説明

カルバゾール誘導体の製造方法

【課題】簡潔かつ単純なプロセスで、しかも導入されたアリール基の種類によって生ずる目的物質の収率及び純度等の差異を極力低減した各種バリエーションのカルバゾール誘導体を製造する方法の提供。
【解決手段】カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、活性部位を有する芳香族化合物とを、カップリングすることを特徴とする特定なカルバゾール誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルバゾール誘導体の製造方法に関する。より詳しくは、バンドギャップが広く、電子及び正孔の輸送性の高いバイポーラ性を示し、発光素子に好適に用いることができるカルバゾール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の一態様が製造対象とするカルバゾール誘導体を包含するところの下記一般式K1で表されるカルバゾール誘導体及び本発明の一態様が製造対象とする下記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は既知物質であり、いずれもそれら物質はバンドギャップが非常に大きく、かつ非常に短波長の発光が可能で、色純度の良い青色発光を得ることができることも既知である(特許文献1及び2参照)。
また、それらの誘導体が電気化学的安定性に富むことも既に知られており、勿論それら誘導体の製造方法も既知である(特許文献1及び2参照)。
【0003】
【化1】

【0004】
その一般式(1)で表される誘導体の既知の製造方法には2つの方法があり、それはそれぞれ前記した特許文献1及び2に記載されており、特許文献1に記載の製造方法を第1の既知方法という。
その第1の既知方法を具体的に示すと下記のとおりであり、反応式(K−1)、反応式(K−2)及び反応式(K−3)の三段階からなる。
【0005】
その第1の既知方法においては、まず9H−カルバゾール(化合物K1)をハロゲン化することにより、カルバゾール誘導体(化合物K2)を得る(反応式(K−1))。
その反応式(K−1)においてX2はハロゲンを表し、ハロゲンとしてはヨウ素、臭素が好ましいが、その反応式(K−1)において臭素化する場合、用いることができる臭素化剤は、臭素、N−ブロモコハク酸イミドなどである。
その際に用いることができる溶媒はクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒であるが、臭素化剤にN−ブロモコハク酸イミドを用いる場合には、溶媒は酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、酢酸、水等などである。
【0006】
【化2】

【0007】
その反応式(K−1)において、ヨウ素化する場合、用いることができるヨウ素化剤は、N−ヨードコハク酸イミド、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン(略称:DIH)、2,4,6,8−テトラヨード−2,4,6,8−テトラアザビシクロ[3,3,0]オクタン−3,7−ジオン、2−ヨード−2,4,6,8−テトラアザビシクロ[3,3,0]オクタン−3,7−ジオン等などがある。
【0008】
また、これらのヨウ素化剤を用いてヨウ素化する場合に用いることができる溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンなどの有機ハロゲン化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、酢酸(氷酢酸)、水などを単一又は混合して使用する。水を用いる場合は、有機溶媒と混合して用いることが好ましい。さらに、この反応については同時に硫酸や酢酸等の酸を用いることが好ましい。
【0009】
次に、得られたカルバゾール誘導体(化合物K2)と、有機ホウ素化合物[化合物K3(なお、反応式2における「化合物3」に該当するものである)]とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングして、3−アリール−9H−カルバゾール(化合物K4)を得る(反応式(K−2))。
反応式(K−2)において、X2はハロゲンを表し、ハロゲンとしては、ヨウ素、臭素が好ましい。また、反応式(K−2)において、X2がトリフラート基である化合物を用いてもよい。なお、R101及びR102が水素の時、化合物K3で表される有機ホウ素化合物をアリールボロン酸とよぶ。
【0010】
【化3】

【0011】
その反応式(K−2)において、Ar1は炭素数6−13の置換基を有していてもよいアリール基を表す。その反応式において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等である。
反応式(K−2)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルトートリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等である。
【0012】
反応式(K−2)において、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等であり、同様に用いることができる溶媒としては、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒などである。なお、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0013】
第1の既知方法の最後の反応工程である反応式(K−3)において、アントラセン誘導体(化合物K5)と、カルバゾール誘導体(化合物K4)とを、パラジウム触媒を用いたハートウィック・ブッフバルト反応、または、銅や銅化合物を用いたウルマン反応によりカップリングすることにより、本発明の一態様の製造方法と同じ目的物質である一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体を得るものである。
【0014】
【化4】

【0015】
その反応式(K−3)において、X3はハロゲン又はトリフラート基を表し、X3がハロゲンである場合、ヨウ素、臭素、塩素が好ましい。その反応式において、Ar1は炭素数6−13の置換基を有していてもよいアリール基を表す。
反応式(K−3)において、ハートウィック・ブッフバルト反応を行う場合、用いることができるパラジウム触媒としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等である。
【0016】
その反応式(K−3)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(tert−ブチル)ホスフィンや、トリ(n−ヘキシル)ホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられ、塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等である。さらに、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン等である。
【0017】
その反応式(K−3)においては、前記したとおりハートウィック・ブッフバルト反応のほかにウルマン反応を行うこともでき、その場合にはパラジウム触媒に代わり銅又は銅の化合物を用いるものであり、その際におけるR111とR112は、ハロゲンやアセチル基等を表し、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、R111がヨウ素であるヨウ化銅(I)、又はR112がアセチル基である酢酸銅(II)が好ましい。
その際に用いることができる塩基としては、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0018】
また、その反応の際に用いることができる溶媒としては、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(DMPU)、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ウルマン反応では、反応温度が100℃以上の方がより短時間かつ高収率で目的物が得られるため、沸点の高いDMPU、キシレンを用いることが好ましい。また、反応温度は150℃以上のより高い温度が更に好ましいため、より好ましくはDMPUを用いる。
【0019】
第1の既知方法が前記したとおりであるから、第2の既知方法は特許文献2に記載の製造方法であり、具体的に示すと下記のとおり、反応式(K−4)、反応式(K−5)及び反応式(K−6)の三段階からなる。
なお、反応式(K−4)の出発原料である、化合物K4は、反応式(K−1)及び反応式(K−2)の二段階の反応を経ることにより得られるものであるから、第2の既知方法は厳密には更に二段階の反応プロセスが増加することになる。
【0020】
【化5】

【0021】
第1の既知方法で合成したカルバゾール誘導体(化合物K4)と、パラ−ジハロゲン化ベンゼン(化合物K6)とを、パラジウム触媒を用いたハートウィック・ブッフバルト反応、または、銅や銅化合物を用いたウルマン反応によりカップリングすることで、カルバゾール誘導体(化合物K7)を得ることができる(反応式(K−4))。
反応式(K−4)において、X4及びX5はハロゲンまたは、トリフラート基を表し、X4及びX5がハロゲンである場合、ヨウ素、臭素、塩素が好ましい。また、X4及びX5は同じであっても異なっていてもよい。反応式(K−4)において、Ar1は炭素数6−13の置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0022】
反応式(K−4)において、ハートウィック・ブッフバルト反応を行う場合、用いることができるパラジウム触媒としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等であり、かつ用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(tert−ブチル)ホスフィンや、トリ(n−ヘキシル)ホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等である。
また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等であり、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン等である。
【0023】
その反応式(K−4)においては、ハートウィック・ブッフバルト反応の外に前記したとおりウルマン反応を行うこともでき、その場合にはパラジウム触媒に代わり銅又は銅の化合物を用いるものであり、その際にはR111とR112は、ハロゲンやアセチル基等を表し、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
また、R111がヨウ素であるヨウ化銅(I)、又はR112がアセチル基である酢酸銅(II)が好ましい。また、銅化合物の他に銅を用いることもできる。
【0024】
さらに、その反応式において、用いることができる塩基としては、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられ、用いることができる溶媒としては、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(DMPU)、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ウルマン反応では、反応温度が100℃以上の方がより短時間かつ高収率で目的物が得られるため、沸点の高いDMPU、キシレンを用いることが好ましい。また、反応温度は150℃以上のより高い温度が更に好ましいため、より好ましくはDMPUを用いる。
【0025】
次いで、得られたカルバゾール誘導体(化合物K7)をアルキルリチウム試薬とホウ素試薬を用いてボロン酸化することにより、カルバゾール誘導体のボロン酸体(化合物K8)を得る(反応式(K−5))。
その反応式(K−5)において、X5はハロゲン又はトリフラート基を表し、ハロゲンとしてはヨウ素、臭素、塩素が好ましく、Ar1は炭素数6−13の置換基を有していてもよいアリール基を表す。
また、化合物K8のボロン酸をエチレングリコールやピナコールにより保護してから次の反応に用いてよい。
【0026】
【化6】

【0027】
その反応式(K−5)において、R50は炭素数1−6のアルキル基を表し、R51は炭素数1−6のアルキル基を表し、用いることができる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒を用いることができる。
また、アルキルリチウム試薬は、R50がn−ブチル基であるn−ブチルリチウムや、R50がt−ブチル基であるt−ブチルリチウムや、R50がメチル基であるメチルリチウム等である。さらに、ホウ素試薬としては、R51がメチル基であるホウ酸トリメチルや、R51がイソプロピル基であるホウ酸トリイソプロピルなどである。
【0028】
最後に、カルバゾール誘導体のボロン酸体(化合物K8)と、アントラセン誘導体(化合物K9)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦カップリング反応によりカップリングすることで、一般式(1)で表される目的物を得る(反応式(K−6))。
その反応式(K−6)において、X6はハロゲンまたはトリフラート基を表し、X6がハロゲンである場合、ヨウ素、臭素、塩素が好ましい。
【0029】
【化7】

