説明

カルバメートの熱的分離によるイソシアネートの調製方法

本発明は、カルバメートを熱的に解離し、及びカルバメートの解離からの、対応するイソシアネートと対応するアルコールを含む反応混合物を蒸留による分離によってイソシアネートを調製する方法に関する。反応混合物の蒸留による分離は、濃縮部(V)とストリッピング部(A)を有するカラム(K)内で蒸留することにより行われる。ここで、カルバメート(1)は濃縮部(V)及びストリッピング部(A)の間に導入され、及び、イソシアネートが底部流(2)の成分として取り出され、アルコールがカラム(K)からのオーバーヘッド流(3)の成分として取り出され、及びこれらの取り出しは所定の不活性溶媒の存在化で行われる。不活性溶媒として、カルバメート解離の動作条件下でイソシアネートの沸点とアルコールの沸点の間の沸点を有する中間沸点体が使用され、及び不活性溶媒は、外部ランバック(4)として、外部ランバック(4)の総質量に対して>95質量%の純度の液体状態で、濃縮部(V)の上部領域に供給され、及びガス状の過熱流(5)としてストリッピング部(A)の下部領域に一箇所で供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバミックエステル又はウレタンとしても知られているカルバメートを、熱的に解離することによりイソシアネートを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルバメートの解離は、イソシアネートの調製のためにホスゲンフリーの方法として益々重要になっている。カルバメートの解離を工業的に実行するために様々な装置が提案されている。特にカラム(特許文献1)、流動床反応炉(特許文献2及び特許文献3)、流下フィルム又は薄膜蒸発器(特許文献4)等が提案されている。カルバメートの解離は、液相又は気相で実行することができる。
【0003】
カルバメートの熱的解離における問題は、解離生成物がそれら自身と又は出発材料と更に反応することにより形成される高分子量副産物である。これらは装置内に堆積し、連続運転を制限し、そして収量を減少させ得ることとなる。残渣は、特にアロファネートとイソシアヌレートを含む。副産物は、モノウレタン(セミカルバメート、すなわち、ウレタン基及びイソシアネート基を含む二官能性化合物、ビスウレタンの解離における中間物)がそれら自身と反応することにより形成される。
【0004】
これらの問題を避けるため、カルバメート解離ガス中の解離生成物のイソシアネートとアルコールは、出来るだけ素早く互いに分離されねばならない。
【0005】
イソシアネートとアルコール(ウレタン化)の逆反応及び更なる反応の反応速度は、溶媒の種類や溶媒の希釈に依存することが知られているので、解離中の逆反応及び更なる反応の問題は、カルバメートの解離を溶媒の存在下で行うことで減じられる。例えば、非特許文献1は、様々な溶媒の存在下でのイソシアネートのアルコールとの反応性についての情報を提供している。
【0006】
カルバメート解離生成物の不活性溶媒での希釈は、引き続く高分子量副産物の形成を抑える;同時に、溶媒は二次成分を取り除き、装置の汚れを減ずる。
【0007】
特許文献5は、カルバメートの熱的解離に特に適する溶媒について記載している。溶媒は、特定の沸点又は狭い沸点の範囲を有し、熱的に安定な液体の蒸留分画として得られ、フェノキシビフェニルのオルト、メタ及びパラ異性体から成る群から選ばれる。カラム内で、カルバメートの熱的解離にそのような溶媒を使用すると、カラムの底部での温度を同じ解離性能で下げ、反応部では変わらない平均温度とすることができる。その結果として、副産物の形成及びカラムの液相でのクラッキング製品を著しく減じることとなる。この方法の不利な点は、カラムの頂部のランバックが大量のアルコールを含むこと、及びフェノキシビフェニルは商業的に得るのが難しいことであり、したがって高価であることである。
【0008】
ウレタンの形成速度は、阻害剤の添加により減ずることが可能であることも周知である。ウレタン形成の阻害剤は、例えば、塩酸、塩化ベンゾイル、又はp−トルエンスルホン酸である(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP 0 795 543
【特許文献2】EP 555 628
【特許文献3】DE 199 07 648
【特許文献4】EP 0 092 738
【特許文献5】EP-B 0 795 543
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J. H. Saunders and K. C. Frisch: Polyurethanes, Chemistry and Technology, 1962, p. 146, Table 10
