説明

カーバイド製造方法及びそのシステム

本発明は、カーバイド製造方法及びそのシステムに関する。当該方法では、粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料を混合し、酸素含有雰囲気中で炭素含有原料の一部を燃焼しながら混合物を直接加熱することでカーバイドを製造する。また、炭素含有原料は石炭、コーライト又はコークスであってもよい。カルシウム含有原料は炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム又はカーバイドスラグであってもよい。本発明に係るカーバイド製造システムは原料予熱ユニットと反応ユニットを含む。原料予熱ユニットにおける予熱器は流動床又は気流床であってもよい。また、反応ユニットにおける反応器は気流床であってもよい。本発明によれば、従来のカーバイド製造過程に存在する高エネルギー消費、高汚染などの欠陥を克服することができ、原料の選択範囲が広く、エネルギー利用率が高い、且つ、連続的な操作が可能であり、製造性が高いなどのメリットがある。また、製造過程中の副生成物であるCO又は補助燃料が空気で燃焼することで、原料を500〜1500℃まで予熱でき、カーバイド製造における炭素消費量及び酸素消費量を低減でき、さらに工程における省エネルギーを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連特許出願】
【0001】
本出願は、2008年8月1日に提出された中華人民共和国特許出願番号200810117540.2、及び2008年12月12日に提出された中華人民共和国特許出願番号200810239805.6に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、これら特許出願の全ての内容は本願に組み込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、カーバイド(炭化カルシウム(CaC2))の製造方法及びそのシステムに関する。具体的に、酸素含有雰囲気において、粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウ含有原料の一部を燃焼させることで直接に給熱しながらカーバイドを製造する方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
カーバイドである炭化カルシウムは、有機合成化学工業における基本的原料の一つである。カーバイドは、原料として利用され一系列の有機化合物を合成することができ、工業や、農業や、医薬などの分野へ原料として提供される。そのため、20世紀の中頃までずっと「有機合成の母」と言われた。カーバイドは、水と反応してアセチレンと水酸化カルシウムとに分解され、窒素と反応してカルシウムシアナミドを生成する。従来、アセチレンは主に塩化ビニル系、酢酸ビニル系、及びアクリル系などの製造に採用された。例えば、わが国のPVC(ポリ塩化ビニル)の70%程度はアセチレンから製造される。近年、石油価額の高騰によって、カーバイド工業の発展が刺激され、わが国におけるカーバイド産量は2002年の425万トンから2006年の1177万トンまでに増えてきた。
【0004】
通常、カーバイドの製造は、下記の反応式によって行われる。即ち、
CaO+3C→CaC2+CO
この反応は吸熱反応である。
【0005】
従来、カーバイドの製造方法の一つとして固定床・アーク法が挙げられ、アークより発生した高温は、固定床(移動床又はアーク炉とも称する)における大粒の酸化カルシウムと大粒のコークスを2000℃以上に加熱し、所定の時間を留まって熔融状態のカーバイドが生成される。製造過程において、電気炉の上端から酸化カルシウムとコークスの混合物を投入し、両者が反応して生成されたCOは、ブロック状の物質の隙間を介して電気炉の頂部から排出され、熔融状態の生成物であるカーバイドは電気炉の底部から排出され、冷却・粉砕して製品が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固定床・アーク法によるカーバイド製造に存在する最大の欠点は電気消費量が大きいことである。報道によれば、わが国において純度が85%のカーバイドを1トン製造するに平均電気消費量は3250kW・hである。それ以外に、アーク炉の構成が複雑で、炉内の容積に制限があり、電極消費量も大きく、設備及び運転のコストが非常に高い。
【0007】
報道によれば、カーバイドは固定床・酸素熱法によっても製造できる。日本国の特許(特開昭61-178412号公報)及びドイツの関連資料にシャフト炉コークス酸素熱法が公開されている。中国特許公開第85107784号公報には、酸素ガスにおいて石炭を燃焼させることで原料を加熱する炭化カルシウムの製造方法及びその設備が記載された。また、中国特許公開第1843907号公報には石炭、天然ガス及び重油などの相対的安価な燃料を利用して、酸素ガスと酸素リッチガス噴射技術により、炭化カルシウムを製造すると共に、副生成物のCOガスを石炭ガスの製造に用いられるシャフト炉において酸素燃料噴射により炭化カルシウムを製造する方法及び装置が開示されている。しかしながら、前記酸素熱法はやはり大粒の原料を採用する回分式反応方式であり、反応時間が長く、コークス消費量も激増する。更に、炉ごとの産量があまり高くないため、アーク法と比べて製造コストがもっと高い。そのため、今までアーク法を替えるのが難しい。
