説明

カーテン仕上げ装置

【課題】装置費の高騰を回避しつつ、ヒダの形状を安定させることが可能なカーテン仕上げ装置を提供する。
【解決手段】カーテンKにヒダを成形するカーテン仕上げ装置1であって、所定の間隔でカーテンKの幅方向に配列され、各々が、前方に突出するとともに、所定の高さで上方に起立する複数の突出部11を備え、複数の突出部11の側壁面に空気吸引孔11aが設けられ、空気吸引孔11aを通じて突出部11の外側から内側に向かう方向に空気Aを吸引し、突出部11の側壁面でカーテンKを吸着する。また、カーテンKの幅方向に沿って複数の突出部11と噛み合い状に配列され、各々が、突出部11と対向して配置されるとともに、前後方向に移動自在に構成された複数の押さえ部13を備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン仕上げ装置に関し、特に、縫製済みカーテンの丈方向に多数のヒダを成形してカーテンの形状を波板状に仕上げる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカーテン仕上げ装置として、種々の装置が提案されており、例えば、特許文献1には、上方に起立する複数の前ピンと後ピンを装置の底部に設けるとともに、それら前ピン及び後ピンをカーテンの幅方向に沿って噛み合い状に配列した仕上げ装置が記載されている。この仕上げ装置は、前ピンと後ピンの間にカーテンの裾部を通した後に、後ピンを後方に移動させてカーテンの裾部を前後に引っ張り、その状態で、カーテンの下方から熱風を与えるように構成されている。
【0003】
また、特許文献2には、カーテンを吊下げるための吊下げ手段と、カーテンの縫いヒダよりも下の部分をジグザグ状に屈曲するための縦ヒダ形成手段と、カーテンの表側及び裏側の少なくとも一方でカーテンの縦方向又は横方向に移動しながらカーテンに過熱蒸気を噴射するための蒸気噴射ノズルとを備えるカーテン仕上げ装置が記載されている。この仕上げ装置は、縦ヒダ形成手段によりカーテンをジクザク状に屈曲させた状態で、蒸気噴射ノズルを移動させながらカーテンに過熱蒸気を噴射し、カーテンの全体に均整なヒダを成形するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3853340号公報
【特許文献2】特許第2860763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の仕上げ装置においては、丸棒状のピンにカーテンの裾を引っ掛け固定するに過ぎないため、カーテンの下方から熱風を噴射した際に、カーテンが上方へずり上がったり、左右に移動して位置がずれることがある。このため、仕上げ後のカーテンに弛みや皺が出来たり、ヒダの形状にばらつきが生じるなどの問題があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の仕上げ装置によれば、見栄えの良い仕上げを期待し得るものの、この装置では、過熱蒸気を生成、噴射する機構に加え、噴射ノズルを移動させる機構が必要になるため、装置全体の構成が複雑化し、装置費の高騰が避けられないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、装置費の高騰を回避しつつ、ヒダの形状を安定させることが可能なカーテン仕上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、カーテンにヒダを成形するカーテン仕上げ装置であって、所定の間隔でカーテンの幅方向に配列され、各々が、前方に突出するとともに、所定の高さで上方に起立する複数の突出部を備え、前記複数の突出部の側壁面に空気吸引孔が設けられ、該空気吸引孔を通じて前記突出部の外側から内側に向かう方向に空気を吸引し、該突出部の側壁面でカーテンを吸着することを特徴とする。
【0009】
そして、本発明によれば、突出部の側壁面でカーテンを吸着するため、カーテンを適切に保持することができ、ヒダの形状を安定させることが可能になる。また、従来の仕上げ装置に比して装置構成を簡略化できるため、装置費を低く抑えることが可能になる。
【0010】
上記カーテン仕上げ装置において、カーテンの幅方向に沿って前記複数の突出部と噛み合い状に配列され、各々が、該突出部と対向して配置されるとともに、前後方向に移動自在に構成された複数の押さえ部を備えることができる。これによれば、カーテンを前後方向に引っ張ることができ、ヒダを所望の形状を整えた上で熱風や蒸気を吹き込むことが可能になる。
【0011】
上記カーテン仕上げ装置において、前記突出部を上面視U字形とすることができ、これによれば、ヒダの山部に適度な丸みを持たせ、見栄えの良いヒダを成形することが可能になる。
【0012】
上記カーテン仕上げ装置において、前記押さえ部を上面視逆U字形とすることができ、これによれば、ヒダの谷部に適度な丸みを持たせ、見栄えの良いヒダを成形することが可能になる。
【0013】
