説明

カラー受像管装置

【課題】一対の水平偏向コイルの引き回し線が接続されるプラス端子及びマイナス端子を偏向ヨークに対して上側又は下側に配置されたカラー受像管装置において、上下一対の水平偏向コイル間でのインダクタンス差により生じるXVミスコンバーゼンスを安価に低減する。
【解決手段】偏向ヨークの一対の水平偏向コイル41,42に水平偏向電流を供給するプラス端子H+及びマイナス端子H−は偏向ヨークに対して上側及び下側のいずれか一方の側にのみ配置されている。一対の水平偏向コイルのうち、プラス端子及びマイナス端子から遠い方の水平偏向コイルのプラス端子に接続された第1引き回し線とマイナス端子に接続された第2引き回し線とは、管軸に沿って見たとき3電子ビームに対して右側及び左側のうちのいずれか一方側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラー受像管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にカラー受像管装置は、内面に蛍光面が形成されたパネルと、パネルに接合されたファンネルと、ファンネルのネック部内に内装され、同一水平面上に一列配置された3電子ビームを蛍光面に向かって放射する電子銃と、蛍光面に対向し、3電子ビームが通過する多数の開孔が形成されたシャドウマスクと、電子銃から放射された3電子ビームを水平方向及び垂直方向に偏向する偏向ヨークとを備える。
【0003】
3電子ビームは、シャドウマスクの開孔を通過した後、蛍光面上の赤,緑,青にそれぞれ発光する蛍光体にそれぞれ衝突する。赤(R),緑(G),青(B)の各蛍光体に衝突する電子ビームを、蛍光体の色に対応させてRビーム,Gビーム,Bビームと称する。同一水平面上に一列配置された3電子ビームを放射するインライン型カラー受像管装置では、通常、Gビームが中央に配置され、これを挟んでRビームとBビームが配置されている。セルフコンバージェンス方式のカラー受像管装置では、3電子ビームを画面上で一致させる為に、偏向ヨークが、ピンクッション形の水平偏向磁界とバレル形の垂直偏向磁界とを形成することは周知である。
【0004】
図4は、従来のカラー受像管装置において、偏向ヨークを構成する上下一対の水平偏向コイルの引き回し線の配置を管軸に沿って蛍光面側から見た図である。図4において、B,G,Rは順にBビーム,Gビーム,Rビームを示す。管軸を含む水平方向面を挟むように上下一対の水平偏向コイル41,42が配置されている。一対の水平偏向コイル41,42に水平偏向電流を供給するためのプラス端子H+及びマイナス端子H−からなる一対の水平端子が設けられた端子板49が偏向ヨークに対して上側に配置されている。上側水平偏向コイル41の一方の引き回し線43aは上方に引き出されてプラス端子H+に接続され、他方の引き回し線43bは上方に引き出されてマイナス端子H−に接続されている。下側水平偏向コイル42の一方の引き回し線44aは3電子ビームに対して左側に引き回されて上方に引き出されてプラス端子H+に接続され、他方の引き回し線44bは3電子ビームに対して右側に引き回されて上方に引き出されてマイナス端子H−に接続されている。
【0005】
このように、下側水平偏向コイル42の一対の引き回し線44a,44bが上側水平偏向コイル41及び3電子ビームを水平方向に挟んで配置されると、下側水平偏向コイル42の引き回し線44a,44bが全体として3電子ビームを囲むループ形状を形成する。従って、上側水平偏向コイル41と下側水平偏向コイル42とが同じインダクタンスを有するように巻線が巻回されていても、プラス端子H+及びマイナス端子H−間においては、下側水平偏向コイル42のインダクタンスLHbが変化し、上側水平偏向コイル41のインダクタンスLHaよりも大きくなってしまう。
【0006】
この状態で水平偏向電流が流れると、一対の水平偏向コイル41,42は、図5に示すように管軸を含む水平方向面に対して下側が上側に比べてピンクッション状歪みが大きな水平偏向磁界を発生する。このため、X軸上の画面周辺に偏向される3電子ビームは、この水平偏向磁界によって、水平方向のローレンツ力に加えて、垂直方向のローレンツ力を受ける。しかも、3電子ビームの水平方向位置が異なることにより、3電子ビームがそれぞれ受ける垂直方向のローレンツ力は互いに異なる。従って、図6に示すように、画面の左側ではBビームに対しRビームが下側になり、画面右側ではBビームに対しRビームが上側になり、水平方向の青のラスタBと水平方向の赤のラスタRとが交差する、XVと呼ばれるミスコンバーゼンスが発生する。同様の理由により、画面上下においてもXVミスコンバーゼンスが発生する。
【0007】
