説明

カロチノイドを高濃度で生産する微生物及びそれを使用したカロチノイド生産方法

【課題】パラコッカスRF1(Paracoccus sp.RF1)菌株及び該菌株を使用したカロチノイド生産方法を提供する。
【解決手段】パラコッカス(Paracoccus sp.MBIC01143)菌株への放射線の照射を通じて得られた変異株パラコッカスRF1、及び前記変異株を使用したアスタキサンチンを含むカロチノイドを母菌株より7倍以上の高効率で生産する方法を提供する。本発明によるアスタキサンチンを含むカロチノイドの大量生産技術は、化粧品、食品及び飼料など多様な産業に有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラコッカスRF1(Paracoccus sp.RF1)菌株及び該菌株を使用したカロチノイド(carotenoid)の生産方法に関するもので、より詳細にはパラコッカス(Paracoccus sp.MBIC01143)菌株への放射線の照射を通じて得られた変異株パラコッカスRF1及び該変異株を使用したアスタキサンチン(astaxanthin)を含むカロチノイドの高効率生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カロチノイドは、抗酸化活性を有しているC40イソプレノイド化合物(isoprenoid compound)として自然界に広く分布している一群の色素を総称するもので、現在まで知られたカロチノイドは、6百余種に至る。これらは、それぞれ異なる形態で存在し、分子構造によって黄色、赤色、朱色、橙色など多くの色で存在する。その例としてβ−カロテン(β−carotene;ニンジンの橙色色素)、リコピン(lycopene;トマトの赤色色素)、フコキサンチン(fucoxanthin;海藻の黄褐色または茶色色素)などがある。カロチノイドは、人体内でビタミンAの前駆体としてはたらき、酸化防止効果と有害酸素消去作用、癌細胞増殖抑制作用及び発癌抑制作用が強く、循環器疾患、癌及び成人病などを予防する効能を有していることが知られている。最近には、カロチノイドが直接的な紫外線による身体の免疫機能を高めて、紫外線露出から肌の損傷を減らしたりメラニン生成を抑制したりすることが解明されて、ヨーロッパやアメリカで美容素材として脚光を浴び始めた。現在カロチノイドは、健康食品素材(栄養補助剤)、人間を対象にした薬学製剤と食品着色剤または動物用飼料の色素などに使用されている。
【0003】
アスタキサンチンは、主にエビ、マダイ(red seabream)、サケ及びロブスターなどの海洋動物組織に存在することが知られている(非特許文献1〜3)。アスタキサンチンは、正常な好気的代謝過程中に活性酸素が細胞内DNA、タンパク質、脂質などを損傷させると共に細胞と組織の老化及び発癌を誘発する反応を抑制するだけでなく、ヒドロキシラジカルまたはペルオキシラジカル(hydroxy or peroxy radical)の生成を抑制する作用をもつ(非特許文献4、5)。また、免疫調節活性(immune modulatory activity)及び心保護効果(cardioprotective effect)を有することが知られている(非特許文献6)。特に、アスタキサンチンの抗酸化力は、他のカロチノイドの10倍以上で、α−トコフェロール(tocopherol)の100倍以上であることが知られている。現在まで、アスタキサンチンの毒性に対しては、報告されたことがない。したがって、アスタキサンチンは、神経疾患、癌、免疫疾患及び心臓血管疾患(cardiovascular diseases)などを含む多様な疾患の治療及び予防に使用されていて、それに対する研究が続けられている(非特許文献7〜9)。また、アスタキサンチンは、産業的に色素増進物質に使用されていて、韓国では「パフィア色素」という名称で食品添加物に登録されている。このような理由から、アスタキサンチンの需要は、毎年15%以上の消費成長を見せており、それによってアスタキサンチンの重要性が台頭してきている。
【0004】
最近、スイスのホフマン・ラ・ロシュ(F.Hoffmann−La Roche)社でアスタキサンチンの化学合成法が開発されたが、化学合成で製造されたアスタキサンチンは、天然アスタキサンチンに比べて低い生体吸収率を示し、食品添加剤としての安全性が問題になっていて、ヨーロッパの一部国家でのみ使用が許可されている状態である。したがって、天然アスタキサンチンの合成法に関心が集中していて、アスタキサンチンを生産する微生物を使用したアスタキサンチンの製造に商業的関心が集まっている。現在、アスタキサンチンを生産することが知られた微生物には、酵母であるファフィア・ロドジマ(Phaffia rhodozyma)、緑色藻類であるヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、グラム陽性菌ブレビバクテリウム103(Brevibacterium 103)、グラム陰性菌アグロバクテリウム・アウランチアクム(Agrobacterium aurantiacum)、パラコッカス・マルクシイ(Paracoccus marcusii)及びパラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)などが知られている。しかし、このような微生物は、高い含量でアスタキサンチンを含むカロチノイドを生産することができないので、高濃度でアスタキサンチンを含むカロチノイドを生産することができる菌株の開発が求められている。
【0005】
以上のことに鑑みて、本発明者はパラコッカス属の微生物に放射線の照射を通じて得られた突然変異株の中から、高い含量でアスタキサンチンを含むカロチノイドを生産することができる菌株を選別することによって、本発明を完成した。