上記カーテン仕上げ装置において、吊り下げられた状態のカーテンを収容するカバーケースを備え、該カバーケースが、該カバーケースの高さを調整する高さ調整機構を備えることができる。これによれば、カーテンの丈に合わせてカバーの高さを変更することができ、利便性を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、装置費の高騰を回避しつつ、ヒダの形状を安定させることが可能なカーテン仕上げ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるカーテン仕上げ装置の一実施の形態を示す全体図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】裾仕上げ機の構成を示す図であって、(a)は図1(a)のB−B矢視図、(b)は(a)のC−C矢視図、(c)は(b)のD−D矢視図である。
【図3】本発明にかかるカーテン仕上げ装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかるカーテン仕上げ装置の一実施の形態を示し、この仕上げ装置1は、大別して、台座部2と、台座部2上に設置された下カバーケース3と、下カバーケース3の底部に設置されたヒダ形成機4と、下カバーケース3上に設置された上カバーケース5と、熱風Hを供給する熱風供給手段6と、蒸気Sを供給する蒸気供給手段7と、空気Aを吸引する吸引手段8等で構成される。
【0018】
台座部2の内部には、熱風供給手段6からの熱風Hを導くための通気路2aが形成され、また、台座部2の上面には、通気路2aを流れる熱風Hを下カバーケース3内に吹き込む吹込孔2bが設けられる。
【0019】
下カバーケース3は、仕上げ装置1の内側下部空間を密閉するために備えられ、下カバーケース3の前面には、カーテンKを出し入れするための開閉扉3aが付設される。また、下カバーケース3の背面には、後述する吊下げフック5dを昇降させる昇降機構(不図示)が設けられる。
【0020】
ヒダ形成機4は、カーテンKの裾を波板状に加工するためのものであり、図2に示すように、所定の間隔でカーテンKの幅方向に配列された上面視U字形の複数の突出部11と、突出部11の後方に設置され、吸引手段8や熱風供給手段6と接続された給排フード12と、蒸気供給手段7と接続されたスチームパイプ14と、カーテンKの幅方向に沿って突出部11と噛み合い状に配列された上面視逆U字形の複数の押さえ部13とを備える。
【0021】
複数の突出部11は、図2(a)、(b)に示すように、成形すべきヒダの間隔に合わせて配置され、各々、前方に突出するとともに、上方に向けて立直状に起立する。突出部11の側壁部は、図2(b)、(c)に示すように、例えば、パンチングメタル等の多数の孔11aを有する金属板を湾曲させて形成され、突出部11の内部は、空洞とされる。また、突出部11の上面には、カーテンKの吸い込みを防止するための上蓋11bが付設される。尚、突出部11の幅D1や先端の曲率R1は、仕上げるヒダの幅や曲率に対応して形成され、それらと略々同等の大きさを有する。
【0022】
給排フード12は、吸引手段8を通じて下カバーケース3内の空気Aを引き込むとともに、熱風供給手段6からの熱風Hを下カバーケース3内に供給するために備えられる。給排フード12の前面には、図2(a)に示すように、突出部11の内側から空気Aを引き込んだり、熱風Hを突出部11に向けて吹き出すための孔12aが穿設され、これら孔12aは、突出部11の後方に位置するように形成される。
【0023】
スチームパイプ14は、蒸気供給手段7からの蒸気Sを下カバーケース3に導くために備えられ、図2(a)に示すように、上面視L字形に形成される。スチームパイプ14の長軸部14aには、スチームパイプ14内を流れる蒸気Sを突出部11に向けて吹き出すための複数の孔(不図示)が穿設される。
【0024】
複数の押さえ部13は、図2(a)に示すように、突出部11と対向して配置され、各々、上面視逆U字形に形成される。各押さえ部13は、例えば、パンチングメタル等の多数の孔13aを有する金属板を湾曲させて形成されるとともに、ガイド棒13bを通じて前後移動が可能に構成される。尚、押さえ部13の前後移動は、機械的に行ってもよいし、人為的に行ってもよい。また、押さえ部13の幅D2や先端の曲率R2は、突出部11の場合と同様、仕上げるヒダの幅や曲率と略々同等の大きさに形成される。
【0025】
図1に戻り、上カバーケース5は、仕上げ装置1の内側上部空間を密閉するために備えられ、最上段に位置する蓋ケース5aと、蓋ケース5aと下カバーケース3の間に積載されるスペーサ5b、5cとから構成される。蓋ケース5aの天部には、カーテンKを吊下げ固定する吊下げフック5dが付設され、蓋ケース5aの後部には、上カバーケース5内の熱風Hや蒸気Sを排出する排気ダクト5eが接続される。スペーサ5b、5cは、カーテンKの丈に合わせて上カバーケース5の高さを調整するために備えられ、着脱自在に構成される。蓋ケース5a及びスペーサ5b、5cの前面には、上カバーケース5内の状態を視認するための透明板5fが設けられる。
【0026】
次に、上記構成を有する仕上げ装置1の動作について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0027】
先ず、吊下げフック5dを下降させた状態で、下カバーケース3の開閉扉3aを開き、縫製した状態のカーテンKを吊下げフック5dに係止する。次いで、吊下げフック5dを上昇させ、カーテンKを所定の位置まで引き上げる。
【0028】
