組成物Sを得た。
【0118】
実施例20
化合物(b)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例17と同様にして113部の顔料組成物Tを得た。
【0119】
実施例21
化合物(b)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例17と同様にして118部の顔料組成物Uを得た。
【0120】
実施例22
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を使用し、それ以外は実施例19と同様にして108部の顔料組成物Vを得た。
【0121】
実施例23
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにエステルガムAAV (荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7) 5.0部を使用し、それ以外は実施例19と同様にして108部の顔料組成物Wを得た。
【0122】
実施例24
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにマルキードNO.1(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価25)5.0部を使用し、それ以外は実施例19と同様にして108部の顔料組成物Xを得た。
【0123】
実施例25
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにマルキードNO.8(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価39)5.0部を使用し、それ以外は実施例19と同様にして108部の顔料組成物Yを得た。
【0124】
実施例26
化合物(a)0.5部の代わりに下記化合物(c)5.0部を使用し、それ以外は実施例1と同様にして108部の顔料組成物Zを得た。
【0125】
化合物(c)A1−[CH2N(C252]4 、A1は銅フタロシアニン残基
(一般式(1)で表され、mは4、Bは一般式(3)、R1及びR2がエチル基である。)
実施例27
化合物(a)0.5部の代わりに下記化合物(d)5.0部を使用し、それ以外は実施例1と同様にして113部の顔料組成物AAを得た。
【0126】
化合物(d)
【化7】

A1は銅フタロシアニン残基
(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(4)、XはCH2NHCOCH2、R3はメチル基、R4〜R7は水素原子である。)
【0127】
実施例28
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部、化合物(a)5.0部、ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部、塩化ナトリウム600部、及びジエチレングリコール100部を井上製作所製ラボ3Lニーダー中で、内容物の温度を110〜120℃に保って5時間湿式摩砕を行った。内容物を取り出した後、3000部の70℃に加熱した水中で60分間攪拌することで塩化ナトリウムとジエチレングリコールを溶解し、このスラリーを濾過、水洗してジエチレングリコール及び塩化ナトリウムの除去を行なった。得られた顔料の含水ケーキを再度、3000部の70℃に加熱した水中で60分間攪拌して再度スラリー状とし、濾過、精製を行なった。90℃で24時間乾燥後、粉砕して108部の顔料組成物ABを得た。
【0128】
実施例29
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を使用し、それ以外は実施例28と同様にして108部の顔料組成物ACを得た。
【0129】
実施例30
化合物(a)5.0部の代わりに化合物(b)5.0部を使用し、それ以外は実施例28と同様にして108部の顔料組成物ADを得た。
【0130】
比較例1
化合物(a)0.5部及びペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部を使用しないこと以外は実施例1と同様にして98部の顔料aaを得た。
【0131】
比較例2
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部を添加しないこと以外は実施例3と同様にして103部の顔料組成物AEを得た。
【0132】
比較例3
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部を添加しないこと以外は実施例19と同様にして103部の顔料組成物AFを得た。
【0133】
比較例4
化合物(a)0.5部を添加しないこと以外は実施例1と同様にして103部の顔料組成物AGを得た。
【0134】
比較例5
化合物(a)5.0部を添加しないこと以外は実施例11と同様にして103部の顔料組成物AHを得た。
【0135】
比較例6
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル819(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価75)5.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物AIを得た。
【0136】
比較例7
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル683(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価160)5.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物AJを得た。
【0137】
比較例8
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにロンジスR(荒川化学株式会社製不均化ロジン、酸価160)5.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物AKを得た。
【0138】
比較例9
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにマルキード32(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価140)5.0部を使用し、それ以外は実施例3と同様にして108部の顔料組成物ALを得た。
【0139】
比較例10
化合物(a)0.5部の代わりに下記化合物(e)5.0部を使用し、それ以外は実施例1と同様にして113部の顔料組成物AMを得た。
【0140】
化合物(e)A1−SO3-3+(CH211CH3 、A1は銅フタロシアニン残基
(化合物(e)は一般式(1)で表されない。)
比較例11
化合物(a)0.5部の代わりに下記化合物(f)5.0部を使用し、それ以外は実施例1と同様にして113部の顔料組成物ANを得た。
【0141】
化合物(f)