【0006】
【非特許文献1】Fujita等,Nippon Suisan Gakkaishi.,1983年,第49巻,1855−1869頁
【非特許文献2】Johnson,E.A.,Crit.Rev.Biotechnol.,1991年,第11巻,297−326頁
【非特許文献3】Nelis等,J.Appl.Bacteriol.,1991年,第70巻,181−191頁
【非特許文献4】Palozza等,Arch.Biochem.Biophys.,1992年,第297巻,291−295頁
【非特許文献5】Shimidzu等,Fish Sci.,1996年,第62巻,134−137頁
【非特許文献6】Jyonuchi等,Nutr.Cancer,1993年,第19巻,269−280頁
【非特許文献7】Beal,H.F.,The Neuroscientist,1991年,第3巻,21−27頁
【非特許文献8】Chew等,Anticancer Res.,1999年,第19巻,1849−1853頁
【非特許文献9】Murillo E.,Arch.Latinoam.Nutr.,1992年,第42巻,409−413頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、放射線の照射を通じて得られた、高い含量でアスタキサンチンを含むカロチノイドを生産することができるパラコッカスFR1菌株、及びそれを使用したカロチノイド生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、寄託番号KCTC11222BPで寄託されたカロチノイドの高効率生産が可能なパラコッカス属変異菌株を提供する。
【0009】
また、本発明は、
1)パラコッカス属菌株に放射線を照射して突然変異させる工程、及び
2)工程1)の突然変異菌株を培地で培養してカロチノイドの含量が増加した変異株を選別する工程
とを含む、カロチノイドを高効率で生産するパラコッカス属変異菌株を製造する方法を提供する。
【0010】
同時に、本発明は、
1)寄託番号KCTC11222BPで寄託されたパラコッカス属変異菌株を培地で培養する工程、
2)工程1)の培養液を遠心分離して上澄み液を得る工程、及び
3)工程2)の上澄み液をカラムクロマトグラフィーに供してカロチノイドを分離する工程
とを含む、アスタキサンチンを含むカロチノイドを高効率で生産する方法を提供する。
【0011】
本発明(1)は、寄託番号KCTC11222BPで寄託されたカロチノイドの高効率生産が可能なパラコッカス属(Paracoccus sp.)変異菌株である。
本発明(2)は、パラコッカス属母菌株と比較してカロチノイドを5〜10倍の高効率で生産することを特徴とする、本発明(1)の菌株である。
本発明(3)は、
1)パラコッカス属菌株に放射線を照射して突然変異させる工程、及び
2)工程1)の突然変異菌株を培地で培養して、カロチノイドの含量が増加した変異株を選別する工程
を含む、カロチノイドを高効率で生産するパラコッカス属変異菌株を製造する方法である。
本発明(4)は、工程1)のパラコッカス属菌株が、パラコッカスMBICO1143であることを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(5)は、工程1)の放射線が、ガンマ線、電子線及びイオンビームからなる群から選択されたいずれかひとつであることを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(6)は、前記放射線が、ガンマ線であることを特徴とする、本発明(5)の方法である。
本発明(7)は、前記ガンマ線が、コバルト(Co)−60、クリプトン(Kr)−85、ストロンチウム(Sr)−90及びセシウム(Cs)−137からなる群から選択されたいずれか一つの放射性アイソトープから放出されることを特徴とする、本発明(6)の方法である。
本発明(8)は、前記ガンマ線が、コバルト(Co)−60放射性アイソトープから放出されることを特徴とする、本発明(7)の方法である。
本発明(9)は、工程1)の放射線が、時間当り30〜100Gyの線量で照射されることを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(10)は、工程1)の放射線が、総吸収線量が100〜500Gyになるように照射されることを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(11)は、工程2)の培地が、MB(Marine broth)、DMB(diluted marine broth)、NB(nutrient broth)、DNB(diluted nutrient broth)、TSB(tryptic soy broth)、ZB(Zobell’s broth)、DZB(dilute zobell broth)またはこれらの改変培地であることを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(12)は、工程2)の培養が、20〜30℃の温度で培養することを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(13)は、工程2)の培養が、3〜5日間培養することを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(14)は、工程2)の選別が、パラコッカス属母菌株のカロチノイドの含量に比べて5〜10倍増加したものを選別することを特徴とする、本発明(3)の方法である。
本発明(15)は、
1)本発明(1)の菌株を培地で培養する工程、
