説明

カレールウ

【課題】小麦粉に替えて米粉を使用した製品として、カレールウを取り上げ、製造工程自体を変えずに、小麦粉に換えて米粉を使用した、風味や香り立ちの良いカレールウを提供することを目的とするものである。
【解決手段】米粉、好ましくは200μmパスの米粒粉砕物が80%以上含まれてなる米粉と油脂からなる米粉ルウを含み、更にコーンスターチを含んでなるカレールウであって、好ましくは米粉の含有量が3〜15質量%であるカレールウ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉に替えて米粉を使用したカレールウに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、小麦粉に替えて米粉を使用した食品の開発が行われており、例えば、特許文献1には、小麦粉の代替品となる米粉の製造方法として、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の有機酸水溶液から単独若しくは二種類以上選択して組み合わせることで処理溶液を作成し、この処理溶液に玄米、精白米、くず米、古米、ミニマムアクセス米等の米を浸漬した後、脱水し製粉乾燥する方法が知られており、当該米粉から麺線を得る方法が記載されている。
【0003】
また、米粉を使用したパンの製造方法も公知になっており、特許文献2には、グルテンが混入された米粉に、イオン化カルシウム水、糖類及び卵黄を混合して混合物を得、続いて、該混合物を低温で予備発酵して予備発酵物を得、続いて、該予備発酵物に再度グルテンが混入された米粉を混合して再混合物を得、続いて、該再混合物を成形、発酵及び焼成する方法が記載されている。
【0004】
更には、米粉を使用してホワイトソース及びホワイトソースルーに関するものとして、特許文献3には、ホワイトソースのボディー形成材の主体として米澱粉及び/又は米粉を用いるホワイトソース及びホワイトソースルーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−175636号公報
【特許文献2】特開2001−327242号公報
【特許文献3】特開2006−115744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように米粉の適用範囲が広がっていく中で、本発明は、小麦粉に替えて米粉を使用した製品として、カレールウを取り上げ、製造工程自体を変えずに、小麦粉に換えて米粉を使用した、風味や香り立ちの良いカレールウを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 米粉と油脂からなる米粉ルウを含み、更にコーンスターチを含んでなる、カレールウ。
(2) 前記米粉が、生米粒の粉砕物である、(1)記載のカレールウ。
(3) 前記米粉中、200μmパスの米粒粉砕物が80%以上含まれてなる、(1)又は(2)記載のカレールウ。
(4) カレールウにおける米粉の含有量が3〜15質量%である、(1)〜(3)のいずれかに記載のカレールウ。
(5) カレールウにおけるコーンスターチの含有量が6〜15質量%である、(4)記載のカレールウ。
【発明の効果】
【0008】
小麦粉には生っほさや粉っぽさがあるために、予め小麦粉を加熱処理して生っほさや粉っぽさを除く必要があるが、米粉には、小麦粉のような生っぽさや粉っぽさがないため、そのまま油脂と加熱混合して米粉ルウを得ることができる。よって得られるカレールウ、更にはカレーソースは、風味、香り立ちのよいものになる。
また、米粉は小麦粉の0.8倍の量で同等の粘性を示すことから、カレールウを製造するための米粉の量を小麦粉の場合よりも少ない量で前記カレールウ、更にはカレーソースを製造することができる。
また、米を使用することにより、小麦アレルギーを気にする必要がなくなる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は小麦粉(強力粉、薄力粉)米粉のそれぞれを使用して得た溶液の各温度と粘度の関係を示した説明図である。(実施例1)
【図2】図2は小麦粉1に対して米粉0.8倍としたときのそれぞれを使用して得た溶液の各温度と粘度の関係を示した説明図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用される米は、うるち米であれば、ジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米等、特に限定しないが、ジャポニカ米であることが最も好ましい。そして、当該米は、生のものを使用するのであって、糊化したものではない。
【0011】
かかる米から米粉を得る方法としては、ロール製粉方法(圧扁ロールを通過方法)、高速粉砕(例えばピンミル)による方法、気流粉砕(例えばジェットミル)による方法等があり、適宜方法で米を粉砕処理して米粉を得ればよく、例えば、気流粉砕による方法を採用することにより、原料同士がぶつけ合って粉砕される自己粉砕方式のためデンプン損傷を受けにくい、空気の発生量が多く、粉砕媒体としての役割を果たすため温度上昇が少なくα化しにくいなどの点で好ましい。
【0012】
粉砕された米粉の粒度は得られるルウや当該ルウから得られるソースの滑らかさに大きく影響を与えるものであり、例えば、200μmパスの米粒粉砕物が80%以上含まれていることが上記したルウや当該ルウから得られるソースの滑らかさという点から好ましい。更には当該米粒粉砕物の水分含量が12質量%以下、より具体的には4質量%〜8質量%であることが好ましく、これにより加熱攪拌時に米粉がα化しても、攪拌羽根にまとわりつく量が少なく均一攪拌することが可能となる。
【0013】
まず、本発明では、米粉を食用油脂と加熱混合して米粉ルウを作るが、使用する食用油脂としては、牛脂、豚脂、パーム油、菜種油、大豆油等の1種又は2種以上を混合した混合油などがある。最終のルウの形状が固形状の場合は、牛脂、豚脂、パーム硬化油等のように常温固化状の油脂を使用すればよく、最終のルウの形状がペースト状の場合は、菜種油、大豆油等を使用すればよい。
【0014】
油脂と米粉の加熱混合時の温度は、例えば100〜140℃、好ましくは100〜120℃という比較的高い温度で加熱して米粉ルウを作成する。米粉ルウの米粉と油脂の混合割合は、米粉が40〜50質量%であり、油脂が60〜50質量%という例を掲げることができる。
【0015】
次に、前記米粉ルウに、更にコーンスターチ、食用油脂、コーンスターチ以外の澱粉系原料、更には、乳製品、肉類、魚介類、野菜、果実等を原料とした、汁液、エキス、ブイヨン等の調味原料や、香辛料、カレー粉、食塩、砂糖、オニオンパウダー、調味料(アミノ酸等)等の粉体原料等から適宜選択したものを添加し、例えば90℃以上、好ましくは110〜130℃で加熱混合し焙煎した後に冷却、例えば50〜70℃位にまで冷却し、容器に充填し更に冷却して容器入りルウとする。
【0016】
かくして得られた容器入りカレールウは、原料本来の香り、風味、色を出すことができるという性質を有するものである。なお、カレー粉は、ターメリックやナツメグ、クミン、コリアンダー等の香辛料を数種類〜数十種類を組み合わせ粉末にしたものであり、特に限定されるものではない。
【0017】
カレールウにおける米粉の含有量は3〜15質量%とすることが好ましい。米粉の含有量を前記範囲内にすることにより、ルウに好ましい食感を与える粘度を付与し、生っぽさ、粉っぽさを与えないソースを作成するカレールウを製造することができるというメリットがある。
【0018】
本発明のカレールウには、米粉ルウに更にコーンスターチを含ませることにより、舌触り、口どけのよいカレーソースを作ることができる。この場合、カレールウにおけるコーンスターチの含有量は6〜15質量%とすることが好ましい。コーンスターチの含有量を前記範囲内とするとにより、米粉と同様にルウから得られるカレーソースに好ましい食感を与えるための粘度を付与し、食感が糊っぽくなることを防ぐことができるメリットがある。
【0019】
前記容器入りカレールウの形状は、使用する油脂の融点により決まる。使用した油脂の融点が牛脂や豚脂のように常温で固形状を示すものであれば、前記容器入りカレールウは固形状や顆粒状となる。使用した油脂の融点がサラダ油や菜種油のように常温で液状を示すものであれば、前記容器入りカレールウはペースト状となる。
【0020】
(実験例1)
小麦粉(強力粉、薄力粉、共に水分4質量%)を使用して得た溶液と米粉を使用して得た溶液の各温度と粘度の関係を明らかにして、前者の溶液、更にはカレールウを得るに必要に米粉の量を明らかにする。
【0021】
上記小麦粉と米粉(気流粉砕(例えばジェットミル)による方法)のそれぞれ30gに対して、牛脂と豚脂を重量比で50対50で混合した混合油脂30g、水340gの計400gを加熱混合して得られた液状物の粘度を、60℃近傍〜85℃近傍の範囲内で測定時の温度を変えて数回粘度を測定した。測定には回転式粘度計(ビスコテスター)を使用し、測定開始から30秒後の安定時の粘度を測定した。測定結果を表1及び図1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1の強力粉、薄力粉、米粉を同量で測定した結果、米粉は小麦粉よりも粘度が高くなるという結果が得られた。したがって、小麦粉と喫食時粘度と合わせるためには、米粉の量を減らす必要があるということがわかった。
【0024】
(実験例2)
小麦粉1に対して米粉0.8倍という条件で、実験例1と同様の実験を行い、結果を表2及び図2に示す
【0025】
【表2】

