説明

カルシトニン遺伝子関連ペプチドに対するアンタゴニスト抗体を投与することによって内臓痛を治療するための方法

【課題】機能性腸障害、炎症性腸疾患、および間質性膀胱炎に関連する痛みを含む内臓痛を予防または治療するための方法を提供すること。
【解決手段】抗CGRPアンタゴニスト抗体を投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年8月28日に出願された米国仮特許出願第61/237,901号の優先権の利益を主張するものであり、前記出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本願は電子的に出願されるものであり、電子的に提出された、テキストフォーマットの配列表を含む。テキストファイルは、2010年8月11日に作製され28KBのサイズを有する、「PC33920A_SeqList.txt」というタイトルの配列表を含有する。このテキストファイルに含有される配列表は明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本発明は、抗CGRP抗体を用いて内臓痛および/または内臓痛の症状を治療および/または予防する方法、ならびに内臓痛および/または内臓痛の症状の予防および/または治療において使用するための抗CGRP抗体に関する。
【背景技術】
【0004】
内臓痛は、患者が病院を訪れる主な原因であるが、それにも関わらず、内臓痛の有効な治療は限られている。内臓痛は、臨床的に管理することが困難であり、鎮痛剤の使用を必要とすることが多い。鎮痛剤は広く用いられているが、用量を制限するその重篤な副作用により、有効性が低下することが多い。さらに、鎮痛剤は、中毒および身体的依存性のリスクを有し、便秘および多くの場合において禁忌であり生活の質を低下させる他の望ましくない副作用を誘発する。
【0005】
内臓痛は、身体の内部器官を包含する内臓に関連する痛みである。これらの器官には、例えば、心臓、肺、生殖器、膀胱、尿管、消化器、肝臓、膵臓、脾臓、および腎臓が含まれる。例えば脾炎、陣痛、腸閉塞に関連する腹部手術、膀胱炎、月経期間、または月経困難症などの、内臓痛が存在し得る様々な状態がある。同様に、腎臓痛、上腹部痛、胸膜痛、および痛みを伴う胆石疝痛、虫垂炎痛は全て、内臓痛とみなされ得る。胸骨下痛または初期の心筋梗塞による圧力もまた内臓性のものである。胃、十二指腸、または結腸の疾患は、内臓痛の原因となり得る。内臓痛の原因となる、一般に遭遇する胃腸(GI)障害には、機能性腸障害(FBD)および炎症性腸疾患(IBD)が含まれる。これらのGI障害には、現在では中程度にしか制御されていない広範な疾患状態が含まれ、この疾患状態には、FBDに関しては、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、および機能性腹痛症候群(FAPS)が含まれ、IBDに関しては、クローン病、回腸炎、および潰瘍性大腸炎が含まれ、これらの全ては通常、内臓痛をもたらす。
【0006】
IBSは、世界中の成人および若年者の10〜20%が罹患している(Longstrethら、2006、Gastroenterology 130(5):1480〜91)。これらの患者が治療を模索する主な理由は、内臓の感受性が増強したことによると考えられている慢性的な内臓痛である(Aziz、2006、Gastroenterology 131(2):661〜4)。IBSを有する患者は、結腸直腸の膨張に対する内臓の感覚的閾値が低いことが示されており、このことは、内臓痛の症状に大きく相関している(Delafoyら、2006、Gut 55(7):940〜5)。ラットにおける、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)により誘発された大腸炎の後の結腸直腸の膨張は、内臓過敏のメカニズムを研究するために多くの研究者により用いられている動物モデルである(Gayら、2006、Neuroimmunomodulation 23;13(2):114〜121、Delafoyら、2006、Adamら、2006、Pain 123(1〜2):179〜86)。
【0007】
間質性膀胱炎(IC)は、臨床において尿意逼迫、頻尿、および慢性的な骨盤痛に特徴を有する、痛みを伴う膀胱症候群である。臨床研究により、これが内臓の求心性感覚神経の過敏を伴うことが示されており、前記過敏においては、膀胱充満感の発生が、膀胱の粘膜下層における神経密度の増大、および神経性炎症のさらなる標準的な容積の痕跡を示す患者よりも少なく、かつ膀胱充満感が、痛みを伴うものとして認識される。ICの組織病理像から、内臓性求心路の関与が示唆される。
【0008】
内臓痛は、例えば炎症、膨張、または圧力の増大に応じて生じ得る。内臓痛は内臓の損傷により常に引き起こされるわけではない。さらに、内臓痛は広範性のものであり、他の箇所に移行し得、かつ他の自律神経系および運動系の反射(例えば、吐き気、腎疝痛からの腰部筋肉の緊張)に関連し得る(Lancet 1999、353、2145〜48)。
【0009】
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、カルシトニン、アドレノメデュリン、およびアミリンを含むペプチドファミリーに属する、37個のアミノ酸からなる神経ペプチドである。ヒトにおいて、2つの形態のCGRP(α−CGRPおよびβ−CGRP)が存在し、それらは類似の活性を有する。それらは3つのアミノ酸が異なり、分布の差異を示す。少なくとも2つのCGRP受容体サブタイプもまた、活性の差異の原因となり得る。CGRPは中枢神経系における神経伝達物質であり、CGRPを含有する神経突起が血管と密接に関連している末梢における、強力な血管拡張物質であることが示されている。CGRP介在性の血管拡張もまた、血漿の溢出および微小血管系の血管拡張をもたらし、かつ片頭痛に存在する、一連の事象の一部として、神経性炎症に関連する。
【0010】
脊髄に投与した低分子の選択的CGRPアンタゴニストは、神経障害性および侵害受容性の痛みの状態の治療において有用であることが示されており(Adwanikarら、Pain、2007、132(1〜2):53〜66)、このことは、脊髄における内因性のCGRPシグナル伝達の除去が抗侵害受容性効果を有することを示唆している。報告によると、CGRPシグナル伝達の遮断は、CGRP受容体アンタゴニストであるCGRP8−37を全身に注射することにより内臓過敏(VH)を回復に向かわせることにおいて有効であることが実証されている(Delafoyら、2006;Plourdeら、1997、Am J Physiol.273(1 Pt 1):G191〜6;JuliaおよびBueno、1997、Am J Physiol.272(1 Pt 1):G141〜6)。しかし、CGRP8−37はインビボでの半減期が非常に短く、したがって、有用な治療法ではない。したがって、内臓痛を治療および予防するための新たな治療法を同定する重大な医学的必要が存在する。
【0011】
本願を通して、様々な刊行物(特許および特許出願を含む)が参照される。これらの刊行物の開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/237,901号
【特許文献2】WO2007/054809
【特許文献3】米国特許第4,816,567号
【特許文献4】WO99/58572
【特許文献5】米国特許第5,545,807号
【特許文献6】米国特許第5,545,806号
【特許文献7】米国特許第5,569,825号
【特許文献8】米国特許第5,625,126号
【特許文献9】米国特許第5,633,425号
【特許文献10】米国特許第5,661,016号
【特許文献11】米国特許第5,750,373号
【特許文献12】米国特許第5,500,362号
【特許文献13】米国特許第5,821,337号
【特許文献14】WO2007/076336
【特許文献15】PCT/IB2009/050849
【特許文献16】PCT/IB2009/050852
【特許文献17】PCT/GB99/01441
【特許文献18】英国特許出願第9809951.8号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Longstrethら、2006、Gastroenterology 130(5):1480〜91
【非特許文献2】Aziz、2006、Gastroenterology 131(2):661〜4
【非特許文献3】Delafoyら、2006、Gut 55(7):940〜5
【非特許文献4】Gayら、2006、Neuroimmunomodulation 23;13(2):114〜121
【非特許文献5】Adamら、2006、Pain 123(1〜2):179〜86
【非特許文献6】Lancet 1999、353、2145〜48
【非特許文献7】Adwanikarら、Pain、2007、132(1〜2):53〜66
【非特許文献8】Plourdeら、1997、Am J Physiol.273(1 Pt 1):G191〜6
【非特許文献9】JuliaおよびBueno、1997、Am J Physiol.272(1 Pt 1):G141〜6
【非特許文献10】Molecular Cloning:A Laboratory Manual、second edition(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press
【非特許文献11】Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984)
【非特許文献12】Methods in Molecular Biology、Humana Press
【非特許文献13】Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press
【非特許文献14】Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987)
【非特許文献15】Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press
【非特許文献16】Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993〜1998)J.WileyおよびSons
【非特許文献17】Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)
【非特許文献18】Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編)
【非特許文献19】Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987)
【非特許文献20】Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987)
【非特許文献21】PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994)
【非特許文献22】Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991)
【非特許文献23】Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons、1999)
【非特許文献24】Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997)
【非特許文献25】Antibodies(P.Finch、1997)
【非特許文献26】Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRL Press、1988〜1989)
【非特許文献27】Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000)
【非特許文献28】Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999)
【非特許文献29】The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)
【非特許文献30】KohlerおよびMilstein、1975、Nature、256:495
【非特許文献31】McCaffertyら、1990、Nature、348:552〜554
【非特許文献32】Vaughanら、1996、Nature Biotechnology、14:309〜314
【非特許文献33】Sheetsら、1998、PNAS(USA)95:6157〜6162
【非特許文献34】HoogenboomおよびWinter、1991、J.Mol.Biol.、227:381
【非特許文献35】Marksら、1991、J.Mol.Biol.、222:581
【非特許文献36】Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77、1985
【非特許文献37】Boernerら、1991、J.Immunol.、147(1):86〜95
【非特許文献38】Wong HCら、Hybridoma 12:93〜106、1993
【非特許文献39】Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、(5th ed.、1991、National Institutes of Health、Bethesda MD)
【非特許文献40】Al−lazikaniら、(1997)J.Molec.Biol.273:927〜948)
【非特許文献41】Kabatら、Sequences of Proteins of Imunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991
【非特許文献42】RavetchおよびKinet、1991、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92
【非特許文献43】Capelら、1994、Immunomethods、4:25〜34
【非特許文献44】de Haasら、1995、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41
【非特許文献45】Guyerら、1976、J.Immunol.、117:587
【非特許文献46】Kimら、1994、J.Immunol.、24:249
【非特許文献47】Gazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163(1996)
【非特許文献48】Clynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656
【非特許文献49】Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th edition、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990
【非特許文献50】Remington、The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing、2000
【非特許文献51】Katzら、Surg Clin North Am.、1999、79(2):231〜52
【非特許文献52】Caraceniら、J Pain Symptom Manage、2002、23(3):239〜55
【非特許文献53】Drossmanら、1995、Digestive Diseases and Sciences 40(5):986〜995
【非特許文献54】Francisら、1997、Aliment Pharmacol Ther.、11(2):395〜402
【非特許文献55】Tanら、Clin.Sci.(Lond).89:565〜73、1995
【非特許文献56】Plourdeら、Peptides 14:1225〜1229、1993
【非特許文献57】Eur.J.Immunol.、1999、29:2613〜2624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、個体における内臓痛および/または内臓痛の症状を予防および/または治療するための方法を提供し、当該方法は、治療有効量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を、内臓痛に罹患しているかまたは内臓痛のリスクがある個体に投与することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は末梢に投与される。他の実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、経口で、舌下に、吸入を介して、経皮で、皮下に、静脈内に、動脈内に、関節内に、関節周辺に、局所的に、かつ/または筋肉内に投与される。
【0017】
いくつかの実施形態において、内臓痛は、機能性腸障害(FBD)に関連する。FBDは、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、および機能性腹痛症候群(FAPS)であり得る。いくつかの実施形態において、内臓痛は、炎症性腸疾患(IBD)に関連する。IBDは、クローン病、回腸炎、または潰瘍性大腸炎であり得る。いくつかの実施形態において、内臓痛は、腎疝痛、月経困難症、膀胱炎、月経期間、陣痛、閉経、前立腺炎、または膵炎に関連する。いくつかの実施形態において、内臓痛は、間質性膀胱炎(IC)に関連する。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体はCGRPに結合し、CGRPがその受容体に結合することを遮断し、CGRP受容体の活性化を遮断するかもしくは低減させ、CGRPの生物学的活性を阻害するか、遮断するか、抑制するか、もしくは低減させ、CGRPのクリアランスを増大させ、かつ/またはCGRPの合成、産生、もしくは放出を阻害する。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、50nM以下のKD(37℃で表面プラズモン共鳴によって測定される)でCGRPに結合し得、かつ/または少なくとも7日間のインビボでの半減期を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPのC末端領域に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、配列GSKAF(配列番号39)により規定されるエピトープを特異的に認識する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、配列番号1または19にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVHドメインを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、配列番号2または20にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体はさらに、配列番号1または19にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVHドメインを含む。他の実施形態において、抗CGRP抗体は、(a)配列番号3、21、33、34、36、または37で示されるCDR H1、(b)配列番号4、22、35、または38で示されるCDR H2、(c)配列番号5または23で示されるCDR H3、(d)配列番号6または24で示されるCDR L1、(e)配列番号7または25で示されるCDR L2、(f)配列番号8または26で示されるCDR L3、ならびに(g)L1、L2、およびH2の変異体からなる群から選択される、少なくとも1つのCDRを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体は、C末端のリジンを有するかまたは有さない、配列番号11で示される、抗体G1の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体は、配列番号12で示される、抗体G1の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体は、C末端のリジンを有するかまたは有さない、配列番号11で示される、抗体G1の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列と、配列番号12で示される、抗体G1の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列とを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体は、C末端のリジンを有するかまたは有さない、配列番号29で示される、抗体G2の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体は、配列番号30で示される、抗体G2の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体は、配列番号29で示される、抗体G2の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列と、配列番号30で示される、抗体G2の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列とを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、配列番号1にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVHドメインと、配列番号2にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVLドメインとを含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ATCC受託番号がPTA−6867の発現ベクターにより産生される重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ATCC受託番号がPTA−6866の発現ベクターにより産生される軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ATCC受託番号がPTA−6867およびPTA−6866の発現ベクターにより産生される。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗CGRPは、1カ月当たり1回、2回、3回、または4回の間で、皮下または静脈内注射により投与される。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、5〜100mg/mlの濃度で投与される。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、1〜100mg/kg体重の濃度で投与される。
【0026】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、運動協調または注意のCNS機能低下をもたらさない。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、中枢、脊髄、または髄腔内には投与されない。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、中枢、脊髄、または髄腔内に浸透する分子ではない。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、1つまたは複数のさらなる薬理学的に活性な化合物との組み合わせにおいて、別々に、連続して、または同時に投与される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のさらなる薬理学的に活性な化合物は、オピオイド系鎮痛薬、例えば、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、またはペンタゾシン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、またはゾメピラック、またはその薬学的に許容できる塩、バルビツール系鎮静薬、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタール、メフォバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール、またはチオペンタール、またはその薬学的に許容できる塩、鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、例えば、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、またはトリアゾラム、またはその薬学的に許容できる塩、鎮静作用を有するH1アンタゴニスト、例えば、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミン、またはクロルシクリジン、またはその薬学的に許容できる塩、グルテチミド、メプロバメート、メタカロン、またはジクロラルフェナゾン、またはその薬学的に許容できる塩などの鎮静薬、骨格筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール、またはオルフェナジン、またはその薬学的に許容できる塩、NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、デキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)もしくはその代謝産物であるデキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキノン、またはシス−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸、またはその薬学的に許容できる塩、α−アドレナリン作動薬、例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、または4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、三環系抗鬱薬、例えば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、またはノルトリプチリン、抗けいれん薬、例えば、カルバマゼピン、またはバルプロエート、タキキニン(NK)アンタゴニスト、とりわけ、NK−3、NK−2、またはNK−1アンタゴニスト、例えば、(αR,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[(2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(MK−869)、ラネピタント、ダピタント、または3−[[2−メトキシ−5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]メチルアミノ]−2−フェニル−ピペリジン(2S,3S)、ムスカリン性アンタゴニスト、例えば、オキシブチン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム、またはダリフェナシン、COX−2阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、またはバルデコキシブ、非選択的COX阻害剤(好ましくはGI保護を有する)、例えば、ニトロフルルビプロフェン(HCT−1026)、コールタール鎮痛薬、とりわけパラセタモール、ドロペリドールなどの神経遮断薬、バニロイド受容体アゴニスト(例えば、レジニフェラトキシン)またはアンタゴニスト(例えば、カプサゼピン)、プロプラノロールなどのβ−アドレナリン作動薬、メキシレチンなどの局所的麻酔薬、デキサメタゾンなどのコルチコステロイド、セロトニン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、コリン作用性(ニコチン性)鎮痛薬、Tramadol(登録商標)、シルデナフィル、バルデナフィル、またはタダラフィルなどのPDEV阻害剤、ガバペンチンまたはプレガバリンなどのα−2−δリガンド、およびカンナビノイドから選択される。
【0028】
本発明はさらに、内臓痛および/または内臓痛の症状を予防および/または治療するための医薬品の製造のための抗CGRPアンタゴニスト抗体の使用を提供する。いくつかの実施形態において、医薬品は末梢に投与するために調製される。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、投与されると末梢に作用する。
【0029】
本発明はさらに、抗CGRPアンタゴニスト抗体および薬学的に許容できる担体を含む、個体における内臓痛および/または内臓痛の症状を治療および/または予防するための医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は末梢に投与するために調製される。