【0008】
要するに、従来のアーク法及び酸素熱法のいずれにおいて固定床反応器を採用し、大粒の原料(3〜40mm)と回分式操作を使用する。そのため、反応スピードが遅く、原料が炉内に滞在する時間が長く、製造性も低い。さらに、製品ごとに消耗されるエネルギーが非常に高い。また、大粒の原料はその製造工程において損失が非常に多く、普段約20%以上の原料は粉砕された粒度が過小なため使用しかねる。
【0009】
これらの方法に存在する高投入、高エネルギー消費及び高汚染の弊害を誘起する主な原因は、大粒の原料と回分式操作を採用したことにあったと考えられる。そのため、製造規模が小さく、副生成物のCOガスを利用し難いことになる。
【0010】
本発明は、従来のカーバイドの製造における高投入、高エネルギー消費及び高汚染の弊害を解決するために提案される。その目的は、工程が簡単で、エネルギー消費が小さい、原料の選択範囲が広い、製造が連続で、製造性が高い、且つ、コストが低いカーバイド製造方法及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態によれば、酸素熱法によるカーバイド製造方法が提供される。当該方法には以下の工程を含む。即ち、(1)適切な粒度を有する粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料を用意する工程と、(2)前記粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料を0.5:1以上の重量比で混合する工程と、(3)酸素含有雰囲気中に、前記炭素含有原料の一部を燃焼することで、前記混合物を直接加熱する工程とを含む。但し、工程(3)において、酸素含有雰囲気におけるO2と炭素含有原料におけるCのモル比は0.1以上であり、前記混合物の反応温度が1700℃以上になる。また、混合物の反応温度は1700〜1950℃の範囲にあってもよい。
【0012】
また、炭素含有原料とカルシウム含有原料の重量比は0.5:1〜3:1であることが望ましく、0.7:1〜2:1であることがさらに望ましい。
また、酸素含有雰囲におけるO2と炭素含有原料におけるCのモル比は0.1〜0.6であることが望ましい。
【0013】
また、粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料の粒度はすべて1mmより小さいことが望ましく、0.3mmより小さいことがさらに望ましい。
【0014】
また、炭素含有原料は石炭、コーライト及びコークス中のいずれか又はこれらの混合物であってもよい。カルシウム含有原料は炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム及びカーバイドスラグ中のいずれか又はこれらの混合物であってもよい。
【0015】
また、工程(2)の後に、混合された粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料に対して予熱する工程をさらに備えることも考えられる。そこで、予熱温度は500℃以上である。当該予熱温度は500〜1500℃の範囲にあることが望ましい。そして、予熱工程で使用される燃料は、粉末状の炭素含有原料、前記製造工程で得られた気体生成物のCO又は補助燃料であってもよい。補助燃料は気体燃料及び液体燃料を含む。また、予熱で使用される酸素含有気体は酸素、酸素リッチな空気又は空気であってもよいが、空気が望ましい。そして、予熱用燃料として、カーバイド製造過程で得られた気体生成物であるCOを採用する場合、COと空気との体積比は1:2.5〜1:4であることが望ましい。
【0016】
上記のように、予熱工程をさらに備えることによって、後続反応における炭素含有原料の消費量を減少できると共に、生成物中のカーバイドの含有量が向上でき、さらに反応における酸素消費量が低減される。COはカーバイド製造過程中に生成される副生成物として、直接に大気中へ排出されると、空気が必ず汚染されてしまう。本発明は、COを予熱燃料の一つとすることで、空気汚染を防止しながらエネルギーを効果的に利用することができる。
【0017】
本発明の他の形態によれば、前記方法を実現するシステムが提供される。当該システムは原料配合ユニット、原料予熱ユニット及び反応ユニットを備える。原料配合ユニットはいずれかの計量装置であってもよい。原料予熱ユニットは、固体原料ミキサーとフィーダーを備える原料混合フィーダー装置と、原料入口、吸気口、第1の排気口及び固体物質出口が設けられた予熱装置と、気体圧縮装置と、第1の熱交換器とを含む。固体原料ミキサーの出口はフィーダーの入口と連通する。原料混合フィーダー装置の出口は予熱装置の原料入口と連通し、予熱装置は吸気口を介して気体圧縮装置と連通する。予熱装置は第1の排気口を介して第1の熱交換器と連通する。反応ユニットはフィーダー装置と、原料噴出口、第2の排気口及び生成物排出口が設けられた反応器と、第2の熱交換器とを備える。原料噴出口には酸素含有気体入口が設けられ、フィーダー装置の固体物質入口は予熱装置の固体原料出口と連通する。フィーダー装置の固体物質出口は反応器における原料噴出口と連通する。反応器における第2の排気口は第2の熱交換器の吸気口と連通し、熱交換された後の一部の気体は予熱装置における気体圧縮装置へ入り、一部は他のユニットへ入る。
