説明

カートリッジ式注射器

【課題】少量注出用の少ない部品点数で生産性に優れたカートリッジ式注射器を提供する。
【解決手段】シリンジ2とピストン部材10を備えるカートリッジ1と、周壁16の装填口Aを通してカートリッジ1を収納し、周壁16に指掛け部19を持つ装填具15と、装填具15内に収納されてピストン部材10を押し込めるプランジャ20とを備え、注出管31より内容物の注出が可能なカートリッジ式注射器である。シリンジ2は、胴部3と先端部と後端部5を有し、内側に貫通孔が形成され、環状壁6を介して先端部を取り囲む筒体部7が一体に設けられ、筒体部7に注出管ホルダ32を着脱可能に螺合させるねじ部を形成する。装填具15は、周壁16の内周面にシリンジ2の胴部3に合さってシリンジ2の軸線O方向の移動を阻止する凸部が設けられ、装填口Aを形作る周壁16aの相互間に胴部3を押し込むことで胴部3が周壁16aそれぞれに係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の充填部分をカートリッジとして構成することで、使用時ごとに適宜交換可能であって、特に、少量の内容物を一定量だけ注出するのに好適なカートリッジ式注射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカートリッジ式注射器としては、ノズルを有する収納筒部(シリンジ)とピストンを備えるカートリッジを、本体筒(装填具)に形成した開放部(装填口)を通して収納した後、当該本体筒にロックパイプを嵌合させることで一体化させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3747220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のカートリッジ式注射器は、カートリッジの収納筒部に、その周方向に間隔を置いて複数の係止突片を設け、これら係止突片を本体筒の内周面に形成した係止凹部に嵌合させた上で、ロックパイプを嵌合させるため、部品点数及び生産工程の削減に改善の余地がある。
【0005】
加えて、カートリッジは、同径の収納筒部にノズルを一体に設けたものである。このため、少量の内容物を一定量だけ注出する場合には、必ずしも適用できないときがあり、改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的とするところは、少量の内容物を一定量だけ注出するのに適し、少ない部品点数で生産性に優れた、新規のカートリッジ式注射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリンジとピストン部材とを備えるカートリッジと、周壁に形成された装填口を通して周壁内にカートリッジを収納すると共に当該周壁に指掛け部が設けられた装填具と、当該装填具内に収納されてピストン部材を押し込み可能なプランジャとを備え、シリンジに設けた注出管を通して内容物の注出が可能なカートリッジ式注射器であって、
シリンジは、胴部と、当該胴部よりも径の小さい先端部と、当該胴部よりも径の大きい後端部を有し、その内側に、貫通孔が形成されていると共に、環状壁を介して先端部を取り囲む筒体部が一体に設けられ、当該先端部又は筒体部に、注出管ホルダを着脱可能に螺合させるねじ部を形成したものであり、
装填具は、周壁の内周面に、シリンジの胴部に合さって当該シリンジの軸線方向の移動を阻止する凸部が設けられていると共に、当該装填口を形作る周壁の相互間にシリンジの胴部を押し込むことで、当該胴部が周壁それぞれに係止されるものであることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、装填具の内側に、後端に形成した開口部に通じる大径孔と、この大径孔よりも内径が小さく装填具の先端に開口部を形成する小径孔で構成された貫通孔を形成すると共に、
装填具の装填口を、当該装填具の先端から軸線方向に切り欠いた開口部で構成することで、前記凸部を、小径孔を形作る周壁の内周面として構成することができる。
【0009】
また、本発明では、シリンジの貫通孔に段部を形成する一方、当該段部に接触する段部をピストン部材に設け、ピストン部材及びプランジャの押し込みを規制するストッパを構成することができる。
【0010】
また、本発明では、プランジャに、装填具の装填口を形作る周壁に接触する突起を設け、プランジャの引き出しを規制するストッパとすることもできる。この場合、突起は、プランジャに弾性保持されたものであることが好ましい。
【0011】
