説明

カルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法及びそれによって得られたカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲル

【課題】高弾性で強度が高い環境保全型のゲルを安価に、簡便に得るための製造方法及びその方法によって得られるゲルを提供する。
【解決手段】カルボキシメチルセルロースアルカリ塩(CMC)に酸または酸水溶液と有機補強材とを添加し、これを混練してCMCをゲル化させることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法及びそれによって得られたカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CMCは、現在最も一般的に使用されている水溶性高分子である。CMCの分子同士を架橋させて3次元の網目構造を形成させ、この網目構造の内部に水をしっかり捕捉させたゲルを得る方法が従来知られている。具体的にはCMCを多価金属イオンで架橋させてゲルを製造する方法(例えば、特許文献1及び2)、CMCに架橋剤を添加してゲルを製造する方法(例えば、特許文献3)がある。しかしながらこれらの製造方法は高弾性を有するゲルを製造することが困難という欠点を有する。また、CMCに水を加えペースト状に練り、放射線を照射することによってゲルを製造する方法(例えば、特許文献4)も知られている。しかしながらこの方法は、放射線照射装置という高価な設備が必要であり、従ってコスト高になる欠点を有するとともに、簡便性にかける欠点を有する。以上の方法の欠点を解決する方法として本発明者らにより、CMCに酸を加えるのみの製造方法、すなわち安価に、簡便にゲルが製造できる方法(例えば、特許文献5)が提案されている。しかしながらこの方法は、強度が高くならず、従って用途も限られるという欠点を有する。そこで、強度を上げるために、さらに本発明者らは非水溶性金属化合物を添加する方法(例えば、特許文献6)を提案しているが、この方法においては金属類の増加が避けられず、例えば廃棄処理した場合に環境保全型としての価値低下を招く欠点がある。
【特許文献1】特開平7−90121号公報
【特許文献2】特開2005−263858号公報
【特許文献3】特開平10−251447号公報
【特許文献4】特開2005−82800号公報
【特許文献5】特願2006−250947号
【特許文献6】特願2007−070145号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、高弾性で強度が高い環境保全型のゲルを安価に、簡便に得るための製造方法及びその方法によって得られるゲルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0005】
第1に、本発明のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法は、カルボキシメチルセルロースアルカリ塩(CMC)に酸または酸水溶液と有機補強材とを添加し、これを混練してCMCをゲル化させる。
【0006】
第2に、上記第1の発明のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法において、CMCの含有率は、CMCに酸または酸水溶液と有機補強材とを加えた混合物の全体重量に対して、3〜64重量%の割合である。
【0007】
第3に、上記第1または第2の発明のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法において、酸または酸水溶液として、塩酸または塩酸水溶液をCMCに添加する。
【0008】
第4に、上記第1または第2の発明のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法において、有機補強材として、微結晶セルロース、ペクチン、アルギン酸、ジェランガム、カルボキシメチル化キトサン、ポリエチレン、ポリ乳酸から選択される一種以上の有機化合物をCMCに添加する。
【0009】
そして、第5に、本発明のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルは、前記いずれかのカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法によって得られるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば多価金属イオンを使用し架橋させて製造する方法や架橋剤を使用して製造するゲルと異なり、高弾性のゲルが得られ、放射線を使用する方法のように、放射線照射装置という高価な設備が不必要であり、従って安価に、簡便に製造でき、さらにまた酸のみを使用して製造する方法と異なり強度の高いゲルを製造することができる。また強度を高くするために、非水溶性金属化合物を添加する方法のように、廃棄処理した場合に環境保全型としての価値低下を招く欠点を改善することができる。すなわち当該製造方法よって得られるゲルは高弾性で強度が高く、安価で簡便に得られ、CMCという植物由来の材料を原料とした環境保全型のゲルであり、家畜排泄物処理材、排水処理材、脱臭材、触媒担体、衝撃吸収材、医療用粘着材、医療用パテ材等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法は、図1にその概略構成をフローチャートで示すように、カルボキシメチルセルロースアルカリ塩(CMC)に酸または酸水溶液と有機補強材とを添加し、これを混練機等により混練してCMCをゲル化させることによって、カルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲル(以下、「CMCゲル」ともいう)を製造することができる。
【0012】
