説明

カルバニル酸エステル構造およびジカバミド酸ジエステル構造並びにスルホン酸エステル構造のそれぞれを有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の合成とそれらの利用

【課題】4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルあるいは4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルのC−位のOH基を、数種の芳香族イソシアナ−ト、3種のジイソシアナ−ト、数種の芳香族スルホニルクロリドのそれぞれで化学修飾することにより、カルバニル酸エステル構造、ジカルバミド酸ジエステル構造、スルホン酸エステル構造のそれぞれを有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤を合成し、得られたものの有効性について考察すること。
【解決手段】所期の反応を反応触媒を探すことにより達成し、得られたものについては物性等を主として調査した。ジカルバミド酸ジエステル構造を有するものについては紫外吸収における吸収波長範囲の広いものが見い出された。また、スルホン酸エステル構造を有するものについては合成における経済性をも含めて、要求されている多くの物性において満足に近いものが得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルバニル酸エステル構造を、ジカルバミド酸ジエステル構造を、そしてスルホン酸エステル構造を有する新規なベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の合成と紫外線吸収剤としての利用に関する。詳しくはカルバニル酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IIIa)、4−メチルカルバニル酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IIIb)、3−メチルカルバニル酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IIIc)、4−メトキシカルバニル酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IIId)、4−クロロカルバニル酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IIIe)、2,4−ジメトキシカルバニル酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IIIf)、カルバニル酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IVa)、4−メチルカルバニル酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IVb)、3−メチルカルバニル酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IVc)、4−メトキシカルバニル酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IVd)、4−クロロカルバニル酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IVe)、2,4−ジメトキシカルバニル酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(IVf)、2,4−トリレンジカルバミド酸ビス[4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル](Va)、1,4−テトラメチレンジカルバミド酸ビス[4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル](Vb)、イソホロンジカルバミド酸ビス[4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル](Vc)、2,4−トリレンジカルバミド酸ビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル](VIa)、1,4−テトラメチレンジカルバミド酸ビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル](VIb)、イソホロンジカルバミド酸ビス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル](VIc)、メタンスルホン酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIa)、ベンゼンスルホン酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIb)、4−メチルベンゼンスルホン酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIc)、4−メトキシベンゼンスルホン酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIId)、4−クロロベンゼンスルホン酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIe)、4−ニトロベンゼンスルホン酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIf)、2−ナフタレンスルホン酸4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIg)、メタンスルホン酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIIa)、ベンゼンスルホン酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIIb)、4−メチルベンゼンスルホン酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIIc)、4−メトキシベンゼンスルホン酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIId)、4−クロロベンゼンスルホン酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIIe)、4−ニトロベンゼンスルホン酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIIf)および2−ナフタレンスルホン酸4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル(VIIIg)の合成と紫外線吸収剤としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤を構造式から見て分類した場合、フェノ−ル構成部分がレゾルシノ−ルであるものもその一分類として化学修飾の対象となってきた。