更に、本発明では、装填具の周壁に、軸線方向に延在して装填具の内側に通じる長孔を形成する一方、当該長孔を貫通する突起をプランジャに設け、プランジャ部材の進退を規制するストッパとすることができる。この場合も、突起は、プランジャに弾性保持されたものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明では、プランジャに、装填具の後端に接触する段部を設け、プランジャの押し込みを規制するストッパとすることができる。
【0013】
更に、ピストン部材は、ピストン本体にシール部材を設けることができる。
【0014】
また、本発明では、ピストン部材の後端部をフランジ部で形作り、プランジャの先端が当該フランジ部を押圧するようにできる。或いは、ピストン部材の後端部をシリンジの貫通孔に収納可能に形作り、当該ピストン部材の後端部をプランジャに設けた突起で押圧するようにもできる。
【0015】
加えて、装填具とプランジャとの間に、変形及び復元の可能な弾性部材を設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、シリンジを装填具に形成した装填口を通して収納すれば、この装填具周壁の内周面に形成した凸部に、シリンジの胴部が合さることで、胴部よりも径の大きな環状壁及び後端部それぞれが引っ掛かりとして機能するため、当該シリンジの軸線方向の移動は阻止される。このため、装填具内に装填されたシリンジは、プランジャの動きによって、押し出されたり、引き込まれたりすることがない。
【0017】
また、装填具に装填されたシリンジは、その胴部が装填口を形作る周壁の相互間に押し込まれることで、当該周壁それぞれに引っ掛かって係止される。このため、装填口を閉じる部材を別途設けることなく、シリンジを装填具の装填口に押し込むだけの簡単な作業で、装填口からの脱落を防止することができる。
【0018】
加えて、シリンジの胴部の外径は、環状壁及び後端部の外径よりも小径であることから、シリンジの充填空間を形成する貫通孔も胴部の外径に従い小さくなることで、結果として、内容物の充填容量も少なく抑えられる。加えて、シリンジの先端部又は先端部を取り囲む筒体部に、注出管ホルダを着脱可能に螺合させるねじ部が形成されていることから、注出管の選択も、微量な注出の可能なニードルだけでなく、パイプやノズル等も採用できる。このため、少量の内容物を一定量だけ注出するのに適する。
【0019】
従って、本発明によれば、少量の内容物を一定量だけ注出するのに適し、少ない部品点数で生産性に優れた、新規のカートリッジ式注射器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明である、カートリッジ式注射器の第1の形態であって、同形態に係るカートリッジにニードルパーツを装着した状態を仮想線で示すと共に、それを、プランジャが組み付けられた装填具に装填した状態で示す側面図である。
【図2】(a)は、同形態に係る、カートリッジ使用前の流通時における状態を示す断面図であり、(b)は、使用後の廃棄時における状態を示す断面図である。
【図3】同形態において、ニードルを通して注出が行われる前の状態を、一部断面で示す正面図である。
【図4】同形態において、ニードルを通して注出が行われた後の状態を、一部断面で示す正面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】注出管ホルダの一形態である、ニードルパーツを示す断面図である。
【図7】同形態に係る、装填具を正面で示すと共に、そのA−A端面、B−B端面、C−C端面及びD−D端面を示す。
【図8】同形態に係る、プランジャを示す正面図である。
【図9】本発明である、カートリッジ式注射器の第2の形態であって、同形態に係るカートリッジにニードルパーツを装着した状態を仮想線で示すと共に、それを、プランジャが組み付けられた装填具に装填した状態で示す側面図である。
【図10】同形態において、ニードルを通して注出が行われた後の状態を、一部断面で示す正面図である。
【図11】同形態に係る、装填具を正面で示すと共に、そのE−E端面を示す。
【図12】同形態に係る、プランジャを示す正面図である。
【図13】同形態に係るカートリッジにニードルパーツを装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明である、カートリッジ式注射器の様々な形態を説明する。
【0022】
図1〜図8は、本発明の第1の形態である。図1中、符号1は、使い捨てのカートリッジである。カートリッジ1には、ニードルパーツ30が装着されている。符号2は、内容液が充填された合成樹脂製のシリンジである。シリンジ2は、図2(a)に示すように、ウエスト(括れ部)をなす胴部3と、この胴部3よりも外径の小さい先端部4と、この胴部3よりも外径の大きい後端部5を有し、胴部3の先端側には、環状壁6を介して先端部4を取り囲む筒体部7が一体に設けられている。
