説明

カラーフィルタ用基板の再生処理システム

【課題】設備効率を上げ、再生専用処理装置による再生処理に要する薬液の削減と再生専用処理時の基板の割れ等の発生を防ぐことを可能とするカラーフィルタ用基板の再生処理システムを提供する。
【解決手段】少なくとも基板を製造工程に投入する投入装置と、基板にフォトレジストを塗布する塗布装置と、前記フォトレジストの膜厚を検査する膜厚検査機と、基板に付着する異物を検査する異物検査機と、前記基板に塗布されたフォトレジストを露光した後現像処理する現像装置と、前記膜厚検査機と異物検査機によって検査された前記不良基板を一時収納するバッファ装置と、を備え、且つ、前記バッファ装置に収納された前記不良基板の払い出し指示発行手段と、前記不良基板に塗布されたフォトレジストを剥離する手段と、前記フォトレジストが剥離された基板の払い出し先を判断する手段と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタ用基板の再生処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタ製造処理工程で発生する品質基準に満たないカラーフィルタ用基板を再生して処理前の状態に戻す再生処理に関するもので、更に詳しくはカラーフィルタ製造処理工程中の現像処理装置で再生処理を行う再生処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1はカラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を断面で示した図である。カラーフィルタ1は、基板2上にブラックマトリックス(以下、BM)3、レッドRの着色画素(以下、R画素)4−1、グリーンGの着色画素(以下、G画素)4−2、ブルーBの着色画素(以下、B画素)4−3、透明電極5、及びフォトスペーサー(Photo Spacer)(以下、PS)6、バーテイカルアライメント(Vertical Alignment)(以下、VA)7が順次形成されたものである。
【0003】
上記構造のカラーフィルタの製造方法は、フォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法を用いることが知られているが、図2は一般的に用いられているフォトリソグラフィー法の工程を示すフロー図である。カラーフィルタは、先ず、基板上にBMを形成処理する工程(C1)、基板を洗浄処理する工程(C2)、着色フォトレジストを塗布および予備乾燥処理する工程(C3)、着色フォトレジストを乾燥、硬化処理するプリベーク工程(C4)、露光処理する工程(C5)、現像処理する工程(C6)、着色フォトレジストを硬化処理する工程(C7)、透明電極を成膜処理する工程(C8)、PS、VAを形成処理する工程(C9)がこの順に行われ製造される。
【0004】
例えば、R画素、G画素、B画素の順に画素が形成される場合には、カラーフィルタ用基板を洗浄処理する工程(C2)から、着色フォトレジストを硬化処理する工程間(C7)ではレッドR、グリーンG、ブルーBの順に着色フォトレジストを変更して3回繰り返されてR画素、G画素、B画素が形成される。
【0005】
製造されるカラーフィルタには高い信頼性が必要であるが、前記のようにカラーフィルタの製造工程には多くの工程があり、その途中でゴミや樹脂カスなどの異物の付着や混入、ピンホール、パターン欠け等による欠陥が生じ、品質基準に満たない不良基板となって、歩留まりが低下している現状がある。また、近年の大画面液晶テレビの普及に伴うカラーフィルタ用基板の大型化により、例えば1mm以下の薄く、かつ一辺が1〜2m以上に達するカラーフィルタ用基板では、廃棄そのものに危険が伴う。
【0006】
一般的にカラーフィルタ用基板の不良検査は、前記製造工程の最終工程であるPS,VA形成処理する工程(C9)の後に行われる他に、中間工程であるBMを形成処理する工程(C1)の後、着色フォトレジストを乾燥、硬化処理するプリベーク工程(C4)の後、着色フォトレジストを硬化処理する工程(C7)の後、透明電極を成膜処理する工程(C8)の後においても行われ、品質基準に満たないカラーフィルタ用基板が検出されている。
【0007】
カラーフィルタの製造処理工程で発生した前記品質基準に満たない基板は、再生処理され、製造処理工程に戻され再利用される。前記再生処理には大別して2つの再生処理がある。
【0008】
第一の再生処理は、再生処理の専用工程で再生処理装置を用いて基板を再生するもので
ある。該再生処理装置を用いて再生処理する工程では、各工程で単層または多層に処理されたフォトレジストや透明電極膜(ITO:Indium Tin Oxide)を複数の薬液を用いて剥離し、不良基板は素ガラスに再生され、再度、初工程より投入される。