1−(COOH)4
(化合物(f)は一般式(1)で表されない。)
【0142】
比較例12
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル683(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価160)5.0部を使用し、それ以外は実施例28と同様にして108部の顔料組成物AOを得た。

上記実施例で調製した顔料及び顔料組成物の内訳を表1に纏めた。
【0143】
【表1】

表1中、化合物e及びfは一般式(1)で表される化合物ではない。
【0144】
製造例1<モノアゾ顔料(C.I.Pigment Yellow 74)の調製>
2−メトキシ−4−ニトロアニリン67.3部を水500部に分散させ、氷を加えて温度0℃に調整し、35%塩酸水溶液105.0部を加えて1時間攪拌後、亜硝酸ナトリウム28.0部を水72部に加えて調製した水溶液を添加して1時間攪拌し、ジアゾ化を行なった。攪拌後スルファミン酸0.5部を加えて過剰の亜硝酸を消失し、ジアゾニウム塩水溶液とした。
【0145】
一方、o−アセトアセトアニシジド84.5部、25%水酸化ナトリウム水溶液164.0部を水140部に25℃で溶解させ、カップラー水溶液とした。この水溶液を80%酢酸82.0部と水420部を混合した水溶液中に30分かけて注入し、カップラースラリーとした。
【0146】
このカップラースラリーを40℃に加熱した後、上記のジアゾニウム塩水溶液を1時間かけて注入し、カップリング反応を行なった。生成した顔料のスラリーを30分攪拌して、反応を完結させた後、70℃に加熱し、その温度を維持したまま20分攪拌した後に、濾過、水洗を行なった。得られた顔料の含水ケーキ(顔料の含有量150部)を90℃で24時間乾燥後、粉砕して148部の顔料ba(C.I.pigment Yellow 74)を得た。
【0147】
(実施例31〜50、比較例13〜22 モノアゾ顔料又はモノアゾ顔料組成物 (C.I.Pigment Yellow 74)の調製)
実施例31
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部の代わりに顔料ba(C.I.Pigment Yellow 74)100部、及び化合物(a)0.5部の代わりに下記化合物(g)0.5部を使用し、それ以外は実施例1と同様にして103部の顔料組成物APを得た。
【0148】
化合物(g)
【化8】

【0149】
(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(2)、XはCO、nは3、R1及びR2はエチル基である。)
実施例32
化合物(g)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例31と同様にして104部の顔料組成物AQを得た。
【0150】
実施例33
化合物(g)の添加量を5.0部とし、それ以外は実施例31と同様にして108部の顔料組成物ARを得た。
【0151】
実施例34
化合物(g)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例31と同様にして113部の顔料組成物ASを得た。
【0152】
実施例35
化合物(g)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例31と同様にして118部の顔料組成物ATを得た。
【0153】
実施例36
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例33と同様にして104部の顔料組成物AUを得た。
【0154】
実施例37
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を7.5部とし、それ以外は実施例33と同様にして108部の顔料組成物AVを得た。
【0155】
実施例38
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例33と同様にして113部の顔料組成物AWを得た。
【0156】
実施例39
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例33と同様にして118部の顔料組成物AXを得た。
【0157】
実施例40
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を使用し、それ以外は実施例33と同様にして108部の顔料組成物AYを得た。
【0158】
実施例41
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにエステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を使用し、それ以外は実施例33と同様にして108部の顔料組成物AZを得た。
【0159】
実施例42
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにマルキードNO.1(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価25)5.0部を使用し、それ以外は実施例33と同様にして108部の顔料組成物BAを得た。
【0160】
実施例43
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにマルキードNO.8(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価39)5.0部を使用し、それ以外は実施例33と同様にして108部の顔料組成物BBを得た。
【0161】
実施例44
化合物(g)5.0部の代わりに下記化合物(h)1.0部を使用し、それ以外は実施例40と同様にして104部の顔料組成物BCを得た。
【0162】
化合物(h)
【化9】