【0023】
また、シリンジ2には、その内側に貫通孔8が形成されている。貫通孔8は、先端部4で取り囲まれた小径孔8aと、胴部3及び後端部5で取り囲まれた大径孔8bとを有し、小径孔8aと大径孔8bとの間には、拡径孔8cが形成されている。拡径孔8cは、その斜面が小径孔8aから大径孔8bに向かって拡径する段部を形成する。
【0024】
符号10は、シリンジ2の内容液を圧送する、合成樹脂製のピストン部材である。ピストン部材10は、小径孔8aに摺動可能に保持されるピストン本体11を有する。ピストン本体11は、ピン等の棒状部材としてなり、その先端部10aが内容液を圧送する加圧面として機能する。また、小径孔8aとの摺動部には、シール部材Sが設けられている。ピストン本体11は、小径孔8aにて、オーバーキャップCとの間に内容液の充填空間Rを形成する。オーバーキャップCには、小径孔8aを密封するシール突起CSが一体に設けられている。これにより、流通段階でカートリッジ1にオーバーキャップCを装着しておけば、充填空間R内に予め内容液を充填しておくことができる。
【0025】
また、ピストン部材10は、大径孔8b内に配置されてピストン部材10を案内する案内部12を有する。案内部12は、ピストン本体11を取り囲む、4枚の薄い板状部材で構成されている。
【0026】
案内部12には、傾斜片12aが形成されている。この傾斜片12aは、シリンジ2の段部(拡径孔8cの斜面)に接触してピストン部材10の押し込みを規制する。即ち、シリンジ2の拡径孔8cの斜面及びピストン部材10の傾斜片12aは、内容液を一定量だけ注出させるために、ピストン部材10の押し込みを規制するストッパとして機能する。なお、本発明に従えば、シリンジ2の段部とは、傾斜面に限定されることなく、垂直な面で構成されたものも含む。
【0027】
加えて、ピストン本体11の後端部13は、フランジ部として形作られている。これにより、ピストン本体11は、後端部13の後端(ピストン本体11の後端)10bを押圧することで、内容液が充填された図2(a)に示す状態から、図2(b)に示すように、シリンジ2内に押し込むことができ、その押し込みは、後端部13がシリンジ2の後端2bに接触することでも規制できる。この場合も、内容液を一定量だけ注出させるのに役立つ。
【0028】
次に、図1中の符号15は、カートリッジ1を収納する合成樹脂製の装填具である。装填具15は、図3に示すように、軸線Oを取り囲む周壁16を有してその内側に貫通孔17を形成する。貫通孔17も、小径孔17aとこの小径孔17aよりも内径の大きな大径孔17bとを有し、小径孔17aと大径孔17bとの間には、軸線Oに対して垂直(径方向)に延在する段差部17cが形成されている。
【0029】
また、周壁16には、カートリッジ1を装填するための装填口Aが形成されている。本形態では、装填口Aは、図7に示すように、装填具15の先端15aから軸線O方向に切り欠いた開口部で構成する。
【0030】
また、小径孔17aを形作る周壁16は、A−A端面で示すように、その断面形状がC字状をなし、更に、軸線O方向では、D−D端面で示すように、凸部18を構成し、軸線O周りに延在する。即ち、小径孔17aを形作る周壁16の内周面は、周壁16の他の内周面よりも径方向内側に突出した円弧状の凸部18として構成される。このため、凸部18は、軸線O方向において、シリンジ2の胴部3に合さって、凸部18の前端(装填具15の先端15a)と、凸部18の後端(段差部17c)で、シリンダ2の環状壁6及び後端部5を規制して、シリンジ2が装填具15に対して軸線O方向に移動しないように、シリンジ2の軸線O方向に対する移動を阻止する。
【0031】
加えて、装填口Aを形作る周壁16のうち、シリンジ2の胴部3に対応する部分(胴部側周壁)16aは、A−A端面で示すように、その断面形状がC字状をなし、その相互間の隙間は、胴部3の外径よりも狭くなっている。これにより、シリンジ2の胴部3は、胴部側周壁16aの相互間に形成された隙間に押し込まれることで、当該周壁16aそれぞれに引っ掛かって係止される。このため、シリンジ2を装填口Aに押し込むだけの簡単な作業で、装填口Aを通して凸部18に嵌合させることができる。特に、本形態では、周壁16aの縁部側内周面に係止突起16pが設けられている。なお、符号19は、周壁16に設けられた指掛け部である。
【0032】