【0018】
また、フィーダーに固体物質によってフィーダーが閉塞されることを防止する気体吹入口を設けることが望ましい。
【0019】
また、予熱装置が予熱器を含むことが望ましい。予熱器は流動床又は気流床であってもよい。予熱器が気流床である場合、予熱装置はさらに気固分離器を含み、予熱装置の第1の排気口と固体物質出口は気固分離器に設けられる。第1の排気口から流出した気体は第1の熱交換器を介して排出される。
【0020】
また、前記気固分離器はサイクロンセパレータであることが望ましい。
【0021】
また、反応ユニットのフィーダー装置に物質によってフィーダー装置が閉塞されることを防止する気体吹入口を設けてもよい。
【0022】
また、物質温度によってフィーダーとフィーダー装置を選択できる。フィーダーとフィーダー装置は螺旋フィーダー又はU字状の空気作動弁フィーダーであってもよい。そして、フィーダーの原料温度が低いため、フィーダーが螺旋フィーダーであることが望ましい。フィーダー装置の原料温度が高いため、フィーダーがU字状の空気作動弁フィーダーであることが望ましい。
【0023】
また、反応器の原料噴出口は単一噴出口、対設噴出口又はマルチ噴出口であってもよい。
【0024】
また、気体圧縮装置と第2の熱交換器の連通パイプに補助燃料入口を設けることも考えられる。
【0025】
また、予熱装置と反応ユニットのフィーダー装置の間にさらに貯蓄装置が設けられる。
【0026】
従来のカーバイド製造方法と比べ、本発明は粉末状の原料を採用し、原料の選択範囲が広く、利用率が高いと共に、反応スピードが速い、且つ反応温度が低い、製造性が高い。アーク給熱を替えて、炭素含有原料の一部を燃焼して直接給熱することを採用し、反応器が簡単、且つ製造コストが低く、反応エネルギー消費量が低い。
【0027】
また、予熱原料として、副生成物の気体のCOを利用して、コークス製造、石灰焼成及び原料予熱を一体にし、システムの全般に対して省エネルギーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで記載した図面は説明のための例示にすぎず、いずれかの方式で本発明の範囲を限定するものではない。
【図1】本発明における予熱工程を含んでいない工程の流れを示すブロック図である。
【図2】本発明における予熱工程を含んでいる工程の流れを示すブロック図である。
【図3】本発明のシステムの概略図であり、予熱装置として流動床を示している。
【図4】本発明のシステムの概略図であり、予熱装置として気流床を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に対して図面を参照しながら詳しく説明する。なお、すべての図面において、同様又は類似した部材に同じ符号を付与する。
【0030】
図1及び図2は本発明に関する方法の流れを示すブロック図である。なお、図1には予熱工程を含まなく、図2には予熱工程を含んでいる。図1に示したように、原料配合ユニット(図示せず)を介して、適切な比例(重量)に配合された適切な粒度を有する粉末状の炭素含有原料Aと粉末状のカルシウム含有原料Bを、原料混合フィーダー装置1に投入し、原料混合フィーダー装置1において均一に混合された後、混合された原料と適切量の酸素含有気体Cを反応器5内へ吹き入れ、O2により炭素含有原料Aの一部を燃焼させて、残された混合物を直接加熱する。これにより、混合物の温度を1700〜1950℃まで向上させて高温反応を行う。この高温反応によって、カーバイドDと副生成物のCO気体Eが生成される。カーバイドDは、反応器から排出された後、室温まで冷却される。
【0031】
また、図2に示したように、カーバイドの製造過程において生成された副生成物のCO気体E、及び酸素含有気体Fを予熱器14において燃焼させて、原料混合物を500〜1500℃まで予熱することもできる。その後、予熱された原料混合物は酸素含有気体Cと共に反応器5内へ吹き入れられ、炭素含有原料の一部は酸素含有雰囲気で燃焼され、原料混合物の温度を1700℃以上に向上させる。生成されたカーバイドDは反応器から排出された後、室温まで冷却される。
【0032】
次に、本発明の方法によって、異なる粒度且つ異なる配合比の原料、及び異なる酸素ガス量を採用して、予熱を介して又は予熱を介せず得られたそれぞれの固体生成物を表1に示した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示したように、本発明により提供された方法によれば、反応温度を1700℃まで降下させることができ、かつ、原料の粒度が小さいほど、反応温度が高くなり、反応時間が短くなる。ほとんどの反応時間は10分以内に短縮される。また、予熱を介してコークス消費量と酸素消費量を低減させることができる。