【0009】
前記再生処理装置を用いてカラーフィルタ用基板を再生する再生工程のフローと工程内容の一例を図3に示す。
【0010】
カラーフィルタ用基板の不良検査で検出された基板は、その後再生処理が行われる。すなわち、カラーフィルタ用基板の再生はBMを形成した後、あるいはR画素、G画素、B画素のためのパターン作製のためのフォトレジストを塗布した後、あるいはBM、R画素、G画素、B画素を形成した後、あるいは透明電極膜成膜後、あるいはPS、VA形成後のいずれの場合においても行われるが、図3はPS、VA膜形成後の品質基準を満足しないカラーフィルタ用基板の再生工程と工程内容を示す。
【0011】
先ず、アルカリ処理(1)(K1)、ブラシ洗浄(K2)及び水洗リンス(K3)によって基板の最上層にあるPS、VA膜が剥離、リンスされる(N1)、(N2)、(N3)。次に中間層のITO膜が酸処理(K4)、水洗リンス(K5)によって剥離、リンス(N4),(N5)された後、最下層であるBM、RGB樹脂膜がアルカリ処理(2)(K6)、ブラシ洗浄(K7)、水洗リンス(K8)によってRGB、BM層が剥離、リンス(N6)、(N7)、(N8)され、最後にブラシ洗浄(K9)でカラーフィルタ用基板に微少量残っている洗浄残渣を取り除かれ(N9)、水切り(K10)によって乾燥される(N10)。
【0012】
第二の再生処理は工程内再生処理である。図4は工程内再生処理に係わる基板の流れと処理装置の構成の一例を示す。基板(図示せず)は投入装置10から塗布装置11に投入され、フォトレジストが塗布装置11で塗布された後、膜厚検査機12及び異物検査機13によってフォトレジストの膜厚不良や異物付着不良検査が行われる。膜厚検査機12及び異物検査機13によって不良が発見されなかった基板は、次に露光装置14によって露光処理された後、現像装置16によって現像処理される。現像装置16の処理の進み具合の状況によって、露光装置14によって露光処理された基板の一部は、バッファ装置15に一時収納(以下、バッファリング)される。現像処理された基板は次のオーブン17によって加熱乾燥され、フォトレジストが硬化される。その後基板は次の処理装置である塗布装置に搬送されか、または回収装置18に回収される。
【0013】
膜厚検査機12及び異物検査機13によって不良が発見された基板は、次に露光装置14による露光処理を回避して、矢印21に示すように、一旦バッファ装置15にバッファリングされ、その後現像装置16に投入され現像処理される。この場合の不良基板の現像処理とは、基板に塗布されたフォトレジストを剥離する処理であって、膜厚検査機12及び異物検査機13で検査された不良基板は、バッファ装置15にバッファリングされた後、現像装置16に搬送され、剥離処理のレシピである剥離レシピによってフォトレジストの剥離処理が行われる。現像装置16によって剥離処理された基板は次に矢印22で示すように投入装置10に搬送されるか、または矢印23が示すように回収装置18に一旦回収された後に、再度同一設備に投入される。
【0014】
上記現像装置16における剥離レシピによるフォトレジストの剥離処理は、現像処理時間を、通常の現像時間より大幅に伸ばすことで塗布されたフォトレジストを剥離する。このように工程内再生処理は、現像装置16の現像処理時間を通常の現像時間より大幅に伸ばすため、通常の基板生産処理に用いられる通常生産レシピとは別に、剥離用レシピを用いる。剥離用レシピは現像処理時間が生産レシピよりも長く設定されるが、現像装置における搬送速度を遅くすることで現像処理時間を長くしている。通常生産処理中に剥離基板
を投入してしまうと、搬送速度が異なっているため、通常生産処理中の基板は品質不良の基板となってしまう。そのため、通常生産品の現像処理が終わった後に、レシピを剥離用に変更し、剥離処理を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−279915号公報
【特許文献2】特開2004−109968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
第一の再生処理である再生専用工程で再生処理装置を用いて基板を再生する場合は、酸処理やアルカリ処理を複数の薬液を用いて剥離処理して素ガラスに再生するために、薬液に要する材料費ロスが大きいこと、また再生処理装置に基板を投入する際や再生処理装置内で基板が破損するといった問題がある。
【0017】
