説明

カラーフィルタ、およびその製造方法

【課題】BM線幅が細くなる品種であっても、基板の斜め搬送での現像処理工程の中で、現像液たまりの影響でBMパターン欠損が発生しない設計のBMパターン構成を有するカラーフィルタならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板の表面に少なくとも、表示画面領域に形成される複数色の着色画素と、黒色感光性樹脂からなる前記着色画素間に配置される格子ストライプ状ブラックマトリックスと前記表示画面領域をその外周で画定する額縁状ブラックマトリックスと、を具備するカラーフィルタにおいて、前記額縁状ブラックマトリックスの額縁辺の少なくとも1辺に、部分的に、前記額縁状ブラックマトリックスの平坦部の厚さに対して膜厚差が設けられた形状で流体漏出用の流路が刻装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ受像機、コンピュータおよび携帯電話端末等の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタは、構造的支持体としてのガラス等の透明な基板の表面に、2種以上の異なる色相の微細な帯(ストライプ)状の画素領域(フィルタセグメント)を平行または交差して配置したもの、あるいは微細な画素領域を縦横一定の配列で配置したものからなっている。フィルタセグメントは、数μm〜数100μmと微細であり、画素領域と画素領域の境界に位置する画素間部位には遮光層(ブラックマトリクス:以下BMと略称する)のパターンが設けられ、画素領域のそれぞれには着色画素が配置されている。着色画素は、画素ごとに透過光を着色するもので、一般に、光の三原色に相当する赤色(R),緑色(G),青色(B)など色相毎に所定の配列で整然と配置されている。
【0003】
カラーフィルタにおいてBMは、図1の平面説明図に示すように、一般にAエリア、Bエリア、Cエリアの構造となっている。Aエリアは、対向する基板上に設けられるTFT素子(薄膜トランジスター)のバックライトの光漏れによる誤動作を防ぐ為や、着色画素の混色を防止して表示領域のコントラストを向上するため、各色のフィルタセグメント間に配置され、一般的には格子状のストライプパターンである。このBMパターンにおいて、Aエリアについては繰り返しパターンではなく、例えば線幅が一部分カットされており、繰り返しパターンではないものであるとか、一定膜厚ではなく形状変更されている技術が存在する。Bエリアは、表示画面領域を画定すると共に、TFT基板との張り合わせ用のシール領域であり、BMベタ部分である。Cエリアは、素ガラス部分に設置され、ダミーPS(フォトスペーサ)土台やTFT基板との貼り合わせ用アライメントマークなどとして用いる。
【0004】
従来BMの形成は、蒸着等によりクロム等の金属薄膜を形成し、エッチング処理を施すことでパターニングする方式が用いられてきた。しかしながら環境面に及ぼす影響からクロムの使用は好ましくなく、また真空プロセスであることから高コストであり、基板サイズの大型化への対応が困難であるという問題があった。そこで、カーボンブラック等の黒色顔料を分散した黒色感光性樹脂組成物を用い、塗布、露光、現像処理を施すことでBMを形成する方式、すなわち樹脂BMの採用が一般的になってきている。
【0005】
樹脂BMの一般的な製造工程としてはフォトリソグラフィ法が挙げられ、ガラス基板の投入からはじまり、ガラス基板の事前洗浄、黒色感光性樹脂組成物の塗布、溶剤の乾燥、プレベーク、パターン露光、現像、ポストベーク、検査が行われる。その後、予めBMが形成された基板に対して、同様のフォトリソグラフィ法を適用して、前記BMの表示画面領域の開口部の所定の領域に着色感光性樹脂組成物を用いて着色画素を形成し、これを所定の色数の回数繰り返すことでカラーフィルタを形成する。
【0006】
その中で、現像工程は、露光後の感光性樹脂組成物の未硬化レジストの溶解、剥離除去を目的とし、フォトリソグラフィー工程の中でも、形成するパターンの形状を左右する重要な工程である。現像工程で管理される項目としては、現像時間、現像液の温度等がある。現像液は無機・有機アルカリ成分から構成されるものが多い。現像液中のアルカリ成分は、感光性樹脂組成物中に含まれる高分子の酸価を有する官能基と反応して、露光工程で未硬化であった感光性樹脂組成物を溶解除去する働きがある。また、現像液はアルカリ成分のほかに、界面活性剤を添加されているものが多い。界面活性剤が添加されることで、感光性樹脂組成物への現像液成分の浸透性を向上させ、これによって現像速度の向上、パターン形状の良化といった効果がある。
【0007】
更にまた、近年、フォトリソグラフィーの製造ラインは大型化の一途をたどっている。この背景には、特に、大画面液晶テレビの普及に伴うガラス基板の大型化が関係している。例えば、マザーガラスの寸法が第6世代(1500×1800mm)、第8世代(2160×2400mm)あるいは、第10世代(2850×3050mm)と呼ばれる大型ガラス基板を使用したカラーフィルタが必要とされている。1mm以下の薄く、かつ一辺が1〜2m以上に達する大型ガラス基板が流れる現像装置の大型化は、プロセス管理を困難にさせている。
【0008】
