説明

カーペット用捲縮糸およびカーペット

【課題】ポリ乳酸捲縮糸の利点であるきしみ感、踏みごたえ感、ドライ感を維持しながら、ポリ乳酸の欠点である耐摩耗性の低さ、低反発弾性、低バルキー性を改良したカーペット用捲縮糸およびそれからなるカーペットを提供する。
【解決手段】ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸と、ポリ乳酸以外の異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸を混合した混合捲縮糸からなり、前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以下であり、前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率が、前記ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率よりも5〜25%高いことを特徴とするカーペット用捲縮糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸捲縮糸の利点であるきしみ感、踏みごたえ感、ドライ感を維持しながら、ポリ乳酸捲縮糸の欠点である耐摩耗性の低さ、低反発弾性、低バルキー性を改良したカーペット用捲縮糸およびそれからなるカーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸ポリマーは、非石油系由来で環境に優しいポリマーとして注目を浴びており、その優れた加工性から、繊維、フィルム、成形体などの様々な形状での展開が試みられている。
【0003】
ポリ乳酸繊維としては、フィラメント、不織布などの多くの提案がされており、土木資材、おむつなどの日用品、漁網および釣り糸などの産業用資材への用途展開が進められている。
【0004】
一方、ポリ乳酸繊維のカーペットへの用途展開に関しても、さまざまな提案がなされているが、ポリ乳酸繊維単独使用のカーペットがほとんどである。ポリ乳酸繊維単独使用のカーペットの場合の利点としては、ポリ乳酸繊維特有の絹の様なきしみ感により、足にカーペットがぐっと入り込むような高級な踏み心地感が十分に感じられる点が挙げられる。これは、ポリ乳酸捲縮糸の特徴として、静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以上であるためである。また、剛性が高いため、風合いが堅くドライな感触を持っているためでもある。ただし、これらの特性が全面にでていると、逆に剛性が高すぎるため、カーペットがごわついた感触となり、通常用いられるナイロンカーペットほどのやわらかさに富んだ風合いを得ることはできなかった。
【0005】
ポリ乳酸繊維単独使用のカーペットの風合いを改善するために、断面を扁平断面にしたポリ乳酸繊維からなるカーペット(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、このカーペットは、繊維が扁平断面であるため、反発弾性が乏しく、へたりやすいという問題があった。
【0006】
また、ポリ乳酸捲縮糸の欠点としては、耐摩耗性が劣る点が挙げられる。特に、タイルカーペットなどのオフィス用途に使用した場合には、靴や椅子のキャスターによる摩擦頻度が高いため、カーペット繊維のフィブリル化や白化が発生し、それらが繰り返されることによる穴あき問題などを生じることになる。
【0007】
このようなポリ乳酸繊維単独使用のカーペットの耐摩耗性を向上するために、ポリ乳酸捲縮糸の糸−金摩擦係数を特定の範囲に規定したり、ポリ乳酸捲縮糸に潤滑剤を添加したりしたカーペット(例えば、特許文献2および3参照)が提案されているが、これらのカーペットはいずれも、オフィスなどのハードユースにおいて十分に耐え得るカーペットといえるものではなかった。
【0008】
さらに、ポリ乳酸捲縮糸にはナイロン繊維のような反発弾性がないため、ポリ乳酸繊維単独使用のカーペットの踏み込み感は良いが、踏み込んだ後のカーペットパイルからの押し戻しがなくて、底つき感があり、バルキー性に劣るカーペットとなることから、これらを改善するためには、ポリ乳酸捲縮糸の捲縮率を上げる必要がある。しかし、ポリ乳酸は耐熱性が低いため、熱処理を低く設定しないと、捲縮糸の強度が劣り、その捲縮糸からなるカーペットの耐摩耗性がさらに劣ってしまう。よって、ポリ乳酸繊維には捲縮を多くかけることができず、ナイロン捲縮糸に比べて沸騰水後の捲縮伸長率は多くて11%程度しかかけることができないため、ナイロン捲縮糸からなるカーペットのような反発弾性をもったカーペットを作ることができていない。したがって、現在は、十分なバルキー性を有するポリ乳酸繊維単独使用のカーペットを得るためには、カーペットの目付量を多くするといった対応(例えば、特許文献3参照)をとっているが、この場合には非常にコスト高になってしまうという問題があった。
【0009】
一方、カーペットにおいては、近年、新規の風合いや多様な表現性が求められている。このような点において、異素材を組み合わせたカーペットが従来から検討されており、例えば、ナイロンとポリエステルの混繊糸からなるコントラストの高いカーペット(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、このカーペットでは、ナイロン繊維を使用しているため、耐摩耗性や反発性はポリエステル繊維単独からなるカーペットよりも高いものの、ナイロン繊維およびポリエステル繊維共に、静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以下であるため、きしみ感のある絹様な風合いを得ることはできないのはもちろんのこと、単調な風合いのカーペットであった。
【0010】
また、ポリ乳酸との混繊糸についても、各種提案されており、例えば、布帛用として、ポリ乳酸捲縮糸とセルロースエステル主体の繊維との混繊糸(例えば、特許文献5参照)が提案されている。しかし、この混繊糸は、セルロースエステル繊維の強度が低いため、耐摩耗性が求められるカーペットには不向きであった。
