説明

カーエアコン用ホース口金具及びその製造方法

【課題】カーエアコン用ホース口金具のホースニップルに転造加工して周溝を形成する際、前記ホースニップルの強度低下や折損を生じることなく、軽量なカーエアコン用ホース口金具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】パイプ1の一端側1aに接続体2が形成され、他端側1bに有底円筒状のソケット3が取付けられると共に、このソケット3の内側に、ホース抜止め用周溝4aを有するホースニップル4が形成され、前記ホースニップル4にホースを嵌合し、前記ソケット3を加締めて接続するためのカーエアコン用ホース口金具において、前記ホースニップル4が、前記パイプ1の他端側1bに補強パイプ5を嵌入すると共に、この補強パイプ5の内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプ5と前記パイプ1の他端側1bとを廻り止め接合して形成される一方、前記ホース抜止め用周溝4aが、この廻り止め接合されたホースニップル4外周に転造成形されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコン用ホース口金具及びその製造方法に係り、より詳しくは、前記ホース口金具のホースニップルに転造加工して周溝を形成したカーエアコン用ホース口金具及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カーエアコン用冷媒回路の配管に使用されるフレキシブルホースを、カーエアコン用熱交換器等の相手側機器に接続する方法としては、ホース口金具の一端側の接続部を介して相手側機器に接続する一方、前記ホース端にホース口金具の他端側のホースニップルを挿入した後、外周側のソケットを加締めて一体的に連結するカーエアコン用ホース口金具が一般的に採用されている。また、この様なカーエアコン用ホース口金具としては、種々の材質及び形態のものがあるが、軽量で加工性に優れるアルミニウム合金からなり、かつOリングを装着して軸シール可能なニップルにフランジを固着して、そのフランジを介して相手側機器に締結するフランジ付ニップルが広く採用されている。
【0003】
従来例に係るこの様なカーエアコン用ホース口金具の構造を、添付図6を参照しながら説明する。図6は従来例に係るフランジ付軸シール型ニップルの構成例を示す図であって、要部を切り欠いて示す正面図である。
【0004】
このフランジ軸シール型ニップルでは、パイプ31の先端部31aを相手部材30の連結用孔30aに嵌合する外径に拡径されると共に、その拡径先端部31aの根本部にはバルジ部32がバルジ加工により、中間部外周にはOリング溝33が転造加工によって形成される一方、パイプ31の後端部31bはホースニップルとされ、ソケット38が取付けられている。パイプ31の後端部31bの外周には、抜け防止を目的に複数の係止溝37が設けられ、前記後端部31bに差し込まれた配管ホース39が、ソケット8の外周から加締められて接続される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
そして、パイプ31の後端部(ホースニップル)31bに形成される前記係止溝37は、Oリング溝33と同様、転造加工による形成が可能である(例えば、特許文献2,3参照。)。しかしながら、転造加工は被加工母材表面にロールを押し当てて、母材を組成流動させて加工するため、切削加工ほどではないが、加工の進行と共に加工部の肉厚は薄くなる傾向にある。そのため、パイプ31の後端部(ホースニップル)31bの肉厚が薄い場合は、加工後の強度が低下したり、前記後端部31bに差し込まれた配管ホース39が、ソケット38の外周から加締められた際に折損に至る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2675535号公報
【特許文献2】特許第3865945号公報