【0163】
(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(2)、XはCO、nは3、R1及びR2はエチル基である。)
実施例45
化合物(h)の添加量を5.0部とし、それ以外は実施例44と同様にして108部の顔料組成物BDを得た。
【0164】
実施例46
化合物(h)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例44と同様にして113部の顔料組成物BEを得た。
【0165】
実施例47
化合物(g)0.5部の代わりに下記化合物(i)5.0部を使用し、それ以外は実施例31と同様にして108部の顔料組成物BFを得た。
【0166】
化合物(i)
【化10】

【0167】
(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(2)、XはSO2、nは3、R1及びR2はメチル基である。)
実施例48
化合物(g)0.5部の代わりに下記化合物(j)5.0部を使用し、それ以外は実施例31と同様にして108部の顔料組成物BGを得た。
【0168】
化合物(j)
【化11】

【0169】
(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(5)、XはCO、Yは、NR8がNH、Zがフェニレン基、NR9がNH、Pは、nが3、R1及びR2がブチル基、Qは水酸基である)
実施例49
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部の代わりに顔料ba(C.I.Pigment Yellow 74)100部、及び化合物(a)5.0部の代わりに化合物(g)5.0部を使用し、それ以外は実施例28と同様にして108部の顔料組成物BHを得た。
【0170】
実施例50
化合物(g)5.0部の代わりに化合物(h)5.0部を使用し、ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を使用し、それ以外は実施例49と同様にして108部の顔料組成物BIを得た。
【0171】
比較例13
化合物(g)0.5部及びペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部を使用しないこと以外は実施例31と同様にして98部の顔料bbを得た。
【0172】
比較例14
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部を添加しないこと以外は実施例33と同様にして103部の顔料組成物BJを得た。
【0173】
比較例15
ジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を添加しないこと以外は実施例45と同様にして103部の顔料組成物BKを得た。
【0174】
比較例16
化合物(g)0.5部を添加しないこと以外は実施例31と同様にして103部の顔料組成物BLを得た。
【0175】
比較例17
化合物(g)5.0部を添加しないこと以外は実施例40と同様にして103部の顔料組成物BMを得た。
【0176】
比較例18
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル819(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価75)5.0部を使用し、それ以外は実施例33と同様にして108部の顔料組成物BNを得た。
【0177】
比較例19
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにロンジスR(荒川化学株式会社製不均化ロジン、酸価160)5.0部を使用し、それ以外は実施例33と同様にして108部の顔料組成物BOを得た。
【0178】
比較例20
化合物(g)0.5部の代わりに下記化合物(k)5.0部を使用し、それ以外は実施例31と同様にして108部の顔料組成物BPを得た。
【0179】
化合物(k)
【化12】

【0180】
(化合物(k)は一般式(1)で表されない。)

比較例21
化合物(g)0.5部の代わりに下記化合物(l)5.0部を使用し、それ以外は実施例31と同様にして108部の顔料組成物BQを得た。
【0181】
化合物(l)
【化13】

【0182】
(化合物(l)は一般式(1)で表されない。)

比較例22
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにロンジスR(荒川化学株式会社製不均化ロジン、酸価160)5.0部を使用し、それ以外は実施例49と同様にして108部の顔料組成物BRを得た。

上記実施例で調製した顔料及び顔料組成物の内訳を表2に纏めた。(実施例31〜50、比較例13〜22 モノアゾ顔料又はモノアゾ顔料組成物 (C.I.Pigment Yellow 74)の調製)
【0183】
【表2】