【0011】
さらに、衣料用用途に適用するためのポリエチレンテレフタレートとポリ乳酸との混繊糸(例えば、特許文献6参照)が提案されているが、この混繊糸は、衣料用途を目的として設計されているため、ソフトな風合いは得られるが、混繊により得られた糸をカーペットに適用しても、カーペットの必要特性である耐摩耗性や、耐へたり性、バルキー性を得ることはできない。また、当該技術で使用するポリエチレンテレフタレート繊維は、ポリ乳酸捲縮糸に比較して、耐摩耗性、耐へたり性はやや優れているが、カーペット用途で一般に用いられるポリアミド捲縮糸やポリプロピレン捲縮糸と比較すると劣っており、ポリ乳酸捲縮糸の欠点部分をカバーするだけの特性を得ることができていなかった。なお、当該技術の実施例には直線糸しか記載されていないが、これを捲縮糸に置き換えたとしても、一般的にポリエチレンテレフタレート捲縮糸の沸騰水後の捲縮率は、ほぼポリ乳酸捲縮糸と同等の捲縮率であり、ポリ乳酸捲縮糸のバルキー性をカバーすることはできなきないばかりか、ポリ乳酸捲縮糸のきしみ感を生かした風合いを得ることはできなかった。
【特許文献1】特開2003−189995号公報
【特許文献2】特開2004−52125号公報
【特許文献3】特開2004−204407号公報
【特許文献4】特開昭62−206041号公報
【特許文献5】特開2004−250798号公報
【特許文献6】特開2000−226747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、ポリ乳酸捲縮糸の利点であるきしみ感、踏みごたえ感、ドライ感を維持しながら、ポリ乳酸捲縮糸の欠点である耐摩耗性の低さ、低反発弾性、低バルキー性を改良したカーペット用捲縮糸およびそれからなるカーペットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明によれば、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸と、ポリ乳酸以外の異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸を混合した混合捲縮糸からなり、前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以下であり、前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率が、前記ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率よりも5〜25%高いことを特徴とするカーペット用捲縮糸が提供される。
【0015】
なお、本発明のカーペット用捲縮糸においては、
前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸が、ポリアミドまたはポリプロピレンからなること、
前記混合捲縮糸に含まれるポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の比率が20〜65%であること、および
前記ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸およびポリ乳酸以外の異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸が、顔料含有原着糸から構成されていること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0016】
また、本発明のカーペットは、上記のカーペット用捲縮糸を用いてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下に説明するとおり、ポリ乳酸捲縮糸の利点であるきしみ感、踏みごたえ感、ドライ感を維持しながら、ポリ乳酸捲縮糸の欠点である耐摩耗性の低さ、低反発弾性、低バルキー性を改良したカーペット用捲縮糸およびそれからなるカーペットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0019】
本発明のカーペット用捲縮糸は、二種の捲縮糸を混合した混合捲縮糸からなり、少なくとも一方の捲縮糸がポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸からなることが必要である。
【0020】
本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチドなどの乳酸のオリゴマーを重合したものを言い、L体あるいはD体の光学純度が90%以上であることが、融点が高く好ましい態様である。
【0021】
L体あるいはD体の光学純度は、より好ましくは97%以上である。また、L体の光学純度90%以上のポリ乳酸と、D体の光学純度90%以上のポリ乳酸とを、70/30〜30/70の比率でブレンドしたものは、融点がさらに向上することから好ましい態様である。
【0022】
また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても良い。共重合成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸および5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などの分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0023】
ポリ乳酸の分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であることが、力学特性と成形性のバランスが良い点で好ましい。ポリ乳酸の分子量は、より好ましくは、重量平均分子量で10万〜35万である。