【非特許文献2】Oertel: Polyurethane, 2nd edition, 3.4.2, p. 92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、対応するカルバメートの熱的解離により芳香族又は脂肪族イソシアネートの調製方法を提供することにある。この方法は、高収率と可能な限りの少しの汚れと副産物の低い比率を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、カルバメートを熱的に解離し、及びカルバメートの解離からの対応するイソシアネートと対応するアルコールを含む反応混合物を蒸留による分離によってイソシアネートを調製する方法により達成される。反応混合物の蒸留により分離は、濃縮部とストリッピング部を有するカラム内で蒸留することにより行われる。ここで、カルバメートは濃縮部及びストリッピング部の間に導入され、及び、イソシアネートが底部流の成分として取り出され、アルコールがカラムからのオーバーヘッド流の成分として取り出され、及びこれらの取り出しは所定の不活性溶媒の存在化で行われる。不活性溶媒として、カルバメート解離の動作条件下でイソシアネートの沸点とアルコールの沸点の間の沸点を有する中間沸点体が不活性溶媒として使用され、及び不活性溶媒は、外部ランバック(4)として、外部ランバック(4)の総質量に対して>95質量%の純度の液体状態で、濃縮部(V)の上部領域に供給され、及びガス状の過熱流(5)としてストリッピング部(A)に一箇所で供給される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の方法を実行するためのプラントの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
カルバメート解離ガスの希釈のために不活性溶媒を添加すること、したがって二次成分の形成が減少されることは周知である。不活性とは、例の通り、溶媒がプロセス条件下で反応混合物の成分と反応しないことを意味する。
【0015】
中間沸点体であり、すなわち動作条件下でイソシアネートの沸点とアルコールの沸点の間の沸点を持ち、高い純度、すなわち>95質量%の純度で使用される不活性溶媒の添加は、アルコールを含むランバックなしに、カラムの頂部で高い純度でカルバメートに対応するアルコールを得ることを可能にする。カラム内の液体ランバック内のアルコールの存在を減ずる又は除外する結果として、濃縮部でカルバメートを形成する解離生産物の逆反応を遅らせることとなる。もし、他方、ランバックが純粋アルコールで調製されると、濃縮部はアルコール濃度が増加することとなる。しかし、解離製品のイソシアネートとアルコールの方向に平衡の最大シフトを達成するために、アルコールは可能な限り速やかにシステムから取り出されねばならない。更に、反応を遅らせるために、濃縮部で空のチューブの容積の5%以下のホールドアップを有する低圧ドロップの高性能パッキングを使用することが有利である。
【0016】
主にカルバメート解離はカラムのストリッピング部で起きる。
【0017】
反応は強く吸熱である。それは非常に少ない逆混合で短い滞留時間で実行されるべきである。
【0018】
もし解離温度が非常に高い、例えば略300℃に選ばれたら、ストリッピング部は一以上の流下フィルム蒸発器をシリーズに含むことができる。しかし、解離温度が低い、例えば300℃以下である場合、目標とする変換を達成するために滞留時間トレイを使用することが望ましい。
【0019】
カルバメート解離が行われるカラムのストリッピング部は、したがって流下フィルム蒸発器又は滞留時間トレイとして設定されるのが好ましい。
【0020】
滞留時間トレイとして、例えばトンネルトレイ、トルーマントレイ又はロードトレイを選択することができる。好ましくはロードトレイであり、例えば EP 1493475B1 に記載されている。トレイは、吸熱反応のための付加的なエネルギーを供給するためスチームにより下方から加熱することも可能である。
【0021】
ストリッピング部は、所望する程度のカルバメート解離、一般に使用したカルバメートの99%以上が底部気化器で達成されるような寸法にされる。
【0022】
共鳴時間を増加させるために、次の流下フィルム蒸発器に分配器を介して再分配した一連の流下フィルム蒸発器が可能である。
【0023】
シリーズに接続された一台以上の流下フィルム蒸発器又は滞留時間トレイが触媒的に有利にコートされ得る。
【0024】