このため、再生処理装置を用いて基板を再生する代わりに、工程内再生処理を行うことが望ましいが、工程内再生処理の場合には、通常生産処理品と剥離処理品を同時に現像装置内に流すことが出来ないために、工程内再生処理を行うためにカラーフィルタ生産工程内の設備を停止する必要がある。このため設備稼働ロスが発生してしまう。これは、通常生産処理と工程内再生処理で現像装置の処理速度を変更する必要があるためである。生産処理基板の現像処理後に剥離用レシピに変更して不良基板を投入する必要がある。そのため現像処理内で処理されている生産処理基板が現像処理外に排出されるまで剥離基板処理する基板を投入することが出来ない。
【0018】
また、人手によって現像装置への投入制御を行っているために作業ロスが発生したり、現像装置内の搬送速度の設定戻し忘れによって不良基板が発生してしまうといった問題がある。
【0019】
そこで本発明は、再生専用処理装置による再生処理する一部の基板を工程内再生に代えて処理し、更に設備効率を上げるとともに、再生専用処理装置による再生処理に要する薬液の削減と再生専用処理時の基板の割れ等の発生を防ぐことを可能とするカラーフィルタ用基板の再生処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に係る発明は、カラーフィルタの製造処理工程中に発生する不良基板を再生処理する再生処理システムであって、少なくとも
基板を製造工程に投入する投入装置と、
基板にフォトレジストを塗布する塗布装置と、
前記フォトレジストの膜厚を検査する膜厚検査機と、
基板に付着する異物を検査する異物検査機と、
前記基板に塗布されたフォトレジストを露光した後現像処理する現像装置と、
前記膜厚検査機と異物検査機によって検査された前記不良基板を一時収納するバッファ装置と、を備えたカラーフィルタ製造工程を有し、且つ、
前記バッファ装置に収納された前記不良基板の払い出し指示発行手段と、
前記バッファ装置から払い出された前記不良基板に塗布されたフォトレジストを剥離する手段と、
前記フォトレジストが剥離された基板の払い出し先を判断する手段と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタ用基板の再生処理システムである。
【0021】
本発明の請求項2に係る発明は、前記バッファ装置に収納された前記不良基板の払い出し指示発行手段は、
前記バッファ装置の上流に位置する装置で基板を払い出す時間間隔が一定の装置を起点装置とし、前記起点装置から前記バッファ装置の間に位置する装置の基板払い出し基準時間と実時間の差がマイナスとなる装置の差の総和を求め、前記差の総和が予め設定された設定時間よりも長い場合は、前記不良基板を前記現像装置へ払い出し指示することを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システムである。
【0022】
本発明の請求項3に係る発明は、前記バッファ装置から払い出された前記不良基板に塗布されたフォトレジストを剥離する手段は、
前記現像装置の搬送速度を下げ、現像処理時間を長くしてフォトレジストを剥離することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システムである。
【0023】
本発明の請求項4に係る発明は、前記現像装置の搬送速度は予め登録された剥離処理レシピに基づいて設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システムである。
【0024】
本発明の請求項5に係る発明は、前記現像装置は不良基板を受入後、不良基板を上方に移動するピンナップ機構を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システムである。
【0025】
本発明の請求項6に係る発明は、前記フォトレジストが剥離された基板の払い出し先を判断する手段は、
前記投入装置上の基板のロット番号と払い出し先指示要求のあった前記フォトレジストが剥離された基板のロット番号が同じ場合は、前記塗布装置へ払い出し指示を発行し、
前記投入装置上の基板のロット番号と払い出し先指示要求のあった前記フォトレジストが剥離された基板のロット番号が異なる場合は、基板を収納する回収装置へ払い出し指示を発行することを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、カラーフィルタ製造設備の効率を上げるとともに、再生専用処理装置による再生処理に要する薬液の削減と、再生専用処理時の基板の割れ等の発生を防ぐことが可能となる。また、人手による現像装置の設定作業のミスを防ぐことが可能となり、その結果、速度設定ミスによる不良品の発生を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を断面で示した図。
【図2】一般的に用いられているフォトリソグラフィー法の工程のフロー図。