【0030】
本発明はさらに、個体における内臓痛および/または内臓痛の症状を治療および/または予防するための医薬組成物と、内臓痛および/または内臓痛の症状を治療および/または予防するための、治療有効量の前記医薬組成物を個体に末梢投与するための指示とを含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】内臓痛モデルを示す図である。抗体4901(「4901」)またはPBS対照(「ビークル(vehicle)」)を、開腹術の後にトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を注射した動物に静脈内投与した。動物における内臓痛の閾値を、バルーン拡張を用いて試験した。痛みの閾値はmmHgで示す(y軸)。Shamは、開腹後にTNBSの代わりに対照(30%エタノール)溶液を注射した動物を表す。
【図1B】内臓痛モデルを示す図である。CGRP受容体アンタゴニストであるCGRP8−37またはPBS対照(「ビークル(vehicle)」)を、腹式術の後に、TNBS処理した動物に静脈内投与した。(A)と同様に、動物における内臓痛の閾値を、バルーン拡張を用いて試験し、痛みの閾値はmmHgで示す(y軸)。
【図2】内臓痛モデルを示す図である。抗体4901(「4901」)またはPBS対照(「ビークル(vehicle)」)を、動物に静脈内投与した。収縮の数(y軸)として測定される膀胱の運動性を、テルペンチン誘発性の膀胱炎症の1時間後、3時間後、および5時間後に試験した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において開示される発明は、治療有効量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を個体に投与することにより個体における内臓痛を治療および/または予防するための方法を提供する。
【0033】
本明細書において開示される発明はまた、G1に由来する抗CGRPアンタゴニスト抗体およびポリペプチドまたはWO2007/054809の表6に示されるその変異体を提供し、前記文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明はまた、これらの抗体およびポリペプチドを作製および使用する方法を提供する。
【0034】
一般的な技術
本発明の実施は、別段の指示がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技術を採用し、これらは当分野の技術の範囲内である。このような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、second edition(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993〜1998)J.WileyおよびSons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRL Press、1988〜1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献において全て説明されている。
【0035】
定義
「抗体」は、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子であり、前記結合は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して行われる。本明細書において用いられる場合、この用語はインタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけではなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分(ドメイン抗体など)を含む融合タンパク質、および、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾立体構造を包含する。抗体は、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体は何らかの特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに属し得る。IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという、免疫グロブリンの5つの主なクラスが存在し、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する、重鎖の定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体構造は周知である。
【0036】
本明細書において用いられる場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を言い、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る、起こり得る自然に生じる突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の抗原決定基に対するものである。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とするとは解釈されない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、1975、Nature、256:495に最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または、米国特許第4,816,567号に記載されているような組換えDNA法によって作製され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCaffertyら、1990、Nature、348:552〜554に記載されている技術を用いて形成されるファージライブラリーから単離することができる。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列)である、非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を言う。ほとんどの部分で、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、および生物学的活性を有するマウス、ラット、またはウサギなどのヒト以外の種(ドナー抗体)のCDRの残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基で置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体でも取り込まれたCDRまたはフレームワーク配列でも見られないが抗体の性能をさらに改良し最適化するために含まれる残基を含み得る。通常、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(例えば、重鎖可変領域および軽鎖可変領域)の実質的に全てを含み、この可変領域において、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。最適には、ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリンの定常領域または定常ドメイン(Fc)の少なくとも一部を含んでもよい。抗体は、WO99/58572に記載されているように修飾されたFc領域を有し得る。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体に対して改変された1つまたは複数のCDR(1個、2個、3個、4個、5個、6個)を有し、このCDRはまた、元の抗体から得られる1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、および/または当技術分野において知られているかもしくは本明細書において開示されているヒト抗体を作製するための何らかの技術を用いて作製されている抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。1つのこのような例は、マウス軽鎖ポリペプチドおよびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野において知られている様々な技術を用いて産生することができる。1つの実施形態において、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughanら、1996、Nature Biotechnology、14:309〜314、Sheetsら、1998、PNAS(USA)95:6157〜6162、HoogenboomおよびWinter、1991、J.Mol.Biol.、227:381、Marksら、1991、J.Mol.Biol.、222:581)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されているマウスに導入することにより作製することができる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、および米国特許第5,661,016号に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することにより調製することができる(このようなBリンパ球は、個体から回収することができるか、または、インビトロで免疫化されているものであり得る)。例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77、1985、Boernerら、1991、J.Immunol.、147(1):86〜95、および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0039】
本明細書において用いられる場合、「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」および「CGRP」という用語は、任意の形態のカルシトニン遺伝子関連ペプチド、およびCGRPの活性の少なくとも一部を維持しているその変異体を言う。例えば、CGRPは、α−CGRPまたはβ−CGRPであり得る。本明細書において用いられる場合、CGRPには、全ての哺乳動物種、例えば、ヒト、イヌ科、ネコ科、ウマ科、およびウシ科の天然のCGRP配列が含まれる。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「抗CGRPアンタゴニスト抗体」(ほぼ同じ意味で「抗CGRP抗体」とも呼ばれる)は、CGRPに結合し得、かつCGRPの生物学的活性、および/またはCGRPシグナル伝達により仲介される(1つもしくは複数の)下流の経路を阻害する抗体を言う。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、受容体結合および/またはCGRPに対する細胞応答の誘出などの、CGRPシグナル伝達により仲介される下流の経路を含む、CGRPの生物学的活性を(場合によっては顕著に)遮断するか、それに拮抗するか、抑制するか、または低減させる抗体を包含する。本発明の目的では、「抗CGRPアンタゴニスト抗体」という用語が、全てのこれまでに同定された用語と、表題と、CGRP自体、CGRPの生物学的活性(限定はしないが、任意の態様の内臓痛を仲介するその能力を含む)、または生物学的活性の結果を任意の有意義な程度で実質的に取り消すか、低減させるか、または中和する機能的状態および特徴とを包含することが明確に理解されよう。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体はCGRPに結合し、CGRPがCGRP受容体に結合することを防ぐ。他の実施形態において、抗CGRP抗体はCGRPに結合し、CGRP受容体の活性化を防ぐ。抗CGRPアンタゴニスト抗体の例が本明細書において提供される。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「G1」および「抗体G1」という用語は、寄託番号ATCC−PTA−6867およびATCC−PTA−6866を有する発現ベクターにより産生される抗体を言うためにほぼ同じ意味で用いられる。重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1および2に示される。抗体G1のCDR部分(Chothia CDRおよびKabat CDRを含む)は、WO2007/054809の図5に図示されており、前記文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号9および10に示される。抗体G1の特徴付けは、WO2007/054809の実施例において記載されている。
【0042】
本明細書において用いられる場合、「G2」および「抗体G2」という用語は、Wong HCら、Hybridoma 12:93〜106、1993に記載されている抗ラットCGRPマウスモノクローナル抗体を言うためにほぼ同じ意味で用いられる。重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号19および20に示される。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号27および28に示される。抗体G2のCDR部分は、配列番号21から26において提供される。
【0043】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さの、好ましくは比較的短い(例えば、10〜100アミノ酸)のアミノ酸鎖を言うために本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。この鎖は直鎖状または分枝鎖状であり得、この鎖は修飾アミノ酸を含み得、かつ/または非アミノ酸によって中断され得る。この用語はまた、天然にまたは中断により修飾されているアミノ酸鎖を包含し、この修飾は、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ホスホリル化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば標識構成要素との結合である。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つまたは複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)および当技術分野において知られている他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。ポリペプチドが一本鎖または結び付いた鎖として生じ得ることが理解される。
【0044】
当技術分野において知られているように、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチド鎖を言い、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは修飾塩基、および/またはその類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼにより鎖内に組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびその類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド構造に対する修飾は、存在する場合には、鎖の会合の前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識構成要素との結合などにより、重合の後にさらに修飾され得る。他のタイプの修飾には、例えば、「キャップ」と、天然に生じるヌクレオチドの1つまたは複数を類似体で置換することと、ヌクレオチド間の修飾、例えば非荷電性の結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および荷電性の結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)での修飾、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)などの釣り下がり部分を含有する修飾、挿入剤(例えば、アクリジン、プソラレンなど)での修飾、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有する修飾、アルキル化剤を含有する修飾、修飾された結合(例えば、αアノマー核酸など)での修飾と、修飾されていない形態の(1つまたは複数の)ポリヌクレオチドとが含まれる。さらに、糖内に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホン酸基、リン酸基により置換され得るか、標準的な保護基により保護され得るか、もしくは、さらなるヌクレオチドへのさらなる結合を準備するために活性化され得るか、または、固体担体に結合し得る。5’および3’末端のOHは、1から20個の炭素原子からなるアミンまたは有機キャップ基部分でホスホリル化または置換することができる。他のヒドロキシルはまた、標準的な保護基に誘導体化することができる。ポリヌクレオチドはまた、例えば2’−O−メチル−リボース、2’−O−アリル−リボース、2’−フルオロ−リボース、または2’−アジド−リボース、炭素環式糖類似体、α−またはβ−アノマー糖、アラビノース、キシロース、またはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、およびメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体などを含む、当技術分野において一般的に知られているリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形体を含有し得る。1つまたは複数のホスホジエステル結合は、代替的な結合基によって置き換えることができる。これらの代替的な結合基には、限定はしないが、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH(「ホルムアセタール」)(これらにおいて、それぞれのRまたはR’は独立して、Hであるか、または置換されているかもしくは置換されていないアルキル(1〜20C)であり、これらのアルキルは、エーテル(−O−)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルキルを含有していてもよい)によって置き換えられる実施形態が含まれる。ポリヌクレオチドにおける全ての結合が同一である必要はない。これまでの記載は、RNAおよびDNAを含む、本明細書において参照される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0045】
抗体の「可変領域」は、単独の、または組み合わされた、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を言う。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって連結されている、4つのフレームワーク(FR)から成る。それぞれの鎖におけるCDRは、FRによって非常に接近して共に固定されており、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するために、少なくとも2つの技術、すなわち、(1)種間の配列多様性に基づいたアプローチ(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、(5th ed.、1991、National Institutes of Health、Bethesda MD))、および(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づいたアプローチ(Al−lazikaniら、(1997)J.Molec.Biol.273:927〜948))が存在する。本明細書において用いられる場合、CDRは、いずれかのアプローチまたは両方のアプローチの組み合わせによって規定されるCDRを言い得る。
【0046】
抗体の「定常領域」は、単独の、または組み合わされた、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を言う。
【0047】
本明細書において用いられる場合、抗体の「免疫特異的」結合は、抗体の抗原結合部位と、その抗体によって認識される特異的抗原との間で生じる、抗原特異的な結合相互作用を言う(すなわち、抗体は、ELISAまたは他の免疫アッセイにおいてタンパク質と反応し、非関連タンパク質とは検出可能に反応しない)。
【0048】
抗体またはポリペプチドに「選択的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる)エピトープは、当技術分野において良く理解されている用語であり、このような特異的または選択的な結合を決定する方法もまた、当技術分野において周知である。分子は、別の細胞または物質とよりも、特定の細胞もしくは物質と、頻繁に、より迅速に、優れた継続時間で、かつ/または優れた親和性で反応するかまたは結び付く場合、「特異的な結合」または「選択的な結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に対する結合よりも優れた親和性で、優れた結合力で、より容易に、かつ/または優れた継続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合」または「選択的に結合」する。例えば、CGRPエピトープに特異的または選択的に結合する抗体は、他のCGRPエピトープまたは非CGRTエピトープに結合する場合よりも優れた親和性で、優れた結合力で、より容易に、かつ/または優れた継続時間でこのエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的または選択的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)が、第2の標的に特異的にまたは選択的に結合し得るかまたは結合し得ないことも理解される。したがって、「特異的な結合」または「選択的な結合」は、排他的な結合を(含み得るが)必ずしも必要とするわけではない。通常、結合に対する言及は選択的な結合を意味するが、必ずしもそうであるわけではない。
【0049】
本明細書において用いられる場合、「実質的に純粋な」は、少なくとも50%純粋な(すなわち汚染していない)、より好ましくは少なくとも90%純粋な、より好ましくは少なくとも95%純粋な、より好ましくは少なくとも98%純粋な、より好ましくは少なくとも99%純粋な物質を言う。
【0050】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチドインサートを組み込むための(1つまたは複数の)ベクターのレシピエントであり得るかまたはレシピエントとなっている個別の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の後代を含み、その後代は、自然な、偶発的な、または意図的な突然変異のため、元の親細胞に(形態またはゲノムDNAの相補体において)完全に同一である必要はない可能性がある。宿主細胞は、本発明の(1つまたは複数の)ポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0051】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖のC末端領域を規定するために用いられる。「Fc領域」は、天然配列のFc領域または変異Fc領域であり得る。免疫グロブリンの重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgGの重鎖のFc領域は通常、Cys226位にあるアミノ酸残基またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端までのストレッチと定義される。Fc領域における残基の番号付けは、KabatにおけるEUインデックスのものである。Kabatら、Sequences of Proteins of Imunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991。免疫グロブリンのFc領域は通常、2つの定常ドメインCH2およびCH3を含む。
【0052】
本明細書において用いられる場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(γ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これには、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングをされた形態が含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、RavetchおよびKinet、1991、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92、Capelら、1994、Immunomethods、4:25〜34、およびde Haasら、1995、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41において概説されている。「FcR」にはまた、胎児への母親のIgGの移動を生じさせる新生児受容体であるFcRnも含まれる(Guyerら、1976、J.Immunol.、117:587、およびKimら、1994、J.Immunol.、24:249)。
【0053】
「補体依存性細胞傷害性」および「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを言う。補体の活性化経路は、補体系の第1の構成要素(C1q)が、同種抗原と複合体化した分子(例えば抗体)に結合することにより開始される。補対の活性化を判定するために、例えばGazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163(1996)に記載されているようなCDCアッセイを実施することができる。
【0054】
「機能的Fc領域」は、天然の配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を有する。典型的な「エフェクター機能」には、C1qの結合、補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体の結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節などが含まれる。このようなエフェクター機能には通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体の可変ドメイン)と結合していることが必要であり、前記機能は、このような抗体のエフェクター機能を評価するための、当技術分野において知られている様々なアッセイを用いて判定することができる。
【0055】
「天然の配列のFc領域」は、自然に見られるFc領域のアミノ酸配列に同一のアミノ酸配列を含む。「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって天然の配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるが天然の配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持しているアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異Fc領域は、天然の配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、例えば、天然の配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域において約1個から約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1個から約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書における変異Fc領域は、好ましくは、天然の配列のFc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性を有し、最も好ましくはそれと少なくとも約90%の配列同一性を有し、より好ましくは、それと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0056】