【0030】
その反応式(K−6)において、Ar1は炭素数6−13の置換基を有していてもよいアリール基を表し、また用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等である。
その際のパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等である。
その反応式において、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0031】
また、その反応の際に用いることができる溶媒としては、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。さらに、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
なお、化合物K8に代えて化合物K8のボロン酸をエチレングリコールやピナコールにより保護した有機ホウ素化合物を用いてもよい。
【0032】
前記したとおりであるから、本願発明の一態様の製造方法の製造対象物質である一般式(1)の化合物は既知物質であり、しかもその製造方法についても2つの方法が既に知られている。
また、その一般式(1)の化合物は、アントラセン骨格とカルバゾール骨格との結合したものであり、そのカルバゾール骨格の3位の位置にアリール基が結合した構造となっている。
【0033】
その既知の製造方法においては、目的物質を作製するまでの反応過程が多く、製造プロセスが簡便なものとは言い難い。
また、本願発明の一態様の製造方法及び既知の製造方法のいずれにおいても製造対象物質である一般式(1)の誘導体におけるアリール基(Ar1)には各種アリール基が採用でき、それら製造方法においては各種バリエーションのカルバゾール誘導体を製造することができるが、既知の製造方法においてはアントラセン骨格とカルバゾール骨格との結合が行われる前にカルバゾールの3位の位置に結合するアリール基の導入が行われており、そのため各種バリエーションのカルバゾール誘導体を製造するには優れた方法とは言い難いところがある。
【0034】
すなわち、既知の製造方法においては、アントラセン骨格とカルバゾール骨格との結合前にカルバゾールの3位の位置にアリール基が導入されており、そのため導入後に両骨格の結合反応が行われることになる。
その結果、第1の既知方法では、アリール基導入反応と、その後に続く両骨格の結合反応とが導入されたアリール基の種類によって影響を受け、目的物質の収率、純度等が導入されたアリール基によって差異が生ずるという問題がある。
【0035】
また、第2の既知方法では、第1段階である反応式(K−4)の出発物質である化合物K4はアリール基が導入されたカルバゾールであるから、そのカルバゾールに対して、反応式(K−4)、反応式(K−5)及び反応式(K−6)の三段階の反応が行われることになる。
そのため、それぞれの段階で置換されたアリール基によって反応の進行が影響を受けることになるので、出発物質に導入されているアリール基の種類によって、目的物質の収率、純度等に大きな差異が生ずることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2007−39431号公報
【特許文献2】特開2008−81497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
以上のとおりであるから、前記した既知の製造方法においては、その製造プロセスが単純ではなく、また各種バリエーションのカルバゾール誘導体を製造する際には、導入されたアリール基の種類によって、目的物質の収率及び純度等が大きな影響を受けることになるが、本発明者らは、これら課題を鋭意検討した結果、この影響を低減したカルバゾール誘導体の新たな製造方法を見出した。
すなわち、本願発明は、簡潔かつ単純なプロセスで、しかも導入されたアリール基の種類によって生ずる目的物質の収率及び純度等の差異を極力低減した各種バリエーションのカルバゾール誘導体の製造方法を提供することを発明の解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本願発明の一態様は、カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、活性部位を有する芳香族化合物とを、カップリングすることを特徴とする、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法である。また、本願発明の一態様は、前記カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール及びその製造方法も含む。
【0039】
【化8】

(但し、式中、Ar1は環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。また、Ar1は置換基を有していても良い。)
【0040】
また、本願発明の好ましい態様は下記のとおりである。
すなわち、カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、化合物(A1)で表される活性部位を有する芳香族化合物とを、金属触媒を用いてカップリングすることを特徴とする、一般式(1a)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法である。
【0041】
【化9】

(但し、式中、Xは活性部位を表す。また、R1乃至R5は、それぞれ独立に水素、炭素数1−4のアルキル基、又は環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。また、R1乃至R5がアリール基である場合、置換基を有していても良い。)
【0042】
【化10】

(但し、式中、R1乃至R5は、それぞれ独立に水素、炭素数1−4のアルキル基又は環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。また、R1乃至R5がアリール基である場合、置換基を有していても良い。)
【0043】
さらに、本願発明のより好ましい態様は下記のとおりである。
すなわち、カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、化合物(A2)で表される有機ホウ素化合物とを、パラジウム触媒を用いてカップリングすることを特徴とする、一般式(1b)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法である。なお、化合物(A2)の一般式において、R101及びR102が水素の時、化合物(A2)で表される有機ホウ素化合物をアリールボロン酸とよぶ。
【0044】
【化11】

(但し、式中、R101とR102は水素又は炭素数1−6のアルキル基を表し、R101とR102は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0045】
【化12】

【発明の効果】
【0046】
本願発明は、1回の反応工程で、アリール基(Ar1)に様々なバリエーションを持たせることができ、様々なバリエーションのカルバゾール誘導体を製造することができる。
したがって、本願発明は、簡潔かつ単純なプロセスで各種のカルバゾール誘導体を製造する優れた方法を提供するものである。
また、本願発明は、各種バリエーションのカルバゾール誘導体を製造する際に、既知方法のように、カルバゾール骨格の3位に、様々なバリエーションのアリール基(Ar1)の官能基を導入した後に2以上の複数の反応工程を経ることがないので、カルバゾール基に導入されるアリール基の種類によって発生する目的物質の収率あるいは純度等の低減を極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一態様に係る発光素子を説明する図。
【図2】本発明の一態様に係る発光素子を説明する図。
【図3】本発明の一態様に係る発光素子を説明する図。
【図4】本発明の一態様に係る発光素子を説明する図。
【図5】本発明の一態様に係る発光装置を説明する図。
【図6】本発明の一態様に係る発光装置を説明する図。
【図7】本発明の一態様に係る電子機器を説明する図。
【図8】本発明の一態様に係る電子機器を説明する図。
【図9】本発明の一態様に係る照明装置を説明する図。
【図10】本発明の一態様に係る照明装置を説明する図。
【図11】CzPAPの1H NMRチャートを示す図。
【図12】CzPAPのトルエン溶液の吸収スペクトルを示す図。
【図13】CzPAPの薄膜の吸収スペクトルを示す図。
【図14】CzPAPのトルエン溶液の発光スペクトルを示す図。
【図15】CzPAPの薄膜の発光スペクトルを示す図。
【図16】CzPAPの酸化側のCV測定結果を示す図。
【図17】CzPAPの還元側のCV測定結果を示す図。
【図18】CzPAαNPの1H NMRチャートを示す図。
【図19】CzPAαNの1H NMRチャートを示す図。
【図20】CzPAβNの1H NMRチャートを示す図。
【図21】CzPApBの1H NMRチャートを示す図。
【図22】CzPAoBの1H NMRチャートを示す図。
【図23】CzPAFLの1H NMRチャートを示す図。
【図24】本発明の一態様に係る発光素子の作製例を示す図。
【図25】発光素子1の電流密度―輝度特性を示す図。
【図26】発光素子1の電圧−輝度特性を示す図。
【図27】発光素子1の輝度−電流効率特性を示す図。
【図28】発光素子1の発光スペクトルを示す図。
【図29】発光素子2の電流密度―輝度特性を示す図。
【図30】発光素子2の電圧−輝度特性を示す図。
【図31】発光素子2の輝度−電流効率特性を示す図。
【図32】発光素子2の発光スペクトルを示す図。
【図33】発光素子1の信頼性試験の結果を示す図。
【図34】発光素子2の信頼性試験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の各種実施の態様について必要に応じて図面を用いて詳細に説明する。
但し、本発明は以下の説明に限定されない。従って、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。なお、以下においては、本発明の製造方法により作製した目的物質を用いた利用態様等に関しても詳述する。
【0049】
本願発明の一態様は一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法であり、それは、前記したとおりカルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、活性部位を有する芳香族化合物とを、カップリングすることを特徴とするものである。なお、本発明においては芳香族化合物は複素環化合物を含むものではない。
【0050】
本願発明の一態様は前記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法であり、それは、前記したとおりカルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、活性部位を有する芳香族化合物とを、カップリングすることを特徴とするものである。
その製造方法の前段となる、3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールの形成工程と、それに続くカップリング工程とを反応式で示すと下記の反応式1及び反応式2のとおりである。
【0051】
【化13】

(但し、化合物2のX7は、活性部位を表す。活性部位X7としては、ハロゲン、ボロン酸、有機ホウ素化合物、有機錫化合物、トリフルオロタンスルホン酸(トリフレート)、グリニヤール試薬、有機水銀化合物、チオシアネート、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。)
【0052】
【化14】