【0024】
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されない。具体的には、特開平6−65360号公報に開示されている製造方法が挙げられる。すなわち、乳酸を有機溶媒及び触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号公報に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを、重合触媒の存在下、共重合並びにエステル交換反応させる方法がある。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸を一旦脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
【0025】
本発明のカーペット用捲縮糸は、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸以外に、ポリ乳酸以外の異種ポリマーからなり、静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以下である異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸を含むことが必要である。この異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の静摩擦係数/動摩擦係数が1以上の場合には、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸のようにきしみ感が強く、踏みしめたような風合いのカーペットとなるため好ましくない。静摩擦係数/動摩擦係数が1以下の場合は、きしみ感はないものの柔らかく、反発弾性の大きなふくよかな風合いが得られる。これら異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸とポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸とを混合することにより、きしみ感と反発弾性を両立したカーペットを得ることができる。
【0026】
本発明のカーペット用捲縮糸は、後述する沸騰水中で処理した後の捲縮率において、異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率が、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率よりも5〜25%高いことが必要である。5%以上の差がある場合は、低捲縮のポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸が、高捲縮の異素材ポリマーマルチフィラメント捲縮糸よりもパイルの高さが高くなる。そのため、カーペットに足を踏み込んだ場合に、先にポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸のきしみ感を感じ、次いで異素材ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の反発弾性を感じるため、新規な風合いが強調されたカーペットが得られやすくなる。また、手で触れた際には、低捲縮でパイル高さが高いポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸が表面にでているため、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の特徴であるドライ感を感じることができる。異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸とポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の捲縮率差が5%未満の場合には、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸と異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸がほぼ同時に踏み込まれるため、異なる風合いの差によるきしみ感と反発弾性、ドライ感を感じるのが困難となることから好ましくない。また、異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸とポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率差が25%を超える場合には、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸のパイルハイが高くなりすぎるために、長期使用により、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸部分のパイルがつぶれ、審美性が劣る結果となるとなることから好ましくない。
【0027】
また、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸は、沸騰水後の捲縮率が5〜15%であればよい。より好ましくは、8〜13%である。ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の捲縮率がかかる範囲であると、捲縮の発現が十分で、カーペットにしたときにのボリューム感に優れる。一方、捲縮加工の熱処理をさほど厳しくする必要がないため、安易な製造が容易になるとともに、強度低下を抑制することができる。また、異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の捲縮は、10〜35%の捲縮率であることが好ましい。より好ましくは、13〜30%である。かかる範囲であれば、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸のバルキー性を補うことはもちろん、無理な熱処理をかけることなく捲縮が得られるため、強度を維持することで、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の欠点である耐摩耗性を補うことができる。