【特許文献3】特開平11−13970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、カーエアコン用ホース口金具のホースニップルに転造加工して周溝を形成する際、前記ホースニップルの強度低下や折損を生じることなく、軽量なカーエアコン用ホース口金具及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るカーエアコン用ホース口金具が採用した手段は、パイプの一端側に他の機器と接続するための接続体が形成され、他端側に有底円筒状のソケットが取付けられると共に、このソケットの内側に、外周にホース抜止め用周溝を有するホースニップルが形成され、前記ホースニップル外周にホースを嵌合し、前記ソケットの外周を加締めて接続するためのカーエアコン用ホース口金具において、前記ホースニップルが、前記パイプの他端側の内側に補強パイプを嵌入すると共に、この補強パイプの内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプと前記パイプの他端側とを廻り止め接合して形成される一方、前記ホース抜止め用周溝が、この廻り止め接合されたホースニップル外周に転造成形されてなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に係るカーエアコン用ホース口金具が採用した手段は、請求項1に記載のカーエアコン用ホース口金具において、前記有底円筒状のソケットの有底部を前記パイプに取付けるためのソケット取付け用周溝が、廻り止め接合された前記ホースニップル外周に転造成形され、前記ソケットの有底部が、このソケット取付け用周溝に合わせて求心方向に加締められて前記ホースニップルに接合されてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係るカーエアコン用ホース口金具が採用した手段は、請求項1または2に記載されたカーエアコン用ホース口金具において、前記接続体が、前記パイプの一端側の先端部を他の機器の接続孔に嵌合する外径に拡管された拡管先端部と、この拡管先端部の根元部外周に形成されたバルジ部と、この拡管先端部の中間部外周に形成されたOリング溝と、このOリング溝に嵌装されたOリングと、前記バルジ部よりパイプ他端側に装着された袋ナットとを有してなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法が採用した手段は、パイプの一端側に他の機器と接続するための接続体を形成し、他端側に有底円筒状のソケットを取付けると共に、このソケットの内側に、外周にホース抜止め用周溝を有するホースニップルを形成し、前記ホースニップル外周にホースを嵌合し、前記ソケットの外周を加締めて接続するためのカーエアコン用ホース口金具の製造方法において、少なくとも、前記パイプの他端側の内側に補強パイプを嵌入する補強パイプ嵌入工程と、次いでこの補強パイプの内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプと前記パイプの他端側とを廻り止めのため接合する廻り止め接合工程と、その後、廻り止め接合した前記ホースニップルの外周に、前記ホース抜止め用周溝を転造成形するホース抜止め用周溝成形工程とを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法が採用した手段は、請求項4に記載されたカーエアコン用ホース口金具の製造方法において、前記廻り止め接合工程を、チューブエキスパンダーを用いて行なうことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項6に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法が採用した手段は、請求項4または5に記載されたカーエアコン用ホース口金具の製造方法において、少なくとも前記廻り止め接合工程の後に、前記有底円筒状のソケットの有底部を前記パイプに取付けるためのソケット取付け用周溝を、廻り止め接合した前記ホースニップルの外周に転造成形するソケット取付け用周溝成形工程と、前記ソケットの有底部位置をこのソケット取付け用周溝に合わせて求心方向に加締めてパイプ他端側に接合するソケット加締工程とを有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項7に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法が採用した手段は、請求項4乃至6の何れか一つの項に記載されたカーエアコン用ホース口金具の製造方法において、前記ホース抜止め用周溝成形工程と前記ソケット取付け用周溝成形工程とを、単一ダイスにより同時成形することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係るカーエアコン用ホース口金具によれば、ホースニップルが、パイプの他端側の内側に補強パイプを嵌入すると共に、この補強パイプの内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプと前記パイプの他端側とを廻り