従来の基板現像装置は、通常基板を水平状態で保持・搬送して現像処理を行ってきたが、例えば、特許文献1あるいは特許文献2に開示されているように、基板を傾斜状態で保持あるいは搬送しつつ処理を施す技術があり、大型基板を用いた現像工程に於いては、基板表面に現像液が滞留することによる不具合を防ぎ、現像処理時間の増大を避けるために、斜め搬送による現像処理が行われてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−155307号公報
【特許文献2】特開平−307493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のBM形成においては、BM格子状パターンを形成するAエリアの最外周部分で、即ち、BM額縁と隣接しているBMパターンの格子部分に特に欠陥が発生しやすい問題があった。これを解消するために、現像液の噴きつけ圧力の変更や水洗流量の増加、あるいは黒色感光性樹脂成分の改善などが行われているが、この現象は、BMの線幅が細くなればなるほど発生しやすくなる傾向を有し、高精細化が求められ、BM線幅が細くなる品種ほどこの問題点解決による製品歩留まりの向上が求められている。
【0011】
本発明者らは、上記した問題点について鋭意検討した結果、現像搬送工程において、基板が現像処理としてスプレーされながら搬送されるときに、BM額縁部分と隣接するストライプ部分にて現像液の溜りが発生することにより、BMとガラス界面での現像処理が進み、結果として剥がれてしまう為に発生すると推測され、特に斜め搬送されるときに、傾斜の下側になるBM額縁部分と隣接するストライプ部分にて欠陥が多発することを見出し、本発明に至ったものである。即ち、本発明は、BM線幅が細くなる品種であっても、基板の斜め搬送での現像処理工程の中で、現像液たまりの影響でBMパターン欠損が発生しない設計のBMパターン構成を有するカラーフィルタならびにその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、透明基板の表面に少なくとも、表示画面領域に形成される複数色の着色画素と、黒色感光性樹脂からなる前記着色画素間に配置される格子ストライプ状ブラックマトリックスと前記表示画面領域をその外周で画定する額縁状ブラックマトリックスと、を具備するカラーフィルタにおいて、
前記額縁状ブラックマトリックスの額縁辺の少なくとも1辺に、部分的に、前記額縁状ブ
ラックマトリックスの平坦部の厚さに対して膜厚差が設けられた形状で流体漏出用の流路が刻装されていることを特徴とするカラーフィルタである。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記形状が前記額縁辺の断面形状として、前記表示画面領域側から順に高くなって行く傾斜状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタである。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記形状が前記額縁辺の断面形状として、前記表示画面領域側から順に高くなって行く階段状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタである。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記形状が前記額縁辺に平行な形状として、前記表示画面領域側からみて凹状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタである。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記形状が前記額縁辺の上面から見て膜厚の無いスリット状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタである。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記形状が請求項2〜5のいずれか1項に記載する形状から複数選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタである。
【0018】
次に、本発明の請求項7に係る発明は、透明基板の表面に少なくとも、黒色感光性樹脂からなる着色画素間に配置される格子ストライプ状ブラックマトリックスと表示画面領域をその外周で画定する額縁状ブラックマトリックスとを含むブラックマトリックス形成工程と、その後前記表示画面領域に複数色の着色画素を形成する着色画素形成工程と、を具備したフォトリソグラフィー法を用いたカラーフィルタの製造方法において、
前記ブラックマトリックス形成工程における現像工程は、請求項1〜6のいずれか1項に記載する形状の流体漏出用の流路が刻装されテイルパターンを部分的に有する額縁状ブラックマトリックスパターンが焼き付けられた黒色感光性樹脂層を具備した前記透明基板を、少なくとも、前記流体漏出用の流路が刻装されているパターンを部分的に有する額縁状ブラックマトリックスの1辺側を傾斜状態の下側にして、傾斜状態で搬送しつつ現像液を前記透明基板表面の黒色感光性樹脂層にスプレー処理しさらに水洗する工程を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカラーフィルタは、少なくとも、斜め搬送される現像搬送工程で傾斜の下側になる表示領域を画定する額縁状BMの額縁に、部分的に、額縁状BMの平坦部の厚さに対して膜厚差が設けられた形状で流体漏出用の流路が刻装されている。そのため、現像搬送工程において、黒色感光性樹脂層が形成された基板が現像処理としてスプレーされながら斜め搬送されるときに、傾斜の下側になるBM額縁部分と隣接するストライプ部分に現像液の溜りが発生することがなくなり、剥がれ等の不良発生が抑制される。この現象は、BMの線幅が細くなればなるほど発生しやすくなる傾向を有し、高精細化が求められ、BM線幅が細くなる品種ほどこの問題点解決による製品歩留まりの向上が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】カラ−フィルタにおけるBMの一般的構造を平面で示す説明図である。