【0028】
本発明のカーペット用捲縮糸は、上述した特徴を両立させるために、捲縮糸中のポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の割合が20〜65%であることが好ましい。ポリ乳酸マルチフィラメント縮糸のように、静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以上の糸が65%を超えると、カーペットではきしみ感だけが感じられ、風合いが堅くなる。また、反発弾性が乏しいため、カーペットからの踏み込んだ後の押し戻しの感触がないため、底つき感のある薄い感触となる。
【0029】
逆に、静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以上のポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸が20%未満の場合に得られるカーペットは、風合いも柔らかく、反発弾性があるため、底つき感はないが、きしみ感、ドライ感といったアクセントがなく、単調な風合いのカーペットとなる。
【0030】
本発明のカーペット用捲縮糸にふくまれる静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以下である異種ポリマーマルチフィラメントを構成する異種ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジパミドなどのポリアミド類などが挙げられるが、カーペットにした際の柔らかさや反発弾性、特に、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸よりも捲縮率を高くするためには、ポリアミドおよびポリプロピレンであることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート捲縮糸については、ポリマーの特性として低い捲縮しか得ることができないため、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸と同等程度の捲縮しか得ることができず、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸とポリエチレンテレフタレート捲縮糸との間に捲縮率の差を持たせることができない。
【0031】
なお、異種ポリマーとしては、本発明の効果を損なわない程度に共重合成分を含むコポリマーであってもよい。さらには、製糸性改善や最終製品の品質改善のために、共重合成分を添加すること、また艶消し剤などの粒子を添加することは何等差し支えない。ポリアミドの場合には、具体的な共重合成分として、ε−カプロアミド、テトラメチレンアジパミド、ヘキサメチレンセバカミド、ヘキサメチレンイソフタラミド、テトラメチレンテレフタラミド、およびキシリレンフタラミドなどが挙げられる。艶消し剤としては、酸化チタンが好ましく用いられる。
【0032】
また、本発明のカーペット捲縮糸を作る上で、糸を混合する手段としては、交絡、撚糸が挙げられる。交絡、撚糸の使い分けは、目的とするカーペットの表情、用途によって適宜使い分けることができる。交絡数・撚り数なども特に制限を設けないが、交絡数は8〜42個/mであることが好ましい。8個/m未満であると、タフトする際にガイドやニードルに引っかかり、タフト性が劣る傾向となる。また、42個/mを超えると、柄が緻密になりすぎたり、交絡の収束部が目立ち、表面の凹凸が目立つ審美性に劣ったりする傾向となる。また、撚り数については、80〜250回/mの範囲であれば、パイルの撚り戻り抑制やバルキー性を両立がしやすくなる。また、混合するマルチフィラメント捲縮糸の本数は、特に制限はしないが、少なくとも1本はポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸、もう一本は異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の2本が最低本数である。
【0033】
本発明のカーペット用捲縮糸に用いられる糸は、各々の特性にあった熱処理で個別に捲縮がかけられ、巻き取った後、混合される。捲縮をかける手法としては、カーペット用捲縮糸で一般的に用いられている流体噴射加工が好ましい。カーペット用捲縮糸のような太糸は、衣料用で用いられている仮より加工では十分な捲縮をかけることができない。また、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の場合は、蒸気による加水分解を抑制するため、乾熱流体での捲縮加工が好ましい。
【0034】
本発明のカーペット用捲縮糸に用いるポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸および異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸は、いずれも顔料含有原着糸であることが好ましい。顔料含有原着糸を使用することによって、特にポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸においては、染色工程時の熱処理による強度低下を抑えることができる。顔料含有原着糸とは、紡糸によるポリマーを糸状に紡糸する前に、すでにポリマー中に目的とする色に応じた顔料を含有させたものをいう。顔料含有原着糸に使用する顔料は、有機物でも無機物でも良い。具体的な顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニン系顔料などが用いられるがこの限りではない。顔料のポリマー中への添加は、マスターペレット方式、紡糸前の粉末添加方式などの種々の方法が採用可能である。