(但し、化合物3のX8は、活性部位を表す。活性部位X8としては、ハロゲン、ボロン酸、有機ホウ素化合物、有機錫化合物、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフレート)、グリニヤール試薬、有機水銀化合物、チオシアネート、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。また、一般式(1)のAr1は、環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。なお、Ar1は置換基を有していても良い。)
【0053】
以下において、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体に導入される置換基Ar1に関し更に詳述する。
そのAr1のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が例示でき、それが更に置換基を有する場合の置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1のハロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が例示できる。なお、Ar1が置換基を有する場合には、置換基同士が互いに結合して環を形成してもよく、その場合の環構造としてはスピロ環も含むものとする。なお、その場合のスピロ環を形成する炭素は環を形成するということになる。
【0054】
前記Ar1のアリール基の具体的構造としては、下記置換基(S−1)ないし(S−24)等が例示できる。それらの置換基において、フェニル基の場合の具体例が置換基(S−1)であり、それが更に置換基を有する場合の具体例が置換基(S−4)ないし(S−16)である。さらに、ナフチル基の場合の具体例が置換基(S−2)、(S−3)である。
また、フルオレニル基で、かつ置換基を有する場合の具体例が置換基(S−17)ないし(S−19)である。なお、置換基同士が互いに結合してスピロ環を形成する場合の具体例が置換基(S−18)である。
【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
本発明の一態様のカルバゾール誘導体の製造方法は、反応式2で表わされるように、カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、活性部位を有するアリールとを、パラジウム触媒、ニッケル触媒などの金属触媒を用いてカップリング反応を行うことにより目的とするカルバゾール誘導体(一般式(1))を製造する方法である。カップリング反応としては、鈴木・宮浦カップリング、右田・小杉・スティルカップリング、熊田・玉尾カップリング又は根岸カップリング等を用いることができる。金属触媒は、銅、鉄などの金属又はヨウ化銅(I)等の金属化合物であってもよい。
【0058】
また、本願発明の好ましい態様は下記のとおりである。
すなわち、カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、前記した化合物(A1)で表される活性部位を有するアリール基とを、金属触媒を用いてカップリングすることを特徴とする、前記した一般式(1a)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法である。
反応に用いる金属触媒としては、パラジウム触媒、ニッケル触媒などの金属触媒を挙げることができる。また、金属触媒は、銅、鉄などの金属、ヨウ化銅(I)等の金属化合物であってもよい。
【0059】
さらに、本願発明のより好ましい態様は下記のとおりである。
すなわち、カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、前記した化合物(A2)で表される有機ホウ素化合物とを、パラジウム触媒を用いてカップリングすることを特徴とする、前記した一般式(1b)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法である。なお、化合物(A2)の一般式において、R101及びR102が水素の時、化合物(A2)で表される有機ホウ素化合物をアリールボロン酸とよぶ。
【0060】
本願発明の製造方法により製造する化合物について構造式で具体的に示すと、構造式1ないし31のものが例示できる。
それら化合物の一部について、化合物名で具体的に示すと下記のとおりである。
3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP、構造式1の化合物)、3−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαNP、構造式2の化合物)。
【0061】
【化17】

【0062】
【化18】

【0063】
【化19】

【0064】
【化20】

【0065】
【化21】

【0066】
【化22】

【0067】
【化23】

【0068】
【化24】

【0069】
[実施の形態1]
本願発明製造方法の形態に関し以下において詳述する。
本願発明の一態様の製造方法は、前記したとおりカルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、活性部位を有する芳香族化合物とを、カップリングすることを特徴とするものである。
【0070】
本実施の形態においては、前記反応式2のカップリング反応において、鈴木・宮浦カップリングを行う場合を例に説明する。
前記反応式2のカップリング反応において、鈴木・宮浦カップリングを行う場合には、化合物2のX7がハロゲンもしくはトリフレートであり、化合物3のX8がボロン酸もしくは有機ホウ素化合物であることが好ましい。または、化合物2のX7がボロン酸もしくは有機ホウ素化合物であり、X8がハロゲンもしくはトリフレートであることが好ましい。また、パラジウム触媒を用いることが好ましい。
本実施の形態においては、化合物2のX7がハロゲン又はトリフレートであり、化合物3のX8がボロン酸又は有機ホウ素化合物である場合を例に説明する。
なお、本実施の形態の製造方法に係るカップリング反応としては、右田・小杉・スティルカップリング、熊田・玉尾カップリング又は根岸カップリング等を用いることができる。
【0071】
前記のとおりではあるものの、その製造方法においては、その前段で3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールを形成し、それに続いて前記カップリング工程が存在するものとなり、それら反応工程を反応式で示すと、例えば下記の反応式M1及び反応式M2のとおりである。
すなわち、第1段階では、反応式M1により、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(化合物1、略称:CzPA)を直接ハロゲン化することにより、CzPAのカルバゾール骨格の3位がハロゲン化された化合物M1を得るものである。
【0072】
【化25】