本明細書において用いられる場合、「抗体依存性細胞介在性細胞傷害性」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、標的細胞に結合した抗体を認識し、その後その標的細胞の溶解を生じさせる、細胞介在性の反応を言う。目的の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または米国特許第5,821,337号に記載されているようなインビトロでのADCCアッセイを用いて判定することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えばClynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで判定することができる。
【0057】
本明細書において用いられる場合、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床結果には、限定はしないが、重症度を低下させることを含む、内臓痛の任意の態様における改良、痛みの強さおよび他の関連する症状の軽減、再発の頻度の低減、内臓痛に罹患している人の生活の質の向上、ならびに内臓痛を治療するために必要な他の投薬の用量の減少の1つまたは複数が含まれる。他の関連する症状には、限定はしないが、けいれん、うずき、拡散痛、圧力、膨満感、締め付け感、吐き気、嘔吐、ならびに光、音、および/または動きに対する敏感さが含まれる。
【0058】
内臓痛の「発症の低減」は、重症度(例えば鎮痛剤(例えば、オキシコドン、モルヒネ、ブトルファノール、ナルブフィンなど)を含む、この症状に通常用いられる他の薬剤および/もしくは治療法に対する要求および/もしくはそれらの量(例えばそれに対する曝露)の低減を含み得る)、継続時間、ならびに/または頻度の低減のいずれかを意味する。当業者に理解されているように、個体は、治療に対する応答に関して多様であり得、したがって、例えば「個体における内臓痛の発症を低減させる方法」は、抗CGRPアンタゴニスト抗体の投与がその特定の個体における発症のこのような低減を生じさせると考えられるという合理的な予想に基づいた、抗CGRPアンタゴニスト抗体の投与を反映する。
【0059】
内臓痛および/または内臓痛に関連する症状を「改善する」は、抗CGRPアンタゴニスト抗体を投与していないものと比較して、内臓痛の1つもしくは複数の症状および/または内臓痛に関連する症状が減少または向上することを意味する。「改善」にはまた、症状の継続時間の短縮または低減も含まれる。
【0060】
内臓痛および/または内臓痛に関連する症状を「緩和する」は、本発明に従った抗CGRPアンタゴニスト抗体で治療した個体または個体集団において内臓痛の1つまたは複数の望ましくない臨床的兆候の程度が減少することを意味する。
【0061】
本明細書において用いられる場合、「内臓痛を制御する」は、治療前のレベルと比較して、内臓痛の1つもしくは複数の症状の重症度もしくは継続時間または内臓痛の頻度を維持するかまたは低減させることを言う。例えば、内臓痛の継続時間もしくは重症度または内臓痛の頻度は、治療前のレベルと比較して、個体において少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%のいずれかで低減させることができる。
【0062】
本明細書において用いられる場合、内臓痛の進展を「遅延させる」は、内臓痛の進行を先延ばしにすること、妨げること、遅くすること、遅らせること、安定化させること、および/または先送りにすることを意味する。この遅延は、治療される疾患および/または個体の前歴に応じて、様々な長さの時間のものであり得る。当業者には明らかであるように、十分なまたは顕著な遅延は、実際、個体が内臓痛を進展させないという点で、予防も包含し得る。症状の進展を「遅延させる」方法は、その方法を用いない場合と比較して、所与の時間枠で症状の進展の可能性を低減させる、および/または所与の時間枠で症状の程度を低減させる方法である。このような比較は、典型的には、治療された対象と治療されていない対象との間の統計上有意な差を示すために十分な対象数を用いた臨床研究に基づくものである。
【0063】
内臓痛の「進展」または「進行」は、障害の初期兆候および/またはその後の進行を意味する。内臓痛の進展は検出可能であり得、当技術分野において周知の標準的な臨床技術を用いて判定される。しかし、進展はまた、検出不可能な進行についても言う。本発明の目的では、進展または進行は、症状の生物学的経路を言う。「進展」には、発生、再発、および発病が含まれる。本明細書において用いられる場合、内臓痛の「発病」または「発生」には、最初の発病および/または再発が含まれる。
【0064】
「生物学的試料」は、個体から得られる様々な試料タイプを包含し、診断アッセイまたは観察アッセイにおいて用いることができる。この定義は、生物由来の血液および他の液体試料、生検標本または組織培養物またはそれに由来する細胞などの固体組織試料、およびその後代を包含する。この定義にはまた、試薬での処理、可溶化、またはタンパク質もしくはポリヌクレオチドなどの特定の構成要素の濃縮、または切片化の目的のための半固体もしくは固体マトリクスへの包埋などによって、それらの調達後に何らかの方法で操作されているサンプルも含まれる。「生物学的試料」という用語は臨床試料を包含し、また、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液、および組織試料も含む。
【0065】
本明細書において用いられる場合、「有効用量」または「有効量」の薬剤、化合物、または医薬組成物は、有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な量である。予防用途では、有益なまたは所望の結果には、リスクの排除もしくは低減、重症度の低下、または、疾患、その合併症、および疾患の進展の間に見られる中間的な病理学的表現型の、生化学的、組織学的、および/もしくは行動的症状を含む疾患の発病の遅延などの結果が含まれる。治療的用途では、有益なまたは所望の結果には、内臓痛の発作の痛みの強度、継続時間、もしくは頻度の低減、ならびに、その合併症および痛みの進展の間に見られる中間的な病理学的表現型を含む、内臓痛により生じる1つもしくは複数の(生化学的、組織学的、および/もしくは行動的な)症状の減少、痛みを有する人の生活の質の向上、痛みを治療するために必要な他の投薬の用量の減少、別の投薬の効果の増強、ならびに/または患者の痛みの進行の遅延などの臨床結果が含まれる。有効用量は、1つまたは複数の投与で投与することができる。本発明の目的では、有効用量の薬剤、化合物、または医薬組成物は、直接的または間接的に予防的または治療的処置を達成するために十分な量である。臨床的な状況において理解されるように、有効用量の薬剤、化合物、または医薬組成物は、別の薬剤、化合物、または医薬組成物と組み合わせて行ってもよいし、そうでなくてもよい。したがって、「有効用量」は、1つまたは複数の治療用作用物質を投与する状況において考慮され得、単一の作用物質は、1つまたは複数の他の作用物質と組み合わせて所望の結果が得られ得るかまたは得られる場合には、有効量で提供されると考えられ得る。
【0066】
「個体」または「対象」は哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。哺乳動物にはまた、限定はしないが、家畜、運動用の動物、ペット、霊長類、馬、犬、猫、マウス、およびラットが含まれる。
【0067】
本明細書において用いられる場合、「ベクター」は、宿主細胞において1つまたは複数の目的の遺伝子または配列を運び得る、好ましくは発現し得る構築物を意味する。ベクターの例には、限定はしないが、ウイルスベクター、裸DNAまたはRNA発現ベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、またはファージベクター、カチオン濃縮剤に関連するDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームにカプセル化されたDNAまたはRNA発現ベクター、および産生細胞などの特定の真核細胞が含まれる。
【0068】
本明細書において用いられる場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結する。
【0069】
本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」には、活性成分と組み合わせた場合に、その成分により生物学的活性が保持されることを可能にし、かつ対象の免疫系と反応しない、任意の物質が含まれる。例には、限定はしないが、リン酸緩衝溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤などの、標準的な薬学的担体のいずれかが含まれる。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝溶液または標準的な(0.9%)生理食塩水である。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法により製剤される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th edition、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990、およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing、2000を参照されたい)。
【0070】
「kon」という用語は、本明細書において用いられる場合、抗原に対する抗体の結び付きについての速度定数を言うことを意図したものである。
【0071】
「koff」という用語は、本明細書において用いられる場合、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を言うことを意図したものである。
【0072】
「K」という用語は、本明細書において用いられる場合、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を言うことを意図したものである。
【0073】
内臓痛を予防または治療するための方法
本明細書において、内臓痛および/または内臓痛の症状を予防および/または治療するための方法と、個体における内臓痛および/または内臓痛の1つもしくは複数の症状を予防および/または治療するための医薬品が開示される。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明は、有効量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を個体に末梢投与することを含む、個体における内臓痛および/または内臓痛の1つもしくは複数の症状を予防および/または治療する方法を提供する。
【0075】
他の実施形態において、本発明は、有効量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を個体に末梢投与することを含む、個体における内臓痛および/または内臓痛の1つもしくは複数の症状を改善するか、制御するか、その発症を低減させるか、またはその進展もしくは進行を遅延させる方法を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明は、内臓痛および/または内臓痛の1つもしくは複数の症状を予防および/または治療するための医薬品を製造するための抗CGRPアンタゴニスト抗体の使用を提供し、ここで、医薬品は末梢投与のために調製されるか、または医薬品は末梢に投与される。
【0077】
他の実施形態において、本発明は、内臓痛および/または内臓痛の症状の予防および/または治療において用いるための抗CGRPアンタゴニスト抗体を提供し、ここで、抗体は末梢投与のために調製されるか、または抗体は末梢に投与される。
【0078】
他の実施形態において、本発明は、内臓痛および/または内臓痛の症状を改善するか、制御するか、その発症を低減させるか、またはその進展もしくは進行を遅延させるための医薬品を製造するための抗CGRPアンタゴニスト抗体の使用を提供し、ここで、医薬品は末梢投与のために調製されるか、または医薬品は末梢に投与される。
【0079】
いくつかの実施形態において、個体は好ましくは哺乳動物、例えば、馬、猫、もしくは犬などのコンパニオンアニマル、または羊、牛、もしくは豚などの家畜である。最も好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0080】
いくつかの実施形態において、医薬品および/または抗CGRPアンタゴニスト抗体は、経口、舌下、口腔内、局部的、直腸内、吸入を介した、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、骨内、皮内、腹腔内、経粘膜的、膣内、硝子体内、関節内、関節周辺、中枢、局所的、または皮膚上投与のために調製される。
【0081】
いくつかの実施形態において、医薬品は、内臓痛の進展の前および/または間および/または後の末梢投与のために調製される。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、投与されると末梢で作用する。1つの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、中枢に、脊髄に、または髄腔内には投与されない。
【0083】
いくつかの実施形態において、内臓痛は、例えば機能性腸障害(FBD)または炎症性腸疾患(IBD)などの疾患に関連し、かつ/または前記疾患により生じる。内臓痛がFBDに関連する実施形態において、FBDは、例えば、限定はしないが、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、または機能性腹痛症候群(FAPS)であり得る。最も好ましくは、この疾患はIBSである。内臓痛がIBDに関連する実施形態において、IBDは、例えば、限定はしないが、クローン病、回腸炎、または潰瘍性大腸炎であり得る。他のタイプの内臓痛には、例えば、癌、腎疝痛、月経困難症、間質性膀胱炎(IC)を含む膀胱炎、腸閉塞に関連する手術、月経期間、陣痛、閉経、骨折、憩室炎、腹膜炎、心膜炎、肝炎、虫垂炎、大腸炎、胆嚢炎、子宮内膜症、慢性および/または急性膵炎、心筋梗塞、腎臓痛、胸膜痛、前立腺炎、骨盤痛、ならびに臓器への外傷に関連する痛みが含まれる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および使用は、FBD、IBD、またはICを有する個体における内臓痛および/または内臓痛に関連する1つもしくは複数の症状を改善するためのものであり得る。
【0085】
内臓痛の診断または判定は、当技術分野において良く確立されている。判定は、痛みの様々な尺度を用いた痛みについての患者の特徴付けなどの、当技術分野において知られている測定に基づいて実施され得る。例えば、Katzら、Surg Clin North Am.、1999、79(2):231〜52、Caraceniら、J Pain Symptom Manage、2002、23(3):239〜55を参照されたい。例えば、言語記述尺度(VDS)、視覚的アナログ尺度(VAS)、プリンスヘンリー病院の痛み尺度(PHHPS)、数値化尺度(NRS)、および顔の痛み尺度、およびその変形を、痛みを判定するため、および治療に対する応答を評価するために採用することができる。また、機能性腸障害の重症度指数(FBDSI)(Drossmanら、1995、Digestive Diseases and Sciences 40(5):986〜995)およびIBSの重症度スコアリング系(Francisら、1997、Aliment Pharmacol Ther.、11(2):395〜402)などの、疾患の状態を測定するために一般に用いられる尺度が存在する。このような尺度は、治療に対する応答を評価するために採用することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、FBDの痛みおよび/またはFBDの痛みの症状の改善、制御、その発症の低減、またはその進展もしくは進行の遅延は、FBDSI、VDS、VAS、PHHPS、NRS、および顔の痛み尺度の1つまたは複数によって測定される。別の実施形態において、IBSの痛みおよび/またはIBSの痛みの症状の改善、制御、その発症の低減、またはその進展もしくは進行の遅延は、IBSの重症度スコアリング系、VDS、VAS、PHHPS、NRS、および顔の痛み尺度の1つまたは複数によって測定される。
【0087】
いくつかの実施形態において、ICの痛みおよび/またはICの痛みの症状の改善、制御、その発症の低減、または進展もしくは進行の遅延は、VDS、VAS、PHHPS、NRS、および顔の痛み尺度の1つまたは複数によって測定される。
【0088】
抗CGRPアンタゴニスト抗体
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体はCGRPに結合する。好ましくは、抗CGRPアンタゴニスト抗体はCGRPに結合し、CGRPがCGRP受容体に結合する能力を阻害する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒトおよび齧歯動物のCGRPの両方、好ましくはヒトおよびラットのCGRPに結合する。より好ましくは、抗体はヒトCGRPに結合する。好ましい実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ヒトα−CGRPに結合するか、またはヒトα−CGRPおよび/もしくはβ−CGRPに結合する。最も好ましくは、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、(a)CGRPに結合すること、(b)CGRPが(1つまたは複数の)その受容体に結合することを遮断すること、(c)cAMPの活性化を含むCGRP受容体の活性化を遮断するかまたは低下させること、(d)受容体結合および/またはCGRPに対する細胞応答の誘出などの、CGRPシグナル伝達により仲介される下流の経路を含む、CGRPの生物学的活性を阻害するか、遮断するか、抑制するか、または低減させること、(e)内臓痛の任意の態様を予防、改善、または治療すること、(f)CGRPのクリアランスを増大させること、ならびに(g)CGRPの合成、産生、または放出を阻害する(低減させる)ことという機能的特徴のいずれか1つまたは複数を示す抗体である。
【0089】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPの断片に結合し、より好ましくは、完全長CGRPと同様にCGRPの断片に結合する。好ましくは、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPの断片のC末端領域または断片に結合する。CGRPのC末端領域または断片は、好ましくは、CGRPのアミノ酸19〜37または25〜37または29〜37を、あるいはアミノ酸30〜37を、さらにあるいは、アミノ酸31〜37を含む。さらなる実施形態において、CGRPのC末端領域または断片は、好ましくはCGRPのアミノ酸32〜37を、最も好ましくはアミノ酸33〜37を含む。好ましくは、CGRPはα−CGRPまたはβ−CGRPであり、さらに好ましくは、ヒトまたは齧歯動物のものであり、さらに好ましくはヒトまたはラットのものであり、さらに好ましくはヒトのものであり、さらに好ましくはヒトα−CGRPまたはβ−CGRPであり、最も好ましくはヒトα−CGRPである。
【0090】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、アミノ酸配列GSKAF(配列番号39)に特異的に結合する。好ましくは、CGRPの配列GSKAF(配列番号39)は、抗CGRPアンタゴニスト抗体が結合するエピトープである。
【0091】
いくつかの実施形態において、CGRPのアミノ酸G33からF37により規定されるエピトープに特異的に結合する抗CGRPアンタゴニスト抗体が提供される。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、アミノ酸配列GSKAF(配列番号39)により規定されるエピトープに特異的に結合し得る。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の様々な態様において規定される使用および方法におけるこのような抗体の使用を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRP受容体の活性化を阻害または予防する。好ましくは、抗CGRP抗体は、約0.0001(0.1nM)から約500μMのIC50を有する。いくつかの好ましい実施形態において、IC50は、インビトロでの結合アッセイで測定すると、約0.0001μMから、約250μM、100μM、50μM、10μM、1μM、500nM、250nM、100nM、50nM、20nM、15nM、10nM、5nM、1nM、または0.5nMのいずれかの間である。いくつかのさらに好ましい実施形態において、IC50は、インビトロでの結合アッセイで測定すると、約500pMまたは約100pMまたは約50pMのいずれか未満である。さらにより好ましい実施形態において、IC50は約1.2nMまたは31nMである。
【0093】
いくつかの実施形態において、用いられる抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPの結合もしくはCGRPの断片に対する結合、またはCGRPの断片および完全長CGRPに対する結合、好ましくはCGRPのC末端領域もしくは断片に対する結合について、本明細書において上記に記載した抗体と競合し得る。好ましい実施形態において、CGRPのC末端領域または断片は、CGRPのアミノ酸19〜37、25〜37、29〜37、30〜37、または31〜37を含む。さらなる実施形態において、CGRPのC末端領域または断片は、好ましくは、CGRPのアミノ酸32〜37を、最も好ましくは33〜37を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、約0.00001μM(0.01nM)から約500μMの結合親和性(K)で、CGRP、CGRPの領域、またはCGRPの断片に結合する。いくつかの実施形態において、結合親和性(K)は、インビトロでの結合アッセイで測定すると、約0.00001μMから、約250μM、100μM、50μM、10μM、1μM、500nM、250nM、100nM、50nM、20nM、15nM、10nM、5nM、1nM、0.5nM、1nM、0.05nM、または0.01nMのいずれかの間である。いくつかの実施形態において、結合親和性(K)は、インビトロでの結合アッセイで測定すると、約500pMまたは100pM、50pM、または10pMのいずれか未満である。さらにより好ましい実施形態において、結合親和性(K)は、約0.04nMまたは16nMである。
【0095】
本発明において用いられる抗CGRPアンタゴニスト抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc、ScFvなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロ結合抗体、一本鎖(ScFv)抗体、その突然変異体、抗体部分(例えばドメイン抗体)を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、ならびに、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、および共有結合により修飾された抗体を含む、所望の特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾立体構造からなる群から選択され得る。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、マウス、ラット、ヒト、または任意の他のものに由来したものであり得る(キメラ抗体またはヒト化抗体を含む)。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体はヒト化され得るが、より好ましくはヒトのものである。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は単離されている。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体はほぼ純粋である。抗CGRPアンタゴニスト抗体が抗体断片である場合、断片は好ましくは、元の抗体の機能的特徴、すなわち、上記の機能的特徴において記載されているCGRP結合および/またはアンタゴニストの活性を保持している。
【0096】
抗CGRPアンタゴニスト抗体の例は当技術分野において知られている。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、本発明において用いられる抗CGRPアンタゴニスト抗体は、好ましくは、一般に記載されているかもしくは(i)WO2007/054809、(ii)WO2007/076336、(iii)Tanら、Clin.Sci.(Lond).89:565〜73、1995、(iv)Sigma(Missouri、US)、製品番号C7113(clone #4901)、(v)Plourdeら、Peptides 14:1225〜1229、1993のいずれかにおいて具体的に記載されている抗CGRP抗体であるか、または、
(a)前記抗体の断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc、ScFvなど)、
(b)前記抗体の軽鎖、
(c)前記抗体の重鎖、
(d)前記抗体の軽鎖および/もしくは重鎖の1つもしくは複数の可変領域、
(e)前記抗体の1つもしくは複数のCDR(1個、2個、3個、4個、5個、もしくは6個のCDR)、
(f)前記抗体の重鎖のCDR H3、
(g)前記抗体の軽鎖のCDR L3、
(h)前記抗体の軽鎖の3つのCDR、
(i)前記抗体の重鎖の3つのCDR、
(j)前記抗体の軽鎖の3つのCDRおよび重鎖の3つのCDR、
(k)(a)から(j)のいずれか1つまたは複数
を含むか、もしくはこれからなるものである。
【0097】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は抗体G2または抗体G1である。本発明の最も好ましい実施形態によれば、用いられる抗CGRPアンタゴニスト抗体は、PCT特許出願の公開番号WO2007/054809において具体的に記載されている抗CGRP抗体G1であるか、または、G1に機能的に等しい抗体も含む、すなわち、アミノ酸残基の保存的置換、または、それらの機能的特徴、例えばCGRP結合もしくはアンタゴニスト活性に顕著に影響しないアミノ酸の1つもしくは複数の欠失もしくは付加を含む、WO2007/054809の表6に示されているその変異体と、活性および/または結合が増強または低下した変異体とを含む。本明細書において用いられる場合、「G1」および「抗体G1」という用語は、出願WO2007/054809において開示されている寄託番号ATCC PTA−6867およびATCC PTA−6866を有する発現ベクターにより産生される抗体を言うためにほぼ同じ意味で用いられる。抗体G1の機能的特徴は、PCT特許出願番号PCT/IB2009/050849およびPCT/IB2009/050852において記載されており、これらは両方とも2009年3月3日に出願されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
本発明のさらなる実施形態によれば、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、(a)抗体G1またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(b)抗体G1の断片もしくは領域またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(c)抗体G1の軽鎖またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(d)抗体G1の重鎖またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(e)抗体G1の軽鎖および/もしくは重鎖の1つもしくは複数の可変領域またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(f)抗体G1の1つもしくは複数のCDR(1個、2個、3個、4個、5個、もしくは6個のCDR)またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(g)抗体G1の重鎖のCDR H3またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(h)抗体G1の軽鎖のCDR L3またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(i)抗体G1の軽鎖の3つのCDRまたはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(j)抗体G1の重鎖の3つのCDRまたはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、(k)抗体G1の軽鎖の3つのCDRおよび/もしくは重鎖のCDRまたはWO2007/054809の表6に示されているその変異体、ならびに(i)(b)から(k)のいずれか1つを含む抗体から選択されるポリペプチドを含むか、またはこれからなる。本発明はまた、上記のいずれか1つまたは複数を含むポリペプチドも提供する。いくつかの実施形態において、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個のCDRは、G1の少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、もしくは6個のCDRまたはWO2007/054809の表6に示されているその変異体に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。CDR領域の決定は、当業者の能力内に十分にある。いくつかの実施形態においてCDRがKabat CDRとChothia CDRとの組み合わせであり得ることが理解される。いくつかの実施形態において、CDRはKabat CDRである。他の実施形態において、CDRはChothia CDRである。