図1中の符号20は、装填具15内に収納されるプランジャである。プランジャ20は、装填具15の後端15bに形成された開口部を通して貫通孔17内に収納される。プランジャ20は、ピストン部材10の後端10bを押圧する押圧部21を有し、この押圧部21には、4枚の薄い板状部材22からなる十字断面形状のシャフトが設けられている。また、シャフトの後端には、使用者が指で押圧する受圧部23が設けられている。
【0033】
更に、プランジャ20には、装填口Aを形作る周壁16の縁部(軸線方向の縁部)16eに接触する突起24を設け、プランジャ20の引き出しを規制するストッパとして機能させている。突起24は、図8に示すように、板状部材22に、押圧部21に向かって延在する切り欠き25を形成することで、プランジャ20に弾性保持されている。これにより、プランジャ20を後端15bの開口部から挿入したときは、突起24は、大径孔17b内で弾性変形することで、プランジャ20の押し込みを邪魔することなく、装填口Aの縁部16e及び後述の長孔27の縁部27eに引っ掛かることで、装填具15に対して抜け止め保持される。
【0034】
加えて、プランジャ20には、板状部材22に、装填具15の後端15bに接触する段部26を設け、プランジャ20の押し込みを規制するストッパとして機能させている。この場合も、内容液を一定量だけ注出させるのに役立つ。
【0035】
符号30は、注出管としてのニードルを備えるニードルパーツである。ニードルパーツ30は、ニードル31とニードルホルダ32からなる。ニードルホルダ32には、シリンジ2の筒体部7の内側に形成されためねじ部7sに螺合するフランジ部33が設けられている。フランジ部33は、おねじ部として機能し、軸線Oに対してめねじ部7sと平行に傾斜している。これにより、シリンジ2からオーバーキャップCを取り外した後、シリンジ2にニードルパーツ30を装着させることができる。この場合、ニードルパーツ30をシリンジ2に螺合させることで、ニードルパーツ30を強固に固定することができる。
【0036】
次に、本形態に係る、カートリッジ式注射器の操作について説明する。
【0037】
本形態では、使用者は、図2(a)に示す充填済みカートリッジ1からオーバーキャップCを取り外した後、ニードルパーツ30をねじ込むことで、カートリッジ1にニードル31を装着する。
【0038】
次いで、装填口Aを通して、ニードル付きカートリッジ1を装填具15内に収納する。シリンジ2は、その胴部3が装填口Aを形作る周壁16aの相互間に押し込まれることで、当該周壁16aそれぞれに引っ掛かって係止される。これにより、ニードル付きカートリッジ1は、装填口Aを閉じる部材を別途設けることなく、操作器具(装填具15)に取り付けることができる。特に、本形態では、周壁16aの縁部側内周面に係止突起16pを設けることで、胴部3に対する引っ掛かりを高めている。
【0039】
実際に注入する段階では、図3に示す状態から、プランジャ20を押し込むと、プランジャ20がピストン部材10を押し込むことで、空間Rに充填された内容液は、ニードル31を通して人体等に注入される。このとき、ニードル付きカートリッジ1は、凸部18が胴部3に合さることで、操作器具(装填具15)から押し出されたり、引き出されたりすることがない。
【0040】
使用後は、シリンジ2の筒体部7を把持して外向きに引っ張ることで、装填具15から使用済みニードル付きカートリッジ1を取り外すことができる。これにより、残った操作器具は、新たなニードル付きカートリッジ1を使用して繰り返し内容液を注入できる。
【0041】
更に、ニードルパーツ30は、カートリッジ1に対して軸線O周りに回してねじを緩めることで、カートリッジ1から取り外すことができる。これにより、ニードルパーツ30とカートリッジ1を分別廃棄することができる。カートリッジ1を廃棄するときには、図2(b)に示すように、オーバーキャップCを装着する。これにより、カートリッジ1を安全且つ衛生的に廃棄することができる。
【0042】
なお、操作器具は、装填具15の後端15bからプランジャ20を挿入するだけの簡単な作業で、予め準備しておくことができる。また、ニードルパーツ30については、従来と同様、ニードルホルダ32に別途オーバーキャップを装着すれば、安全且つ衛生的に分別廃棄することができる。
【0043】
上述のとおり、カートリッジ1を装填具15に形成した装填口Aを通して収納すれば、この装填具15の内周面に形成した凸部18に、シリンジ2の胴部3が合さることで、胴部3よりも径の大きな環状壁6及び後端部5それぞれが引っ掛かりとして機能するため、シリンジ2の軸線O方向の移動は阻止される。このため、装填具15内に装填されたカートリッジ1は、プランジャ20の動きによって、押し出されたり、引き込まれたりすることがない。
【0044】
