カラー表示装置
【課題】色順次駆動方式のカラー投射表示装置において、プレゼンターの行う動作や観察者の眼球運動に起因するカラーブレイクアップの知覚が生じないようにする。
【解決手段】回転カラーフィルタ12の三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)が、180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ18によって回転数が制御されると共に、電気光学装置14での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定する。
【解決手段】回転カラーフィルタ12の三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)が、180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ18によって回転数が制御されると共に、電気光学装置14での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割駆動されてカラー画像生成を行なうカラー表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー表示装置として、単一ドット内で時間差混色、すなわち時分割駆動方式による加法混色でカラー表示を行うものが注目されている。このようなカラー表示装置では、1画素が1絵素となるため、並置混色を行うカラー表示装置に比較して3倍の解像度が得られるという利点がある。このような時分割駆動方式のカラー表示装置の一つに、白色光源からの光を回転するカラーフィルタ円盤を通して生成したR(赤)、G(緑)、B(青)の色光を、時間順次にデジタルマイクロミラーデバイス(DMD:例えばテキサスインスツルメント社が開発したようなデバイス)アレイ上に照射し、このDMDアレイで変調・反射された色光をスクリーン上に投影させてカラー画像を表示するDMDプロジェクタが知られている。またこの他に、白黒表示を行なう液晶パネルの後方にR、G、Bの色光を発生させるカラー光源が配置されてなるカラー液晶表示装置などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した時分割駆動されるDMDプロジェクタやカラー液晶表示装置などのカラー表示装置では、鑑賞者の目が、例えばスクリーンやディスプレイを横切る対象画像を追いかけるときに、鑑賞者が色分離を知覚してしまうという問題点を有している。このため、鑑賞画像に色ずれが発生して表示品質が低下するという問題がある。
【0004】
さらに、時分割駆動される投写型表示装置(すなわち、DMDプロジェクタや液晶プロジェクタ)の場合には、スクリーンの前に位置するプレゼンテータの行なう動作、例えば、指示棒や指でスクリーン上を指し示したりスクリーンの前を横切ったりする動作に起因して観察者が色分離を知覚してしまうという問題点がある。このため、観察画像に色ずれが発生して表示品質の低下や、観察者が疲労感を覚えるなどの問題がある。なお、同様の色ずれの知覚は、内視鏡などの撮像装置でも発生することが報告されている。
【0005】
一般に、時分割駆動方式のカラー表示装置で生成される画像を見る際には、随意的または不随意的に生じる眼球運動によって網膜上へ物理的にR(赤)、G(緑)、B(青)色光のカラーバンドが形成され、これに起因して心理的に色分離が知覚される現象(以下、カラーブレイクアップという)が起こることが知られている。
【0006】
ここで、人の眼球運動に起因して発生するカラーブレイクアップについて説明する。図12は、三色光を時間順次(以下、色順次という)で駆動することによって生成されたRGB原画像を見る際に、随意的または不随意的に生じる眼球運動によって網膜上に物理的にRGB色光のカラーバンドが形成されるメカニズムを示している。時分割駆動されるカラー表示装置では、RGB各色光とそれに対応した画像とを同期信号処理して、空間的に位相ずれのないR画像、G画像、B画像を生成している。人は、このRGBの各色画像を高次の視覚中枢で時間積分的に加法混色して原画像に等価なカラー画像として認識する。しかしながら、実際の画像鑑賞中において、人は無意識または意識的にまばたきや視線移動を行なう。そのとき、色順次駆動によって時間積分的に生成されるRGBの各画像は、眼球運動による空間的な影響を受けて、図12に示すように網膜上に物理的にRGBのカラーバンドが形成され、これに起因して高次の視覚中枢でカラーブレイクアップとして知覚される。
【0007】
次に、図13を用いて色順次駆動により網膜上に生成されるカラー画像の理想モデル(時間積分型加法混色)と実際モデル(時空間積分型加法混色)とを比較して説明する。同図中、縦軸は時間、横軸は空間を示している。なお、同図は、3コマ画像を示したものであるが、色順次駆動によるカラー画像では、フレーム周波数によって一意的に決定される時間差で網膜上に生成されるR画像、G画像、B画像を高次の視覚中枢でカラー合成するシステムである。したがって、同図中の左側に示すように1コマを形成するR画像、G画像、B画像(例えば、AR画像、AG画像、AB画像)がフレーム周波数によって一意的に決まる時間差で網膜上に生成されるが、これは空間的なずれが生じないことを理想としている。しかしながら、実際には眼球運動が関与することにより、同図中の右側に示すように1コマを形成するR画像、G画像、B画像(例えば、AR’画像、AG’画像、AB’画像)がフレーム周波数によって一意的に決まる時間差と眼球運動速度によって一意的に決まる空間的な位置ずれが同時に網膜上に生じてしまう。この現象は、眼球運動が発生したときのみ生じるものであり、眼球が静止している状態、あるいは相対的な静止状態(例えば、ハエの動きを目で追っている状態)では生じない。また、これは眼球運動の方向によって発生状況が異なる(例えば、図13の右側の1番目のコマであるAR’画像、AG’画像、AB’画像と、3番目のコマであるCR’画像、CG’画像、CB’画像は発生方向が逆向きとなる)。
【0008】
このように、時分割駆動方式(色順次駆動方式)のカラー表示装置では、時間積分型加法混色を前提として色生成することを基本とするが、眼球運動がこの前提を覆すことにより、基本(理想)が成立しなくなり、上記した心理的なカラーブレイクアップの知覚問題が生じている。図14は、このような色順次駆動方式と視覚系との組合せによるカラー画像生成モデルを示す説明図である。同図から判るように、色順次駆動方式によるカラー画像生成においては、ヒューマンファクタ1の眼球運動とヒューマンファクタ2の心理的なカラーブレイクアップ知覚とを考慮してカラー表示装置を開発する必要がある。特に、投写型表示装置では、このようなヒューマンファクタ考慮した上で、スクリーンの前に立ってプレゼンテーションするプレゼンテータの行なう動作などに起因して知覚されるカラーブレイクアップの発生を抑制することが課題となる。
【0009】
このようなカラーブレイクアップは、フレーム周波数を2000Hz〜3000Hz程度に高くして三色光の時間差を縮めてカラーバンドの幅を物理的に狭くすることにより、知覚されないようにできることが判っているが、現状で120Hz程度のフレーム周波数であるのに対して、2000Hz〜3000Hzのような高フレーム周波数での画像生成駆動や色生成駆動は現実的に困難である。
【0010】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、その目的は、プレゼンテータの行なう動作に起因するカラーブレイクアップの知覚や、眼球運動に起因するカラーブレイクアップの知覚が生じない、時分割駆動方式のカラー表示装置およびカラー表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカラー表示装置は、時間順次で複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する色光生成部と、該複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光を処理する画像生成部と、を備え、該所定の周波数は180Hz以上であり、そのことによって上記目的を達成する。
【0012】
好ましくは、前記所定の周波数は250Hz以上である。
【0013】
さらに好ましくは、前記所定の周波数は300Hz以上である。
【0014】
ある実施の形態では、前記色光生成部は、光源と、該光源からの光から前記複数の色光を生成するカラーフィルタとを有する。
【0015】
他の実施の形態では、前記色光生成部は、互いに異なる色光を発光する複数の光源を有し、該複数の光源は時間順次で点灯する。
【0016】
ある実施の形態では、前記画像生成部は反射型の電気光学装置である、請求項1〜5のいずれかに記載のカラー表示装置。
【0017】
さらに他の実施の形態では、前記電気光学装置は液晶装置である。
【0018】
さらに他の実施の形態では、前記電気光学装置はデジタルマイクロミラーデバイスである。
【0019】
さらに他の実施の形態では、前記画像生成部は透過型電気光学装置を有している。
【0020】
さらに他の実施の形態では、前記カラー表示装置が前記画像を投写するレンズをさらに有している。
【0021】
本発明のカラー表示方法は、時間順次で複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する色光生成ステップと、該複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光を処理する画像生成ステップと、を含み、該所定の周波数は180Hz以上であり、そのことによって上記目的を達成する。
【0022】
好ましくは、前記所定の周波数は250Hz以上である。
【0023】
さらに好ましくは、前記所定の周波数は300Hz以上である。
【0024】
本発明によれば、視覚系色識別が低くなる色光の繰り返し周波数域に設定したことにより、例えば、スクリーンの前に立ってプレゼンテーションするプレゼンテータやスクリーン前の物体の動作などに起因するカラーブレイクアップが、観察者に知覚されることを抑制または防止することができる。さらに、観察者の眼球運動に起因するカラーブレイクアップが観察者に知覚されることをも防止できる。しかも、時分割駆動方式のカラー表示装置の色光生成の繰り返し周波数を大幅に高めずに実用域の繰り返し周波数で駆動することが可能になる。このため、本発明によれば、スクリーン上の表示画像を見る人が画像に違和感を覚えることがなくなり、観察画像の品位を向上して画像観察に伴う疲労感を低減させるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のカラー表示装置およびカラー表示方法の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明に係るカラー表示装置およびカラー表示装置の駆動方法の実施形態1を示している。同図に示すように、本実施形態のカラー表示装置10は、赤色光、青色光、緑色光の各スペクトルを含んで発光して白色光を出射する光源11と、この光源11の前方に配置されて赤色、青色及び緑色の色要素の領域を有する回転カラーフィルタ12と、回転カラーフィルタ12の前方に配置される集光レンズ13と、集光レンズ13を介して入射する色光の色に対応した色画像を生成する電気光学装置14と、電気光学装置14で反射・変調された光を受けて投写を行なう投写レンズ15とを備えたカラー表示装置であり、投写レンズ15から画像生成色光がスクリーン16に投写されて画像が表示される。光源11には図示されるように光源光を反射するリフレクタ11aも備えられている。
【0026】
スクリーン16に投写される画像を見る観察者は、カラー表示装置がフロント投写型であればスクリーン16の前面に位置し、カラー表示装置がリア投写型であればスクリーン16の背面に位置して、投写された画像を見ることになる。カラー表示装置を用いたプレゼンテーションにおいては、プレゼンテータ(人)は観察者から見てスクリーン16の手前に立ち、指や指棒などの物体を用いて、投写表示画面を指しながら説明をすることになる。従って、観察者からすると、スクリーン16前のプレゼンテータや物体の動作が表示画面を遮って行われることになる。従来では、この動作によりカラーブレイクアップ現象が発生してしまっていた。