【0099】
抗CGRPアンタゴニスト抗体は、好ましくは、抗体G1の断片もしくは領域(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc、ScFvなど)、またはWO2007/054809の表6に示されているその変異体を含むか、またはこれからなる。好ましくは、前記断片または領域は、例えばCGRP結合活性および/またはアンタゴニスト活性などの抗CGRPアンタゴニスト抗体の機能的特徴を有し、(i)軽鎖、(ii)重鎖、(iii)軽鎖および/または重鎖の1つまたは複数の可変領域を含有する断片、ならびに(iv)抗体G1の軽鎖および/または重鎖の1つまたは複数のCDRの1つまたは複数を含むか、またはこれからなる。
【0100】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、特許出願WO2007/076336の配列番号28〜32からなる群から選択される配列を有するペプチドを含む軽鎖可変領域(LCVR)および/または配列番号34〜38からなる群から選択される配列を有するペプチドを含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0101】
さらに好ましくは、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、特許出願WO2007/076336の表1に示されている配列番号のLCVRポリペプチドを含み、さらに、特許出願WO2007/076336の表1に示されている配列番号のHCVRポリペプチドを含む。
【0102】
本発明のさらなる実施形態によれば、用いられる抗CGRPアンタゴニスト抗体は、特許出願WO2007/076336の配列番号8〜13からなる群から選択される軽鎖CDR(CDRL)および/または配列番号14〜22からなる群から選択される重鎖CDR(CDRH)を含む。
【0103】
出願WO2007/076336の抗CGRPアンタゴニスト抗体を作製および単離する方法、ならびに前記抗体のCGRP結合およびアンタゴニストの特徴付けを示すデータは、出願WO2007/076336に記載されている。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明において用いるための抗CGRPアンタゴニスト抗体は、本明細書において示される配列番号1または配列番号19にアミノ酸配列が少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるVHドメインを含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、本明細書において示される配列番号2または配列番号20にアミノ酸配列が少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるVLドメインを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、本明細書において示されるそれぞれ配列番号1および2またはそれぞれ配列番号19および20にアミノ酸配列が少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるVHドメインおよびVLドメインを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、本明細書において示される配列番号1にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVHドメインと、配列番号2にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVLドメインとを含む。
【0108】
あるいは、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、本明細書において示される配列番号19にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVHドメインと、配列番号20にアミノ酸配列が少なくとも90%同一であるVLドメインとを含み得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、(a)配列番号3、21、33、34、36、または37で示されるCDR H1、(b)配列番号4、22、35、または38で示されるCDR H2、(c)配列番号5または23で示されるCDR H3、(d)配列番号6または24で示されるCDR L1、(e)配列番号7または25で示されるCDR L2、(f)配列番号8または26で示されるCDR L3、ならびに(g)WO2007/054809の表6に示されているCDR L1、CDR L2、およびCDR H2の変異体からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体の重鎖の定常領域は、IgG、IgM、IgD、IgA、およびIgEなどの任意のタイプの定常領域、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4などの任意のアイソタイプのものであり得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ATCC受託番号がPTA−6867の発現ベクターにより産生される重鎖を含む。さらに好ましくは、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ATCC受託番号がPTA−6866の発現ベクターにより産生される軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、C末端のリジンを有するかまたは有さない、配列番号11に示される、抗体G1の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列(本明細書において記載される修飾IgG2を含む)を含む。抗CGRPアンタゴニスト抗体はまた、重鎖の末端のリジンを欠いている抗体も含むが、それは、前記リジンが通常、製造の間に一部の抗体において失われるためである。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、配列番号12に示される、抗体G1の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列を包含する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、配列番号29に示される、抗体G2の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、配列番号30に示される、抗体G2の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、ATCC受託番号がPTA−6867およびPTA−6866の発現ベクターにより産生される。
【0112】
いくつかの実施形態において、本発明において用いるための抗CGRPアンタゴニスト抗体は、本明細書において規定される抗体G1または抗体G2である。好ましい実施形態において、本発明において用いるための抗CGRPアンタゴニスト抗体は、抗体G1またはその抗原結合断片である。
【0113】
本発明のさらなる実施形態によれば、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、例えばWO2007/054809において記載されている修飾定常領域を含む。好ましくは、修飾定常領域は、部分的に免疫学的に不活性であるなど、免疫学的に不活性であり、したがって、補体介在性の溶解を引き起こさず、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)を刺激せず、小膠細胞を活性化しない。好ましくは、修飾定常領域は、これらの活性の1つまたは複数が低減している。最も好ましくは、定常領域は、Eur.J.Immunol.、1999、29:2613〜2624、PCT出願番号PCT/GB99/01441、および/または英国特許出願第9809951.8号において記載されているように修飾されている。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、A330、P331からS330、S331(野生型のIgG2配列に準拠したアミノ酸の番号付け)という突然変異を含むヒト重鎖のIgG2定常領域を含む。Eur.J.Immunol.、1999、29:2613〜2624。
【0114】
出願WO2007/054809の抗CGRPアンタゴニスト抗体を作製および単離する方法、ならびに前記抗体のCGRP結合およびアンタゴニストの特徴付けを示すデータは、出願WO2007/054809に記載されている。前記出願の配列番号1から14の配列は、それぞれ配列番号1から14として本明細書において提供される。
【0115】
用量および投与
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、例えば1週間に約1回から約7回、さらに好ましくは1カ月に約1回から約4回、さらに好ましくは6カ月間に約1回から約6回、さらに好ましくは1年に約1回から約12回、末梢に投与される。好ましくは、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、1日約1回、2、3、4、5、もしくは6日ごとに1回、1週間に1回、2週間ごとに2回、3週間ごとに1回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、4カ月ごとに1回、5カ月ごとに1回、6カ月ごとに1回、7カ月ごとに1回、8カ月ごとに1回、9カ月ごとに1回、10カ月ごとに1回、11カ月ごとに1回、または1年に1回から選択される期間内で末梢に投与される。好ましい実施形態によれば、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、経口、舌下、口腔内、局部的、直腸内、吸入を介して、経皮、皮下、静脈内、動脈内もしくは筋肉内、心臓内投与を介して、骨内、皮内、腹腔内、経粘膜的、膣内、硝子体内、皮膚上、関節内、関節周辺、または局所的の1つまたは複数から選択される経路を介して投与される。
【0116】
本発明のさらなる実施形態によれば、医薬品は、1週間に約1回から約7回、さらに好ましくは1カ月に約1回から約4回、さらに好ましくは6カ月間に約1回から約6回、さらに好ましくは1年に約1回から約12回の末梢投与のために調製される。好ましくは、医薬品は、1日約1回、2、3、4、5、もしくは6日ごとに1回、1週間に1回、2週間ごとに2回、3週間ごとに1回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、4カ月ごとに1回、5カ月ごとに1回、6カ月ごとに1回、7カ月ごとに1回、8カ月ごとに1回、9カ月ごとに1回、10カ月ごとに1回、11カ月ごとに1回、または1年に1回から選択される期間内で末梢に投与するために調製される。好ましい実施形態によれば、医薬品は、経口、舌下、口腔内、局部的、直腸内、吸入を介して、経皮、皮下、静脈内、動脈内もしくは筋肉内、心臓内投与を介して、骨内、皮内、腹腔内、経粘膜的、膣内、硝子体内、皮膚上、関節内、関節周辺、または局所的の1つまたは複数から選択される経路を介して末梢に投与するために調製される。
【0117】
本発明のさらなる実施形態によれば、抗体の濃度は、約0.1から約200mg/ml、好ましくは約0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mg/mlのいずれか1つ±10%の誤差、最も好ましくは約50mg/mlである。
【0118】
本発明のさらなる実施形態によれば、医薬品は、約0.1から200mg/kg体重、好ましくは約0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mg/kg体重のいずれか1つ±10%の誤差、最も好ましくは約10mg/kgの抗体濃度で末梢投与するために調製される。
【0119】
本発明の好ましい実施形態によれば、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、または210日のいずれか1つ±1日を超える、さらに好ましくは、約7、8、9、10、11、または12カ月のいずれか1つを超える、インビボでの半減期を有する。
【0120】
好ましくは、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、6日を超えるインビボでの半減期を有する。
【0121】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、医薬品および/または抗CGRPアンタゴニスト抗体は、中枢神経系の影響および/または認識機能障害を生じさせない。好ましくは、医薬品および/または抗CGRPアンタゴニスト抗体は、健忘、混乱、離人症、感覚鈍麻、思考障害、開口障害、定型的目まい、静座不能、無気力、運動失調、口囲の感覚異常、CNS刺激、情緒不安定、陶酔感、幻覚、敵意、知覚過敏、運動過敏、低血圧、協調不全、性欲亢進、躁反応、ミオクローヌス、神経痛、神経障害、精神病、発作、異常発語、昏迷、自殺念慮、非定型的目まい、傾眠、不眠症、不安神経症、振戦、鬱、または感覚異常のいずれか1つまたは複数を誘発しない。最も好ましくは、医薬品および/または抗CGRPアンタゴニスト抗体は、運動協調または注意の機能低下を誘発しない。
【0122】
本発明のさらなる実施形態によれば、医薬品および/または抗CGRPアンタゴニスト抗体は、呼吸器、肝臓、腎臓、または胃腸の機能低下をもたらさない。
【0123】
本発明のさらなる実施形態によれば、医薬品および/または抗CGRPアンタゴニスト抗体は、身体的および/または心理的依存の効果をもたらさない。好ましくは、医薬品および/または抗CGRPアンタゴニスト抗体は、鎮痛剤、ベンゾジアゼピン、フェンシクリジン(PCP)、もしくはN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)の受容体、またはCNS刺激物質への親和性を示さないか、いずれの鎮静または陶酔効果ももたらさない。
【0124】
いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、投与されると、中枢の痛み感覚を改善するか、制御するか、その発症を低減させるか、またはその進展または進行を遅延させる。
【0125】
他の実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体の効果は、内臓痛の同一モデルにおけるNSAIDSおよび/または鎮痛剤の効果と等しく、かつ/またはそれよりも優れている。1つの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、難治性の痛みを有する集団の治療において有効である。
【0126】
本発明のさらなる実施形態によれば、抗CGRPアンタゴニスト抗体が、1つまたは複数のさらなる薬理学的に活性な化合物または作用物質、好ましくは、内臓痛を治療するために有用な化合物または作用物質との組み合わせにおいて、別々に、連続して、または同時に投与される、本発明の任意の他の態様によった使用または方法が提供される。好ましくは、(1つまたは複数の)さらなる作用物質は、
(i)オピオイド系鎮痛薬、例えばモルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、またはペンタゾシン、
(ii)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサル、フルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、またはゾメピラック、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、JTE−522、L−745,337、NS398、またはその薬学的に許容できる塩、
(iii)バルビツール系鎮静薬、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタール、メフォバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール、またはチオペンタール、またはその薬学的に許容できる塩、
(iv)鎮静活性を有するベンゾジアゼピン、例えば、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、またはトリアゾラム、またはその薬学的に許容できる塩、
(v)鎮静活性を有するHアンタゴニスト、例えば、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミン、またはクロルシクリジン、またはその薬学的に許容できる塩、
(vi)グルテチミド、メプロバメート、メタカロン、またはジクロラルフェナゾン、またはその薬学的に許容できる塩などの鎮痛薬、
(vii)骨格筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール、またはオルフェナジン、またはその薬学的に許容できる塩、
(viii)NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、デキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)もしくはその代謝産物であるデキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキノン、またはシス−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸、またはその薬学的に許容できる塩、
(ix)α−アドレナリン作動薬、例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、または4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、
(x)三環系抗鬱薬、例えば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、またはノルトリプチリン、
(xi)抗けいれん薬、例えば、カルバマゼピン、またはバルプロエート、
(xii)タキキニン(NK)アンタゴニスト、とりわけ、NK−3、NK−2、またはNK−1アンタゴニスト、例えば、(αR,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[(2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(MK−869)、ラネピタント、ダピタント、または3−[[2−メトキシ−5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]メチルアミノ]−2−フェニル−ピペリジン(2S,3S)、
(xiii)ムスカリン性アンタゴニスト、例えば、オキシブチン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム、またはダリフェナシン、
(xiv)COX−2阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、またはバルデコキシブ、
(xv)非選択的COX阻害剤(好ましくはGI保護を有する)、例えば、ニトロフルルビプロフェン(HCT−1026)、
(xvi)コールタール鎮痛薬、とりわけパラセタモール、
(xvii)ドロペリドールなどの神経遮断薬、
(xviii)バニロイド受容体アゴニスト(例えば、レジニフェラトキシン)またはアンタゴニスト(例えば、カプサゼピン)、
(xix)プロプラノロールなどのβ−アドレナリン作動薬、
(xx)メキシレチンなどの局所的麻酔薬、
(xxi)デキサメタゾンなどのコルチコステロイド、
(xxii)セロトニン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、
(xxiii)コリン作用性(ニコチン性)鎮痛薬、
(xxiv)tramadol、
(xxv)シルデナフィル、バルデナフィル、またはタダラフィルなどのPDEV阻害剤、
(xxvi)ガバペンチンまたはプレガバリンなどのα−2−δリガンド、
(xxvii)カンナビノイド、ならびに
(xxviii)アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、およびイミプラミン(Tofranil(登録商標))などの抗鬱剤、またはフェニトイン(Dilantin(登録商標))もしくはカルバマゼピン(Tegretol(登録商標))などの抗けいれん剤
の1つまたは複数から選択される。
【0127】
本発明のさらなる態様によれば、抗CGRPアンタゴニスト抗体と薬学的に許容できる担体および/または賦形剤とを含む、内臓痛および/もしくは内臓痛の症状を予防および/もしくは治療するため、または個体における内臓痛および/もしくは内臓痛の症状を改善するか、制御するか、その発症を低減させるか、その進展もしくは進行を遅延させるための医薬組成物が提供され、この組成物は末梢に投与するために調製される。
【0128】
キット
本発明のさらなる態様によれば、上記に規定した医薬組成物と、内臓痛および/もしくは内臓痛の症状を予防および/もしくは治療するため、または内臓痛および/もしくは内臓痛の症状を改善するか、制御するか、その発症を低減させるか、その進展もしくは進行を遅延させるための、有効量の前記医薬組成物を個体に末梢投与するための指示とを含むキットが提供される。
【0129】
キットは、本明細書において記載される抗CGRPアンタゴニスト抗体またはポリペプチドと、本発明の方法および使用のいずれかに従った使用のための指示とを含有する、1つまたは複数の容器を含み得る。キットはさらに、個体が内臓痛を有しているかまたは内臓痛を有するリスクを有するかどうかの同定に基づく、治療に適した個体の選択の説明も含む。医薬組成物を末梢投与するための指示は、意図した治療のための用量、投与スケジュール、および投与経路についての情報を含み得る。
【0130】
本発明のそれぞれの態様の好ましい特徴は、変更すべきところは変更して、互いの態様に等しく適用される。
【0131】
実施例
以下の実施例は、例示的な目的のみで提示されるものであり、いかなる様式でも本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際、本明細書において示され記載されるものに加えた本発明の様々な変更が、以下の記載から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内にある。
【実施例1】
【0132】
内臓痛モデル
この実施例は、内臓痛モデルにおける抗CGRPアンタゴニスト抗体治療の効果を例示する。
【0133】
IBSを有する患者は、結腸直腸の膨張に対する内臓の感覚的閾値が低いことが示されており、このことは、内臓痛の症状に大きく相関している(Delafoyら、2006)。ラットにおける、TNBSにより誘発された大腸炎の後の結腸直腸の膨張は、内臓過敏のメカニズムを研究するために多くの研究者により用いられている動物モデルである(Gayら、2006、Delafoyら、2006、Adamら、2006)。この実施例において、ラットTNBS大腸炎モデルを用いて、CGRPに対する機能遮断抗体の効果を試験した。このモデルにおいて、ヒトIBS研究と同様に、内臓痛の閾値は、結腸のバルーン拡張に対する応答によって測定する。
【0134】
一晩絶食させた後、ラットを1ml/kgの用量のケタミン(80mg/ml)/キシラジン(12mg/ml)で麻酔した。開腹術を実施し、TNBS溶液(30%エタノール内に1.5ml/kgで50mg、「TNBS処理群」)または30%エタノール溶液(「Sham群」)を、盲腸から1cm遠位の近位結腸内に注射した。Sham群は、非大腸炎対照として用いた。手術後5日目に、TNBS処理群を2つの群にさらに分けた。一方の群には、10mg/kgの抗CGRPアンタゴニストモノクローナル抗体4901(Sigma(Missouri、US)で市販されている、商品番号C7113、クローン#4901)を静脈内に投与した。他方の群には、陰性対照としてビークル(vehicle)(PBS、0.01%tween20)を投与した。
【0135】
手術後7日目に、2回目の一晩の絶食の後、11%以下の体重減少を維持しているTNBS処理したラットを、バルーン拡張を用いて内臓痛の閾値について試験した。カテーテルに取り付けた5cmのラテックスバルーンを、バルーンの基底が肛門から5cmになるようにして、遠位結腸内に挿入した。カテーテルを尾部にテープで固定し、バルーンが動くのを防いだ。30分の順応期間の後、バルーンを30秒間隔で5mmHgから80mmHgまで連続的に膨張させた。バルーンの膨張を、α位として知られている画一的な齧歯動物の内臓痛の態勢を引き起こすために必要な閾値圧力で停止させ(後肢の内側への回転を伴う斜筋の筋肉組織の収縮の繰り返しの波)、これを内臓痛の閾値として記録した。
【0136】
Sham手順を受けているラットは、手術後7日目に36.8±2.6(N=5、平均±標準誤差)の閾値を有していた(図1A)。5日目に抗体4901(10mg/kg)を投与した、TNBS処理したラットは、7日目に32.3±4.1(N=9)の閾値を有しており、5日目にビークル(vehicle)を投与した、TNBS処理したラットの7日目の閾値(21.0±3.0、N=10)と統計上有意に異なっていた(一元配置ANOVAおよびDunnet多重比較事後検定)(図1A)。4901の効果は、CGRP受容体アンタゴニストであるCGRP8−37に匹敵するものであった(図1B)。この結果は、抗CGRPアンタゴニスト抗体が、内臓痛モデルにおいて内臓痛の閾値をSham閾値の方へ顕著に変えること、すなわち痛みを回復に向かわせることにおいて有効であることを示すものであった。
【実施例2】
【0137】
相互作用分析および結合アッセイ
相互作用分析を、標準的なBiacoreランニングバッファー(HBS−PまたはHBS−EP)を用いて、ストレプトアビジンで被覆した(SA)センサーチップを備えたBiacore 3000(商標)システム(Biacore AB、Uppsala、Sweden)で、25℃および37℃で実施した。N−LC−ビオチニル化したヒトおよびラットのα−およびβ−CGRPを、低レベル(典型的には100応答単位)で個別のフローセル上に捕捉して反応表面を作製し、一方、修飾されていないフローセルは参照チャネルとして用いた。精製された、抗体G1およびG2のFab断片が作製された。典型的には、Fabは、0.5μMを最高濃度として用いて2倍の連続希釈として調製し、最大2時間の解離時間が可能となるよう、100μl/分で1分間注射した。表面を、G1のFabについては50%v/vのエタノールと25mMのNaOHとの混合物で、G2のFabについては2:1v/vのPierce Gentle溶出緩衝液/4MのNaClで再生した。Fabの注射は、アッセイが再現可能であることを実証するために2回行った。結合応答は二重参照され、BiaEvaluation v.4.0ソフトウェアを用いた単純モデルに全体的に適合した。親和性は、動態速度定数の商から推定した(K=koff/kon)。
【0138】
抗体G1についての結果を以下の表1に示す。抗体G1は、類似のおよび高い親和性でヒトα−およびβ−CGRPに結合する(20分の解離時間が可能となるよう、37℃で同一のチップ上で比較分析したところ、それぞれK=163および155pMであった)。ヒトおよびカニクイザルは同一の配列を有しており、したがって、ヒトのデータもカニクイザルに適用される。G1はまた、ラットのCGRPも結合するが、α−アイソフォームとβ−アイソフォームとを区別する(37℃でそれぞれK=2.57nMおよび<150pM)。
【0139】
【表1】

