説明

カルバートの地中埋設構造

【課題】地中に埋設されたカルバートに起因する振動によってその周囲に在住する住民が不快を感じるのを、住居する建物に依存することなくより広い範囲で回避できるようにしたカルバートの地中埋設構造を開示する。
【解決手段】カルバートの地中埋設構造は、地中に埋設されたカルバート1と、第1の振動発生源からカルバートまでの第1の振動伝達経路内および/または前記カルバートで共振した振動が外部へ伝達する第2の振動伝達経路内においてカルバートに近接してかつカルバートに沿うようにして配置された防振壁10、20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設してライフラインの共同溝などとして用いられるカルバートの地中埋設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ライフラインである、電線、ガス管、上水道管、下水道管、通信配線などの共同溝として利用するために、車道下等の地中にボックスカルバートを埋設することは知られている(例えば、特許文献1参照)。カルバートとしては、ボックスカルバートに限らず、パイプカルバート、アーチカルバート、門型カルバートなども用いられている。
【0003】
また、車道や線路からの振動が地中を伝って建物に伝搬するのを防止するための建築物の地下防振構造が、特許文献2等に記載されており、そこでは防振壁として防振ゴムや発泡樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−213708号公報
【特許文献2】特開平6−146318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルバートを地中に埋設すると、結果として、地中に空洞が形成される。カルバートには、内径が1〜3mにもおよぶものがあり、そのような大きな径の空洞が地中に存在すると、地表からの振動が空洞内での共鳴等で増幅され、より大きな振動エネルギーとなって再びカルバートから地中に向けて伝搬するようになる。
【0006】
それにより、車道を通交する走行車両に起因して発生する振動が環境基準で定められた値以下である場合であっても、地中に埋設されているカルバートの大きさや本数によっては、人にとって不快な振動に変化することが起こり得る。そのようにして増幅した振動エネルギーが周囲の人家等に伝搬すると、地域住民に不快感を与えることが考えられる。
【0007】
これから先、住宅地に近い車道の下にカルバートを埋設して住環境を整えることが多くなることが予測され、そのような社会環境のもとで、前記したカルバートに起因して発生する振動による不快感を生じさせないようにすることが、これからの課題となりつつある。特許文献2に記載のように、山留め壁と建物構造主体との間に防振壁を配置する対策は建物ごとの対策であり、当該対策を施した建物に在住する住民に対しては有効であるが、対策を施していない建物には効果がない。また、建物ごとに防振壁を配置するための施工も容易でない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、地中に埋設されたカルバートに起因する振動によってその周囲に在住する住民が不快を感じるのを、住居する建物に依存することなくより広い範囲で回避できるようにしたカルバートの地中埋設構造を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるカルバートの地中埋設構造は、地中に埋設されたカルバートと、第1の振動発生源から前記カルバートまでの第1の振動伝達経路内および/または前記カルバートで共振した振動が外部へ伝達する第2の振動伝達経路内において前記カルバートに近接してかつカルバートに沿うようにして配置された防振壁と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記したカルバートの地中埋設構造では、第1の振動伝達経路内にカルバートに沿って防振壁が配置される場合には、第1の振動発生源である地上を走行する車両や地中トンネルを通過する車両などに起因して発生する振動は、カルバートに到達する前に、前記防振壁によって吸収される。そのために、カルバートへ伝わる振動はなくなるか、あるとしてもごく小さくなる。従って、この態様では、カルバート内の空洞での共振によって大きな振動が発生するのを回避することができ、埋設されたカルバートの近傍に在住する住民が、カルバートに起因して発生する振動によって被害を蒙るのを避けることができる。
【0011】
