説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】樹脂ブラックマトリックスの端部上に発生する着色画素のツノ段差の高さを低減させ、研磨処理、オーバーコート層を不要とし、廉価なカラーフィルタの製造方法。
【解決手段】露光ステ−ジ70上面が鏡面である露光装置を用い、ネガ型の着色フォトレジストの塗布膜60を形成し、透明基板50を露光ステ−ジ上に、下面を露光ステ−ジの上面に向けて載置し、樹脂ブラックマトリックスの端部上に着色画素52の周縁部が重なるようにフォトマスクを介し、の照射光E0 を塗布膜に上方から露光する。端部上の塗布膜には照射光を露光し、開口部上の塗布膜には照射光と、下方からの反射照射光Er とを露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用のカラーフィルタに関するものであり、特に、樹脂ブラックマトリックスの端部上に発生するツノ段差の高さを低減させることができ、従って、平坦化するための研磨処理、或いはオーバーコート層を不要なものとし、廉価にカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置において、カラー表示、反射率の低減、コントラストの調整、分光特性制御などの目的にカラーフィルタを用いることは有用な手段となっている。この表示装置に用いられるカラーフィルタは、多くの場合、画素として形成され用いられる。表示装置に用いられるカラーフィルタの画素を形成する方法として、実用されてきた方法としては印刷法、フォトリソグラフィ法など挙げられるがフォトリソグラフィ法が広く用いられている。
【0003】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの製造方法としては、先ず、ガラス基板上にブラックマトリックスを形成し、次に、ブラックマトリックスが形成されたガラス基板上のブラックマトリックスのパターンに位置合わせして着色画素を形成し、更に透明導電膜、フォトスペーサー、配向制御用突起などを順次に位置合わせして形成するといった方法が用いられている。
【0004】
ブラックマトリックスは遮光性を有し、その開口部にてガラス基板上での着色画素の位置を定め、着色画素の大きさを均一なものとしている。また、表示装置に用いられた際に、好ましくない光を遮蔽し、表示装置の画像をムラのない均一な、且つコントラストを向上させた画像にする機能を有している。このブラックマトリックスの形成は、例えば、黒色感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィ法によって形成するといった方法が用いられている。黒色感光性樹脂を用いて形成したブラックマトリックスを樹脂ブラックマトリックスと称している。
【0005】
また、着色画素は、例えば、赤色、緑色、青色のフィルタ機能を有するものであり、この樹脂ブラックマトリックスが形成されたガラス基板上に、例えば、顔料などの色素を分散させたネガ型の着色フォトレジストの塗布膜を設け、この塗布膜への露光、現像によって着色画素を形成するといった方法がとられている。
また、透明導電膜の形成は、着色画素が形成されたガラス基板上に、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を用いスパッタ法によって透明導電膜を形成するといった方法がとられている。
【0006】
また、フォトスペーサー、及び配向制御用突起などの形成は、上記樹脂ブラックマトリックス、或いは着色画素の処理ラインと同様な処理ラインを用い、フォトリソグラフィ法によって形成するといった方法がとられている。
【0007】
ブラックマトリックスは、クロムなどの金属薄膜を用いた際には膜厚100nm〜200nm程度の薄膜で遮光のための充分な濃度が得られるが、上記黒色感光性樹脂を用いた際には、例えば、1.0μm〜1.5μm程度の厚さにして必要な濃度を得るようにしている。この樹脂を用いた際に、樹脂ブラックマトリックスの膜厚が、1.0μm〜1.5μm程度と厚くなると、図3に例示するように、樹脂ブラックマトリックス(51)上にその周縁部を重ねて形成された着色画素(52)は、その周縁部が樹脂ブラックマトリックス(51)の端部上にて高さ(H1)の段差(盛り上がり)となる。この段差はツノ段差(53)と称されている。
【0008】
