説明

カラーフィルタおよびカラーフィルタの製造方法

【課題】押圧耐性に優れてセルギャップ制御性の良好な、高精細化したカラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタにおいて、カラーフィルタに形成する固定スペーサが、製造工程中で剥がれることがなく、安定して製造できる構造のカラーフィルタと、それを簡単に製造するための製造方法を提供すること。
【解決手段】液晶表示セルのセルギャップを制御するための複数の固定スペーサを表面に配置したカラーフィルタであって、固定スペーサ6が帯状であり、連続した一つの固定スペーサの中で長手方向の位置により膜厚に高低差を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタに関し、特に、液晶表示セルのセルギャップを制御するための固定スペーサを設けたカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型ディスプレイ装置が多く使われるようになってきており、中でもLCD(液晶表示装置)は、特にカラーフィルタによって色表示を行う多色カラータイプがテレビ、モニタ、携帯端末等の表示パネルに利用が進んでいる。多色カラー化のために一般にマイクロセル構造のカラーフィルタが多用され、カラーフィルタは液晶表示パネルの表示品質を決める上で重要な役割を担っている。
【0003】
LCD(液晶表示装置)は少なくとも一枚を光透過性とする一対の基板間に液晶を封入してなるセル構造を有し、前述の多色カラー表示の場合には、光透過性の基板のセル内面にカラーフィルタが形成される。カラーフィルタの一般的構成は、図2に示すように、透明基板1の片側(液晶セルの内面となる側)に遮光性のブラックマトリックスパターン2(BMパターンと略称する。以下同様)とBMパターン2の隙間を規則的に満たすカラーフィルタ画素毎の着色パターン30、31、32の繰り返し配列が、例えばフォトリソグラフィー法により正確な位置合わせで形成される。液晶表示方式により、例えばTN(ねじれネマティック)タイプの場合は、形成したBMパターン2と着色パターン30、31、32の繰り返し配列を覆うように透明電極層4をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着手段により形成する。従来は、カラーフィルタとして、ここまでの構成物を指していたが、さらに近年は特に液晶セルの大型化、狭ギャップ化に伴って、セルギャップ制御用に従来はセル化工程で散布していたビーズスペーサに代わり、フォトスペーサ、あるいは、ポストスペーサなどとも呼ばれる、感光性樹脂により選択的に形成される複数の固定スペーサをPSと略称し、PS5としてフォトリソグラフィー法を用いて規則的に配することが多い。
【0004】
PS5はBMパターン2上に重なるよう、通常は同形のパターンを選択的に決められた規則的な配置で形成し、液晶セルギャップを保持する機能を有するものであり、様々な外部からの圧力に抗して液晶セルギャップを一定の範囲に保持する機能を充分に発揮することが重要である。液晶パネルは、パネル化工程後にも、例えば、パネルの薄型化のためにガラス基板を外側から研磨したり、タッチパネルと組み合わせ使用したり等で、外部から強い圧力を受ける機会が多い。そこで、このような強い圧力に対してもPS5が容易につぶれないように、PS5を構成する材料の強度や弾性特性を改善することが要請されている。
【0005】
一方、下記の理由により、図2に示すとおり、前記固定スペーサの一種として、PS5より若干低く形成した、複数のサブPS55をPS5と共に用いる方策が採られることが多くなってきた。サブPS55は、上記外部からの圧力に対抗して押圧耐性不足を補うためのセルギャップの下支えの意味と共に、下限のセルギャップを設定することにより、必要に応じてセルギャップを調節し易くする意味がある。例えば、低温時に液晶の体積収縮が生じた場合に、セルギャップが収縮に充分に追随できないと、内圧変動により低温発泡という異常現象が発生する。しかし、少数のPS5より高さの低い多数のサブPS55を設けることによって、初期に実質的にセルギャップを保持している少数のPSが1箇所当たりに加わる大きな力で押されて変形し易く、一定の変形後に、多数のサブPSで下限のセルギャップが支えられる。その結果、低温発泡による表示不良を起こさずに液晶表示装置の耐荷重特性を向上させることができる(特許文献1参照)。
【0006】
なお、前記PS5やサブPS55は、基板に水平な断面形状が円形または多角形で、全体形状は、上底部が下底部より狭い柱状のパターンを用いることが多い。しかし、液晶表示装置の駆動不良を減少させることを目的として、基板に水平な断面形状を帯状とするタイプ(ストライプ形状)も提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
