説明

カラー電子写真用転写紙

【課題】重合トナーを用いた電子写真画像形成において、定着不良及び転写不良のない画像を得ることができるカラー電子写真用転写紙を提供すること。
【解決手段】B=ガーレー剛度/透気度2 (mgf/s2)で示される指数Bが0.05以下であることを特徴とするカラー電子写真用転写紙。パルプのろ水度が300ml以上450ml以下であり、紙中填料5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする。又、スーパーカレンダー処理を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用転写紙、具体的には、カラー電子写真画像形成装置に使用されるカラー電子写真用転写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を採用したカラー画像形成装置における多重転写装置としては、例えば、中間転写ロール又は中間転写ベルト等の中間転写体を用い、各色のトナー像を順次一旦中間転写体に静電転写して4色のトナー像を形成し、一括して用紙等の記録媒体に転写する中間転写方式がある。
【0003】
【特許文献1】特開昭55−142799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来例の転写装置では次のような不具合があった。
【0005】
上記転写装置において、例えば23℃、5%RH等の低湿環境下で、比較的抵抗の高くなった記録材を転写する場合、以下に説明する「爆発」及び「飛び散り」と呼ばれる転写不良による画像品質の低下という不具合が発生した。
【0006】
「爆発」…低温、低湿環境下で、主に高抵抗紙を用いた場合に生じる現象で、例えば、画像サンプル上では、ベタ部の周りの白部にトナーが爆発したように飛散して、画像品質を低下させる転写不良のことである。これは、画像上に一旦転写された未定着のトナー像が転写紙裏の余剰の電荷の影響を受け、互いに反発を起こして、爆発したように飛び散るためと考えられている。
【0007】
「飛び散り」…トナーが転写される際に所定の位置に転写されず任意の方向に飛び散ってしまう現象で、例えば、画像サンプル上では、文字部の周りの輪郭がぼけたようになり、文字画像等を乱し、画像品質を低下させる転写不良のことである。
【0008】
このような不具合を解決する特許文献1等に示されているように、用紙の電気抵抗を或る特定の範囲に限定する方法があるが、この方法だけでは十分な効果とは言えなかった。
【0009】
本発明の目的は、重合トナーを用いた電子写真画像形成において、定着不良及び転写不良のない画像を得ることができるカラー電子写真用転写紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
下記式で示される指数Bが0.05以下であることを特徴とするカラー電子写真用転写紙。
【0011】
B=ガーレー剛度/透気度2(mgf/s2
パルプのろ水度が300l以上450ml以下、紙中填料量5%以上30%以下であり、スーパーカレンダー処理を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカラー電子写真用転写紙においては、重合トナーを用いた電子写真画像形成において、定着不良及び転写不良のない画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは、「爆発」、「飛び散り」等の低湿環境下での異常画像の発生は、転写用紙の転写部位通過後の挙動と密接な関係があり、その結果、転写用紙の剛度が大きく影響していることを見出した。更に、本発明者らは、「爆発」、「飛び散り」等の低湿環境下での異常画像の発生は、転写用紙の空隙率とも密接な相関があり、その結果、転写用紙の透気度が大きく影響していることを見出した。
【0014】
これらの結果から、本発明者らは鋭意検討の結果、転写用紙の抵抗だけでなく、下式に示される指数Bを0.05以下にすることで、「爆発」、「飛び散り」等の低湿環境下での異常画像の発生が低減できることを見出した。

B=ガーレー剛度/透気度2(mgf/s2
上記Bの値を所望値にする方法としては、転写紙中の空隙を繊維以外の物質で埋めることがある。充填には、クレー、タルク、チタンホワイト、炭酸カルシウム等の填料を使用することができる。
【0015】
又、繊維を叩解することにより、繊維を毛羽立たせたり、微細繊維(単繊維)化させることにより、転写紙中の空隙を埋めて目的の透気度、剛度を得ることもできる。このようにパルプの叩解を向上することにより、抄紙において繊維同士の絡み付きの度合いを向上し、紙の中の空隙を減少することができ、所望の透気度を得ることができ、剛度も低下する。更に、スーパー・カレンダー処理を行うことにより、平滑化処理を施し、転写紙中の空隙を押し潰して目的の透気度、剛度を得ることもできる。
【0016】
尚、本発明の転写紙のBの値の調整法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0017】
以下に、本発明の好ましい態様を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0018】
本転写用紙の原料としては、L.B.K.P(広葉樹クラフトパルプ)やN.B.K.P(針葉樹クラフトパルプ)等のパルプを用い、これにロジン、硫酸バンド、澱粉、カゼイン、珪酸の如きサイズ剤を加えて叩解処理する。このとき、先ほど規定したろ水度に叩解の程度を合わせることが所望の特性を得るのには望ましい。
【0019】
更に、酸化チタン、カオリン、硫化亜鉛、滑石等の填料を加えて長網抄紙機等の抄紙機で抄紙を行う。
【0020】
図1は転写紙を製造する場合の製造工程の説明図である。
【0021】