【0027】
本発明の効果の1つは、このような従来のカラーブレイクアップの知覚問題を解消することであり、そのための詳細な構成について、以下に説明する。
【0028】
上記の電気光学装置14としては、DMDアレイや、反射型液晶ライトバルブとしての、強誘電液晶パネル、反強誘電液晶パネル、πセルモードの液晶パネル、TN液晶セルのセルキャップを狭く設定した液晶パネル、OCBモードの液晶パネルなど、高速応答性を有する各種の変調装置を適用することができる。
【0029】
また、このようなカラー表示装置10は、主に、マイクロプロセッサ17と、タイミングジェネレータ18と、フレームメモリ19と、駆動制御回路20と、で構成される駆動回路21を備えている。このカラー表示装置10では、タイミングジェネレータ18で回転カラーフィルタ12の回転駆動と反射型電気光学装置14の駆動タイミングを同期させて制御する。まず、画像信号を図示しないサンプリング回路でサンプリングさせる。そして、画像入力信号中の同期信号が、マイクロプロセッサ17およびタイミングジェネレータ18に送られる。それと同時に、画像信号中の画像データが、タイミングジェネレータ18によって制御されたタイミングでフレームメモリ19に書き込まれるようになっている。光源11から出射される白色光は、タイミングジェネレータ18により電気光学装置14の駆動タイミングに同期して回転する三色の回転カラーフィルタ12を透過することによって、光源光から赤色光、青色光、緑色光を順次分光・透過させて色光が生成され、集光レンズ13を介して反射型電気光学装置14に照射されるようになっている。このように照射されたそれぞれの色光は、電気光学装置14により光変調が施され投写レンズ15により拡大投写されて、スクリーン16に結像されてカラー画像表示を行なう。
【0030】
例えば、光源11からの光が回転カラーフィルタ12の赤色領域を透過するタイミングに同期させるように、タイミングジェネレータ18からは供給される読み出しタイミング信号に応じてフレームメモリ19から、これよりも前の駆動周期において予め記憶させた赤色成分の画像データが順次読み出され、その画像データを受ける駆動制御回路20は赤色成分用の画像データに応じて電気光学装置14の各画素を駆動する。タイミングジェネレータ18は、マイクロプロセッサ17の制御を受けて各構成要素のタイミングを同期させるようにタイミング制御するものである。電気光学装置14は先に述べたようにDMDや液晶パネルからなる変調素子であって、反射ミラーや反射電極を備えた画素がマトリクス状に配置されており、各画素毎に赤色光を反射し、この反射に伴って変調がなされ、赤色光の画像が生成されている。従って、画素毎に光強度の変調された赤色光は投写レンズ15に入射されスクリーン16に赤色光の画像が投写表示される。
【0031】
次に、回転カラーフィルタ12の青色領域を光源光が透過するタイミングでは、赤色光の場合と同様に、フレームメモリ19から青色光用の画像データが読み出され、それに応じて電気光学装置14の各画素がその画像データに応じて駆動され、青色光を変調して、スクリーン16に青色光の画像が投写表示される。次に、回転カラーフィルタ12の緑色領域を光源光が透過するタイミングでも、同様である。このように、三色の色光の画像が電気光学装置14で順次生成されて、これをサイクリックに繰り返すことにより、カラー画像が表示されることになる。なお、色光生成の順序は本実形態に限定されず、いかなる順序でも構わない。
【0032】
ここで、電気光学装置14がDMDである場合には、DMDは各画素毎に画像データに応じて反射ミラーの傾き角度を変更させて投写レンズ15に入射する光量を変調する。より具体的には、反射ミラーにより反射される光を投写レンズ15に向ける時間幅と反射される光をアブソーバに吸収させる時間幅とを画像データに応じてパルス幅変調(PWM)し、各画素毎に色光の強度を変調できるようにしている。なお、DMDの場合は、フレームメモリ19をSRAMとして電気光学装置内に内蔵することができ、各画素毎に画素メモリを有しそのメモリ内容に応じて各画素の反射ミラーを各画素毎に内蔵される駆動制御回路20により角度変更駆動させることができる。もっとも、これらのメモリや駆動制御回路は反射ミラーの下方に配置される。
【0033】
また電気光学装置14が液晶パネルである場合には、一対の基板間に先に例示した液晶を挟持して、反射側の基板には画素毎に画素電極を有し、この画素電極から液晶層に印加する実効電圧を画像データに応じて変化させることにより、液晶層での液晶分子の配列の変化に応じて入射光の偏光面や散乱度を変化させて反射・出射する。偏光面を変化させる場合は、入射光を偏光素子を介して入射し、反射光を偏光素子を介して投写レンズ15に導いて、光強度を画素毎に変調する。光散乱の変化の場合(液晶が高分子分散型などの場合)は、DMDと同様に投写レンズ15の手前にスリットを設けてこれを通過させることにより、光強度を画素毎に変調する。液晶パネルの場合であっても、DMDと同様に、反射型画素電極の下方に画素毎にメモリ(フレームメモリ19)とそのメモリ内容に応じて画素電極に電圧印加する駆動制御回路20とを内蔵することができる。
【0034】
なお、本実施形態のカラー表示装置10は、電気光学装置14として反射型電気光学装置を有しているが、液晶装置(液晶パネル)を用いる場合には、電気光学装置14として透過型液晶パネルを含んだ透過型電気光学装置を有していてもよい。
【0035】
このような本実施形態においては、回転カラーフィルタ12の三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)は、180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ18によって回転数が制御されると共に、電気光学装置14での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定されている。
【0036】
本実施の形態では、180Hz以上のフレーム周波数で色順次駆動を行うことにより、観察者がスクリーン16を見ている際に、スクリーン16の前に立ってプレゼンテーションするプレゼンテータ自体やその指やプレゼンテータにより動かされる指棒など物体の動作に起因する眼球運動が発生しても、カラーブレイクアップが知覚されることを軽減または消退させることができる。250Hz以上のフレーム周波数で色順次駆動を行う場合には、プレゼンテータの動きに伴う上記カラーブレイクアップの知覚の防止だけでなく、観察者の高速な眼球運動(後述)に起因するカラーブレイクアップが知覚されることをも軽減または消退させることができる。この場合には、観察者の知覚の個人差を考慮すると、300Hz以上のフレーム周波数で色順次駆動を行うことがさらに好ましい。
【0037】
ここで、本実施形態のようにカラーブレイクアップの知覚を低減または消退させる理由をフレーム周波数と視覚系色空間周波数との関係に基づいて説明する。
【0038】
まず、図2を用いて視覚系色空間周波数とコントラスト(相対感度)との関係を説明する。同図は、1977年「テレビジョン」第31巻第1号第31頁に記載された公知データである。同図のグラフの横軸は色空間周波数であり、cycle/degree(cpd)で表される。この色空間周波数の単位(cpd)は、視角1度中の正弦波の数を示すものであり、視角1度の中に1サイクルの正弦波があれば1cpdで、視覚1度の中に5サイクルの正弦波があれば5cpdという。また、このグラフの縦軸は、コントラスト感度を相対感度(dB)で表したものであり、明暗弁別や色弁別ができない限界値を求めている。図2に示すように、一般に人の視覚系では明るさ(明暗)に対する感度特性は空間周波数が低いときでも、あるいは高いときでもコントラスト感度特性は悪く、中間の4cpdあたりが明暗のコントラスト感度が最も高くなっている。なお、図示しないがこの迷暗に対するコントラスト感度特性のカットオフ周波数は60cpdである。一方、色に対する感度特性も同様に空間周波数が低いときでも、あるいは高いときでもコントラスト感度が悪く、中間の色度空間周波数である0.4cpdあたりが色のコントラスト感度が最も高くなっている。0.4cpdは、計算上フレーム周波数120Hzに相当する結果であり、ヒューマン特性を考慮した色順次駆動方式という観点からは最も悪い条件といえる(現状の投写型表示装置ではフレーム周波数が120Hzのものがあり、カラーブレイクアップが知覚され易い)。また、図示しないがこの色に対する感度特性のカットオフ周波数は4〜10cpdである。
【0039】
図2に示す公知データに基づいて、カラーブレイクアップを減少または消退させるためには、0.4cpdより高い色空間周波数を与える必要があることが解る。本発明者らは、好ましくは、この色空間周波数である0.4cpdより高い0.5cpd以上の色空間周波数を与えることで、観察者から見てスクリーン16の前に位置する人や物などの動きに起因して知覚されるカラーブレイクアップの発生を減少または消退できることを見いだした。さらに、好ましくは、0.4cpdの2倍である0.8cpd以上の色空間周波数を与えることで、上記カラーブレイクアップの知覚の防止だけでなく、高速の眼球運動に起因して知覚されるカラーブレイクアップの発生をも減少または消退できることを見いだした。
【0040】
フレーム周波数と色空間周波数(視覚系空間周波数)との間の変換は、下記の式(1)、(2)、(3)を用いて行なうことができる。
【0041】
Ft=(3*Ff )−1 (1 )
Cba=Rv*Ft (2 )
Vf=(3*Cba)−1 (3 )
なお、Ffはフレーム周波数(Hz)であり、カラー画像の1コマ(カラーの1画面)を生成するときの周波数である。Cbaは各色光によって形成されるカラーバンド視角(degree)であり、1色光のカラーバンド幅を視角で与えたものである。また、カラーバンドはRGB色光を用いた場合、Rバンド、Gバンド、Bバンドが網膜上に形成される。視角は、眼球の基準点(結点)と網膜上に形成される1色光のバンド幅によって一意的に決まる(視距離依存性なし)。Rvは眼球回旋運動速度(degree/second)であり、ある点から他の点へ視線移動するときの角速度である。この視線移動に伴う眼球内面の網膜上に投写されて像は同じ角速度(眼球回旋運動速度)で移動する。したがって、眼球回旋運動速度と網膜移動速度(レチナルベロシティ)は等価である。Vfは視覚系色空間周波数(cycle/degree)であり、視角1度の中にRGBのカラーバンドが何サイクル形成されるかを表したものである。例えば、視角1度の中にRGBのカラーバンドが1本ずつ形成されれば1サイクル/度(cpd)となり、5本ずつ形成されれば5cpdとなる。これは、一般に解像度を表す指標として用いられることが多く、バンド幅が細かくなるほど色弁別(色の識別弁別)、輝度弁別(明るさの濃淡弁別)は低下する。
【0042】
図3は上記した計算式(1)、(2)、(3)を用いて換算したフレーム周波数と視覚系の色空間周波数の関係を示すグラフである。なお、同図中(120、0.4)は色順次駆動方式を用いた投写型表示装置の現状レベルを示したものであり、(180、0.5)以上、好ましくは(250、0.6)以上、さらに好ましくは(300、0.8)以上は本実施形態のカラー表示装置10に用いるフレーム周波数レベルを示している。
【0043】
次に、図4および図5に示す実験装置を用いて、網膜移動速度(レチナルベロシティ)とフレーム周波数との関係を求める方法を説明する。
【0044】