すなわち、IあるいはIIのC−位のOH基の反応性に基づいた化学修飾がおこなわれてきたのである。このことについて過去の研究を羅列することが本研究の背景技術について述べることになるだろう。IおよびII以外にも類似構造の少数例が報告されているが経済性を考慮すれば問題にならない。IあるいはIIのC−位のOH基の反応性に基づいた化学修飾により合成されたものとして次のものがあげられる。すなわち、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−5−(N−プロピルベンズイミドイルオキシ)フェノ−ル(IX)、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−5−(3−カルボキシプロポキシ)フェノ−ル(X)、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−5−(1−エチルペンチルオキシ)フェノ−ル(XI)、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−5−(ヘキサデシルオキシ)フェノ−ル(XII)、ビス「4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェニル]−1,4−フェニレンジアクリラ−ト(XIII)、2,4,6−トリス[4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(XIV)、2,4,6−トリス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(XV)、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−5−(ベンゾイルオキシ)フェノ−ル(XVI)、5−(ベンゾイルオキシ)−2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)フェノ−ル(XVII)があげられる。IX〜XIIIは非特許文献1に参考文献として引用されている。XIVおよびXVは特許文献1として、XVIおよびXVIIは特許文献2として報告されている。これらのうちで上市されているのはXVIIだけである。他のものについては上市されていない理由はいろいろ考えられるが、正確にはわからない。もちろん、周辺技術の進歩につれて上市されうる可能性があるものもある。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0003】
【非特許文献1】谷本、染料と薬品、41,295(1996).
【特許文献1】特開2000−178276号公報
【特許文献2】特開2000−119261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IX〜XVIが上市されていない理由を探して、それらを改善することも課題となりうるが、IおよびIIから新規な構造のベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤を合成し上市されうるか否かの可能性について検討することも一つの課題である。XVIIが上市されているので新規に合成したものをXVIIと比較検討することも場合によってはありうる。本発明が解決しようとする課題は後の方に属する課題である。すなわち、IあるいはIIのC−位のOH基と反応する適当な試薬を探し、化学修飾について試みることである。もちろん、得られたものについての相溶性、化学的安定性、光安定性、熱安定性(高温安定性)、耐蒸散性については適当な方法で検討せねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
IあるいはIIの反応相手として、詳しくはIあるいはIIのC−位のOH基と反応する試薬として芳香族イソシアナ−ト、ジイソシアナ−トおよび芳香族スルホニルクロリドを選択した。カルバニル酸エステル構造を有する、ジカルバミド酸ジエステル構造を有する、スルホン酸エステル構造を有する新規なベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤が合成されたのである。ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤に限らず、紫外線吸収剤はポリマ−を始めとして合成ゴム、塗料、化粧品、写真材料、医薬等に幅広く使用されてその有効性が認められている。このように添加対象物における多様化は紫外線吸収剤における多様化をも必要としてきている。化学修飾により目的に応じて品質を変えるということが望まれてきたのである。
【発明の効果】
【0006】
本研究において合成したIII、IV、V、VIはカルバニル酸エステル構造あるいはジカルバミド酸ジエステル構造を特徴とする化合物であるが、合成過程、精製過程および物性測定過程における判断並びに化学構造式に対する判断から熱安定性(高温安定性)および耐蒸散性においてのみ問題ありと判断した。表1から理解されるようにポリマ−の高温加工にはすすめられないものである。その特長を生かすということであればVaおよびVIaにおける紫外吸収の波長範囲の広さに注目したい。特にVIaでは385nm付近においてさえε=ca.10000(溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)であり、この特長は利用する価値が十分にあるものであろう。しかし、理解しえない結果も得られている。すなわち、200℃(5.5時間)に加熱したときIIIe、IVc、IVe、Va、VIaのUVスペクトルに大きい変化が見られることである。λmaxの変化は化学構造式の変化を示しているが、このことに関する更なる追求はできなかった。ここにとりあげることは、例えば200℃という高温下における場合は別として、VaおよびVIaの紫外吸収の波長範囲が広いことは注目され、そして利用されるべきである。