滞留時間トレイ又は特にロードトレイを使用する場合、固定化した不均一系触媒又は懸濁した触媒がトレイ上で使用できる。
【0025】
カルバメートの解離は、特に210℃から400℃の範囲の温度で実行される。
【0026】
本発明の方法では、慣用のカルバメート(カルバミック酸エステル又はウレタンとも呼ばれる)、好ましくはビスカルバメートを解離のために使用することができる。これらのカルバメートは、一般にアミン、好ましくはジアミン又はポリアミン、より好ましくはジアミンを尿素及び少なくとも一種のアルコールと反応させることに基づく。
【0027】
対応するカルバメートを形成するためにジアミン又はポリアミンの炭酸塩との反応は、WO 2009/115538 に記載されているようにベースとしてのアルコキシドの存在下で特に好ましく実行される。
【0028】
カルバメートを調製するための適切なアルコールは、原理的に全ての脂肪族アルコールである。最適な分離を確保するために、イソシアネートの沸点と十分に異なる沸点を有するアルコールを選択することが望ましい。カルバメートの調製に一分子当たり1から4の炭素原子を有する脂肪族モノヒドロキシアルコールを使用することが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール及び/又はイソブタノールである。少なくとも一つの酸素ヘテロ原子有するアルコール、特に2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシ−1−プロパノール及び/又は1−メトキシ−2−プロパノールが好ましい。
【0029】
アミンとして、2,4−及び/又は2,6−トルエンジアミン(TDA)、2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)及び/又は高級同族体(ポリフェニレンポリメチレンポリアミン、pMDA)、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HDA)、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(以下、イソホロンジアミン、IPDAとも呼ばれる)、1,5−及び/又は1,8−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニル、1,3−及び/又は1,4−ジアミノベンゼン、2,4−及び/又は2,6−ヘキサヒドロトルエンジアミン及び/又は4,4’−、2,4’−及び/又は2,2’−ジシクロヘキシルメチレンジアミンを使用することが好ましい。使用するアミンの構造は、熱解離した後で得られるイソシアネートの構造を決定する。使用するウレタンは、アミン成分として、2,4−及び/又は2,6−トルエンジアミン(TDA)、2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)及び/又は高級同族体(ポリフェニレンポリメチレンポリアミン、pMDA)、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HDA)、イソホロンジアミン(IPDA)及び/又は1,5−ジアミノナウタレン、及びアルコールとして、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、又は特にイソブタノール又は2−メトキシエタノールに基づくことが特別に好ましい。
【0030】
したがって、次のジウレタン又はポリウレタンを解離に使用することが特に好ましい:2,4−及び/又は2,6−トルエンジイソブチルウレタン、2,4−及び/又は2,6−トルエンジメトキシエチルウレタン、2,4−及び/又は2,6−トルエンジプロピルウレタン、2,4−及び/又は2,6−トルエンジメチルウレタン、1,5−ナフタレンジイソブチルウレタン、1,5−ナフタレンジメトキシエチルウレタン、1,5−ナフタレンジプロピルウレタン、1,5−ナフタレンジメチルウレタン、4,4’−、2,4’−及び/又は2,2’−ジフェニルメタンジイソブチルウレタン、4,4’−、2,4’−及び/又は2,2’−ジフェニルメタンジメトキシエチルウレタン、4,4’−、2,4’−及び/又は2,2’−ジフェニルメタンジプロピルウレタン、4,4’−、2,4’−及び/又は2,2’−ジフェニルメタンジメチルウレタン、ポリフェニレンポリメチレンポリメトキシエチルウレタン、ポリフェニレンポリメチレンポリメチルウレタン、ポリフェニレンポリメチレンポリプロピルウレタン、ポリフェニレンポリメチレンポリイソブチルウレタン、1,6−ヘキサメチレンジイソブチルウレタン、1,6−ヘキサメチレンジメトキシエチルウレタン、1,6−ヘキサメチレンジプロピルウレタン、1,6−ヘキサメチレンジメチルウレタン、イソホロンジイソブチルウレタン、イソホロンジメトキシエチルウレタン、イソホロンジプロピルウレタン及び/又はイソホロンジメチルウレタン。上述したウレタンの混合物も同様に解離に使用できる。