図4に示す実験装置は、白色光を出射するための光源1と、光源光からRGB三色光を分光生成するためのRGB回転フィルタ2と、スクリーン3と、網膜移動速度を生成するためのチョッパブレード4と、から構成されている。この実験装置では、光源1から出射された白色光をRGB回転フィルタ2を通過させることによって継時的にR色光、G色光、B色光を順次生成し、これらの色光をスクリーン3に背面から入射する。そして、スクリーン3の前方に配置されたチョッパブレード4を回転させることによって時空間的なカラーバンドを生成する。観察者は一定の距離からスクリーン3上の所定の一点を固視し、網膜上にカラーバンドを結像させる。そして、心理的なカラーブレイクアップ知覚を主観評価によって判定する。なお、RGB回転フィルタ2の回転速度を可変にすることで任意のフレーム周波数を設定でき、スクリーン3の前に置いたチョッパブレード4の回転速度を可変にすることで任意の網膜移動速度を設定することができる。
【0045】
図5の実験装置は、図4の実験装置におけるRGB色光生成手段である光源1およびRGB回転フィルタ2を、R光源5R、G光源5G、B光源5B、赤色光選択反射層と青色光選択反射層をX字状に形成したダイクロイックプリズム6、およびR光源5R,B光源Bからの赤色光と青色光をプリズム6側に反射するミラー7からなる色順次駆動照明システムで置き換えた構成である。各光源5は順次点灯しダイクロイックプリズム6からは三色光が順次スクリーン3に背面から入射される。この実験装置では、R光源5R、G光源5G、B光源5Bの点灯のスイッチングを可変にすることで任意のフレーム周波数を設定することができる。他の構成、作用は図4に示す実験装置と同様である。なお、図4および図5の実験装置では、RGB、RBG、BGRなどの色の順番を変えた構成としてもよい。
【0046】
これらの実験装置を用いて2名の被検者に対して行なった結果から求めた網膜移動速度とフレーム周波数との関係を図6と図7に示す。図6は個々のデータを示すグラフであり、図7は個々のデータに基づいて平均と標準偏差を求めたグラフである。
【0047】
図6および図7から判るように、心理的なカラーブレイクアップ知覚は、大別して網膜移動速度が300deg/sec未満と300deg/sec以上とで異なった傾向(2相性)を示し、300deg/sec以上の方が急激なフレーム周波数の立ち上がりが認められる。眼球運動には、随従運動、断続性運動、輻輳開散運動、固視微動の4種類のものがある。随従運動は、飛んでいるハエを眼で追うような30〜35deg/sec程度の低速度の眼球運動である。一方、断続性運動は、間欠的な高速跳躍的運動であり、読書の際の視線移動などに見られる、随従運動の速度を越える対象物の移動速度を補完する眼球運動であり、300deg/sec以上の高速の眼球運動である。このことから、網膜移動速度300deg/secは断続性運動に相当するものであり、フレーム周波数としてはグラフ上で250Hz以上を確保すれば十分と解釈できるが、測定精度や被検者の個人差などを考慮すると300Hz以上を確保することがさらに好ましい。
【0048】
図8および図9は、上記した実験から得られた網膜移動速度とフレーム周波数の関係において、フレーム周波数を視覚系色弁別閾値に逆変換したものである。なお、視覚系色弁別閾値の一般的な定義はないが、ここでは実験において時空間的特性として知覚する心理的なカラーブレイクアップ閾値から求めたフレーム周波数を、単純に網膜上に広がる物理的なRGBカラーバンド幅に逆変換したものと定義する。
【0049】
図8および図9のグラフから推測されることは、網膜移動速度50〜200deg/sec、200〜300deg/sec、300deg/sec以上で視覚系色弁別閾値の特性の違いが認められる。これらのデータに関連すると考えられる眼球運動は、例えば飛んでるハエを眼で追うような30〜35deg/sec程度の低速度の随従運動と、距離を隔てて間欠的に突然出現する対象物を俊敏に捕らえたり、随従運動の速度を越える対象物の移動速度を補完する300deg/sec以上の高速の断続性運動と、の2種類である。なお、図8および図9に示したデータの独立変数(横軸)の眼球運動速度(網膜移動速度に等価)の中の200deg/sec以上かつ300deg/sec未満の眼球運動速度は一般に存在しない。しかし、200deg/sec以上かつ300deg/sec未満の眼球運動速度は、例えば投写型表示装置などを用いたプレゼンテーションでは、表示画面の観察者から見た状態のスクリーンの前でプレゼンテータやプレゼンテータが動かす物体が色々な動作をすることもあり、対象物が網膜上を移動する動きとして存在することが考えられる。このような範囲の眼球運動速度では、スクリーンを見る人の視覚系色感度が低くなっている。以上のことから、網膜移動速度が視覚系色弁別閾値の変化に影響を与えていることが推測される。
【0050】
本実施形態1に係るカラー表示装置では、上記したように、視覚系色感度が低くなる網膜移動速度の範囲(200deg/sec以上かつ300deg/sec)に着目して、この網膜移動速度の範囲に対応するフレーム周波数(色生成周波数)が図8および図9から180Hz以上としたことにより、スクリーンの前でプレゼンテータや物体が色々な動作を行っても心理的なカラーブレイクアップの知覚を軽減または消退させることができる。
【0051】
さらに、本実施形態1に係るカラー表示装置のフレーム周波数が、存在する眼球運動の最高速度を満足するフレーム周波数(色生成周波数)、すなわち250Hzより高い300Hzである場合には、上記カラーブレイクアップの知覚の防止だけでなく、色順次駆動方式で発生する心理的なカラーブレイクアップの知覚をも軽減または消退させることができる。
【0052】
本実施形態1のカラー表示装置10では、このようなカラーブレイクアップが知覚される現象の発生を抑制できるため、スクリーンにおいて品位の高いカラー表示を行なうことができる。このため、本実施形態1によれば、スクリーン16の画像を観察する際に、観察者が画像に違和感を受けることがなく、より疲労感の少ない、良好なカラー画像を表示することができる。また、本実施形態1のカラー表示装置10では、単一の電気光学装置(変調装置)14でカラー表示が行なえるため、すなわち単板式の投写型表示装置に応用できるため、プロジェクタの軽量化、低コスト化を実現することができる。
(実施形態2)
図10は本発明に係るカラー表示装置およびカラー表示方法の実施形態2を示している。本実施形態は、照明装置を備える直視型のカラー表示装置に本発明を適用したものである。この実施形態は、背面側から色順次で出射される三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)が250Hz以上、好ましくは300Hz以上になるよう制御され、画像生成部としての電気光学装置での色画像生成のタイミングが各色光の生成タイミングと一致するように設定されたものである。
【0053】
図10に示すように、本実施形態2のカラー表示装置100は、色切替え式バックライトを用いた照明光源101と、電気光学装置102と、これら色切替え式バックライト照明光源101および電気光学装置102とを駆動・制御する駆動回路103と、を備えてなる。図10では、照明装置をバックライト方式としたので、透過型電気光学装置としており、例えば透過型液晶表示装置を用いるとよい。
【0054】
色切替え式照明光源101の構成は、例えば、図示しない赤発光光源と緑発光光源と青発光光源とを備え、これらから出射される色光を例えば図示しない導光板を介して透過型電気光学装置102の表示領域へ均一に照射するようになっている。
【0055】
なお、照明光源としての各光源は、冷陰極管、熱陰極管などの蛍光管、EL(エレクトロルミネッセンス)発光素子、LEDなど各種の色光の発光源を適用することが可能である。バックライト方式にした場合は、電気光学装置102の背面に光源を配置する構成と、背面に導光板を配置しその側面に光源を配置した構成を照明光源101とし光源光を導光板を伝播させて背面から電気光学装置102を照明する構成など、が考えられる。また、バックライト方式ではなく、フロントライト方式も可能であって、電気光学装置102を反射型電気光学装置とした場合は、その前面側に導光板を配置しその側面に照明光源を配置した構成を照明光源101とする。反射型電気光学装置102の構造は、実施形態1で説明した構成と同様である。
【0056】
このような電気光学装置102としては、実施形態1と同様にカラーフィルタを用いないモノクロ表示を行なう液晶表示装置を用いることができ、例えばπセルモードの液晶パネル、TN液晶セルのセルギャップを狭く設定した液晶パネル、OCBモードの液晶パネルなどの高速応答性を有する各種の液晶表示装置を適用することができる。
【0057】
駆動回路103は、マイクロプロセッサ104と、タイミングジェネレータ105と、フレームメモリ106と、駆動制御回路107と、光源スイッチャ108と、光源用電源109とを備えている。このカラー表示装置100では、タイミングジェネレータ105で光源色スイッチャ108の切替えタイミングと電気光学装置102の駆動タイミングを制御する。まず、画像信号を図示しないサンプリング回路でサンプリングさせると共に、画像入力信号中の同期信号は、マイクロプロセッサ104およびタイミングジェネレータ105に送られる。それと同時に、画像信号中の画像データがタイミングジェネレータ105によって制御されたタイミングでフレームメモリ106に書き込まれるようになっている。色切替え式照明光源101は、電気光学装置102の各色画像の駆動タイミングに同期するように、タイミングジェネレータ105により制御される光源色スイッチャ108で、図示しない赤発光光源、緑発光光源、青発光光源が時間順次に繰り返し点灯される。このようにして色切替え式照明光源101によって、表示データ色に対応した色順次で色光が生成されて透過型電気光学装置102に照明されるようになっている。このように照射されたそれぞれの色の色光(表示用光)は、透過型電気光学装置102により光変調が施され色順次でカラー画像表示を行なう。
【0058】
例えば、照明光源101が赤色光を発光するように、タイミングジェネレータ105からは光源色スイッチャ108に光源切替えタイミング信号が供給され、選択された光源に対して光源用電源109から電源供給がなされて赤色光光源が点灯する。この光源色スイッチャ108での切替えタイミングに同期するように、タイミングジェネレータ105からは読み出しタイミング信号がフレームメモリ106に供給され、これよりも前の駆動周期において予め記憶させた赤色成分の画像データが順次読み出され、その画像データを受ける駆動制御回路107は赤色成分用の画像データに応じて電気光学装置102の各画素を駆動する。タイミングジェネレータ105は、マイクロプロセッサ104の制御を受けて各構成要素のタイミングを同期させるようにタイミング制御するものである。電気光学装置102は先に述べたように液晶パネルからなる変調素子であって、画素電極を備えた画素がマトリクス状に配置されており、各画素毎に赤色光を変調し、赤色光の画像が生成されている。従って、画素毎に光強度の変調された赤色光によって画像が表示画面に表示される。
【0059】
次に、照明光源101で緑色光光源を点灯させるタイミングでは、赤色光の場合と同様に、フレームメモリ106から緑色光用の画像データが読み出され、それに応じて電気光学装置102の各画素がその画像データに応じて駆動され、青色光を変調して、電気光学装置102の表示画面に緑色光の画像が投写表示される。次に、照明光源101で青色光源が点灯するタイミングでも、同様である。このように、三色の色光の画像が電気光学装置102で順次生成されて、これをサイクリックに繰り返すことにより、カラー画像が表示されることになる。なお、色光生成の順序は本実形態に限定されず、いかなる順序でも構わない。
【0060】
ここで電気光学装置102が透過型液晶パネルである場合には、一対の基板間に先に例示した液晶を挟持して、反射側の基板には画素毎に透明画素電極を有し、この画素電極から液晶層に印加する実効電圧を画像データに応じて変化させることにより、液晶層での液晶分子の配列の変化に応じて入射光の偏光面や散乱度を変化させて出射する。偏光面を変化させる場合は、入射光を偏光素子を介して入射し、反射光を偏光素子を介することにより、光強度を画素毎に変調して表示する。光散乱の変化の場合(液晶が高分子分散型などの場合)は、散乱度合いにより光強度を画素毎に変調するので、偏光素子は不要となる。
【0061】
