説明

カード処理装置

【課題】周囲に他の構造物や遮蔽物が存在しても、ノブの操作が阻害されず、詰まったカードを容易に排出することができるカード処理装置を提供する。
【解決手段】詰まりの生じたカードCを手動操作により強制的に排出するためのノブ21が、筐体1の背面1aからzだけ突出するように設けられている。ノブ21は、回転軸44に直結されていて、搬送ローラ34と連動しており、また、ベルトB2を介して搬送ローラ31〜33とも連動している。ノブ21を回転させると、搬送ローラ31〜34が回転し、詰まったカードCをカード挿入口2aから外部へ排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録されている情報を読み取って所定の処理を行うカード処理装置に関し、特に、装置内部で詰まりを起こしたカードを手動操作によって排出するための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードリーダやICカードリーダなどのカード処理装置においては、反りや欠損のある変形カードが使用される場合がある。このようなカードの中には、変形の程度が著しくて搬送機構によって正常に搬送できないものもあり、それらは装置内部において詰まり(ジャム)を起こす。そこで、詰まりが発生した場合に、詰まったカードを取り除くための手段が必要となる。
【0003】
下記の特許文献1には、詰まりの生じたカードを手動操作により排出するためのノブを設けたカード処理装置が記載されている。この装置では、搬送ローラに脈動を軽減するためのフライホイールを設け、このフライホイールが、詰まったカードを手動で排出するためのノブを兼ねる構成としている。このようなノブを設けることにより、装置内部でカードが詰まった場合でも、ノブを手動で回転させて搬送ローラを強制駆動することにより、カードを外部へ排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−128717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カード処理装置が搭載される機器によっては、カード処理装置の周辺に他の構造物や遮蔽物などが存在して、上述したノブの操作が困難になる場合がある。これを金融機関等に設置されるATM(現金自動預払機)に内蔵されるカード処理装置を例にとって説明する。
【0006】
図9は、ATMに内蔵されたカード処理装置の周辺を示す概略図であって、(a)は上面図、(b)は正面図である。カード処理装置200は、通帳印字装置300と並んでフレーム400の上に設置されている。201はカード処理装置200の前面に設けられたインレット(カード挿入部)、202はカード処理装置200の側面に設けられたノブである。
【0007】
図9に示されるように、ATMにおいては、カード処理装置200に隣接して通帳印字装置300などの他の装置が配置されることが多い。この場合、カード処理装置200と通帳印字装置300との間のスペースが狭いため、カード処理装置200の側面に配置したノブ202を直接手で触ることは難しい。そこで、従来は、図10に示されるように、カード処理装置200を矢印A方向へ引き出すことによって、ノブ202の手動操作が行えるようにしていた。しかし、これではカード処理装置200を引き出す必要があり、係員の作業が煩雑となる。
【0008】
また、ノブ202の形状(直径)は、カード処理装置200の外形内に収まるものが一般的であり、ノブ202の配置位置によっては小径とならざるを得ない場合がある。ところが、カードの詰まり具合によっては、ノブ202を操作する際に非常に大きな回転トルクが必要となることがあり、この場合には、ノブ202の径が小さいと操作が困難となる。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み、周囲に他の構造物や遮蔽物が存在しても、ノブの操作が阻害されず、詰まったカードを容易に排出することができるカード処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、ノブの径が小径であっても、小さな操作力で大きな回転トルクを発生させてカードを確実に排出することが可能なカード処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カードを搬送する搬送手段と、この搬送手段により搬送されるカードに記録されている情報を読み取る読取手段と、これらの搬送手段および読取手段を内蔵した筐体と、搬送手段と連動して設けられ、筐体内で詰まりの生じたカードを手動操作により強制的に排出するためのノブとを備えたカード処理装置において、ノブを、筐体の上面、下面、前面および背面の少なくとも1つの面から突出するか、または当該面と同一面となるように設けたものである。