また、前記PS5やサブPS55を形成するにあたり、高さの異なる2つのパターンを別個の工程で順次作製することは可能であるが、フォトリソグラフィー法を繰り返すために製造工程が長くなり、製品を高品質に低コストで供給する上で不利になる。そのため、工程を短縮する目的で、同一の感光性樹脂を用い、フォトマスクパターンに工夫をすることにより、異なる高さのパターンを一括して同時に実現することが試みられている。具体的には、厚く塗布されたフォトレジスト膜の厚さの制御に関して、充分な露光量を与える領域と遮光する領域との中間の露光量を与えて、突起部の高さを中間レベルに作る方法を用いれば、PSより低いサブPSのパターンをPSと一括して形成することができる。
【0008】
前記PS5やサブPS55を形成する工程に限らず、フォトリソグラフィー工程で前記中間の露光量を与える目的で、フォトマスク上に中間濃度のパターンを併せ持つ階調マスクを利用することが可能である。階調マスクを形成する方法としては、ドット(網点)配列やライン・アンド・スペースのような遮光膜の微細パターンの集合により、微細パターン領域全体の平均として、半透光部に相当させる一般的なグレートーンマスクのタイプと、膜特性として半透過性を有する膜の直接成膜とパターニング手段で均一な半透光部を形成するハーフトーンマスクのタイプがあり、適宜利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−84289号公報
【特許文献2】特許第4502806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高精細化したカラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタにおいて、固定スペーサも微細化していく必要がある。前記PSとサブPSのいずれの固定スペーサも、サイズが小さくなると、製造工程中に剥がれやすくなることが避けられない。特に、PSとサブPSとの2種類のパターンをフォトリソグラフィー工程により一括形成する場合、サブPSはPSに較べて膜厚が小さいだけでなく、サイズも小さいことが多いので、PSの大きいパターンよりさらに剥がれやすい。現像条件等を厳しく制御して工程処理を行ったとしても、製造工程上の制約が多くなり、安定な品質を得る上で不利になる。
【0011】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、押圧耐性に優れてセルギャップ制御性の良好な、高精細化したカラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタにおいて、カラーフィルタに形成する固定スペーサが、製造工程中で剥がれることがなく、安定して製造できる構造のカラーフィルタと、それを簡単に製造するための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、液晶表示セルのセルギャップを制御するための複数の固定スペーサを表面に配置したカラーフィルタであって、固定スペーサが帯状であり、連続した一つの固定スペーサの中で長手方向の位置により膜厚に高低差を設けたことを特徴とするカラーフィルタである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、固定スペーサが、着色画素パターンの境界に位置することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタである。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、固定スペーサが、遮光性を有することを特徴とする請求項2に記載のカラーフィルタである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、固定スペーサが、着色画素パターン間を仕切るブラックマトリクスを兼ねて構成されることを特徴とする請求項3に記載のカラーフィルタである。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、複数色の着色画素パターンを規則的に配列形成した後に、有効領域全域に透明電極層を設け、しかる後に、固定スペーサを形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法である。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法であって、露光用マスクとして階調マスクを用いたフォトリソグラフィ法により、固定スペーサを形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、液晶表示セルのセルギャップを制御するための複数の固定スペーサをカラーフィルタ表面に帯状に配置し、連続した一つの固定スペーサの中で長手方向の位置により膜厚に高低差を設けることにより、柱状タイプのPSとサブPSとの両方に相当する機能を併せ持つので、押圧耐性に優れてセルギャップ制御性の良好な、高精細化したカラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタにおいて、カラーフィルタに形成する固定スペーサが製造工程中で剥がれることがなく、安定して製造できる構造のカラーフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を説明するための模式図であって、(a)は平面図、(b)はX−X’に沿う断面図である。