なお、本実施形態においては、透過型電気光学装置となっているが、反射型液晶パネルからなる反射型電気光学装置により画像生成するカラー表示装置であっても構わない。この場合の画素構成は、実施形態1 で説明したものと同様な構成となる。また、反射型液晶パネルの場合には、反射型画素電極の下方に画素毎にメモリ(フレームメモリ106)とそのメモリ内容に応じて画素電極に電圧印加する駆動制御回路107とを内蔵することができる。
【0062】
このように、本実施形態においては、照明光源の三色光の繰り返し点灯周波数(フレーム周波数)は、250Hz以上、好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ105によって点灯切替え制御されると共に、電気光学装置102での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定されている。
【0063】
本実施形態では、上記のような周波数で色順次駆動を行なうことにより、電気光学装置からなる表示装置の表示画面を見ている際に眼球運動が発生しても、カラーブレイクアップが知覚されることを軽減または消退させることができる。このため、カラー表示画像に対して違和感を受けることがなく、疲労感の少ない良好なカラー表示画像を得ることができる。
(実施形態3)
図11は、本発明のカラー表示装置として投写型表示装置を示している。本実施形態は、実施形態1の電気光学装置14を透過型の電気光学装置240とした点が実施形態1と相違しており、この他の構成や動作は実施形態1と同様である。
【0064】
本実施形態の投写型表示装置200は、赤色光、青色光、緑色光の各スペクトルを含んで発光して白色光を出射する光源201と、この光源201の前方に配置されて赤色、青色及び緑色の色要素の領域を有する回転カラーフィルタ202と、回転カラーフィルタ202の前方に配置されて入射する色光の色に対応した色画像を生成する透過型の電気光学装置204と、電気光学装置204で変調・透過された光を受けて投写を行なう投写レンズ205とを備えてなり、投写レンズ205から画像生成色光がスクリーン206に投写されて画像が表示される。光源201には図示されるように光源光を反射するリフレクタ201aも備えられている。
【0065】
先の実施形態1と同様に、スクリーン16に投写される画像を見る観察者は、カラー表示装置がフロント投写型であればスクリーン16の前面に位置し、カラー表示装置がリア投写型であればスクリーン16の背面に位置して、投写された画像を見ることになる。投写型表示装置を用いたプレゼンテーションにおいては、プレゼンテータ(人)は観察者から見てスクリーン16の手前に立ち、指や指棒などの物体を用いて、投写表示画面を指しながら説明をすることになる。従って、観察者からすると、スクリーン16前のプレゼンテータや物体の動作が表示画面を遮って行われることになる。
【0066】
なお、電気光学装置204としては、液晶ライトバルブとしての、強誘電液晶パネル、反強誘電液晶パネル、πセルモードの液晶パネル、TN液晶セルのセルギャップを狭く設定した液晶パネル、OCBモードの液晶パネルなど、高速応答性を有する各種の変調装置を適用することができる。
【0067】
また、このような投写型表示装置200は、主に、マイクロプロセッサ207と、タイミングジェネレータ208と、フレームメモリ209と、駆動制御回路210と、で構成される駆動回路211を備えている。この投写型表示装置200では、タイミングジェネレータ208で回転カラーフィルタ202の回転駆動と透過型の電気光学装置204の駆動タイミングを同期させて制御する。まず、画像信号を図示しないサンプリング回路でサンプリングさせる。そして、画像入力信号中の同期信号が、マイクロプロセッサ207およびタイミングジェネレータ208に送られる。それと同時に、画像信号中の画像データが、タイミングジェネレータ208によって制御されたタイミングでフレームメモリ209に書き込まれるようになっている。光源201から出射される白色光は、タイミングジェネレータ208により電気光学装置204の駆動タイミングに同期して回転する三色の回転カラーフィルタ202を透過することによって、光源光から赤色光、青色光、緑色光を順次分光・透過させて色光が生成され、各色光が電気光学装置204に照射されるようになっている。このように照射されたそれぞれの色光は、電気光学装置204を透過することにより光変調が施され投写レンズ205により拡大投写されて、スクリーン206に結像されてカラー画像表示を行なう。
【0068】
例えば、光源201からの光が回転カラーフィルタ202の赤色領域を透過するタイミングに同期させるように、タイミングジェネレータ208からは供給される読み出しタイミング信号に応じてフレームメモリ209から、これよりも前の駆動周期において予め記憶させた赤色成分の画像データが順次読み出され、その画像データを受ける駆動制御回路210は赤色成分用の画像データに応じて電気光学装置204の各画素を駆動する。タイミングジェネレータ208は、マイクロプロセッサ207の制御を受けて各構成要素のタイミングを同期させるようにタイミング制御するものである。電気光学装置204は液晶パネルからなる変調素子であって、画素がマトリクス状に配置されており、各画素毎に赤色光が透過されこの透過に伴って変調がなされ、赤色光の画像が生成されている。従って、画素毎に光強度の変調された赤色光は投写レンズ205に入射されスクリーン206に赤色光の画像が投写表示される。
【0069】
次に、回転カラーフィルタ202の青色領域を光源光が透過するタイミングでは、赤色光の場合と同様に、フレームメモリ209から青色光用の画像データが読み出され、それに応じて電気光学装置204の各画素がその画像データに応じて駆動され、青色光を変調して、スクリーン206に青色光の画像が投写表示される。次に、回転カラーフィルタ202の緑色領域を光源光が透過するタイミングでも、同様である。このように、三色の色光の画像が電気光学装置204で順次生成されて、これをサイクリックに繰り返すことにより、カラー画像が表示されることになる。なお、色光生成の順序は本実形態に限定されず、いかなる順序でも構わない。
【0070】
このような本実施形態においては、回転カラーフィルタ202の三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)は、180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ208によって回転数が制御されると共に、電気光学装置204での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定されている。
【0071】
本実施形態では、実施形態1と同様に、上記のような周波数で色順次駆動を行なうことにより、視覚系色識別感度を低くする表示を行うことができ、スクリーン206を見ている際に、スクリーン206の前に位置するプレゼンテータや物体の動作に起因する眼球運動が発生しても、カラーブレイクアップが知覚されることを軽減または消退させることができる。このため、カラー表示画像に対して違和感を受けることがなく、良好なプレゼンテーションを行うことができる。このため、本実施形態では、観察者に疲労感を与えることの少ない良好なカラー表示画像を得ることができる。
【0072】
以上、実施形態1〜3について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、構成の要旨に付随する各種の変更が可能である。本発明は上記した実施形態以外に、透過型のライトバルブを用いた投写型表示装置や、表示画面の前方または側方に光源を有する反射型表示装置など各種のカラー表示装置に適用することも可能である。
【0073】
さらに、本発明においては、生成される複数の色光は、赤色光、青色光、緑色光の三色光で説明したが、シアン光、マゼンダ光、イエロー光の三色光でも良いし、二色光や三色光より多い色光の切替えでも構わない。
【0074】
実施形態1および3では、複数の色光(例えば赤色光、青色光、緑色光の三色光)成分を含む光源光を発する一つの光源からの光源光を回転カラーフィルタ(12、202)を透過することにより各色光を発生させていたが、図5の色順次駆動照明システムのように、複数の色光のそれぞれを個別に発生する複数個の光源(赤色光光源、緑色光光源、青色光光源)をそれぞれ備えて、順次タイミングジェネレータ(18,208)により点灯する光源を順次選択して色光生成する構成にしても構わない。その場合でも、複数の色光を生成する繰り返し周波数が180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上となるように、投写型表示装置のタイミング制御した駆動を行うことにより、カラーブレイクアップ現象は低減又は抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、プレゼンテータの行なう動作に起因するカラーブレイクアップの知覚や、眼球運動に起因するカラーブレイクアップの知覚が生じない、時分割駆動方式のカラー表示装置およびカラー表示方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るカラー表示装置の実施形態1を示す構成説明図である。
【図2】視覚の色空間周波数特性を示すグラフである。
【図3】フレーム周波数と視覚系色空間周波数との関係を示すグラフである。
【図4】網膜移動速度とフレーム周波数との関係を求めるための実験装置を示す説明図である。
【図5】網膜移動速度とフレーム周波数との関係を求めるための実験装置の変形例を示す説明図である。
【図6】視覚系最適フレーム周波数特性を示すグラフである。
【図7】視覚系最適フレーム周波数特性を示すグラフである。
【図8】視覚系色弁別閾値特性を示すグラフである。
【図9】視覚系色弁別閾値特性を示すグラフである。
【図10】本発明に係るカラー表示装置の実施形態2を示す構成説明図である。
【図11】本発明に係る投写型表示装置の実施形態3を示す構成説明図である。
【図12】眼球運動によって網膜上にカラーバンドが形成されるメカニズムを示す説明図である。
【図13】色順次駆動方式によるカラー画像生成モデルを示す説明図。
【図14】色順次駆動方式と視覚系との組合せによるカラー画像生成モデルを示す説明図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割駆動されてカラー画像生成を行なうカラー表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー表示装置として、単一ドット内で時間差混色、すなわち時分割駆動方式による加法混色でカラー表示を行うものが注目されている。このようなカラー表示装置では、1画素が1絵素となるため、並置混色を行うカラー表示装置に比較して3倍の解像度が得られるという利点がある。このような時分割駆動方式のカラー表示装置の一つに、白色光源からの光を回転するカラーフィルタ円盤を通して生成したR(赤)、G(緑)、B(青)の色光を、時間順次にデジタルマイクロミラーデバイス(DMD:例えばテキサスインスツルメント社が開発したようなデバイス)アレイ上に照射し、このDMDアレイで変調・反射された色光をスクリーン上に投影させてカラー画像を表示するDMDプロジェクタが知られている。またこの他に、白黒表示を行なう液晶パネルの後方にR、G、Bの色光を発生させるカラー光源が配置されてなるカラー液晶表示装置などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した時分割駆動されるDMDプロジェクタやカラー液晶表示装置などのカラー表示装置では、鑑賞者の目が、例えばスクリーンやディスプレイを横切る対象画像を追いかけるときに、鑑賞者が色分離を知覚してしまうという問題点を有している。このため、鑑賞画像に色ずれが発生して表示品質が低下するという問題がある。
【0004】