【0140】
α−ヒト、β−ヒト、およびβ−ヒトCGRPからのG1のFabの解離は非常に緩やかに生じる。したがって、解離速度(koff)は、解離相が非常に長時間にわたり観察されない限り、正確には測定され得ない。通常の経験則から、結合反応は、正確な解離速度の報告で認められた解離時間よりも、少なくとも5%減衰する。しかし、Biacoreでの長期の解離時間の観察は、動態分析に必要な低い表面能力で作業する場合に特に困難となるベースラインの推移により妨げられる。この研究において、解離相を、α−CGRPについては2時間追跡したが、β−CGRPについては20分しか追跡しなかった。結果として、β−CGRPの解離速度は、α−CGRPの解離速度ほどには正確には明らかにされ得ない。しかし、同一の条件下で20分の解離時間を用いて、同一のチップ上で比較アッセイすると、G1は、α−ヒト/カニクイザルCGRP、β−ヒト/カニクイザルCGRP、およびβ−ラットCGRPについて事実上同一の結合動態を有した(37℃でK=150pM)。
【0141】
抗体G2についての結果を表2に示す。抗体G2は、類似のおよび高い親和性でα−およびβ−ヒトCGRP(25℃でそれぞれK=19nMおよび20nM)よりも高い親和性でα−ラットCGRPに結合する(25℃でK=0.9nM)。β−ラットCGRPに結合するG2は、このアッセイフォーマットにおいては調べなかったが、逆方向のアッセイフォーマットにおいて、α−およびβ−ヒトCGRPに対して同程度の結合特性を示した(データは示していない)。
【0142】
【表2】