第1の振動伝達経路に前記防振壁が配置されない場合には、または配置される場合であっても振動の周波数や防振壁の物性によっては、第1の振動発生源からの振動の全部または一部がカルバートに伝達される。その振動はカルバート内の空洞での共振によって増幅されてより大きな振動エネルギーとなる場合があり、その振動はカルバートから第2の振動伝達経路を通って外部に伝搬する。この場合、第2の振動伝達経路内にカルバートに沿って防振壁を配置することにより、伝搬する振動エネルギーを当該防振壁によって吸収することができる。それにより、共振して増幅した振動エネルギーがカルバートに隣接する建物等に伝搬するのを効果的に阻止することができ、カルバートの周囲に在住する住民が不快を感じるのをなくすことができる。
【0012】
既存のカルバートが存在する場合には、後作業で、前記第1の振動伝達経路内および/または第2の振動伝達経路内におけるカルバートに近接した位置に該カルバートに沿うようにして防振壁を配置するようにしてもよく、新たにカルバートを地中に設置する場合には、カルバート設置作業と並行して防振壁を配置するようにしてもよい。いずれであっても、個々の建物の側壁と山留め壁との間に防振壁を配置していく作業と比較して、作業は容易である。また、カルバートに近接してカルバートに沿って防振壁を配置することで、近くに位置する多くの建物への振動の伝搬を一律に回避できる利点もある。
【0013】
一般に、振動の伝搬経路中に周囲の媒体とは密度、波動速度、弾性係数などが異なる材料を配置すると、振動はその材料によって遮断される。従って、本発明において防振壁とは、地中の土砂やカルバート本体のコンクリートに比べて密度の小さい材料、地中の土砂やカルバート本体のコンクリートとは波動速度、弾性係数が異なる材料で形成された壁体のすべてを総称している。しかし、所要の機械的強度を備えないと土圧や水圧により変形や破壊が生じるので、一定値以上の機械的強度を持つ材料を用いて防振壁を作ることが望ましい、そのような材料として、ポリスチレン発泡体等のブロック状の発泡樹脂が例示できる。
【0014】
一方、ブロック状の発泡樹脂は一般に比重が1以下であり、それを地中に埋設した場合、地下水の上昇により浮力が生じ、地中での埋設状態が不安定になる恐れがある。それを回避することのできる防振壁として、積層させることにより内部に空隙が確保できる樹脂製の空間形成部材の多数個を立体状に積み上げて形成されてなる構造体を挙げることができる。なお、積層させることにより内部に空隙が確保できる樹脂製の空間形成部材の形状は任意であり、特に制限はない。一例として、特開2009−24447号公報に記載される積層構造体が挙げられる。
【0015】
上記の構造体である防振壁では、その主たる構造材は、積層させることにより内部に空隙が確保できる樹脂製の空間形成部材のみであり、樹脂製の空間形成部材は軽量材であることから、それを積層しかつ地中に埋設していく作業は、重機を用いることなく、人力施工でもって容易に行うことができる。そのために、防振壁の施工自体も簡素化される。
【0016】
さらに、上記の構造体である防振壁は、樹脂製の空間形成部材を積層させることによって形成された空隙を内部に有しており、通常ではその空隙には土中の空気が入り込んでいる。また、構造体の全容積に対する空隙の割合は、樹脂製の空間形成部材の構造によって幅があるとしても、容易に90%以上とすることができる。そのために、防振壁が埋設されている地盤の地下水位が上昇したときには、地下水は前記空隙内に入り込むことができるので、防振壁に浮力が作用するのを回避することができる。さらに、前記防振壁の空隙部分を道路側溝等と連続させておく場合には、防振壁を道路側溝を流れる雨水の一時的な貯留部として利用することが可能となり、過剰な降雨により道路が一時的に冠水する被害、あるいは小さな河川が越流してしまう被害を防止することができる。
【0017】
防振壁が、積層させることにより内部に空隙が確保できる樹脂製の空間形成部材の多数個を立体状に積み上げて形成されてなる構造体で構成される場合、前記構造体を透水性シートによって被覆することは好ましい。それにより、前記空隙内への地下水の進入、および地下水位が下がったときの空隙からの地下水の脱出を確保しながら、防振壁構造体の積み上げ姿勢を長期にわたり安定的に保持することができる。透水性シートとして、防振壁構造体の周囲の土砂が通過できない目開きのものを用いることはより好ましく、長期にわたって、前記空隙の容積を減少させることなく維持することができる。
【0018】
