カートン
【課題】折り曲げた時に生じる反発力が小さく、しかも繰り返し折り曲げた場合でも切れにくいヒンジ部を有する板紙製のカートンを提供すること。
【解決手段】上面パネルから前面パネルにかけて開閉用の蓋パネルが区画され、その蓋パネルは後方の折曲げ線21を介して上方に持ち上げられるようになっており、その折曲げ線21として、断続的に並んで設けられた複数の切れ目からなり、各切れ目はそれらの端が並び方向に離間した状態で且つそれらが並び方向に向かって左右交互に設けられており、板紙を切れ目の並び方向で折り曲げると、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近から切れ目の端に向かって板紙の組織破壊が徐々に大きく起こるようにして折り曲げられるように構成されたヒンジ部を用いる。
【解決手段】上面パネルから前面パネルにかけて開閉用の蓋パネルが区画され、その蓋パネルは後方の折曲げ線21を介して上方に持ち上げられるようになっており、その折曲げ線21として、断続的に並んで設けられた複数の切れ目からなり、各切れ目はそれらの端が並び方向に離間した状態で且つそれらが並び方向に向かって左右交互に設けられており、板紙を切れ目の並び方向で折り曲げると、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近から切れ目の端に向かって板紙の組織破壊が徐々に大きく起こるようにして折り曲げられるように構成されたヒンジ部を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙製の紙器であるカートンの技術分野に属し、詳しくは、繰り返して折り曲げられるヒンジ部のあるカートンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、板紙や段ボールは各種の紙器に利用されている。そして、板紙製の紙器としては種々のタイプの箱があるが、これらは一般的には、印刷、型抜き、そして貼合の工程により製造される。このような紙器の中でも、上板の一部に内容物の取出口となる開閉蓋を備えたタイプの容器が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このタイプの容器は、上板に折曲線を介して蓋板を連結しており、この蓋板はミシン目のところを切断してから、折曲線をヒンジ部として上方へ持ち上げることで取出口が形成されるようになっている。そして、蓋板の折曲線を押し罫で構成することもあるが、蓋板を持ち上げやすく且つ戻りにくくするために、通常は、押し罫に重ねて断続的に切れ目を形成した所謂リード罫でヒンジ部としての折曲線を構成している。なお、これらの押し罫やリード罫は型抜き工程で形成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−139025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、板紙製の容器では、その一部分を蓋として開けるような場合、蓋のヒンジ部としてリード罫を形成することが多い。ところが、リード罫は押し罫に重ねて断続的に切れ目を形成したものであるため、折り曲げた時に残った押し罫の部分に反発力が発生し、蓋が戻りやすいという傾向がある。したがって、蓋を開けた状態を保ちたい場合は使い勝手が悪いという問題点がある。そこで、反発力を小さくしようとしてミシン目の割合を多くすると、繰り返して折り曲げた場合に切れやすくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、折り曲げた時に生じる反発力が小さく、しかも繰り返し折り曲げた場合でも切れにくいヒンジ部を有する板紙製のカートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、上面パネル、底面パネル、前面パネル、背面パネル及び一対の側面パネルを備えた偏平直方体形状の板紙製のカートンであって、上面パネルから前面パネルにかけて開閉用の蓋パネルが区画され、その蓋パネルは後方の折曲げ線を介して上方に持ち上げられるようになっており、その折曲げ線として、断続的に並んで設けられた複数の切れ目からなり、各切れ目はそれらの端が並び方向に離間した状態で且つそれらが並び方向に向かって左右交互に設けられており、板紙を切れ目の並び方向で折り曲げると、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近から切れ目の端に向かって板紙の組織破壊が徐々に大きく起こるようにして折り曲げられるように構成されたヒンジ部を用いたことを特徴とする。
【0008】
本発明のカートンにおけるヒンジ部は、後でも例示するように、断続的に並んで設ける切れ目の形状に特に限定はない。すなわち、切れ目の形状は、板紙の厚さ、開閉の度合い、開閉の耐久性などに応じて適宜決めるようにすればよい。また、切れ目を規則正しく設けるのがデザイン上から好ましい場合が多いが、必ずしも規則正しくなくてもよい。また、切れ目はヒンジ部となるところに渡って全て設ける必要はなく、一部分に設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカートンは、開閉用の蓋パネルをその後方のヒンジ部で折り曲げると、切れ目の端に近い部分は板紙の組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近は板紙の組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つことから、蓋パネルをヒンジ部で折り曲げる時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で用いるヒンジ部の一例を示す平面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】本発明で用いるヒンジ部の別の例を示す平面図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【図7】本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図である。
【図8】図7の一部拡大図である。
【図9】本発明に係る板紙製のカートンを開封前の状態で示す斜視図である。