【図3】カラーフィルタ用基板の再生工程のフローと工程内容の一例を示す図。
【図4】工程内再生処理に係わる基板の流れと処理装置の構成の一例を示す図。
【図5】本発明に係わるカラーフィルタ用基板の再生処理システムが適用されるカラーフィルタ製造設備の構成と基板の流れの一例を示す図。
【図6】本発明に係るカラーフィルタ用基板の再生処理システムの実施環境の一例を示す図
【図7】バッファ装置にバッファリングされた剥離フラグ付き基板の払い出し指示の発行について説明するための図。
【図8】本発明に係わるカラーフィルタ用基板の再生処理システムの動作フロー図。
【図9】本発明に係る現像装置を示す模式図。
【図10】本発明に係わるカラーフィルタ用基板の再生処理システムの基板払い出し先の指示発行について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明に係るカラーフィルタ用基板の再生処理システムを実施するための形態を説明する。
【0029】
図5は本発明の実施形態に係わるカラーフィルタ用基板の再生処理システムが適用されるカラーフィルタ製造設備の構成と基板の流れの一例を示す図である。基板(図示せず)は投入装置30によって塗布装置31に投入され、フォトレジストが塗布された後、膜厚検査機32及び異物検査機33によってフォトレジストの膜厚不良や異物付着不良が検出される。
【0030】
膜厚検査機32及び異物検査機33によって不良が発見されなかった基板は、次に露光装置34によって露光処理された後、現像装置36によって現像処理される。現像装置36の処理の進み具合の状況によって、露光装置34によって露光処理された基板の一部は、一時、バッファ装置35にバッファリングされる。現像処理された基板は次のオーブン37によって加熱乾燥され、フォトレジストが硬化される。その後基板は分岐装置39に送られ、矢印43で示すように次の処理装置である塗布装置に搬送されか、または矢印44で示されるように回収装置38に回収される。
【0031】
膜厚検査機32及び異物検査機33によって不良が発見された基板は、次の露光装置34による露光処理を回避して、矢印41で示されるようにバッファ装置35に搬送され、バッファリングされる。バッファ装置35にバッファリングされた基板は、後で述べる不良基板の払い出し指示命令に従ってバッファ装置35から現像装置36に搬出され、現像処理される。この場合の現像処理とは、基板に塗布されたフォトレジストを剥離する処理であって、剥離レシピによってフォトレジストの剥離処理が行われる。現像装置36によって剥離処理された基板は次に矢印42で示すように分岐装置39に搬送される。分岐装置39では、後で述べるフォトレジストが剥離された基板の払い出し先を判断する手段によって発行される払い出し指示命令に従って、剥離処理基板を矢印43で示すように工程内で循環させ次の塗布処理を行うか、または矢印44で示すように一旦回収装置39に回収する。
【0032】
図6は本発明に係るカラーフィルタ用基板の再生処理システムの実施環境の一例を示す。カラーフィルタ用基板の再生処理システム50は、投入装置30、塗布装置31、膜厚検査機32、異物検査機33、露光装置34、バッファ装置35、現像装置36、オーブン37、回収装置38、分岐装置39からなる装置群51を有し、装置群51はネットワーク53を介してシステム制御部52と双方向通信可能に接続されている。
【0033】
図5及び図6を用いて本発明に係るカラーフィルタ用基板の再生処理システムの処理フローを説明する。膜厚検査機32または異物検査機33が品質異常を検出した基板に対してシステム制御部52は、塗布されたフォトレジストの剥離要求を行う。この場合、装置群51の各装置及びシステム制御部52は基板に紐付く基板情報を管理する。基板情報は、基板の移動とともに各装置間でトラッキング管理される。システム制御部52は、工程内流動中の基板情報を収集・管理する。膜厚検査機32、異物検査機33は、品質異常と判断した基板に対して、装置群51及びシステム制御部52で管理する「工程内再生要求を示す基板情報管理アドレス」を更新する。尚、以下の説明では「塗布フォトレジストの剥離要求」を行うために管理する基板情報を「剥離フラグ」と記する。
【0034】
装置群51に配置された膜厚検査機32、異物検査機33が剥離要求を発行する場合を
以下に示す。
【0035】
膜厚検査機32による塗布フォトレジストの剥離要求の場合は、
(1)塗布後のフォトレジスト膜厚を測定し、(2)膜厚異常の場合、下流装置(この場合の下流装置は、異物検査機33を指す)へ基板を払い出す際、基板情報に剥離フラグを付与する。
【0036】
異物検査機33による塗布フォトレジストの剥離要求の場合は、