【0031】
対応するジウレタンの熱的解離により次のイソシアネートを調製することが特に好ましい。トルエン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアナートジフェニルメタン(MDI)、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(pMDI)、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)及び/又は1,5−ジイソシアナートナフタレン(NDI)。
【0032】
不活性溶媒として、標準状態で70から350℃の範囲の沸点を持つ溶媒を使用することが好ましい。
【0033】
不活性溶媒は、100℃から250℃の範囲に沸点を有する中間沸点体であることが特に好ましい。
【0034】
適切な不活性溶媒は、特に、テトラリン、ジフィル(ビフェニルとジフェニルアルコールの混合物)、ビフェニル、ジフェニルエーテル、異性体のベンジルトルエン、異性体のジベンジルトルエン、ジベンジルエーテル、異性体のトリクロロベンゼン、異性体のジクロロトルエン、異性体のジエチルトルエン、異性体のジエチルベンゼン、異性体のジプロピルベンゼン、異性体のジイソプロピルベンゼン及び/又は異性体のテトラメチルベンゼンである。
【0035】
好ましい実施の形態では、不活性溶媒は、解離のために供給されるカルバメートに供給箇所で付加的に導入される。溶媒は、液体状、露状(ちょうど全部が気化した状態)又は好ましくは気体状で導入し得る。
【0036】
濃縮部に外部ランバックとして液体状で供給される溶媒と、ストリッピング部の下の領域内に気体状の加熱流として供給される溶媒は同じであることが特に好ましい。加えて、露状又は加熱流は、カラムのストリッピング部の複数の部分に導入することが可能である。
【0037】
濃縮部から取り出された気体は、有利に急冷される。
【0038】
本発明によれば、急冷された気体は純粋アルコールからは成らず、替わりに溶媒を10から95質量%、好ましくは50から95質量%含む。
【0039】
本発明は、以下に図面と実施例により詳細に示される
【0040】
図1は、本発明の方法を実行するためのプラントの概略構成図である。
【0041】
解離されるカルバメート流1は、濃縮部Vとストリッピング部Aを有するカラムKの中央領域に供給される。
【0042】
対応するイソシアネートを含む流体2は、ストリッピング部Aの底部から取り出される。対応するアルコールを含む流体3は、濃縮部Vの頂部で取り出される。
【0043】
濃縮部Vの上部領域で、底部で取り出されるイソシアネートの沸点と、頂部で取り出され>95%の純度を有するアルコールの沸点との間の沸点を持つ中間沸点体含む流体4が、液体の形で導入される。
【0044】
ストリッピング部Aの下部領域で、気体の加熱された中間沸点体を含む流体5が導入される。
【0045】
図に示された好ましい実施の形態では、同じ中間沸点体、流体6が、カラムKの中間領域に、解離されるカルバメート、流体1と共に付加的に導入される。
【実施例】
【0046】
実施例1a:300℃以上での解離(本発明による)
図1に示した様な解離装置が使用される。装置は、濃縮部Vに6の理論段数を、ストリッピング部Aに1の理論段数を有する。このストリッピング部Aは、チューブの直立束を有する。
【0047】
1,2,4−トリクロロベンゼンに、トルエン2,4−ビス(O−ジイソブチルカルバメート)(流体1)の20質量%の強度の溶液を、2.5kg/hでストリッピング部の上部の解離装置に120℃で供給する。
【0048】
カラムは10バールの圧力で操作される。339℃/10バールで沸騰する1,2,4−トリクロロベンゼン(流体6)10.0kg/hが付加的にカラムの供給点に導入される。カラムの頂部では、純度99.5%wである2.3kg/hの1,2,4−トリクロロベンゼン(流体4)が300℃で液体分配器に供給される。底部の温度は348℃である。カラムの底部で、アルコールを取り除くために、0.053kg/hのN(流体5)及び0.4kg/hの1,2,4−トリクロロベンゼン蒸気(350℃)が導入される。カラムの底部出口から、248g/hの2,4−ジイソシアネート(TDI)、149ppmのセミカルバメート及び23.3g/hの高沸点二次成分を含む3.6kg/hの混合物(流体2)が取り出される。1,2,4−トリクロロベンゼン成分は92.4%である。
