説明

カラー・フィルム現像剤組成物及びカラー・フィルム現像のための方法

【課題】カラー・フィルムを処理するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】カラー・フィルムは、第1及び第2の組成物を用いてそれを現像することによって処理される。第2の組成物は、緩衝剤と、酸化防止剤と、保恒剤と、水酸化物と、ヒドロキノン及びアスコルビン酸からなるグループから選択された現像剤とを含んだ水性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムの現像工程に関し、より具体的には、カラー・フィルムの現像工程及びそのための現像剤(現像液)に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷写真中に又はフィルム上に捉えられた画像は、情報及び考えを伝達するのに用いられる。カラー・フィルムに基づく画像は一般に、カラー・フィルム上のハロゲン化銀ベースの乳剤に照射を行い、乳剤のハロゲン化銀粒子中に潜像を生み出すことによって形成される。従来、この露光されたカラー・フィルムは、その後、湿式の化学現像工程を用いて現像されるのである。
【0003】
従来の湿式化学現像工程においては、一般に、種々の処理液を含む一連のタンクが利用される。まだ現像されていない露光済みのカラー・フィルムは、種々の処理液を含む各タンクの中に十分に浸漬される。一般的な湿式化学現像工程は、この露光済みフィルムを、現像、定着、漂白及び乾燥、並びに種々のすすぎ操作のための個々のタンクに浸漬する単一の現像ステップを含む。このような従来の湿式化学現像工程においては、フィルム上にカラー色素像(color dye image)を形成するために、銀及びハロゲン化銀の一部が乳剤から除去される。
【0004】
湿式化学現像工程によっては、例えばよりはっきりとしたハイライト、より黒い黒、非飽和色等の独特の見た目を達成するために、処理後のカラー・フィルムにおいて銀の保持力を高めることが重要となっている。カラー・フィルムの銀の保持力を高める際、湿式化学現像工程において、ハイライトが濁る(muddy)ことがあり、色のタイミング(color timing)をとるのが難しい場合があるという問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、処理後のカラー・フィルム上における銀の保持力を高めることが望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カラー・フィルムを処理するための方法及び組成物に関する。カラー・フィルムは、第1及び第2の組成物を使用してそれを現像することによって処理される。第2の組成物は、緩衝剤と、酸化防止剤と、保恒剤と、水酸化物と、ヒドロキノン及びアスコルビン酸からなるグループから選択された現像剤とを含む水性組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0008】
図1は、従来のカラー・フィルムに対する湿式化学現像工程の概略図である。図1に示されるように、カラー・フィルム10は、現像工程中、ローラ15によって、第1の現像タンク20、停止タンク25、第1の洗浄タンク30、第1の定着液タンク35、第2の洗浄タンク40、漂白促進液タンク45、過硫酸塩漂白液タンク50、第3の洗浄タンク55、サウンド・トラック・アプリケータ(sound track applicator)タンク60、第4の洗浄タンク63、第2の現像液タンク65、第2の定着液タンク70、第2の定着液洗浄タンク75及び最終すすぎタンク80を含む種々のタンクの中へ供給される。この現像工程中に、カラー・フィルム10は、これらの種々のタンクの中を、約400fpm(フィート毎分)から約1000fpmまでの速度で移動する。
【0009】
カラー・フィルム10は、図2のフローチャートに示された工程ステップに従って現像される。参照符号120によって示されているように、カラー・フィルム10はまず、第1の現像液タンク20に浸漬される。第1の現像液タンク20は、カラー・フィルムがその中に浸漬されるとフィルム上の露光済みの潜像を可視像に変換する業界標準のカラー・フィルム現像液を含んでいる。この第1の現像液は、カラー・フィルム中の露光済みのハロゲン化銀を現像し、フィルム中の発色剤と反応して、銀像とともに色素層を形成する。
【0010】
最適な画質を得るのに特に重要となるのは、時間及び温度の制御である。これらの条件(例えば現像時間、現像液の温度等)は、業界標準に沿って変更可能である。例えば、現像液は一般に、約90℃の温度に維持される。現像工程中、カラー・フィルム10は、第1の現像液タンク20の中を、約400fpm(フィート毎分)から約1000fpmまでの速度で移動することができる。
【0011】
図2の参照符号125によって示されているように、フィルムは、第1の現像液タンク20の中で現像された後、停止タンク25内に浸漬される。停止タンク25は、カラー・フィルムの現像を停止させてフィルムの表面から現像液を除去する、一般的には希酸溶液を含有する停止液を含んでいる。例えば、停止液は、酢酸の希釈液とすることができる。
【0012】
カラー・フィルム10は、停止タンク25に浸漬された後、参照符号130によって示された第1の洗浄タンク30の中で洗浄される。この第1の洗浄タンク30においては、水を用いて、カラー・フィルムの表面から希酸停止液が除去される。
【0013】
参照符号135によって示されているように、カラー・フィルム10は次いで、第1の定着液タンク35に浸漬される。第1の定着液タンクは、現像されたフィルムの可視像を、永続させ、かつ光に対して不感応にする業界標準の定着液を含んでいる。
【0014】
フィルムは、第1の定着液タンク35の中で定着された後、図2の参照符号140によって示されているように、第2の洗浄タンク40に浸漬される。この第2の洗浄タンク40においては、水を用いて、カラー・フィルムの表面から定着液が除去される。