【0035】
本発明のカーペット用捲縮糸においては、総繊度が1500〜4500dtexであることが好ましく、2000dtex以上3800dtex以下であることがさらに好ましい。900dtex以下であると、カーペット用捲縮糸の打ち込み数が多いピッチの細かい柄となり、4500dtex以上であると、逆に打ち込みが少く大柄となる。そのため、意匠性が若干劣り、好みの柄を得るのが難しくなる可能性がある。
【0036】
また、単糸繊度については、耐摩耗性の点から10〜30dtexであることが好ましい。10dtex未満であると耐摩耗性が劣り、長期使用によって毛羽等が発生する可能性がある。30dtexを超えると、溶融紡糸時に糸の冷却不足による毛羽の発生やカーペットの風合いが粗雑になる傾向がある。
【0037】
本発明のカーペット捲縮糸の断面形状については、特に制限はしないが、バルキー性や防汚性の点から、公知の田型中空、Y型断面、Y型中空などを適宜組み合わせて使用してもかまわない。
【0038】
本発明のカーペット用捲縮糸は、油分が0.4〜0.8重量%であることが好ましい。0.4重量%未満であると、カーペットを製造する際に、捲縮糸の通過性が悪くタフト性不良を起こす傾向がある。また、0.8重量%を超えると、カーペット使用中にゴミが付着しやすく汚れやすい傾向になる。
【0039】
本発明のカーペットは、カーペット用捲縮糸からなるフェースヤーンと、このフェースヤーンをタフトした基布と、この基布の裏に貼りつけたバッキング材とから構成されたカーペットであって、フェースヤーンが、上記カーペット用捲縮糸を含むことを特徴とするものである。フェースヤーンは、ループ、カットのどちらのパイルでも問題なく、目的、柄に応じて適宜使いわければよい。
【0040】
また、本発明のカーペット には、静電気抑制のために導電性繊維を混繊することや防汚性を高めるために防汚剤を塗布することも好ましい。
【0041】
以下に、本発明の耐摩耗性や反発弾性に優れた新規風合いのカーペットを形成し得るカーペット用捲縮糸を得るための製法の一例について説明する。
【0042】
最終的に本発明のカーペット用捲縮糸を作製するには、混合するそれぞれの捲縮糸を別々に紡糸し、それらを(染色)・合糸・混繊交絡、もしくは撚糸の手法をとる。ここにおいて、捲縮糸を製造する際の溶融紡糸、紡糸油剤、延伸、捲縮、混繊・交絡処理・撚糸・染色は通常公知の方法を採用し得る。
【0043】
本発明に用いる溶融紡糸装置は、エクストルーダー型紡糸機およびプレッシャー型紡糸機のどちらも使用可能であるが、製品の均一性および製糸工程における収率の点から前者が好ましい。特に原着ポリマーを用いる場合は、エクストルーダー型紡糸機が有利となる。
【0044】
本発明においては、構成捲縮糸に顔料含有原着糸を用いる場合は、この顔料含有原着糸の製造に当たっては、溶融段階でポリマーチップ中に目的の顔料を所要量含有させておくことが必要である。この原着チップは、あらかじめまたは紡糸機中でポリマーに顔料を所定量ブレンドすることにより得られるが、好ましい手法としては、公知のマスターチップ方式が挙げられる。この場合、糸中の顔料濃度とブレンド比からマスターチップ中の顔料の濃度を設計すればよい。
【0045】
溶融紡糸法により糸状となったポリマーには、必要に応じて延伸、熱固定を施す。
【0046】
延伸倍率については、後の工程で目的の捲縮を付与するために、ある程度の配向と結晶化をさせておくことが必要となることから、通常2倍から4倍の延伸を行うことが好ましい。また、延伸温度はその素材にあわせて設定を行うが、ポリ乳酸の場合100〜150℃、ナイロン6の場合160〜190℃が通常用いられる範囲である。
【0047】
次いで、延伸糸に捲縮を付与する。捲縮は公知の加熱流体加工処理により付与することができ、カーペット用の太繊度であっても、高い捲縮を容易に付与できる点からは、ジェットノズル方式およびジェットスタッファ方式がより好ましくなる。また、捲縮を固定する目的から、捲縮加工のスタッフィング時に冷却媒体により冷却する方法やロータリーフィルタを組み合わせることにも何ら制限はない。使用する加熱流体としては、蒸気・乾熱のどちらを使用しても良いが、耐熱性の低いポリ乳酸には乾熱が、耐熱性が高くより多くの捲縮を必要とするナイロン6には蒸気流体が好ましい。また、通常糸条に付与する加熱流体の温度、つまり捲縮加工温度としては、捲縮糸を構成するポリマーに適した温度を設定するが、ポリ乳酸では150℃〜200℃、ナイロン6では170〜260℃が好適である。捲縮付与においては、延伸糸をそのまま巻き取らずに連続して捲縮付与させてもよいし、未延伸糸あるいは延伸糸段階で一端巻き取ったものを解除して、捲縮工程に供してもよい。
【0048】
捲縮ノズルに導入する糸速度は、通常500から3500m/minが好ましい。かかる糸速度の範囲とすると、効率的な生産が可能で、またノズル通過後の捲縮の固定が容易であるとともに、安定な走行が容易である。
【0049】
次いで、糸の混合を交絡で行う場合は、公知の圧空を用いた交絡ノズルを使用することにより交絡を付与することができる。本発明の捲縮率の高い捲縮糸に高い交絡を付与するためには、付与時の走行糸条張力と、圧空の圧力が重要であり、交絡ノズルに導入する捲縮糸条ごとの個別の張力をなるべく同等に、かつその変動が少なくなるように、事前にガイドやコンペンセーターなどで調節することが好ましい。この場合に、単繊維を十分に開繊させ、高い交絡を付与するために、走行張力を通常は0.2g/d以下、特に0.1g/d以下の張力とすることが好ましい。また、空気圧力は、糸の繊度や張力との兼ねあわせにより、所定の交絡数になるように適宜設定すればよい。通常は、高交絡を付与するとともに、交絡の結節点が堅くなりすぎるのを防ぐため、通常0.3から0.9MPaの範囲が好ましく使用される。さらに、交絡ノズルを通過する糸条の速度は、交絡抜けを有効に防ぐため、通常は2000m/min以下、より好ましくは1200m/min以下の条件が採用される。