本発明によるカルバートの地中埋設構造は、任意の場所に設置することができるが、カルバートが道路下に埋設されており、前記防振壁は前記カルバートの上方および/または側方において地中に配置されていることは、特に、有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、地中に埋設したカルバートに起因する振動によって付近の住民が不快を感じるようになるのを効果的に回避することができる。そのために、今後ますます多くなると考えられる、車道下等の地中にライフラインの共同溝としてカルバートを埋設する事業に、本発明は大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】カルバートの地中埋設構造の第1の形態を説明する模式図。
【図2】カルバートの地中埋設構造の第2の形態を説明する模式図。
【図3】カルバートの地中埋設構造の第3の形態を説明する模式図。
【図4】カルバートの地中埋設構造のさらに他の形態を説明する模式図。
【図5】カルバートの地中埋設構造で用いる防振壁の一例を説明する概略図。
【図6】積層させることにより内部に空隙が確保できる樹脂製の空間形成部材の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。
図1は、本発明によるカルバートの地中埋設構造の第1の形態を説明する模式図である。図1において、Lは車道のような地表面であり、地表面Lから所要の深さ位置にカルバート1が埋設されている。カルバート1が埋設された上方の地表面Lでは車両Vが走行しており、側方には家屋Hが建てられている。
【0022】
この例において、カルバート1は、鉄筋コンクリート製である断面四角形のボックスカルバートであり、限定されないが、例えば直径は1〜3m程度のものである。なお、図1において、2〜6は、カルバート1の空洞内に配置されたライフラインの一例であり、ガス管2,上水道管3、下水道管4、電線5、通信線6が例示されている。
【0023】
地表面Lとカルバート1の間であってカルバート1に近接した直上の位置には、水平方向の一次防振壁10がカルバート1の埋設方向(図で紙面に直角方向)に沿うようにして配置されている。図1(a)に示す例において、一次防振壁10の横幅はカルバート1の横幅とほぼ同じ程度である。一次防振壁10の路線方向の長さ、すなわち図で紙面に直角方向の長さに制限はなく、施工現場ごとに必要される長さだけ、カルバート1に沿って配置される。
【0024】
この構造のカルバート地中埋設構造において、例えば地表面Lを走る車両Vが本発明でいう第1の振動発生源であり、第1の振動発生源(車両V)に起因して発生した一次振動S1は、土等を媒体として第1の振動発生源(車両V)からカルバート1まで伝搬する。本発明では、この第1の振動発生源(車両V)からカルバート1までの振動伝搬経路を第1の振動伝達経路といっている。
【0025】
上記のように第1の振動伝達経路には、一次防振壁10が、カルバート1の近傍直上においてカルバート1に沿って配置されており、車両Vからの一次振動S1は一次防振壁10によって吸収(遮断)されることで、カルバート1には到達しない。一次防振壁10の両側方から迂回するようにして振動が伝わる場合もあるが、通常の場合、そのエネルギーは無視できる量である。従って、図1(a)に示されるカルバートの地中埋設構造では、道路からの振動がカルバート1まで伝達されることはなく、あったとしても無視できるものであり、カルバート1内の空洞内での共鳴等が生じることはない。そのために、カルバート1から再び外部に向けて異なった周波数のあるいは増幅したエネルギーの振動が伝搬することはなく、地中に埋設されたカルバート1に起因して、家屋Hに住む住民等が不快を感じる事態は発生しない。
【0026】
図1(b)に示すカルバートの地中埋設構造は、水平方向に配置された一次防振壁10の横幅が、図1(a)に示すものよりも広くなっている。この態様では、地上からの振動Sが一次防振壁10の両側方から迂回するようにしてカルバート1に伝わるのを一層確実に阻止することができる。
【0027】
図2は、本発明によるカルバートの地中埋設構造の第2の形態を説明する模式図であり、この態様では、カルバート1での共振で増幅した振動S2が家屋H等に伝搬するのを防止している。すなわち、この態様では、地表面Lとカルバート1との間には防振壁は設けられてなく、第1の振動発生源(車両V)からの一次振動S1は第1の振動伝達経路を介してカルバート1に伝搬する。カルバート1に伝搬した振動は、そこで共振することでより大きな振動エネルギーを持つ二次振動S2となり、第2の振動伝達経路を介して外部に伝わっていく。二次振動S2が家屋Hに伝わると、そこに住む住民は不快感を持つ。そのために、図2(a)に示す態様では、第2の振動伝達経路におけるカルバート1と家屋Hを結ぶ領域であって、カルバート1に近傍した位置には、カルバート1に沿うようにして、水平方向の二次防振壁20が配置されている。前記二次振動S2は、二次防振壁20によって吸収(遮断)されるので、家屋Hまで伝搬しないか、するとしてもわずかである。そのために、この態様でも、地中に埋設されたカルバート1に起因して、家屋Hに住む住民等が不快を感じる事態は発生しない。