次に、図3(a)に示すように、突出部11と押さえ部13の間にカーテンKの裾を通し、その状態で、図3(b)に示すように、吸引手段8を駆動させて下カバーケース3内の空気Aを吸引する。これにより、カーテンKの裏面側の空気Aを突出部11の内側に引き込み、突出部11の側壁面でカーテンKの裏面を吸着、保持する。
【0029】
次いで、押さえ部13を前進させてカーテンKを後方に押し出し、突出部11との間でカーテンKを前後方向に引っ張る。こうして、カーテンKを固定し、併せて、カーテンKの断面形状を正弦波状に整えつつ、弛みや皺を引き延ばす。その後、空気Aの吸引を停止してカーテンKの吸着を解除するとともに、下カバーケース3の開閉扉3aを閉じて仕上げ装置1内を密閉する。
【0030】
次に、図3(c)に示すように、給排フード12及び通気路2a(図1参照)を通じて下カバーケース3内に熱風Hを供給し、カーテンKの全体に予熱を与える。所定の予熱時間が経過した後、図3(d)に示すように、スチームパイプ14を通じて蒸気Sを吹き込み、蒸熱でカーテンKにヒダを成形する。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、カーテンKの裏面を突出部11の側壁面で吸着し、その状態で、押さえ部13を前進させてカーテンKを前後方向に引っ張るため、カーテンKの形状を整えながらカーテンKを適切に保持することができる。これにより、熱風Hや蒸気Sを吹き込んだ際にカーテンKが上方へずり上がるなどの不具合を防止することができ、ヒダの形状を安定させることが可能になる。また、従来の仕上げ装置(例えば、特許文献2に記載の仕上げ装置)に比して装置構成を簡略化できるため、装置費を低く抑えることができ、安価な仕上げ装置を提供することが可能になる。
【0032】
尚、上記実施の形態においては、突出部11の側壁部をパンチングメタルによって形成するが、金属網等を用いて側壁部を形成してもよい。また、側壁部に多数の小孔(孔11a)を設けるが、スリット等の長孔を設けるようにしてもよい。このことは、押さえ部13についても同様である。
【0033】
さらに、上記実施の形態においては、突出部11の内側を空洞化するが、必ずしも空洞化する必要はなく、側壁部の孔11aを給排フード12に繋ぐ通気路を形成してもよい。
【0034】
また、上記実施の形態においては、着脱自在な複数のスペーサ5b、5cによって上カバーケース5の高さ調整機構を構成するが、上カバーケース5の高さ調整機構は、上カバーケース5の正面部を蛇腹状に形成するとともに、側面部及び背面部を下カバーケース3との間で上下方向にスライド自在とすることで、構成することもできる。
【0035】
さらに、上記実施の形態においては、熱風Hと蒸気Sの双方を用いてヒダを成形するが、それらの一方のみを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 カーテン仕上げ装置
2 台座部
2a 通気路
2b 吹込孔
3 下カバーケース
3a 開閉扉
4 ヒダ形成機
5 上カバーケース
5a 蓋ケース
5b、5c スペーサ
5d 吊下げフック
5e 排気ダクト
5f 透明板
6 熱風供給手段
7 蒸気供給手段
8 吸引手段
11 突出部
11a 孔
11b 上蓋
12 給排フード
12a 孔
13 押さえ部
13a 孔
13b ガイド棒
14 スチームパイプ
14a 長軸部
K カーテン
H 熱風
S 蒸気
A 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンにヒダを成形するカーテン仕上げ装置であって、
所定の間隔でカーテンの幅方向に配列され、各々が、前方に突出するとともに、所定の高さで上方に起立する複数の突出部を備え、
前記複数の突出部の側壁面に空気吸引孔が設けられ、該空気吸引孔を通じて前記突出部の外側から内側に向かう方向に空気を吸引し、該突出部の側壁面でカーテンを吸着することを特徴とするカーテン仕上げ装置。
【請求項2】
カーテンの幅方向に沿って前記複数の突出部と噛み合い状に配列され、各々が、該突出部と対向して配置されるとともに、前後方向に移動自在に構成された複数の押さえ部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカーテン仕上げ装置。
【請求項3】
前記突出部が上面視U字形を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカーテン仕上げ装置。
【請求項4】
前記押さえ部が上面視逆U字形を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のカーテン仕上げ装置。
【請求項5】
吊り下げられた状態のカーテンを収容するカバーケースを備え、
該カバーケースは、該カバーケースの高さを調整する高さ調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカーテン仕上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−240284(P2010−240284A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94657(P2009−94657)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(592244723)アサヒ繊維機械株式会社 (5)
【Fターム(参考)】