説明

カートリッジピストン

【課題】フィラー物質をカートリッジ内に貯蔵できるようピストンによって貯蔵チャンバー内で流体を通さない様式でフィラー物質を取り囲めるピストンの提供。
【解決手段】貯蔵チャンバー内にフィラー物質を貯蔵するためのカートリッジ用ピストン51は移送側53と駆動側を持つピストン本体とジャケットを含み、後者は軸線を中心に配置されかつピストン本体は外周側にてジャケットに包囲される。ジャケットはそのシーリング要素とチャンバー内壁との間に流体を通さない接続部を形成するシーリング要素を有し、これは移送側53と駆動側との間に流体を通さない接続部を形成する。ピストン本体は第1、第2のベント要素60,61を含み、移送側53と駆動側とは各内腔によって互いに接続可能でありかつピストン本体は移送側53上に配置されたベントスリット71,73を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ用の、特にフィラー物質含有固形物の供出のためのピストンに関し、これはベント機構を含む。フィラー物質は、多成分混合物を含み得る。これらフィラー物質はカートリッジの貯蔵チャンバー内に導入される。それに続いて、フィラー物質が充填されたカートリッジはピストンによって閉塞される。ピストンとフィラー物質との間に存在する空気はベント機構を経て流出すべきである。
【背景技術】
【0002】
そうしたピストンは、たとえば、特許文献1から公知である。このピストンは、シーリングリップを備えた第1のピストン部分を有する。シーリングリップはカートリッジ壁に接する。ピストンは、さらに、第2のピストン部分として構成されたバルブ要素を有する。このバルブ要素は円筒形壁部を有するが、これは、第1のピストン部分のリセス内に配置され、かつ、ラッチ接続部によって第1のピストン部分に対して、このリセスの底部において掛止されている。円筒形壁部は、弧状形態でバルブピンへと変化している。バルブピンは第1のピストン部分において円筒形内腔を貫通すると共に、第1のピストン部分のバルブリップにおいて接するよう意図されたバルブコーンを有する。ラッチ接続部は小さな空気通路によって中断されており、これによって、フィルター経路が、第1のピストン部分の壁と、バルブ要素の円筒形壁部の内面との間に形成される。さらに、そうした空気通路に関する変形例は、特許文献2〜4から知られている。
【0003】
特許文献1〜4に基づくピストンは、かなり複雑でかつ/または製造コストがかかるので、この構造のさまざまな簡素化が提案されている。たとえば、ベントバルブの代わりに、それを通って空気が外にできることができる内腔を含むピストンが存在する。
【0004】
だが、フィラー物質の供出のためのこれら既に公知のピストンは、以下の理由で好ましくないことが分かっている。一方で、内腔のサイズとこれらピストンのセッティング速度との間に目的の対立が存在する。たとえば、特許文献5には一対の毛管通路が示されており、それを用いて駆動側と移送側との間の接続を得ている。これら毛管通路を形成する内腔の直径は、移送側から駆動側に至るフィラー物質の通過が安全に回避できるように小さなものである必要があり、毛管通路はそれゆえまた濾過経路を形成する。したがって、この内腔は毛管通路と呼ばれる。これは、毛管力が、フィラー物質がこの内腔を経てピストンの駆動側に達するのを阻止することを意味する。この結果、ピストンのセッティング速度は、ピストンのセッティングプロセスの間、フィラー物質とピストンとの間に残留する全ての空気が内腔を経て放出されることを保証する必要があるという事実に起因して、僅かなものである。
【0005】
内腔が大きくなればなるほど、空気は、ますます速く、ピストンが貯蔵チャンバー内に挿入された際にピストンとフィラー物質との間の中間スペースから出て行くことができる。だが、より大きな内腔は、より大きなフィラー物質体積がこの内腔を通過でき、そしてピストンの駆動側における内腔の汚損のリスクが高まるという結果を招く。
【0006】
ピストンのセッティングとの用語は、カートリッジの貯蔵チャンバー内へのピストンのインストールを意味する。フィラー物質で満たされたカートリッジの貯蔵チャンバーは、ピストンによって流体を通さない様式で閉塞される。このために、ピストンはカートリッジの入口開口上にセットされ、そしてこの貯蔵チャンバー内へと、少なくともピストンの駆動側が入口開口と同一平面をなして停止する(すなわちピストンがその一部さえも入口開口を越えて突出しなくなる)まで、僅かだけ押し込まれる。
【0007】
さらなる問題が、特に粘性のある、あるいはペースト状の物質が使用される場合に、ピストンのセッティングの間に生じる。すなわち、粘性のある、あるいはペースト状のフィラー物質は、メニスカスを形成する液体に関して知られているような貯蔵チャンバー内で確定した充填レベルを持たない。そうした粘性のある、あるいはペースト状の物質の表面は平滑ではなく、山や谷を有する。充填レベルは、したがって、局所的に、平均値に従って予期されるよりも実質的に高くなることがある。ピストンのセッティングプロセスは、しかしながら、たいていは経路管理様式で行われる。したがって、ピストンは、カートリッジの貯蔵チャンバー内でプリセット経路距離に沿って変位させられる。これは、ピストンがその終端ポジションに達する前に、ピストンがフィラー物質の山と接触状態となることがあることを意味する。そうした山がベント開口と出会うとき、ベント開口が詰まり、そして気泡がフィラー物質とピストンの移送側との間に残ることがある。セッティングプロセスを続けると、この気泡が押し潰される。
【0008】
フィラー物質が、セッティングプロセス中に移動するピストンの駆動側へと内腔を経て直接出て来ない場合でさえ、内腔内へのフィラー物質の侵入は、結果的に、セッティングプロセスによる内部上昇圧力の緩慢な低下に起因して生じ得る。この内腔は、その後の作業工程において、明らかに、閉塞され、たとえば溶着される。だが、フィラー物質が内腔内に存在する場合、溶着作業が阻害されるか、あるいは溶着が不完全なままとなることがあり、この結果、フィラー物質がピストンの駆動側へと内腔を経て漏れることがある。この漏れは、フィラー物質の貯蔵能力が、もはや保証されないという影響を及ぼすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第200 10 417号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0351517号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1738834号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0029306号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1338342号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、少なくとも限定された期間にわたってフィラー物質をカートリッジ内に貯蔵可能であるように、ピストンによってカートリッジの貯蔵チャンバー内で流体を通さない様式でフィラー物質を取り囲むことができるように指定されたピストンを改善することである。