表2中、化合物k及びlは一般式(1)で表される化合物ではない。
【0184】
製造例2<モノアゾ顔料(C.I.Pigment Red 269)の調製>
3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド50.0部を水1000部に分散させ、氷を加えて温度5℃に調整し、35%塩酸水溶液60.0部を加えて1時間攪拌後、亜硝酸ナトリウム14.2部を水44部に加えて調製した水溶液を添加して1時間攪拌し、ジアゾ化を行なった。攪拌後スルファミン酸2.0部を加えて過剰の亜硝酸を消去した後、酢酸ナトリウム50.0部、80%酢酸34.0部、水330部からなる水溶液を加えて、ジアゾニウム塩水溶液とした。
【0185】
一方、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド69.0部、25%水酸化ナトリウム水溶液100.0部を水800部に90℃で溶解させ、カップラー水溶液とした。
【0186】
この水溶液を上記のジアゾニウム塩水溶液に20分かけて注入し、カップリング反応を行なった。生成した顔料のスラリーを1時間攪拌して、ジアゾニウム塩の消失を確認した後、70℃に加熱し、その温度を維持したまま30分攪拌した後に、濾過、水洗を行なった。得られた顔料の含水ケーキ(顔料の含有量116部)を90℃で24時間乾燥後、粉砕して114部の顔料ca(C.I.Pigment Red 269)を得た。
【0187】
(実施例51〜66、比較例23〜29 モノアゾ顔料又はモノアゾ顔料組成物 (C.I.Pigment Red 269)の調製)
実施例51
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部の代わりに顔料ca(C.I.Pigment Red 269)100部、化合物(a)0.5部の代わりに下記化合物(m)0.5部、ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにエステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を使用し、それ以外は実施例1と同様にして103部の顔料組成物BSを得た。
【0188】
化合物(m)
【化13】





【0189】
(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(2)、XはCO、nは2、R1及びR2がエ
チル基である。)
実施例52
化合物(m)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例51と同様にして104部の顔料組成物BTを得た。
【0190】
実施例53
化合物(m)の添加量を5.0部とし、それ以外は実施例51と同様にして108部の顔料組成物BUを得た。
【0191】
実施例54
化合物(m)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例51と同様にして113部の顔料組成物BVを得た。
【0192】
実施例55
化合物(m)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例51と同様にして118部の顔料組成物BWを得た。
【0193】
実施例56
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例53と同様にして104部の顔料組成物BXを得た。
【0194】
実施例57
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)の添加量を7.5部とし、それ以外は実施例53と同様にして110部の顔料組成物BYを得た。
【0195】
実施例58
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例53と同様にして113部の顔料組成物BZを得た。
【0196】
実施例59
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例53と同様にして113部の顔料組成物CAを得た。
【0197】
実施例60
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を使用し、それ以外は実施例53と同様にして108部の顔料組成物CBを得た。
【0198】
実施例61
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部の代わりにペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部を使用し、それ以外は実施例53と同様にして108部の顔料組成物CCを得た。
【0199】
実施例62
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部の代わりにマルキードNO.8(荒川化学株式会社製マレイン化レジン、酸価39)5.0部を使用し、それ以外は実施例53と同様にして108部の顔料組成物CDを得た。
【0200】
実施例63
化合物(m)0.5部の代わりに下記化合物(n)5.0部を使用し、それ以外は実施例51と同様にして108部の顔料組成物CEを得た。
【0201】
【化14】

化合物(n)

(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(2)、XはSO2、nは3、R1及びR2がメ
チル基である。)
実施例64
化合物(m)0.5部の代わりに下記化合物(o)5.0部を使用し、それ以外は実施例51と同様にして108部の顔料組成物CFを得た。
【0202】
【化15】

化合物(o)

(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(5)、Xは直接結合、YはNH、Pはnが2、R1及びR2がブチル基、Qは水酸基である)

実施例65
化合物(m)0.5部の代わりに下記化合物(p)5.0部を使用し、それ以外は実施例51と同様にして108部の顔料組成物CGを得た。
【0203】
【化16】

化合物(p)