さらに、時分割駆動される投写型表示装置(すなわち、DMDプロジェクタや液晶プロジェクタ)の場合には、スクリーンの前に位置するプレゼンテータの行なう動作、例えば、指示棒や指でスクリーン上を指し示したりスクリーンの前を横切ったりする動作に起因して観察者が色分離を知覚してしまうという問題点がある。このため、観察画像に色ずれが発生して表示品質の低下や、観察者が疲労感を覚えるなどの問題がある。なお、同様の色ずれの知覚は、内視鏡などの撮像装置でも発生することが報告されている。
【0005】
一般に、時分割駆動方式のカラー表示装置で生成される画像を見る際には、随意的または不随意的に生じる眼球運動によって網膜上へ物理的にR(赤)、G(緑)、B(青)色光のカラーバンドが形成され、これに起因して心理的に色分離が知覚される現象(以下、カラーブレイクアップという)が起こることが知られている。
【0006】
ここで、人の眼球運動に起因して発生するカラーブレイクアップについて説明する。図12は、三色光を時間順次(以下、色順次という)で駆動することによって生成されたRGB原画像を見る際に、随意的または不随意的に生じる眼球運動によって網膜上に物理的にRGB色光のカラーバンドが形成されるメカニズムを示している。時分割駆動されるカラー表示装置では、RGB各色光とそれに対応した画像とを同期信号処理して、空間的に位相ずれのないR画像、G画像、B画像を生成している。人は、このRGBの各色画像を高次の視覚中枢で時間積分的に加法混色して原画像に等価なカラー画像として認識する。しかしながら、実際の画像鑑賞中において、人は無意識または意識的にまばたきや視線移動を行なう。そのとき、色順次駆動によって時間積分的に生成されるRGBの各画像は、眼球運動による空間的な影響を受けて、図12に示すように網膜上に物理的にRGBのカラーバンドが形成され、これに起因して高次の視覚中枢でカラーブレイクアップとして知覚される。
【0007】
次に、図13を用いて色順次駆動により網膜上に生成されるカラー画像の理想モデル(時間積分型加法混色)と実際モデル(時空間積分型加法混色)とを比較して説明する。同図中、縦軸は時間、横軸は空間を示している。なお、同図は、3コマ画像を示したものであるが、色順次駆動によるカラー画像では、フレーム周波数によって一意的に決定される時間差で網膜上に生成されるR画像、G画像、B画像を高次の視覚中枢でカラー合成するシステムである。したがって、同図中の左側に示すように1コマを形成するR画像、G画像、B画像(例えば、AR画像、AG画像、AB画像)がフレーム周波数によって一意的に決まる時間差で網膜上に生成されるが、これは空間的なずれが生じないことを理想としている。しかしながら、実際には眼球運動が関与することにより、同図中の右側に示すように1コマを形成するR画像、G画像、B画像(例えば、AR’画像、AG’画像、AB’画像)がフレーム周波数によって一意的に決まる時間差と眼球運動速度によって一意的に決まる空間的な位置ずれが同時に網膜上に生じてしまう。この現象は、眼球運動が発生したときのみ生じるものであり、眼球が静止している状態、あるいは相対的な静止状態(例えば、ハエの動きを目で追っている状態)では生じない。また、これは眼球運動の方向によって発生状況が異なる(例えば、図13の右側の1番目のコマであるAR’画像、AG’画像、AB’画像と、3番目のコマであるCR’画像、CG’画像、CB’画像は発生方向が逆向きとなる)。
【0008】
このように、時分割駆動方式(色順次駆動方式)のカラー表示装置では、時間積分型加法混色を前提として色生成することを基本とするが、眼球運動がこの前提を覆すことにより、基本(理想)が成立しなくなり、上記した心理的なカラーブレイクアップの知覚問題が生じている。図14は、このような色順次駆動方式と視覚系との組合せによるカラー画像生成モデルを示す説明図である。同図から判るように、色順次駆動方式によるカラー画像生成においては、ヒューマンファクタ1の眼球運動とヒューマンファクタ2の心理的なカラーブレイクアップ知覚とを考慮してカラー表示装置を開発する必要がある。特に、投写型表示装置では、このようなヒューマンファクタ考慮した上で、スクリーンの前に立ってプレゼンテーションするプレゼンテータの行なう動作などに起因して知覚されるカラーブレイクアップの発生を抑制することが課題となる。
【0009】
このようなカラーブレイクアップは、フレーム周波数を2000Hz〜3000Hz程度に高くして三色光の時間差を縮めてカラーバンドの幅を物理的に狭くすることにより、知覚されないようにできることが判っているが、現状で120Hz程度のフレーム周波数であるのに対して、2000Hz〜3000Hzのような高フレーム周波数での画像生成駆動や色生成駆動は現実的に困難である。
【0010】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、その目的は、プレゼンテータの行なう動作に起因するカラーブレイクアップの知覚や、眼球運動に起因するカラーブレイクアップの知覚が生じない、時分割駆動方式のカラー表示装置およびカラー表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカラー表示装置は、時間順次で複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する色光生成部と、該複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光を処理する画像生成部と、を備え、該所定の周波数は180Hz以上であり、そのことによって上記目的を達成する。
【0012】
好ましくは、前記所定の周波数は250Hz以上である。
【0013】
さらに好ましくは、前記所定の周波数は300Hz以上である。
【0014】
ある実施の形態では、前記色光生成部は、光源と、該光源からの光から前記複数の色光を生成するカラーフィルタとを有する。
【0015】
他の実施の形態では、前記色光生成部は、互いに異なる色光を発光する複数の光源を有し、該複数の光源は時間順次で点灯する。
【0016】
ある実施の形態では、前記画像生成部は反射型の電気光学装置である、請求項1〜5のいずれかに記載のカラー表示装置。
【0017】
さらに他の実施の形態では、前記電気光学装置は液晶装置である。
【0018】
さらに他の実施の形態では、前記電気光学装置はデジタルマイクロミラーデバイスである。
【0019】
さらに他の実施の形態では、前記画像生成部は透過型電気光学装置を有している。
【0020】
さらに他の実施の形態では、前記カラー表示装置が前記画像を投写するレンズをさらに有している。
【0021】
本発明のカラー表示方法は、時間順次で複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する色光生成ステップと、該複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光を処理する画像生成ステップと、を含み、該所定の周波数は180Hz以上であり、そのことによって上記目的を達成する。
【0022】
好ましくは、前記所定の周波数は250Hz以上である。
【0023】
さらに好ましくは、前記所定の周波数は300Hz以上である。
【0024】
本発明によれば、視覚系色識別が低くなる色光の繰り返し周波数域に設定したことにより、例えば、スクリーンの前に立ってプレゼンテーションするプレゼンテータやスクリーン前の物体の動作などに起因するカラーブレイクアップが、観察者に知覚されることを抑制または防止することができる。さらに、観察者の眼球運動に起因するカラーブレイクアップが観察者に知覚されることをも防止できる。しかも、時分割駆動方式のカラー表示装置の色光生成の繰り返し周波数を大幅に高めずに実用域の繰り返し周波数で駆動することが可能になる。このため、本発明によれば、スクリーン上の表示画像を見る人が画像に違和感を覚えることがなくなり、観察画像の品位を向上して画像観察に伴う疲労感を低減させるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のカラー表示装置およびカラー表示方法の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明に係るカラー表示装置およびカラー表示装置の駆動方法の実施形態1を示している。同図に示すように、本実施形態のカラー表示装置10は、赤色光、青色光、緑色光の各スペクトルを含んで発光して白色光を出射する光源11と、この光源11の前方に配置されて赤色、青色及び緑色の色要素の領域を有する回転カラーフィルタ12と、回転カラーフィルタ12の前方に配置される集光レンズ13と、集光レンズ13を介して入射する色光の色に対応した色画像を生成する電気光学装置14と、電気光学装置14で反射・変調された光を受けて投写を行なう投写レンズ15とを備えたカラー表示装置であり、投写レンズ15から画像生成色光がスクリーン16に投写されて画像が表示される。光源11には図示されるように光源光を反射するリフレクタ11aも備えられている。
【0026】
スクリーン16に投写される画像を見る観察者は、カラー表示装置がフロント投写型であればスクリーン16の前面に位置し、カラー表示装置がリア投写型であればスクリーン16の背面に位置して、投写された画像を見ることになる。カラー表示装置を用いたプレゼンテーションにおいては、プレゼンテータ(人)は観察者から見てスクリーン16の手前に立ち、指や指棒などの物体を用いて、投写表示画面を指しながら説明をすることになる。従って、観察者からすると、スクリーン16前のプレゼンテータや物体の動作が表示画面を遮って行われることになる。従来では、この動作によりカラーブレイクアップ現象が発生してしまっていた。
【0027】
本発明の効果の1つは、このような従来のカラーブレイクアップの知覚問題を解消することであり、そのための詳細な構成について、以下に説明する。
【0028】
上記の電気光学装置14としては、DMDアレイや、反射型液晶ライトバルブとしての、強誘電液晶パネル、反強誘電液晶パネル、πセルモードの液晶パネル、TN液晶セルのセルキャップを狭く設定した液晶パネル、OCBモードの液晶パネルなど、高速応答性を有する各種の変調装置を適用することができる。
【0029】
また、このようなカラー表示装置10は、主に、マイクロプロセッサ17と、タイミングジェネレータ18と、フレームメモリ19と、駆動制御回路20と、で構成される駆動回路21を備えている。このカラー表示装置10では、タイミングジェネレータ18で回転カラーフィルタ12の回転駆動と反射型電気光学装置14の駆動タイミングを同期させて制御する。まず、画像信号を図示しないサンプリング回路でサンプリングさせる。そして、画像入力信号中の同期信号が、マイクロプロセッサ17およびタイミングジェネレータ18に送られる。それと同時に、画像信号中の画像データが、タイミングジェネレータ18によって制御されたタイミングでフレームメモリ19に書き込まれるようになっている。光源11から出射される白色光は、タイミングジェネレータ18により電気光学装置14の駆動タイミングに同期して回転する三色の回転カラーフィルタ12を透過することによって、光源光から赤色光、青色光、緑色光を順次分光・透過させて色光が生成され、集光レンズ13を介して反射型電気光学装置14に照射されるようになっている。このように照射されたそれぞれの色光は、電気光学装置14により光変調が施され投写レンズ15により拡大投写されて、スクリーン16に結像されてカラー画像表示を行なう。
【0030】
例えば、光源11からの光が回転カラーフィルタ12の赤色領域を透過するタイミングに同期させるように、タイミングジェネレータ18からは供給される読み出しタイミング信号に応じてフレームメモリ19から、これよりも前の駆動周期において予め記憶させた赤色成分の画像データが順次読み出され、その画像データを受ける駆動制御回路20は赤色成分用の画像データに応じて電気光学装置14の各画素を駆動する。タイミングジェネレータ18は、マイクロプロセッサ17の制御を受けて各構成要素のタイミングを同期させるようにタイミング制御するものである。電気光学装置14は先に述べたようにDMDや液晶パネルからなる変調素子であって、反射ミラーや反射電極を備えた画素がマトリクス状に配置されており、各画素毎に赤色光を反射し、この反射に伴って変調がなされ、赤色光の画像が生成されている。従って、画素毎に光強度の変調された赤色光は投写レンズ15に入射されスクリーン16に赤色光の画像が投写表示される。