このようなXVミスコンバーゼンスが発生している状態では、良好な画像特性を有しているといえない。従来は、一般に、水平偏向コイルに差動コイルを接続して、見かけ上、上側水平偏向コイル41のインダクタンスLHaと下側水平偏向コイル42のインダクタンスLHbとを一致させることにより、XVミスコンバーゼンスを補正している。しかしながら、この補正方法は、差動コイルを追加するため、偏向ヨークのコストアップを招くという問題を有している。
【0008】
また、特許文献1には、一対の水平偏向コイルの引き回し線が接続される一対の水平端子が設けられる端子板を、偏向ヨークの側方(管軸と直交する水平軸上)に設けることが記載されている。しかしながら、この場合、一対の垂直偏向コイルの引き回し線が接続されるプラス端子及びマイナス端子からなる一対の垂直端子が設けられる端子板は、偏向ヨークに対して上側又は下側に設けられるから、複数の端子板を偏向ヨークに設けることになり、コストアップを招く。もし、一対の水平端子が設けられる端子板に、一対の垂直端子を設ければ、端子板の数を1枚とすることができるのでコストアップの問題は生じないが、コンバーゼンスを補正するための各素子も側方(管軸と直交する水平軸上)に設けることになり、作業性が悪化する。
【特許文献1】特開平10−125259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の従来の問題を解決し、一対の水平偏向コイルの引き回し線が接続されるプラス端子及びマイナス端子を偏向ヨークに対して上側又は下側に配置されたカラー受像管装置において、上下一対の水平偏向コイル間でのインダクタンス差により生じるXVミスコンバーゼンスを安価に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のカラー受像管装置は、内面に蛍光面が形成されたパネルと、前記パネルに接合されたファンネルと、前記ファンネルのネック部内に内装され、同一水平面上に一列配置された3電子ビームを前記蛍光面に向かって放射する電子銃と、前記蛍光面に対向し、前記3電子ビームが通過する多数の開孔が形成されたシャドウマスクと、前記電子銃から放射された前記3電子ビームを水平方向及び垂直方向に偏向する偏向ヨークとを備える。
【0011】
前記偏向ヨークは、前記3電子ビームを水平方向に偏向する上下一対の水平偏向コイルと、前記一対の水平偏向コイルに水平偏向電流を供給するプラス端子及びマイナス端子とを備える。前記プラス端子及び前記マイナス端子は前記偏向ヨークに対して上側及び下側のいずれか一方の側にのみ配置されている。
【0012】
前記一対の水平偏向コイルのうち、前記プラス端子及び前記マイナス端子から遠い方の水平偏向コイルの前記プラス端子に接続された第1引き回し線と前記マイナス端子に接続された第2引き回し線とは、管軸に沿って見たとき前記3電子ビームに対して右側及び左側のうちのいずれか一方側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上下一対の水平偏向コイル間でのインダクタンス差が生じない。従って、一対の水平偏向コイルは管軸を含む水平方向面に対して対称なピンクッション状の水平偏向磁界を形成する。その結果、XVミスコンバーゼンスが生じず、良好なコンバーゼンス特性を得ることが出来る。
【0014】
また、上下一対の水平偏向コイル間でのインダクタンス差が生じないので、XVミスコンバーゼンスを補正するために差動コイルは不要である。従って、安価な偏向ヨーク及びカラー受像管装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るカラー受像管装置を示した一部切り欠き側面図である。図示したように、カラー受像管装置の管軸をZ軸、Z軸と直交する水平方向軸をX軸、X軸及びZ軸と直交する垂直方向軸をY軸とする。
【0017】
内面に蛍光面4が形成されたパネル2と、ファンネル3とが接合されて外囲器1が形成されている。ファンネル3のネック部3a内には電子銃5が内装されている。電子銃5は、同一水平面上に一列配置された3電子ビーム6B,6G,6Rを蛍光面4に向かって放射する。蛍光面4に対向するシャドウマスク7と、シャドウマスク7を支持する矩形枠状のフレーム8とからなるシャドウマスク構体9がパネル2の内壁面に保持されている。シャドウマスク7には、3電子ビーム6B,6G,6Rが通過する多数の開孔(電子ビーム通過孔)が形成されている。以上のように構成されたカラー受像管10と偏向ヨーク20とCPU(Convergence and Purity Unit)30とでカラー受像管装置が構成される。偏向ヨーク20は、電子銃から放射された3電子ビーム6B,6G,6Rを水平方向に偏向する上下一対の水平偏向コイルと、垂直方向に偏向する左右一対の垂直偏向コイルとを備える。CPU30は、蛍光面4の中央における色純度を調整するための2極マグネットリング31と、色ずれ(コンバーゼンス)を調整するための4極マグネットリング32及び6極マグネットリング33とを備える。なお、偏向ヨーク20とCPU30の全部又は一部とが一体に構成される場合もある。