図1及び図2は、ガラス基板(50)上に樹脂ブラックマトリックス(51)、着色画素(52)が順次に形成された段階を表した断面図及び平面図である。図2に示すX−X線での断面が図1である。また、図3は、図1に示すツノ段差(53)の近傍を拡大した説明図である。
【0009】
樹脂ブラックマトリックス(51)の端部上にツノ段差(53)が形成されたカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、液晶の転傾などにより表示不良、或いは画素周辺部で光漏れを起こしコントラストの低下など、表示品質に悪影響を及ぼすことになる。そこで、平坦化処理として、着色画素を形成した後に、例えば、ガラス基板上のツノ段差(53)を研磨する方法、或いは、オーバーコート層を設ける方法が広く採用されている。
【0010】
しかし、市場では、より廉価なカラーフィルタが求められており、研磨処理を施さずに、或いはオーバーコート層を設けずにツノ段差(53)が低減されたカラーフィルタが要望されている。
【0011】
図4は、図1〜図3に示す、樹脂ブラックマトリックス(51)が形成されたガラス基板(50)上に、着色画素(52)を形成する際の露光方法の一例を説明する断面図である。図4に示すように、樹脂ブラックマトリックス(51)が形成されたガラス基板(50)上に着色フォトレジスト層(60)が設けられ、その上方には近接露光のギャップ(G)を介してフォトマスク(PM1)が配置されている。着色フォトレジスト層(60)は、樹脂ブラックマトリックス(51)上では盛り上がり状を呈している。
【0012】
フォトマスク(PM1)には、着色画素(52)の形成に対応したパターン(開口部)(32)が設けられている。フォトマスクの膜面は着色フォトレジスト層(60)に対向している。図4は、着色画素(52)の形成にネガ型の着色フォトレジストが用いられた例である。
【0013】
フォトマスク(PM1)の上方からの照射光(E)は、フォトマスクの開口部(32)を経て着色フォトレジスト層(60)上に露光され、現像処理後に幅(W2)を有する着色画素(52)が形成される。
フォトマスクの開口部(32)の幅(W2)は、ガラス基板(50)上に設けられた樹脂ブラックマトリックス(51)の開口部(51b)の幅(W1)(隣接する樹脂ブラックマトリックス(51)間の距離)よりも大きなものとしている(W2>W1、W2−W1=ΔW)。
【0014】
この幅の差(ΔW)は、露光時におけるフォトマスクの位置ズレによって、樹脂ブラックマトリックス(51)の開口部(51b)に着色画素(52)が形成されない部分が発生するのを防ぐためのものである。
従って、フォトマスクが正常に位置合わせされると、露光に続く現像処理後の着色画素(52)は、その周縁部が樹脂ブラックマトリックス(51)の端部上に盛り上がり、ツノ段差(53)が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−113721号公報
【特許文献2】特開平9−120063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ガラス基板上に樹脂ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成されたカラーフィルタの製造方法において、樹脂ブラックマトリックスの端部上に、着色画素の周縁部を重ねて形成しても、樹脂ブラックマトリックスの端部上に発生するツノ段差の高さを低減させることができ、従って、カラーフィルタの表面を平坦化するための研磨処理を不要なものとし、或いはオーバーコート層を設けることを不要なものとし、廉価にカラーフィルタを製造することのできるカラーフィルタの製造方法を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、透明基板上に少なくとも樹脂ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成されたカラーフィルタの製造方法において、前記着色画素を形成する際に、
1)露光装置として、前記透明基板を載置する露光ステ−ジ上面が鏡面である露光装置を用い、
2)フォトマスクとして、着色画素の形成に対応した開口部が設けられたフォトマスクを用い、
3)a)前記樹脂ブラックマトリックスが形成された透明基板の上面に、着色画素形成用のネガ型の着色フォトレジストの塗布膜を形成する工程、
b)該塗布膜が形成された透明基板を、前記上面が鏡面である露光ステ−ジ上に、透明基板の下面を露光ステ−ジの上面に向けて載置する工程、