【図2】本発明のカラーフィルタに係る、BM額縁形状の実施形態例を示す模式図である。
【図3】斜め搬送現像工程での、現像投入方向とBMパターン欠陥発生箇所を示す説明図である。
【図4】図2の、BMパターン欠陥発生箇所の部分拡大画像及びSEM画像である。
【図5】実施例の現像工程での、ガラス基板上の面付けのBM線幅の測定箇所を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のカラーフィルタを一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0022】
本発明のカラーフィルタは特に図示しないが、ガラス基板等の透明基板の表面に少なくとも、表示画面領域に形成される複数色の着色画素と、前記着色画素間に配置される格子ストライプ状BMと、前記表示画面領域をその外周で画定する額縁状BMと、を具備する。基本的に、表示画素領域のそれぞれには、通常、光の三原色に相当する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の三色の着色画素を配列している。
【0023】
次に、本発明に係るBMの形成方法について説明する。前記したように、本発明のカラーフィルタにおいてBMは、図1の平面図に示すように、Aエリア、Bエリア、Cエリアの構造となっている。Aエリアは、格子ストライプ状BM3である。Bエリアは、表示画面領域を画定すると共に、TFT基板との張り合わせ用のシール領域であり、BMベタ部分の額縁状BM2である。Cエリアは、素ガラス部分に設置され、ダミーPS(フォトスペーサ)土台やTFT基板との貼り合わせ用アライメントマークなどとして用いる。
【0024】
本発明に係るBMは、図2(a),(b)にその例を示すように、額縁状BM2の額縁の少なくとも1辺に、部分的に、額縁状BM2の平坦部の厚さに対して膜厚差が設けられた形状で流体漏出用の流路4が刻装されている。この形状は、図2(a)に示すように、この形状が一点鎖線で示す額縁辺に平行な形状として、表示画面領域側からみて凹状であるか、額縁辺の上面から見て膜厚の無いスリット状である場合(A形状)や、図2(b)に示す、額縁辺の一点鎖線で示す断面形状として表示画面領域側から順に高くなって行く傾斜状(B形状)や、あるいは、図示しないが、表示画面領域側から順に高くなって行く階段状が採用される。また、これらの形状から選択される複数の形状も採用可能である。
【0025】
このBM形成工程における現像工程は、上記した形状の額縁状BMのパターンが焼き付けられた黒色感光性樹脂層を具備した前記透明基板1を、少なくとも、流体漏出用の流路4が刻装されているパターンを部分的に有する額縁状BM2の1辺側を傾斜状態の下側にして傾斜状態で搬送しつつ現像液を前記ガラス基板表面にスプレー処理しさらに水洗する工程を含むものである。
【0026】
一例として、遮光材にカーボンブラックを用いた黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製する。これを、スピンレスコート法でガラス基板の全面に塗布する。その後、減圧乾燥して溶剤などの揮発成分を除去し、100℃で3分間加熱して(プリベーク)、狙い膜厚2.5μmの黒色感光性樹脂層を形成する。次いで、この黒色感光性樹脂層に、上記した本発明に係るBMパターンを形成するための所定のパターンのフォトマスクを介して、光源として、超高圧水銀ランプを用いて活性エネルギー線を照射し露光する。その後、未露光部を、アルカリ現像液として2.5%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、よく水洗し、更に水洗乾燥する。現像後、230℃で60分間加熱処理を行い、本硬化(ポストベーク)することで仕上がり膜厚2.0μmの本発明に係るBMパターンが形成される。
【0027】
本発明のカラーフィルタに使用されるBMを形成する黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物は、少なくとも遮光性色材、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、光重合開始剤、溶剤を含有するものが使用できる。
【0028】
遮光性色材としては、カーボンブラック、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラックなどの有機顔料、もしくはミロリブルー、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、アルミナ、コバルト系、マンガン系、タルク、クロム酸塩、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、リン酸塩群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ビリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン等の無機顔料が使用できる。また、これらの顔料は複数を混合して使用するか、さらには無機顔料、有顔料機、染料の赤、青、緑色などを混色させることも可能であるが、カーボンブラックが最適である。