【0073】
【化26】

【0074】
その反応式M1において、X1はハロゲンを表し、ハロゲンとしては、ヨウ素、臭素が好ましい。その反応において、臭素化する場合、用いることができる臭素化剤は、臭素、N−ブロモコハク酸イミドなどが挙げられる。
臭素を用いて臭素化する場合に用いることができる溶媒は、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒が挙げられるが、これらに限られるものではない。N−ブロモコハク酸イミドを用いて臭素化する場合に用いることができる溶媒は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、酢酸、水等が挙げられる。
【0075】
その反応式M1において、ヨウ素化する場合、用いることができるヨウ素化剤は、N−ヨードコハク酸イミド、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン(略称:DIH)、2,4,6,8−テトラヨード−2,4,6,8−テトラアザビシクロ[3,3,0]オクタン−3,7−ジオン、2−ヨード−2,4,6,8−テトラアザビシクロ[3,3,0]オクタン−3,7−ジオン等などが挙げられる。
【0076】
また、これらのヨウ素化剤を用いてヨウ素化する場合に用いることができる溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンなどの有機ハロゲン化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、酢酸(氷酢酸)、水などを単一又は混合して使用することができる。
【0077】
その際に、水を用いる場合は、有機溶媒と混合して用いることが好ましい。また、この反応においては、同時に硫酸や酢酸等の酸を用いることが好ましく、用いることができる酸はこれに限られるものではない。
なお、反応式M1で示すハロゲン化以外の方法を用いてもよく、CzPAのカルバゾール骨格の3位にトリフラート基を置換した化合物を合成してもよい。
【0078】
次に、第2段階の反応である反応式M2の反応を行うことになる。
その反応はCzPAのカルバゾール骨格の3位がハロゲン化された化合物M1と、化合物M2である有機ホウ素化合物とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングして、目的物である一般式(1)で表されるCzPA誘導体を得る。なお、R101及びR102が水素の時、化合物M2で表される有機ホウ素化合物をアリールボロン酸とよぶ。
【0079】
その反応式M2においては、X1はハロゲンを表し、ハロゲンとしてはヨウ素、臭素が好ましく、その反応式においてはX1がトリフラート基である化合物を用いてもよい。
また、その反応式において、Ar1は炭素数6−13の置換基を有していてもよいアリール基を表し、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよく、環構造としてはスピロ環も含む物とする。
さらに、その反応式の化合物(M2)の一般式において、R101とR102は、水素又は炭素数1−6のアルキル基を表し、R101とR102は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0080】
また、反応式M2において用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。その際に用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。
さらに、その反応式において、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0081】
その反応式M2において、用いることができる溶媒としては、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられるが、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0082】
[実施の形態2]
本願発明製造方法により製造したカルバゾール誘導体を用いて作製した発光素子の一形態について図1(A)を用いて以下に説明する。
この発光素子は、一対の電極間に少なくとも発光物質を含む層(発光層ともいう)を有するEL層を挟持して形成される。
そのEL層は発光物質を含む層の他に複数の層を有してもよい。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリアの再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。
【0083】
本明細書では、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層をキャリアの注入、輸送などに機能する、機能層ともよぶ。機能層としては、正孔注入性の高い物質を含む層(正孔注入層ともいう)、正孔輸送性の高い物質を含む層(正孔輸送層ともいう)、電子注入性の高い物質を含む層(電子注入層ともいう)、電子輸送性の高い物質を含む層(電子輸送層ともいう)などを用いることができる。
【0084】
図1に示す本実施の形態の発光素子において、第1の電極102及び第2の電極107の一対の電極間にEL層108が設けられている。EL層108は、第1の層103、第2の層104、第3の層105、及び第4の層106を有している。図1における発光素子は、基板101上に、第1の電極102と、第1の電極102の上に順に積層した第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106と、さらにその上に設けられた第2の電極107とから構成されている。なお、本実施の形態では第1の電極102は陽極として機能し、第2の電極107は陰極として機能するものとして以下説明をする。
【0085】
基板101は発光素子の支持体として用いられる。基板101としては、例えばガラス、石英、またはプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。なお、作製工程において発光素子の支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0086】
第1の電極102としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。
【0087】
例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)膜は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0088】
第1の層103は、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても第1の層103を形成することができる。
【0089】
また、第1の層103として、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を用いることができる。特に、有機化合物と、有機化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料は、有機化合物と無機化合物との間で電子の授受が行われ、キャリア密度が増大するため、正孔注入性、正孔輸送性に優れている。
前記のように第1の層103として有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を用いた場合、第1の電極102とオーム接触をすることが可能となるため、仕事関数に関わらず第1の電極を形成する材料を選ぶことができる。
【0090】
複合材料に用いる無機化合物としては、遷移金属の酸化物であることが好ましい。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中で安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0091】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0092】
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0093】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0094】
さらに、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0095】
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン等が挙げられる。
【0096】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等も挙げられる。この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0097】
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0098】
第2の層104を形成する物質としては、正孔輸送性の高い物質、具体的には、芳香族アミン(すなわち、ベンゼン環−窒素の結合を有するもの)の化合物であることが好ましい。広く用いられている材料として、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、その誘導体である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(以下、NPBと記す)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンなどのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0099】
ここに述べた物質は、主に10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、第2の層104は、単層のものだけでなく、上記物質の混合層、あるいは二層以上積層したものであってもよい。
さらに、PMMAのような電気的に不活性な高分子化合物に、正孔輸送性材料を添加してもよい。
【0100】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を用いてもよく、さらに上記高分子化合物に上記正孔輸送性材料を適宜添加してもよい。
【0101】
第3の層105は、発光物質を含む層(発光層ともいう)である。本実施の形態では、第3の層105は実施の形態1で示した製造方法で得られたカルバゾール誘導体を用いて形成する。前記カルバゾール誘導体は、青色の発光を示すため、発光物質として発光素子に好適に用いることができる。
また、実施の形態1の製造方法で得られたカルバゾール誘導体(以下、「本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体」と略称することもある)は、第3の層105においてホストとして用いることもでき、そのカルバゾール誘導体に発光物質となるドーパントを分散させた構成とすることで、発光物質となるドーパントからの発光を得ることができる。
【0102】
本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を他の発光物質を分散させる材料として用いる場合、発光物質に起因した発光色を得ることができる。また、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体に起因した発光色と、カルバゾール誘導体中に分散されている発光物質に起因した発光色との混色の発光色を得ることもできる。
【0103】
また、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を、その誘導体よりも大きなバンドギャップを有する材料(ホスト)よりなる層中に添加した発光素子を作製することで、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体からの発光を得ることができる。すなわち、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体はドーパントとしても機能する。このとき、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示すため、色純度の良い青色の発光を得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0104】
ここで、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体に分散させる発光物質としては、種々の材料を用いることができる。具体的には、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(ジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン(略称:DCM2)、N,N−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、ルブレンなどの蛍光を発光する蛍光発光物質を用いることができる。
【0105】
また、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)などの蛍光を発光する蛍光発光物質も用いることができる。
さらに、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)などの燐光を発光する燐光発光物質を用いることができる。
【0106】
第4の層106は、電子輸送性の高い物質を用いることができる。例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0107】
さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0108】
また、第4の層106と第2の電極107と間に電子注入を促す機能を有する層(電子注入層)を設けても良い。電子注入を促す機能を有する層としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例えば、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、あるいはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることにより、第2の電極107からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。
【0109】
第2の電極107を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0110】
前記のとおりではあるが、第2の電極107と第4の層106との間に、電子注入を促す機能を有する層を、当該第2の電極と積層して設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有したITO等様々な導電性材料を第2の電極107として用いることができる。
【0111】
そして、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体は、電子及び正孔の輸送性の高いバイポーラ材料であるためキャリア輸送材料として発光素子の機能層としても用いることができる。例えば、キャリア輸送層である正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層又は電子注入層として本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0112】
また、第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106の形成方法は、蒸着法、スパッタ法、液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、印刷法などの種々の方法を用いることができる。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を溶媒に溶解した溶液状の組成物を用いて湿式法によって薄膜を形成する場合、前記カルバゾール誘導体及び溶媒を含む溶液状の組成物を被形成領域に付着させ、溶媒を除去し固化させることによって薄膜として形成する。
【0113】
その湿式法としては、スピンコート法、ロールコート法、スプレー法、キャスト法、ディップ法、液滴吐出(噴出)法(インクジェット法)、ディスペンサ法、各種印刷法(スクリーン(孔版)印刷、オフセット(平版)印刷、凸版印刷やグラビア(凹版)印刷など所望なパターンで形成される方法)などを用いることができる。なお、液状の組成物を用いる方法であれば上記に限定されず、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を含有する組成物を用いることができる。
【0114】
また、上述した組成物において溶媒としては種々の有機化合物を用いることができる。例えば、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン(アニソール)、ドデシルベンゼン、あるいはドデシルベンゼンとテトラリンとの混合溶媒のような芳香環(例えばベンゼン環)を有する溶媒を用い前記誘導体を溶解させることができる。また、上述したカルバゾール誘導体は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルムなど芳香環を有さない有機溶媒に対しても溶解することが可能である。
【0115】
また、他の溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、或いは2−エトキシエタノールなどのアルコール系溶媒なども挙げられる。
【0116】
また、本実施の形態で示す組成物に、さらに他の有機材料を含んでもよい。有機材料としては、常温で、固体状態である芳香族化合物、もしくはヘテロ芳香族化合物が挙げられる。有機材料としては、低分子化合物や高分子化合物を用いることができる。また、低分子化合物を用いる場合には、溶媒への溶解性を高める置換基を有している低分子化合物を用いることが好ましい。
それらに加えて、成膜した膜の性質を向上させるために、さらにバインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては、電気的に不活性な高分子化合物を用いることが好ましい。具体的には、ポリメチルメタクリレート(略称:PMMA)や、ポリイミドなどを用いることができる。
【0117】
以上のような構成を有する本実施の形態の発光素子は、第1の電極102と第2の電極107との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である第3の層105において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり第3の層105に発光領域が形成されるような構成となっている。
その発光は、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方は、透光性を有する物質で成る。
【0118】
第1の電極102のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図1(A)に示すように、発光は第1の電極102を通って基板側から取り出される。また、第2の電極107のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図1(B)に示すように、発光は第2の電極107を通って基板と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極107がいずれも透光性を有する物質からなるものである場合、図1(C)に示すように、発光は第1の電極102および第2の電極107を通って、基板側及び基板と逆側の両方から取り出される。
【0119】
なお、第1の電極102と第2の電極107との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第1の電極102及び第2の電極107から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば、上記以外のものでもよい。
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性の物質(電子及び正孔の輸送性の高い物質)、正孔ブロック材料等から成る層を、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体により形成される発光層と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0120】
図2に示す発光素子は、基板301上に、第1の電極302及び第2の電極307の一対の電極間に、EL層308が設けられている。EL層308は、電子輸送性の高い物質からなる第1の層303、発光物質を含む第2の層304、正孔輸送性の高い物質からなる第3の層305、正孔注入性の高い物質からなる第4の層306を含んでいる。陰極として機能する第1の電極302、電子輸送性の高い物質からなる第1の層303、発光物質を含む第2の層304、正孔輸送性の高い物質からなる第3の層305、正孔注入性の高い物質からなる第4の層306、陽極として機能する第2の電極307とが順に積層された構成となっている。
【0121】
以下において具体的な発光素子の形成方法を示す。
本実施の形態の発光素子は一対の電極間にEL層が挟持される構造となっている。EL層は少なくとも本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いて形成された発光物質を有する層(発光層ともいう)を含む。そのEL層には、発光物質を含む層の他に機能層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など)を含んでもよい。電極(第1の電極及び第2の電極)、発光物質を含む層、及び機能層は液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、印刷法などの湿式法を用いて形成してもよく、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの乾式法を用いて形成してもよい。