【0026】
各原料のグラフに近似曲線を引いて、喫食時である75℃の粘度の値を確認したところ、強力粉:2060mPa・s、薄力粉:2126mPa・s、米粉(0.8倍):2041mPa・sであり、これらの値は十分に誤差範囲内にあるといえるため、米粉は小麦粉と比べると固形分換算で0.8倍の量で喫食時(75℃)の粘度が小麦粉とほぼ同等になる。
【実施例1】
【0027】
牛脂8質量部と豚脂8質量部を混合した混合油脂16質量部を120℃で30分程度加熱して溶解させ、米粉(水分12質量%で200μmパス80%)16質量部を添加して40分間かけて120℃になるまで加熱混合した後、70℃まで冷却して米粉ルウ32質量部を得た。
得られた米粉ルウに、コーンスターチ7.5質量部、食塩10質量部、砂糖11質量部の粉体原料と、カレーパウダー5質量%、粉体調味原料(野菜エキス粉末、粉乳、酵母エキス粉末)9.5質量部、果実ペースト4質量部、混合油脂17質量部を加えて再び加熱攪拌し、45分間かけて105℃まで加熱後、冷却固化してカレールウを作成した。
【0028】
(比較例1)
比較例として、小麦粉で作成したカレールウを示す。
牛脂10質量部と豚脂10質量部を混合した混合油脂20質量部を120℃で30分程度加熱して溶解させ、小麦粉(水分4質量%)20質量部を添加して40分間かけて120℃になるまで加熱混合した後、70℃まで冷却して小麦粉ルウ40質量部を得た。小麦粉の量は、喫食時の粘度を合わせるために、米粉の1.25倍になるように設定している。
得られた小麦粉ルウに、コーンスターチ7.5質量部、食塩10質量部、砂糖11質量部の粉体原料と、カレーパウダー5質量部、粉体調味原料(野菜エキス粉末、粉乳、酵母エキス粉末)9.5質量部、果実ペースト4質量部、混合油脂13質量部を加えて再び加熱攪拌し、45分間かけて105℃まで加熱後、冷却固化してカレールウを作成した。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
(評価方法)
肉250g、玉ねぎ400g、じゃがいも450g、人参200g、サラダ油大さじ2と水850ml、それぞれのカレールウ(実施例1は120g、比較例1は125g)を用いてカレーを作成し、官能評価を行った。その結果、実施例1の米粉使用品は、後半の味の濃厚さは小麦粉品に劣るが、その分味の後切れが良くすっきりとしている。後半がすっきりしていることから風味やスパイスの香り立ちの感じ方は実施例1のカレーの方が比較例1のカレーよりも良いと言える。
次に、上記カレールウをお湯で溶かして、分光式色差計にてルウの色調を測定し、結果を表5に示す。
【0032】
【表5】

