説明

カーペット及びその製造方法。

【課題】本発明は、カーペット基材の裏面にポリ塩化ビニル樹脂を主体とするバッキング材が裏打されたカーペットに関するもので、特にバッキング材中に無機充填剤を多量に含有せしめ、強度、寸法安定性に優れた、コストメリットのあるカーペット及びその製造技術を提供するものである。
【解決手段】連続走行する離型性ベルト上にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布し、直ぐにその樹脂が未硬化のうちに表面に無機充填剤を均一に散布することで、従来の製造設備の形態を大きく変えることなく、バッキング材中に無機充填剤を、さらに多量に含有せしめる方法を確立し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット基材の裏面にポリ塩化ビニル樹脂を主体とするバッキング材が裏打されたカーペットに関するもので、特にバッキング材中に無機充填剤を多量に含有せしめ、強度、寸法安定性に優れた、コストメリットのあるカーペットの製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイルカーペットの製造において、バッキング材としてポリ塩化ビニル樹脂が裏打され、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤や、炭酸カルシウム等の無機充填材を100〜400重量部と大量に配合した裏打材が、タイルカーペットの寸法安定性を確保し、コスト的にも有利な裏打材として広く使用されてきた。
【0003】
例えば特許文献1においては、基布とパイルによって形成された表層部と、表層部裏面に積層された裏層部とからなり、該裏層部は、ポリ塩化ビニル100重量部に対し、可塑剤70〜100重量部、無機充填材を300〜500重量部、有機発泡剤1〜3重量部が配合され、有機発泡剤の活性化による1.1〜1.8倍に発泡させた発泡層と、ポリ塩化ビニル100重量部に対して無機充填材を300〜500重量部が含まれる非発泡層と、発泡層と非発泡層の間に介在するガラス繊維布帛とで構成され、発泡層を表層部裏面側に配置して積層したタイルカーペットを開示している。特別な機械装置を用いることなく、従来の装置で製造することができ、寸法安定性、耐熱性、耐荷重性等の非発泡の従来の塩化ビニル系樹脂裏層部の利点を損なわずに、強度、形態安定性、防滑性、耐久性を保持し、発泡層による軽量化により運搬、施工における取扱いの容易性を有し、また、上反りのないものとして開示している。
【特許文献1】特開平7−024948
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭酸カルシウム等の無機充填材は、上述のように製品の施工安定性の保持とコスト低減のために配合されるが、400重量部を越えるとペーストゾルの粘度が高くなり過ぎて加工性を悪化させ、強度低下や、表層部との剥離発生を招くとされ、これ以上の無機充填材の配合は難しいものとされてきた。
【0005】
本発明は、バッキング材中に無機充填剤を現状よりさらに多量に含有せしめる方法を確立したもので、強度、寸法安定性に優れ、コストメリットのあるカーペットの製造技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、連続走行する離型性ベルト上にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布し、直ぐにその樹脂が未硬化のうちに表面に無機充填剤を均一に散布することで、従来の製造設備の形態を大きく変えることなく、バッキング材中に無機充填剤を、さらに多量に含有せしめる方法を確立し本発明に到達した。本発明は、以下の手段を提供する。
【0007】
[1]カーペット基材の裏面に少なくとも上層下層の2層のポリ塩化ビニル樹脂を有するバッキング材層が裏打されてなるカーペットにおいて、前記バッキング材層の下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を400〜700重量部を配合し、上層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を0〜500重量部を配合したことを特徴とするカーペット。
【0008】
[2]前記バッキング材層の下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層の上側に、無機充填剤を10〜200重量部偏在せしめ、前記下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を400〜700重量部を配合したことを特徴とする前項1に記載のカーペット。
【0009】
[3]連続走行する離型性ベルト上にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布してバッキング材下層を形成し、次いで該下層の未硬化表面に無機充填剤を均一散布した後、更にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布してバッキング材上層を形成し、この上層上にカーペット基材を圧着することを特徴とするカーペットの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
[1]の発明では、バッキング材の下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を400〜700重量部を配合し、上層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を0〜500重量部を配合しているので、従来のポリ塩化ビニル樹脂層を有するバッキング材が裏打されたカーペットよりも、より多量の無機充填剤を含有することとなり、寸法安定性に優れ、コスト的にも有利なカーペットとすることができる。また、バッキング材の下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層が、上層側よりも多量の無機充填剤を含有するので、より寸法安定性に優れたカーペットとすることができる。