ピストンは、カートリッジの貯蔵チャンバー内で市販の供出ユニットによって変位可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、カートリッジ用のピストンであって、カートリッジがフィラー物質を貯蔵するための少なくとも一つの貯蔵チャンバーを含むピストン解決される。このピストンは、ピストン本体を含むが、これは、移送側ならびにこの移送側と対向するよう配置された駆動側と、ピストンジャケットとを有する。ピストンジャケットはピストン軸線を中心として配置され、かつ、ピストン本体は外周側においてピストンジャケットによって取り囲まれている。ピストンジャケットは、このピストンジャケットのシーリング要素とカートリッジの貯蔵チャンバーの内壁との間に、流体を通さない接続部を形成するためのシーリング要素を有し、これによってシーリング要素は、移送側と駆動側との間に、設置状態において、流体を通さない接続部を形成する。ピストン本体は第1および第2のベント要素を含み、これによって、移送側と駆動側とは、それぞれの内腔によって互いに接続可能であり、かつ、ピストン本体は、移送側上に配置されたベントスリットを有する。内腔の少なくとも一つは、特に、円形断面を有することができる。内腔はピストン本体を貫通して延在し、それらはしたがってピストン本体の内部に配置されるが、これは、内腔がピストン本体の内あるいは外縁部に配置されないことを意味する。
【0012】
第1の内腔を設けると共に第2の内腔を設けたことで、有利なことに、セッティングプロセス中にフィラー物質の不整面によって一つの内腔が詰まった場合でさえ、通気が依然として確保される。さらに、第2の内腔を設けた場合にはピストンのセッティング速度を高めることができる。というのは、両内腔にフィラー物質が存在しない場合には、空気の流速が増大するからである。
【0013】
内腔内に開口する第1の入口開口および第2の入口開口が、好ましくは、第1および第2のベント要素の少なくとも一つのために設けられる。このために、それぞれの第1および第2の連通路を設けることができる。連通路および/または内腔はピストンの駆動側から移送側へと延在する。第1および第2の連通路は、特に、共通の収集通路内へと開口でき、収集通路は内腔であってもよい。これに代えて、移送側を駆動側に接続する別個の内腔は、各入口開口に属していてもよい。
【0014】
ピストン本体は、移送側上に配置されたベントスリットを有する。移送側におけるピストン面によって、そしてフィラー物質によって取り囲まれる気泡の形成は、ベントスリットによって回避できる。ベントスリットは、いかなる場合でも、ガスがベントスリットの入口開口へと誘導される可能性を提供する。ベント要素は、特に、第1および第2の入口開口と接続状態にある。
【0015】
内腔の少なくとも一つは、ピストンの長手方向軸線と実質的に平行に整列させられた長手方向軸線を有する。この変形例は、特に簡単に製造できる。
【0016】
入口開口の少なくとも一つは、ベント要素の長手方向軸線に対して斜めに配置することができる。特に、入口開口の長手方向軸線は、ベント要素の内腔の長手方向軸線に対して斜めに配置される。フィラー物質がそうした入口開口に達することがあっても、この入口開口は直ぐには詰まることはない。
【0017】
角度は、この例では、10°よりも大きく90°以下であり、好ましくは20°よりも大きく90°以下であり、特に好ましくは、30以上で90°以下である。
【0018】
内腔はさらに、少なくとも一つのキンク、湾曲あるいは制限要素を含むことができる。内腔内に流入するフィラー物質のための経路距離は、こうして伸長される。湾曲、キンクあるいは制限されたポジションは流動障害物を形成し、これによってフィラー物質がピストンの駆動側まで達するのが阻止される。
【0019】
内腔の最小直径は、好ましくは、ピストンの直径の1/40よりも大きなものである。
【0020】
先の実施形態の一つに基づくピストンはリングピストンとして形成できる。そうしたピストンはインナーピストンジャケットを含むが、このインナーピストンジャケットはピストン軸線に面する内側においてピストン本体を取り囲み、インナーシーリング要素を含んでおり、ピストンは、インナーピストンジャケット内に配置されたインナーピストンの壁とのシーリング接触を確立するのに適したものである。
【0021】
ピストンは、保護要素が移送側においてピストン本体に対して取り付けられるように構成できる。そうした保護要素は、ピストン素材よりも、充填物に対する高い抵抗性を有する素材から形成できる。保護要素は、したがって、ピストン素材のための保護機能を高めることができる。
【0022】
保護要素はベント要素を含むことができる。このベント要素は、たとえばピストンの上記セッティングの際に生じるピストンスペースからのガス含有物のガスを除去する役割を果たす。このガスは特に空気であってもよい。
【0023】
補強リブをピストンの駆動側に配置することができる。補強リブを設けることで、充填物の供出の際に供出ユニットによってピストンが圧力下に置かれても、ピストンは本質的に安定なままであることが保証される。
【0024】
傾動に抗して安定させる要素をピストンの駆動側に配置することができ、それはカートリッジ内でのピストンの案内の改善に役立つ。ピストンは、カートリッジの壁と接触状態にある傾動に抗して安定させる要素によって傾動が生じないように確実に案内され、すなわちピストン本体の軸線はピストン軸線と一致する。傾動に抗して安定させる要素によって、移送側はピストン軸線に対して直交する平面内に配置されることが、あるいは移送側が平滑でない場合には、特定の半径および特定の高さによって特徴付けられる移送側でのピストン面のポイントは、周面に沿って実質的に同じ垂直面内に配置されることが保証される。ピストンが傾くことがあれば、そうしたポイントに関する条件は満たされないであろう。外周側でのカートリッジの壁との接触は、そうした傾動に抗して安定させる要素によって供出作業の間中、維持でき、この結果、ピストンの振れは、先に説明したガイド要素と協働で抑止できる。
【0025】