【図10】図9のカートンを開封後の状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明で用いるヒンジ部の一例を示す平面図であり、図2は図1の一部拡大図である。なお、図1は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0012】
図1及び図2に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数の直線状の切れ目1からなる。そして、各切れ目1はそれらの端1aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。以下の例でも同じであるが、これらの切れ目1は印刷後の型抜き工程で板紙Sの型抜きと同時に形成される。
【0013】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目1の並び方向Xで折り曲げると、並びと直交する向き(曲げ方向Y)に折曲げ線を生じようとし、板紙Sの組織にはこの曲げ方向Yに引張力が作用する。一方、この曲げに伴って板紙Sは、隣接する切れ目1の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iで折れようとする。このため、仮想線iのところで一種のねじれ現象が生じ、その結果、仮想線iの中心付近Aから切れ目1の端に向かって板紙Sの組織破壊が徐々に大きく起こる。
【0014】
このように折曲げが行われることにより、切れ目1の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目1の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においては、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0015】
図3は本発明で用いるヒンジ部の別の例を示す平面図であり、図4は図3の一部拡大図である。なお、図3は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0016】
図3及び図4に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数のへの字状の切れ目2からなる。そして、各切れ目2はそれらの端2aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。しかも、隣接する切れ目2の折れ曲がり方向が同じ向きとなるようにへの字状に形成されている。
【0017】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目2の並び方向Xで折り曲げると、前記したのと同様に一種のねじれ現象を生じながら折曲げが行われる。ただ、このヒンジ部の場合、隣接する切れ目2の折れ曲がり方向が仮想線iと同じになっており、切れ目2の端での組織破壊がスムースであるため、先に説明した直線状の切れ目1からなるヒンジ部に比べると折り曲げやすい。
【0018】
このように折曲げが行われることにより、切れ目2の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目2の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においても、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0019】
図5は本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図であり、図6は図5の一部拡大図である。なお、図5は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0020】
図5及び図6に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数の両端カギ状の切れ目3からなる。そして、各切れ目3はそれらの端3aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。しかも、隣接する切れ目3の折れ曲がり方向が同じ向きとなるように両端カギ状に形成されている。
【0021】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目3の並び方向Xで折り曲げると、前記したのと同様に一種のねじれ現象を生じながら折曲げが行われる。ただ、このヒンジ部の場合も、隣接する切れ目3の折れ曲がり方向が仮想線iと同じになっており、切れ目3の端での組織破壊がスムースであるため、先に説明した直線状の切れ目1からなるヒンジ部に比べると折り曲げやすい。
【0022】
このように折曲げが行われることにより、切れ目3の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目3の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においても、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0023】
図7は本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図であり、図8は図7の一部拡大図である。なお、図7は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0024】
図7及び図8に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数の湾曲状の切れ目4からなる。そして、各切れ目4はそれらの端4aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。しかも、隣接する切れ目4の仮想延長線が繋がるような曲線で形成されている。
【0025】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目4の並び方向Xで折り曲げると、前記したのと同様に一種のねじれ現象を生じながら折曲げが行われる。ただ、このヒンジ部の場合も、隣接する切れ目4の延長方向が仮想線iと同じになっており、切れ目4の端での組織破壊がスムースであるため、先に説明した直線状の切れ目1からなるヒンジ部に比べると折り曲げやすい。