【0011】
[2]の発明では、前記バッキング材層の下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層の上側に、無機充填剤を10〜200重量部偏在せしめ、前記下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を400〜700重量部を配合しているので、下層の下側(床面との接地面)は柔らかく、下層の上側は硬い構成となり、床面へのフィット性が良好で、寸法安定性に優れたカーペットとすることができる。
【0012】
[3]の発明では、連続走行する離型性ベルト上にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布してバッキング材下層を形成し、次いで該下層の未硬化表面に無機充填剤を均一散布した後、更にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布してバッキング材上層を形成し、この上層上にカーペット基材を圧着するので、加工中のペースト樹脂の粘度への影響を考慮しなくてもよく、加工性を悪化させることがないので、多量に無機充填剤を塗布したカーペットの製造方法とすることができる。また、従来の工程に無機充填剤を均一に散布する装置を設置するだけで、この加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によるカーペット1は、例えば、図1に示すように表皮層2の裏面にバッキング材5が塗布され、接着一体化している。バッキング材5は、少なくとも2層のポリ塩化ビニル樹脂層を有するバッキング材が裏打されていて、上層6と下層7のバッキング材が塗布され、上層側と下層側のバッキング材の中間に、ガラス中間基布8が挿入されている例を示している。また、下層7のバッキング材の上側に、散布された無機充填剤9が多く偏在する様子を示している。
【0014】
また、図2は、本発明の製造工程(方法)の一例を示すもので、まず、連続走行する離型性ベルト10上に、ポリ塩化ビニルのペースト樹脂が樹脂供給管11aによって供給され、コーター12aによって1〜3mm程度の厚みの下層7を形成する。次にこの下層7の上に散布装置13によって無機充填材9が均一に定量に散布され、その散布面上にガラス繊維からなる中間基布8が押さえローラー14aによって導かれ、押さえローラー14bによって圧力調整されて圧着される。
【0015】
押さえローラー14bは、中間基布8を下層7に押さえつけることによって、中間基布8と下層7との間に溜まりやすい空気を排除して両者を濡れ状態に密着させ、両者の界面剥離を防ぐ。次に、中間基布8の上に、樹脂供給管11bによって上層用のポリ塩化ビニルのペースト樹脂が供給され、コーター12bによって1〜3mm程度の厚みの上層6を形成され、更に上層6の上にカーペット基材2が積層され、プレスローラー15bによって圧着されて、カーペット原反が得られる。次にカーペット原反はそのまま連続走行する離型性ベルト10上に乗ったまま、加熱炉16に導かれ、加熱キュア後に離型性ベルト10から剥がされて、冷却工程(図示せず)で常温にまで冷やされて所要の寸法に裁断されて製品になる。
【0016】
カーペットにおけるバッキング材の上下複層の形成をするポリ塩化ビニルのペースト樹脂は、ポリ塩化ビニルの乳化重合物とDOP(ジオクチルフタレート)等の可塑剤との混合物ゾルに、無機充填剤、安定剤、顔料等の添加剤を配合したペースト状物で、加熱によってゲル化し、均質な樹脂層を形成するものである。
【0017】
通常のカーペットにおける無機充填剤の添加量は、ペースト用塩化ビニル樹脂100重量部に対し、100〜500重量部の割合で配合することが必要である。100重量部未満では、例えばカーペットのバッキング材としては遮音効果が減少し、製品重量も軽くなりすぎて施工ズレを招く原因になるといわれ、500重量部を超えると粘度が数十万cpsとなって、加工性を悪化させ、コーターによる樹脂層の塗布形成が不可能になり、製品強度が著しく低下して耐久性が乏しくなるものと考えられていた。
【0018】
本発明で下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中に無機充填剤を700重量部まで配合できるのは、無機充填剤を500重量部以下に配合した通常のペースト樹脂を、一旦ベルト上に1〜3mm程度の厚みに塗布し、表面硬化が始まるまでにペースト樹脂上に、散布装置で無機充填剤を散布するもので、工程中の粘度上昇を考慮しなくてもよく、無機充填剤をさらに10〜200重量部まで追加して配合することができるものである。
【0019】
カーペットにおけるバッキング材層は、上下複層のポリ塩化ビニル樹脂層のみで構成してもよいが、図1に示すようにその間に寸法安定性の向上や補強を目的に、中間基布8を挿入するのがより好適である。
【0020】
中間基布8を挿入する場合は、この下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中に無機充填剤が散布されてから、その上に中間基布8を重ね、押さえローラー14bによって圧着される。(図1参照)中間基布8は、製品に寸法安定性と適度な硬さを与えるもので、線膨張率の低いガラス繊維布帛が好適である。また、中間基布8は、織物、不織布のいずれも用いられるが、濡れ状態で無機充填剤上に一体化されるためには、空気の溜まらない目の粗いものが好ましく用いられる。
【0021】
本発明に用いる無機充填剤9は、塩化ビニル系樹脂に通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、フライアッシュ、寒水等が挙げられ、これらを併用することもできる。特に好ましい無機充填剤としては、安価で増量効果が大きく、比較的色調調整が容易な炭酸カルシウムが好ましい。また、無機充填剤の平均粒径は、通常のペースト樹脂中に配合されるものであれば、50〜200μmが好適で、ペースト樹脂上に散布装置で散布する無機充填剤であれば、平均粒径は400〜600μmが好適である。散布する無機充填剤の粒径が大きいのは、散布後ペースト樹脂中に沈み込みやすく、散布した面での界面剥離が発現しにくいことによる。また、本発明のバッキング材層樹脂組成物には、目的に応じて安定剤、難燃剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0022】