c)樹脂ブラックマトリックスの端部上に、形成する着色画素の周縁部が重なるように前記フォトマスクを位置合わせする工程、
d)該フォトマスクを介し、上方の光源からの照射光を着色フォトレジストの塗布膜に上方から露光する工程、を少なくとも具備し、
樹脂ブラックマトリックスの端部上の塗布膜には、上方からの照射光を露光し、樹脂ブラックマトリックスの開口部上の塗布膜には、上方からの照射光と、該塗布膜を透過し露光ステ−ジ上面の鏡面にて反射された、下方からの反射照射光とを露光した後に現像処理を施すことを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0018】
また、本発明は、上記発明によるカラーフィルタの製造方法において、前記上方からの照射光の露光は、上方からの露光のみでは塗布膜の硬化が不十分であり、上方からの露光と、下方からの反射照射光の露光が加算された露光では塗布膜の硬化が適正である照度、及び露光量であることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0019】
また、本発明は、上記発明によるカラーフィルタの製造方法において、前記上方からの露光のみの塗布膜部分の焼成処理後の露光率は75%以下であり、前記上方からの露光と、下方からの反射照射光の露光が加算された露光の塗布膜部分の焼成処理後の露光率は80%以上であることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0020】
また、本発明は、上記発明によるカラーフィルタの製造方法において、前記樹脂ブラックマトリックスの膜厚は1〜2μmであり、その光学濃度は3.0〜7.0であり、樹脂ブラックマトリックスの端部上に重なる着色画素の周縁部の幅は各々4〜7μmであることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、露光装置として、透明基板を載置する露光ステ−ジ上面が鏡面である露光装置を用い、フォトマスクとして、着色画素の形成に対応した開口部が設けられたフォトマスクを用い、樹脂ブラックマトリックスが形成された透明基板の上面に、着色画素形成用
のネガ型の着色フォトレジストの塗布膜を形成する工程、塗布膜が形成された透明基板を、上面が鏡面である露光ステ−ジ上に、透明基板の下面を露光ステ−ジの上面に向けて載置する工程、樹脂ブラックマトリックスの端部上に、形成する着色画素の周縁部が重なるようにフォトマスクを位置合わせする工程、フォトマスクを介し、上方の光源からの照射光を着色フォトレジストの塗布膜に上方から露光する工程を具備し、樹脂ブラックマトリックスの端部上の塗布膜には、上方からの照射光を露光し、樹脂ブラックマトリックスの開口部上の塗布膜には、上方からの照射光と、塗布膜を透過し露光ステ−ジ上面の鏡面にて反射された、下方からの反射照射光とを露光した後に現像処理を施すので、樹脂ブラックマトリックスの端部上に発生するツノ段差の高さを低減させ、従って、カラーフィルタの表面を平坦化するための研磨処理、或いはオーバーコート層を不要なものとし、廉価にカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造方法となる。
【0022】
また、本発明は、照射光の露光は、上方からの露光のみでは塗布膜の硬化が不十分であって、上方からの露光と、下方からの反射照射光の露光が加算された露光では塗布膜の硬化が必要かつ十分な適正となる照度、及び露光量であり、或いは上方からの露光のみの塗布膜部分の焼成処理後の露光率は75%以下であり、上方からの露光と、下方からの反射照射光の露光が加算された露光の塗布膜部分の焼成処理後の露光率は80%以上であるので、着色画素の膜厚は所望する膜厚となり、またツノ段差の高さは良好に低減された高さとなるカラーフィルタの製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ガラス基板上に樹脂ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された段階を表した断面図である。
【図2】ガラス基板上に樹脂ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された段階を表した平面図である。
【図3】図1に示すツノ段差の近傍を拡大した説明図である。
【図4】着色画素を形成する際の露光方法の一例を説明する断面図である。