図1の製造工程においては、予めパルプに填料、サイズ剤、紙力増強剤としてのバインダー、染料及び抵抗調整剤等の紙料を加えたパルプ懸濁液をストックインレット31より矢印R方向に移動するワイヤー32上に噴流し、ワイヤーパートで脱水し、得られたパルプシートは、プレスパートで更に脱水された後、第1ドライパートで乾燥されて原紙が形成される。この乾燥された原紙は、サイズプレスパートでロールコーター33により表面微塗工用塗工液が塗工された後、第2ドライパートで乾燥され、カレンダーパートで複数本のロール34によって加圧・圧縮され、平滑度を調整した後、得られた転写紙は、リールパートで巻き取られる。
【0022】
転写紙の表面固有抵抗値を低下させるための低抵抗処理剤としては、カチオン系低抵抗処理剤及びアニオン系の低抵抗処理剤等が使用可能であり、具体的には、下記のものが挙げられる。
【0023】
カチオン系の低抵抗処理剤としては、例えば、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアリルアンモニウムクロライド、ポリジエチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミンハイドロクロライド、ポリ−4−ビニル−Nメチルピリジニウムクロライド、ポリ−2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルメチルアンモニウムクロライド、ポリ−2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルエチルアンモニウムクロライド、ポリ−2−ヒドロキシ−3−アクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリ−2−ヒドロキシ−3−アクリロキシプロピルトリエチルアンモニウムクロライド、ポリ−2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリ−2−メタクリロキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、ポリ−2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリ−2−アクリロキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、ポリスチレンアクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリスチレンアクリル酸エチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩が挙げられ、これらは単独又は併用して使用することができる。
【0024】
アニオン系の低抵抗処理剤としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、ポリアクリル酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、ポリメタクリル酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、ポリビニルスルホン酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、ポリビニルリン酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)等の高分子電解質が挙げられ、これらは単独又は併用して使用することができる。
【0025】
又、サイズプレスパートで微塗工される塗工液は無機顔料や低抵抗処理剤等を分散させたもであり、これを片面当たり、乾燥固形分で好ましくは1〜10g/m2
となるように表面微塗工する。このサイズプレスパートでの微塗工は、転写用紙の平滑性を得るためや、表面抵抗を調整するためには行われることが望ましい。
【0026】
表面微塗工に用いられる無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン及びクレー等の一般に塗工紙において用いられる無機顔料を用いることができる、これらは、単独或は混合して用いることができる。これらの無機顔料と共に使用する水溶性バインダーとしては、澱粉、ポリビニルアルコール、ラテックスエマルジョンを挙げることができ、これらは単独或は混合して用いることができる。
【0027】
又、表面微塗工に用いられる低抵抗処理剤は、上記に述べたものを用いることができる。
【0028】
本発明における各種物性値は、以下の測定方法により測定したものである。
【0029】
転写材の坪量は、JIS−P−8124に準じて測定した。
【0030】
転写材の透気度は、JIS−P−8117に準じて測定した。
【0031】
転写材のガーレー剛度は、J.TAPPI No.40に準じて測定した。
【0032】
転写材のパルプのろ水度は、JIS−P−8121に準じて測定した。
【0033】
表面固有抵抗値は、JIS−K−6911に準じて測定した。
【0034】
以下、実施例及び比較例に従って本発明を更に具体的に説明する。尚、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
長網抄紙を用いた図1に示す製造工程に基づき、L.B.K.P(広葉樹パルプ)(ろ水度300ml)に、塗工前の原紙(パルプシート)の乾燥重量基準で30重量%のカオリン、0.5重量%の硫酸バンド、0.3重量%のロジンサイズ及び3.2重量%の水溶性バインダーを混合して調製したパルプ懸濁液を用いて抄紙し、第1ドライパートで乾燥した後、ロールコーターにより、表面微塗工用塗工液を原紙の片面に対して2.0g/m2
ずつ両面側に塗工して、第2ドライパートで塗工液を乾燥し、6本ロールを用いたカレンダーパートで平滑化処理を施して転写紙を製造した。このとき、抄紙速度に合わせて紙料であるパルプ懸濁液の濃度を調整し、坪量を209g/m2にした。更に、この転写紙にスーパーカレンダー処理を行った。
【0036】
得られた転写紙は、ガーレー剛度が710mgf、透気度が128秒であった。
【0037】
上記で製造した転写紙に対し、電子写真画像形成装置を用いて画像を形成し、23℃、5%Rhの環境下で転写の評価を行った結果を表1に示した。この結果、爆発、飛び散りの問題ないレベルの画像を得ることができた。
【実施例2】
【0038】