【図2】液晶表示装置用カラーフィルタの一般的な構成を説明するための断面模式図である。
【図3】本発明のカラーフィルタの他の一例を説明するための模式図であって、(a)は平面図、(b)はX−X’に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に従って、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を説明するための模式図であって、(a)は平面図、(b)は(a)の一点鎖線X−X’に沿う断面図である。
【0021】
本発明は、液晶表示セルのセルギャップを制御するための複数の固定スペーサ6を表面に配置したカラーフィルタ12であって、固定スペーサ6が帯状であり、連続した一つの固定スペーサ6の中で長手方向の位置により膜厚に高低差を設けたことを特徴とするカラーフィルタである。帯状に設ける固定スペーサ6は、着色画素を通過する光の開口部を妨げないように、着色画素パターン30、31、32の境界の、ブラックマトリクス2を設ける平面位置上に設けることが好ましい。図1(a)では、同色の着色画素パターンが縦に並び、ブラックマトリクスに仕切られて連なり、同様に縦に並んだ異なる色の着色画素パターンが、左右に隣り合って平行に縦列配置されており、異なる色を仕切る境界もブラックマトリクスで構成されている。帯状に設ける固定スペーサは、本図では、異なる色を横断するように、各着色画素パターン30、31、32毎の画素境界を横断して設けているが、本図とは90度向きを変えて、異なる色間の境界に沿って縦に設けることも可能である。
【0022】
帯状に設ける連続した一つの固定スペーサの中で、長手方向の位置により膜厚に高低差を設ける。前述した従来のPS5に相当する膜厚の大きい固定スペーサ(PS相当)61を、配置すべき位置と頻度と長手方向の長さを考慮して、所定の位置に設ける。固定スペーサ(PS相当)61以外の帯状の固定スペーサ部分は、固定スペーサ(サブPS相当)62として、膜厚の小さい帯状領域を形成し、サブPSと同様の機能を得ることができる。上記膜厚の大きい固定スペーサ(PS相当)61と膜厚の小さい固定スペーサ(サブPS相当)62とを、帯状に設ける連続した一つの固定スペーサ6として構成することにより、従来の図2に示したPS5やサブPS55のように孤立した柱状に点在させた固定スペーサに較べて、製造工程中で剥がれる可能性を大幅に減らすことができる。フォトリソグラフィー法による製造工程で、現像時の溶解挙動が、孤立パターンについては下地以外の周囲の全方向から作用を受けるのに較べて、帯状のパターンでは帯状方向に沿う2辺のみからの作用であるため、下地との界面での密着力に与える影響が小さく、また、横に連なる同一材料が支えあうことによる剥がれ難さも改善に寄与するとみられる。
【0023】
また、本発明は、前記着色画素パターンの境界に設ける帯状の固定スペーサに、遮光性を付与することができる。遮光性を有する固定スペーサを着色画素パターンの境界に設けることにより、ブラックマトリクスによる遮光性を部分的に補うことができる。また、さらに、帯状の固定スペーサの配置と形状と遮光性の程度とを、必要とするブラックマトリクスのそれらと同一とするように設計すれば、固定スペーサが、着色画素パターン間を仕切るブラックマトリクスを兼ねて構成されることも可能となる。
【0024】
図3は、本発明のカラーフィルタの他の一例を説明するための模式図であって、(a)は平面図、(b)は(a)の一点鎖線X−X’に沿う断面図である。
本例では、図1に示したブラックマトリクス2を設けるべき箇所、すなわち着色画素を遮光性材料で仕切る境界領域、に遮光性を有する固定スペーサ6を設けることにより、固定スペーサがブラックマトリクスを兼ねるように形成することができる。
【0025】
図2に示す従来例のように、PS5やサブPS55は、その下に透明電極層4を有している。仮に固定スペーサの上部表面に透明電極層が配置されるようなカラーフィルタの構造を用いると、液晶表示セルを構成した場合に、対向電極との短絡が生じて正常な表示が得られないため、透明電極層4は固定スペーサの下に設けるべきである。従って、本例において、固定スペーサがブラックマトリクスを兼ねる場合にも、固定スペーサ機能を有するブラックマトリクスを形成する前に透明電極層を形成する必要がある。すなわち、本例におけるカラーフィルタの製造方法は、複数色の着色画素パターン30、31、32を規則的に配列形成した後に、有効領域全域に透明電極層4を設け、しかる後に、固定スペーサ6を形成することを特徴とする。
【0026】