2)工程1)の培養液を遠心分離して上澄み液を得る工程、及び
3)工程2)の上澄み液をカラムクロマトグラフィーに供してカロチノイドを分離する工程
を含む、アスタキサンチンを含むカロチノイドを高効率で生産する方法である。
本発明(16)は、工程1)の培地が、MB(Marine broth)、DMB(diluted marine broth)、NB(nutrient broth)、DNB(diluted nutrient broth)、TSB(tryptic soy broth)、ZB(Zobell’s broth)、DZB(dilute zobell broth)またはこれらの改変培地であることを特徴とする、本発明(15)の方法である。
本発明(17)は、高効率が、パラコッカス属母菌株のカロチノイド生産量に比べて5〜10倍であることを特徴とする、本発明(15)の方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパラコッカス(MBIC01143)菌株への放射線照射を通じて得た変異株パラコッカスRF1は、アスタキサンチンを含むカロチノイドを母菌株より7倍以上高効率で生産することができることが確認され、アスタキサンチンは、様々な重要な生物学的機能を有し、化粧品、食品及び飼料産業などに有用に使用できる物質であることが知られているので、本発明の変異株及びそれを使用したアスタキサンチンの大量生産技術は、化粧品、食品または飼料産業に有用に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0014】
本発明は、寄託番号KCTC11222BPで寄託されたカロチノイドの高効率生産が可能なパラコッカス属変異菌株を提供する。
【0015】
前記変異菌株は、下記の工程を含む製造方法によって製造される:
1)パラコッカス属菌株に放射線を照射して突然変異させる工程、及び
2)工程1)の突然変異菌株を培地で培養してカロチノイドの含量が増加した変異株を選別する工程。
前記の方法において、工程1)のパラコッカス属菌株は、パラコッカスMBICO1143であることが好ましいが、それに限定されない。放射線は、ガンマ線、電子線またはイオンビームなどすべて使用することができ、ガンマ線を使用することが好ましい。前記ガンマ線は、コバルト(Co)−60、クリプトン(Kr)−85、ストロンチウム(Sr)−90及びセシウム(Cs)−137からなる群から選択されたいずれか一つの放射性アイソトープから放出されるガンマ線を使用して照射することができ、コバルト(Co)−60放射性アイソトープから放出されることがより好ましいが、これに限定されない。前記ガンマ線の照射線量は、時間当り30〜100Gyであることが好ましく、総吸収線量は100〜500Gyであることが好ましいが、これに限定されない。放射線の照射は、微生物の染色体構造を破壊して、染色体構造を再結合させることによって発生する突然変異を惹起させる。
【0016】
本発明では、パラコッカス(MBIC01143)母菌株が初期対数増殖期(early log phase)まで育った以後に、滅菌水で洗浄しかつ生理食塩水に懸濁した後、コバルト(Co)−60ガンマ線照射施設を使用して室温で時間当り50Gyの線量率で100Gyの総吸収線量を得るように照射した。
【0017】
前記の方法において、工程2)の培養は、MB(Marine broth)、DMB(diluted marine broth)、NB(nutrient broth)、DNB(diluted nutrient broth)、TSB(tryptic soy broth)、ZB(Zobell’s broth)、DZB(dilute zobell broth)または、これらの改変培地を使用することが好ましく、MB(Marine broth)培地を使用することがより好ましいが、これに限定されない。前記培養は、培養温度が20〜30℃であることが好ましく、25℃であることがさらに好ましいが、これに限定されない。前記培養は、3〜5日間培養することが好ましいが、これに限定されない。
【0018】
本発明では、放射線の照射以後の微生物懸濁液を、滅菌水で菌体の濃度が一平板培地当たり200個程度になるように希釈して、MB(Marine Broth)培地に塗抹した後、25℃で3〜5日間培養した。
【0019】
前記の方法において、工程2)の選別は、パラコッカス属母菌株のカロチノイド含量に比べて5〜10倍増加したものを選別することが好ましく、7〜8倍増加したものを選別することがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0020】
本発明では、野生型パラコッカス及び変異株パラコッカスの細胞成長速度及び最終細胞濃度を比較するため、前記それぞれの菌株の培地に分光光度計を使用して吸光度を測定した。その結果、野生型パラコッカスは2時間後、変異株パラコッカスRF1は5時間後に、それぞれ対数期(exponential phase)に到逹したが、対数増殖期での比増殖速度(specific growth rate)は、野生株と変異株で類似の値を示し、最終細胞濃度も類似していた。
【0021】
本発明では、野生型パラコッカス及び変異株パラコッカスのカロチノイド濃度を比較するため、前記微生物をそれぞれ遠心分離後、洗浄して細胞を破砕した後、培養して遠心分離し、上澄み液に抽出されたカロチノイド含量に対して、分光光度計を使用して吸光度を測定した。その結果、本発明で開発した変異株パラコッカスRF1のカロチノイド含量が、野生型(wild−type)の含量に比べて約7倍増加した。
【0022】