【0035】
図3及び図4は本発明に係るシステムの概略図である。なお、図3に示した予熱器は流動床であり、図4に示した予熱器は気流床である。
【0036】
図3を参照すると、本発明のシステムの全体は符号Sで標記される。当該システムは、原料配合ユニット(図示せず)、原料予熱ユニット及び反応ユニットを含む。原料予熱ユニットは、原料混合フィーダー装置1、予熱装置2、気体圧縮装置3及び第1の熱交換器11を含む。原料混合フィーダー装置1は、固体原料ミキサー12とフィーダー13を含み、固体原料ミキサー12の出口はフィーダー13の入口と連通している。予熱装置2は原料入口16、吸気口17、第1の排気口18及び第1の固体物質出口19を含む。原料混合フィーダー装置1の出口1-1は予熱装置2の原料入口16と連通し、予熱装置2は吸気口17を介して気体圧縮装置3と連通している。予熱装置2は第1の排気口18を介して第1の熱交換器11と連通している。
【0037】
また、反応ユニットはフィーダー装置4、反応器5及び第2の熱交換器9を含む。反応器5には原料噴出口6、第2の排気口7及び生成物排出口8が設けられている。原料噴出口6には酸素含有気体の入口6-1が設けられている。フィーダー装置4の固体物質入口4-1は予熱装置2の第1の固体物質出口19と連通し、フィーダー装置4の固体物質出口4-2は反応器5の原料噴出口6と連通している。反応器5の第2の排気口7は第2の熱交換器9の吸気口と連通し、熱交換された一部の気体は予熱ユニットの気体圧縮装置3へ入り、一部の気体は他のユニットへ入る。
【0038】
また、フィーダー13には固体物質によりフィーダーが閉塞されるのを防止する気体吹入口を設けることが望ましい。
【0039】
また、予熱装置2に含まれている予熱器14は流動床である。
【0040】
図4を参照すると、予熱器14は気流床であり、予熱装置2はさらに気固分離器15を含み、予熱装置2の第1の排気口18と第1の固体原料出口19は気固分離器15に設けられている。第1の排気口18から排出されて来る気体は第1の熱交換器11を介して排出される。
【0041】
また、気固分離器15はサイクロンセパレータであることが望ましい。
【0042】
また、反応ユニットのフィーダー装置4に物質によってフィーダー装置4が閉塞されるのを防止する気体吹入口を設けることが望ましい。
【0043】
物質温度によってフィーダーとフィーダー装置とを選択できる。フィーダー13とフィーダー装置4は螺旋フィーダー又はU字状の空気作動弁フィーダーであってもよい。そして、フィーダー13の物質温度が低いため、螺旋フィーダーであることが望ましい。また、フィーダー装置4の原料温度が高いため、U字状の空気作動弁フィーダーであることが望ましい。
【0044】
また、反応器5の原料噴出口6は単一噴出口、対設噴出口又はマルチ噴出口であってもよい。
【0045】
また、気体圧縮装置3と第2の熱交換器9の連通パイプに補助燃料入口を設けることも考えられる。
【0046】
また、予熱装置2と反応ユニットのフィーダー装置4の間にさらに貯蓄装置が設けられることも考えられる。
【0047】
次に、本発明によって提供されたシステムSの運転状況に対して説明する。
【0048】
粉末状の炭素含有原料Aと粉末状のカルシウム含有原料Bは、原料混合装置1においてで混合された後、フィーダー13を介して予熱装置2に搬送される。また、酸素含有気体と熱交換された副生成物のCO気体は、気体圧縮装置3により予熱装置2の吸気口17まで輸送される。そして、炭素含有原料の一部と熱交換された副生成物のCO気体は、酸素含有気体により予熱装置2において燃焼され、混合原料を500〜1500℃まで加熱する。炭素含有原料Aをコークス粉に熱分解し、カルシウム含有原料Bを酸化カルシウム粉に熱分解する。そして、生成された高温気体は第1の熱交換器11で熱交換されて排出され、形成された高温固体混合物はフィーダー装置4を介して反応器5の原料噴出口6に搬送されて、当該噴出口6から反応器5内へ吹き入れられる。また、酸素含有気体Cは噴出口6上の酸素含有気体入口6-1から反応器5内へ吹き入れられる。そして、コークス粉の一部と酸素含有気体中のO2は反応器5内で混合燃焼されて、原料を1700〜1950℃まで加熱することでカーバイドが生成される。そして、カーバイドは反応器5の底部に配置された生成物排出口8から排出され、副生成物のCO気体は反応器5の第2の排気口7から排出され、第2の熱交換器9へ入る。熱交換された気体は気体圧縮装置3を介して予熱装置2へ吹きいれて、予熱装置2の燃料として使われる。
【0049】
また、予熱装置2に気固分離器15が含まれている場合、500〜1500℃まで加熱された原料混合物における炭素含有原料はコークス粉に熱分解され、カルシウム含有原料は酸化カルシウムに熱分解される。そして、形成された高温生成物は気固分離器15へ入り、分離された気体生成物は、その温度が第2の熱交換器9を介して降下され排出される。分離された固体生成物はフィーダー装置4を介して反応器5の原料噴出口6まで搬送され、噴出口6から反応器5へ吹き入れる。酸素含有気体Cは噴出口6上の酸素含有気体入口6-1から反応器5内へ吹き入れ、コークス粉の一部と酸素含有気体は反応器5内で混合燃焼されて、原料を1700〜1950℃まで加熱することでカーバイドが生成される。そして、カーバイドは反応器5のボトムに配置された生成物排出口8から排出され、副生成物のCO気体は反応器5の第2の排気口7を介して熱交換器9へ入り、熱交換された気体は気体圧縮装置3を介して予熱装置2へ吹きいれて、予熱装置2の燃料として使われる。