【0122】
湿式法を用いれば、大気圧下で形成することができるため、簡易な装置及び工程で形成することができ、工程が簡略化し、生産性が向上するという効果がある。一方乾式法は、材料を溶解させる必要がないために溶液に難溶の材料も用いることができ、材料の選択の幅が広い。発光素子を構成する薄膜のすべての形成を湿式法で行ってもよい。この場合、湿式法で必要な設備のみで発光素子を作製することができる。
【0123】
また、発光物質を含む層を形成するまでの積層を湿式法で行い、発光物質を含む層上に積層する機能層や第2の電極などを乾式法により形成してもよい。さらに、発光物質を含む層を形成する前の第1の電極や機能層を乾式法により形成し、発光物質を含む層、及び発光物質を含む層上に積層する機能層や第2の電極を湿式法によって形成してもよい。もちろん、本発明はこれに限定されず、用いる材料や必要とされる膜厚、界面状態によって適宜湿式法と乾式法を選択し、組み合わせて発光素子を作製することができる。
【0124】
本実施の形態においては、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に発光素子を作製している。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTと電気的に接続された電極上に発光素子を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。
【0125】
なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、若しくはN型またはP型のいずれか一方からのみなるものであってもよい。
【0126】
本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体は非常に大きなバンドギャップを有するため、比較的短波長、特に青色に発光を有するドーパントを用いても、そのカルバゾール誘導体からの発光ではなく、ドーパントからの発光が効率よく得られる。
また、そのカルバゾール誘導体は、バンドギャップが広く、電子及び正孔の輸送性の高いバイポーラ材料である。したがって、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、キャリアバランスのよい高信頼性の発光素子を得ることができる。
さらに、その誘導体を用いることにより、高信頼性の発光装置および電子機器を得ることができる。
【0127】
[実施の形態3]
本実施の形態では、実施の形態2で示した構成と異なる構成の発光素子について図3(A)(B)を用いて説明する。
この実施の形態では、図3(A)に示すように電子輸送層である第4の層106と発光層である第3の層105(発光層105とも記す)との間に電子キャリアの移動を制御する層130を設ける構成を有する。このように電子輸送層と発光層との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。
【0128】
これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層、もしくは電子輸送性の高い材料に最低空軌道(LUMO)のエネルギー値の低いホール輸送性を有する材料を添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、第3の層105を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0129】
また、他の構成として、発光層105を2層以上の複数層で構成してもよい。図3(B)に、発光層105を第1の発光層105a、第2の発光層105bと2層の複数層でもって構成する例を示す。
例えば、第1の発光層105aと第2の発光層105bを正孔輸送層である第2の層104側から順に積層して発光層105とする場合、第1の発光層105aのホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層105bとして電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
【0130】
本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体は、単独で発光層として用いることのできる他、ホストとして用いることもでき、さらにドーパントとして用いることもできる。
そのカルバゾール誘導体をホストとして用いる場合、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体に発光物質となるドーパントを分散させた構成とすることで、発光物質となるドーパントからの発光を得ることができる。
他方、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体をドーパントとして用いる場合、その誘導体よりも大きなバンドギャップを有する材料(ホスト)よりなる層中に添加した構成とすることで、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体からの発光を得ることができる。
【0131】
また、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体は、正孔輸送性と、電子輸送性とのバイポーラ性を有するので、正孔輸送性を利用する場合、第1の発光層105aに用いることができ、電子輸送性を利用する場合、第2の発光層105bとして用いることができる。
前記誘導体は、第1の発光層105a、第2の発光層105bには、単独で発光層として用いてもよいし、ホスト材料、ドーパント材料として用いてもよい。単独で発光層、又はホスト材料として用いる場合はそのキャリア輸送性によって、正孔輸送性の第1の発光層105aか、電子輸送性の第2の発光層105bに用いるか決定すればよい。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0132】
[実施の形態4]
本実施の形態は、実施の形態2に記載の発光素子を1ユニットとし、その複数のユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子という)の態様であり、それに関し図4を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。
なお、この複数のユニットを積層した構成の発光素子を形成する際には、ユニット間に位置する電極は取り除いた構造となっている。
【0133】
図4において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されている。第1の電極501と第2の電極502は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよく、その構成は実施の形態2と同様なものを適用することができる。
【0134】
電荷発生層513には、有機化合物と金属酸化物の複合材料が含まれている。この有機化合物と金属酸化物の複合材料は、実施の形態2で示した複合材料であり、有機化合物とV25やMoO3やWO3等の金属酸化物を含む。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、オリゴマー、デンドリマー、高分子化合物(ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。
【0135】
なお、有機化合物としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10-6cm2/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0136】
また、電荷発生層513は、有機化合物と金属酸化物の複合材料と他の材料とを組み合わせて形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
【0137】
いずれにしても、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512に挟まれる電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。
【0138】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能であり、そのため長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低くい発光装置を実現することができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0139】
[実施の形態5]
本実施の形態は、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いて作製された発光装置(以下、「本発明の一態様に係る発光装置」と略称することもある)について示すものであるが、それに関し図5を用いて説明する。
図5(A)は、発光装置を示す上面図、図5(B)は図5(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0140】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0141】
次に、断面構造について図5(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
そのソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成され、駆動回路を形成するTFTは、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。なお、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0142】
また、画素部602は、スイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのTFTのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0143】
さらに、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0144】
第1の電極613上には、発光物質を含む層616及び第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、または珪素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜のほか、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層膜、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造膜等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0145】
また、発光物質を含む層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法などの液滴吐出法、印刷法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。発光物質を含む層616は、実施の形態1で示した本発明のカルバゾール誘導体を含んでいる。また、発光物質を含む層616を構成する他の材料としては、低分子材料、オリゴマー、デンドリマー、または高分子材料であっても良い。
【0146】
その発光物質を含む層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物であるMgAg、MgIn、AlLi、LiF、CaF2等)を用いることが好ましい。なお、発光物質を含む層616で生じた光を第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0147】
また、シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604及びシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合のほか、シール材605で充填される場合もある。
そのシール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。
【0148】
さらに、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
以上のようにして、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いて作製された発光装置を得ることができる。
【0149】
そのカルバゾール誘導体は、バンドギャップが広く、電子及び正孔の輸送性の高いバイポーラ材料である。したがって、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、キャリアバランスのよい高信頼性の発光素子を得ることができる。
また、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いることにより、高信頼性の発光装置および電子機器を得ることができる。
【0150】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明したが、この他、パッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。
図6には、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いて作製したパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図を示す。図6において、基板951上には、電極952と電極956との間には発光物質を含む層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。
【0151】
その隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。パッシブマトリクス型の発光装置においても、本発明の一態様に係る発光素子を含むことによって、高信頼性の発光装置を得ることができる。
【0152】
[実施の形態6]
本実施の形態では、実施の形態5に示す発光装置をその一部に含む電子機器について示す。本実施の形態の電子機器は、実施の形態1に示したカルバゾール誘導体を含み、高信頼性の表示部を有する。
【0153】
このカルバゾール誘導体を用いて作製された発光素子を有する電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0154】
図7(A)は本実施の形態に係る表示装置であり、筐体8001、支持台8002、表示部8003、スピーカー部8004、ビデオ入力端子8005等を含む。なお、表示装置は、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。この表示装置において、表示部8003は、実施の形態2又は実施の形態3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0155】
その発光素子は、信頼性が高いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部8003も同様の特徴を有するため、この表示装置は画質の劣化が少なく、高信頼性化が図られている。このような特徴により、表示装置において、劣化補償機能を有する回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、筐体8001や支持台8002の小型軽量化を図ることが可能である。
【0156】
図7(B)は本実施の形態に係るコンピュータであり、筐体8102、表示部8103、キーボード8104、外部接続ポート8105、マウス8106等を含む。このコンピュータにおいて、表示部8103は、実施の形態2、3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、信頼性が高いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部8103も同様の特徴を有するため、このコンピュータは画質の劣化が少なく、高信頼性化が図られている。このような特徴により、コンピュータにおいて、劣化補償機能を有する回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、コンピュータの小型軽量化を図ることが可能である。
【0157】
図7(C)は本実施の形態に係るビデオカメラであり、表示部8202、外部接続ポート8204、リモコン受信部8205、受像部8206、操作キー8209等を含む。このビデオカメラにおいて、表示部8202は、実施の形態2、3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、信頼性が高いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部8202も同様の特徴を有するため、このビデオカメラは画質の劣化が少なく、高信頼性化が図られている。このような特徴により、ビデオカメラにおいて、劣化補償機能を有する回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体の小型軽量化を図ることが可能である。本実施の形態に係るビデオカメラは、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0158】
図7(D)は本実施の形態に係る携帯電話であり、表示部8403、音声入力部8404、音声出力部8405、操作キー8406、外部接続ポート8407等を含む。この携帯電話において、表示部8403は、実施の形態2、3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、信頼性が高いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部8403も同様の特徴を有するため、この携帯電話は画質の劣化が少なく、高信頼性化が図られている。このような特徴により、携帯電話において、劣化補償機能を有する回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体の小型軽量化を図ることが可能である。本実施の形態に係る携帯電話は、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0159】
以上の様に、本発明の一態様に係る発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いることにより、高信頼性の表示部を有する電子機器を提供することが可能となる。
また、本発明の一態様に係る発光装置は、照明装置として用いることもできる。本発明の一態様に係る発光素子を照明装置として用いる態様を、図8を用いて示す。
【0160】
図8は、本発明の一態様に係る発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図8に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライト903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライト903は、本発明の一態様に係る発光装置が用いられおり、端子906により、電流が供給されている。
【0161】
本発明の一態様に係る発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、高信頼性のバックライトが得られる。また、本発明の一態様に係る発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、本発明の一態様に係る発光装置は薄型であるため、表示装置の薄型化も可能となる。
【0162】
図9は、本発明の一態様に係る発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例である。図9に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、本発明の一態様に係る発光装置が用いられている。本発明の一態様に係る発光装置は、信頼性が高いため、電気スタンドも高信頼性である。
図10は、本発明の一態様に係る発光装置を、室内の照明装置3001として用いた例である。本発明の一態様に係る発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の一態様に係る発光装置は、薄型であるため、薄型化の照明装置として用いることが可能となる。
【0163】
[カルバゾール誘導体製造の実施例]
以下に、本発明の一態様のカルバゾール誘導体の製造方法について、実施例1ないし7の7例を示すが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
【実施例1】
【0164】
[CzPAPの製造例]
本実施例では、前記構造式1で表される3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)を製造する例を示す。その合成反応はステップ1及び2の2段階からなる。
【0165】
[ステップ1]
このステップは3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールの合成工程であり、そのステップ1を反応式(E1−1)に示すと共にそのステップの反応に関し以下において詳述する。
【0166】
【化27】