【0018】
図2は、偏向ヨーク20を構成する上下一対の水平偏向コイル41,42の引き回し線の配置をZ軸に沿って蛍光面側から見た図である。図2において、B,G,Rは順にBビーム,Gビーム,Rビームを示す。図4に示した従来の偏向ヨークと同様に、Z軸を含む水平方向面を挟むように上下一対の水平偏向コイル41,42が配置されている。一対の水平偏向コイル41,42に水平偏向電流を供給するためのプラス端子H+及びマイナス端子H−からなる一対の水平端子が設けられた端子板49が偏向ヨークに対して上側に配置されている。
【0019】
従来の偏向ヨークと同様に、上側水平偏向コイル41の一方の引き回し線43aは上方に引き出されてプラス端子H+に接続され、他方の引き回し線43bは上方に引き出されてマイナス端子H−に接続されている。従来の偏向ヨークと同様に、下側水平偏向コイル42の一方の引き回し線44aは3電子ビームに対して左側に引き回されて上方に引き出されてプラス端子H+に接続されいる。但し、本実施形態では、従来の偏向ヨークと異なり、他方の引き回し線44bは3電子ビームに対して左側に引き回されて上方に引き出されてマイナス端子H−に接続されている。即ち、下側水平偏向コイル42の一対の引き回し線44a,44bは、Z軸に沿って見たとき3電子ビームに対して左側に配置され、時計回り方向に引き回されている。Z軸方向には、引き回し線43a,43b,44a,44bはいずれも水平偏向コイル41,42の蛍光面側(大径側)より引き出され、偏向ヨークの蛍光面側端縁近傍を引き回されている。
【0020】
端子板49から遠い下側水平偏向コイル42の引き回し線44a,44bが、図4に示した従来の偏向ヨークでは3電子ビームを囲むループ形状を形成していたのに対して、本実施形態の偏向ヨークではこのようなループ形状を形成していない。従って、上側水平偏向コイル41と下側水平偏向コイル42とが同じインダクタンスを有するように巻線が巻回されていれば、プラス端子H+及びマイナス端子H−間においては、下側水平偏向コイル42のインダクタンスLHbは、上側水平偏向コイル41のインダクタンスLHaと同じになる。
【0021】
このため、水平偏向電流が流れると、一対の垂直偏向コイル41,42は、図3に示すようにZ軸を含む水平方向面に対して上下対称のピンクッション状の水平偏向磁界を発生する。従って、X軸上の画面周辺に偏向される3電子ビームは、水平方向のローレンツ力のみを受け、垂直方向のローレンツ力は受けない。よって、図6に示したXVミスコンバーゼンスの発生を防止できる。同様の理由により、画面上下においてもXVミスコンバーゼンスの発生を防止できる。
【0022】
本発明を画面対角サイズが32インチのカラー受像管装置に適用した実施例を示す。偏向ヨークに対して上側に配置した端子板49に設けたプラス端子H+及びマイナス端子H−に上下一対の水平偏向コイル41,42の引き回し線43a,43b,44a,44bを図2に示すように引き回して接続した。所定の水平偏向電流を流してインダクタンスを測定したところ、上側水平偏向コイル41のインダクタンスLHaは475mH、下側水平偏向コイル42のLHbは475mHであり、上下の水平偏向コイル間でインダクタンス差は発生していなかった。この偏向ヨークをカラー受像管に搭載して画面上のミスコンバーゼンス特性を評価したところ、XVミスコンバーゼンスは発生しなかった。
【0023】
比較例として、上下一対の水平偏向コイル41,42の引き回し線43a,43b,44a,44bを図4に示すように引き回して接続する以外は上記実施例と同様にして偏向ヨークを作成した。所定の水平偏向電流を流してインダクタンスを測定したところ、上側水平偏向コイル41のインダクタンスLHaは475mH、下側水平偏向コイル42のLHbは482mHであり、上下の水平偏向コイル間で7mHのインダクタンス差が発生していた。この偏向ヨークをカラー受像管に搭載して画面上のミスコンバーゼンス特性を評価したところ、このインダクタンス差に起因して0.32mmのXVミスコンバーゼンスが発生していた。
【0024】
図2では、下側水平偏向コイル42の一対の引き回し線44a,44bは、Z軸に沿って見たとき3電子ビームに対して左側に配置され、時計回り方向に引き回されてプラス端子H+及びマイナス端子H−に接続されているが、3電子ビームに対して右側に配置され、反時計回り方向に引き回されてプラス端子H+及びマイナス端子H−に接続されていても良い。