【0007】
また、本研究において合成したVIIおよびVIIIはスルホン酸エステル構造を特徴とする化合物であるが、カルボン酸エステル構造を特徴とする化合物がXVIIとしてすでに上市されているので、VIIおよびVIIIの代表としてVIIIbを選択し、それをXVIIと比較する。ベンゼンスルホニルクロリドは塩化ベンゾイルより少し高価であるが、IIのC−位のOH基に選択的に反応することからVIIIbは比較的純粋に合成しうる。塩化ベンゾイルはIIのC−位のOH基以外にもC−位のOH基にも反応する。すなわち、XVIIを純粋にうることには熟練を必要とする。物性等については両者にあまり差はないことから、XVIIと並んでVIIIbも十分に使用しうるものであろう。XVIIが添加使用中に光フリ−ス反応を起こすことについては、証明はされていないがほぼ確実である。VIIおよびVIIIの中からVIIb、VIIc、VIId、VIIIb、VIIIcを選択し、塩化アルミニウムによるイオン機構のフリ−ス反応により転位生成物が得られることを確かめた。そして、紫外線照射によってもラジカル機構の光フリ−ス反応により同じものが得られるか否かということを確かめる実験をおこなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の実施例は本発明の内容をより詳しく説明しているが、これらは本発明を制限するものではない。すなわち、IあるいはIIとイソシアナ−トの反応においては触媒として用いているピリジン、ジブチルスズジラウラ−トの両者はほぼ同程度の触媒効果を示す。しかし、後者が金属触媒であることを考慮して殆んどの場合についてピリジンを触媒とする合成反応について記載した。イソホロンジイソシアナ−トの場合についてのみジブチルスズジラウラ−トを触媒とする合成反応について記載した。もちろん、この反応もピリジンを用いて同様に進行するものである。またIあるいはIIとスルホニルクロリドの反応においてはメタンスルホニルクロリドを除いてすべて芳香族スルホニルクロリドである。研究の目的が耐蒸散性の紫外線吸収剤を合成するということにもあったからである。なお、以下の実施例において得られた新規化合物の殆んどについては元素分析およびH−NMR測定により確認した。
【実施例1】
【0009】
I4.54g(0.02mol)とフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)をトルエン80mlに溶解させ、これにピリジン0.16g(0.002mol)を加えて5〜6時間還流煮沸して反応させた。反応後、析出した結晶を濾過しとり、2−プロパノ−ルで洗浄後にメチルエチルケトンを用いて再結晶して無色のIIIa3.74gを得た。収率54%、融点200〜201℃,λmax334nm,εmax26000(溶媒:クロロホルム)。
【実施例2】
【0010】
実施例1におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりにp−トリルイソシアナ−ト2.93g(0.022mol)を用い、他は実施例1と同様にして無色のIIIb4.04gを得た。収率56%、融点200.5〜200.7℃,λmax335nm,εmax24800(溶媒:クロロホルム)。
【実施例3】
【0011】
実施例1におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりにm−トリルイソシアナ−ト2.93g(0.022mol)を用い、他は実施例1と同様にして無色のIIIc3.96gを得た。収率55%、融点180.5〜180.9℃,λmax335nm,εmax26700(溶媒:クロロホルム)。
【実施例4】
【0012】
実施例1におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりに4−メトキシフェニルイソシアナ−ト3.28g(0.022mol)を用い、他は実施例1と同様にして無色のIIId4.21gを得た。収率56%、融点215.3〜215.6℃,λmax336nm,εmax26100(溶媒:クロロホルム)。
【実施例5】
【0013】
実施例1におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりに4−クロロフェニルイソシアナ−ト3.38g(0.022mol)を用い、他は実施例1と同様にして無色のIIIe5.86gを得た。収率77%、融点220.5〜220.9℃,λmax335nm,εmax25000(溶媒:クロロホルム)。
【実施例6】
【0014】
実施例1におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりに2,4−ジメトキシフェニルイソシアナ−ト3.94g(0.022mol)を用い、他は実施例1と同様にして無色のIIIf3.41gを得た。収率42%、融点176.6〜176.9℃,λmax336nm,εmax27200(溶媒:クロロホルム)。
【実施例7】
【0015】
II5.23g(0.02mol)とフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)をトルエン80mlに溶解させ、これにピリジン0.16g(0.002mol)を加えて5〜6時間還流煮沸して反応させた。反応後、析出した結晶を濾過しとり、2−プロパノ−ルで洗浄後にメチルエチルケトンを用いて再結晶して無色のIVa3.96gを得た。収率52%、融点207〜208℃,λmax343nm,εmax28600(溶媒:クロロホルム)。
【実施例8】
【0016】