また、上記のように、帯状の固定スペーサの配置を、必要とするブラックマトリクスの配置と同一とするように設計することにより、ブラックマトリクスのパターン形成工程が不要となり、カラーフィルタの製造工程が著しく短縮される。但し、その場合には、従来の製造工程でブラックマトリクスのパターン形成工程が果たしている役割を他の工程で受け持つことが必要である。具体的には、各色の着色画素パターンと固定スペーサの形成工程における位置合わせの機能を持たせることや、後工程にも関わる各種のアクセサリーパターンをカラーフィルタ有効領域を囲む周辺部に配置形成することが、ブラックマトリクス以外の他のパターン形成工程で必要になる。
【0027】
ブラックマトリクスを完全に置き換えるタイプの、本例の固定スペーサを設ける場合に
は、前記各層の位置合わせのためのマークや各種のアクセサリーパターンを、1色目に形成する着色画素パターンの形成工程で、高精度に設けることができる。一方、固定スペーサ6が、ブラックマトリクスを完全に置き換えることなく、一部の領域のブラックマトリクスを選択的に置き換える場合には、製造工程全体の短縮は実現できないが、従来のブラックマトリクスのパターン形成工程で実施していた各層の位置合わせのためのマークや各種のアクセサリーパターンの形成を従来どおり行うことができた上で、一部の領域のブラックマトリクスパターンを固定スペーサに置き換えるという限定的な役割を果たすことができ、カラーフィルタの構造設計の自由度を増大させることができる。
【0028】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、露光用マスクとして階調マスクを用いたフォトリソグラフィ法により、固定スペーサを形成することを特徴とする。
本発明のカラーフィルタ12に設ける固定スペーサ6の素材として、ネガタイプの感光性樹脂を用いる場合を例として説明すると、透明電極層4を通常のスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着手段により形成済みのカラーフィルタ基板表面に、固定スペーサ6の素材としての感光性樹脂を塗布、乾燥し、露光用マスクとして階調マスクを用いて選択的に露光する。ここで使用する階調マスクは、PS相当の固定スペーサ61、66を形成する領域に対応する領域を、全透過とし、サブPS相当の固定スペーサ62、67を形成する領域に対応する領域を、半透過とすることにより、光による硬化の程度に差を付けて、膜厚の高低差を設けることができる。階調マスクとして、グレートーンマスクのタイプやハーフトーンマスクのタイプを適宜利用できることは、前述の従来技術の場合と同様である。その後、現像、洗浄、ベイクの各工程を経て、本発明の固定スペーサが形成されることは、従来と同様である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・透明基板
2・・・ブラックマトリクス
4・・・透明電極層
5・・・PS
55・・・サブPS
6・・・固定スペーサ
61・・・固定スペーサ(PS相当)
62・・・固定スペーサ(サブPS相当)
66・・・固定スペーサ(ブラックマトリクス兼PS相当)
67・・・固定スペーサ(ブラックマトリクス兼サブPS相当)
11、12・・・カラーフィルタ(固定スペーサ付き)
30、31、32・・・着色画素パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示セルのセルギャップを制御するための複数の固定スペーサを表面に配置したカラーフィルタであって、固定スペーサが帯状であり、連続した一つの固定スペーサの中で長手方向の位置により膜厚に高低差を設けたことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
固定スペーサが、着色画素パターンの境界に位置することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
固定スペーサが、遮光性を有することを特徴とする請求項2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
固定スペーサが、着色画素パターン間を仕切るブラックマトリクスを兼ねて構成されることを特徴とする請求項3に記載のカラーフィルタ。
【請求項5】
複数色の着色画素パターンを規則的に配列形成した後に、有効領域全域に透明電極層を設け、しかる後に、固定スペーサを形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法であって、露光用マスクとして階調マスクを用いたフォトリソグラフィ法により、固定スペーサを形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−11646(P2013−11646A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142704(P2011−142704)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】