【0049】
装置の頂部で、8.3質量%のイソブタノール、0.1質量%の2,4−TDI及び100ppm以下のセミカルバメートを含む2.66kg/hの混合物が318℃で取り出される。
【0050】
2箇所(流体6,4)で供給される1,2,4−トリクロロベンゼンは、各々場合、同じ組成物を持つ(純度:99.5%)。
【0051】
オーバーヘッド生産物と底部生産物における2,4−TDIの全収率は、92.9%である。
【0052】
実施例1b:300℃以上での解離(比較例)
図1に示した様な解離装置が使用される。装置は、濃縮部Vに6の理論段数を、ストリッピング部Aに1の理論段数を有する。このストリッピング部Aは、チューブの直立束を有する。
【0053】
1,2,4−トリクロロベンゼンに、トルエン2,4−ビス(O−ジイソブチルカルバメート)(流体1)の20質量%の強度の溶液を、2.5kg/hでストリッピング部の上部の解離装置に120℃で供給する。
【0054】
カラムは10バールの圧力で操作される。339℃/10バールで沸騰する1,2,4−トリクロロベンゼン(流体6)10.0kg/hが付加的にカラムの供給点に導入される。しかし、カラムの頂部には1,2,4−トリクロロベンゼンは供給されず、替わりにコンデンサが還流比0.8で操作される。底部の温度は348℃である。カラムの底部で、アルコールを取り除くために、0.12kg/hのN(流体5)及び0.4kg/hの1,2,4−トリクロロベンゼン(350℃)が導入される。カラムの底部出口から、214g/hの2,4−TDI、15ppmのセミカルバメート及び34.5g/hの高沸点二次成分を含む2.3kg/hの混合物(流体2)が取り出される。1,2,4−トリクロロベンゼン成分は89.2%である。
【0055】
装置の頂部で、12.9質量%のイソブタノール、1.7質量%の2,4−TDI及び100ppm以下のセミカルバメートを含む1.71kg/hの混合物が296℃で取り出される。底部とオーバーヘッド流における2,4−TDIの全収率は、89.5%のみである。
【0056】
実施例2:300℃以下での解離(本発明)
図1に示すような解離装置が使用される。装置は、濃縮部Vに10の理論段数を、ストリッピング部Aに30の理論段数を有する。ストリッピング部は専用の気化器を有していない。装置は、濃縮部に、空のチューブの断面に対して5%以下のホールドアップを有する低圧ドロップ織物パッキングを有する。ストリッピング部は、EP 1493475 B1 に記載されている様に30の滞留時間トレイを有する。
【0057】
1,2,4−トリクロロベンゼンに、トルエン2,4−ビス(O−ジイソブチルカルバメート)(流体1)の50質量%の強度の溶液を、1.0kg/hでストリッピング部の上部の解離装置(底部から30段)に180℃で供給する。
【0058】
カラムは4バールの圧力で操作される。281℃まで加熱された気体の1,2,4−トリクロロベンゼン(流体6)2.37kg/hが付加的にカラムの供給点(底部から30段)に導入される。更に、0.49kg/hの加熱された1,2,4−トリクロロベンゼンが281℃で底部から15段に導入される。カラムの頂部では、純度99.5%wである0.95kg/hの1,2,4−トリクロロベンゼン(流体4)が250℃で液体分配器に供給される。底部の温度は270℃である。カラムの底部で、アルコールを取り除くために、0.03kg/hのN(流体5)及び1.17kg/hの気体の1,2,4−トリクロロベンゼンがエネルギーを導入するために供給される。カラムの底部出口から、5.1質量%の2,4−TDIを含む3.8kg/hの混合物(流体2)が取り出される。
【0059】
装置の頂部で、9.2質量%のイソブタノール、0.05質量%の2,4−TDI及び100ppm以下のセミカルバメートを含む2.0kg/hの混合物が264℃で取り出される。
【0060】
4箇所(ランバック、流体6、15段、底部)で供給される1,2,4−トリクロロベンゼンは、各々場合、同じ組成物を持つ(純度:99.5%)。
【0061】
この好ましい実施の形態では、気化器やコンデンサは使用していない。解離装置内の熱交換器の汚染はこのように除外される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバメートを熱的に解離し、及びカルバメートの解離からの、対応するイソシアネートと対応するアルコールを含む反応混合物を蒸留により分離することによってイソシアネートを調製する方法であって、