【0031】
次に、回転カラーフィルタ12の青色領域を光源光が透過するタイミングでは、赤色光の場合と同様に、フレームメモリ19から青色光用の画像データが読み出され、それに応じて電気光学装置14の各画素がその画像データに応じて駆動され、青色光を変調して、スクリーン16に青色光の画像が投写表示される。次に、回転カラーフィルタ12の緑色領域を光源光が透過するタイミングでも、同様である。このように、三色の色光の画像が電気光学装置14で順次生成されて、これをサイクリックに繰り返すことにより、カラー画像が表示されることになる。なお、色光生成の順序は本実形態に限定されず、いかなる順序でも構わない。
【0032】
ここで、電気光学装置14がDMDである場合には、DMDは各画素毎に画像データに応じて反射ミラーの傾き角度を変更させて投写レンズ15に入射する光量を変調する。より具体的には、反射ミラーにより反射される光を投写レンズ15に向ける時間幅と反射される光をアブソーバに吸収させる時間幅とを画像データに応じてパルス幅変調(PWM)し、各画素毎に色光の強度を変調できるようにしている。なお、DMDの場合は、フレームメモリ19をSRAMとして電気光学装置内に内蔵することができ、各画素毎に画素メモリを有しそのメモリ内容に応じて各画素の反射ミラーを各画素毎に内蔵される駆動制御回路20により角度変更駆動させることができる。もっとも、これらのメモリや駆動制御回路は反射ミラーの下方に配置される。
【0033】
また電気光学装置14が液晶パネルである場合には、一対の基板間に先に例示した液晶を挟持して、反射側の基板には画素毎に画素電極を有し、この画素電極から液晶層に印加する実効電圧を画像データに応じて変化させることにより、液晶層での液晶分子の配列の変化に応じて入射光の偏光面や散乱度を変化させて反射・出射する。偏光面を変化させる場合は、入射光を偏光素子を介して入射し、反射光を偏光素子を介して投写レンズ15に導いて、光強度を画素毎に変調する。光散乱の変化の場合(液晶が高分子分散型などの場合)は、DMDと同様に投写レンズ15の手前にスリットを設けてこれを通過させることにより、光強度を画素毎に変調する。液晶パネルの場合であっても、DMDと同様に、反射型画素電極の下方に画素毎にメモリ(フレームメモリ19)とそのメモリ内容に応じて画素電極に電圧印加する駆動制御回路20とを内蔵することができる。
【0034】
なお、本実施形態のカラー表示装置10は、電気光学装置14として反射型電気光学装置を有しているが、液晶装置(液晶パネル)を用いる場合には、電気光学装置14として透過型液晶パネルを含んだ透過型電気光学装置を有していてもよい。
【0035】
このような本実施形態においては、回転カラーフィルタ12の三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)は、180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ18によって回転数が制御されると共に、電気光学装置14での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定されている。
【0036】
本実施の形態では、180Hz以上のフレーム周波数で色順次駆動を行うことにより、観察者がスクリーン16を見ている際に、スクリーン16の前に立ってプレゼンテーションするプレゼンテータ自体やその指やプレゼンテータにより動かされる指棒など物体の動作に起因する眼球運動が発生しても、カラーブレイクアップが知覚されることを軽減または消退させることができる。250Hz以上のフレーム周波数で色順次駆動を行う場合には、プレゼンテータの動きに伴う上記カラーブレイクアップの知覚の防止だけでなく、観察者の高速な眼球運動(後述)に起因するカラーブレイクアップが知覚されることをも軽減または消退させることができる。この場合には、観察者の知覚の個人差を考慮すると、300Hz以上のフレーム周波数で色順次駆動を行うことがさらに好ましい。
【0037】
ここで、本実施形態のようにカラーブレイクアップの知覚を低減または消退させる理由をフレーム周波数と視覚系色空間周波数との関係に基づいて説明する。
【0038】
まず、図2を用いて視覚系色空間周波数とコントラスト(相対感度)との関係を説明する。同図は、1977年「テレビジョン」第31巻第1号第31頁に記載された公知データである。同図のグラフの横軸は色空間周波数であり、cycle/degree(cpd)で表される。この色空間周波数の単位(cpd)は、視角1度中の正弦波の数を示すものであり、視角1度の中に1サイクルの正弦波があれば1cpdで、視覚1度の中に5サイクルの正弦波があれば5cpdという。また、このグラフの縦軸は、コントラスト感度を相対感度(dB)で表したものであり、明暗弁別や色弁別ができない限界値を求めている。図2に示すように、一般に人の視覚系では明るさ(明暗)に対する感度特性は空間周波数が低いときでも、あるいは高いときでもコントラスト感度特性は悪く、中間の4cpdあたりが明暗のコントラスト感度が最も高くなっている。なお、図示しないがこの迷暗に対するコントラスト感度特性のカットオフ周波数は60cpdである。一方、色に対する感度特性も同様に空間周波数が低いときでも、あるいは高いときでもコントラスト感度が悪く、中間の色度空間周波数である0.4cpdあたりが色のコントラスト感度が最も高くなっている。0.4cpdは、計算上フレーム周波数120Hzに相当する結果であり、ヒューマン特性を考慮した色順次駆動方式という観点からは最も悪い条件といえる(現状の投写型表示装置ではフレーム周波数が120Hzのものがあり、カラーブレイクアップが知覚され易い)。また、図示しないがこの色に対する感度特性のカットオフ周波数は4〜10cpdである。
【0039】
図2に示す公知データに基づいて、カラーブレイクアップを減少または消退させるためには、0.4cpdより高い色空間周波数を与える必要があることが解る。本発明者らは、好ましくは、この色空間周波数である0.4cpdより高い0.5cpd以上の色空間周波数を与えることで、観察者から見てスクリーン16の前に位置する人や物などの動きに起因して知覚されるカラーブレイクアップの発生を減少または消退できることを見いだした。さらに、好ましくは、0.4cpdの2倍である0.8cpd以上の色空間周波数を与えることで、上記カラーブレイクアップの知覚の防止だけでなく、高速の眼球運動に起因して知覚されるカラーブレイクアップの発生をも減少または消退できることを見いだした。
【0040】
フレーム周波数と色空間周波数(視覚系空間周波数)との間の変換は、下記の式(1)、(2)、(3)を用いて行なうことができる。
【0041】
Ft=(3*Ff )−1 (1 )
Cba=Rv*Ft (2 )
Vf=(3*Cba)−1 (3 )
なお、Ffはフレーム周波数(Hz)であり、カラー画像の1コマ(カラーの1画面)を生成するときの周波数である。Cbaは各色光によって形成されるカラーバンド視角(degree)であり、1色光のカラーバンド幅を視角で与えたものである。また、カラーバンドはRGB色光を用いた場合、Rバンド、Gバンド、Bバンドが網膜上に形成される。視角は、眼球の基準点(結点)と網膜上に形成される1色光のバンド幅によって一意的に決まる(視距離依存性なし)。Rvは眼球回旋運動速度(degree/second)であり、ある点から他の点へ視線移動するときの角速度である。この視線移動に伴う眼球内面の網膜上に投写されて像は同じ角速度(眼球回旋運動速度)で移動する。したがって、眼球回旋運動速度と網膜移動速度(レチナルベロシティ)は等価である。Vfは視覚系色空間周波数(cycle/degree)であり、視角1度の中にRGBのカラーバンドが何サイクル形成されるかを表したものである。例えば、視角1度の中にRGBのカラーバンドが1本ずつ形成されれば1サイクル/度(cpd)となり、5本ずつ形成されれば5cpdとなる。これは、一般に解像度を表す指標として用いられることが多く、バンド幅が細かくなるほど色弁別(色の識別弁別)、輝度弁別(明るさの濃淡弁別)は低下する。
【0042】
図3は上記した計算式(1)、(2)、(3)を用いて換算したフレーム周波数と視覚系の色空間周波数の関係を示すグラフである。なお、同図中(120、0.4)は色順次駆動方式を用いた投写型表示装置の現状レベルを示したものであり、(180、0.5)以上、好ましくは(250、0.6)以上、さらに好ましくは(300、0.8)以上は本実施形態のカラー表示装置10に用いるフレーム周波数レベルを示している。
【0043】
次に、図4および図5に示す実験装置を用いて、網膜移動速度(レチナルベロシティ)とフレーム周波数との関係を求める方法を説明する。
【0044】
図4に示す実験装置は、白色光を出射するための光源1と、光源光からRGB三色光を分光生成するためのRGB回転フィルタ2と、スクリーン3と、網膜移動速度を生成するためのチョッパブレード4と、から構成されている。この実験装置では、光源1から出射された白色光をRGB回転フィルタ2を通過させることによって継時的にR色光、G色光、B色光を順次生成し、これらの色光をスクリーン3に背面から入射する。そして、スクリーン3の前方に配置されたチョッパブレード4を回転させることによって時空間的なカラーバンドを生成する。観察者は一定の距離からスクリーン3上の所定の一点を固視し、網膜上にカラーバンドを結像させる。そして、心理的なカラーブレイクアップ知覚を主観評価によって判定する。なお、RGB回転フィルタ2の回転速度を可変にすることで任意のフレーム周波数を設定でき、スクリーン3の前に置いたチョッパブレード4の回転速度を可変にすることで任意の網膜移動速度を設定することができる。
【0045】
図5の実験装置は、図4の実験装置におけるRGB色光生成手段である光源1およびRGB回転フィルタ2を、R光源5R、G光源5G、B光源5B、赤色光選択反射層と青色光選択反射層をX字状に形成したダイクロイックプリズム6、およびR光源5R,B光源Bからの赤色光と青色光をプリズム6側に反射するミラー7からなる色順次駆動照明システムで置き換えた構成である。各光源5は順次点灯しダイクロイックプリズム6からは三色光が順次スクリーン3に背面から入射される。この実験装置では、R光源5R、G光源5G、B光源5Bの点灯のスイッチングを可変にすることで任意のフレーム周波数を設定することができる。他の構成、作用は図4に示す実験装置と同様である。なお、図4および図5の実験装置では、RGB、RBG、BGRなどの色の順番を変えた構成としてもよい。
【0046】
これらの実験装置を用いて2名の被検者に対して行なった結果から求めた網膜移動速度とフレーム周波数との関係を図6と図7に示す。図6は個々のデータを示すグラフであり、図7は個々のデータに基づいて平均と標準偏差を求めたグラフである。
【0047】
図6および図7から判るように、心理的なカラーブレイクアップ知覚は、大別して網膜移動速度が300deg/sec未満と300deg/sec以上とで異なった傾向(2相性)を示し、300deg/sec以上の方が急激なフレーム周波数の立ち上がりが認められる。眼球運動には、随従運動、断続性運動、輻輳開散運動、固視微動の4種類のものがある。随従運動は、飛んでいるハエを眼で追うような30〜35deg/sec程度の低速度の眼球運動である。一方、断続性運動は、間欠的な高速跳躍的運動であり、読書の際の視線移動などに見られる、随従運動の速度を越える対象物の移動速度を補完する眼球運動であり、300deg/sec以上の高速の眼球運動である。このことから、網膜移動速度300deg/secは断続性運動に相当するものであり、フレーム周波数としてはグラフ上で250Hz以上を確保すれば十分と解釈できるが、測定精度や被検者の個人差などを考慮すると300Hz以上を確保することがさらに好ましい。
【0048】