【0143】
結合アッセイを、ヒトα−CGRPのCGRP1受容体への結合の遮断における抗CGRP G1抗体のIC50を測定するために実施した。SK−N−MC細胞から得られる膜(25μg)を、全容積が1mlの、10pMの125I−ヒトα−CGRPおよび様々な濃度の抗CGRP抗体(0.015nM〜33nM)を含有するインキュベーションバッファー(50mMのTris−HCl、pH=7.4、5mMのMgCl、0.1%BSA)内で、25℃で90分間インキュベートした。インキュベーションを、0.5%ポリエチレンイミンで遮断されているガラス製のマイクロフィルター(GF/B、1μm)を介した濾過によって停止させた。タンパク質に結合した放射能をガンマカウンターで決定した。用量反応曲線をプロットし、K値を、K=IC50/(1+[リガンド]/K)という方程式を用いて決定し、前記方程式において、平衡解離定数Kは、SK−N−MC細胞内に存在するCGRP1受容体に対するヒトα−CGRPでは8pMである。報告されたIC50値(IgG分子に関して)を結合部位に変換して(それに2をかけてBiacoreがFab断片の分析であったという事実を可能にすることによる)、それにより、それをBiacoreによって決定された親和性(K)と比較することが可能となった。観察されたIC50(1.8nM)は、等しい温度でBiacoreによって観察されたK(42pM)よりも23倍高かった。このミスマッチは、結合アッセイの感度が不足している可能性を反映している。
【実施例3】
【0144】
内臓痛モデル
この実施例は、内臓痛モデルにおける抗CGRPアンタゴニスト抗体治療の効果を例示する。
【0145】
この実施例において、ラット間質性膀胱炎モデルを用いて、CGRPに対する機能遮断抗体の効果を試験した。このモデルにおいて、内臓の過敏を、膀胱のテルペンチン刺激に応じた膀胱の運動性によって測定した。
【0146】
メスのラットを、膀胱内圧測定の間、ウレタン麻酔下に維持し、回復しないようにした。温度制御した加熱パッドに恒温的に接続した直腸プローブを用いて、体温を37℃に維持した。一方の群のラット(n=7)には、10mg/kgの抗CGRPアンタゴニストモノクローナル抗体4901(Sigma(Missouri、US)で市販されている、商品番号C7113、クローン#4901)を静脈内に投与した。別の群(n=7)には、陰性対照としてビークル(vehicle)(PBS、0.01%tween20)を投与した。
【0147】
4901またはビークル(vehicle)を投与した24時間後、ラットを麻酔し、膀胱を、PE50管(1mmのOD)を用いて経尿道的にカテーテル挿入し、(シリンジポンプを用いて)0.06ml/分で膀胱を標準的な生理食塩水で満たすことを可能にした。管は膀胱の近位にT型の接合部を有しており、それにより、圧力変換器での膀胱の圧力の観察が可能となる。圧力および収縮を14分間隔の間に観察して(0.84mlの全容積)、膀胱の運動性を決定した。ベースラインの膀胱内圧測定図が作成された後、0.5mlの50%テレビン油を1時間にわたり注入することによって膀胱を刺激した。次に膀胱を空にし、膀胱の運動性の次の試験を、テルペンチンの直後(1時間)、3時間、および5時間後に実施した。
【0148】
膀胱内圧測定手順の24時間前に抗体4901(10mg/kg)を投与したラットは、ビークル(vehicle)を投与したラットと比較して、測定した全ての時点で膀胱収縮が小さかった(図2)。この結果は、抗CGRPアンタゴニスト抗体が、内臓痛モデルにおいてテルペンチン刺激に応じて膀胱の運動性を低減させること、すなわち痛みを回復に向かわせることにおいて有効であることを示すものであった。
【0149】
生物学的材料の寄託
以下の材料は、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Maassas、Virginia 20110−2209、USA(ATCC)に寄託されている。
【0150】
【表3】