つぎに本発明のカーペットについて具体的な実施例について説明する。なお、この発明のカーペット及び製造方法は、実施例に限定されるものではない。
【0023】
<実施例1〜3>
バッキング材の上、下層形成用のペースト樹脂として下記配合組成のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用い、既述した図2に示す製造装置を用いる製造方法により、バッキング材下層上に炭酸カルシウム(平均粒径500μm)を散布し、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、既に該下層中に配合された充填材量も含めて、炭酸カルシウム量が実施例1では470重量部、実施例2では550重量部、実施例3では630重量部となるように含有させ、図1の構成のカーペットを製造した。なお、実施例1〜3におけるバッキング材上下層の厚みは共に1.3mmに設定し、炭酸カルシウムの配合量の差異に対応して下層用のペースト樹脂の供給量を増減した。
【0024】
<ペースト樹脂組成> ポリ塩化ビニル樹脂100重量部、ジオクチルフタレート100重量部、炭酸カルシウム(平均粒径100μm)450重量部、安定剤2重量部、顔料2重量部、気泡防止剤5重量部とした。
【0025】
<比較例>
バッキング材下層に対して炭酸カルシウムを散布しなかった以外は、実施例1〜3と同様にしてカーペットを製造した、なお、バッキング材下層は、ペースト樹脂を上記炭酸カルシウム不配合に見合う分だけ供給量を増やすことより、実施例1〜3と同じ1.3mm厚に設定した。
【0026】
以上の実施例および比較例で製造した各カーペットに付き、カーペット性能として耐ファズ性、抜糸強度、寸法安定性を試験した。その結果をバッキング材下層に対する炭酸カルシウム配合量と共に表1に示す。なお、各試験項目は次の方法によって調べた。
【0027】
<耐ファズ性>
カーペット表面を針付きの摩耗輪を用いて荷重300g、20回転で摩擦してケバがとれるか否かを判定することにより、パイルフィラメントの保持性を調べた。評価は○…良好、×…不良とした。
【0028】
<抜糸強度>
JIS L 1021の規定に準じ、パイル糸の抜糸強度(N)を測定した。
【0029】
<寸法安定性>
(A)…カーペットを60℃→40℃→0℃→−20℃→20℃の各温度で順次2時間ずつ保持変温条件下に置いた後、縦横寸法を測定し、該変温を経る前の寸法と対比した値を縦横の平均値で示した。
(B)…カーペット表面上に荷重90kgを加えたチェアーキャスターを2000回転動させた後、縦横寸法を測定し、転動前の寸法と対比した値を縦横の平均値で示した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果から、この発明によって得られるカーペットは、充填材を原材料に大量に配合しているにもかかわらず、通常に配合しているカーペットに比較して、同等あるいはそれ以上の一般的性能を具備し、特に寸法安定性に優れていて、また寸法安定性(B)の試験により層間剥離を生じないこともわかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係わるカーペットの概略断面図である。
【図2】本発明の製造方法を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・カーペット
2・・・表皮層(カーペット基材)
3・・・パイル
4・・・基布
5・・・バッキング材
6・・・上層
7・・・下層
8・・・中間基布(ガラス中間基布)
9・・・無機充填材
10・・・離型性ベルト
11a、11b・・・樹脂供給管
12a、12b・・・コーター
13・・・散布装置
14a、14b・・・プレスローラー
15a、15b・・・プレスローラー
16・・・加熱炉
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、従来の製造設備の形態を大きく変えることなく、充填材散布装置を前記製造設備に加えるだけで、加工での問題もなく各種添加剤を多量に含有せしめる方法として広く利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペット基材の裏面に少なくとも上層下層の2層のポリ塩化ビニル樹脂を有するバッキング材層が裏打されてなるカーペットにおいて、前記バッキング材層の下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を400〜700重量部を配合し、上層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を0〜500重量部を配合したことを特徴とするカーペット。
【請求項2】
前記バッキング材層の下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層の上側に、無機充填剤を10〜200重量部偏在せしめ、前記下層側に位置したポリ塩化ビニル樹脂層中にポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、無機充填剤を400〜700重量部を配合したことを特徴とする請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
連続走行する離型性ベルト上にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布してバッキング材下層を形成し、次いで該下層の未硬化表面に無機充填剤を均一散布した後、更にポリ塩化ビニルのペースト樹脂を塗布してバッキング材上層を形成し、この上層上にカーペット基材を圧着することを特徴とするカーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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