【0050】
また、糸の混合を撚糸で行う場合は、公知のリング撚糸機やダブルツイスタなどの公知のものが用いることができ、通常撚糸数は使用する捲縮糸の繊度や合糸する本数によって決められる。代表的には、700〜2000dtexの捲縮糸を撚糸する場合、撚糸数は80〜250回/mが採用される。セット温度は、70〜150℃が好ましく採用されるが、ポリマーの固有粘度や捲縮糸の物性、目的に合わせて設定すればよい。
【0051】
上記のように得られた混合捲縮糸は、ワインダー等の巻き取り装置を用いてチーズ、ボビン、コーン等に巻き取られる。
【0052】
また、原着糸を用いず染色する場合には、各ポリマーの染色特性が異なるため、混合前に先染めを実施する。先染めには、糸の表面等を荒らさないチーズ染色を用いる。チーズ染色は、特に限定されるものではなく、一般に使用されているチーズ染色機を用いれば良い。一般的なチーズ染色の流れは、精錬、染色、洗浄、オイリング、脱水、乾燥といった通常の公知の方法を使用する。温度、時間、均染剤、染料等も、使用する繊維に合わせて適宜調整すればよい。
【0053】
以上の方法により、本発明のカーペット用捲縮糸を得ることができる。
【0054】
次いで、上記カーペット用混繊糸をフェースヤーンとし、公知のタフティングマシンを用いてカーペットを作成する。一般には、目付を400〜1500g/m、パイル高さを2.0〜8.0mmの範囲とした場合に、タフトが容易で、かつ風合い、ボリューム感にもすぐれたカーペットとなる。
【0055】
かくして得られる本発明のカーペット用捲縮糸からなるカ−ペットの具体例としては、ロールカーペット、タイルカ−ペット、自動車用ラインマットおよびオプションマット、家庭用ラグ、玄関マットなどが挙げられ、目的とするカ−ペットの特性が活かせる多くの用途に用いることができる。また、パイルの形態もル−プパイル、カットパイルいずれでも良く、タフテッドカ−ペットだけでなく、織物や編み物あるいは刺繍された敷物などにも適用することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明における物性値は下記の方法で測定した値である。
【0057】
(1)繊度
JIS L 1090に規定の方法で測定した。
【0058】
(2)単糸繊度
繊度を単糸数当たりに換算した。
【0059】
(3)静摩擦係数/動摩擦係数の比
下記方法により、測定された静摩擦係数μsと動摩擦係数μdの値から、
式 μs/μd
として計算することにより得た値。
【0060】
A.静摩擦係数
下記条件での摩擦体通過後の張力を測定し、この張力T1より、
式μs=(T1/2−200/2)/(T1/2+200/2)
として計算することにより得た値。
速度:0.5m/分 荷重:200g 摩擦体:直径40mm 梨地ピン 加熱なし
【0061】
B.下記条件での摩擦体通過後の張力を測定し、この張力T2より、
式μd=(T2/2−200/2)/(T2/2+200/2)
として計算することにより得た値。
速度:55m/分 荷重:200g 摩擦体:直径40mm 梨地ピン 加熱なし
【0062】
(4)交絡数
捲縮糸を交絡が抜けない程度に解舒し、1m当たりの交絡数を測定した。測定を100回行った場合の平均値として算出した。
【0063】
(5)沸騰水処理後の捲縮率
捲縮糸を巻き取り後、チーズ形状で20℃、相対湿度65%の雰囲気中に、20時間以上放置した後、沸騰水中で浸漬処理したときの捲縮伸長率を示し、具体的には以下の方法で測定した値。
【0064】
すなわち、測定しようとする捲縮糸を、無荷重状態で沸騰水に30分間浸漬処理した後乾燥して平衡水分率となし、この試料に2mg/dの初荷重をかけて30秒経過の後に測定した試料長50cm(L1)にマーキングを施し、次いで同試料に100mg/dの定荷重をかけ、30秒経過後の伸び(L2)を測定して、前記(L1)および(L2)の値から、
式[(L2−L1)/L1]×100
として計算することにより得た値。
【0065】
(6)強度
オリエンテック社製テンシロン引っ張り試験機を用い、試長250mm、引っ張り速度300/分の条件で測定したときの糸破断時の最高強力の1dtex当たりの強さを測定した。
【0066】
(7)カーペット評価
下記各A〜Dの合計点15点以上を合格とした。
【0067】
A.きしみ感
カーペットを素足で踏んだときにもっともきしみ感を感じる物を5点とし、もっとも悪い物を1点とした。5点の標準見本をポリ乳酸捲縮糸のみのカーペット、1点の標準見本をナイロン捲縮糸のみのカーペットとし、比較評価を行った。
【0068】
B.反発弾性
5×10cmのカーペット片を5枚重ね、コの時型の枠に入れ初荷重4×10−3kPaをのせ、30秒後の厚みh1を測定する。その後、初荷重を取り除き、定荷重の0.1kPa、1分後の厚みh2を測定し、次に荷重を取り除き、1分間放置した後、再び初荷重の下で厚みh3を測定する。試験回数は3回とし、それらの平均値h1,h2,h3の値から
式(h3−h2)/(h1−h2)×100
として計算することによって得た値。
値の大きいものから、反発弾性が高いとし、以下の基準で判断した。
反発弾性率 100〜96% 5点
95〜91% 4点
90〜86% 3点
85〜81% 2点
80%以下 1点
C.耐摩耗性
JIS L1023に規定のテーパー摩耗試験方法で測定した。試験片の回転回数を5000回とし、摩耗減量率を測定した。試験片は各サンプル3枚用意し、それらの平均値として算出した。
摩耗減量の少ないものから耐へたり性が良好であるとし、以下の基準で判断した。
摩耗減量率 0〜20% 5点
21〜40% 4点
41〜60% 3点
61〜80% 2点
81〜100% 1点
【0069】
D.耐へたり性
JIS L1022 7に規定の繰り返し圧縮による厚さ減少を測定し、厚さ減少率を計算した。厚さ減少率の少ないものから耐へたり性が良好であるとし、以下の基準で判断した。