本発明におけるCMCは、そのアルカリ塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を例示することができる。また、CMCのエーテル化度、粘度は特に制限されるものではなく、適宜なものを用いることができる。ここでいう粘度とはCMCを1重量%水溶液とした場合の粘度であり、粘度の高低は分子量の高低を間接的に示す。CMCは粉末として使用しても水溶液としても良く、酸または酸水溶液と湿潤状態で混練できる範囲であれば限定されない。より簡便に混練するには、好ましくは5重量%以上の濃度の溶液とすることが望ましい。
【0013】
CMCの使用量としては、CMCに酸または酸水溶液と有機補強材とを加えた混合物の全体重量に対してCMCの重量が3〜64重量%、好適には10〜30重量%の割合となるようにCMCを用いることが考慮される。3重量%未満の場合には十分な強度を持ったCMCゲルを得られないおそれがあり、64重量%を超える場合には均一に混練することが困難な場合があるので好ましくない。
【0014】
本発明における酸は、有機酸または無機酸のいずれであっても良く、その種類は問わない。例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、硝酸、蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、あるいはこれらの酸水溶液を単独または混合して用いることができる。なかでも高強度、高弾性のCMCゲルを得るためには、塩酸または塩酸水溶液を用いることが好ましい。
【0015】
酸水溶液の濃度は問わないが、混練を簡便にするという観点からは0.1〜3mol/lの範囲であることが望ましい。酸水溶液の濃度が高いとゲル化の進行速度が速くなる傾向にある。このため酸水溶液の濃度が高すぎる場合には、ゲル化が瞬時に進行してしまい、有機補強材を十分にCMCに混合させることができず、弾性および強度を向上させたCMCゲルを得ることができない場合があるので好ましくない。
【0016】
酸または酸溶液の使用量としては、CMCに酸または酸水溶液と有機補強材とを加えた混合物の全体重量に対して酸または酸水溶液の重量が35〜95重量%、好適には60〜90重量%の割合となるように酸または酸水溶液を用いることが考慮される。35重量%未満の場合にはCMCゲルが不均一となり十分な強度を持ったCMCゲルを得られないおそれがあり、95重量%を超える場合にはゲル形成が困難になる場合があるので好ましくない。
【0017】
本発明における有機補強材は、得られるCMCゲルの弾性と強度を向上させるために特に重要である。本発明では、CMCに酸または酸水溶液とともにこの有機補強材を加えることで、高弾性で強度が高いCMCゲルを得ることができるのである。このような有機補強材としては、例えばセルロース誘導体、多糖類、アミノ酸、高分子、糖類等を例示することができる。具体的には、微結晶セルロース、三酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、寒天、アルギン酸、ジェランガム、ペクチン、サイリウムシードガム、グアーガム、アラビアガム、カルボキシメチル化キトサン、アラビノガラクタン、カラギーナン、タマリンドシードガム、マンナン、キチン、キトサンなどの多糖類、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリ乳酸などの高分子、グリシン、アラニン、グルタミン酸などのアミノ酸、スクロース、グルコース、フルクトースなどの糖類が使用できる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。高強度、高弾性のCMCゲルを得るためには、特に微結晶セルロース、ペクチン、アルギン酸、ジェランガム、カルボキシメチル化キトサン、ポリエチレン、ポリ乳酸から選択される一種以上の有機化合物を用いることが好ましい。
【0018】
有機補強材の使用量としては、CMCに酸または酸水溶液と有機補強材とを加えた混合物の全体重量に対して有機補強材の重量が1〜30重量%、好適には2〜10重量%の割合となるように有機補強材を用いることが考慮される。1重量%未満の場合にはCMCゲルの強度や弾性の増大がほとんど認められず、30重量%を超える場合にはCMCゲルが不均一となり十分な強度を持ったCMCゲルを得られないおそれがあるため好ましくない。
【0019】
本発明は、上述したように、CMCに酸または酸水溶液及び有機補強材を添加し、これを混練機等により混練してCMCをゲル化させることによってCMCゲルを製造することができるものであるが、CMC、酸または酸水溶液、有機補強材の混練順は特に問わない。例えば、CMCに有機補強材を添加して混練した後、このものに酸または酸水溶液を添加してこれを混練してもよいし、有機補強材と酸または酸水溶液を同時にCMCに添加してこれを混練してもよい。混練機については、CMC、酸または酸水溶液、有機補強材の3者を効果的に混練できればよく、市販されている混練機を用いることができる。例えば、スクリュー状の攪拌棒等で材料を直接攪拌してもよいし、下記の実施例で用いた混練機「シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎」を用いてもよい。この混練機は原料を収納した容器を自転させながら公転させており、材料内に多量の気泡を残さずに均質な攪拌を実現している。
【0020】
混練に際し、CMCと酸または酸水溶液を混練するときの温度は、CMCが加水分解しない温度、例えば約70℃よりも低い温度に設定されることが考慮される。一般的に混練時の温度が高いほど速やかにゲル化が進行する傾向にあるため、用いる有機補強材の種類や使用量の違いによるCMCとの混合度合いとゲル化の進行度を考慮して混練温度を適宜設定し、有機補強材が均一に混合された状態でゲル化を進行させるようにする。なお、CMCの水溶液濃度や酸水溶液の濃度が高い場合にもゲル化が速やかに進行する傾向にあるため、上記混練時の温度と合わせて適宜に設定することが考慮される。目的とするCMCゲルは、混練後所定時間放置することで得ることができる。このときの放置する時間は問わない。一般的に放置時間が長いほど、水に不溶な部分、すなわちゲルの部分の割合が高くなる傾向にある。
【0021】