【0167】
1Lエーレンマイヤーフラスコに、5.0g(10mmol)の9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と、600mLの酢酸エチルと、150mLのトルエンを加えた。この混合物を約50℃以上に加熱して攪拌し、CzPAの溶解を確認した。この溶液に1.8g(10mmol)のN−ブロモこはく酸イミド(NBS)を加えた。この溶液を大気下、室温で5日間攪拌した。
【0168】
その攪拌後、この溶液に、約150mLのチオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて1時間攪拌した。この混合物の有機層を水で洗浄した後、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮して淡黄色固体を得た。得られた固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を5.2g、収率90%で得た。
【0169】
[ステップ2]
このステップは3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)の合成工程であり、そのステップを反応式(E1−2)に示すと共にそのステップの反応に関し以下において詳述する。
【0170】
【化28】

【0171】
300mL三口フラスコに3.5g(6.1mmol)の3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、0.74g(6.1mmol)のフェニルボロン酸と、0.36g(1.2mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、60mLのトルエンと、20mLのエタノールと、5.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に55mg(0.24mmol)の酢酸パラジウム(II)を加えた。この混合物を、窒素気流下80℃で2時間攪拌した。
【0172】
攪拌後、この混合物の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た油状物を、約10mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。
得られたろ液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製したところ、淡黄色固体を得た。
【0173】
この淡黄色固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を1.3g、収率37%で得た。
得られた淡黄色粉末1.3gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、減圧下で、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、270℃で淡黄色粉末を加熱した。昇華精製後、目的の化合物の淡黄色固体を1.2g、収率89%で得た。
【0174】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)であることを確認した。
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.35−7.66(m,14H),7.69−7.78(m,9H),7.86(d,J=8.1Hz,4H),8.25(d,J=7.8Hz,1H),8.42(s,1H)
また、1H NMRチャートを図11(A)、(B)に示す。なお、図11(B)は、図11(A)における7.1ppm〜8.5ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0175】
また、得られたCzPAPに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(5%重量減少温度)は404℃であり、CzPAPは非常に良好な耐熱性を示す事が明らかとなった。
【0176】
CzPAPのトルエン溶液の吸収スペクトルを図12に示す。また、CzPAPの薄膜の吸収スペクトルを図13に示す。測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製した。溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを、図12および図13に示した。図12および図13において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では340、357、376、及び397nm付近に吸収が見られ、薄膜の場合では268、303、341、361、382及び403nm付近に吸収が見られた。
【0177】
また、CzPAPのトルエン溶液(励起波長372nm)の発光スペクトルを図14に示す。また、CzPAPの薄膜(励起波長399nm)の発光スペクトルを図15に示す。図14および図15において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はトルエン溶液の場合では423nm(励起波長372nm)、薄膜の場合で444nm(励起波長399nm)であった。
【0178】
また、薄膜状態のCzPAPを大気中にて光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で測定した結果、HOMO準位は−5.84eVであった。さらに、図13のCzPAPの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとして見積もったところ、そのエネルギーギャップは2.94eVであった。CzPAPのHOMO準位の値と、エネルギーギャップから、LUMO準位を見積もったところ−2.90eVであった。
【0179】
また、CzPAPの酸化還元反応特性を測定した。酸化還元反応特性は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。なお、測定には電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600A)を用いた。
そのCV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用いた。
【0180】
その際には、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NClO4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を1mmol/Lの濃度となるように調製した。
また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温で行った。
【0181】
CzPAPの酸化反応特性については次のようにして調べた。基準電極に対する作用電極の電位を−0.01Vから1.15Vまで変化させた後、1.15Vから−0.01Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
CzPAPの還元反応特性については次のようにして調べた。基準電極に対する作用電極の電位を−1.45Vから−2.35Vまで変化させた後、−2.35Vから−1.45Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0182】
CzPAPの酸化側のCV測定結果を図16に、還元側のCV測定結果を図17にそれぞれ示す。図16及び図17において、横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極との間に流れた電流値(μA)を表す。図16から、+0.84V付近(vs.Ag/Ag+電極)に酸化を示す電流が観測された。図17から、−2.21V付近(vs.Ag/Ag+電極)に還元を示す電流が観測された。
【0183】
100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化反応及び還元反応において、CV曲線のピーク位置やピーク強度に大きな変化が見られず、ピーク強度も酸化側でイニシャルの82%、還元側で94%の強度を保っていた。このことから、本実施例に係るカルバゾール誘導体は酸化還元反応の繰り返しに対して安定であることが分かった。
【0184】
実施例1で製造したCzPAPについて、既知の製造方法である前記した第1の既知方法及び第2の既知方法でそれぞれ製造する例を以下に示す。その例は比較参考のためのものであり、参考例1は、前記した第1の既知方法に該当し、参考例2は前記した第2の既知方法にそれぞれ該当するものである。
【0185】
[参考例1] 第1の既知方法によるCzPAPの合成
本例では、前記したとおり構造式1で表される3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)を既知製造方法である前記第1の既知方法による製造例を示す。
【0186】
[ステップ1]
このステップは、3−フェニル−9H−カルバゾールの合成工程であり、そのステップを反応式(R1−1)に示すと共にそのステップの反応に関し以下において詳述する。
【0187】
【化29】

【0188】
100mL三口フラスコに0.50g(2.0mmol)の3−ブロモ−9H−カルバゾールと、0.25g(2.0mmol)のフェニルボロン酸と、0.15g(0.50mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、30mLのトルエンと、10mLのエタノールと、2.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に23mg(0.10mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、80℃で2時間攪拌した。
【0189】
攪拌後、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した後、水層と有機層とに分け、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体を、約10mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮したところ、白色固体を得た。この固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の白色粉末を0.23g、収率47%で得た。
【0190】
[ステップ2]
このステップは、3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)の合成工程であり、そのステップを反応式(R1−2)に示すと共にそのステップの反応に関し以下において詳述する。
【0191】
【化30】

【0192】
100mL三口フラスコに0.39g(0.94mmol)の9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセンと、0.23g(0.94mmol)の3−フェニル−9H−カルバゾールと、0.19g(2.0mmol)のナトリウム tert−ブトキシドを入れた。フラスコ内を窒素置換してから、この混合物へ20mLのトルエンと、0.20mLのトリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%ヘキサン溶液)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気をした。脱気後、この混合物へ、27mg(0.047mmol)のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を加えた。
【0193】
この混合物を窒素気流下において、110℃で2時間攪拌した。攪拌後、この混合物をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製し、得られた淡黄色固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的の化合物の淡黄色粉末0.44gを、収率81%で得た。
【0194】
実施例1のCzPAPの製造例と同様に、核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)であることを確認した。
【0195】
[参考例2] 第2の既知方法によるCzPAPの合成
本例では、前記したとおり構造式1で表される3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)を既知製造方法である前記第2の既知方法による製造例を示す。
【0196】
[ステップ1]
このステップは、9−(4−ブロモフェニル)−3−フェニル−9H−カルバゾールの合成工程であり、そのステップを反応式(R2−1)に示すと共にそのステップの反応に関し以下において詳述する。
【0197】
【化31】

【0198】
500mL三口フラスコに8.0g(34mmol)の1,4−ジブロモベンゼンと、7.0g(28mmol)の3−フェニル−9H−カルバゾールと、0.27g(1.0mmol)の18−クラウン−6−エーテルを入れた。この混合物を130℃で加熱しながら攪拌し、1,4−ジブロモベンゼンを融解した。融解後、この混合物に3.0mLの1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)と、9.5g(69mmol)の炭酸カリウムと、0.20g(1.0mmol)のヨウ化銅(I)を加えてから、この混合物を170℃で3時間攪拌した。攪拌後、この混合物を約110℃まで冷却した後、混合物へ100mLのトルエンを加え室温まで冷却した。
【0199】
この混合物を吸引ろ過し、得られたろ液を希塩酸で3回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で1回洗浄した後、有機層と水層とに分け、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=7:1)により精製し、無色油状物を得た。この油状物を少量のヘキサンに溶解し、メタノールを加えて超音波を照射したところ、白色固体が析出した。この固体を吸引ろ過により回収したところ、目的物の白色粉末を2.5g、収率22%で得た。
【0200】
[ステップ2]
このステップは、4−(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニルボロン酸の合成工程であり、そのステップを反応式(R2−2)に示すと共にそのステップの反応に関し以下において詳述する。
【0201】
【化32】

【0202】
300mL三口フラスコに2.5g(6.2mmol)の9−(4−ブロモフェニル)−3−フェニル−9H−カルバゾールを入れ、フラスコ内を窒素置換した。このフラスコに100mLのテトラヒドロフラン(THF)を加えて、この溶液を−80℃に冷却した。この溶液に4.2mL(7.0mmol)のn−ブチルリチウム(1.6mol/Lヘキサン溶液)を、シリンジにより滴下して加えた。滴下終了後、この溶液を同温度で1時間攪拌した。攪拌後、この溶液に0.72mL(7.5mmol)のホウ酸トリメチルを加え、室温に戻しながら2時間攪拌した。攪拌後、この溶液に約50mLの希塩酸(1.0mol/L)を加えて、2時間攪拌した。
【0203】
攪拌後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層を酢酸エチルで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後この混合物を自然ろ過して、得られたろ液を濃縮したところ、油状物を得た。この油状物を少量のクロロホルムに溶解し、この溶液へヘキサンを加えて超音波を照射したところ、白色固体が析出した。この固体を吸引ろ過により回収したところ、目的物の白色粉末を1.5g、収率67%で得た。
【0204】
[ステップ3]
このステップは、3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)の合成工程であり、そのステップを反応式(R2−3)に示すと共にそのステップの反応に関し以下において詳述する。
【0205】
【化33】

【0206】
100mL三口フラスコに、1.4g(4.1mmol)の9−ブロモ−10−フェニルアントラセンと、1.5g(4.1mmol)の4−(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニルボロン酸を入れて、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に50mLのトルエンと、5.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加え、減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.24g(0.20mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加えた。この混合物を、窒素気流下80℃で9時間攪拌した。
【0207】
攪拌後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体を、約10mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製し、淡黄色油状物を得た。
【0208】
この油状物をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を1.9g、収率83%で得た。
この目的物をCzPAPの製造例と同様に、核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)であることを確認した。
【実施例2】
【0209】
[CzPAαNPの製造例]
本実施例では、前記構造式2で表される3−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαNP)を製造する例を反応式(E2)で示すと共にその反応に関し以下において詳述する。
【0210】
【化34】

【0211】
200mL三口フラスコに、2.5g(4.4mmol)の3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、1.1g(4.4mmol)の4−(1−ナフチル)フェニルボロン酸と、0.33g(1.1mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、5.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)と、60mLのトルエンと、20mLのエタノールを加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に、49mg(0.22mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、この混合物を窒素気流下、80℃で5時間攪拌した。
【0212】
攪拌後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮した後、得られた油状物を、約10mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製し、淡黄色油状物を得た。
【0213】
この油状物をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を2.4g、収率79%で得た。
得られた淡黄色粉末2.3gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、減圧下で、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、340℃で加熱した。昇華精製後、目的の化合物の淡黄色固体を2.2g、収率95%で得た。
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαNP)であることを確認した。
【0214】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.37−7.67(m,17H),7.70−7.80(m,6H),7.85−7.96(m,9H),8.06(d,J=8.1Hz,1H),8.29(d,J=7.8Hz,1H),8.52(d,J=0.90Hz,1H)
また、1H NMRチャートを図18(A)、(B)に示す。なお、図18(B)は、図18(A)における7.2ppm〜8.4ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【実施例3】
【0215】
[CzPAαNの製造例]
本実施例では、前記構造式4で表される3−(1−ナフチル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαN)を製造する例を反応式(E3)で示すと共にその反応に関し以下において詳述する。
【0216】
【化35】