【0028】
図2(b)に示すカルバートの地中埋設構造は、二次防振壁20の配置方向が、水平方向でなく、垂直方向である点で、図2(a)に示すものと異なっている。このように垂直方向に二次防振壁20を配置しても、カルバート1と家屋Hとの位置関係によっては、前記二次振動S2が家屋Hに伝わるのを回避することができる。
【0029】
図3は、本発明によるカルバートの地中埋設構造の第3の形態を説明する模式図であり、この態様では、第1の振動発生源(車両V)からの一次振動S1を吸収してカルバート1に伝搬するのを阻止する前記した一次防振壁10と、カルバート1で共振した後に外部に伝搬していく二次振動S2を吸収する二次防振壁20の双方を、カルバート1の近傍にカルバート1に沿うようにして配置している。なお、図3に示される他の構成については、後述する。
【0030】
図4は、本発明によるカルバートの地中埋設構造のさらに他のいくつかの形態を模式図に示している。図4(a)では、カルバート1の下方位置を除いた3方を防振壁で囲うようにしている。第1の振動発生源がどの方向位置にあるかで、いずれかあるいはすべての防振壁が前記した一次防振壁10としての機能を果たし、またカルバート1から発生する二次振動が伝搬するのを回避すべき建物等がどの方向位置にあるかで、いずれかあるいはすべての防振壁が前記した二次防振壁20としての機能を果たすこととなる。
【0031】
図4(b)では、カルバート1の4方を防振壁で囲うようにしている。図4(c)では、カルバート1の上方位置を除いた3方を防振壁で囲うようにしている。図4(d)では、カルバート1の一側方を除いた3方を防振壁で囲うようにしている。これらの場合でも、図4(a)の場合と同様に、周囲の事情に応じて、いずれかあるいはすべての防振壁が前記した一次防振壁10または二次防振壁20としての機能を果たすこととなるが、車両用の地下トンネルが設けられている地域でのカルバートの地中埋設構造として、このような形態のものは特に好適である。
【0032】
図4(e)に示す形態は、カルバート1がボックスカルバートでなくパイプカルバートである点で、図1(b)に示したものと相違する。このように、本発明によるカルバート1は任意の形態のカルバートに対して適用することができる。地下トンネルの直上にカルバートを埋設するような場合には、図4(f)に示すように、埋設するパートの直下にのみ横幅の広い防振壁(一次防振壁10)を配置するのも有効である。
【0033】
本発明によるカルバートの地中埋設構造において、防振壁10(20)には、地中を伝搬する振動を吸収できる構造のものであれば任意の構造の防振壁を用いることができる。一例として、発泡樹脂性ブロックを積み重ねて構成したものが挙げられる。他の構成の防振壁として、図5に示す形態のものを挙げることができる。
【0034】
この防振壁10(20)は、図6にその一例を示すような樹脂製の空間形成部材31を多段に積層して形成された構造体40を主構造物としており、構造体40の全体が不織布のような透水性シート41で包み込まれており、さらにその外側全体が砕石層42および不織布のような透水性シート43で覆われている。
【0035】
図6に示す樹脂製の空間形成部材31は、例えば特開2009−24447号公報に記載されるものであり、次のように構成を持つ。すなわち、下端が開放された箱状部の複数個が間隔を空けながらX方向に配列した箱列32が、X方向に直交するY方向に間隔を空けながら必要列数だけ配列した構成を基本的に備える。図6に示すように、必要な場合には、異なった大きさの複数個の樹脂製の空間形成部材31を箱列32の方向が同じ方向となるように寄せ集めて樹脂製の空間形成部材31とすることもできる。そして、上記の樹脂製の空間形成部材31の多数枚を、前記箱列32の方向が互いに直角に交差させながら多段に上下方向に積み上げることにより、図5に示すように、内部に多くの空隙Pを持つ樹脂製の空間形成部材31からなる構造体40とされる。
【0036】