【0025】
また、図2では、端子板49は偏向ヨークに対して上側に配置されているが、偏向ヨークに対して下側に配置しても良い。この場合、上下一対の水平偏向コイル41,42のうち、端子板49から遠い上側水平偏向コイル41の一対の引き回し線43a,43bを、Z軸に沿って見たとき3電子ビームに対して右側又は左側に配置して、時計回り方向又は反時計回り方向に引き回してプラス端子H+及びマイナス端子H−に接続すれば良い。
【0026】
また、上記の実施形態では、Z軸方向には、引き回し線43a,43b,44a,44bはいずれも水平偏向コイル41,42の蛍光面側(大径側)より引き出され、偏向ヨークの蛍光面側端縁近傍を引き回されていたが、水平偏向コイル41,42の電子銃側(小径側)より引き出され、偏向ヨークの電子銃側端縁近傍を引き回されていても良い。
【0027】
上記の説明において使用した「プラス端子」及び「マイナス端子」との名称は、一対の端子を単に区別するために用いており、端子に印加される電圧の極性を意味するものではない。周知のように、一対の水平偏向コイル及び一対の垂直偏向コイルには、一対の端子を通じて交番電圧がそれぞれ印加される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の利用分野は特に制限はなく、安価で且つコンバーゼンス特性が良好なインライン型カラー受像管装置として広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るカラー受像管装置を示した一部切り欠き側面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るカラー受像管装置において、偏向ヨークを構成する上下一対の水平偏向コイルの引き回し線の配置を示した図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るカラー受像管装置において形成される、管軸を含む水平方向面に対して対称のピンクッション状歪みを有する水平偏向磁界の磁力線を示した図である。
【図4】図4は、従来のカラー受像管装置において、偏向ヨークを構成する上下一対の水平偏向コイルの引き回し線の配置を示した図である。
【図5】図5は、従来のカラー受像管装置において形成される、管軸を含む水平方向面に対して下側が上側に比べてピンクッション状歪みが大きな水平偏向磁界の磁力線を示した図である。
【図6】図6は、画面上において現れるXVと呼ばれるミスコンバーゼンスを示した図である。
【符号の説明】
【0030】
1 外囲器
2 パネル
3 ファンネル
3a ネック部
4 蛍光面
5 電子銃
6B,6G,6R 電子ビーム
7 シャドウマスク
8 フレーム
9 シャドウマスク構体
10 カラー受像管
20 偏向ヨーク
30 CPU
31 2極マグネットリング
32 4極マグネットリング
33 6極マグネットリング
41 上側水平偏向コイル
42 下側水平偏向コイル
43a,43b 上側水平偏向コイルの引き回し線
44a,44b 下側水平偏向コイルの引き回し線
49 端子板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に蛍光面が形成されたパネルと、前記パネルに接合されたファンネルと、前記ファンネルのネック部内に内装され、同一水平面上に一列配置された3電子ビームを前記蛍光面に向かって放射する電子銃と、前記蛍光面に対向し、前記3電子ビームが通過する多数の開孔が形成されたシャドウマスクと、前記電子銃から放射された前記3電子ビームを水平方向及び垂直方向に偏向する偏向ヨークとを備えたカラー受像管装置であって、
前記偏向ヨークは、前記3電子ビームを水平方向に偏向する上下一対の水平偏向コイルと、前記一対の水平偏向コイルに水平偏向電流を供給するプラス端子及びマイナス端子とを備え、
前記プラス端子及び前記マイナス端子は前記偏向ヨークに対して上側及び下側のいずれか一方の側にのみ配置されており、
前記一対の水平偏向コイルのうち、前記プラス端子及び前記マイナス端子から遠い方の水平偏向コイルの前記プラス端子に接続された第1引き回し線と前記マイナス端子に接続された第2引き回し線とは、管軸に沿って見たとき前記3電子ビームに対して右側及び左側のうちのいずれか一方側に配置されていることを特徴とするカラー受像管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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