リングピストンが持つことができる特徴の利点は、インストールがなされていない円筒形インナースペースあるいは異なる設計のインナースペース用のピストンに関連して先に列挙したような利点に対応する。
【0026】
供出機構は、先の実施形態の一つに基づくピストンを含む。供出機構は、特に、複数の成分の供出のためのカートリッジを備えるが、成分は、互いに隣り合ってあるいは同軸状に配置されたカートリッジの貯蔵チャンバー内に配される。さらに、供出機構は、それを用いてピストンを駆動側において接続可能な供出ユニットを含んでいてもよい。
【0027】
先の実施形態の一つに基づくピストンは、特に有利なことには、シーリング物質あるいは接着剤などのペースト状あるいは粘性のあるフィラー物質だけでなく、固形物を含有するフィラー物質の供出のために使用される。
【0028】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】フィラー物質が充填された貯蔵チャンバー内にそれぞれのピストンを含む供出機構を示す図である。
【図2a】従来技術の第1実施形態に基づくピストンを通る断面を示す図である。
【図2b】従来技術の第2実施形態に基づくピストン半体を通る断面を示す図である。
【図2c】図2bに基づくピストンを通る断面を示す斜視図である。
【図3】同軸カートリッジを示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に基づくピストンの移送側を示す図である。
【図5】図4に基づくピストンの駆動側を示す図である。
【図6a】簡素化された実施形態における図4に基づくピストンのピストン半体を通る断面を示す図である。
【図6b】図4に基づくピストンのピストン半体を通る断面を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に基づくピストンのピストン半体を通る断面を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に基づくピストンのピストン半体を通る断面を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態に基づくピストンのピストン半体を通る断面を示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に基づくピストンのピストン半体を通る断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、複数の成分を供出するためのカートリッジ17を含む供出機構を、このカートリッジの出口要素に対して取り付けられかつその上で保持されたスタティックミキサー20と共に示している。
【0031】
スタティックミキサー20はミキサーハウジング21を含み、その中には、混合要素22の構造体が配置されている。ミキサーハウジング21は、その第1の端部23に、二つの相互に分離した入口開口25,26を含むが、これはスタブとして構成されており、これは、カートリッジの対応する出口開口44,45の上にあるいはその中に押しやることができる。ミキサーハウジング21の第2の端部24は出口開口27を含み、それを通って混合物は、所望の用途のために供給できるように外に出ることができる。ミキサーハウジング21および混合要素の構造体22は二つの別個のコンポーネントとして構成できるが、これは任意選択で互いに対して移動可能である。
【0032】
ミキサーハウジング21は、保持要素40によって、カートリッジの出口要素46に接続されており、この接続部は、欧州特許出願公開第0 730 913号明細書に開示されるような、ネジ式接続部として、あるいはバイオネット接続部として構成できる。図1の実施形態によれば、第1および第2の取り付け要素41,42(これは保持要素40に配置されている)は、出口要素46の対応する第1および第2の受け要素47,48内に係合している。保持要素40は出口要素46に対して回転可能であり、回転要素49を設けることができるが、これによって、保持要素40は出口要素46に対してかつミキサーの第1の端部23に対して回転可能であり、しかも取り付け要素41,42は、対応する受け要素47,48と係合状態となることができる。
【0033】
カートリッジ17は、マルチコンポーネントカートリッジとして形成されており、ここで、コンポーネントは、互いに隣り合ってあるいは互いに同軸状に配置されたカートリッジの中空キャビティ内に配置される。これら中空キャビティは、以下では、フィラー物質用の貯蔵チャンバーと呼ぶ。この貯蔵チャンバーはピストン50,51によって閉塞でき、出口要素46の出口開口44は閉塞キャップ(これは図示していない)によって、あるいは降下した混合物質によって既に詰まったスタティックミキサーによって閉塞できる。
【0034】
ピストン50,51は対応する貯蔵チャンバーの壁16に沿って移動可能である。ピストンは、貯蔵チャンバー内に、入口開口10,11を経て導入される。フィラー物質が充填された貯蔵チャンバー内へピストンを導入するプロセスは、ピストンのセッティングと呼ばれる。
【0035】
本発明は、当然ながら、単一コンポーネントカートリッジのための、そして同軸カートリッジのためのピストンのために、同じようにして使用可能である。
【0036】
図2aは、特許文献1からの従来技術から公知であるようなピストンを示している。ピストン101はピストン本体102を含むが、これは、たいてい、プラスチックから射出成形処理を用いて製造される。ピストン101は、好ましくは、カートリッジから、特に流体あるいはペースト状媒体のフィラー物質を供出するために使用される。カートリッジ117の壁116が示されている。ピストン101は壁116に沿ってスライドし、そして、この動作の間に、カートリッジの出口開口を経て充填物を放出する(これは図示していない)。媒体側におけるピストン101の面は、以下では、移送側103と呼ぶ。ピストンを動作させ、そしてその動作を維持するために、圧縮力が供出ユニットによって作用させられる。供出ユニット(そのプランジャ要素118が示されている)は、移送側103と向き合って配置されたピストンの面上に位置させられる。この側は、以下では、駆動側104と呼ぶ。
【0037】
ピストン本体102は、したがって、駆動側104、移送側103ならびにピストンジャケット105によって取り囲まれている。ピストンジャケット105は、駆動側104と移送側103との間に接続部を形成する。ほとんどの場合、ピストン本体は複数の切欠きを有するか、中空体として形成される。そうしたピストンは、既に、材料を節約するためだけでなく厚壁コンポーネントの射出成形に由来する困難さのために、数cmの直径から薄壁コンポーネントとして形成される。ピストンは、所要の形状安定性すなわち剛性を補強リブ115から得ている。ピストンはさらに保護要素113を含むことができる。保護要素113はカバープレートとして形成できるが、その機能は充填物からピストン本体を保護することである。カバープレートは、フィラー物質がピストン素材を冒す傾向がある場合に使用される。これは、特にLDPEなどの軟質なプラスチックのピストンに当てはまる。LDPEは、たとえばポリエステルレジンによって冒され、膨張する。