【0217】
200mL三口フラスコに、2.8g(4.9mmol)の3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、0.84g(4.9mmol)の1−ナフチルボロン酸と、0.36g(1.2mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、5.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)と、60mLのトルエンと、20mLのエタノールを加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に、55mg(0.24mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、この混合物を窒素気流下、80℃で4時間攪拌した。攪拌後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。
【0218】
得られたろ液を濃縮した後、得られた油状物を、約10mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。
得られたろ液を濃縮して得られた油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製し、淡黄色油状物を得た。
この油状物をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を1.8g、収率60%で得た。
【0219】
得られた淡黄色粉末1.8gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、減圧下で、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、320℃で淡黄色粉末を加熱した。昇華精製後、目的の化合物の淡黄色固体を1.7g、収率94%で得た。
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が3−(1−ナフチル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαN)であることを確認した。
【0220】
得られた化合物の1H NMRデータの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.34−7.67(m,16H),7.72−7.81(m,6H),7.85−7.96(m,6H),8.07(d,J=8.4Hz,1H),8.20(d,J=7.8Hz,1H),8.32(d,J=1.5Hz,1H)
また、1H NMRチャートを図19(A)、図19(B)に示す。なお、図19(B)は、図19(A)における7.0ppm〜8.5ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【実施例4】
【0221】
[CzPAβNの製造例]
本実施例では、前記構造式5で表される3−(2−ナフチル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAβN)を製造する例を反応式(E4)で示すと共にその反応に関し以下において詳述する。
【0222】
【化36】

【0223】
100mL三口フラスコに1.0g(1.7mmol)の3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、0.30g(1.7mmol)の2−ナフチルボロン酸と、0.13g(0.42mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、30mLのトルエンと、10mLのエタノールと、2.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に19mg(0.085mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、80℃で3時間攪拌した。
【0224】
攪拌後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮した後、得られた油状物を、約10mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製した。得られた淡黄色固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を0.73g、収率69%で得た。
【0225】
得られた淡黄色粉末0.71gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、減圧下で、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、310℃で淡黄色粉末を加熱した。昇華精製後、目的の化合物の淡黄色固体を0.64g、収率90%で得た。
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−(2−ナフチル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAβN)であることを確認した。
【0226】
得られた化合物の1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.37−7.66(m,13H),7.70−7.80(m,6H),7.85−8.00(m,9H),8.20(s,1H),8.30(d,J=4.8Hz,1H),8.54(s,1H)。
また、1H NMRチャートを図20(A)、図20(B)に示す。なお、図20(B)は、図20(A)における7.0ppm〜9.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【実施例5】
【0227】
[CzPApBの製造例]
本実施例では、前記構造式6で表される3−(ビフェニル−4−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPApB)を製造する例を反応式(E5)で示すと共にその反応に関し以下において詳述する。
【0228】
【化37】

【0229】
300mL三口フラスコに3.0g(5.2mmol)の3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、1.0g(5.2mmol)の4−ビフェニルボロン酸と、0.40g(1.3mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、60mLのトルエンと、20mLのエタノールと、5.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に58mg(0.26mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、80℃で3時間攪拌したところ、淡黒色固体が析出した。
【0230】
この混合物を室温まで冷却した後、析出した固体を吸引ろ過により回収した。回収した固体を、約100mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して淡黄色粉末状固体を得た。得られた固体をトルエンにより再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末状固体を、2.0g、収率59%で得た。
【0231】
得られた淡黄色粉末状固体1.8gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、320℃で加熱した。昇華精製後、目的の化合物の淡黄色固体を1.5g、収率84%で得た。
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−(ビフェニル−4−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPApB)であることを確認した。
【0232】
得られた化合物の1H NMRの測定データを示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.35−7.80(m,25H)、7.82−7.88(m,6H)、8.27(d,J=7.8Hz,1H)、8.47(d,J=1.5Hz,1H)
また、1H NMRチャートを図21(A)、(B)に示す。なお、図21(B)は、図21(A)における7.0ppm〜8.5ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【実施例6】
【0233】
[CzPAoBの製造例]
本実施例では、下記構造式8で表される3−(ビフェニル−2−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAoB)を製造する例を反応式(E6)で示すと共にその反応に関し以下において詳述する。
【0234】
【化38】

【0235】
300mL三口フラスコに、3.0g(5.2mmol)の3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、1.0g(5.2mmol)の2−ビフェニルボロン酸と、0.40g(1.3mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、60mLのトルエンと、20mLのエタノールと、5.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気し、58mg(0.26mmol)の酢酸パラジウム(II)を加えた。
【0236】
この混合物を、窒素気流下80℃で3時間攪拌した。攪拌後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮した後、得られた油状物を、約10mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製し、得られた淡黄色油状物をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を2.0g、収率67%で得た。
【0237】
得られた淡黄色粉末2.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、減圧下で、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、280℃で淡黄色粉末を加熱した。昇華精製後、目的の化合物の淡黄色固体1.9gを収率93%で得た。
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−(ビフェニル−2−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAoB)であることを確認した。
【0238】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ=7.14−7.27(m,6H),7.33(t,J=7.5Hz,1H),7.45−7.81(m,22H),7.87(d,J=8.1Hz,2H),8.21(d,J=9.0Hz,2H)
また、1H NMRチャートを図22(A)、(B)に示す。なお、図22(B)は、図22(A)における7.0ppm〜8.5ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【実施例7】
【0239】
[CzPAFLの製造例]
【0240】
本実施例では、前記構造式15で表される3−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAFL)を製造する例を反応式(E7)で示すと共にその反応に関し以下において詳述する。
【化39】

【0241】
100mL三口フラスコに0.80g(1.4mmol)の3−ブロモ−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、0.33g(1.4mmol)の9,9−ジメチルフルオレン−2−ボロン酸と、0.11g(0.35mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、2.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)と、30mLのトルエンと、10mLのエタノールを加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。
【0242】
この混合物に16mg(0.070mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、80℃で4時間攪拌したところ、淡黒色固体が析出した。この混合物を室温まで冷却した後、固体を吸引ろ過により回収した。回収した固体を約50mLのトルエンに溶解した後、吸引ろ過後に得られたろ液に加えた。この混合物を水層と有機層とに分け、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層とを合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、この混合物を自然ろ過した。
【0243】
得られたろ液を濃縮した後、得られた固体を、約50mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)により精製し、淡黄色固体を得た。この固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を0.57g、収率54%で得た。
【0244】
得られた淡黄色粉末0.54gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、減圧下で、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、330℃で淡黄色粉末を加熱した。昇華精製後、目的の化合物の淡黄色固体を0.50g、収率93%で得た。
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である3−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAFL)であることを確認した。
【0245】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=1.61(s,6H),7.34−7.54(m,11H),7.57−7.66(m,3H),7.70−7.81(m,10H),7.84−7.89(m,5H),8.30(d,J=7.5Hz,1H),8.47(s,1H)
また、1H NMRチャートを図23(A)、(B)に示す。なお、図23(B)は、図23(A)における7.1ppm〜8.6ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0246】
[発光素子の作製例]
本作製例では、実施の形態1の製造方法により製造されたカルバゾール誘導体を用いて発光素子を作製する例を示す。この作製例を図24を用いて説明する。
また、この作製例で作製した発光素子1及び発光素子2の素子構成を表1に示す。その表1では、混合比は全て重量比で表している。
【0247】
【表1】

【0248】
以下に、本作製例における発光素子1及び発光素子2の作製方法を順に示す。
まず、発光素子1の作製例を示す。その発光素子1では、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0249】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10-4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2102上に、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより第1の層2103として有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む層を形成した。その膜厚は50nmとし、NPBと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:1(=NPB:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。続いて、NPBを10nm蒸着することにより、第2の層2104をホール輸送層として形成した。
【0250】
次いで、第2の層2104上に、実施例1にて製造したCzPAPと4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)とを、CzPAP:PCBAPA=1:0.1(重量比)となるように共蒸着することにより、第3の層2105を発光層として形成した。膜厚は30nmとした。
【0251】
続いて、第3の層2105上に、Alqを膜厚10nm、次いでBphenを20nm蒸着して積層することにより、第4の層2106を電子輸送層として形成した。さらに第4の層2106上に、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmで蒸着することにより第5の層2107を電子注入層として形成した。最後に、陰極として機能する第2の電極2108としてアルミニウムを200nm成膜し、本作製例の発光素子1を得た。
【0252】
次に、発光素子2の作製例を示す。発光素子2については第3の層2105及び第4の層2106以外は、発光素子1と同様に作製した。発光素子2では、第2の層2104上に、実施例1の製造例にて製造したCzPAPと9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)とを、CzPAP:2PCAPA=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、第3の層2105を発光層として形成した。膜厚は30nmとした。
【0253】
続いて、第3の層2105上に、AlqとN,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)とをAlq:DPQd=1:0.005(重量比)となるように10nm共蒸着し、次いでBphenを30nm蒸着して積層することにより、第4の層2106を電子輸送層として形成した。以上により、本作製例の発光素子2を得た。
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。また、NPB、PCBAPA、2PCAPA、DPQd、Alq、及びBphen構造式を下記に示す。
【0254】
【化40】