(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(2)、XはSO2、nは2、R1及びR2がエ
チル基である。)
実施例66
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部の代わりに顔料ca(C.I.Pigment Red 269)100部、化合物(a)5.0部の代わりに化合物(m)5.0部、及びペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにエステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を使用し、それ以外は実施例28と同様にして108部の顔料組成物CHを得た。
【0204】
比較例23
化合物(m)0.5部及びエステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を使用しないこと以外は実施例51と同様にして98部の顔料cbを得た。
【0205】
比較例24
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を添加しないこと以外は実施例53と同様にして103部の顔料組成物CIを得た。
【0206】
比較例25
化合物(m)0.5部を添加しないこと以外は実施例51と同様にして103部の顔料組成物CJを得た。
【0207】
比較例26
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部の代わりにジョンクリル819(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価75)5.0部を使用し、それ以外は実施例53と同様にして108部の顔料組成物CKを得た。
【0208】
比較例27
エステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部の代わりにロンジスR(荒川化学株式会社製不均化ロジン、酸価160)5.0部を使用し、それ以外は実施例53と同様にして108部の顔料組成物CLを得た。
【0209】
比較例28
化合物(m)0.5部の代わりに下記化合物(q)5.0部を使用し、それ以外は実施例51と同様にして108部の顔料組成物CMを得た。
【0210】
化合物(q)
【化16】


(化合物(q)は一般式(1)で表されない。)
【0211】
比較例29
化合物(m)0.5部の代わりに下記化合物(r)5.0部を使用し、それ以外は実施例51と同様にして108部の顔料組成物CNを得た。
【0212】
化合物(r)
【化17】


(化合物(r)は一般式(1)で表されない。)
【0213】
上記実施例で調製した顔料及び顔料組成物の内訳を表3に纏めた。(実施例51〜66、比較例23〜29 モノアゾ顔料又はモノアゾ顔料組成物 (C.I.Pigment Red 269)の調製)
【0214】
【表3】

表3中、化合物q及びrは一般式(1)で表される化合物ではない。
【0215】
(実施例67〜77、比較例30〜34 キナクリドン顔料又はキナクリドン顔料組成物 (C.I.Pigment Red 122)の調製)
実施例67
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部の代わりにLIONOGEN MAGENTA ID−120(東洋インキ製造株式会社製C.I.Pigment Red 122)100部、化合物(a)0.5部の代わりに化合物(p)5.0部、ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を1.0部とし、それ以外は実施例1と同様にして104部の顔料組成物COを得た。
【0216】
実施例68
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を5.0部とし、それ以外は実施例67と同様にして108部の顔料組成物CPを得た。
【0217】
実施例69
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例67と同様にして113部の顔料組成物CQを得た。
【0218】
実施例70
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を15.0部とし、それ以外は実施例67と同様にして118部の顔料組成物CRを得た。
【0219】
実施例71
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)1.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を使用し、それ以外は実施例67と同様にして108部の顔料組成物CSを得た。
【0220】
実施例72
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)1.0部の代わりにエステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を使用し、それ以外は実施例67と同様にして108部の顔料組成物CTを得た。
【0221】
実施例73
化合物(p)5.0部の代わりに下記化合物(s)5.0部を使用し、それ以外は実施例68と同様にして108部の顔料組成物CUを得た。
【0222】
化合物(s)
【化18】

【0223】
(一般式(1)で表され、mは1、Bは一般式(2)、XはCH2NHCOCH2、nは3、R
1及びR2がブチル基である。)
実施例74
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル611(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価53)5.0部を使用し、それ以外は実施例73と同様にして108部の顔料組成物CVを得た。
【0224】
実施例75
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにエステルガムAAV(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価7)5.0部を使用し、それ以外は実施例73と同様にして108部の顔料組成物CWを得た。
【0225】
実施例76
粗製銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)100部の代わりにLIONOGEN MAGENTA ID−120(東洋インキ製造株式会社製C.I.Pigment Red 122)100部、化合物(a)5.0部の代わりに化合物(p)5.0部を使用し、それ以外は実施例28と同様にして108部の顔料組成物CXを得た。
【0226】
実施例77
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)の添加量を10.0部とし、それ以外は実施例76と同様にして113部の顔料組成物CYを得た。
【0227】
比較例30
化合物(p)5.0部及びペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)1.0部を使用しないこと以外は実施例67と同様にして98部の顔料daを得た。
【0228】
比較例31
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)1.0部を添加しないこと以外は実施例67と同様にして103部の顔料組成物CZを得た。
【0229】
比較例32
化合物(p)5.0部を添加しないこと以外は実施例68と同様にして103部の顔料組成物DAを得た。
【0230】
比較例33
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにジョンクリル819(BASFジャパン株式会社製スチレンアクリル樹脂、酸価75)5.0部を使用し、それ以外は実施例68と同様にして108部の顔料組成物DBを得た。
【0231】
比較例34
ペンセルD−125(荒川化学株式会社製ロジンエステル樹脂、酸価13)5.0部の代わりにロンジスR(荒川化学株式会社製不均化ロジン、酸価160)5.0部を使用し、それ以外は実施例68と同様にして108部の顔料組成物DCを得た。