【0012】
このような構成としたことで、カード処理装置の周囲に他の構造物や遮蔽物が存在しても、ノブを直接手で触ることができるため、ノブの操作が阻害されず、装置内部で詰まったカードを容易に排出することができる。また、図10のようにカード処理装置を引き出す必要がないので、係員がカード詰まりの除去を行う際の作業が簡単となる。
【0013】
ノブは、搬送手段を構成する搬送ローラの回転軸に直結されていてもよいし、搬送ローラの回転軸に動力伝達部材を介して連結されていてもよい。前者の場合は、機構が簡略化され、後者の場合は、ノブを設ける位置に自由度を持たせることができる。ノブの突出量は、当該ノブの直径の2分の1以下であることが好ましい。また、ノブを複数個設け、各ノブが筐体の異なる面から突出するか、または当該面と同一面となるようにすることで、複数の方向からの操作を可能としてもよい。
【0014】
本発明において、ノブには、径方向へスライドしてノブから突出するレバーを設けることが推奨される。このようなレバーを設けると、詰まったカードを排出する際に、ノブから突出したレバーを介してノブを回転させることで、小さな操作力で大きな回転トルクを発生させることができる。このため、大径のノブを回した時と同様の大きな搬送力がカードに付与され、詰まったカードを確実に排出できるので、係員の負荷を低減させることができる。このレバーは、例えば、ノブから互いに反対方向へ突出する一対のレバーから構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カード処理装置の周囲に他の構造物や遮蔽物が存在しても、ノブの操作が阻害されず、詰まったカードを容易に排出することができる。
【0016】
また、ノブに径方向へスライドして突出するレバーを設ければ、ノブの径が小径であっても、小さな操作力で大きな回転トルクを発生させてカードを確実に排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカード処理装置を示す図である。
【図2】ノブの詳細構造を示した図である。
【図3】ノブに設けられたレバーの動作を説明する図である。
【図4】レバーのロック機構を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るカード処理装置を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るカード処理装置を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るカード処理装置を示す図である。
【図8】ノブの他の例を示した図である。
【図9】ATMに内蔵されたカード処理装置の周辺を示す概略図である。
【図10】カード処理装置を引き出した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るカード処理装置を示しており、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は正面図である。カード処理装置100は、例えばATMに搭載されるものであって、筐体1と、筐体1の前面に設けられたインレット(カード挿入部)2とを備えている。筐体1の内部には、搬送ローラ31〜34、モータM、磁気ヘッド8、ICコンタクトユニット9、搬送ガイド5〜7が収容されている。インレット2には、カードCが挿入されるカード挿入口2aが設けられている。搬送ローラ31〜34およびモータMは、本発明における搬送手段の一実施形態を構成する。また、磁気ヘッド8およびICコンタクトユニット9は、本発明における読取手段の一実施形態を構成する。
【0019】
図1(a)に示すように、搬送ローラ31〜34は、それぞれ、カード搬送路10を挟んで、上下に一対ずつ設けられている。搬送ローラ31、32間の距離と、搬送ローラ32、34間の距離は、いずれもカードCの長さ(例えば85.6mm)より若干短くなっている。下側の搬送ローラ31〜34は、図1(b)に示すように、回転軸41〜44の一端に支持されている。回転軸41〜44の他端には、それぞれプーリー51〜54が設けられている。回転軸43には、さらに大径のプーリー55が連結されている。このプーリー55と、モータMの回転軸に設けられたプーリー56との間には、動力伝達部材であるベルトB1が架設されている。また、プーリー51〜54は、同じく動力伝達部材であるベルトB2により連結されている。
【0020】