止め接合して形成される一方、ホース抜止め用周溝が、この廻り止め接合されたホースニップル外周に転造成形されてなるので、薄肉パイプによりカーエアコン用ホース口金具を作製したとしても、補強パイプによる補強と加締加工による強度アップが可能な上、母材の繊維組織を切断することもないため、強度の高いホースニップルを備えた軽量のカーエアコン用ホース口金具が得られる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係るカーエアコン用ホース口金具によれば、有底円筒状のソケットの有底部を前記パイプに取付けるためのソケット取付け用周溝が、廻り止め接合された前記ホースニップル外周に転造成形され、前記ソケットの有底部が、このソケット取付け用周溝に合わせて求心方向に加締められ前記ホースニップルに接合されてなるので、薄肉パイプを用いたカーエアコン用ホース口金具であっても、前記ソケット取付け用周溝の転造加工によって強度低下を招くことのないホースニップルを備えた軽量のカーエアコン用ホース口金具が得られる。
【0017】
更に、本発明の請求項3に係るカーエアコン用ホース口金具によれば、前記接続体が、前記パイプの一端側の先端部を他の機器の接続孔に嵌合する外径に拡管された拡管先端部と、この拡管先端部の根元部外周に形成されたバルジ部と、この拡管先端部の中間部外周に形成されたOリング溝と、このOリング溝に嵌装されたOリングと、前記バルジ部よりパイプ他端側に装着された袋ナットとを有してなるので、カーエアコン用ホースと他の機器との接続が、このホース口金具を介して冷媒を漏らすことなく確実に行なえる。
【0018】
一方、本発明の請求項4に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法によれば、少なくとも、パイプの他端側の内側に補強パイプを嵌入する補強パイプ嵌入工程と、次いでこの補強パイプの内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプと前記パイプの他端側とを廻り止めのため接合する廻り止め接合工程と、その後、廻り止め接合したホースニップルの外周に、ホース抜止め用周溝を転造成形するホース抜止め用周溝成形工程とを有するので、薄肉パイプによりカーエアコン用ホース口金具を作製したとしても、補強パイプによる補強と加締加工による強度アップが可能な上、母材の繊維組織を切断することもないため、強度の高いホースニップルを備えた軽量のカーエアコン用ホース口金具を簡便に作製可能である。
【0019】
また、本発明の請求項5に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法によれば、前記廻り止め接合工程をチューブエキスパンダーを用いて行なうので、特に大きな力を要することなく、人手作業により簡単に加工できる。
【0020】
更に、本発明の請求項6に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法によれば、少なくとも前記廻り止め接合工程の後に、前記有底円筒状のソケットの有底部を前記パイプに取付けるためのソケット取付け用周溝を、廻り止め接合した前記ホースニップルの外周に転造成形するソケット取付け用周溝成形工程と、前記ソケットの有底部位置をこのソケット取付け用周溝に合わせて求心方向に加締めてパイプ他端側に接合するソケット加締工程とを有するので、薄肉パイプを用いたカーエアコン用ホース口金具であっても、前記ソケット取付け用周溝の転造加工によって強度低下を招くことのないホースニップルを備えた軽量のカーエアコン用ホース口金具を簡便に製造できる。
【0021】
また更に、本発明の請求項7に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法によれば、前記ホース抜止め用周溝成形工程と前記ソケット取付け用周溝転造工程とを、単一ダイスにより同時成形するので、転造ダイスの単一化と工程の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るカーエアコン用ホース口金具であって、要部を切欠いて示す平面図である。
【図2】図1のパイプの一端側に形成された接続体を、ナットを省略して示す部分拡大図である。
【図3】図1のパイプの他端側に形成されたホースニップルを、ソケットを省略して示す部分拡大半断面図である。
【図4】図1のパイプの他端側に形成された他の態様例に係るホースニップルを、ソケットを省略して示す部分拡大半断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法を説明するための工程図である。