【0026】
このように折曲げが行われることにより、切れ目4の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目4の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においても、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0027】
図9及び図10は本発明に係る板紙製のカートンを示すもので、それぞれ開封前と開封後の状態を示す斜視図である。
【0028】
図示のカートン10は、上面パネル11、底面パネル12、前面パネル13、背面パネル14、一対の側面パネル15,16を備えた横置きタイプの偏平直方体形状であり、上面パネル11から前面パネル13にかけて開閉用の蓋パネル11aが区画されている。蓋パネル11aは後方の折曲げ線21を介して上方に持ち上げられるようになっており、前面パネル13の一部により摘み部分13aが設けられている。ここで、折曲げ線21には、図7及び図8で説明したヒンジ部と同じ形状のものが用いられている。すなわち、断続的に並んで設けられた複数の湾曲状の切れ目により折曲げ線21が形成されており、この折曲げ線以外のところは公知のミシン目線22で区画されている。そして、ミシン目線22と折曲げ線21との間には、折曲げ線21による蓋パネル11aの折曲げを容易とするためにU字状切込23が形成されている。
【0029】
このカートン10を開ける動作は次のようである。すなわち、前面パネル13の摘み部分13aを引っ張ってミシン目線22を破断しつつ、折曲げ線21を介して蓋パネル11aを持ち上げるようにし、図10に示す如く開封状態とする。このように折曲げ線21のところで折り曲げた時の反発力は比較的小さいので、折曲げ線21のヒンジ部に少し折り癖を付けると開封状態が維持される。
【0030】
また、図10のように開いたカートン10を閉じるには、蓋パネル11aを元の位置に倒し、前面パネル13の後にあった裏側パネル17の円弧状切込17aに摘み部分13aを差し込んで固定する。これによりカートン10を簡単に閉じることができる。そして、蓋パネル11aの開閉を繰り返しても、従来のリード罫に比べてヒンジ部のところは切れにくいものとなっている。
【符号の説明】
【0031】
1,2,3,4 切れ目
1a,2a,3a,4a 端
10 カートン
11 上面パネル
11a 蓋パネル
12 底面パネル
13 前面パネル
13a 摘み部分
14 背面パネル
15,16 側面パネル
17 裏側パネル
17a 円弧状切込
21 折曲げ線
22 ミシン目線
23 U字状切込
A 中心付近
S 板紙
X 並び方向
Y 曲げ方向
i 仮想線
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙製の紙器であるカートンの技術分野に属し、詳しくは、繰り返して折り曲げられるヒンジ部のあるカートンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、板紙や段ボールは各種の紙器に利用されている。そして、板紙製の紙器としては種々のタイプの箱があるが、これらは一般的には、印刷、型抜き、そして貼合の工程により製造される。このような紙器の中でも、上板の一部に内容物の取出口となる開閉蓋を備えたタイプの容器が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このタイプの容器は、上板に折曲線を介して蓋板を連結しており、この蓋板はミシン目のところを切断してから、折曲線をヒンジ部として上方へ持ち上げることで取出口が形成されるようになっている。そして、蓋板の折曲線を押し罫で構成することもあるが、蓋板を持ち上げやすく且つ戻りにくくするために、通常は、押し罫に重ねて断続的に切れ目を形成した所謂リード罫でヒンジ部としての折曲線を構成している。なお、これらの押し罫やリード罫は型抜き工程で形成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−139025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、板紙製の容器では、その一部分を蓋として開けるような場合、蓋のヒンジ部としてリード罫を形成することが多い。ところが、リード罫は押し罫に重ねて断続的に切れ目を形成したものであるため、折り曲げた時に残った押し罫の部分に反発力が発生し、蓋が戻りやすいという傾向がある。したがって、蓋を開けた状態を保ちたい場合は使い勝手が悪いという問題点がある。そこで、反発力を小さくしようとしてミシン目の割合を多くすると、繰り返して折り曲げた場合に切れやすくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、折り曲げた時に生じる反発力が小さく、しかも繰り返し折り曲げた場合でも切れにくいヒンジ部を有する板紙製のカートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、上面パネル、底面パネル、前面パネル、背面パネル及び一対の側面パネルを備えた偏平直方体形状の板紙製のカートンであって、上面パネルから前面パネルにかけて開閉用の蓋パネルが区画され、その蓋パネルは後方の折曲げ線を介して上方に持ち上げられるようになっており、その折曲げ線として、断続的に並んで設けられた複数の切れ目からなり、各切れ目はそれらの端が並び方向に離間した状態で且つそれらが並び方向に向かって左右交互に設けられており、板紙を切れ目の並び方向で折り曲げると、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近から切れ目の端に向かって板紙の組織破壊が徐々に大きく起こるようにして折り曲げられるように構成されたヒンジ部を用いたことを特徴とする。
【0008】