図8および図9は、上記した実験から得られた網膜移動速度とフレーム周波数の関係において、フレーム周波数を視覚系色弁別閾値に逆変換したものである。なお、視覚系色弁別閾値の一般的な定義はないが、ここでは実験において時空間的特性として知覚する心理的なカラーブレイクアップ閾値から求めたフレーム周波数を、単純に網膜上に広がる物理的なRGBカラーバンド幅に逆変換したものと定義する。
【0049】
図8および図9のグラフから推測されることは、網膜移動速度50〜200deg/sec、200〜300deg/sec、300deg/sec以上で視覚系色弁別閾値の特性の違いが認められる。これらのデータに関連すると考えられる眼球運動は、例えば飛んでるハエを眼で追うような30〜35deg/sec程度の低速度の随従運動と、距離を隔てて間欠的に突然出現する対象物を俊敏に捕らえたり、随従運動の速度を越える対象物の移動速度を補完する300deg/sec以上の高速の断続性運動と、の2種類である。なお、図8および図9に示したデータの独立変数(横軸)の眼球運動速度(網膜移動速度に等価)の中の200deg/sec以上かつ300deg/sec未満の眼球運動速度は一般に存在しない。しかし、200deg/sec以上かつ300deg/sec未満の眼球運動速度は、例えば投写型表示装置などを用いたプレゼンテーションでは、表示画面の観察者から見た状態のスクリーンの前でプレゼンテータやプレゼンテータが動かす物体が色々な動作をすることもあり、対象物が網膜上を移動する動きとして存在することが考えられる。このような範囲の眼球運動速度では、スクリーンを見る人の視覚系色感度が低くなっている。以上のことから、網膜移動速度が視覚系色弁別閾値の変化に影響を与えていることが推測される。
【0050】
本実施形態1に係るカラー表示装置では、上記したように、視覚系色感度が低くなる網膜移動速度の範囲(200deg/sec以上かつ300deg/sec)に着目して、この網膜移動速度の範囲に対応するフレーム周波数(色生成周波数)が図8および図9から180Hz以上としたことにより、スクリーンの前でプレゼンテータや物体が色々な動作を行っても心理的なカラーブレイクアップの知覚を軽減または消退させることができる。
【0051】
さらに、本実施形態1に係るカラー表示装置のフレーム周波数が、存在する眼球運動の最高速度を満足するフレーム周波数(色生成周波数)、すなわち250Hzより高い300Hzである場合には、上記カラーブレイクアップの知覚の防止だけでなく、色順次駆動方式で発生する心理的なカラーブレイクアップの知覚をも軽減または消退させることができる。
【0052】
本実施形態1のカラー表示装置10では、このようなカラーブレイクアップが知覚される現象の発生を抑制できるため、スクリーンにおいて品位の高いカラー表示を行なうことができる。このため、本実施形態1によれば、スクリーン16の画像を観察する際に、観察者が画像に違和感を受けることがなく、より疲労感の少ない、良好なカラー画像を表示することができる。また、本実施形態1のカラー表示装置10では、単一の電気光学装置(変調装置)14でカラー表示が行なえるため、すなわち単板式の投写型表示装置に応用できるため、プロジェクタの軽量化、低コスト化を実現することができる。
(実施形態2)
図10は本発明に係るカラー表示装置およびカラー表示方法の実施形態2を示している。本実施形態は、照明装置を備える直視型のカラー表示装置に本発明を適用したものである。この実施形態は、背面側から色順次で出射される三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)が250Hz以上、好ましくは300Hz以上になるよう制御され、画像生成部としての電気光学装置での色画像生成のタイミングが各色光の生成タイミングと一致するように設定されたものである。
【0053】
図10に示すように、本実施形態2のカラー表示装置100は、色切替え式バックライトを用いた照明光源101と、電気光学装置102と、これら色切替え式バックライト照明光源101および電気光学装置102とを駆動・制御する駆動回路103と、を備えてなる。図10では、照明装置をバックライト方式としたので、透過型電気光学装置としており、例えば透過型液晶表示装置を用いるとよい。
【0054】
色切替え式照明光源101の構成は、例えば、図示しない赤発光光源と緑発光光源と青発光光源とを備え、これらから出射される色光を例えば図示しない導光板を介して透過型電気光学装置102の表示領域へ均一に照射するようになっている。
【0055】
なお、照明光源としての各光源は、冷陰極管、熱陰極管などの蛍光管、EL(エレクトロルミネッセンス)発光素子、LEDなど各種の色光の発光源を適用することが可能である。バックライト方式にした場合は、電気光学装置102の背面に光源を配置する構成と、背面に導光板を配置しその側面に光源を配置した構成を照明光源101とし光源光を導光板を伝播させて背面から電気光学装置102を照明する構成など、が考えられる。また、バックライト方式ではなく、フロントライト方式も可能であって、電気光学装置102を反射型電気光学装置とした場合は、その前面側に導光板を配置しその側面に照明光源を配置した構成を照明光源101とする。反射型電気光学装置102の構造は、実施形態1で説明した構成と同様である。
【0056】
このような電気光学装置102としては、実施形態1と同様にカラーフィルタを用いないモノクロ表示を行なう液晶表示装置を用いることができ、例えばπセルモードの液晶パネル、TN液晶セルのセルギャップを狭く設定した液晶パネル、OCBモードの液晶パネルなどの高速応答性を有する各種の液晶表示装置を適用することができる。
【0057】
駆動回路103は、マイクロプロセッサ104と、タイミングジェネレータ105と、フレームメモリ106と、駆動制御回路107と、光源スイッチャ108と、光源用電源109とを備えている。このカラー表示装置100では、タイミングジェネレータ105で光源色スイッチャ108の切替えタイミングと電気光学装置102の駆動タイミングを制御する。まず、画像信号を図示しないサンプリング回路でサンプリングさせると共に、画像入力信号中の同期信号は、マイクロプロセッサ104およびタイミングジェネレータ105に送られる。それと同時に、画像信号中の画像データがタイミングジェネレータ105によって制御されたタイミングでフレームメモリ106に書き込まれるようになっている。色切替え式照明光源101は、電気光学装置102の各色画像の駆動タイミングに同期するように、タイミングジェネレータ105により制御される光源色スイッチャ108で、図示しない赤発光光源、緑発光光源、青発光光源が時間順次に繰り返し点灯される。このようにして色切替え式照明光源101によって、表示データ色に対応した色順次で色光が生成されて透過型電気光学装置102に照明されるようになっている。このように照射されたそれぞれの色の色光(表示用光)は、透過型電気光学装置102により光変調が施され色順次でカラー画像表示を行なう。
【0058】
例えば、照明光源101が赤色光を発光するように、タイミングジェネレータ105からは光源色スイッチャ108に光源切替えタイミング信号が供給され、選択された光源に対して光源用電源109から電源供給がなされて赤色光光源が点灯する。この光源色スイッチャ108での切替えタイミングに同期するように、タイミングジェネレータ105からは読み出しタイミング信号がフレームメモリ106に供給され、これよりも前の駆動周期において予め記憶させた赤色成分の画像データが順次読み出され、その画像データを受ける駆動制御回路107は赤色成分用の画像データに応じて電気光学装置102の各画素を駆動する。タイミングジェネレータ105は、マイクロプロセッサ104の制御を受けて各構成要素のタイミングを同期させるようにタイミング制御するものである。電気光学装置102は先に述べたように液晶パネルからなる変調素子であって、画素電極を備えた画素がマトリクス状に配置されており、各画素毎に赤色光を変調し、赤色光の画像が生成されている。従って、画素毎に光強度の変調された赤色光によって画像が表示画面に表示される。
【0059】
次に、照明光源101で緑色光光源を点灯させるタイミングでは、赤色光の場合と同様に、フレームメモリ106から緑色光用の画像データが読み出され、それに応じて電気光学装置102の各画素がその画像データに応じて駆動され、青色光を変調して、電気光学装置102の表示画面に緑色光の画像が投写表示される。次に、照明光源101で青色光源が点灯するタイミングでも、同様である。このように、三色の色光の画像が電気光学装置102で順次生成されて、これをサイクリックに繰り返すことにより、カラー画像が表示されることになる。なお、色光生成の順序は本実形態に限定されず、いかなる順序でも構わない。
【0060】
ここで電気光学装置102が透過型液晶パネルである場合には、一対の基板間に先に例示した液晶を挟持して、反射側の基板には画素毎に透明画素電極を有し、この画素電極から液晶層に印加する実効電圧を画像データに応じて変化させることにより、液晶層での液晶分子の配列の変化に応じて入射光の偏光面や散乱度を変化させて出射する。偏光面を変化させる場合は、入射光を偏光素子を介して入射し、反射光を偏光素子を介することにより、光強度を画素毎に変調して表示する。光散乱の変化の場合(液晶が高分子分散型などの場合)は、散乱度合いにより光強度を画素毎に変調するので、偏光素子は不要となる。
【0061】
なお、本実施形態においては、透過型電気光学装置となっているが、反射型液晶パネルからなる反射型電気光学装置により画像生成するカラー表示装置であっても構わない。この場合の画素構成は、実施形態1 で説明したものと同様な構成となる。また、反射型液晶パネルの場合には、反射型画素電極の下方に画素毎にメモリ(フレームメモリ106)とそのメモリ内容に応じて画素電極に電圧印加する駆動制御回路107とを内蔵することができる。
【0062】
このように、本実施形態においては、照明光源の三色光の繰り返し点灯周波数(フレーム周波数)は、250Hz以上、好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ105によって点灯切替え制御されると共に、電気光学装置102での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定されている。
【0063】
本実施形態では、上記のような周波数で色順次駆動を行なうことにより、電気光学装置からなる表示装置の表示画面を見ている際に眼球運動が発生しても、カラーブレイクアップが知覚されることを軽減または消退させることができる。このため、カラー表示画像に対して違和感を受けることがなく、疲労感の少ない良好なカラー表示画像を得ることができる。
(実施形態3)
図11は、本発明のカラー表示装置として投写型表示装置を示している。本実施形態は、実施形態1の電気光学装置14を透過型の電気光学装置240とした点が実施形態1と相違しており、この他の構成や動作は実施形態1と同様である。
【0064】
本実施形態の投写型表示装置200は、赤色光、青色光、緑色光の各スペクトルを含んで発光して白色光を出射する光源201と、この光源201の前方に配置されて赤色、青色及び緑色の色要素の領域を有する回転カラーフィルタ202と、回転カラーフィルタ202の前方に配置されて入射する色光の色に対応した色画像を生成する透過型の電気光学装置204と、電気光学装置204で変調・透過された光を受けて投写を行なう投写レンズ205とを備えてなり、投写レンズ205から画像生成色光がスクリーン206に投写されて画像が表示される。光源201には図示されるように光源光を反射するリフレクタ201aも備えられている。
【0065】
先の実施形態1と同様に、スクリーン16に投写される画像を見る観察者は、カラー表示装置がフロント投写型であればスクリーン16の前面に位置し、カラー表示装置がリア投写型であればスクリーン16の背面に位置して、投写された画像を見ることになる。投写型表示装置を用いたプレゼンテーションにおいては、プレゼンテータ(人)は観察者から見てスクリーン16の手前に立ち、指や指棒などの物体を用いて、投写表示画面を指しながら説明をすることになる。従って、観察者からすると、スクリーン16前のプレゼンテータや物体の動作が表示画面を遮って行われることになる。