以上の方法によれば、CMCと、酸または酸水溶液と、有機補強材とを単に混練してゲル化させることで、高弾性でかつ高強度なCMCゲルを得ることができる。しかも、放射線装置等の高価な設備を用いることなしに非常に簡便な方法で製造することができるので、CMCゲルを安価に得ることができる。このCMCゲルは、植物由来の材料を原料としているため環境保全型のゲルでもある。したがって、このようなCMCゲルは、農業、工業、医療、食品等の広範囲の分野において利用可能で、例えば家畜排泄物処理材、排水処理材、脱臭材、触媒担体、衝撃吸収材、医療用粘着材、医療用パテ材等として好適に使用される。
【0022】
実施例を比較例とともに表1に示し、以下実施例について詳細に述べるが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0023】
<実施例1>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gと市販の微結晶セルロース(フナコシ製カラム用)5gを1mol/l塩酸75gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を直径20mm、厚さ10mmのテフロン(登録商標)製の枠に入れ成型した。成型した試料を30℃で7日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は1.39N/mm、圧縮弾性率は0.136N/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.26N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状を保持し、高回復力、高強度を示した。
<実施例2>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gと市販のペクチン(伊那食品工業製、イナゲルJP−20)10gを0.75mol/l塩酸70gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡しペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を厚さ10mmに展ばし、コルクボーラーで打ち抜いた。打ち抜いた試料を30℃で5日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。破壊強度は1.59N/mm、圧縮弾性率は0.169N/mmであった。また、島津製作所製小型卓上試験機EZTestで50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.24N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状を保持し、高回復力、高強度を示した。厚さ0.5mm、幅8mmの短冊状に成型した試料の引っ張り試験を島津製作所製小型卓上試験機EZTestで行った結果、破断強度は4.15N,ヤング率は2.48Nであった。
<実施例3>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gと市販のアルギン酸(伊那食品工業製、イナゲルGS−30)5gを1mol/l塩酸75gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を直径20mm、厚さ10mmのテフロン(登録商標)製の枠に入れ成型した。成型した試料を30℃で7日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は1.05N/mm、圧縮弾性率は0.177N/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.28N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状を保持し、高回復力、高強度を示した。
<実施例4>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gと市販のジェランガム(伊那食品工業製、イナゲルGP−15)5gを1mol/l塩酸75gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を直径20mm、厚さ10mmのテフロン(登録商標)製の枠に入れ成型した。成型した試料を30℃で7日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は1.05N/mm、圧縮弾性率は0.160/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.23N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状を保持し、高回復力、高強度を示した。
<実施例5>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gと市販のカルボキシメチルキトサン5gを1mol/l塩酸75gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を直径20mm、厚さ10mmのテフロン(登録商標)製の枠に入れ成型した。成型した試料を30℃で7日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は2.58N/mm、圧縮弾性率は0.150N/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.10N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状を保持し、高回復力、高強度を示した。
<実施例6>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gと市販のポリエチレン5gを1mol/l塩酸75gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を直径20mm、厚さ10mmのテフロン(登録商標)製の枠に入れ成型した。成型した試料を30℃で7日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は1.06N/mm、圧縮弾性率は0.154N/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.23N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状を保持し、高回復力、高強度を示した。