プーリー54の外側には、筐体1内で詰まりの生じたカードCを手動操作により強制的に排出するためのノブ21が同軸に設けられている。このノブ21は、回転軸44に直結されていて、下側の搬送ローラ34と連動しており、また、ベルトB2を介して下側の搬送ローラ31〜33とも連動している。したがって、モータMが停止している状態で、ノブ21を手で回転させると、下側の搬送ローラ31〜34は、ノブ21の回転方向と同じ方向へ回転する。ノブ21の詳細については後述する。
【0021】
モータMが回転すると、ベルトB1を介してプーリー55が回転し、プーリー53も回転する。プーリー53の回転により回転軸43が回転して、下側の搬送ローラ33が回転する。また、プーリー53の回転力は、ベルトB2を介してプーリー51、52、54に伝達され、これらのプーリーの回転によって回転軸41、42、44が回転し、下側の搬送ローラ31、32、34が回転する。一方、上側の搬送ローラ31〜34は駆動源を持たない従動ローラであり、下側の搬送ローラ31〜34に追従して回転する。
【0022】
搬送ガイド5、6は、カード搬送路10を挟んで対向して設けられており、搬送ローラ31、32により搬送されるカードCを案内する。搬送ガイド7は、カード搬送路10の下側に設けられており、搬送ローラ33、34により搬送されるカードCを案内する。
【0023】
磁気ヘッド8は、カード搬送路10の下側に設けられており、カードCの磁気ストライプに記録されている情報を読み取り、また、カードCの磁気ストライプに情報を記録する。ICコンタクトユニット9は、カード搬送路10の上側に設けられており、カードCのICチップに記録されている情報を読み取り、また、カードCのICチップに情報を記録する。なお、図1(b)では、磁気ヘッド8、ICコンタクトユニット9、および搬送ガイド5〜7の図示を省略している。
【0024】
図1(a)に示されるように、ノブ21は、筐体1の背面1aからzの寸法だけ突出するように設けられている。zの値は任意であるが、例えば、ノブ21の直径の1/8〜1/4程度に設定される。なお、ノブ21が必要以上に突出しないようにするために、zの値はノブ21の直径の1/2以下であることが好ましい。ノブ21には、以下で説明する径方向へスライド自在な一対のレバー22、23が備わっている。また、ノブ21の外周には、手で操作がしやすいように、ギヤ状の凹凸が形成されている。
【0025】
図2は、ノブ21の詳細構造を示した図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。ノブ21には、スライド溝27が形成されているとともに、このスライド溝27と連通してガイド溝28a、28bが形成されている。また、レバー22には、フック部22aおよびガイド突起22bが形成されており、レバー23には、フック部23aおよびガイド突起23bが形成されている。レバー22、23は、同じ形状となっている。なお、ノブ21とレバー22、23は、ともに合成樹脂やゴムなどの弾性を有する材料から形成されている。
【0026】
レバー22は、ガイド突起22bがノブ21のガイド溝28aに嵌合した状態でスライド溝27に収納され、レバー23は、ガイド突起23bがノブ21のガイド溝28bに嵌合した状態でスライド溝27に収納されている。なお、スライド溝27の溝幅は、レバー22、23のそれぞれの幅の合計よりわずかに小さい寸法となっているため、レバー22、23は、圧接状態でスライド溝27に保持されている。この状態では、図2(b)のように、レバー22、23はノブ21から径方向へ突出していない。また、ガイド溝28a、28bとガイド突起22b、23bとの嵌合により、レバー22、23が図2(a)の矢印B方向へ抜けるのが阻止される。
【0027】
図3は、レバー22、23を左右にスライドさせて、ノブ21から互いに反対方向へ突出させた状態を示している。レバー22は、フック部22aに指を掛けて径方向(矢印C方向)へスライドさせることにより、ノブ21から突出する。同様に、レバー23は、フック部23aに指を掛けて径方向(矢印D方向)へスライドさせることにより、ノブ21から突出する。図3の状態においては、レバー22とレバー23とは、次に述べるロック機構によりロックされ、ノブ21から離脱しないようになっている。
【0028】
図4は、レバー22、23のロック機構を示す図である。図4(a)のように、レバー22には凹部22cが設けられており、レバー23には凸部23cが設けられている。そして、凹部22cに凸部23cが嵌合することによって、レバー22、23は相互にロックされる。また、図4(b)のように、レバー22、23の端部にスリット22d、23dを設け、凹部22cと凸部23cとの非嵌合時に、レバー端部が容易に変形できるようにしてもよい。
【0029】