【図5】本発明によるカラーフィルタの製造方法における露光方法の一例を説明する断面図である。
【図6】露光後の現像処理によって得られた着色画素を示した断面図である。
【図7】赤色フォトレジストの露光率の露光量依存性を示す説明図である。
【図8】緑色フォトレジストの露光率の露光量依存性を示す説明図である。
【図9】青色フォトレジストの露光率の露光量依存性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明によるカラーフィルタの製造方法の実施の形態について説明する。
図5は、本発明によるカラーフィルタの製造方法における露光方法の一例を説明する断面図であり、樹脂ブラックマトリックスが形成された、透明基板であるガラス基板上に着色画素を形成する際の露光方法を説明するものである。図6は、ツノ段差が発生する樹脂ブラックマトリックスの近傍の部分を拡大したものである。
【0025】
図5に示すように、ガラス基板(50)を載置する露光ステージとして、本発明においては、その上面が鏡面となっている露光ステージ(70)を用いる。フォトマスクは、着色画素(52)の形成に対応した開口部(32)が設けられたフォトマスク(PM2)を用いる。図5に示すように、樹脂ブラックマトリックス(51)が形成されたガラス基板(50)の上面に着色フォトレジスト層(60)が設けられ、ガラス基板(50)は、その上面が鏡面である露光ステージ(70)上にガラス基板(50)の下面を露光ステージ(70)の上面に向けて載置されている。
【0026】
ガラス基板(50)の上方には近接露光のギャップ(G)を介してフォトマスク(PM2)が配置されている。フォトマスク(PM2)には、着色画素(52)の形成に対応したパターン(開口部)(32)が設けられている。フォトマスクの膜面は着色フォトレジスト層(60)に対向している。図5は、着色画素(52)の形成にネガ型の着色フォトレジストが用いられている。着色フォトレジスト層(60)は、樹脂ブラックマトリックス(51)上では盛り上がり状を呈している。
【0027】
フォトマスクの開口部(32)の幅(W4)は、ガラス基板(50)上に設けられた樹脂ブラックマトリックス(51)の開口部(51b)の幅(W3)(隣接する樹脂ブラックマトリックス(51)間の距離)よりも大きなものとしている(W4>W3、W4−W3=ΔW2)。この幅の差(ΔW2)は、露光時におけるフォトマスクの位置ズレによって、樹脂ブラックマトリックス(51)の開口部(51b)に着色画素(52)が形成されない部分、すなわち、樹脂ブラックマトリックスの端部上に着色画素の周縁部が重ならず、樹脂ブラックマトリックスの端部と着色画素の周縁部との間に隙間が発生するのを防ぐためのものである(図4参照)。
【0028】
フォトマスクは露光に先立ち、樹脂ブラックマトリックスの端部上に、形成する着色画素の周縁部が重なるように位置合わせを行っておく。露光は、フォトマスクを介し、上方の光源からの照射光を着色フォトレジストの塗布膜に上方から照射することによて行われる。
【0029】
樹脂ブラックマトリックス(51)の端部上の塗布膜の部分(a)には、上方からの照射光(E0 )が露光される。また、樹脂ブラックマトリックスの開口部(51b)上の塗布膜の部分(b)には、上方からの照射光(E0 )と、塗布膜を透過し減衰した透過照射光(Et )が露光ステ−ジ(70)上面の鏡面にて反射された、下方からの反射照射光(Er )とが露光される。図5中、符号(Et )は、塗布膜を透過し減衰した透過照射光を表し、また、符号(Er )は、透過照射光が鏡面にて反射された反射照射光を表している。
【0030】
図6は、露光後の現像処理によって得られた着色画素を示したものである。図6に示すように、樹脂ブラックマトリックスの開口部(51b)上の着色画素(52)は、上方からの照射光(E0 )と下方からの反射照射光(Er )とが露光されており、所望する膜厚(T1)を有する着色画素となる。一方、樹脂ブラックマトリックス(51)の端部上のツノ段差(53’)は、上方からの照射光(E0 )のみの露光であるので、その硬化は不十分である。従って、ツノ段差(53’)の高さ(H2)は、前記図3に示す、ツノ段差(53)の高さ(H1)よりも低いものとなる(H2<H1)。
【0031】