本発明者等は、既存のパラコッカス菌株よりカロチノイド含量が顕著に高い変異株を「パラコッカスRF1(Paracoccus sp.RF1)」と命名して、前記菌株を2007年10月22日付けで国際寄託機関である韓国生命工学研究院内遺伝子銀行に寄託した(寄託番号:KCTC11222BP)。
【0023】
また、本発明は、
1)寄託番号KCTC11222BPで寄託されたパラコッカス属変異菌株を培地で培養する工程、
2)工程1)の培養液を遠心分離して上澄み液を得る工程、及び
3)工程2)の上澄み液をカラムクロマトグラフィーに供してカロチノイドを分離する工程
とを含む、アスタキサンチンを含むカロチノイドを高効率的に生産する方法を提供する。
【0024】
前記方法で、工程1)の培養は、MB(Marine broth)、DMB(diluted marine broth)、NB(nutrient broth)、DNB(diluted nutrient broth)、TSB(tryptic soy broth)、ZB(Zobell’s broth)、DZB(dilute zobell broth)またはこれらの改変培地を使用することが好ましく、MB(Marine broth)培地を使用することがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0025】
前記方法で、工程3)のカラムクロマトグラフィーでは、シリカゲル、セファデックス、RP−18、ポリアミド、トヨパール及びXAD樹脂からなる群から選択された充填剤を使用したカラムクロマトグラフィーを実施して精製することができる。カラムクロマトグラフィーは、必要によって適切な充填剤を選択して数回実施することができる。前記カラムクロマトグラフィーを使用したカロチノイド分離方法は、文献(Kang、M.−J等.,Journal of Microbiology and Biotechnology,2005年,第15(4)卷、880−886頁)を参考にした。
【0026】
前記方法で、高効率とは、パラコッカス属母菌株に比較して5〜10倍を生産することができることを特徴とする。
【0027】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
【0028】
但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであり、本発明の内容は実施例によって限定されない。
【実施例】
【0029】
<実施例1>放射線の照射によるパラコッカス菌株の突然変異株製造
本発明者等は、パラコッカスMBIC01143(Paracoccus sp.MBIC01143)微生物(海洋バイオテクノロジー研究所カルチャーコレクション(MBIC)、日本国岩手県釜石市平田3−75−1)が、初期対数増殖期(early log phase)まで育った以後に、前記微生物を滅菌水で2回洗浄した後、0.95%生理食塩水に600nmでの吸光度が1になるように懸濁した。ガンマ線の照射は、韓国原子力研究院放射線科研究所内の線源3000Ci、Co−60ガンマ線照射施設を使用して、室温(12±1℃)で時間当り50Gyの線量率で照射した。微生物懸濁液のガンマ線の照射線量は、総吸収線量100Gyが得られるようにし、吸収線量の確認はアラニン放射線量計(alanine dosimeter)を使用した。総吸収線量の誤差は、±5%であった。
【0030】
放射線の照射以後の微生物懸濁液を滅菌水で菌体の濃度が一平板培地当たり200個程度になるように希釈して、MB(Marine Broth agar)(Difco 0979)に塗抹した後、25℃で3〜5日間培養後、突然変異株を分離した。前記方法によって得られた変異株の中で、野生株より特徴的に色が濃い変異株を選別して、MB(Marine Broth)液体培地に振盪培養してカロチノイドの含量を測定した。
【0031】
前記突然変異株の中で既存のパラコッカス菌株よりカロチノイド含量が顕著に高い変異株を「パラコッカスRF1(Paracoccus sp.RF1)」と命名して、前記菌株を、2007年10月22日付けで国際寄託機関である韓国生命工学研究院内遺伝子銀行に寄託した(寄託番号:KCTC11222BP)。
【0032】
<実施例2>細胞増殖速度測定
本発明者等は、変異株パラコッカスRF1及び野生株パラコッカスの成長速度を測定して比較した。野生株と変異株をそれぞれ20mlのMB(Marine Broth)に接種して振盪インキュベーター(shaking incubator)で25℃、150rpmで培養した。Ultrospec 2100 pro UV/Visible分光光度計を使用して、600nmで吸光度を測定することによってMBでの各菌株の細胞増殖を測定した。前記測定の結果、図1に見られるように野生型パラコッカスは、2時間後に対数期(exponential phase)に到逹する一方、変異株パラコッカスRF1は、5時間後に対数期に到逹した。しかし、対数増殖期での比増殖速度(Specific growth rate)は、野生株と変異株で類似の値を示し、最終細胞濃度も類似していた。
【0033】
<実施例3>カロチノイド含量測定