【図6】従来例に係るフランジ付軸シール型ニップルの構成例を示す図であって、要部を切り欠いて示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
先ず、本発明の実施の形態に係るカーエアコン用ホース口金具を、以下添付図1〜4を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係るカーエアコン用ホース口金具であって、要部を切欠いて示す平面図、図2は図1のパイプの一端側に形成された接続体をナットを省略して示す部分拡大図、図3は図1のパイプの他端側に形成されたホースニップルを、ソケットを省略して示す部分拡大半断面図、図4は図1のパイプの他端側に形成された他の態様例に係るホースニップルを、ソケットを省略して示す部分拡大半断面図である。
【0024】
本発明の実施の形態に係るカーエアコン用ホース口金具(以下、ホース口金具とも言う)は、管内が冷媒を流通させるための冷媒流路6aとされ、L字状に湾曲されたパイプ1の一端側1aに、熱交換器等の機器類の接続部に接続するための接続体2が形成されると共に、他端側1bに有底円筒状のソケット3が形成され、このソケット3の内側に、中心部に冷媒流路6bを有するホースニップル4が同心状に形成されている。そして、このホース口金具は、前記ホースニップル4の外周とソケット3の間に画成された環状の隙間空間3bに図示しないカーエアコン用ホースを嵌合して、前記ソケット3を外周から加締めて接合するために用いられる。
【0025】
更に、本発明の実施の形態に係るカーエアコン用ホース口金具において、パイプ一端側1aの接続体2及びパイプ他端側1bのソケット3、ホースニップル4を中心に以下詳細に説明する。
【0026】
先ず、前記接続体2は、パイプ1の一端側1aの先端部を、図示しない機器類の接続孔に嵌合する外径に拡管された拡管先端部1cと、この拡管先端部1cの根元部外周に形成されたバルジ部7と、この拡管先端部1cの中間部外周に形成されたOリング溝8と、このOリング溝に嵌装されたOリング8aと、バルジ部7よりパイプ他端側に装着された袋ナット9とを有している。そして、拡管されたこのパイプ1の拡管先端部1cを図示しない機器類の接続孔に嵌合し、袋ナット9の雌ねじを前記接続孔に形成された雄ねじに螺合して、このカーエアコン用ホース口金具の一端側1aを、熱交換器等の機器類に接続可能に構成されるのである。
【0027】
一方、パイプ1の他端側1bの内側には、このパイプ1の内径未満の外径と、パイプ1他端側の先端からソケット3の有底部3aの底面までの長さL1より多少長めの長さL2を有する補強パイプ5が嵌入されると共に、この補強パイプ5の内周面全長を遠心方向に加締め(拡張し)て、前記補強パイプ5外周とパイプ他端側1b内周とが、廻り止めのため接合されたホースニップル4が形成されている。ここで、加締後のホースニップル4の外径d2は、元のパイプ外径d1に対して多少拡径されても良いが、d2とd1の値は同一とするのが好ましい。
【0028】
そして、このホースニップル4の外周には、図3に示す如く溝幅w1の矩形状断面や台形状断面を有する複数本のホース抜止め用周溝4aが、転造成形して形成されている。これらのホース抜止め用周溝4aは、図4に示す如く溝幅w2の三角形状断面を有する複数本のホース抜止め用周溝4bが、転造成形して形成されたものでも良い。
【0029】
更に、前記ホースニップル4の外周には、図3,4に示す如くソケット3を取付けるためのソケット取付け用周溝4cが転造成形して形成され、ソケット3の有底部3aが、このソケット取付け用周溝4cに位置合わせされて求心方向に加締められて同心状に接合されている。そして、前記ホースニップル4とソケット3との間に画成された環状の隙間空間3bに、図示しないカーエアコン用ホースを嵌合して、前記ソケット3の外周を軸方向に複数個所加締めて、前記ホースがこのホース口金具に接続されるのである。
【0030】
前記ホースニップル4に形成された冷媒流路6bは、パイプ1内の冷媒流路6aと連通され、ソケット3に加締めて接合されるエアコン用ホースと接続体2に連結される機器類との間に、冷媒が流通される様に構成される。
【0031】