【0029】
カーボンブラックの含有量としては、黒色感光性樹脂組成物の全固形分中の30〜45質量%の範囲で使用することが良い。含有量が30質量%未満では、顔料濃度に対しアルカリ可溶性樹脂量が多く、パターンを高細線化したとき現像密着性は低下する。またBMとしての光学濃度(OD値)が小さくなり、パネル化した際に光漏れなどが発生し、パネルコントラストを低減させる。一方、45質量%を超えると、製造したBMは、体積抵抗値が1.0E10未満になり体積抵抗率が低下してしまうことで、液晶駆動電極と導通、またはBMを通じて電界が動作し不具合が生じてしまう。
【0030】
BMの膜厚は、0.2μmから3.0μmの間であることが好ましく、より好ましくは0.5μmから2.0μmの間である。黒色顔料を用いた樹脂BMの場合、金属クロム(厚み数100nm程度)と同様の遮光性を得るためには、一般に1.3〜2.0μmの膜厚が必要になる。BMの膜厚が小さいと、パネル表示時に十分な遮光性が得られず、光漏れが発生してしまう。一方、BMの膜厚が大きいと、着色膜との重なり部分で発生する凹凸により、液晶表示の乱れの原因となってしまう。本発明に係るBM形成用の黒色感光性樹脂組成物は、1.0μm厚みあたりの光学濃度(OD値)が2.5〜5.0であることが好ましい。
【0031】
アルカリ可溶性樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の通常の光重合可能な樹脂やカルド樹脂等も使用できる。
【0032】
エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドキシペンタアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート(PEG400DA)、メトキシポリエチレングリーコル1000メタクリレート、ポリプロピレングリコール500メタクリレート、ポリプロピレングリコール800メタクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート類があげられ、多官能アクリレート及び/又は多官能メタクリレートを使用する場合は、単独、及び二種類以上を混合して使用しても良い。
【0033】
光重合開始剤としては、オキシム系光重合開始剤、アミノケトン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも一種を用いることが望ましいが、エチレン性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させうる化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、トリアジン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサント
ン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0034】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチルセロソルブ、エチルセロソルプアセテート、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ジグライム、シクロヘキサノン、エチルベンゼン、キシレン、酢酸イソアミル、酢酸nアミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール、トリエチリングリコールモノメチルエーテル、トリエチリングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、液体ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エステル、及びエチルエトキシプロピオネートなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0035】
透明基板としてはアルミノホウケイ酸ガラス等ガラス基板が好ましく使用されるが、その他の基板としては、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板等の、可視光線の透過性があり、表面が平坦な基板などを用いてもよい。
【0036】
黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物の塗布は、上記したスピンレスコート法以外にもディップ法、ロールコーター法、スピンコート法、各種の印刷法などにより透明基板の全面に塗布し、その後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥及び硬化(プリベーク)を行なう。
【0037】