【0038】
ピストンはまたベント要素を含むことができる。そうしたベント要素114は図1に示されている。フィラー物質とピストン101との間でカートリッジ117の貯蔵チャンバー内に存在するガスは、フィラー物質の漏れ出しを伴わずに、このベント要素を経て外部に、すなわち駆動側104へと流出できる。ベント要素114は、カートリッジが充填状態で貯蔵される限り閉塞される。これは、ベント要素114のピン119が対応するシート120の上に存在することを意味する。
【0039】
フィラー物質を供出すべき場合には、供出ユニット118は、その駆動側104において、ピストン101と接触状態とさせられる。これに関して、供出ユニットはまた、ベント要素114のピストン119の端部と接触状態となる。ピン119の端部は、駆動側において供出ユニットと接触状態となる面を越えて突出し、この結果、ピンは、供出ユニット118が駆動側104と接触状態となるとき、そのシート120を持ち上げる。ガスのための流路は、このようにして開く。ガスは、カバープレートとして形成されたバルブ本体122のフランク121を経て、バルブ本体122とピストン本体102との間の中間スペース内に流入し、そして、ピン119とシート120との間の開口を経て開放された流路を経てピストンの外に出る。
【0040】
フランク121は、ラッチ接続部を介して、ピストン本体102と係合状態となっている。このために、フランク121は、たとえば、移送側103においてピストン本体102の周方向溝123内に係合する。フランクはまたシーリングリップを有することができるが、これは、ピストン101の突出部106の切欠き内に係合する。複数の小切欠きが、通常は、ガスのためにフランク内に設けられる。ラビリンス接続経路を、これら切欠きに続いて、ピストン本体102とカバープレート113との間に設けることができる。切欠きを通過するフィラー物質は、したがって、このラビリンス接続経路に沿って堆積させることができる。この接続経路は図中では詳しく示していない。
【0041】
ピストン101は、駆動側104においてフィラー物質の出口に当接する手段を有する。このために、少なくとも一つのシーリングリップが、たいてい、カートリッジの壁116においてスライド面に沿って設けられる。シーリングリップ107は、溝123とカートリッジの壁116との間で延在する突出部106に配置される。突出部106は、ピストン本体102と関連したアームとして形成される。このアームはリング形状ビードに属するが、これはピストン本体102の全周に沿って延在しておりかつカートリッジ117の壁116と流体を通さない接続部を形成する。
【0042】
図2bは、従来技術の第2実施形態に基づくピストン201のピストン半体を通る断面図である。このピストンのピストン半体はまた図2cに示されている。ピストン201は、たいていプラスチックから射出成形処理によって製造されるピストン本体102を含む。ピストン201は、カートリッジから、特に流体あるいはペースト状媒体のフィラー物質を供給するために使用される。カートリッジ217の壁216が示されている。ピストン201は壁216に沿ってスライドし、そして、この動作の間に、カートリッジの出口開口(図示せず)を経てフィラー物質を放出する。ピストンを動作させ、そしてその動作を維持するために、圧縮力が供出ユニット(これは図示せず2aと同様に形成できる)によって加えられる。
【0043】
ピストン本体202は、したがって、ピストンジャケット205によってだけでなく、駆動側204、移送側203によって取り囲まれる。ピストンジャケット205は、駆動側205と移送側203との間の接続部を形成する。ほとんどの場合、図2aにおけるようなピストン本体は複数の切欠きを有し、あるいは中空体として構成される。図2bの、そしてまた図2cの断面は、ピストンの放射状に延在する補強リブ215を通っている。
【0044】
上記ピストンは、内腔として構成されたベント要素214を含む。フィラー物質とピストン201との間でカートリッジ217の貯蔵チャンバー内に存在するガスは、内腔が十分に小さな直径を有するならばフィラー物質の漏れ出しを伴わずに、このベント要素214を経て外部に、すなわち駆動側204へと流出できる。だが、小さな直径を有する内腔は、ピストンの設定速度が相応に小さくなるように相応に高い圧力損失の帰結を伴う。これに関して、内腔の半径はR1によって、ピストン半径はR2によって示す。ピストン軸線209からカートリッジの貯蔵チャンバーの内径に対応するシーリングリップ207の端部までの距離は、ピストン半径R2として選択される。図2cに基づく本実施形態においては、R1/R2の比率は1/45である。
【0045】
図3は同軸カートリッジ30を示す。同軸カートリッジにおいては、互いに同軸状に配置された二つ以上の円筒形貯蔵チャンバー31,32が、フィラー物質のあるそれぞれの成分のために配置されている。インナー貯蔵チャンバー31は、アウター貯蔵チャンバー32によって完全に取り囲まれている。アウター貯蔵チャンバー32は、インナー貯蔵チャンバーの周囲にリング状に配置される。アウター貯蔵チャンバーの外側境界は円筒形カートリッジ壁16として形成される。インナー貯蔵チャンバー31はインナーチューブ67によって取り囲まれている。インナーおよびアウター貯蔵チャンバーはそれぞれピストン50,51を含む。インナーピストン50はインナー貯蔵チャンバー31内に配置され、リングピストン51はアウター貯蔵チャンバー32内に配置される。
【0046】
さらに、供出ユニット80が示されているが、これを用いて、インナーピストン50およびリングピストン51は同時に移動できる。供出ユニットは、インナーピストン50を移動させるためのインナープランジャ82だけでなく、リングピストン51を移動させるリング形状プランジャ81を含む。インナープランジャ82は、この実施形態では、外ネジ83を有するが、これは、取り付け要素85の一部である内ネジ84と噛み合っている。この取り付け要素85は、カートリッジの入口開口33,34上に設けられ、そして、貯蔵チャンバー31,32内に収容されたフィラー物質が供出されている限り固定ポジションにて、それに対して連結されたままである。
【0047】