上記実施例で調製した顔料及び顔料組成物の内訳を表4に纏めた。(実施例67〜77、比較例30〜34 キナクリドン顔料又はキナクリドン顔料組成物 (C.I.Pigment Red 122)の調製)
【0232】
【表4】

【0233】
樹脂実施例1
以降で記載する樹脂実施例において、各原料の添加量として記したモル%は、全酸成分の添加量に対するモル%を表わす。
【0234】
ポリエステル樹脂成分としてネオペンチルグリコール100モル%、ネオデカン酸グリシジルエステル13モル%、不均化ロジン23モル%を、攪拌装置、加熱装置、温度計、分留装置、窒素ガス導入管を備えたステンレス製反応容器中で混合し、攪拌しながら160℃まで昇温して、内容物を溶融させた。溶融後、テレフタル酸77モル%、及び酸化ジ−n−ブチル錫0.03モル%を添加し、分留装置塔頂部の温度が100℃を越えないようにして、生成する縮合水を窒素ガス気流によって系外に除去しながら、徐々に240℃まで昇温してエステル化反応を行い、酸価が15m部KOH/部になったところで200℃まで冷却した。冷却後、無水トリメリット酸25モル%を添加し、その後は、前述と同様の操作で縮合水を系外に除去しながら、徐々に240℃まで昇温してエステル化反応を行った。フローテスターにより所定の軟化点に達したことを確認して反応を終了し、ポリエステル樹脂Aを得た。各原料の配合比と、得られたポリエステル樹脂Aの特性値を表2に示した。
【0235】
【表5】

【0236】
実施例78〜154,比較例35〜68
<着色樹脂組成物及びトナーの作成>
ポリエステル樹脂 50.0部
顔料または顔料組成物 50.0部
上記材料を加圧ニーダー中で設定温度120℃、15分の条件にて混合、混練を行い取り出した。更にロール温度95℃の3本ロールにて混練を行い、冷却後10mm以下に粗砕し、着色樹脂組成物を得た。
【0237】
ポリエステル樹脂(着色樹脂組成物を調製する際に使用したものと同じもの)87.5部
着色樹脂組成物 10.0部
荷電制御剤(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のカルシウム塩化合物)1.0部
離型剤(エチレンホモポリマー 分子量850 Mw/Mn1.08 融点107℃)1.5部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練押出機を用い吐出温度120℃にて溶融混練を行い、冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(IDS−2型)で微粉砕後、分級してトナー母粒子を得た。
【0238】
次いで、上記で得られたトナー母粒子100部と疎水性酸化チタン(チタン工業社製STT−30A)0.5部をヘンシェルミキサーで混合し、負帯電トナーを得た。
【0239】
<分散性の評価>
実施例1〜104及び比較例1〜60で得られた着色樹脂組成物及びトナーをミクロトームにて厚さ0.9μmにスライス形成し、透過型電子顕微鏡により顔料の分散状態を観察した。顔料が着色樹脂組成物中に均一に分配されているものを◎、顔料凝集物が存在するが、ほぼ均一に分配されているものを○、顔料凝集物が存在し、均一に分配されていないものを△、顔料凝集物が多数あり均一に分配されていないものを×とした。
【0240】
<画像濃度及びトナーの耐久性の評価>
上記で得られたトナー及びキャリアとして平均粒径が60μmのシリコーンレジンでコーティングされたフェライトキャリア(DFC−350C同和鉄粉社製)を用いて、各色トナー濃度6%に設定してカラー現像剤を作製した。
【0241】
キヤノン社製フルカラー複写機 CLC−730を使用し、コピー用紙として富士ゼロックス社製カラーアプリケーション用紙 Ncolor127(A4サイズ、127.9部/m2)に、各トナーを使用した単色画像を作成した。初期及び10,000枚後の画像濃度を測定し、10,000枚後/初期の画像濃度を比較しトナーの耐久性を確認した。
【0242】
画像濃度はグレタグマクベス濃度計D19Cを使用し、印字物の反射濃度を測定した。
【0243】
<透明率の評価>
上記で得られた現像剤をOHPフィルム上にベタ画像を形成した後、このベタ画像が形成されたOHPフィルムを、再度、複写機の定着部に通して、画像の表面をフラットにした試料を作製し、透過性を目視判断で確認した。目視判断結果を1,2,3,4,5の数字5段階で評価し、数字が大きいものほど良好な透明性とした。
【0244】
上記で調製した着色樹脂組成物及びトナーの組成と、それぞれの評価結果を表6にまとめた。