この上方からの照射光(E0 )の露光は、上方からの露光のみでは塗布膜の硬化が不十分であって、上方からの露光と、下方からの反射照射光(Er )の露光が加算された露光では塗布膜の硬化が必要かつ十分な、つまり、適正となる照度、及び露光量であることが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、上方からの露光のみの塗布膜部分の焼成処理後の露光率は75%以下であり、上方からの露光と、下方からの反射照射光の露光が加算された露光の塗布膜部分の焼成処理後の露光率は80%以上であることが好ましい。
【0033】
また、本発明においては、樹脂ブラックマトリックスの膜厚は1〜2μmであり、その光学濃度は3.0〜7.0であり、樹脂ブラックマトリックスの端部上に重なる着色画素の周縁部の幅は各々4〜7μmであることが好ましい。この各々の幅とは、前記図1に示すX軸方向及びY軸方向での、着色画素の周縁部の四辺における重なりの幅である。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実施例を説明する。
[樹脂ブラックマトリックスの作製]
樹脂ブラックマトリックスの形成に用いる黒色感光性樹脂として、表1中、符号(BM)の欄に記載される組成の黒色感光性樹脂を用い、また、樹脂ブラックマトリックスを形成するプロセス条件として、表2中、符号(BM)の欄に記載されるプロセス条件を用い、厚さ0.7mmのガラス基板上に、膜厚1.85μm、光学濃度3.0の樹脂ブラックマトリックスを作製した。
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
[赤色画素の作製]
【0037】
赤色画素の形成に用いる赤色フォトレジストとして、表1中、符号(RED)の欄に記載される組成の赤色フォトレジストを用い、上記樹脂ブラックマトリックスが形成されたガラス基板上に、膜厚2.3μmの赤色フォトレジスト膜を形成した。この際の乾燥には減圧乾燥を用いた。また、この赤色フォトレジスト膜は、露光量60mJ/cm2 にて良好に硬化する感光性を有するものである。
【0038】
次に、その表面が鏡面である露光ステージが設けられた露光装置を用い、上記により得られた、赤色フォトレジスト膜が形成されたガラス基板を、ガラス基板のガラス面を鏡面に向けて露光ステージ上に載置した。
【0039】
赤色画素を形成するプロセス条件として、表2中、符号(RED)の欄に記載されるプロセス条件を用いた。露光方法として、赤色フォトレジスト膜とフォトマスク膜面との間に200μmのギャップを設けた近接露光を用いた。露光は、フォトマスク上方からの照射光をフォトマスクの開口部を介し、赤色フォトレジスト膜の上方より照度20mWにて、露光量40mJ/cm2 を与えた。
【0040】
露光後の現像処理としては、アルカリ現像を60秒、水洗を60秒、焼成を230℃にて20分を施した。現像処理後に得られた赤色画素のツノ段差の高さは、0.27μmのものであった。従来の露光方法によるツノ段差の高さは、0.41μmであることからして、本実施例のツノ段差の高さは、約34%の低減がされている。
【0041】
図7は、赤色画素の形成に用いた赤色フォトレジストの露光率の露光量依存性を示す説明図である。横軸は赤色フォトレジスト膜に与えた露光量、縦軸は赤色画素の露光率を表している。図7中、ツノ段差の部分には、上方から露光量40mJ/cm2 が与えられ、約69%の露光率、赤色画素の部分には、上方及び下方から80mJ/cm2 の露光量が与えられたと推量され、露光率は約100%である。
なお、露光率は、露光率=[焼成後膜厚/120mJ/cm2 露光したときの焼成後膜厚
]×100で表される。
[緑色画素の作製]
【0042】
赤色画素の作製と同様にして緑色画素を作製した。緑色画素の形成に用いる緑色フォトレジストとして、表1中、符号(GREEN)の欄に記載される組成の緑色フォトレジストを用い、上記赤色画素が形成されたガラス基板上に、膜厚2.2μmの緑色フォトレジスト膜を形成した。緑色画素を形成するプロセス条件として、表2中、符号(GREEN)の欄に記載されるプロセス条件を用いた。
【0043】
露光は、フォトマスク上方からの照射光をフォトマスクの開口部を介し、緑色フォトレジスト膜の上方より照度20mWにて、露光量40mJ/cm2 を与えた。
現像処理後に得られた緑色画素のツノ段差の高さは、0.28μmのものであった。従来の露光方法によるツノ段差の高さは、0.42μmであることからして、本実施例のツノ段差の高さは、約33%の低減がされている。
図8は、緑色画素の形成に用いた緑色フォトレジストの露光率の露光量依存性を示す説明図である。