上記の防振壁10(20)では、前記構造体40が樹脂製の空間形成部材31を積層させることによって形成された空隙Pを内部に有しており、通常ではその空隙Pには空気が入り込んでいる。構造体40の全容積に対する空隙Pの割合は、樹脂製の空間形成部材31の構造を適宜選択することで90%程度以上とすることができ、前記空隙Pの存在により、上記の防振壁10(20)は、発泡樹脂性ブロックの場合と同様に、振動の伝搬を遮断する機能を効果的に果たすことができ、高い振動吸収能力を示す。
【0037】
一方、図5に示す形態の防振壁10(20)は、埋設されている地盤の地下水位が上昇したときには、地下水は前記空隙P内に入り込むことで、構造体40に浮力が作用するのを回避することができ、地中に埋設した防振壁10(20)の設置状態が不安定になることはない。また、構造体40は透水性シート41によって被覆されているので、空隙P内への地下水の進入、および空隙Pからの脱出は確保されるとともに、構造体40の積み上げ姿勢を長期にわたり安定的に保持することができる。透水性シート41として、構造体40の周囲の土砂が通過できない目開きのものを用いることで、長期にわたり空隙S内に土砂等が入り込むのを阻止することができ、振動の伝搬阻止機能を低下させるような空隙Pの容積低下を回避することができる。さらに、図示の例においては、構造体40の周囲を覆う砕石層42および透水性シート43を備えることで、前記空隙P内への地下水の進入および脱出を一層確実に、また、空隙P内への土砂の進入も一層確実に阻止することができる。
【0038】
さらに、図5に示す形態の防振壁10(20)を用いる場合には、前記構造体40の部分を、図3に一例を示すように、近くを走っている適宜の道路側溝50と適宜の導水路51を介して接続しておくことにより、前記空隙Pが貯水空間となることで、当該防振壁10(20)を道路側50溝を流れる雨水の一時的な貯留部として利用することが可能となる。それにより、過剰な降雨により道路が一時的に冠水する被害、あるいは小さな河川が越流してしまう被害を防止できるという、副次的な効果ももたらされる。また、防振壁10(20)に道路側溝50を流れる雨水の一時的な貯留部としての機能を持たせる場合には、当該防振壁10(20)の前記構造体40と下水本管52とを排水管53で接続しておくことが望ましい。
【0039】
なお、防振壁に道路側溝を流れる雨水の一時的な貯留部としての機能を持たせる態様は、図3に示すカルバートの地中埋設構造に限らず、図1、図2、図4に示したすべての形態のカルバートの地中埋設構造にも適用できる。また、図5には縦長の防振壁を示したが、樹脂製の空間形成部材31の積み重ね態様を変えることにより、例えば、図1に一次防振壁10として示したような、横幅の広い平面的な防振壁を構築できることは説明を要しない。
【符号の説明】
【0040】
L…車道のような地表面、
V…第1の振動発生源の例としての車両、
H…家屋、
1…カルバート、
10、20…防振壁、
31…防振壁を構成する樹脂製の空間形成部材、
50…道路側溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバートの地中埋設構造であって、地中に埋設されたカルバートと、第1の振動発生源から前記カルバートまでの第1の振動伝達経路内および/または前記カルバートで共振した振動が外部へ伝達する第2の振動伝達経路内において前記カルバートに近接してかつカルバートに沿うようにして配置された防振壁と、を備えることを特徴とするカルバートの地中埋設構造。
【請求項2】
前記防振壁は、積層させることにより内部に空隙が確保できる樹脂製の空間形成部材の多数個を立体状に積み上げて形成されてなる構造体からなることを特徴とする請求項1に記載のカルバートの地中埋設構造。
【請求項3】
前記構造体は、透水性シートによって被覆されていることを特徴とする請求項2に記載のカルバートの地中埋設構造。
【請求項4】
前記防振壁は、発泡樹脂製のものであることを特徴とする請求項1に記載のカルバートの地中埋設構造。
【請求項5】
前記カルバートは道路下に埋設されており、前記防振壁は前記カルバートの上方および/または側方で地中に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のカルバートの地中埋設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−31612(P2012−31612A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170966(P2010−170966)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)