厚さ減少率 0 〜10% 5点
11〜20% 4点
21〜30% 3点
31〜40% 2点
41〜 % 1点
【0070】
[実施例1〜3、6〜7、比較例3]
ポリカプラミドのレギュラーチップに、赤弁柄、カーボンブラック、チタンイエローからなるベージュの顔料を総計で10%含有したマスターチップを、レギュラー:マスターチップ=20:1の割合でブレンドし、表1、表2に示す条件で、エクストルーダータイプの紡糸機により溶融紡糸し、冷却し、給油し、延伸し、引き続き巻き取ることなく公知の加熱流体処理装置であるジェットノズル(JN)を湿熱で用いて捲縮を付与して冷却し、空気圧0.2Mpa、交絡ノズル直前の糸張力を70gで交絡を付与し巻き取り、ベージュ色のナイロンマルチフィラメント捲縮糸を得た。原糸交絡数は、3.2個/mであった。
【0071】
ポリ乳酸のレギュラーチップに、フタロシアニンブルー、ベンガラ、カーボンブラック、酸化チタンのグレーの顔料を総計で10%含有した原着ポリ乳酸マスターチップを、エクストルーダーの直前にレギュラーチップ:マスターチップ=20:1でブレンドし、表1、表2の条件により紡糸・延伸することにより、グレー色の原着糸を得て、これを引き続き巻き取ることなく、上記と同様のジェットノズルを乾熱を用いて、捲縮を付与して冷却し、空気圧0.2Mpa、交絡ノズル直前の糸張力を70gで交絡を付与し巻き取り、グレー色ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸を得た。原糸交絡数は、4.0個/mであった。
【0072】
上記方法より得たベージュ色ナイロンマルチフィラメント捲縮糸と、グレー色ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸とを、それぞれ表1に示した本数を用いて、パッケージから450m/minで解舒しながら引き揃え、空気圧力6.2MPa、交絡ノズル直前の糸長力60gで交絡を付与し、38個/mの混繊交絡糸を得た。
【0073】
上記の方法で得られた混合捲縮糸を、1/8ゲージ(1/(2.54cmあたりのパイル列数))のレベルループタフト機でタフトし、表1に示すパイル高さ(mm)、パイルの打ち込み数(個/25.4cm)のループパイルカーペットを得た。これらの結果を表1、表2に示す。
【0074】
[実施例4]
グレー色ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸は、実施例1と同様な手法で得た。ポリプロピレンのレギュラーチップに、赤弁柄、カーボンブラック、チタンイエローからなるベージュの顔料を総計で10%含有したマスターチップを、レギュラーチップ:マスターチップ=20:1の割合でブレンドし、表1に示す条件で、エクストルーダータイプの紡糸機により溶融紡糸し、冷却し、給油し、延伸し、引き続き巻き取ることなく公知の加熱流体処理装置であるジェットノズルを用いて捲縮を付与して冷却し、空気圧0.2Mpa、交絡ノズル直前の糸張力を70gで交絡を付与し巻き取り、ベージュ色のナイロンマルチフィラメント捲縮糸を得た。原糸交絡数は、3.9個/mであった。
【0075】
また、実施例1〜3と同様に、表1に記載の混合率にて混繊交絡を行い、混合捲縮糸を得た。また、同様のレベルループタフト機でカーペットを得た。タフト規格およびカーペット評価の結果を表1に示す。
【0076】
[実施例5]
ポリカプラミドのチップを、表2に示す条件で、エクストルーダータイプの紡糸機により溶融紡糸し、冷却し、給油し、延伸し、引き続き巻き取ることなく公知の加熱流体処理装置であるジェットノズル(JN)を湿熱で用いて捲縮を付与して冷却し、空気圧0.2Mpa、交絡ノズル直前の糸張力を70gで交絡を付与し巻き取り、ナイロンマルチフィラメント捲縮糸を得た。原糸交絡数は、3.6個/mであった。
【0077】
ポリ乳酸のチップを、表2に示す条件で、エクストルーダータイプの紡糸機により、紡糸・延伸することにより、グレー色の原着糸を得て、これを引き続き巻き取ることなく、上記と同様のジェットノズルを乾熱で用いて、捲縮を付与して冷却し、空気圧0.2Mpa、交絡ノズル直前の糸張力を70gで交絡を付与し巻き取り、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸を得た。原糸交絡数は、3.9個/mであった。
【0078】
上記方法で得られたポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸を低張力で巻き返し、下記条件にてチーズ染色した。
染色温度:120℃ 染色時間:60分
染料: Mileton Polyester blue RSE
染料濃度 :5%owf 浴比:1:50 浴pH:4.5
【0079】
また、ナイロン捲縮糸についても低張力で巻き返し、下記の条件にてチーズ染色した。
染色温度:98℃ 染色時間:30分
染料:酸性染料 Kayanol Yellow NFG
染色濃度:2%owf 浴比:1:50 浴pH:6.5
【0080】
上記方法より得た染色ナイロンマルチフィラメント捲縮糸と染色ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸とをそれぞれ表2に示した本数を用いて、パッケージから450m/minで解舒しながら引き揃え、空気圧力6.2MPa、交絡ノズル直前の糸長力60gで交絡を付与し、36個/mの混繊交絡糸を得た。
【0081】
上記の方法で得られた混合捲縮糸を1/8ゲージ(1/(2.54cmあたりのパイル列数))のレベルループタフト機でタフトし、表2に示すパイル高さ(mm)、パイルの打ち込み数(個/25.4cm)のループパイルカーペットを得た。これらの結果を表2に示す。
【0082】
[比較例1]