【0015】
第2の洗浄タンク40に浸漬された後、カラー・フィルム10は、参照符号145によって示された漂白促進液タンク45に供給される。漂白促進液タンク45は、業界標準の漂白促進液を含んでいる。
【0016】
参照符号150によって示されているように、カラー・フィルム10は次いで、過硫酸塩漂白液タンク50に浸漬される。過硫酸塩漂白液タンク50は、現像液によって形成された可視像を、ハロゲン化銀に変換する業界標準の過硫酸塩漂白液を含んでいる。
【0017】
フィルムは、過硫酸塩漂白液タンク50の中で漂白された後、図2の参照符号155によって示されているように、第3の洗浄タンク55に浸漬される。この第3の洗浄タンク55においては、水を用いて、カラー・フィルムの表面から過硫酸塩漂白液が除去される。
【0018】
カラー・フィルム10は、第3の洗浄タンク55に浸漬された後、参照符号160によって示されたサウンド・トラック・アプリケータ・タンク60に供給される。サウンド・トラック・アプリケータ・タンク60は、カラー・フィルムのサウンド・トラックを現像する業界標準のサウンド・トラック現像液を含んでいる。
【0019】
サウンド・トラック・アプリケータ・タンク60の中で現像された後、フィルムは、図2の参照符号163によって示されているように、第4の洗浄タンク63に浸漬される。この第4の洗浄タンク63においては、水を用いて、カラー・フィルムの表面からサウンド・トラック現像液が除去される。
【0020】
カラー・フィルム10は、第4の洗浄タンク63に浸漬された後、参照符号165によって示された第2の現像液タンク65に供給される。第2の現像液タンク65は、緩衝剤と、酸化防止剤と、保恒剤と、水酸化物と、ヒドロキノン及びアスコルビン酸からなるグループから選択された現像剤とを含む水性組成物の第2の現像液を含む。
【0021】
第2の現像液は、処理後のカラー・フィルム上における銀の保持力を高めて、よりはっきりとしたハイライト、より黒い黒及び非飽和色を達成する。このカラー・フィルムの第2の現像は、よりはっきりとしたハイライト、より黒い黒及び非飽和色を達成するために、サウンド・トラック現像ステップの後であってその後の(後に論じる)第2の定着ステップの前に実施される。
【0022】
第2の現像液は、約3.5%(重量/体積)から約5.5%(重量/体積)の範囲のヒドロキノンを含むべきである。あるいは、第2の現像液は、約3.5%(重量/体積)から約5.5%(重量/体積)の範囲のアスコルビン酸を含むべきである。
【0023】
緩衝剤は、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩とすることができる。他の適当な炭酸塩として、例えば炭酸カリウム及び炭酸アンモニウムが挙げられる。第2の現像液は、約1.5%(重量/体積)から約2.5%(重量/体積)の範囲の炭酸塩を含むべきである。
【0024】
酸化防止剤と保恒剤とは、例えば亜硫酸ナトリウム等の同じ材料を含有することができる。他の適当な例として、例えば亜硫酸カリウム及び亜硫酸アンモニウムが挙げられる。第2の現像液は、約2%(重量/体積)から約4%(重量/体積)の範囲の酸化防止剤及び保恒剤を含むべきである。
【0025】
この水性組成物のpHを調整するために、水酸化物が使用されるが、この水酸化物として水酸化ナトリウムが用いられてもよい。他の適当な例として、例えば水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムが挙げられる。第2の現像液は、約1.5%(重量/体積)から約2%(重量/体積)の範囲の水酸化物を含むべきである。
【0026】
湿式の化学カラー・フィルム現像工程の1つの実施例として、1リットルの第2の現像液が、約90℃の水800mlに、亜硫酸ナトリウム20〜40グラム、ヒドロキノン35〜55グラム、炭酸ナトリウム15〜25グラム及び(pH調整用の)水酸化ナトリウム18グラムを加えることによって調製される。次いで、水を加えてこの組成物を1リットルとし、さらに水酸化ナトリウムを加えて、pHを10.90±0.10に調整する。この第2の現像液の調製において脱イオン水を使用してもよいが、脱イオン水は必須ではない。
【0027】
湿式の化学カラー・フィルム現像工程の他の実施例として、1リットルの第2の現像液が、約90℃の水800mlに、亜硫酸ナトリウム20〜40グラム、アスコルビン酸40〜65グラム、炭酸ナトリウム15〜25グラム及び(pH調整用の)水酸化ナトリウム18グラムを加えることによって調製される。次いで、水を加えてこの組成物を1リットルとし、さらに水酸化ナトリウムを加えて、pHを10.90±0.10に調整する。この第2の現像液の調製においても脱イオン水を使用することができるが、脱イオン水は必須ではない。
【0028】
フィルムは、第2の現像液タンク65の中で現像された後、図2の参照符号167によって示されているように、第5の洗浄タンク(図1には示されていない)に浸漬される。この第5の洗浄タンクにおいては、水を用いて、カラー・フィルムの表面から第2の現像液が除去される。
【0029】
第5の現像液タンクに浸漬された後、カラー・フィルム10は、参照符号170によって示されているように、続いて第2の定着液タンク70に供給される。第2の定着液タンク70は、漂白中に形成されたハロゲン化銀をカラー・フィルムから除去する業界標準の定着液を含んでいる。
【0030】
第2の定着液タンク70の中で定着された後、フィルムは、図2の参照符号175によって示されているように、第2の定着液洗浄タンク75に浸漬される。この第2の定着液洗浄タンク75においては、水を用いて、カラー・フィルムの表面から第2の定着液が除去される。
【0031】
第2の定着液洗浄タンク75に浸漬された後、カラー・フィルム10は、参照符号180によって示されているように、続いて最終すすぎタンク80に浸漬される。最終すすぎタンク80は、カラー・フィルムのその後の乾燥を助ける業界標準の最終すすぎ液を含んでいる。