<実施例7>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gと市販のポリ乳酸5gを1mol/l塩酸75gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を直径20mm、厚さ10mmのテフロン(登録商標)製の枠に入れ成型した。成型した試料を30℃で7日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は2.12N/mm、圧縮弾性率は0.139N/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.17N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状を保持し、高回復力、高強度を示した。
<比較例1>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gを1mol/l塩酸80gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を直径20mm、厚さ10mmのテフロン(登録商標)製の枠に入れ、成型した。成型した試料を30℃で7日間保存してゲルを得た後、このゲルを島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は1.01N/mm、圧縮弾性率は0.105N/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.14N/mmであり、50%圧縮を2回行ってもゲルは元の形状に戻らなかった。
<比較例2>
市販のCMC(ダイセル化学工業株式会社製、エーテル化度1.36、濃度1%溶液の25℃での粘度は1640mPa・s)20gを0.75mol/l塩酸80gに加え、シンキー製スーパーミキサー泡とり練太郎を用いて2000rpmで20分間混練し、10分間脱泡してペースト状の試料を得た。ペースト状になった試料を厚さ10mmに展ばし、コルクボーラーで打ち抜いた。打ち抜いた試料を30℃で5日間保存してゲルを得た後、島津製作所製小型卓上試験機EZTestで物性測定した。直径50mmのテフロン(登録商標)製圧縮治具で圧縮し、ゲルの破壊強度、圧縮弾性率を測定した。破壊強度は1.22N/mm、圧縮弾性率は0.116N/mmであった。また同試験機で50%圧縮時の最大ストレスを測定した。最大ストレスは0.13N/mmであった。厚さ0.5mm、幅8mmの短冊状に成型した試料の引っ張り試験を島津製作所製小型卓上試験機EZTestで行った結果、破断強度は3.63N,ヤング率は1.16Nであった。
【0024】
以上の結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1の破壊強度について、1.05(N/mm)未満のものを「×」(1点)、1.05〜1.30(N/mm)のものを「△」(2点)、1.30(N/mm)を超えるものを「○」(3点)と評価した。圧縮弾性率については、0.110(N/mm)未満のものを「×」(1点)、0.110〜0.130(N/mm)のものを「△」(2点)、0.130(N/mm)を超えるものを「○」(3点)と評価した。50%圧縮時の最大ストレスは、0.15(N/mm)未満のものを「×」(1点)、0.15〜0.20(N/mm)のものを「△」(2点)、0.20(N/mm)を超えるものを「○」(3点)と評価した。総合評価として、合計点が7点以上を「○」、7点未満を「×」とした。
【0027】
表1の結果より、実施例1〜7では高弾性でかつ強度が高いゲルが得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法の概略構成を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチルセルロースアルカリ塩(CMC)に酸または酸水溶液と有機補強材とを添加し、これを混練してCMCをゲル化させることを特徴とするカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法。
【請求項2】
CMCの含有率は、CMCに酸または酸水溶液と有機補強材とを加えた混合物の全体重量に対して、3〜64重量%の割合であることを特徴とする請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法。
【請求項3】
酸または酸水溶液として、塩酸または塩酸水溶液をCMCに添加することを特徴とする請求項1または2に記載のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法。
【請求項4】
有機補強材として、微結晶セルロース、ペクチン、アルギン酸、ジェランガム、カルボキシメチル化キトサン、ポリエチレン、ポリ乳酸から選択される一種以上の有機化合物をCMCに添加することを特徴とする請求項1または2に記載のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲルの製造方法によって得られたカルボキシメチルセルロースアルカリ塩のゲル。

【図1】
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【公開番号】特開2009−24089(P2009−24089A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188845(P2007−188845)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(507089517)財団法人群馬県産業支援機構 (15)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】