本実施の形態に係るエアコン用ホース口金具の材質は、例えば、パイプ1及び補強パイプ5としてアルミニウム合金パイプ材A3003−O等を、ソケット3としてA5052等を、袋ナット9としてA6061−T6等を夫々用いることができる。尚、本実施の形態においてパイプ1はL字状に湾曲されているが、湾曲される角度が直角でなくとも或いは湾曲されていなくても良い。また、本実施の形態に係るエアコン用ホース口金具のホースニップル4の先端部はソケット3の先端部から突出しているが、逆に、ホースニップル4の先端部がソケット3の先端部から凹んでいても、或いは同一平面上に位置していても構わないものである。
【0032】
以上、本発明の実施の形態に係るエアコン用ホース口金具によれば、ホースニップル4が、パイプ他端側1bの内側に補強パイプ5を嵌入すると共に、この補強パイプ5の内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプ5とパイプ他端側1bとを拡管、接合して形成される一方、ホース抜止め用周溝4aが、この拡管接合されたホースニップル4の外周に転造成形されてなるので、薄肉パイプによりカーエアコン用ホース口金具を作製したとしても、補強パイプ5による補強と加締加工による強度アップが可能な上、母材の繊維組織を切断することもないため、強度の高いホースニップル4を備えた軽量のカーエアコン用ホース口金具が得られる。
【0033】
次に、本発明の実施の形態に係るエアコン用ホース口金具の製造方法につき、添付図5の製造工程に従って、前図1〜4も参照しながら説明する。図5は本発明の実施の形態に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法を説明するための工程図である。
【0034】
先ず、パイプ材を所定長に切断し、切断した両端の面取りを行なってパイプ1を作製する(バイプ材切断、面取り工程11)。次いで、このパイプ1の他端側1bの内側に補強パイプ5を嵌入(補強パイプ嵌入工程12)した後、この補強パイプ5の内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプ5外周とパイプ1の他端側内周とを接合することにより、両者を廻り止めしたホースニップル4を形成する(廻り止め接合工程13)。
【0035】
前記廻り止め接合工程13は、チューブエキスパンダー(株式会社ESCO製)の6チャンネルヘッドを補強パイプ5の端面から差し込んで、遠心方向に加締めて廻り止め可能な様に接合するのが好ましい。チューブエキスパンダーによれば、特に大きな力を要することなく、人手作業により簡単に遠心方向の加締め加工ができるためである。
【0036】
その後、廻り止め接合したホースニップル4の外周に、ホース抜止め用周溝4aを転造成形(ホース抜止め用周溝成形工程14)し、次いで、ソケット3の有底部3aをパイプ1に取付けるためのソケット取付け用周溝4cを転造成形(ソケット取付け用周溝成形工程15)する。ここで、前記ホース抜止め用周溝成形工程14とソケット取付け用周溝成形工程15とを、単一ダイスにより同時成形するのが、転造ダイスの単一化と工程の短縮化を図り得る点から好ましい。
【0037】
次いで、パイプ一端側1aから袋ナット9を装着(袋ナット装着工程16)した後、パイプ1の一端側1aの先端部を、図示しない機器類の接続孔に嵌合する外径に拡管(拡管工程17)すると共に、その拡管先端部1cの根元部外周をバルジ加工してバルジ部7を形成(バルジ加工工程18)し、その拡管先端部1cの中間部外周にはOリング溝8を転造成形(Oリング溝転造成形工程19)する。
【0038】
そして、必要に応じてパイプ1を湾曲状に曲げる加工(パイプ曲げ加工工程20)を行った後、ソケット3の有底部3aをソケット取付け用周溝4cに位置合わせして、求心方向に加締めてパイプ他端側1bに接合(ソケット加締工程21)する。尚、必要なら、アルカリ性洗浄剤や超音波発振装置等を用いた洗浄工程を、何れかの工程間に挿入することができる。
【0039】
以上説明した通り、本発明に係るカーエアコン用ホース口金具の製造方法によれば、少なくとも、パイプの他端側の内側に補強パイプを嵌入する補強パイプ嵌入工程と、次いでこの補強パイプの内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプと前記パイプの他端側とを廻り止めのため接合する廻り止め接合工程と、その後、廻り止め接合したホースニップルの外周に、ホース抜止め用周溝を転造成形するホース抜止め用周溝成形工程とを有するので、薄肉パイプによりカーエアコン用ホース口金具を作製したとしても、補強パイプによる補強と加締加工による強度アップが可能な上、母材の繊維組織を切断することもないため、強度の高いホースニップルを備えた軽量のカーエアコン用ホース口金具を簡便に作製可能である。
【符号の説明】
【0040】
d1:元のパイプ外径,