【0032】
最終すすぎタンク80の中で最終的にすすがれた後、フィルムは、図2の参照符号185によって示されているように、ドライボックス(drybox)85の中で乾燥させられる。このドライボックス85において、フィルムが、標準の乾燥温度を用いて乾燥させられる。その後、乾燥したフィルムは、後の映写又は印刷のためにスプールに巻き取られる。
【0033】
上述した実施例の湿式化学現像工程においては、第2の現像液が、消費されて大幅に減少する可能性がある。この第2の現像液組成物が大幅に減少した場合、補充液が追加可能である。
【0034】
湿式の化学カラー・フィルム現像工程の1つの実施例として、1リットルの第2の現像液補充液が、約90℃の水800mlに、亜硫酸ナトリウム30グラム、ヒドロキノン55グラム、炭酸ナトリウム20グラム及び(pH調整用の)水酸化ナトリウム18グラムを加えることによって調製される。次いで、水を加えてこの組成物を1リットルとし、さらに水酸化ナトリウムを加えて、pHを10.90±0.10に調整する。この第2の現像液補充液の調製において脱イオン水を使用してもよいが、脱イオン水は必須ではない。
【0035】
本発明の教示による第2の現像液を使用してカラー・フィルムを処理するための例示的な方法及び組成物を、本明細書において詳細に示し説明してきたが、当業者ならば、この教示に依然として立脚する他の種々の形態を、数多く容易に考案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による湿式の化学現像工程を示す概略図である。
【図2】図1に詳細に示された湿式の化学現像工程において使用される工程ステップを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0037】
10 カラー・フィルム
15 ローラ
20 第1の現像タンク
25 停止タンク
30 第1の洗浄タンク
35 第1の定着液タンク
40 第2の洗浄タンク
45 漂白促進液タンク
50 過硫酸塩漂白液タンク
55 第3の洗浄タンク
60 サウンド・トラック・アプリケータ・タンク
63 第4の洗浄タンク
65 第2の現像液タンク
70 第2の定着液タンク
75 第2の定着液洗浄タンク
80 最終すすぎタンク
85 ドライボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の組成物の中でカラー・フィルムを現像することを含む、カラー・フィルムを処理する方法であって、該第2の組成物が、緩衝剤と、酸化防止剤と、保恒剤と、水酸化物と、ヒドロキノン及びアスコルビン酸からなるグループから選択された現像剤とを含む水性組成物であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記緩衝剤が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化防止剤と前記保恒剤とが同じ材料を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム及び亜硫酸アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記保恒剤が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム及び亜硫酸アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記現像剤が、約3.5%(重量/体積)から約5.5%(重量/体積)までの量で存在していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
サウンド・トラックの現像後にカラー・フィルムを処理する水性組成物であって、緩衝剤と、酸化防止剤と、保恒剤と、水酸化物と、ヒドロキノン及びアスコルビン酸からなるグループから選択された現像剤とを含んでいることを特徴とする水性組成物。
【請求項9】
前記緩衝剤が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項8に記載の水性組成物。
【請求項10】
前記酸化防止剤と前記保恒剤とが同じ材料を含んでいることを特徴とする請求項8に記載の水性組成物。
【請求項11】
前記酸化防止剤が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム及び亜硫酸アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項8に記載の水性組成物。
【請求項12】
前記保恒剤が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム及び亜硫酸アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項8に記載の水性組成物。
【請求項13】
前記水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項8に記載の水性組成物。
【請求項14】
前記現像剤が、約3.5%(重量/体積)から約5.5%(重量/体積)までの量で存在していることを特徴とする請求項8に記載の水性組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−545162(P2008−545162A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519314(P2008−519314)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/021623
【国際公開番号】WO2007/005169
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】