取り付け要素は、固定ポジションにてカートリッジに対して連結される。インナープランジャ82の回転動作によって、それは内ネジ84に対して移動し、貯蔵チャンバー31内のインナーピストン50はカートリッジのアウター要素86の方向に変位する。アウタープランジャ81はヘッド端部87を有するが、これは、外ネジ83に隣接する接触面88上で回転可能に支持されている。当接部89は、インナープランジャ82に対するアウタープランジャ81の変位を阻止する。アウタープランジャ81はフット端部90を有するが、これはリング部51上に存在している。フット端部90は、有利なことには、リング形状接触面を有する。取り付け要素85の内腔91を経て案内されるガイド要素は、ヘッド端部87とフット端部90との間で延在している。リングピストン51およびインナーピストン50は、したがって同時に変位可能である。
【0048】
図4は、たとえば図34に基づく同軸カートリッジ内でリング部51として使用される本発明の第1実施形態に基づくピストンの移動側53を示している。第1および第2のベント要素60,61が特に示されている。ピストンは二つ以上のベント要素を有するので、体積流量は、従来技術におけるのと同じ直径のベント要素で、2倍にすることさえ可能である。これは、ピストンの設定速度を相応に増大させることが可能であることを意味する。驚くべきことに、これに関して、ピストンの駆動側へのフィラー物質の通り抜けは生じない。ベント要素のそれぞれはベントスリット71,73内に配置されている。これは、フィラー物質が狭いベントスリット内へ入り込み、そしてベント要素の入口開口まで移動する必要があることを意味する。ベント要素の入口開口62,63は、有利なことに、移送側53において、ピストンの表面に対して斜めに配置されている。
【0049】
ベントスリットはまた、フィラー物質のための制限要素としての機能に加えて、関連付けられたピストン半体の各ポイントにおけるガス含有物を検出する機能ならびに対応する入口開口62,63へとガスの移送を可能にする機能を有する。特にフィラー物質が粘性を有する場合、それは確定表面を形成しない。フィラー物質の表面は山および谷を含むことがある。そうした山が、たまたま、ベント要素の入口開口と直に接するようなことがあると、ベント要素の閉塞が生じ得る。だが、そうした山がベントスリットに出会う場合、ガスは、図6bに詳しく示すように、ベントスリット71,73を経て対応する入口開口内へとフィラー物質の山頂の衝突のポイントを通過して流れることができる。これに関して、矢印68は、ガスの流動経路を示している。
【0050】
図5は図4に基づくピストン51の駆動側54を示している。二つのベント要素60,61が、図中のピストンの長手方向軸線9を通って垂直に延在する平面に対して鏡像対称的配置状態で互いに向き合って存在する。それらは、半径方向および軸方向に延在する補強リブ65の上には存在せず、これら補強リブ間の中間スペースに存在している。図4に示すベントスリット71,73は補強リブとは一致しない。
【0051】
図6aは、図4に基づくピストンのピストン半体を通る断面を示している。リングピストン51はピストン本体52を含むが、これは、たいてい、プラスチックから射出成形処理によって製造される。リングピストン51は、好ましくは、同軸カートリッジから、特に流体あるいはペースト状媒体のフィラー物質を供出するのに使用されるが、そのために可能な構成が図3に示されている。カートリッジの壁16が示されている。ピストン51は壁16に沿ってスライドし、そして、この動作の間に、出口要素86内に配置された、図示していないカートリッジの出口開口を経て充填物を放出する(図3参照)。媒体側におけるピストン51の側は、以下では、移送側53と呼ぶ。ピストンを動作させ、そしてその動作を維持するために、圧縮力が供出ユニットによって作用させられる。供出ユニット(ここでは図示していない)は、移送側53と向き合って配置されたピストンの側に位置させられる。この側は、以下では、駆動側54と呼ぶ。
【0052】
ピストン本体52は、したがって、駆動側54、移送側53、アウターピストンジャケット5ならびにインナーピストンジャケット55によって取り囲まれている。アウターピストンジャケット55は、シンプルなピストン1のために図7ないし図10に関して以下で説明するものと同じ構造を有することができる。インナーピストンジャケット55は、駆動側54と移送側53との間のインナー接続部を形成する。インナーピストンジャケット55は、ピストン軸線9に面するインナー側59においてピストン本体52を取り囲んでいる。
【0053】
インナーピストンジャケット55は、突出部56へと移送側53において変化している。突出部56は、この実施形態では、薄壁回転対称体であり、これは、ピストン体52のアームとして断面において認識可能である。突出部56は、カートリッジのインナーチューブ67に沿ってピストンを案内するためのインナーガイド要素57を有する。ガイド要素57はインナーチューブ67の壁66とのシーリング接触の確立のために好適なものである。ガイド要素57は、特に、シーリングリップとして形成できる。必要ならば、複数のシーリングリップを設けることもできる。突出部56はスクレーパー要素58を含むが、これは、ガイド要素57よりも小さな、移送側53からの間隔を有する。
【0054】
リングピストンは、第1および第2のベント要素60,61を含むが、第2のベント要素は図6aには示されていない。その最も簡素な実施形態では、ベント要素60は、ピストンの移送側53からその駆動側54に達する内腔として形成される。図6aに示す実施形態によれば、ベント要素は、ピストンの長手方向軸線9と実質的に平行に延在する長手方向軸線70を有する。ベント要素60は出口開口72だけでなく入口開口62を有する。フィラー物質と移動側53におけるピストン面との間に収集されたガス、特に空気は、入口開口を経て内腔内に流入でき、かつ、出口開口72の方向に内腔を経て案内される。この変形例は、特に、実質的に平滑な表面を形成するフィラー物質にとって好適である。
【0055】
二つ以上のベント要素がピストン本体52上に割り当てられるならば、局所的ガス包含を回避できる。フィラー物質がその入口開口62を経て移動するためにベント要素が早期に詰まる場合でさえ、少なくとも一つのベント要素が依然としてガスに対して有効である。
【0056】
ピストン本体は補強リブ65を有する。ベント要素はそうした補強リブのコンポーネントであってもよく、それは図6aに示されている。ベント要素の出口開口72は、それゆえ、補強リブ上に配置され、これによって、この出口開口のポジションは正確に固定できる。出口開口が、調整プロセスの終了後に閉塞される場合、それはより簡単な様式で溶着可能である。出口開口のポジションは正確に固定され、かつ、溶着プロセス中の熱の影響によるピストンのゆがみを阻止できる。というのは、補強リブは出口開口のための固定マウントと同様に機能するからである。