こうして得られた黒色感光性樹脂層を、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアークなどの波長300〜450nmの活性光の光源を用い、所定のパターンのフォトマスクを介してパターン露光し、現像、膜硬化過程を行い、BMを形成する。このときアライメントマークも同時に形成する。そして最後に検査を行う。
【0038】
アルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜10質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて20〜30℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像時間は、常温で10〜120秒が好ましい。本発明に係るBMの現像においては斜め搬送を採用する。
【0039】
このようにして現像した後、180〜250℃の温度、及び20〜100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明に係るパターニングされたBMおよびアライメントマークは、黒色感光性樹脂組成物を用いて以上のフォトリソグラフィ法による各工程を経て形成される。
【0040】
その後、予めBMが形成された透明基板に対して、同様のフォトリソグラフィ法を適用して、BMの表示画面領域の開口部の所定の領域に、赤(R)、緑(G)、青(B)等の複数色の着色感光性樹脂組成物を用いて着色画素を形成し、これを所定の色数の回数繰り返すことで、本発明の一例のカラーフィルタを形成できる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の具体的実施例を説明する。
【0042】
図3(a)に示すように、寸法1500×1800mm、厚さ0.7mmのガラス基板1上に、額縁状BMで画定された12面の表示画面領域が面付けされ、BM線幅12μmの格子ストライプ状パターンを有した品種のカラーフィルタを選定した。公知の黒色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて、スピンレスコート法でガラス基板の全面に塗布し、その後、減圧乾燥し、100℃で3分間プリベークして、膜厚2.5μmの黒色感光性樹脂層を形成した。次いで、この黒色感光性樹脂層に、BMパターンを形成するための所定のパターンのフォトマスクを介して、光源として、超高圧水銀ランプを用いて活性エネルギー線を照射し露光した。
【0043】
次に、BMの現像を、通常の現像条件で行った。ガラス基板1の投入方向はオリフラ位置5で示した。この現像条件では、従来のBM線幅32μmの格子ストライプ状BM3を有した品種ではパターンカケは発生していない。それに比較して、BM線幅12μmの格子ストライプ状BM3を有したこの品種においては、斜め現像の傾斜の下側になる、図3で各表示画面領域の下側の波線で示した、BM額縁部分と隣接する1画素の範囲で、ストライプ部分にパターンカケが発生する現象が見られた。図4(a)に、そのパターカケ発生部分の拡大平面画像を示す。また、図4(b)に示した、現像上がりの格子のSEM(走査電子顕微鏡)形状を観察すると、ガラス基板とBMの密着部が減少していることが判る。それに対して、斜め現像の傾斜の上側になる画面反対側のBM額縁部分と隣接する1画素の範囲にはパターンカケの発生は無かった。ここで、通常の現像条件とは、基板を斜め搬送しながら現像するもので、変動可能な基本条件としては、現像時間70秒、現像圧0.05MPa、ウォーターカーテン流量30L/min.、液盛20L/min.(現像スプレー打力)、現像スプレー揺動回数23回/min.であり、現像液濃度や温度等他の条件は変動させないで現像を行う。
【0044】
上記したSEM(走査電子顕微鏡)形状観察結果から、この現象は、現像搬送工程において、基板が現像処理としてスプレーされながら搬送されるときに、BM額縁部分と隣接するストライプ部分にて現像液の溜りが発生することにより、BMとガラス界面での現像処理が進み、結果として剥がれてしまう為に発生すると判断された。特に斜め搬送されるときに、傾斜の下側になるBM額縁部分と隣接するストライプ部分にて欠陥が多発し、また、現像投入方向から見て上流側にパターン欠損が多く発生することがこのことを示しており、BM額縁部分と隣接するストライプ部分は現像液が溜まりやすいことで現像が進む箇所であることが推測され、これを解消するために、水置換にて洗い流すことで良化することが期待された。
【0045】
<実施例1、2>
まず本発明の適用として、実施例1として、通常の現像条件のままで、図2(a)に示したA形状のBM額縁パターンを有したものでBMを形成した。実施例2として、図2(b)に示したB形状のBM額縁を有したもので、現像時間を60秒、現像圧を0.04MPaとした以外は実施例1と同様にしてBMを形成した。
【0046】
<比較例1、2、3、4、5>
現像条件以外は実施例1と同様にしてBMを形成し比較例とした。まず、上記した通常の
現像条件のままでBMを形成したものを比較例1とした。また、現像方向を上下反転した以外は比較例1と同様にしてBMを形成したものを比較例2とした。また、ウォーターカーテン流量を50L/min.と増加させ、現像液の基板持ち込みを減少させたものを比較例3とした。また、時間当たりの現像スプレー揺動回数を50回/min.と増加させて、基板全体の均一な現像を狙ったものを比較例4とした。次に、現像液の液盛量を40L/min.と増やして現像スプレー打力を減少させたものを比較例5とした。実施例1、2及び比較例1〜5の内容を、表1に示す。