【0050】
以上図面を参照しながら本発明を説明しましたが、上記の実施例は実質上例示にすぎないことは勿論のことであり、本発明及びその応用を限定することはない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、炭素含有の粉末状原料を直接燃焼させて給熱する方法でカーバイドを製造する。その製造温度は従来の気流床石炭ガス化の温度と類似し、アークにより加熱してカーバイドを製造する技術と比べて、石炭→熱→電気→熱の過程におけるエネルギー損失を防止し、エネルギー消費を50%前後低減させた。従来の大粒の原料、且つアークによる加熱でカーバイドを製造する技術に対して、粉末状の原料を採用したため、反応炉の製造性を向上することができ、さらに省エネルギーを実現できる。
【0052】
また、従来の独立にコークス製造及び独立に石灰焼成することにより原料を製造する方法と比べて、本発明は原料製造及びカーバイド製造過程を組み合わせて、コークス及び酸化カルシウムの顕熱を十分に利用するため、さらに省エネルギーを実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーバイドを製造する方法であって、
(1)適切な粒度を有する粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料を用意する工程と、
(2)前記粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料を0.5:1以上の重量比で混合する工程と、
(3)酸素含有雰囲気において、前記炭素含有原料の一部を燃焼することで、前記混合物を直接加熱する工程と、
を含み、
前記工程(3)において、混合物の反応温度を1700℃以上にするように、酸素含有雰囲気におけるO2と炭素含有原料におけるCのモル比を0.1以上にする
ことを特徴とするカーバイドの製造方法。
【請求項2】
前記炭素含有原料とカルシウム含有原料の重量比は0.5:1〜3:1であることを特徴とする請求項1に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項3】
前記炭素含有原料とカルシウム含有原料の重量比は0.7:1〜2:1であることを特徴とする請求項2に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項4】
前記酸素含有雰囲気には純酸素及び酸素リッチ空気を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項5】
前記酸素含有雰囲気におけるO2と炭素含有原料におけるCのモル比は0.1〜0.6であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のカーバイドの製造方法。
【請求項6】
前記粉末状の炭素含有原料の粒度と前記粉末状のカルシウム含有原料の粒度はすべて1mmより小さいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のカーバイドの製造方法。
【請求項7】
前記粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料の粒度はすべて0.3mmより小さいことを特徴とする請求項6に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項8】
前記工程(3)における反応温度は1700〜1950℃であることを特徴とする請求項1に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項9】
前記炭素含有原料は石炭、コーライト及びコークス中のいずれか又はこれらの混合物であり、前記カルシウム含有原料は炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム及びカーバイドスラグ中のいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のカーバイドの製造方法。
【請求項10】
前記工程(2)の後に、混合された粉末状の炭素含有原料と粉末状のカルシウム含有原料に対して予熱する工程をさらに含み、予熱温度は500℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項11】
前記予熱温度は500〜1500℃であることを特徴とする請求項10に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項12】