【0057】
さらに、図6aに基づくピストンは、ピストンが傾くことができないように傾動に抗して安定させる外側および内側要素18,64を有し、これによってピストンは、カートリッジの壁16に対して、適所にて安定化される。
【0058】
図6bは、図4に基づくピストンのピストン半体を通る断面図であり、ここでは、ベント要素60のための内腔は図6aに基づく内腔とは相違する。ベント要素は、駆動側54に対して移動側53を接続する内腔に加えて、第1および第2の入口開口62,63を含む。
【0059】
図6bに示すベント要素60は補強リブ65に隣接して配置されている。放射状に延在する補強リブは図6bに示されているが、これはベント要素の外側に配置されている。補強リブ65は、したがって、ベント要素の長手方向軸線70よりも大きなピストン軸線9からの距離を有する。ベント要素はスタブ74として形成されており、これは駆動側54において補強リブを越えて突出している。ベント要素のより高い構造的強度は、ピストンの調整が終了した後に、それを用いて出口開口72が閉塞される溶着ツールにとってのアクセス可能性を向上させる。この閉塞は、カートリッジが、ピストンが最も高いポジションを取らないように支持されるときに、フィラー物質の放出を阻止するために必要である。さらに、個々のフィラー物質を貯蔵中に空気と接触させないことが必要になるかもしれない。というのは、これによって化学反応が生じ、フィラー物質の特性が望ましくない程度まで変化することがあるからである。
【0060】
さらに、スタブが可能な限り大きな長さを有することが有利であり、なぜなら、内腔によって形成される通路がこれによって引き伸ばされるからである。フィラー物質が入口開口の一つに実際に達するべきである場合、フィラー物質が出口開口に達するまでの時間を引き延ばすことができる。それは、確定された充填レベルを持たず、むしろ山および谷からなる表面を形成する粘性のあるフィラー物質によって生じ、このフィラー物質がベントスリット内に入り込み、そして入口開口62,63まで移動することが予期できる。セッティングプロセスは、したがって、出口開口に実際に達する前に終了させられる。出口開口72は、したがって、気を遣う必要があるフィラー物質によるその汚損を伴わずに溶着できる。フィラー物質がすなわち粘性を有する場合、その流速はまた、セッティングプロセスに続いておそらく生じる圧力均一化によって低いものであり、したがってフィラー物質が出口開口を出る前に溶着の作業工程は既に終了してしまう。出口開口の汚損は、それゆえ、図6bに示す実施形態によって回避できる。出口開口は、それゆえ、流体を通さない様式で溶着でき、この結果、充填されたカートリッジは、より長い期間にわたって、所望の状態で貯蔵可能である。
【0061】
図7はピストン1を示しており、これは、同軸カートリッジのためのインナーピストン50として、あるいは図1に示すように、互いに隣接して存在する貯蔵チャンバーを備えた2成分カートリッジのピストン50,51の一つとして、単一成分カートリッジのために使用できる。ピストン1はピストン本体2を含むが、これは、通常、プラスチックから射出成形処理によって製造される。
【0062】
カートリッジ17の壁16が示されている。リングピストン1は壁16に沿ってスライドし、かつ、この動きの間に、アウター要素46(図1参照)に配置された出口開口44,45(図示せず)を経て、あるいは出口要素86(図3参照)に配置された出口開口を経て、フィラー物質を放出する。媒体側におけるピストン1の側は以下では移送側と呼ぶ。ピストンを動作させ、そしてその動作を維持するために、圧縮力が供出ユニットによって加えられる。供出ユニット(ここでは示していない)は、移送側3と向き合って配置されたピストンの側に位置させられる。この側は、以下では、駆動側4と呼ぶ。
【0063】
ピストン本体2は、したがって、駆動側4、移送側3、ならびにピストンジャケット5によって取り囲まれる。ピストンジャケット5は、図6ないし図6bのアウターピストンジャケットと同じ構造を有することができる。
【0064】
ピストンジャケット5は、突出部6へと移送側3において変化している。突出部6は、この実施形態では、薄壁回転対称体であり、これは、ピストン体2のアームとして断面において認識可能である。突出部6は、カートリッジの壁16に沿ってピストンを案内するためのインナーガイド要素7を有する。ガイド要素7はカートリッジ17の貯蔵チャンバーの壁16とのシーリング接触の確立のために好適なものである。ガイド要素7は、特に、シーリングリップとして形成できる。必要ならば、複数のシーリングリップを設けることもできる。突出部6はスクレーパー要素8を含むが、これは、ガイド要素7よりも小さな、移送側53からの間隔を有する。
【0065】
ピストン1は、第1および第2のベント要素60,61を含むが、第2のベント要素は図7には示されていない。ベント要素60は、ピストンの長手方向軸線9と実質的に平行に延在する長手方向軸線70を有する。フィラー物質と移送側3におけるピストン面との間に収集されたガス、特に空気は、入口開口62を経て内腔75内に流入でき、かつ、出口開口72の方向に内腔75を経て案内される。
【0066】
ピストンの移送側3とその駆動側4との間の連通は内腔75によってなされる。内腔の直径は変化し得る。すなわち、たとえば、移送側からの間隔が増大するときに直径は減少し得る。図7によれば、円錐形状が直径の変化によって実現される。内腔75は、最も狭いポイントにおいて制限要素69を形成する。フィラー物質が制限要素まで移動すべき場合、それはフィラー物質のための障害物を体現し、この結果、少なくとも、移送側における内腔の端部、その出口開口72が、たとえばプラグによってあるいは溶着によって、その後の作業工程において閉塞されるまで、ピストンの駆動側4へのフィラー物質の放出が遅延させられる。
【0067】
制限要素69に続いて、ベント要素の内腔は再び広がることができ、この結果、制限要素を通過するフィラー物質は内腔内に堆積でき、フィラー物質が出口開口72の近傍に移動するのを阻止する。
【0068】
ベント要素はスタブ74を有する。スタブ74は、実質的に補強リブ15と同じ長さを有し、この結果、スタブ74は、供出ユニット80用のサポートとして機能できる。
【0069】
二つ以上のベント要素がピストン本体2上に割り当てられるならば、局所的ガス混入を回避できる。フィラー物質がその入口開口62を経て移動するためにベント要素が早期に詰まる場合でさえ、少なくとも一つのさらなるベント要素が依然としてガスに対して有効であり、この結果、フィラー物質とピストンの移送側との間のガス混入が回避される。