【0047】
【表1】

上記した実施例1、2及び比較例1〜5について、カラーフィルタ製造工程の特性検査機を用いて、図5(a)に示す5PtsのBM線幅の測定値と、図5(b)に示す24PtsのBM線幅の測定値、及びパターン欠損の有無について評価し、本発明に係る、額縁状BMに流体漏出用の流路が刻装されたパターンを採用した場合の現像上がり状態を確認し比較した。表2にその結果を示す。図5は、斜め搬送現像工程での、BMパターンでのBM線幅の測定箇所を示す説明図である。
【0048】
【表2】

[評価結果]
表2に示す通り、比較例1では前記したとおり、傾斜の下側になるBM額縁部分と隣接するストライプ部分にて欠陥が多発した。現像方向を上下反転した比較例2では、線幅の面内傾向が逆になり、また、パターン欠損の位置も反転する傾向を示した。また、比較例4および比較例5は、現像条件変更の効果は認められるものの、多くのパターン欠損の発生があり、不十分であった。比較例の中では、ウォーターカーテン流量を増加させた比較例3が、面内線幅バラツキが他の条件に較べて良化する結果となった。これに対すて、通常の現像条件のままで現像した本発明に係る実施例1、及び現像条件を一部変更した本発明に係る実施例2では、いずれも、面内上下でのBM線幅の違い、即ちBM線幅の細りは認められるものの、パターン欠損は発生しなかった。
【0049】
以上の結果から、BM額縁に部分的に、額縁状BMの平坦部の厚さに対して膜厚差が設けられた形状で流体漏出用の流路が刻装されている本発明のカラーフィルタは、そのBM現像工程での品質安定化、歩留まり改善が可能であることがわかる。なお、流体漏出用の流路の数、幅、形状等のパターンは、対象とする品種に合わせてマスク設計することで対応可能であり、本発明の技術は従来の工程数や材料を増やすことは必要なく経済的にも優れている。
【符号の説明】
【0050】
1・・・透明基板、ガラス基板 2・・・額縁状ブラックマトリックス(BM)
3・・・格子ストライプ状ブラックマトリックス(BM) 4・・・流路
5・・・オリフラ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の表面に少なくとも、表示画面領域に形成される複数色の着色画素と、黒色感光性樹脂からなる前記着色画素間に配置される格子ストライプ状ブラックマトリックスと前記表示画面領域をその外周で画定する額縁状ブラックマトリックスと、を具備するカラーフィルタにおいて、
前記額縁状ブラックマトリックスの額縁辺の少なくとも1辺に、部分的に、前記額縁状ブラックマトリックスの平坦部の厚さに対して膜厚差が設けられた形状で流体漏出用の流路が刻装されていることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記形状が前記額縁辺の断面形状として、前記表示画面領域側から順に高くなって行く傾斜状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタ。
【請求項3】
前記形状が前記額縁辺の断面形状として、前記表示画面領域側から順に高くなって行く階段状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタ。
【請求項4】
前記形状が前記額縁辺に平行な形状として、前記表示画面領域側からみて凹状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタ。
【請求項5】
前記形状が前記額縁辺の上面から見て膜厚の無いスリット状であることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタ。
【請求項6】
前記形状が請求項2〜5のいずれか1項に記載する形状から複数選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタ。
【請求項7】
透明基板の表面に少なくとも、黒色感光性樹脂からなる着色画素間に配置される格子ストライプ状ブラックマトリックスと表示画面領域をその外周で画定する額縁状ブラックマトリックスとを含むブラックマトリックス形成工程と、その後前記表示画面領域に複数色の着色画素を形成する着色画素形成工程と、を具備したフォトリソグラフィー法を用いたカラーフィルタの製造方法において、
前記ブラックマトリックス形成工程における現像工程は、請求項1〜6のいずれか1項に記載する形状の流体漏出用の流路が刻装されているパターンを部分的に有する額縁状ブラックマトリックスパターンが焼き付けられた黒色感光性樹脂層を具備した前記透明基板を、少なくとも、前記流体漏出用の流路が刻装されているパターンを部分的に有する額縁状ブラックマトリックスの1辺側を傾斜状態の下側にして、傾斜状態で搬送しつつ現像液を前記透明基板表面の黒色感光性樹脂層にスプレー処理しさらに水洗する工程を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−252079(P2012−252079A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123272(P2011−123272)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】