[青色画素の作製]
【0044】
赤色画素の作製と同様にして青色画素を作製した。青色画素の形成に用いる青色フォトレジストとして、表1中、符号(BLUE)の欄に記載される組成の青色フォトレジストを用い、上記緑色画素が形成されたガラス基板上に、膜厚1.9μmの青色フォトレジスト膜を形成した。青色画素を形成するプロセス条件として、表2中、符号(BLUE)の欄に記載されるプロセス条件を用いた。
【0045】
露光は、フォトマスク上方からの照射光をフォトマスクの開口部を介し、青色フォトレジスト膜の上方より照度20mWにて、露光量40mJ/cm2 を与えた。
現像処理後に得られた青色画素のツノ段差の高さは、0.30μmのものであった。従来の露光方法によるツノ段差の高さは、0.24μmであることからして、本実施例のツノ段差の高さは、約38%の低減がされている。
図9は、青色画素の形成に用いた青色フォトレジストの露光率の露光量依存性を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
32・・・フォトマスク上の開口部
40・・・露光ステージ
51・・・樹脂ブラックマトリックス
51b・・・樹脂ブラックマトリックスの開口部
52・・・着色画素
53・・・ツノ段差
53’・・・本発明におけるツノ段差
60・・・着色フォトレジスト層
70・・・本発明における上面が鏡面の露光ステージ
E・・・上方からの照射光
0 ・・・上方からの照射光
r ・・・下方からの反射照射光
t ・・・塗布膜を透過した透過照射光
G・・・近接露光のギャップ
H1・・・ツノ段差の高さ
PM1、PM2・・・フォトマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に少なくとも樹脂ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成されたカラーフィルタの製造方法において、前記着色画素を形成する際に、
1)露光装置として、前記透明基板を載置する露光ステ−ジ上面が鏡面である露光装置を用い、
2)フォトマスクとして、着色画素の形成に対応した開口部が設けられたフォトマスクを用い、
3)a)前記樹脂ブラックマトリックスが形成された透明基板の上面に、着色画素形成用のネガ型の着色フォトレジストの塗布膜を形成する工程、
b)該塗布膜が形成された透明基板を、前記上面が鏡面である露光ステ−ジ上に、透明基板の下面を露光ステ−ジの上面に向けて載置する工程、
c)樹脂ブラックマトリックスの端部上に、形成する着色画素の周縁部が重なるように前記フォトマスクを位置合わせする工程、
d)該フォトマスクを介し、上方の光源からの照射光を着色フォトレジストの塗布膜に上方から露光する工程、を少なくとも具備し、
樹脂ブラックマトリックスの端部上の塗布膜には、上方からの照射光を露光し、樹脂ブラックマトリックスの開口部上の塗布膜には、上方からの照射光と、該塗布膜を透過し露光ステ−ジ上面の鏡面にて反射された、下方からの反射照射光とを露光した後に現像処理を施すことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記上方からの照射光の露光は、上方からの露光のみでは塗布膜の硬化が不十分であり、上方からの露光と、下方からの反射照射光の露光が加算された露光では塗布膜の硬化が適正である照度、及び露光量であることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記上方からの露光のみの塗布膜部分の焼成処理後の露光率は75%以下であり、前記上方からの露光と、下方からの反射照射光の露光が加算された露光の塗布膜部分の焼成処理後の露光率は80%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂ブラックマトリックスの膜厚は1〜2μmであり、その光学濃度は3.0〜7.0であり、樹脂ブラックマトリックスの端部上に重なる着色画素の周縁部の幅は各々4〜7μmであることを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−282051(P2010−282051A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135940(P2009−135940)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】