【0151】
ベクターpEb.CGRP.hKGIは、G1軽鎖の可変領域および軽鎖のκ定常領域をコードするポリヌクレオチドであり、ベクターpDb.CGRP.hFcGIは、G1重鎖の可変領域と、A330P331からS330S331の突然変異を含有する、重鎖のIgG2定常領域とをコードするポリヌクレオチドである(野生型IgG2配列に準拠したアミノ酸の番号付け、Eur.J.Immunol.、1999、29:2613〜2624を参照されたい)。
【0152】
これらの寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約およびその規則(ブダペスト条約)の規定下で行ったものである。これは、寄託日から30年間にわたり、寄託された生存培養物の維持を保証するものである。寄託物は、ブダペスト条約の定めに従って、かつRinat Neuroscience Corp.とATCCとの間の同意を条件として、ATCCにより利用可能とされ、このことにより、関連する米国特許の発行に基づいて、または何らかの米国もしくは他国の特許出願の公衆への公開に基づいて、いずれが先であっても、寄託された培養物の後代の永続的かつ無制限の利用可能性が公衆に対して保証され、かつ、35 USC 第122条およびそれに準ずる長官の規範に従って(特に886 OG 638に関連する、37 CFR 第1.14条を含む)、米国特許商標庁長官によりそれに対する資格が与えられると決定された者への、後代の利用可能性が保証される。
【0153】
本願の譲受人は、適切な条件下で培養されている場合に、寄託される材料の培養物が死んでいるかまたは失われているかまたは破壊されている場合には、その材料は、通知され次第、別のその材料と速やかに交換されるということに同意している。寄託された材料の利用可能性は、何らかの政府の特許法に従ってその政府の権限の下で認められた権利に違反して本発明を実施するためのライセンスであるとは解釈されない。
【0154】
以下に、本明細書において開示される様々な実施形態に有用な抗体の配列を示す。
【0155】
抗体の配列
抗体G1の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)
【0156】
【表4】