【0070】
図8においては、さまざまなベント要素60を有するピストン1が示されているが、これは、実質的に、図4、図5および図6bにおけるリングピストンに関して示されたベント要素に対応する。
【0071】
ピストン1はピストン本体2を含むが、これは移送側3、移送側3と対向配置された駆動側4およびピストンジャケット5を有し、移送側3および駆動側4は外周側においてピストンジャケット5によって取り囲まれている。ピストン1は好ましくはプラスチックコンポーネントであり、これは射出成形処理によって製造されるのが有利である。ピストンジャケット5は移送側3と駆動側4との間の接続部を形成し、ピストンジャケット5はピストン軸線9を中心として配置されている。ピストンジャケットは、特に、ピストンが円筒形カートリッジ内での収容のために意図される場合、回転対称体として形成される。ピストンジャケット5は移送側3において突出部6へと変化する。突出部6は、この実施形態では、薄壁回転対称体であり、これは、ピストン本体2のアームとして断面図において認識可能である。突出部6はカートリッジ17内でのピストンの誘導のためのガイド要素7を有するが、これは、カートリッジ17の壁16に対するシーリング接触を確立するのに適したものである。ガイド要素は、特に、シーリングリップとして構成できる。必要ならば、複数のシーリングリップを設けることもできる。
【0072】
傾斜に抗して安定させる要素18は、ピストンの駆動側4上に配置でき、かつ、カートリッジ内でのピストンの案内の改善に役立つ。ピストンは、カートリッジ17の壁と接触状態にある傾動に抗して安定させる要素によって確実にガイドされ、すなわちピストン本体2軸線はピストン軸線9と一致する。傾動に抗して安定させる要素18によって、移送側3はピストン軸線9に対して直交する平面内に配置されることが、あるいは移送側3が平滑でない場合には、特定の半径および特定の高さによって特徴付けられる移送側でのピストン面のポイントは、周面に沿って実質的に同じ垂直面内に配置されることが保証される。ピストン1が傾くことがあれば、そうしたポイントの条件はもはや満たされないであろう。外周側でのカートリッジの壁16との接触は、そうした傾動に抗して安定させる要素18によって供出作業の間中、維持でき、この結果、ピストンの振れは、先に説明したガイド要素7と協働で抑止できる。
【0073】
図8に示すベント要素60は補強リブ65に隣接して配置されている。半径方向に延在する補強リブ65は、ベント要素60に属する半径よりも小さな半径上に配置されており、すなわち補強リブ65はベント要素の長手方向軸線70よりも小さなピストン軸線9からの距離を有する。ベント要素60は、ピストンの移送側3を駆動側4に接続する内腔75を有する。ガスは、二つの入口開口62,63を経て内腔75内に流入する。入口開口はピストン表面に対して、斜めに配置される。ピストン面は、この実施形態では、ベントスリット71のスリットベース76であり、これは、図4、図5あるいは図6bにおけるように構成できる。スリットベース76は、ピストン軸線9に対して直交する平面内に存在する。スリットベースと入口開口の入口平面との間の角度77は、好ましくは、0°よりも大きく、90°まで可能である。
【0074】
ベント要素は、駆動側4において補強リブを越えて突出するスタブ74を有する。ベント要素のより高い構造的強度は、ピストンの調整が終了した後に、それを用いて出口開口72が閉塞される溶着ツールにとってのアクセス可能性を向上させる。この閉塞は、カートリッジが、ピストンが最も高いポジションを取らないように支持されるときに、フィラー物質の放出を阻止するために必要である。さらに、個々のフィラー物質を貯蔵中に空気と接触させないことが必要になるかもしれない。というのは、これによって化学反応が生じ、フィラー物質の特性が望ましくない程度まで変化することがあるからである。
【0075】
さらに、スタブ74が可能な限り大きな長さを有することが有利であり、これは、内腔によって形成される通路がこれによって延長されるからである。フィラー物質は入口開口62,63の一つに実際に達するであろう場合、フィラー物質が出口開口に達するまでの期間を延長することができる。それは、せいぜい、確定された充填レベルを持たず、むしろ山および谷からなる表面を形成する粘性のあるフィラー物質によって生じることが予期できる。このフィラー物質は、さらに、ベントスリット内に入り込み、そして入口開口62,63まで移動し得る。セッティングプロセスは、したがって、出口開口に実際に達する前に終了させられる。出口開口72は、したがって、気を遣う必要があるフィラー物質によるその汚損を伴わずに溶着できる。フィラー物質がすなわち粘性を有する場合、その流速はまた、セッティングプロセスに続いておそらく生じる圧力均一化によって低いものであり、したがってフィラー物質が出口開口を出る前に溶着の作業工程は既に終了してしまう。出口開口の汚損は、それゆえ、図8に示す実施形態によって回避できる。出口開口は、それゆえ、流体を通さない様式で溶着でき、この結果、充填されたカートリッジは、より長い期間にわたって、所望の状態で貯蔵可能である。
【0076】
図9は、ピストン本体2の全体を横切るベントスリット71を有するピストン1の変形例を示している。図8におけるのと同じ機能のピストン1の部位には同じ参照数字を付してある。ベント要素60はラビリンス通路78,79を有するが、これは入口開口62,63を内腔75に接続している。これらラビリンス通路は、その中にフィラー物質を堆積させることができるフィルター経路を形成する。こうして、フィラー物質が出口開口72まで入り込むのが回避される。
【0077】
図10は、ピストンのプラスチックを化学的に変質させる傾向があるフィラー物質用のピストン1の変形例を示している。ピストン1はピストン本体2を含むが、これは、移送側3、この移送側3と対向するよう配置された駆動側4およびピストンジャケット5と、保護要素13とを有する。ピストンジャケット5は、移送側3と駆動側4とを接続すると共に、カートリッジ17の壁16に対する境界を提供している。
【0078】
保護要素13は、カバープレートとして形成され、そしてピストン本体2を覆っており、この結果、ピストン本体はフィラーにさらされない。保護要素12あるいはピストン本体2はベント通路14を有し、それに沿ってガスは保護要素を経て中間スペース内へと案内できる。中間スペース12はピストン本体2と保護要素13との間で少なくとも部分的に延在している。中間スペース12から、ガスはベント要素60内に移動するが、これは、ここでは、シンプルな内腔75として形成されている。この内腔は、さらなる内腔を伴って形成されたスタブ74内に開口している。スタブ74は出口開口72を有するが、これは、今度は、ピストンのセッティングの終了後、閉塞可能である。