【0245】
表6 着色樹脂組成物及びトナー評価結果
【表6】

【0246】
【表6】


【0247】
【表6】

【0248】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明のトナー用顔料組成物は、電子写真方式の乾式現像剤、トナーを用いる複写機、プリンター等において好適に利用でき、またトナー中に有機顔料が微細化された状態で均一に結着樹脂中に分散される為、発色性、透過性、更には耐久性に優れるトナーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機顔料、下記一般式(1)で表される化合物、及び酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を含有するトナー用顔料組成物。
一般式(1)

A−Bm

(式中Aは、有機色素残基、複素環残基、芳香族残基、又は多環化合物残基を表し、Bは、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、又は、一般式(5)で示される塩基性置換基を表し、mは、1〜4の整数を表す。)
【化1】



【化2】




【化3】




【化4】



(式中、Xは−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表す。
nは、1〜10の整数を表す。
R1、R2は、それぞれ独立に、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基、炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基、またはR1 とR2 とで一体となって更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。
R3は、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
Yは、−NR8−Z−NR9−、NH、または直接結合を表す。
R8、R9は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
Zは、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキレン基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニレン基、または炭素数20以下の置換されていてもよいアリーレン基を表す。
Pは、下記一般式(6)で示される置換基または下記一般式(7)で示される置換基を表す。
Qは、水酸基、アルコキシル基、−NR10R11、下記一般式(6)で示される置換基または下記一般式(7)で示される置換基を表す。
R10、R11は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜36の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜36の置換されていてもよいアルケニル基または炭素数20以下の置換されていてもよいアリール基を表す。
式(6)および式(7)において、R1〜R7およびnは、上に定義した通りのものである。)






【化5】



【化6】


【請求項2】
酸価5〜60mgKOH/gの樹脂が、スチレン−アクリル樹脂およびロジンエステル類から選ばれた少なくとも一種を含有する、請求項1記載のトナー用顔料組成物。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物を表面に吸着してなる有機顔料が、さらに、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂で被覆されてなる、請求項1または2に記載のトナー用顔料組成物。
【請求項4】
少なくとも、有機顔料、一般式(1)で表される化合物、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤からなる混合物を機械的に混練した後に、酸価5〜60mgKOH/gの樹脂を加え更に混練してなる、請求項3に記載のトナー用顔料組成物。
【請求項5】
有機顔料が、フタロシアニン系有機顔料、アゾ系有機顔料、キナクリドン系有機顔料から選ばれた少なくとも一種を含有する、請求項1〜4いずれか一項に記載のトナー用顔料組成物。
【請求項6】
さらに、結着樹脂を含有する請求項1〜5いずれか一項記載のトナー用着色樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナー用顔料組成物を含有するトナー。