前記予熱工程で使用される燃料は、粉末状の炭素含有原料、前記製造過程で得られた気体生成物のCO又は補助燃料であり、予熱で使用される酸素含有気体は酸素ガス、酸素リッチ空気又は空気であることを特徴とする請求項10又は11に記載のカーバイドの製造方法。
【請求項13】
前記予熱燃料がカーバイド製造過程で得られた気体生成物のCOである場合、COと空気との体積比は1:2.5〜1:4であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1つに記載のカーバイドの製造方法。
【請求項14】
原料配合ユニット、原料予熱ユニット及び反応ユニットを備え、カーバイドを製造するためのシステム(S)であって、
前記原料予熱ユニットは、固体原料ミキサー(12)とフィーダー(13)を備える原料混合フィーダー装置(1)と、原料入口(16)、吸気口(17)、第1の排気口(18)及び第1の固体原料出口(19)が設けられた予熱装置(2)と、気体圧縮装置(3)と、第1の熱交換器(11)とを含み、
前記固体原料ミキサー(12)の出口は前記フィーダー(13)の入口と連通し、
前記原料混合フィーダー装置(1)の出口(1-1)は前記予熱装置(2)の原料入口(16)と連通し、前記気体圧縮装置(3)は吸気口(17)を介して前記予熱装置(2)と連通し、前記第1の熱交換器(11)は第1の排気口(18)を介して前記予熱装置(2)と連通し、
前記反応ユニットは、フィーダー装置(4)と、原料噴出口(6)、第2の排気口(7)及び生成物排出口(8)が設けられた反応器(5)と、第2の熱交換器(9)とを備え、前記原料噴出口(6)には酸素含有気体入口(6-1)が設けられており、前記フィーダー装置(4)の固体物質入口(4-1)は前記予熱装置(2)の第1の固体物質出口(19)と連通し、前記フィーダー装置(4)の固体物質出口(4-2)は前記反応器(5)の原料噴出口(6)と連通し、前記反応器(5)における第2の排気口(7)は前記第2の熱交換器(9)の吸気口と連通し、前記第2の熱交換器(9)の排気口は前記予熱ユニットの気体圧縮装置(3)に接続されていることを特徴とするカーバイドの製造システム。
【請求項15】
前記フィーダー装置(13)及び/又は前記反応ユニットのフィーダー装置(4)に気体吹入口が設けられていることを特徴とする請求項14に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項16】
前記予熱装置(2)は予熱器(14)を含み、当該予熱器は流動床又は気流床であることを特徴とする請求項14又は15に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項17】
前記予熱器(14)が気流床である場合、前記予熱装置(2)はさらに気固分離器(15)を含み、当該予熱装置(2)の第1の固体物質出口(19)と第1の排気口(18)は前記気固分離器(15)に設けられていることを特徴とする請求項16に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項18】
前記気固分離器(15)はサイクロンセパレータであることを特徴とする請求項17に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項19】
前記フィーダー(13)とフィーダー装置(4)は螺旋フィーダー又はU字状の空気作動弁フィーダーであることを特徴とする請求項14に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項20】
前記第2の熱交換器(9)と第1の熱交換器(11)は管束熱交換器、パネル式熱交換器又は廃熱ボイラーであることを特徴とする請求項14に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項21】
前記反応器(5)の原料噴出口(6)は単一噴出口、対設噴出口又はマルチ噴出口であることを特徴とする請求項14に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項22】
前記気体圧縮装置(3)と第2の熱交換器(9)の連通パイプに補助燃料入口が設けられていることを特徴とする請求項14に記載のカーバイドの製造システム。
【請求項23】
前記予熱装置(2)と反応ユニットのフィーダー装置(4)との間に貯蓄装置が設けられていることを特徴とする請求項14に記載のカーバイドの製造システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−529840(P2011−529840A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520306(P2011−520306)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072770
【国際公開番号】WO2010/012193
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(507394488)北京化工大学 (2)
【Fターム(参考)】