【0033】
上記評価方法にて、米粉使用カレールウと小麦粉使用カレールウの評価を行った。米粉を使用したルウのほうが、味の後半はすっきりしていて、スパイスの香り立ちに優れていた。
また米粉を使用したルウは、L値(明るさ)が小さく、着色原料(カラメル)の色が反映されているルウができており、黒っぽさが増していた。
【実施例2】
【0034】
牛脂8質量部と豚脂8質量部を混合した混合油脂16質量部を120℃で30分程度加熱して溶解させ、米粉(水分8質量%で200μmパス85%)16質量部を添加して40分間かけて120℃になるまで加熱混合した後、70℃まで冷却して米粉ルウ32質量部を得た。
得られた米粉ルウに、コーンスターチ7.5質量部、食塩10質量部、砂糖11質量部の粉体原料と、カレーパウダー5質量%、粉体調味原料(野菜エキス粉末、粉乳、酵母エキス粉末)9.5質量部、果実ペースト4質量部、混合油脂17質量部を加えて再び加熱攪拌し、45分間かけて105℃まで加熱後、冷却固化してカレールウを作成した。
【0035】
(比較例2)
牛脂8質量部と豚脂8質量部を混合した混合油脂16質量部を120℃で30分程度加熱して溶解させ、米粉(水分8質量%で200μmパス85%)16質量部を添加して40分間かけて120℃になるまで加熱混合した後、70℃まで冷却して米粉ルウ32質量部を得た。
得られた米粉ルウに、食塩10質量部、砂糖11質量部の粉体原料と、カレーパウダー5質量%、粉体調味原料(野菜エキス粉末、粉乳、酵母エキス粉末)9.5質量部、果実ペースト4質量部、混合油脂17質量部を加えて再び加熱攪拌し、45分間かけて105℃まで加熱後、冷却固化してカレールウを作成した。
【0036】
肉250g、玉ねぎ400g、じゃがいも450g、人参200g、サラダ油大さじ2と水850ml、それぞれのカレールウ(実施例2は120g、比較例2は111g)を用いてカレーを作成し、官能評価を行ったところ、コーンスターチを使用した実施例2の方が、より口の中に与える粘度、舌触り、口どけの面で優れていることが分かった。コーンスターチを使用しない比較例2と比べて舌の上により残る感覚が強く、滑らかさの面で優れているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉と油脂からなる米粉ルウを含み、更にコーンスターチを含んでなる、カレールウ。
【請求項2】
前記米粉が、生米粒の粉砕物である、請求項1記載のカレールウ。
【請求項3】
前記米粉中、200μmパスの米粒粉砕物が80%以上含まれてなる、請求項1又は2記載のカレールウ。
【請求項4】
カレールウにおける米粉の含有量が3〜15質量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載のカレールウ。
【請求項5】
カレールウにおけるコーンスターチの含有量が6〜15質量%である、請求項4項記載のカレールウ。

【図1】
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【図2】
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