(1)検査対象基板の「異物数」、「異物サイズ」を測定し、(2)検出された「異物検出数」、「異物サイズ」が工程規格外の場合には、下流装置(この場合は、露光装置34を指す)へ基板を払い出す際の基板情報に剥離フラグを付与する。
【0037】
次に、露光装置34は剥離フラグが付与された基板を上流装置から受入れた場合、露光処理を実施せずに下流装置(この場合は、バッファ装置36を指す)に払い出す。バッファ装置36は、剥離フラグが付与された基板を上流装置から受入れた場合、バッファリングする。
【0038】
バッファ装置35は、システム制御部52から剥離フラグが付与された基板の払い出し指示が発行されるまで、バッファリングを継続する。システム制御部52は、バッファ装置35に対し、バッファリングされた剥離フラグ付き基板の払い出し指示を発行する。
【0039】
バッファ装置35にバッファリングされた剥離フラグ付き基板の払い出し指示の発行について図7を用いて説明する。システム制御部52は、「露光装置に用いられる露光マスクの洗浄」や「塗布装置の配管洗浄」等のメンテナンス、あるいは装置の設定変更による停止等の場合に発生する一時的な現像装置36への基板供給が停止、または遅れる場合には、その時間を利用して現像装置36で剥離フラグ付き基板のフォトレジストを剥離処理出来るように、バッファ装置35に対し、基板の払い出し指示を発行する。
【0040】
システム制御部52は、装置群51から得られる以下に示す「収集・管理情報」に基づいて、バッファ装置35に対し剥離フラグ付き基板の払い出し指示の発行を行う。
【0041】
「収集・管理情報」には、以下の情報が含まれる。
(1)T(t)は、ある起点装置70の基板払い出し間隔時間(実時間)であって、現像装置36、バッファ装置35の上流に位置する装置で、CV(コンベア)やバッファ装置35に付属するRB(ロボット)等、装置群51内に存在する装置の中で基板払い出し間隔が一定に保たれる装置を起点装置70として選定する。選定された起点装置70が、下流へ基板を払い出す間隔(基板を払い出してから、次の基板を下流に払い出すまでの間)を起点装置70より収集管理する。
(2)E(t)は、起点装置70における基板の下流装置への払い出し基準時間(設定時間)であって、設定値はシステム制御部52で設定する。
(3)Tn(t)は、起点装置70とバッファ装置35の間に位置する各装置の基板払い出し間隔時間(実時間)(n=1〜n)であって、起点装置70とバッファ装置35の間に位置する各装置の各基板払い出し間隔時間を各装置より収集管理する。
(4)En(t)は、起点装置70からバッファ装置35の間に位置する各装置の下流装置への払い出し基準時間(設定時間)(n=1〜n)であって、起点装置70とバッファ装置35の間に位置する各装置の各基板払い出し基準時間を各装置より収集管理する。設定値はシステム制御部52で設定しても良い。
(5)Σ(En(t)−Tn(t))は、起点装置70からバッファ装置35の間に位置する各装置において、下流装置への払い出し基準時間(En(t))から、払い出し実時間(Tn(t))を引いた値の総和(但し、払い出しが基準時間から遅れている装置(E
n(t)−Tn(t)>0、n=1〜n)のみを加算対象として本変数を定義する。)である。
(6)αは、工程内再生を行う場合の剥離処理を行うために現像装置が必要とする処理時間の設定値である。
【0042】
上記に示される「収集・管理情報」からシステム制御部52が実行する剥離フラグ付き基板の払い出し指示フローを図8のフロー図と図7を用いて説明する。
【0043】
開始後(H1)、起点装置70における基板払い出し間隔が「Tn(t)>E(t)」であった場合(H2のYES)は、現像装置36に対する生産基板の投入間隔が乱れる恐れがある。この場合はステップ(H3)に移行し、制御システム部51は、起点装置70からバッファ装置35までに位置する各装置の処理状況を監視することによりΣ(En(t)−Tn(t))を算出する。これにより、起点装置70からバッファ装置35までの間の各装置における「基板処理時間の遅延時間」の総和が算出される。この値がαよりも大きな場合(H3のYES)、現像装置36で剥離処理を行う余裕時間があると判断する。次に、バッファ装置35に剥離フラグ付き基板が存在する場合(H4のYES)、バッファ装置35に対し、剥離フラグ付き基板の払い出し指示を発行する(H5)。その後、ステップ(H3)に移行する。尚、この場合、仮に上流装置に生産基板があったとしても、ステップ(H3)で行った判断により剥離フラグ付き基板を現像装置36へ割り込み投入させる。
【0044】