本発明のカートンにおけるヒンジ部は、後でも例示するように、断続的に並んで設ける切れ目の形状に特に限定はない。すなわち、切れ目の形状は、板紙の厚さ、開閉の度合い、開閉の耐久性などに応じて適宜決めるようにすればよい。また、切れ目を規則正しく設けるのがデザイン上から好ましい場合が多いが、必ずしも規則正しくなくてもよい。また、切れ目はヒンジ部となるところに渡って全て設ける必要はなく、一部分に設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカートンは、開閉用の蓋パネルをその後方のヒンジ部で折り曲げると、切れ目の端に近い部分は板紙の組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近は板紙の組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つことから、蓋パネルをヒンジ部で折り曲げる時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で用いるヒンジ部の一例を示す平面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】本発明で用いるヒンジ部の別の例を示す平面図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【図7】本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図である。
【図8】図7の一部拡大図である。
【図9】本発明に係る板紙製のカートンを開封前の状態で示す斜視図である。
【図10】図9のカートンを開封後の状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明で用いるヒンジ部の一例を示す平面図であり、図2は図1の一部拡大図である。なお、図1は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0012】
図1及び図2に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数の直線状の切れ目1からなる。そして、各切れ目1はそれらの端1aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。以下の例でも同じであるが、これらの切れ目1は印刷後の型抜き工程で板紙Sの型抜きと同時に形成される。
【0013】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目1の並び方向Xで折り曲げると、並びと直交する向き(曲げ方向Y)に折曲げ線を生じようとし、板紙Sの組織にはこの曲げ方向Yに引張力が作用する。一方、この曲げに伴って板紙Sは、隣接する切れ目1の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iで折れようとする。このため、仮想線iのところで一種のねじれ現象が生じ、その結果、仮想線iの中心付近Aから切れ目1の端に向かって板紙Sの組織破壊が徐々に大きく起こる。
【0014】
このように折曲げが行われることにより、切れ目1の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目1の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においては、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0015】
図3は本発明で用いるヒンジ部の別の例を示す平面図であり、図4は図3の一部拡大図である。なお、図3は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0016】
図3及び図4に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数のへの字状の切れ目2からなる。そして、各切れ目2はそれらの端2aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。しかも、隣接する切れ目2の折れ曲がり方向が同じ向きとなるようにへの字状に形成されている。
【0017】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目2の並び方向Xで折り曲げると、前記したのと同様に一種のねじれ現象を生じながら折曲げが行われる。ただ、このヒンジ部の場合、隣接する切れ目2の折れ曲がり方向が仮想線iと同じになっており、切れ目2の端での組織破壊がスムースであるため、先に説明した直線状の切れ目1からなるヒンジ部に比べると折り曲げやすい。
【0018】
このように折曲げが行われることにより、切れ目2の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目2の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においても、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0019】
図5は本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図であり、図6は図5の一部拡大図である。なお、図5は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0020】
図5及び図6に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数の両端カギ状の切れ目3からなる。そして、各切れ目3はそれらの端3aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。しかも、隣接する切れ目3の折れ曲がり方向が同じ向きとなるように両端カギ状に形成されている。
【0021】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目3の並び方向Xで折り曲げると、前記したのと同様に一種のねじれ現象を生じながら折曲げが行われる。ただ、このヒンジ部の場合も、隣接する切れ目3の折れ曲がり方向が仮想線iと同じになっており、切れ目3の端での組織破壊がスムースであるため、先に説明した直線状の切れ目1からなるヒンジ部に比べると折り曲げやすい。
【0022】
このように折曲げが行われることにより、切れ目3の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目3の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においても、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0023】