【0079】
図7ないし図10に示すベント要素の変形例はまた、当然ながら、図4ないし図6bの一つに基づくリングピストン51のために使用可能である。
【符号の説明】
【0080】
5 アウターピストンジャケット
10,11 入口開口
16 壁
17 カートリッジ
18 傾動に抗して安定させる外側要素
20 スタティックミキサー
21 ミキサーハウジング
22 混合要素
23 第1の端部
24 第2の端部
25,26 入口開口
27 出口開口
30 同軸カートリッジ
31,32 貯蔵チャンバー
33,34 入口開口
40 保持要素
41 第1の取り付け要素
42 第2の取り付け要素
44,45 出口開口
46 出口要素
47 第1の受け要素
48 第2の受け要素
49 回転要素
50,51 ピストン
52 ピストン本体
55 インナーピストンジャケット
56 突出部
57 インナーガイド要素
58 スクレーパー要素
59 インナー側
60,61 ベント要素
62,63 入口開口
64 傾動に抗して安定させる内側要素
65 補強リブ
66 壁
67 インナーチューブ
71,73 ベントスリット
72 出口開口
74 スタブ
81 アウタープランジャ
82 インナープランジャ
83 外ネジ
84 内ネジ
85 取り付け要素
86 出口要素
87 ヘッド端部
88 接触面
89 当接部
90 フット端部
91 内腔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジの貯蔵チャンバー内にフィラー物質を貯蔵するためのカートリッジのためのピストン(1,50,51)であって、移送側(3,53)と、この移送側(3,53)と対向するように配置された駆動側(4,54)とを有するピストン本体(2,52)を含みかつピストンジャケット(5,55)を含み、前記ピストンジャケット(5,55)はピストン軸線(9)を中心として配置され、かつ、前記ピストン本体(2,52)は外周側において前記ピストンジャケット(5,55)によって取り囲まれ、前記ピストンジャケットは、前記ピストンジャケット(5,55)の前記シーリング要素と前記カートリッジの前記貯蔵チャンバーの内壁との間に、流体を通さない接続部を形成するためのシーリング要素を有し、これによって前記シーリング要素は、前記移送側(3,53)と前記駆動側(4,54)との間に、設置状態において、流体を通さない接続部を形成し、前記ピストン本体(2,52)は第1および第2のベント要素(60,61)を含み、これによって、前記移送側(3,53)と前記駆動側(4,54)とは、それぞれの内腔(75)によって互いに接続可能であり、かつ、前記ピストン本体(2,52)は、前記移送側(3,53)上に配置されたベントスリット(71,73)を有することを特徴とするピストン(1,50,51)。
【請求項2】
前記第1あるいは第2のベント要素(60,61)の少なくとも一つのために、第1の入口開口(62)および第2の入口開口(63)が設けられ、これは、前記前面(3,53)から前記駆動側(4,54)へとガスを導くことができるように前記内腔(75)内へ開口していることを特徴とする請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
第1および第2の内腔が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のピストン。
【請求項4】
前記ベントスリット(71,72)が前記第1および第2の入口開口(62,63)と接続されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のピストン。
【請求項5】
前記内腔の少なくとも一つは長手方向軸線(70)を有し、この軸線は、前記ピストン(9)の前記長手方向軸線と実質的に平行に整列していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項6】
前記入口開口(62,63)の少なくとも一つは、前記ベント要素(60,61)の前記長手方向軸線(70)に対して、ある角度(77)をなして整列していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項7】
前記角度(77)は、10°よりも大きく90°以下であり、好ましくは20°よりも大きく90°以下であり、特に好ましくは30°以上、90°以下であることを特徴とする請求項6に記載のピストン。
【請求項8】
前記内腔(75)は少なくとも一つのキンクを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項9】
前記内腔(75)は少なくとも一つの湾曲を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項10】
前記内腔(75)は少なくとも一つの制限要素を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項11】
前記内腔(75)の最小直径は、前記ピストンの直径の1/40よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項12】
インナーピストンジャケット(55)を含み、このインナーピストンジャケット(55)は前記ピストン軸線(9)に面するインナー側(59)において前記ピストン本体(55)を取り囲んでおり、インナーシーリング要素を含み、これは、前記インナーピストンジャケット内に配置されたインナーチューブの壁とのシーリング接触を確立するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のピストン(51)。
【請求項13】
補強リブ(15,65)が、前記ピストンジャケット(5,55)を前記ピストン本体(2,52)に対して連結するために前記駆動側(4,54)上に配置されており、かつ/または、傾動に抗して安定化させる要素(18,64)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のピストン(1,51,52)を含む供出機構。
【請求項15】
複数の成分を供出するためのカートリッジ(17)を含み、前記成分は、互いに隣り合ってあるいは同軸状に配置された前記カートリッジの貯蔵チャンバー内に配されていることを特徴とする請求項14に記載の供出機構。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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