ステップ(H2)、(H3)、(H4)でNOの場合は、ステップ(H6)に移行しバッファ装置35に対し、剥離フラグ付き基板の払い出し指示を発行せず(H5)、次にステップ(H2)へ移行する。尚、この剥離フラグ付き基板の払い出し指示フローは、システム制御部52が「収集・管理情報」に基づいて常時動作する。
【0045】
現像装置36は、剥離フラグが付与された基板を上流装置(この場合は、バッファ装置35を指す)から受入れた際、現像処理時間などの現像条件を通常生産処理用(生産レシピ)から工程内再生処理用レシピ(剥離レシピ)に変更する。
【0046】
図9は本発明に係る現像装置36を示す模式図で、現像装置36は、現像装置内のコンベア上に搬送される基板に対し、現像薬液を現像液噴射ノズル54から散布させることで現像処理を行う現像装置である。現像装置36は基板受け取りポジション(現像装置36の入り口)で、ピン56を矢印60の方向に上昇(ピンナップ)させるによって、剥離フラグが付与された基板57を搬送コンベア58の上方に持ち上げたまま保持し、現像薬液をフォトレジストが剥離処理される基板57に散布する機構を備えている。一方、生産処理される基板59は矢印60で示される方向に搬送されながら、現像液噴射ノズル54で噴射される現像薬液によって現像される。このようにして、コンベア搬送速度を変えることなく、処理レシピの異なる「生産基板」と「剥離基板」を同時に処理することが出来る。
【0047】
現像装置36には、予め剥離フラッグ付基板を処理するための工程内再生レシピが設定される。現像装置36は、受入れた基板が剥離フラグ付基板であった場合、通常生産レシピから工程内再生レシピに変更する。剥離フラグが付いていない基板を受け入れた場合は、設定レシピを通常生産レシピに戻す。
【0048】
分岐装置39は、システム制御部52からの指示に基づき、フォトレジストが剥離された基板を基板払い出し先指示に従って払い出す。分岐装置39への基板払い出し先の指示発行について図10を用いて説明する。システム制御部52は、矢印43に示すようにフォトレジストが剥離された剥離基板を工程内で循環させ塗布処理を再度実施するか、また
は矢印44に示すように一旦回収装置のカセットに回収させるかを、製造処理工程の処理装置の処理状況に基づいて判断し、分岐装置39へ剥離基板の払い出し先の指示を発行する。
【0049】
分岐装置39は剥離フラグが付与された基板の受け取り時に、システム制御部52へ「基板払い出し先指示要求」を送信する。システム制御部52は、分岐装置39からの「基板払い出し先指示要求」に対して、工程内に流動する基板の情報より、以下に示す方法で払い出し先を指示する。
【0050】
システム制御部51は表1に示す基板データ管理テーブルのデータに基づいて、投入装置30上の基板のロット番号(La)と、分岐装置39にある「基板払い出し先指示要求」のあった剥離基板のロット番号(Lb)を照合する。尚、投入装置30上に基板が無い場合には、工程内を流動する基板の最後尾をLaとする。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示す基板データ管理テーブルには、基板のシリアル番号を示す基板管理No、品種単位の管理Noを示すロットNo、剥離対象基板に付与される情報である剥離フラッグ、基板が工程内に存在する在荷ポジションを示す基板ポジションの各データが含まれる。
【0053】
照合の結果、La=Lbの場合には、矢印43に示すようにシステム制御部51は分岐装置39へ基板を塗布装置31へ払い出すよう指示(循環指示)を出す。一方、La≠Lbの場合は、図44に示すように分岐装置39の基板を回収装置38へ払い出すよう指示を出す。このようにして、全ての基板の処理が終了する。
【0054】
以上のように、本発明のカラーフィルタ用基板の再生処理システムによれば、現像装置で剥離処理を行うための余裕時間の有無を判断し、余裕時間があった場合は、従来、再生専用処理装置によって再生処理していた基板の一部を工程内再生処理に代えることが出来、また現像装置の設定を通常生産と工程内再生処理とを自動的に設定することによって設備効率を上げることが可能となり、また、作業者による現像装置の設定の戻し忘れによる不良基板の発生を防ぐことが出来、更に再生専用処理装置による再生処理に要する薬液の削減と再生専用処理時の基板の割れの発生を防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・カラーフィルタ
2・・・基板
3・・・ブラックマトリックス(BM)
4−1・・・レッドRの着色画素(R画素)
4−2・・・グリーンGの着色画素(G画素)
4−3・・・ブルーBの着色画素(B画素)
5・・・透明電極
6・・・フォトスペーサー(PS)
7・・・バーテイカルアライメント(VA)
10・・・投入装置
11・・・塗布装置
12・・・膜厚検査機