また、装填具15に装填されたカートリッジ1は、その胴部3が装填口Aを形作る周壁16aの相互間に押し込まれることで、当該周壁16aそれぞれに引っ掛かって係止される。このため、装填口Aを閉じる部材を別途設けることなく、カートリッジ1を装填具15の装填口Aに押し込むだけの簡単な作業で、装填口Aからの脱落を防止することができる。
【0045】
加えて、シリンジ2の胴部3の外径は、環状壁6及び後端部5の外径よりも小径であることから、カートリッジ1の充填空間Rを形成する貫通孔8(小径孔8a)も胴部3の外径に従い小さくなることで、結果として、内容物の充填容量も少なく抑えられる。加えて、シリンジ2の先端部4又は先端部4を取り囲む筒体部7に、ニードルホルダ32を着脱可能に螺合させるねじ部7sが形成されていることから、注出管の選択も、本形態のように、微量な注出の可能なニードルだけでなく、パイプやノズル等も採用できる。このため、少量の内容物を一定量だけ注出するのに適する。
【0046】
従って、本形態によれば、少量の内容物を一定量だけ注出するのに適し、少ない部品点数で生産性に優れた、新規のカートリッジ式注射器を提供することができる。
【0047】
ところで、図9〜12は、本発明の第2の形態を示す。なお、第1の形態と同一の部分は、同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0048】
本形態は、図9のF−F断面に示すように、装填具15の周壁16に、軸線O方向に延在して装填具15の内側に通じる長孔(スロット孔)27を形成し、この長孔27に、プランジャ20に設けた突起24を貫通させることで、プランジャ20の進退を規制するストッパとしている。この場合も、内容液を一定量だけ注出させるのに役立つ。
【0049】
加えて、本形態では、装填具15とプランジャ20との間に、変形及び復元の可能な弾性部材40が設けられている。これにより、プランジャ20は、装填具15に対してプランジャ20を弾性部材40の弾性力に抗して押し込むと、弾性部材40の復元力により、自動的に初期の位置に復帰することができる。即ち、内容液を注出後、プランジャ20の押圧を解除すると、プランジャ20は、カートリッジ1を装填できる位置まで自動的に復帰する。このため、カートリッジ1を交換して繰り返し使用するときに、カートリッジ1の着脱が容易になることで、使い勝手がよい。弾性部材40としては、例えば、コイルばねが挙げられるが、本発明に従えば、これに限定されるものではない。
【0050】
更に、本形態では、ピストン部材10の後端部10bを貫通孔8に収納可能に形作ることで、当該後端部10bを押圧部として構成している。このため、プランジャ20は、その先端に設けた突起を押圧部21として構成することで、ピストン部材10の後端部10bを貫通孔8内に押し込むように構成されている。この場合、カートリッジ1の全長を短く抑えることで、コンパクト化を図ることができる。
【0051】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、装填口Aは、装填具15の先端15aから軸線Oに沿って切り欠いた形状とすることで、装填具15の先端15aを胴部3との引っ掛かりに利用しているが、これに限定されるものではない。例えば、周壁3の内周面に別途、環状の凸部18を設け、その部分に対応(対向)する位置に、装填口Aを形成すれば、装填具15の先端15aを胴部3との引っ掛かり使用する必要はない。この場合、筒体部7が装填具15内に収納されると、この筒体部7と共に、これに取り囲まれる先端部4の外径も更に小径化するため、更に、少量の注出が可能となる。更に、本発明に従えば、各形態の構成要素は、各形態の相互間で転用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、シリンジとピストン部材とを備えるカートリッジと、周壁に形成された装填口を通してカートリッジを収納すると共に当該周壁に指掛け部が設けられた装填具と、装填具内に収納されてピストン部材を押し込み可能なプランジャとを備え、シリンジに設けた注出管を通して内容物の注出が可能なカートリッジ式注射器であれば、様々なものに適用することができる。また、内容物の種類についても、限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 カートリッジ
2 シリンジ
3 シリンジ胴部
4 シリンジ先端部
5 シリンジ後端部
6 環状壁
7 筒体部
7s めねじ部
8 貫通孔
8a 小径孔
8b 大径孔
8c 拡径孔
10 ピストン部材
10a ピストン先端
10b ピストン後端
11 ピストン本体
12 案内部
12a 傾斜辺