実施例7におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりにp−トリルイソシアナ−ト2.93g(0.022mol)を用い、他は実施例7と同様にして無色のIb3.71gを得た。収率47%、融点221.8〜222.1℃,λmax342nm,εmax24900(溶媒:クロロホルム)。
【実施例9】
【0017】
実施例7におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりにm−トリルイソシアナ−ト2.93g(0.022mol)を用い、他は実施例7と同様にして無色のIVc5.13gを得た。収率65%、融点186.8〜186.9℃,λmax342nm,εmax25700(溶媒:クロロホルム)。
【実施例10】
【0018】
実施例7におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりに4−メトキシフェニルイソシアナ−ト3.28g(0.022mol)を用い、他は実施例7と同様にして無色のIVd4.19gを得た。収率51%、融点211.3〜211.6℃,λmax343nm,εmax27900(溶媒:クロロホルム)。
【実施例11】
【0019】
実施例7におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022ml)の代わりに4−クロロフェニルイソシアナ−ト3.38g(0.022mol)を用い、他は実施例7と同様にして無色のIVe5.65gを得た。収率68%、融点214.0〜214.7℃,λmax343nm,εmax27900(溶媒:クロロホルム)。
【実施例12】
【0020】
実施例7におけるフェニルイソシアナ−ト2.62g(0.022mol)の代わりに2,4−ジメトキシフェニルイソシアナ−ト3.94g(0.022mol)を用い、他は実施例7と同様にして無色のIVf3.39gを得た。収率38%、融点167.5〜167.7℃,λmax343nm,εmax27800(溶媒:クロロホルム)。
【実施例13】
【0021】
I4.54g(0.02mol)とトリレン−2,4−ジイソシアナ−ト(純度95%)2.04g(0.011mol)をトルエン65mlに溶解させ、これにピリジン0.32g(0.004mol)を加えて5〜6時間還流煮沸して反応させた。反応後、析出した結晶を濾過しとり、2−プロパノ−ルで洗浄後にアニソ−ルを用いて再結晶して無色のVa4.84gを得た。収率77%,融点226.9〜228℃,λmax342nm,εmax34100(溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)。
【実施例14】
【0022】
I4.54g(0.02mol)と1,4−ジイソシアナ−トブタン(純度97%)1.59g(0.011mol)をトルエン80mlに溶解させ、これにピリジン0.32g(0.004mol)を加えて5〜6時間還流煮沸して反応させた。反応後、析出した結晶を濾過しとり、2−プロパノ−ルで洗浄後にアニソ−ルを用いて再結晶して無色のVb2.62gを得た。収率44%、融点252.6〜252.8℃,λmax332nm,εmax26800(溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)。
【実施例15】
【0023】
I4.54g(0.02mol)とイソホロンジイソシアナ−ト(異性体混合物、純度98%)2.50g(0.011mol)をトルエン60mlに溶解させ、これにジブチルスズジラウラ−ト0.25g(0.0004mol)を加えて7〜8時間還流煮沸して反応させた。反応後、析出した結晶を濾過しとり、2−プロパノ−ルで洗浄後にアニソ−ルさらにはメチルエチルケトンを用いて再結晶して無色のVc3.86gを得た。収率57%、融点206.5〜207.2℃,λmax331nm,εmax26400(溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)。
【実施例16】
【0024】
実施例13におけるI4.54g(0.02mol)の代わりにII5.23g(0.02mol)を用い、他は実施例13と同様にして反応させ、同様に処理して微黄土色のVIa5.30gを得た。収率76%、融点215.8〜216.1℃,λmax352nm,εmax31700(溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)。
【実施例17】
【0025】
実施例14におけるI4.54g(0.02mol)の代わりにII5.23g(0.02mol)を用い、他は実施例14と同様にして反応させ、同様に処理して灰白色のVIb2.79gを得た。収率42%、融点250.2〜251℃,λmax334nm,εmax21500(溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)。
【実施例18】
【0026】
実施例15におけるI4.54g(0.02mol)の代わりにII5.23g(0.02mol)を用い、他は実施例15と同様にして反応させ、同様に処理して微黄色のVIc4.40gを得た。ただし、再結晶にはアニソ−ルのみを用いた。収率59%、融点233.5〜233.7℃,λmax334nm,εmax22000(溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)。
【実施例19】
【0027】
実施例1〜18で得られたIII、IV、V、VIのうちから、比較的高収率で得られたIIIe、IVc、IVe、Va、VIaを選択しこれらの100.0mgのおのおのを、上部開口試験管中において加熱ブロックで200℃に5.5時間加熱し、加熱することによるそれぞれの重量およびUVスペクトルにおける変化を表1に示す。なお、比較のために2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−メチルフェノ−ル(XVIII)、2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノ−ル(XIX)および2−tert−ブチル−6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−メチルフェノ−ル(XX)についての同様な試験結果をあわせ示す。
【化13】