図7は本発明で用いるヒンジ部のさらに別の例を示す平面図であり、図8は図7の一部拡大図である。なお、図7は板紙においてヒンジ部のある領域の一部分を囲んで示している。
【0024】
図7及び図8に示すように、このヒンジ部は板紙Sの折曲げ線を構成すべく断続的に並んで設けられた複数の湾曲状の切れ目4からなる。そして、各切れ目4はそれらの端4aが並び方向Xに離間した状態で且つ並び方向Xに向かって左右交互に設けられている。しかも、隣接する切れ目4の仮想延長線が繋がるような曲線で形成されている。
【0025】
このヒンジ部が設けられた板紙Sを切れ目4の並び方向Xで折り曲げると、前記したのと同様に一種のねじれ現象を生じながら折曲げが行われる。ただ、このヒンジ部の場合も、隣接する切れ目4の延長方向が仮想線iと同じになっており、切れ目4の端での組織破壊がスムースであるため、先に説明した直線状の切れ目1からなるヒンジ部に比べると折り曲げやすい。
【0026】
このように折曲げが行われることにより、切れ目4の端に近い部分は板紙Sの組織破壊が大きくなるが、隣接する切れ目4の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線iの中心付近Aは板紙Sの組織破壊が小さく、強度があまり落ちない状態を保つ。したがって、このヒンジ部においても、折曲げ時の反発力が小さくなるとともに、繰り返し折り曲げても切れにくいものとなる。
【0027】
図9及び図10は本発明に係る板紙製のカートンを示すもので、それぞれ開封前と開封後の状態を示す斜視図である。
【0028】
図示のカートン10は、上面パネル11、底面パネル12、前面パネル13、背面パネル14、一対の側面パネル15,16を備えた横置きタイプの偏平直方体形状であり、上面パネル11から前面パネル13にかけて開閉用の蓋パネル11aが区画されている。蓋パネル11aは後方の折曲げ線21を介して上方に持ち上げられるようになっており、前面パネル13の一部により摘み部分13aが設けられている。ここで、折曲げ線21には、図7及び図8で説明したヒンジ部と同じ形状のものが用いられている。すなわち、断続的に並んで設けられた複数の湾曲状の切れ目により折曲げ線21が形成されており、この折曲げ線以外のところは公知のミシン目線22で区画されている。そして、ミシン目線22と折曲げ線21との間には、折曲げ線21による蓋パネル11aの折曲げを容易とするためにU字状切込23が形成されている。
【0029】
このカートン10を開ける動作は次のようである。すなわち、前面パネル13の摘み部分13aを引っ張ってミシン目線22を破断しつつ、折曲げ線21を介して蓋パネル11aを持ち上げるようにし、図10に示す如く開封状態とする。このように折曲げ線21のところで折り曲げた時の反発力は比較的小さいので、折曲げ線21のヒンジ部に少し折り癖を付けると開封状態が維持される。
【0030】
また、図10のように開いたカートン10を閉じるには、蓋パネル11aを元の位置に倒し、前面パネル13の後にあった裏側パネル17の円弧状切込17aに摘み部分13aを差し込んで固定する。これによりカートン10を簡単に閉じることができる。そして、蓋パネル11aの開閉を繰り返しても、従来のリード罫に比べてヒンジ部のところは切れにくいものとなっている。
【符号の説明】
【0031】
1,2,3,4 切れ目
1a,2a,3a,4a 端
10 カートン
11 上面パネル
11a 蓋パネル
12 底面パネル
13 前面パネル
13a 摘み部分
14 背面パネル
15,16 側面パネル
17 裏側パネル
17a 円弧状切込
21 折曲げ線
22 ミシン目線
23 U字状切込
A 中心付近
S 板紙
X 並び方向
Y 曲げ方向
i 仮想線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面パネル、底面パネル、前面パネル、背面パネル及び一対の側面パネルを備えた偏平直方体形状の板紙製のカートンであって、上面パネルから前面パネルにかけて開閉用の蓋パネルが区画され、その蓋パネルは後方の折曲げ線を介して上方に持ち上げられるようになっており、その折曲げ線として、断続的に並んで設けられた複数の切れ目からなり、各切れ目はそれらの端が並び方向に離間した状態で且つそれらが並び方向に向かって左右交互に設けられており、板紙を切れ目の並び方向で折り曲げると、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近から切れ目の端に向かって板紙の組織破壊が徐々に大きく起こるようにして折り曲げられるように構成されたヒンジ部を用いたことを特徴とするカートン。
【請求項1】
上面パネル、底面パネル、前面パネル、背面パネル及び一対の側面パネルを備えた偏平直方体形状の板紙製のカートンであって、上面パネルから前面パネルにかけて開閉用の蓋パネルが区画され、その蓋パネルは後方の折曲げ線を介して上方に持ち上げられるようになっており、その折曲げ線として、断続的に並んで設けられた複数の切れ目からなり、各切れ目はそれらの端が並び方向に離間した状態で且つそれらが並び方向に向かって左右交互に設けられており、板紙を切れ目の並び方向で折り曲げると、隣接する切れ目の向かい合う端どうしを繋ぐ仮想線の中心付近から切れ目の端に向かって板紙の組織破壊が徐々に大きく起こるようにして折り曲げられるように構成されたヒンジ部を用いたことを特徴とするカートン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−190795(P2009−190795A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107222(P2009−107222)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【分割の表示】特願2003−283496(P2003−283496)の分割
【原出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【分割の表示】特願2003−283496(P2003−283496)の分割
【原出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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