【0066】
なお、電気光学装置204としては、液晶ライトバルブとしての、強誘電液晶パネル、反強誘電液晶パネル、πセルモードの液晶パネル、TN液晶セルのセルギャップを狭く設定した液晶パネル、OCBモードの液晶パネルなど、高速応答性を有する各種の変調装置を適用することができる。
【0067】
また、このような投写型表示装置200は、主に、マイクロプロセッサ207と、タイミングジェネレータ208と、フレームメモリ209と、駆動制御回路210と、で構成される駆動回路211を備えている。この投写型表示装置200では、タイミングジェネレータ208で回転カラーフィルタ202の回転駆動と透過型の電気光学装置204の駆動タイミングを同期させて制御する。まず、画像信号を図示しないサンプリング回路でサンプリングさせる。そして、画像入力信号中の同期信号が、マイクロプロセッサ207およびタイミングジェネレータ208に送られる。それと同時に、画像信号中の画像データが、タイミングジェネレータ208によって制御されたタイミングでフレームメモリ209に書き込まれるようになっている。光源201から出射される白色光は、タイミングジェネレータ208により電気光学装置204の駆動タイミングに同期して回転する三色の回転カラーフィルタ202を透過することによって、光源光から赤色光、青色光、緑色光を順次分光・透過させて色光が生成され、各色光が電気光学装置204に照射されるようになっている。このように照射されたそれぞれの色光は、電気光学装置204を透過することにより光変調が施され投写レンズ205により拡大投写されて、スクリーン206に結像されてカラー画像表示を行なう。
【0068】
例えば、光源201からの光が回転カラーフィルタ202の赤色領域を透過するタイミングに同期させるように、タイミングジェネレータ208からは供給される読み出しタイミング信号に応じてフレームメモリ209から、これよりも前の駆動周期において予め記憶させた赤色成分の画像データが順次読み出され、その画像データを受ける駆動制御回路210は赤色成分用の画像データに応じて電気光学装置204の各画素を駆動する。タイミングジェネレータ208は、マイクロプロセッサ207の制御を受けて各構成要素のタイミングを同期させるようにタイミング制御するものである。電気光学装置204は液晶パネルからなる変調素子であって、画素がマトリクス状に配置されており、各画素毎に赤色光が透過されこの透過に伴って変調がなされ、赤色光の画像が生成されている。従って、画素毎に光強度の変調された赤色光は投写レンズ205に入射されスクリーン206に赤色光の画像が投写表示される。
【0069】
次に、回転カラーフィルタ202の青色領域を光源光が透過するタイミングでは、赤色光の場合と同様に、フレームメモリ209から青色光用の画像データが読み出され、それに応じて電気光学装置204の各画素がその画像データに応じて駆動され、青色光を変調して、スクリーン206に青色光の画像が投写表示される。次に、回転カラーフィルタ202の緑色領域を光源光が透過するタイミングでも、同様である。このように、三色の色光の画像が電気光学装置204で順次生成されて、これをサイクリックに繰り返すことにより、カラー画像が表示されることになる。なお、色光生成の順序は本実形態に限定されず、いかなる順序でも構わない。
【0070】
このような本実施形態においては、回転カラーフィルタ202の三色光の繰り返し周波数(フレーム周波数)は、180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上になるようにタイミングジェネレータ208によって回転数が制御されると共に、電気光学装置204での色画像生成のタイミングを各色光の生成タイミングと一致するように設定されている。
【0071】
本実施形態では、実施形態1と同様に、上記のような周波数で色順次駆動を行なうことにより、視覚系色識別感度を低くする表示を行うことができ、スクリーン206を見ている際に、スクリーン206の前に位置するプレゼンテータや物体の動作に起因する眼球運動が発生しても、カラーブレイクアップが知覚されることを軽減または消退させることができる。このため、カラー表示画像に対して違和感を受けることがなく、良好なプレゼンテーションを行うことができる。このため、本実施形態では、観察者に疲労感を与えることの少ない良好なカラー表示画像を得ることができる。
【0072】
以上、実施形態1〜3について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、構成の要旨に付随する各種の変更が可能である。本発明は上記した実施形態以外に、透過型のライトバルブを用いた投写型表示装置や、表示画面の前方または側方に光源を有する反射型表示装置など各種のカラー表示装置に適用することも可能である。
【0073】
さらに、本発明においては、生成される複数の色光は、赤色光、青色光、緑色光の三色光で説明したが、シアン光、マゼンダ光、イエロー光の三色光でも良いし、二色光や三色光より多い色光の切替えでも構わない。
【0074】
実施形態1および3では、複数の色光(例えば赤色光、青色光、緑色光の三色光)成分を含む光源光を発する一つの光源からの光源光を回転カラーフィルタ(12、202)を透過することにより各色光を発生させていたが、図5の色順次駆動照明システムのように、複数の色光のそれぞれを個別に発生する複数個の光源(赤色光光源、緑色光光源、青色光光源)をそれぞれ備えて、順次タイミングジェネレータ(18,208)により点灯する光源を順次選択して色光生成する構成にしても構わない。その場合でも、複数の色光を生成する繰り返し周波数が180Hz以上、好ましくは250Hz以上、さらに好ましくは300Hz以上となるように、投写型表示装置のタイミング制御した駆動を行うことにより、カラーブレイクアップ現象は低減又は抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、プレゼンテータの行なう動作に起因するカラーブレイクアップの知覚や、眼球運動に起因するカラーブレイクアップの知覚が生じない、時分割駆動方式のカラー表示装置およびカラー表示方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るカラー表示装置の実施形態1を示す構成説明図である。
【図2】視覚の色空間周波数特性を示すグラフである。
【図3】フレーム周波数と視覚系色空間周波数との関係を示すグラフである。
【図4】網膜移動速度とフレーム周波数との関係を求めるための実験装置を示す説明図である。
【図5】網膜移動速度とフレーム周波数との関係を求めるための実験装置の変形例を示す説明図である。
【図6】視覚系最適フレーム周波数特性を示すグラフである。
【図7】視覚系最適フレーム周波数特性を示すグラフである。
【図8】視覚系色弁別閾値特性を示すグラフである。
【図9】視覚系色弁別閾値特性を示すグラフである。
【図10】本発明に係るカラー表示装置の実施形態2を示す構成説明図である。
【図11】本発明に係る投写型表示装置の実施形態3を示す構成説明図である。
【図12】眼球運動によって網膜上にカラーバンドが形成されるメカニズムを示す説明図である。
【図13】色順次駆動方式によるカラー画像生成モデルを示す説明図。
【図14】色順次駆動方式と視覚系との組合せによるカラー画像生成モデルを示す説明図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
時間順次で、前記光源の光から複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する回転カラーフィルタと、
該複数の色光のそれぞれに対応した画像を生成し、該複数の色光を処理する電気光学装置と、
前記回転カラーフィルタの回転駆動と、前記電気光学装置の駆動タイミングとを同期させるように制御する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、前記所定の周波数が250Hz以上となるように、前記回転カラーフィルタの回転数を制御するカラー表示装置。
【請求項2】
互いに異なる色光を発光し、複数の色光を所定の周波数で繰り返し発光する複数の光源と、
該複数の色光のそれぞれに対応した画像を生成し、該複数の色光を処理する電気光学装置と、
前記複数の光源の点灯タイミングと、前記電気光学装置の駆動タイミングとを同期させるように制御する駆動回路と、
を有し、
前記駆動回路は、前記所定の周波数が250Hz以上となるように、前記複数の光源の点灯タイミングを制御するカラー表示装置。
【請求項3】
前記所定の周波数は300Hz以上である、請求項1または2記載のカラー表示装置。
【請求項4】
前記電気光学装置は反射型の電気光学装置である、請求項1〜3のいずれかに記載のカラー表示装置。
【請求項5】
前記電気光学装置は液晶装置である、請求項4記載のカラー表示装置。
【請求項6】
前記電気光学装置はデジタルマイクロミラーデバイスである、請求項4記載のカラー表示装置。
【請求項7】
前記電気光学装置は透過型電気光学装置である、請求項1〜3のいずれかに記載のカラー表示装置。
【請求項8】
前記画像を投写するレンズをさらに有した、請求項1〜7のいずれかに記載のカラー表示装置。
【請求項1】
光源と、
時間順次で、前記光源の光から複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する回転カラーフィルタと、
該複数の色光のそれぞれに対応した画像を生成し、該複数の色光を処理する電気光学装置と、
前記回転カラーフィルタの回転駆動と、前記電気光学装置の駆動タイミングとを同期させるように制御する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、前記所定の周波数が250Hz以上となるように、前記回転カラーフィルタの回転数を制御するカラー表示装置。
【請求項2】
互いに異なる色光を発光し、複数の色光を所定の周波数で繰り返し発光する複数の光源と、
該複数の色光のそれぞれに対応した画像を生成し、該複数の色光を処理する電気光学装置と、
前記複数の光源の点灯タイミングと、前記電気光学装置の駆動タイミングとを同期させるように制御する駆動回路と、
を有し、
前記駆動回路は、前記所定の周波数が250Hz以上となるように、前記複数の光源の点灯タイミングを制御するカラー表示装置。
【請求項3】
前記所定の周波数は300Hz以上である、請求項1または2記載のカラー表示装置。
【請求項4】
前記電気光学装置は反射型の電気光学装置である、請求項1〜3のいずれかに記載のカラー表示装置。
【請求項5】
前記電気光学装置は液晶装置である、請求項4記載のカラー表示装置。
【請求項6】
前記電気光学装置はデジタルマイクロミラーデバイスである、請求項4記載のカラー表示装置。
【請求項7】
前記電気光学装置は透過型電気光学装置である、請求項1〜3のいずれかに記載のカラー表示装置。
【請求項8】
前記画像を投写するレンズをさらに有した、請求項1〜7のいずれかに記載のカラー表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−15846(P2013−15846A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180288(P2012−180288)
【出願日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【分割の表示】特願2008−130865(P2008−130865)の分割
【原出願日】平成11年12月1日(1999.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【分割の表示】特願2008−130865(P2008−130865)の分割
【原出願日】平成11年12月1日(1999.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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