【化14】

【化15】

【表1】

【実施例20】
【0028】
I9.09g(0.04mol)とメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)をトルエン170mlに溶解させ、室温でかきまぜながらこれにトリエチルアミン4.86g(0.048mol)あるいはそれ以上を3時間かけて滴下した。滴下後、室温で3時間、ついで70〜80℃で1時間かきまぜ反応させた。反応後、反応混合物を60〜70℃の温水100mlで洗浄した。濾過後、これを100〜120mlに減圧濃縮して析出した結晶を濾過しとりトルエンを用いて再結晶して無色のVIIa7.94gを得た。収率65%、融点177.7〜178.4℃,λmax333nm,εmax26300(溶媒:クロロホルム)。
【実施例21】
【0029】
実施例20におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりにベンゼンスルホニルクロリド7.07g(0.04mol)を用い、他は実施例20と同様にして無色のVIIb11.61gを得た。収率79%、融点153.1〜153.7℃,λmax333nm,εmax23300(溶媒:クロロホルム)。
【実施例22】
【0030】
実施例20におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりにp−トルエンスルホニルクロリド7.63g(0.04mol)を用い、他は実施例20と同様にして無色のVIIc9.15gを得た。収率60%、融点173.2〜173.6℃,λmax334nm,εmax24800(溶媒:クロロホルム)。
【実施例23】
【0031】
実施例20におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)に代わりに4−メトキシベンゼンスルホニルクロリド8.27g(0.04mol)を用い、他は実施例20と同様にして無色のVIId9.06gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率57%、融点167.8〜168℃,λmax334nm,εmax24200(溶媒:クロロホルム)。
【実施例24】
【0032】
実施例20におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりに4−クロロベンゼンスルホニルクロリド8.44g(0.04mol)を用い、他は実施例20と同様にして無色のVIIe8.36gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率52%、融点185.8〜186.3℃,λmax334nm,εmax24500(溶媒:クロロホルム)。
【実施例25】
【0033】
実施例20におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりに4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド8.86g(0.04mol)を用い、他は実施例20と同様にして無色のVIIf11.71gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率71%、融点235.9〜236.8℃,λmax333nm,εmax22000(溶媒:クロロホルム)。
【実施例26】
【0034】
実施例20におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりに2−ナフタレンスルホニルクロリド9.07g(0.04mol)を用い、他は実施例20と同様にして無色のVIIg9.52gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率57%、融点148.8〜151.8℃,λmax332nm,εmax25900(溶媒:クロロホルム)。
【実施例27】
【0035】
II10.47g(0.04mol)とメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)をトルエン270mlに溶解させ、室温でかきまぜながらこれにトリエチルアミン4.86g(0.048mol)あるいはそれ以上を3時間かけて滴下した。滴下後、室温で3時間、ついで70℃で1時間かきまぜ反応させた。反応後、反応混合物を60〜70℃の温水100mlで洗浄した。濾過後、反応混合物を140〜150mlに減圧濃縮して析出した結晶を濾過しとりトルエンを用いて再結晶して無色のVIIIa8.56gを得た。収率63%、融点178.3〜178.8℃,λmax340nm,εmax26400(溶媒:クロロホルム)。
【実施例28】
【0036】
実施例27におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりにベンゼンスルホニルクロリド7.07g(0.04mol)を用い、他は実施例27と同様にして無色のVIIIb11.09gを得た。収率69%、融点185.5〜185.8℃、λmax341nm,εmax25800(溶媒:クロロホルム)。
【実施例29】
【0037】
実施例27におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりにp−トルエンスルホニルクロリド7.63g(0.04mol)を用い、他は実施例27と同様にして無色のVIIIc8.82gを得た。収率53%、融点197.0〜197.5℃,λmax342nm,εmax24500(溶媒:クロロホルム)。
【実施例30】
【0038】
実施例27におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりに4−メトキシベンゼンスルホニルクロリド8.27g(0.04mol)を用い、他は実施例27と同様にして無色のVIIId8.12gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率47%、融点166.5〜167℃,λmax342nm,εmax26300(溶媒:クロロホルム)。
【実施例31】
【0039】
実施例27におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりに4−クロロベンゼンスルホニルクロリド8.44g(0.04mol)を用い、他は実施例27と同様にして無色のVIIIe10.82gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率62%、融点191.5〜191.8℃,λmax342nm,εmax26800(溶媒:クロロホルム)。
【実施例32】
【0040】
実施例27におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりに4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド8.86g(0.04mol)を用い、他は実施例27と同様にして微黄色のVIIIf13.05gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率73%、融点215.7〜216.2℃,λmax341nm,εmax25200(溶媒:クロロホルム)。
【実施例33】
【0041】
実施例27におけるメタンスルホニルクロリド4.58g(0.04mol)の代わりに2−ナフタレンスルホニルクロリド9.07g(0.04mol)を用い、他は実施例27と同様にして無色のVIIIg8.50gを得た。ただし、再結晶にはトルエンと酢酸エチルの両方を用いた。収率47%、融点194〜194.7℃,λmax342nm,εmax27100(溶媒:クロロホルム)。
【実施例34】
【0042】
スルホン酸エステル構造を有するこれらのベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤のうちから65%以上の収率で得られたものとしてVIIa、VIIb、VIIf、VIIIb、VIIIfを選択し、これらの100.0mgのおのおのを、上部開口試験管中において加熱ブロックで200℃に5.5時間加熱し、加熱することによるそれぞれの重量およびUVスペクトルにおける変化を表2に示す。なお、比較のためにXVIIおよび2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノ−ル](XXI)についての同様な試験結果をあわせ示す。
【化16】