次に、上述した構造からなるカード処理装置100の動作について説明する。図1において、インレット2のカード挿入口2aからカードCが挿入されると、図示しないセンサがカードCの挿入を検知し、この検知信号に基づいて、モータMが正転方向(カードCを取り込む方向)へ回転する。モータMの回転力は、上述したように、ベルトB1を介してプーリー55、53に伝達され、さらに、ベルトB2を介してプーリー51、52、54に伝達される。このため、モータMが回転すると、プーリー51〜54の回転によって、回転軸41〜44を介して下側の搬送ローラ31〜34が回転するので、カードCは、搬送ガイド5〜7で案内されながら、搬送ローラ31〜34間を搬送される。この過程で、磁気ヘッド8およびICコンタクトユニット9により、カードCに対して情報の読み取り/書き込みが行われ、所定の処理が実行される。処理が終了すると、モータMが逆転方向(カードCを返却する方向)へ回転し、カードCは搬送ローラ31〜34によって搬送されてカード挿入口2aへ返却される。
【0030】
ここで、取り込まれたカードCが反りや欠損のある変形カードであった場合、その変形の程度が大きいと、カード搬送路10においてカードCの詰まり(ジャム)が発生する。このようなカード詰まりは、図示しないセンサ等により検出され、カード詰まりの発生が検知されると、モータMは回転を停止する。そして、カード処理装置100から上位装置(例えばATM)へエラーメッセージが送られ、係員による対応が行われる。
【0031】
係員は、詰まったカードCを外部へ排出するために、ノブ21を手で操作する。すなわち、図1において、ノブ21を時計回り方向へ回転させると、ノブ21が連結されている回転軸44を介して、下側の搬送ローラ34が時計回り方向へ回転する。同時に、ノブ21の回転力がベルトB2を介して、プーリー51〜53へ伝達され、プーリー51〜53の回転によって、回転軸41〜43を介して下側の搬送ローラ31〜33が時計回り方向へ回転する。したがって、ノブ21の回転により、全ての下側の搬送ローラ31〜34が回転するので、カードCがカード搬送路10のどの位置で詰まっても、搬送ローラ31〜34によりカードCをカード挿入口2aから外部へ排出することができる。
【0032】
この場合、ノブ21は筐体1の背面1aからzだけ突出しているので、カード処理装置100の周囲に他の構造物や遮蔽物が存在しても、ノブ21を直接手で触ることができるため、ノブ21の操作が阻害されず、筐体1の内部で詰まったカードCを容易に排出することができる。また、カード処理装置100を引き出す必要がないので、係員がカード詰まりの除去を行う際の作業が簡単となる。
【0033】
ところで、カードCの詰まり具合によっては、ノブ21に非常に大きな回転トルクを与えないと、搬送ローラ31〜34が回転しない場合がある。しかるに、ノブ21の直径が小さいと、大きな回転トルクを発生させるのは難しい。このような場合は、図3で示したように、ノブ21に設けられているレバー22、23を径方向C、Dへスライドしてノブ21から突出させ、レバー22、23に手を掛けてノブ21を回転させることにより、てこの原理に基づき、小さな操作力でノブ21に大きな回転トルクを発生させることができる。このため、大径のノブを回した時と同様の大きな搬送力がカードCに付与され、詰まったカードCを確実に排出できるので、係員の負荷を低減させることができる。
【0034】
また、上述した第1実施形態のカード処理装置100では、ノブ21が下側の搬送ローラ34の回転軸44に直結されているので、ノブ21の回転を回転軸44に伝達するためのベルトやプーリー等の動力伝達部材が不要となり、機構が簡略化される。
【0035】
図5は、第2実施形態に係るカード処理装置を示しており、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は正面図である。図5において、図1と同一の部分または対応する部分には、図1と同じ符号を付してある。
【0036】
図5(a)に示すように、第2実施形態では、ノブ21が、筐体1の上面1bからzの寸法だけ突出するように設けられている。zの値については、第1実施形態の場合と同じである。また、ノブ21の構造も、図2に示したものと同じである。ノブ21には、プーリー24が同軸に設けられている。また、下側の搬送ローラ34の回転軸44には、プーリー54とともにプーリー25が連結されている。そして、プーリー24とプーリー25との間には、ベルトB3が架設されている。したがって、ノブ21は、プーリー24、25およびベルトB3からなる動力伝達部材を介して回転軸44に連結されている。
【0037】