13・・・異物検査機
14・・・露光装置
15・・・バッファ装置
16・・・現像装置
17・・・オーブン
18・・・回収装置
21・・・不良が発見された基板が搬送される方向を示す矢印
22・・・剥離処理された基板が搬送される方向を示す矢印
23・・・基板が回収装置に回収される搬送方向を示す矢印
30・・・投入装置
31・・・塗布装置
32・・・膜厚検査機
33・・・異物検査機
34・・・露光装置
35・・・バッファ装置
36・・・現像装置
37・・・オーブン
38・・・回収装置
39・・・分岐装置
41・・・不良が発見された基板が搬送される方向を示す矢印
42・・・剥離処理された基板が搬送される方向を示す矢印
43・・・分岐装置から塗布装置に搬送される方向を示す矢印
44・・・基板が分岐装置から回収装置に回収される搬送方向を示す矢印
50・・・カラーフィルタ用基板の再生処理システム
51・・・装置群
52・・・システム制御部
53・・・ネットワーク
54・・・現像液噴射ノズル
56・・・ピン
57・・・剥離フラグが付与された基板
58・・・搬送コンベア
59・・・生産処理される基板
60・・・ピンを上昇させる方向を示す矢印
61・・・現像装置内の基板搬送方向を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタの製造処理工程中に発生する不良基板を再生処理する再生処理システムであって、少なくとも
基板を製造工程に投入する投入装置と、
基板にフォトレジストを塗布する塗布装置と、
前記フォトレジストの膜厚を検査する膜厚検査機と、
基板に付着する異物を検査する異物検査機と、
前記基板に塗布されたフォトレジストを露光した後現像処理する現像装置と、
前記膜厚検査機と異物検査機によって検査された前記不良基板を一時収納するバッファ装置と、を備えたカラーフィルタ製造工程を有し、且つ、
前記バッファ装置に収納された前記不良基板の払い出し指示発行手段と、
前記バッファ装置から払い出された前記不良基板に塗布されたフォトレジストを剥離する手段と、
前記フォトレジストが剥離された基板の払い出し先を判断する手段と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタ用基板の再生処理システム。
【請求項2】
前記バッファ装置に収納された前記不良基板の払い出し指示発行手段は、
前記バッファ装置の上流に位置する装置で基板を払い出す時間間隔が一定の装置を起点装置とし、前記起点装置から前記バッファ装置の間に位置する装置の基板払い出し基準時間と実時間の差がマイナスとなる装置の差の総和を求め、前記差の総和が予め設定された設定時間よりも長い場合は、前記不良基板を前記現像装置へ払い出し指示することを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システム。
【請求項3】
前記バッファ装置から払い出された前記不良基板に塗布されたフォトレジストを剥離する手段は、
前記現像装置の搬送速度を下げ、現像処理時間を長くしてフォトレジストを剥離することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システム。
【請求項4】
前記現像装置の搬送速度は予め登録された剥離処理レシピに基づいて設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システム。
【請求項5】
前記現像装置は不良基板を受入後、不良基板を上方に移動するピンナップ機構を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システム。
【請求項6】
前記フォトレジストが剥離された基板の払い出し先を判断する手段は、
前記投入装置上の基板のロット番号と払い出し先指示要求のあった前記フォトレジストが剥離された基板のロット番号が同じ場合は、前記塗布装置へ払い出し指示を発行し、
前記投入装置上の基板のロット番号と払い出し先指示要求のあった前記フォトレジストが剥離された基板のロット番号が異なる場合は、基板を収納する回収装置へ払い出し指示を発行することを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用基板の再生処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−22177(P2012−22177A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160525(P2010−160525)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】