【0255】
以上により得られた発光素子1及び発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子1及び発光素子2が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子1及び発光素子2の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0256】
発光素子1の電流密度―輝度特性を図25に示す。図25において、横軸は電流密度(mA/cm2)を、縦軸は輝度(cd/m2)を表す。また、電圧―輝度特性を図26に示す。図26において、横軸は印加した電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m2)を表している。また、輝度―電流効率特性を図27に示す。図27において、横軸は輝度(cd/m2)、縦軸は電流効率(cd/A)を表している。また、1mAの電流を流したときの発光スペクトルを図28に示す。図28より、発光素子1は、青色発光材料であるPCBAPA由来の発光が得られることがわかった。
【0257】
発光素子1において、輝度1080cd/m2のときのCIE色度座標は(x=0.16、y=0.20)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1080cd/m2のときの電流効率は5.7cd/Aであり、外部量子効率は3.9%であった。また、輝度1080cd/m2のときの電圧は4.4V、電流密度は18.9mA/cm2であり、パワー効率は4.1lm/Wであった。
【0258】
また、発光素子2の電流密度−輝度特性を図29に示す。図29において、横軸は電流密度(mA/cm2)を、縦軸は輝度(cd/m2)を表す。また、電圧−輝度特性を図30に示す。図30において、横軸は印加した電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m2)を表している。また、輝度−電流効率特性を図31に示す。図31において、横軸は輝度(cd/m2)、縦軸は電流効率(cd/A)を表している。また、1mAの電流を流したときの発光スペクトルを図32に示す。図32より、発光素子2は、緑色発光材料である2PCAPA由来の発光が得られることがわかった。
【0259】
発光素子2において、輝度5520cd/m2のときのCIE色度座標は(x=0.29、y=0.61)であり、良好な緑色発光を示した。また、輝度5520cd/m2のときの電流効率は13cd/Aであった。また、輝度5520cd/m2のときの電圧は5.8V、電流密度は42.6mA/cm2であり、パワー効率は7.0lm/Wであった。
【0260】
また、作製した発光素子1及び発光素子2の信頼性試験を行った。信頼性試験は以下のようにして行った。発光素子1については、初期状態において1000cd/m2の輝度で発光させたときに発光素子1に流れている電流と同じ値の電流を流し続け、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。また、発光素子2については、初期状態において5000cd/m2の輝度で発光させたときに発光素子2に流れている電流と同じ値の電流を流し続け、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。
【0261】
発光素子1の信頼性試験によって得られた結果を図33に示す。また、発光素子2の信頼性試験によって得られた結果を図34に示す。図33及び図34は輝度の経時変化を示している。なお、図33及び図34において横軸は時間(hour)、縦軸はそれぞれの時間における初期輝度に対する輝度の割合、すなわち規格化輝度(%)を表す。
図33に示すように、発光素子1は、430時間後でも初期輝度の80%の輝度を保っており、時間経過による輝度の低下が起こりにくく、長寿命な発光素子であることがわかった。また、図34に示すように、発光素子2は、570時間後でも初期輝度の82%の輝度を保っており、時間経過による輝度の低下が起こりにくく、長寿命な発光素子であることがわかった。
【0262】
以上に示すように、本作製例により高信頼性の発光素子1及び発光素子2が得られた。
本作製例により、本発明の一態様に係るカルバゾール誘導体を用いて作製した発光素子が、発光素子としての特性が得られ、十分機能することが確認できた。また信頼性試験の結果から、発光素子を連続点灯させた場合であっても、膜の欠陥等に由来する短絡が生じることがなく、信頼性の高い発光素子が得られたことがわかった。
【0263】
[発光素子の作製例に使用した化学物質の製造例]
発光素子1の作製例で使用した4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)は新規物質であり、下記の構造を有するものである。その製造方法に関し、以下において発光素子の作製例に使用した化学物質の製造例として具体的に示す。
その製造工程は、3つの反応工程からなり、それぞれの工程に関し、以下において具体的な製造プロセスを示す。
【0264】
【化41】

【0265】
[第1の工程]
第1の工程は、9−フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸を合成する工程であり、その工程を反応式で示すと、下記反応式(P1)の通りである。
【化42】

【0266】
この工程では、まず3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール10g(31mmol)を500mLの三口フラスコへ入れ、フラスコ内を窒素置換した。テトラヒドロフラン(THF)150mLをフラスコに加えて、3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾールを溶かした。この溶液を−80℃に冷却した。この溶液へn−ブチルリチウム(1.58mol/Lヘキサン溶液)20mL(32mmol)を、シリンジにより滴下して加えた。滴下終了後、溶液を同温度で1時間攪拌した。
【0267】
攪拌後、この溶液へホウ酸トリメチル3.8mL(34mmol)を加え、室温に戻しながら約15時間攪拌した。攪拌後、この溶液に希塩酸(1.0mol/L)約150mLを加えて、1時間攪拌した。攪拌後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層を酢酸エチルで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮し、淡褐色の油状物を得た。この油状物を減圧乾燥し、目的物の淡褐色固体を7.5g収率86%で得た。
【0268】
[第2の工程]
第2の工程は、4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ジフェニルアミン(略称:PCBA)を合成する工程であり、その工程を反応式で示すと、下記反応式(P2)の通りである。
【化43】

【0269】
この工程では、まず4−ブロモジフェニルアミン6.5g(26mmol)、9−フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸7.5g(26mmol)、トリ(オルト−トリル)ホスフィン400mg(1.3mmol)を500mL三口フラスコへ入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へトルエン100mL、エタノール50mL、炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)14mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気し、脱気後、酢酸パラジウム(II)67mg(30mmol)を加えた。
【0270】
この混合物を100℃で10時間還流した。還流後、この混合物を水層と有機層とに分け、水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後この混合物を自然ろ過し、得られたろ液を濃縮し、淡褐色の油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン:トルエン=4:6)により精製し、精製後に得られた白色固体をジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶し、目的物の白色固体4.9gを収率45%で得た。
上記第2の工程で得られた固体を核磁気共鳴分光法(NMR)により測定した。
【0271】
以下に、1H NMRの測定データを示す。測定結果から、PCBAPAを合成するための原料であるPCBAが得られたことがわかった。
1H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ=6.81−6.86(m,1H),7.12(dd,J1=0.9Hz,J2=8.7Hz、2H),7.19(d、J=8.7Hz,2H)、7.23−7.32(m、3H)、7.37−7.47(m、3H)、7.51−7.57(m,1H)、7.61−7.73(m、7H)8.28(s,1H)、8.33(d、J=7.2Hz,1H)、8.50(d、J=1.5Hz,1H)
【0272】
[第3の工程]
第3の工程は、PCBAPAを合成する工程であり、その工程を反応式で示すと、下記反応式(P3)の通りである。
【化44】

【0273】
この工程では、まず9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセン7.8g(12mmol)、PCBA4.8g(12mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド5.2g(52mmol)を300mL三口フラスコへ入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へ、トルエン60mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%ヘキサン溶液)0.30mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気し、脱気後、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)136mg(0.24mmol)を加えた。
【0274】
この混合物を、100℃で3時間攪拌した。攪拌後、この混合物に約50mLのトルエンを加え、この混合物をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し、黄色固体を得た。この固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶し、目的物であるPCBAPAの淡黄色粉末を6.6g、収率75%で得た。
【0275】
上記第3の工程で得られた固体の1H NMRを測定した。以下に測定データを示す。測定結果からPCBAPAが得られたことがわかった。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.09−7.14(m,1H),7.28−7.72(m、33H)、7.88(d,J=8.4Hz、2H),8.19(d,J=7.2Hz、1H)、8.37(d,J=1.5Hz,1H)
【符号の説明】
【0276】
101 基板
102 第1の電極
103 第1の層
104 第2の層
105 第3の層
105a 発光層
105b 発光層
106 第4の層
107 第2の電極
108 EL層
130 層
301 基板
302 第1の電極
303 第1の層
304 第2の層
305 第3の層
306 第4の層
307 第2の電極
308 EL層
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 発光物質を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
901 筐体
902 液晶層
903 バックライト
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光物質を含む層
956 電極
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
8001 筐体
8002 支持台
8003 表示部
8004 スピーカー部
8005 ビデオ入力端子
8102 筐体
8103 表示部
8104 キーボード
8105 外部接続ポート
8106 マウス
8202 表示部
8204 外部接続ポート
8205 リモコン受信部
8206 受像部
8209 操作キー
8403 表示部
8404 音声入力部
8405 音声出力部
8406 操作キー
8407 外部接続ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、活性部位を有する芳香族化合物とを、カップリングすることを特徴とする、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法。
【化1】

(但し、式中、Ar1は、環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。また、Ar1は置換基を有していても良い。)
【請求項2】
カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、化合物(A1)で表される活性部位を有する芳香族化合物とを、金属触媒を用いてカップリングすることを特徴とする、一般式(1a)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法。
【化2】

(但し、式中Xは、活性部位を表す。また、R1乃至R5は、それぞれ独立に水素、炭素数1−4のアルキル基、又は環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。また、R1乃至R5がアリール基である場合、置換基を有していても良い。)
【化3】

(但し、式中、R1乃至R5は、それぞれ独立に水素、炭素数1−4のアルキル基、又は環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。また、R1乃至R5がアリール基である場合、置換基を有していても良い。)
【請求項3】
カルバゾール骨格の3位に活性部位を有する9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾールと、化合物(A2)で表されるアリールボロン酸または有機ホウ素化合物とを、パラジウム触媒を用いてカップリングすることを特徴とする、一般式(1b)で表されるカルバゾール誘導体の製造方法。
【化4】

(但し、式中、R101とR102は、水素又は炭素数1−6のアルキル基を表し、R101とR102は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化5】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−95523(P2010−95523A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216398(P2009−216398)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】