このため、モータMが停止している状態で、ノブ21を手で回転させると、その回転力がプーリー24からベルトB3を介してプーリー25へ伝達され、プーリー25の回転によって、下側の搬送ローラ34が回転する。また、プーリー25が回転することで、プーリー54も回転するので、プーリー54の回転がベルトB2を介してプーリー51〜53へ伝達され、下側の搬送ローラ31〜33が回転する。したがって、ノブ21の回転により、全ての下側の搬送ローラ31〜34が回転するので、カードCがカード搬送路10のどの位置で詰まっても、搬送ローラ31〜34によりカードCをカード挿入口2aから外部へ排出することができる。
【0038】
この第2実施形態では、ノブ21が筐体1の上面1bからzだけ突出しているので、第1実施形態と同様に、カード処理装置100の周囲に他の構造物等が存在する場合でも、ノブ21の操作が阻害されず、また、カード処理装置100を引き出すことなく、詰まったカードCを容易に排出することができる。
【0039】
さらに、第1実施形態と同様に、ノブ21のレバー22、23をスライドしてノブ21から突出させることにより、小さな操作力でノブ21に大きな回転トルクを発生させることができ、詰まったカードCを確実に排出することができる。
【0040】
また、第2実施形態のカード処理装置100では、ノブ21が、動力伝達部材であるベルトB3等を介して、回転軸44と連結されているので、回転軸44にノブ21を直結する場合に比べて、ノブ21を設ける位置に自由度を持たせることができる。
【0041】
図6は、第3実施形態に係るカード処理装置を示しており、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は正面図である。図6において、図5と同一の部分または対応する部分には、図5と同じ符号を付してある。
【0042】
図5の場合は、ノブ21が筐体1の後方(カード挿入口2aから遠い側)に設けられていたが、図6では、ノブ21が筐体1の前方(カード挿入口2aに近い側)に設けられている。図6(a)に示すように、第3実施形態でも、ノブ21が、筐体1の上面1bからzの寸法だけ突出するように設けられている。zの値については、第1実施形態の場合と同じである。また、ノブ21の構造も、図2に示したものと同じである。ノブ21には、プーリー24が同軸に設けられている。また、下側の搬送ローラ31の回転軸41には、プーリー51とともにプーリー26が連結されている。そして、プーリー24とプーリー26との間には、ベルトB4が架設されている。したがって、ノブ21は、プーリー24、26およびベルトB4からなる動力伝達部材を介して回転軸41に連結されている。
【0043】
このため、モータMが停止している状態で、ノブ21を手で回転させると、その回転力がプーリー24からベルトB4を介してプーリー26へ伝達され、プーリー26の回転によって、下側の搬送ローラ31が回転する。また、プーリー26が回転することで、プーリー51も回転するので、プーリー51の回転がベルトB2を介してプーリー52〜54へ伝達され、下側の搬送ローラ32〜34が回転する。したがって、ノブ21の回転により、全ての下側の搬送ローラ31〜34が回転するので、カードCがカード搬送路10のどの位置で詰まっても、搬送ローラ31〜34によりカードCをカード挿入口2aから外部へ排出することができる。
【0044】
この第3実施形態の場合も、ノブ21が筐体1の上面1bからzだけ突出しているので、第2実施形態と同様に、カード処理装置100の周囲に他の構造物等が存在する場合でも、ノブ21の操作が阻害されず、また、カード処理装置100を引き出すことなく、詰まったカードCを容易に排出することができる。
【0045】
さらに、第2実施形態と同様に、ノブ21のレバー22、23をスライドしてノブ21から突出させることにより、小さな操作力でノブ21に大きな回転トルクを発生させることができ、詰まったカードCを確実に排出することができる。
【0046】
また、ノブ21が、動力伝達部材であるベルトB4等を介して、回転軸41と連結されているので、回転軸41にノブ21を直結する場合に比べて、ノブ21を設ける位置に自由度を持たせることができる。
【0047】
図7は、第4実施形態に係るカード処理装置を示しており、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は正面図である。図7において、図1および図6と同一の部分または対応する部分には、図1および図6と同じ符号を付してある。
【0048】
この第4実施形態は、図1の第1実施形態と、図6の第3実施形態とを併用したものであり、筐体1の背面1aからzの寸法だけ突出するように設けられたノブ21と、筐体1の上面1bからzの寸法だけ突出するように設けられたノブ21を備えている。それぞれのノブに関してはすでに説明したとおりであるので、ここでは重複説明を省略する。
【0049】