本発明者等は、カロチノイドの濃度分析のために微生物を遠心分離(3000rpm、10分)後、洗浄して高純度アセトン1mlを入れてホモゲナイザー(homogenizer)で細胞を破砕し、20分間培養した後、遠心分離して上澄み液に抽出されたカロチノイド含量を測定した。前記抽出物に対してUltrospec 2100 pro UV/Visible分光光度計を使用して、474nmで吸光度を測定した。その結果、表1にみられるように変異株のカロチノイド含量は、野生株に比べて約7倍以上増加した。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のパラコッカス(Paracoccus sp.MBIC01143)菌株への放射線の照射を通じて得た変異株パラコッカスRF1は、様々な重要な生物学的機能を有し、化粧品、食品または飼料産業などに有用に使用され得る物質として知られたアスタキサンチンを含むカロチノイドを高効率で生産することができるので、本発明の変異株及びこれを使用したアスタキサンチンの大量生産技術は、化粧品、食品または飼料産業に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の寄託番号KCTC11222BPで寄託されたパラコッカス属変異菌株及び母菌株であるパラコッカス(Paracoccus sp.MBIC01143)菌株の成長曲線を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCTC11222BPで寄託されたカロチノイドの高効率生産が可能なパラコッカス属(Paracoccus sp.)変異菌株。
【請求項2】
パラコッカス属母菌株と比較してカロチノイドを5〜10倍の高効率で生産することを特徴とする、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
1)パラコッカス属菌株に放射線を照射して突然変異させる工程、及び
2)工程1)の突然変異菌株を培地で培養して、カロチノイドの含量が増加した変異株を選別する工程
を含む、カロチノイドを高効率で生産するパラコッカス属変異菌株を製造する方法。
【請求項4】
工程1)のパラコッカス属菌株が、パラコッカスMBICO1143であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程1)の放射線が、ガンマ線、電子線及びイオンビームからなる群から選択されたいずれかひとつであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記放射線が、ガンマ線であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ガンマ線が、コバルト(Co)−60、クリプトン(Kr)−85、ストロンチウム(Sr)−90及びセシウム(Cs)−137からなる群から選択されたいずれか一つの放射性アイソトープから放出されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガンマ線が、コバルト(Co)−60放射性アイソトープから放出されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程1)の放射線が、時間当り30〜100Gyの線量で照射されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
工程1)の放射線が、総吸収線量が100〜500Gyになるように照射されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
工程2)の培地が、MB(Marine broth)、DMB(diluted marine broth)、NB(nutrient broth)、DNB(diluted nutrient broth)、TSB(tryptic soy broth)、ZB(Zobell’s broth)、DZB(dilute zobell broth)またはこれらの改変培地であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
工程2)の培養が、20〜30℃の温度で培養することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
工程2)の培養が、3〜5日間培養することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
工程2)の選別が、パラコッカス属母菌株のカロチノイドの含量に比べて5〜10倍増加したものを選別することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
1)請求項1に記載の菌株を培地で培養する工程、
2)工程1)の培養液を遠心分離して上澄み液を得る工程、及び
3)工程2)の上澄み液をカラムクロマトグラフィーに供してカロチノイドを分離する工程
を含む、アスタキサンチンを含むカロチノイドを高効率で生産する方法。
【請求項16】
工程1)の培地が、MB(Marine broth)、DMB(diluted marine broth)、NB(nutrient broth)、DNB(diluted nutrient broth)、TSB(tryptic soy broth)、ZB(Zobell’s broth)、DZB(dilute zobell broth)またはこれらの改変培地であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高効率が、パラコッカス属母菌株のカロチノイド生産量に比べて5〜10倍であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−142275(P2009−142275A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306983(P2008−306983)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(597060645)コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート (22)
【Fターム(参考)】