13 ピストン後端部
15 装填具
16 装填具周壁
16a 胴部側周壁
16e 周壁縁部
16p 係止突起
17 貫通孔
17a 小径孔
17b 大径孔
17c 段部
18 凸部
20 プランジャ
21 押圧部
22 板状部材
23 受圧部
24 突起
27 長孔
27e 長孔縁部
30 ニードルパーツ
31 ニードル
32 ニードルホルダ
33 フランジ部(おねじ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジとピストン部材とを備えるカートリッジと、周壁に形成された装填口を通して周壁内にカートリッジを収納すると共に当該周壁に指掛け部が設けられた装填具と、当該装填具内に収納されてピストン部材を押し込み可能なプランジャとを備え、シリンジに設けた注出管を通して内容物の注出が可能なカートリッジ式注射器であって、
シリンジは、胴部と、当該胴部よりも径の小さい先端部と、当該胴部よりも径の大きい後端部を有し、その内側に、貫通孔が形成されていると共に、環状壁を介して先端部を取り囲む筒体部が一体に設けられ、当該先端部又は筒体部に、注出管ホルダを着脱可能に螺合させるねじ部を形成したものであり、
装填具は、周壁の内周面に、シリンジの胴部に合さって当該シリンジの軸線方向の移動を阻止する凸部が設けられていると共に、当該装填口を形作る周壁の相互間にシリンジの胴部を押し込むことで、当該胴部が周壁それぞれに係止されるものであることを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項2】
請求項1において、装填具の内側に、後端に形成した開口部に通じる大径孔と、この大径孔よりも内径が小さく装填具の先端に開口部を形成する小径孔で構成された貫通孔を形成すると共に、
装填具の装填口を、当該装填具の先端から軸線方向に切り欠いた開口部で構成することで、前記凸部が小径孔を形作る周壁の内周面として構成されていることを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項3】
請求項1又は2において、シリンジの貫通孔に段部を形成する一方、当該段部に接触する段部をピストン部材に設け、ピストン部材及びプランジャの押し込みを規制するストッパを構成したことを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、プランジャに、装填具の装填口を形作る周壁に接触する突起を設け、プランジャの引き出しを規制するストッパとしたことを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、装填具の周壁に、軸線方向に延在して装填具の内側に通じる長孔を形成する一方、当該長孔を貫通する突起をプランジャに設け、プランジャ部材の進退を規制するストッパとしたことを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項6】
請求項4又は5において、突起は、プランジャに弾性保持されたものであることを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、プランジャに、装填具の後端に接触する段部を設け、プランジャの押し込みを規制するストッパとしたことを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項において、ピストン部材は、ピストン本体にシール部材が設けられていることを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項において、ピストン部材の後端部をフランジ部で形作り、プランジャの先端が当該フランジ部を押圧するようにしたことを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項において、ピストン部材の後端部をシリンジの貫通孔に収納可能に形作り、当該ピストン部材の後端部をプランジャに設けた突起で押圧するようにしたことを特徴とするカートリッジ式注射器。
【請求項11】
請求項4又は5において、装填具とプランジャとの間に、変形及び復元の可能な弾性部材を設けたことを特徴とするカートリッジ式注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−231954(P2012−231954A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102509(P2011−102509)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】