前記反応混合物の蒸留による分離は、濃縮部(V)とストリッピング部(A)を有するカラム(K)内で蒸留することによって行われ、
カルバメート(1)は、濃縮部(V)及びストリッピング部(A)の間に導入され、及び、
イソシアネートが底部流(2)の成分として取り出され、及びアルコールがカラム(K)からのオーバーヘッド流(3)の成分として取り出され,及び
これらの取り出しは所定の不活性溶媒の存在下に行われ、
該不活性溶媒として、カルバメート解離の動作条件下で、イソシアネートの沸点とアルコールの沸点の間に沸点を有する中間沸点体が使用され,及び
前記不活性溶媒は、外部ランブック(4)として、外部ランバックの総質量に対して>95質量%の純度の液体状態で、濃縮部(V)の上部領域に供給され、及びガス状の過熱流(5)としてストリッピング部(A)に一箇所以上で供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
大気圧で70から350℃の範囲の沸点を持つ不活性溶媒が用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
100から250℃の範囲の沸点を持つ不活性溶媒が用いられることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルコールは脂肪族のモノヒドロキシアルコール、特にメタノール、ブタノール、イソブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール又は2−メトキシ−1−プロパノールであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
カラム(K)のストリッピング部(A)は、流下フィルム蒸発器として設定されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
カラム(K)のストリッピング部(A)は、複数の流下フィルム蒸発器を有し、これらは、その間に配置された分配器でシリーズに連結されていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シリーズに接続された1つ以上の流下フィルム蒸発器が、触媒的に被覆されることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
不活性溶媒の流体(6)は、カルバメート(1)の供給点でカラム(K)に供給されることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
カルバメート(1)の供給点でカラム(K)に流体(6)として供給される不活性溶媒は、濃縮部(V)の上部領域に外部ランバック(4)として中間沸点体として供給され、及びストリッピング部(A)に気体状の過熱流(5)として供給される物質と同一の物質を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
カルバメートに対応するアルコールを含むオーバーヘッド流(3)は、気体状態で取り出され、取り出された後、直ぐに急冷されることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
カルバメートの解離で形成されるイソシアネートの50から100%が、底部を経由して取り出されることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
カルバメートの解離は、210℃から400℃の範囲の動作温度で実行されることを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
ロードトレイは、カラム(K)のストリッピング部(A)で滞留時間トレイとして使用されることを特徴とする請求項1から4又は8から12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
滞留時間トレイは、触媒が供給されていることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517312(P2013−517312A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549324(P2012−549324)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050557
【国際公開番号】WO2011/089098
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】