第4実施形態によれば、ノブ21を2個設け、各ノブ21が筐体1の異なる面(背面1aと上面1b)から突出するようにしたので、前述した第1および第3実施形態の利点に加えて、筐体1の背面側と上面側の2方向からの操作が可能になるという利点がある。
【0050】
本発明では、以上述べた以外にも、種々の実施形態を採用することができる。例えば、図2においては、ノブ21に一対のレバー22、23を設けた例を挙げたが、図8のように、ノブ21に単一のレバー22を設けてもよい。図8では、図2と同一の部分または対応する部分に、図2と同一の符号を付してある。図8(a)は、レバー22がスライド溝27に収納された状態を示し、図8(b)は、レバー22が径方向(矢印C方向)へスライドして、ノブ21から突出した状態を示している。
【0051】
また、前述した各実施形態では、ノブ21が筐体1の背面1aや上面1bから突出する例を挙げたが、ノブ21を筐体1の前面(背面1aと反対側の面)や下面(上面1bと反対側の面)から突出するように設けてもよい。
【0052】
また、前述した各実施形態では、ノブ21が筐体1の面から突出している例を挙げたが、ノブ21を筐体1の背面1aや上面1b等と同一面(すなわちz=0)となるように設けてもよい。
【0053】
また、図7の実施形態では、2箇所にノブ21を設けた例を挙げたが、3箇所以上にノブ21を設けてもよい。
【0054】
また、前述した各実施形態では、動力伝達部材としてベルトやプーリーを例に挙げたが、これらに代えてギヤ等を動力伝達部材として用いてもよい。
【0055】
さらに、前述した各実施形態では、ATMに搭載されるカード処理装置を例に挙げたが、本発明に係るカード処理装置は、ATM以外のカードを取り扱う機器に搭載されるカード処理装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体
1a 背面
1b 上面
8 磁気ヘッド
9 ICコンタクトユニット
10 カード搬送路
21 ノブ
22、23 レバー
24〜26 プーリー
31〜34 搬送ローラ
41〜44 回転軸
51〜56 プーリー
100 カード処理装置
B1〜B4 ベルト
M モータ
C カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されるカードに記録されている情報を読み取る読取手段と、
前記搬送手段および読取手段を内蔵した筐体と、
前記搬送手段と連動して設けられ、前記筐体内で詰まりの生じたカードを手動操作により強制的に排出するためのノブと、を備えたカード処理装置において、
前記ノブを、前記筐体の上面、下面、前面および背面の少なくとも1つの面から突出するか、または当該面と同一面となるように設けたことを特徴とするカード処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカード処理装置において、
前記ノブが、前記搬送手段を構成する搬送ローラの回転軸に直結されていることを特徴とするカード処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のカード処理装置において、
前記ノブが、前記搬送手段を構成する搬送ローラの回転軸に動力伝達部材を介して連結されていることを特徴とするカード処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のカード処理装置において、
前記ノブの突出量が、当該ノブの直径の2分の1以下であることを特徴とするカード処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のカード処理装置において、
前記ノブを複数個設け、各ノブが前記筐体の異なる面から突出するか、または当該面と同一面となるようにしたことを特徴とするカード処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のカード処理装置において、
前記ノブに、当該ノブの径方向へスライドしてノブから突出するレバーを設けたことを特徴とするカード処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のカード処理装置において、
前記レバーは、前記ノブから互いに反対方向へ突出する一対のレバーからなることを特徴とするカード処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−275077(P2010−275077A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130185(P2009−130185)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】