【0157】
抗体G1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)
【0158】
【表5】

【0159】
抗体G1のCDR H1(伸長CDR)(配列番号3)
GFTFSNYWIS
【0160】
抗体G1のCDR H2(Kabat CDRと同様の伸長CDR)(配列番号4)
EIRSESDASATHYAEAVKG
【0161】
抗体G1のCDR H3(配列番号5)
YFDYGLAIQNY
【0162】
抗体G1のCDR L1(配列番号6)
KASKRVTTYVS
【0163】
抗体G1のCDR L2(配列番号7)
GASNRYL
【0164】
抗体G1のCDR L3(配列番号8)
SQSYNYPYT
【0165】
抗体G1の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号9)
【0166】
【表6】

【0167】
抗体G1の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号10)
【0168】
【表7】

【0169】
抗体G1の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列(本明細書において記載される修飾IgG2を含む)(配列番号11)
【0170】
【表8】

【0171】
抗体G1の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列(配列番号12)
【0172】
【表9】

【0173】
抗体G1の重鎖の完全な抗体ヌクレオチド配列(本明細書において記載される修飾IgG2を含む)(配列番号13)
【0174】
【表10】

【0175】
抗体G1の軽鎖の完全な抗体ヌクレオチド配列(配列番号14)
【0176】
【表11】

【0177】
ヒトおよびラットのCGRP(ヒトα−CGRP(配列番号15)、ヒトβ−CGRP(配列番号16)、ラットα−CGRP(配列番号17)、およびラットβ−CGRP(配列番号18))のアミノ酸配列の比較。
NH−ACDTATCVTHRLAGLLSRSGGVVKNNFVPTNVGSKAF−CONH(配列番号15)

NH−ACNTATCVTHRLAGLLSRSGGMVKSNFVPTNVGSKAF−CONH(配列番号16)
NH−SCNTATCVTHRLAGLLSRSGGVVKDNFVPTNVGSEAF−CONH(配列番号17)
NH−SCNTATCVTHRLAGLLSRSGGVVKDNFVPTNVGSKAF−CONH(配列番号18)
【0178】
抗体G2の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号19)
【0179】
【表12】

【0180】
抗体G2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号20)
【0181】
【表13】

【0182】
抗体G2のCDR H1(Kabat CDR)(配列番号21)
SSVMH
【0183】
抗体G2のCDR H2(伸長CDR)(配列番号22)
YINPYNDGTKYNEKFKG
【0184】
抗体G2のCDR H3(配列番号23)
GGNDGY
【0185】
抗体G2のCDR L1(配列番号24)
SASSSISSIYLH
【0186】
抗体G2のCDR L2(配列番号25)
RASNLAS
【0187】
抗体G2のCDR L3(配列番号26)
QQGSTIPFT
【0188】
抗体G2の重鎖可変領域のヌクレオチド酸配列(配列番号27)
【0189】
【表14】

【0190】
抗体G2の軽鎖可変領域のヌクレオチド酸配列(配列番号28)
【0191】
【表15】

【0192】
抗体G2の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列(Fcドメインを含まない)(配列番号29)
【0193】
【表16】

【0194】
抗体G2の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列(配列番号30)
【0195】
【表17】

【0196】
抗体G2の重鎖の完全な抗体ヌクレオチド配列(Fcドメインを含まない)(配列番号31)
【0197】
【表18】

【0198】
抗体G2の軽鎖の完全な抗体ヌクレオチド配列(配列番号32)
【0199】
【表19】

【0200】
抗体G1のCDR H1(Chothia CDR)(配列番号33)
GFTFSNY
【0201】
抗体G1のCDR H1(Kabat CDR)(配列番号34)
NYWIS
【0202】
抗体G1のCDR H2(Chothia CDR)(配列番号35)
RSESDASA
【0203】
抗体G2のCDR H1(伸長CDR)(配列番号36)
GYTFTSSVMH
【0204】
抗体G2のCDR H1(Chothia CDR)(配列番号37)
GYTFTSS
【0205】
抗体G2のCDR H2(Chothia CDR)(配列番号38)
NPYNDG
【0206】
開示された教示は様々な適用、方法、キット、および組成物に関して記載されているが、本明細書における教示および以下の特許請求の範囲において記載される発明から逸脱することなく様々な変更および修飾を行い得ることが理解されよう。前述の実施例は、開示された教示をより良好に例示するために提供されるものであり、本明細書において示される教示の範囲を限定することを意図したものではない。本教示はこれらの典型的な実施形態に関して記載されているが、当業者には、過度の実験を伴うことなくこれらの典型的な実施形態の多くの変形および修飾が可能であることが容易に理解されよう。全てのこのような変形および修飾は、本教示の範囲内にある。
【0207】
本明細書において用いられる節の見出しは、構成的な目的のためのものにすぎず、記載された内容を限定するものと解釈されるものでは全くない。本教示において論じられている温度、濃度、時間などの前には黙示的な「約」が存在すること、したがってわずかなおよび実体的ではない偏差が本明細書における本教示の範囲内にあることが理解されよう。本願において、単数形の使用は、別段の具体的な記載がない限り、複数形を含む。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含んでいる(containing)」の使用は、限定することを意図したものではない。前述の全体的な記載および以下の詳細な記載の両方が典型的および説明的なものにすぎず、本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0208】
特許、特許出願、書類、テキストブックなどを含む、本明細書において引用される全ての参考文献、およびそれらにおいて引用される参考文献は、それらがまだ本明細書に組み込まれていない場合に限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。限定はしないが、定義された用語、用語の使用法、記載された技術などを含む、組み込まれた文献および類似の材料の1つまたは複数が本願と異なるかまたは本願と矛盾する場合、本願が優先される。
【0209】
前述の記載および実施例は、本発明の特定の具体的な実施形態を詳述するものであり、本発明者らが意図する最良の態様を記載するものである。しかし、文章において見られ得る前述のものがいかに詳述されていても、本発明が多くの方法で実施され得ること、ならびに本発明が添付の特許請求の範囲およびその任意の同等物に従って解釈されるべきであることが理解されよう。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の抗CGRPアンタゴニスト抗体を、内臓痛に罹患しているかまたは内臓痛のリスクがある個体に投与することを含む、個体における内臓痛および/または内臓痛の1つもしくは複数の症状を治療する方法。
【請求項2】
内臓痛が機能性腸障害(FBD)に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FBDが、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、および機能性腹痛症候群(FAPS)からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
内臓痛が炎症性腸疾患(IBD)に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
IBDが、クローン病、回腸炎、および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
内臓痛が、腎疝痛、月経困難症、膀胱炎、月経期間、陣痛、閉経、前立腺炎、または膵炎に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
内臓痛が間質性膀胱炎(IC)に関連する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗CGRPアンタゴニスト抗体が、50nM以下のK(37℃で表面プラズモン共鳴によって測定される)でCGRPに結合し、かつ/または少なくとも7日間のインビボでの半減期を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
抗CGRPアンタゴニスト抗体が、CGRPのC末端領域に特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
抗CGRPアンタゴニスト抗体が、配列GSKAF(配列番号39)により規定されるエピトープを特異的に認識する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗CGRP抗体が、配列番号1または19に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗CGRP抗体が、配列番号2または20に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
抗CGRP抗体が、
(a)配列番号3、21、33、34、36、または37で示されるCDR H1、
(b)配列番号4、22、35、または38で示されるCDR H2、
(c)配列番号5または23で示されるCDR H3、
(d)配列番号6または24で示されるCDR L1、
(e)配列番号7または25で示されるCDR L2、および
(f)配列番号8または26で示されるCDR L3
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
抗CGRP抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインと、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
抗CGRP抗体が、ATCC受託番号がPTA−6867および/またはPTA−6866の発現ベクターにより産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
抗CGRP抗体が、
C末端のリジンを有するかまたは有さない、配列番号11に示される、抗体G1の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列と、
配列番号12に示される、抗体G1の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
抗CGRP抗体が、
配列番号29に示される、抗体G2の重鎖の完全な抗体アミノ酸配列と、
配列番号30に示される、抗体G2の軽鎖の完全な抗体アミノ酸配列と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
個体における内臓痛および/または内臓痛の症状を治療および/または予防するための医薬組成物であって、抗CGRPアンタゴニスト抗体および薬学的に許容できる担体を含み、末梢に投与するために調製される医薬組成物。

【図2】
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【公開番号】特開2011−46710(P2011−46710A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−190737(P2010−190737)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(505129415)ライナット ニューロサイエンス コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】