長網抄紙を用いた図1に示す製造工程に基づき、L.B.K.P(広葉樹パルプ)(ろ水度300ml)に、塗工前の原紙(パルプシート)の乾燥重量基準で5重量%のカオリン、0.5重量%の硫酸バンド、0.3重量%のロジンサイズ及び3.2重量%の水溶性バインダーを混合して調製したパルプ懸濁液を用いて抄紙し、第1ドライパートで乾燥した後、ロールコーターにより、表面微塗工用塗工液を原紙の片面に対して2.0g/m2ずつ両面側に塗工して、第2ドライパートで塗工液を乾燥し、6本ロールを用いたカレンダーパートで平滑化処理を施して転写紙を製造した。このとき、抄紙速度に合わせて紙料であるパルプ懸濁液の濃度を調整し、坪量を90g/m2にした。
【0039】
得られた転写紙は、ガーレー剛度が97. 8mgf、透気度が68. 6秒であった。
【0040】
上記で製造した転写紙に対し、電子写真画像形成装置を用いて画像を形成し、23℃、5%Rhの環境下で転写の評価を行った結果を表1に示した。この結果、爆発、飛び散りのない画像を得ることができた。
【実施例3】
【0041】
実施例2において、パルプのろ水度を450ml、填料の割合を30%にすることを除いては実施例2と同様にして、表1に示す各種物性を有する転写紙を製造した。得られた転写紙を用いて実施例2と同様の方法で評価を行ったところ、爆発、飛び散りのない画像を得ることができた。この結果を表1に示した。
【実施例4】
【0042】
長網抄紙を用いた図1に示す製造工程に基づき、L.B.K.P(広葉樹パルプ)(ろ水度300ml)に、塗工前の原紙(パルプシート)の乾燥重量基準で5重量%のカオリン、0.5重量%の硫酸バンド、0.3重量%のロジンサイズ及び3.2重量%の水溶性バインダーを混合して調製したパルプ懸濁液を用いて抄紙し、第1ドライパートで乾燥した後、ロールコーターにより、表面微塗工用塗工液を原紙の片面に対して2.0g/m2ずつ両面側に塗工して、第2ドライパートで塗工液を乾燥し、6本ロールを用いたカレンダーパートで平滑化処理を施して転写紙を製造した。このとき、抄紙速度に合わせて紙料であるパルプ懸濁液の濃度を調整し、坪量を52g/m2にした。
【0043】
得られた転写紙は、ガーレー剛度が21. 2mgf、透気度が28. 9秒であった。
【0044】
上記で製造した転写紙に対し、電子写真画像形成装置を用いて画像を形成し、23℃、5%Rhの環境下で転写の評価を行った結果を表1に示した。この結果、爆発、飛び散りの問題ないレベルの画像を得ることができた。
【実施例5】
【0045】
実施例4において、パルプのろ水度を450mlにし、スーパーカレンダー処理をすることを除いては実施例2と同様にして、表1に示す各種物性を有する転写紙を製造した。得られた転写紙を用いて実施例4と同様の方法で評価を行ったところ、爆発、飛び散りのない画像を得ることができた。この結果を表1に示した。
【実施例6】
【0046】
実施例4において、パルプのろ水度を450mlにし、填料の割合を30%にすることを除いては実施例4と同様にして、表1に示す各種物性を有する転写紙を製造した。得られた転写紙を用いて実施例4と同様の方法で評価を行ったところ、爆発、飛び散りのない画像を得ることができた。この結果を表1に示した。
<比較例1>
実施例1において、パルプのろ水度を450ml、填料の割合を5%とし、スーパーカレンダー処理を行わないことを除いては実施例1と同様にして、表1に示す各種物性を有する転写紙を製造した。得られた転写紙を用いて実施例1と同様の方法で評価を行ったところ、爆発、飛び散りは許容できないレベルであった。この結果を表1に示した。
<比較例2>
実施例2において、パルプのろ水度を450mlとすることを除いては実施例2と同様にして、表1に示す各種物性を有する転写紙を製造した。得られた転写紙を用いて実施例1と同様の方法で評価を行ったところ、爆発、飛び散りは許容できないレベルであった。この結果を表1に示した。
<比較例3>
実施例4において、パルプのろ水度を450mlとすることを除いては実施例2と同様にして、表1に示す各種物性を有する転写紙を製造した。得られた転写紙を用いて実施例1と同様の方法で評価を行ったところ、爆発、飛び散りは許容できないレベルであった。この結果を表1に示した。
【0047】
上記実施例1〜6及び比較例1〜3の評価結果を表1にまとめて示す。
【0048】
尚、爆発、飛び散りに関する評価は、以下の評価方法に従って評価した。
<爆発、飛び散り>
23℃/5%Rh下において、マゼンタとシアンの2色によるベタ画像(各0.5g/A4)を、環境に十分放置した転写紙上に形成、定着し、これの爆発、飛び散りを目視により判断し評価を行った。
【0049】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の転写紙を抄紙する際の代表的な抄紙工程の概略図である。
【符号の説明】
【0051】
31 ストックインレット
32 ワイヤー
33 ロールコーター
34 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で示される指数Bが0.05以下であることを特徴とするカラー電子写真用転写紙。
B=ガーレー剛度/透気度2(mgf/s2
【請求項2】
パルプのろ水度が300ml以上450ml以下であることを特徴とする請求項1記載のカラー電子写真用転写紙。
【請求項3】
紙中填料5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のカラー電子写真用転写紙。
【請求項4】
スーパーカレンダー処理を行うことを特徴とする請求項1記載のカラー電子写真用転写紙。

【図1】
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【公開番号】特開2006−39114(P2006−39114A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217379(P2004−217379)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】