実施例1〜4と同様のグレー色ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸のみでカーペットを作成した。タフト規格とカーペット評価結果を表1に示す。
【0083】
[比較例2]
グレー色ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸は、実施例1と同様の捲縮糸を使用した。
【0084】
ポリエチレンテレフタレートのレギュラーチップに、赤弁柄、カーボンブラック、チタンイエローからなるベージュの顔料を総計で10%含有したマスターチップを、レギュラーチップ:マスターチップ=20:1の割合でブレンドし、表1に示す条件で、エクストルーダータイプの紡糸機により溶融紡糸し、冷却し、給油し、延伸し、引き続き巻き取ることなく公知の加熱流体処理装置であるジェットノズルを用いて捲縮を付与して冷却し、空気圧0.2Mpa、交絡ノズル直前の糸張力を70gで交絡を付与し巻き取り、ベージュ色のナイロンマルチフィラメント捲縮糸を得た。原糸交絡数は、3.5個/mであった。
【0085】
また、実施例1〜3と同様に、表1に記載の混合率にて混繊交絡を行い、混合捲縮糸を得た。また、同様のレベルループタフト機でカーペットを得た。タフト規格およびカーペット評価の結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
実施例1〜7に関しては、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸と、ナイロンマルチフィラメント捲縮糸、ポリプロピレンマルチフィラメント捲縮糸との両方の特性を兼ね備えたカーペットを得ることができた。特に、実施例1〜4に関しては。きしみ感、反発弾性、耐摩耗性、耐へたり性のすべてにおいてバランスの良いカーペットであった。
【0089】
比較例1に関しては、ポリ乳酸マルチフィラメントのみの捲縮糸であり、きしみ感は感じるものの、反発弾性に乏しく、底つき感のあるバルキー性の低いカーペットであった。また、耐へたり性が劣っているため、繰り返し圧縮により厚さが大きく減少した。また、耐摩耗性テストによる摩耗減量率も多かった。
【0090】
比較例2に関しては、ポリエチレンテレフタレート捲縮糸を使用したため、静摩擦係数/動摩擦係数は1以下であるが、捲縮率が低いため、ポリ乳酸捲縮糸との捲縮差がなく、ポリ乳酸捲縮糸のきしみ感、ドライ感に乏しかった。また、耐へたり性や耐摩耗性も、ポリエチレンテレフタレートの特性及び低捲縮率のため劣っており、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の欠点を補うには至らなかった。
【0091】
比較例3に関しては、ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸とナイロンマルチフィラメント捲縮糸の捲縮率差が大きく、きしみ感は十分に感じるものの、高くなりすぎたポリ乳酸捲縮糸のパイルがつぶれ、耐へたり性が低いため審美性が劣る結果となった。耐摩耗性についても、高くなりすぎたポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸のパイルが削れやすいのと、ナイロンマルチフィラメント捲縮糸に高い捲縮を付与するため、過度の熱処理を与え、強度が劣り、摩耗減量が多く、長期使用により毛羽が発生するカーペットとなった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、ポリ乳酸捲縮糸の利点であるきしみ感、踏みごたえ感、ドライ感を維持しながら、ポリ乳酸捲縮糸の欠点である耐摩耗性の低さ、低反発弾性、低バルキー性を改良したカーペット用捲縮糸およびカーペットが提供され、ロールカーペット、タイルカーペット、自動車用ラインマットおよびオプションマット、家庭用ラグ、玄関マットなどの多くの用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸と、ポリ乳酸以外の異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸を混合した混合捲縮糸からなり、前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の静摩擦係数/動摩擦係数の比が1以下であり、前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率が、前記ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮率よりも5〜25%高いことを特徴とするカーペット用捲縮糸。
【請求項2】
前記異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸が、ポリアミドまたはポリプロピレンからなることを特徴とする請求項1に記載のカーペット用捲縮糸。
【請求項3】
前記混合捲縮糸に含まれるポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸の比率が20〜65%であることを特徴とする請求項1または2に記載のカーペット用捲縮糸。
【請求項4】
前記ポリ乳酸マルチフィラメント捲縮糸およびポリ乳酸以外の異種ポリマーマルチフィラメント捲縮糸が、顔料含有原着糸から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーペット用捲縮糸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーペット用捲縮糸を用いてなることを特徴とするカーペット。

【公開番号】特開2007−56378(P2007−56378A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239647(P2005−239647)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】