【表2】

【実施例35】
【0043】
VIIb1.84g(0.005mol)および塩化アルミニウム1.33g(0.01mol)をニトロベンゼン5gに加え、95〜105℃に3時間かきまぜ反応させた。反応混合物に15mlの15〜20%塩酸を加えかきまぜた後、クロロホルム抽出した。クロロホルム抽出液からクロロホルムおよびニトロベンゼンを留去し、残留からシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィ−によりXXIIb[収率27%、融点214.2〜214.5℃,λmax337nm,εmax22800(溶媒:クロロホルム)]を得た。もちろん、これ以外の副生成物の存在も認められるがXXIIbが主生成物である。
【0044】
VIIb1.84g(0.005mol)の代わりに、VIIc1.91g(0.005mol),VIId1.99g(0.005mol),VIIIb2.01g(0.005mol),VIIIc2.08g(0.005mol)のそれぞれを用い、他はVIIbの場合と同様にしてそれぞれからXXIIc[収率32%、融点225.9〜226.2℃,λmax338nm,εmax26300(溶媒:クロロホルム)]、XXIId[収率22%、融点207.8〜208.1℃,λmax338nm,εmax23400(溶媒:クロロホルム)]、XXmb[収率21%、融点203.9〜204.4℃,λmax343nm,εmax33800(溶媒:クロロホルム)]、XXIIIc[収率21%、融点228.1〜228.8℃,λmax344nm,εmax34300(溶媒:クロロホルム)]のそれぞれを得た。
【化17】