d2:加締後のパイプ他端側(ホースニップル)外径,
L1:パイプ他端側の先端からソケットの有底部底面までの長さ,
L2:補強パイプの長さ,
w1,w2:溝幅,
1:パイプ, 1a:(パイプ)一端側, 1b:(パイプ)他端側,
1c:拡管先端部,
2:接続体,
3:ソケット, 3a:有底部, 3b:隙間空間,
4:ホースニップル,
4a,4b:ホース抜止め用周溝,
4c:ソケット取付け用周溝,
5:補強パイプ,
6a,6b:冷媒流路,
7:バルジ部,
8:Oリング溝, 8a:Oリング,
9:袋ナット,
11:パイプ材切断、面取り工程, 12:補強パイプ嵌入工程,
13:廻り止め接合工程, 14:ホース抜止め用周溝転造成形工程,
15:ソケット取付け用周溝転造成形工程, 16:袋ナット装着工程,
17:拡管工程, 18:バルジ加工工程,
19:Oリング溝転造成形工程, 20:パイプ曲げ加工工程,
21:ソケット加締め工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの一端側に他の機器と接続するための接続体が形成され、
他端側に有底円筒状のソケットが取付けられると共に、このソケットの内側に、外周にホース抜止め用周溝を有するホースニップルが形成され、
前記ホースニップル外周にホースを嵌合し、前記ソケットの外周を加締めて接続するためのカーエアコン用ホース口金具において、
前記ホースニップルが、前記パイプの他端側の内側に補強パイプを嵌入すると共に、
この補強パイプの内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプと前記パイプの他端側とを廻り止め接合して形成される一方、
前記ホース抜止め用周溝が、この廻り止め接合されたホースニップル外周に転造成形されてなることを特徴とするカーエアコン用ホース口金具。
【請求項2】
前記有底円筒状のソケットの有底部を前記パイプに取付けるためのソケット取付け用周溝が、廻り止め接合された前記ホースニップル外周に転造成形され、前記ソケットの有底部が、このソケット取付け用周溝に合わせて求心方向に加締められて前記ホースニップルに接合されてなることを特徴とする請求項1に記載されたカーエアコン用ホース口金具。
【請求項3】
前記接続体が、前記パイプの一端側の先端部を他の機器の接続孔に嵌合する外径に拡管された拡管先端部と、この拡管先端部の根元部外周に形成されたバルジ部と、この拡管先端部の中間部外周に形成されたOリング溝と、このOリング溝に嵌装されたOリングと、 前記バルジ部よりパイプ他端側に装着された袋ナットとを有してなることを特徴とする請求項1または2に記載されたカーエアコン用ホース口金具。
【請求項4】
パイプの一端側に他の機器と接続するための接続体を形成し、他端側に有底円筒状のソケットを取付けると共に、このソケットの内側に、外周にホース抜止め用周溝を有するホースニップルを形成し、
前記ホースニップル外周にホースを嵌合し、前記ソケットの外周を加締めて接続するためのカーエアコン用ホース口金具の製造方法において、少なくとも、
前記パイプの他端側の内側に補強パイプを嵌入する補強パイプ嵌入工程と、
次いでこの補強パイプの内周面を遠心方向に加締めて、この補強パイプと前記パイプの他端側とを廻り止めのため接合する廻り止め接合工程と、
その後、廻り止め接合した前記ホースニップルの外周に、前記ホース抜止め用周溝を転造成形するホース抜止め用周溝成形工程とを有することを特徴とするカーエアコン用ホース口金具の製造方法。
【請求項5】
前記廻り止め接合工程を、チューブエキスパンダーを用いて行なうことを特徴とする請求項4に記載されたカーエアコン用ホース口金具の製造方法。
【請求項6】
少なくとも前記廻り止め接合工程の後に、前記有底円筒状のソケットの有底部を前記パイプに取付けるためのソケット取付け用周溝を、廻り止め接合した前記ホースニップルの外周に転造成形するソケット取付け用周溝成形工程と、前記ソケットの有底部位置をこのソケット取付け用周溝に合わせて求心方向に加締めてパイプ他端側に接合するソケット加締工程とを有することを特徴とする請求項4または5に記載されたカーエアコン用ホース口金具の製造方法。
【請求項7】
前記ホース抜止め用周溝成形工程と前記ソケット取付け用周溝成形工程とを、単一ダイスにより同時成形することを特徴とする請求項4乃至6の何れか一つの項に記載されたカーエアコン用ホース口金具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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