【実施例36】
【0045】
ここにおける実施においては長時間を必要とするので、試料をVIIbおよびVIIIbに限定した。十分に粉砕したVIIbおよびIIIbのそれぞれの0.1〜0.2gを小さい平皿に加え、それぞれの平皿を市販の蛍光灯と殺菌灯を組み合わせて至近距離から4000〜5000時間照射した。VIIbおよびVIIIbの照射物中にXXIIbおよびXXIIIbのそれぞれが含まれているか否かについて、実施例35で得られたXXIIbおよびXXIIIbを標品として用い薄層クロマトグラフィ−により検討した。結果はVIIbおよびVIIIbが極めて高度な光安定性を有するために、光フリ−ス反応に相当すると考えられる変化もそして他の変化も認められなかった。照射における光源をさらに強いものにすべきであろう。
【産業上の利用可能性】
【0046】
ジカルバミド酸ジエステル構造を有する化合物のうち、VaおよびVIaの紫外吸収における波長範囲の広さは注目されてよい。特にVIaにおいてはその有効波長範囲が400nm近くまで及んでいることは産業上の利用可能性としてとりあげてもよいだろう。それ以外にもトリレン−2,4−ジイソシアナ−トの代わりとなりうるであろう他の芳香族ジイソシアナ−トを利用すれば同様に有効波長範囲の広いベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤が合成出来るであろう。
【0047】
また、VIIaおよびVIIIaを除くVIIおよびVIIIについては、これらが添加対象物中において光フリ−ス反応を行ない、使用途中において吸収能力のより大きい紫外線吸収剤に一部構造変化すると考えている。すなわち使用当初において予想される吸収効果より、より大きい効果が結果として得られるであろう。本研究においては、このことを実証することは出来なかったが、十分に可能性のあることである。非特許文献2には、350nm前後に極大吸収波長の存在しないベンゼンスルホン酸2−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル(XXIV)の光フリ−ス反応について述べられている。350nm前後に極大吸収波長の存在するVIIbあるいはVIIIbの光フリ−ス反応については、照射時間をどの程度まで延長すれば光フリ−ス反応が起きるかについては、起きるか起きないかをも含めて、現時点では解明の手段を持たない。
【化18】

【0048】
【非特許文献2】柳原ら、有機合成化学協会誌、59,800(2001).
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の化合物VaのUVスペクトル
【図2】本発明の化合物VIaのUVスペクトル
【図3】本発明の化合物VIIbのUVスペクトル
【図4】本発明の化合物VIIIbのUVスペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル(I)あるいは4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル(II)と数種の芳香族イソシアナ−トのそれぞれとの反応によるカルバニル酸エステル構造を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤(IIIおよびIV)の合成
【化1】

【請求項2】
IIIおよびIVで示されるカルバニル酸エステル構造を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の利用
【請求項3】
4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル(I)あるいは4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル(II)と3種のジイソシアナ−トのそれぞれとの反応によるジカルバミド酸ジエステル構造を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤(VおよびVI)の合成
【化2】

【請求項4】
VおよびVIで示されるジカルバミド酸ジエステル構造を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の利用
【請求項5】
4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル(I)あるいは4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル(II)と数種の芳香族スルホニルクロリドのそれぞれとの反応によるスルホン酸エステル構造を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤(VIIおよびVIII)の合成
【化3】

【請求項6】
VIIおよびVIIIで示されるスルホン酸エステル構造を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の利用

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277209(P2007−277209A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127917(P2006−127917)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】