説明

カーペット

【課題】床面へのフィット性に優れ、リサイクルが容易で、生産性にも優れる、オフィスや店舗の出入口フロアで使用されるダストコントロールマットや住宅の玄関、キッチン、浴室、トイレなどに用いられる小サイズのマット、さらに自動車車内で使用されるフロアマット等に、好適に利用できるカーペットを提供する。
【解決手段】マットに好適に利用できるカーペットとして、構成する裏打ち層の材料をポリスチレン系熱可塑性エラストマーを使用することによって、床面へのフィット性に優れるカーペットが得られることを見出し、さらにカーペットを構成するパイル糸と基布をポリエステル樹脂繊維とすることで、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなる裏打ち層と合わせて、リサイクルが容易なカーペットを得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットに関するもので、より詳細には床面へのフィット性に優れ、リサイクルが容易なマットに好適に利用できるカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットに用いられるカーペットは、基布にナイロン繊維等からなるパイルを植設し、必要に応じパイル面裏側にラテックスをコーティングしたり、パイル面裏側に、例えば特許文献1では、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)や、特許文献2では、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂からなる裏打ち層を加熱加圧し、接着する方法が提案されている。NBRは耐油性、耐洗浄性の点で良好であることが知られ、PVCは成形性、経済性に優れていることが知られている。さらに両樹脂ともに耐久性強度にも優れており、寸法安定性も有している。しかし、強度を有する反面、剛性が大きく、柔軟性に劣り、真上からの荷重を受けた際に裏打ち層の歪みや変形が顕著になり、床面とのフィット性に劣るという難点があった。
【0003】
また、NBRは再利用することのできない素材であるため、老朽化すると廃棄処分せざるを得ないという問題がり、PVCは燃焼時に有害で且つ腐食性の塩化水素ガスを大量に発生するため、廃棄処理において焼却する際、作業員の健康障害や周辺の環境汚染等を引き起こすと共に、焼却炉を腐食したり劣化を速めるという問題があった。
【0004】
さらに、NBRは連続生産は困難で、加圧加熱プレス内に凸部の形状を型取った金型をセットし、金型面に未加硫NBRシートを配置してパイル生地と共に加熱加圧プレスし加硫、接着を行なう加工方法が必要で、設備コストが高く生産性にも劣る問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−71117号公報
【特許文献2】特開平6−98818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、床面へのフィット性に優れ、リサイクルが容易で、生産性にも優れ、オフィスや店舗の出入口フロアで使用されるダストコントロールマットや住宅の玄関、キッチン、浴室、トイレなどに用いられる小サイズのマット、さらに自動車車内で使用されるフロアマット等に、好適に利用できるカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、マットに好適に利用できるカーペットとして、構成する裏打ち層の材料をポリスチレン系熱可塑性エラストマーを使用することによって、床面へのフィット性に優れるカーペットが得られることを見出し、さらにカーペットを構成するパイル糸と基布をポリエステル樹脂繊維とすることで、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなる裏打ち層と合わせて、リサイクルが容易なカーペットを得られることを見出し本発明に到達した。上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]パイル糸と、前記パイル糸を植設した基布と、前記パイル糸と基布を固定する裏打ち層とからなるタフテッドカーペットにおいて、前記裏打ち層が、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなる樹脂成分が30〜100重量%を含む樹脂組成物をもって構成されてなることを特徴とするカーペット。
【0009】
[2]前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブチレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEPS)の中から選択される1種又は2種からなる前項1に記載のカーペット。
【0010】
[3]前記樹脂組成物に、ポリプロピレンまたはプロピレンを主体とする共重合体からなる樹脂成分が60重量%以下含まれてなる前項1又は2に記載のカーペット。
【0011】
[4]前記樹脂組成物に、無機充填剤が80重量%以下含まれてなる前項1又は3に記載のカーペット。
【0012】
[5]前記無機充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化チタン及びガラス粉末の中から選択される1種又は2種以上のものからなる前項4に記載のカーペット。
【0013】
[6]前記樹脂組成物に、可塑剤が30重量%以下含まれてなる前項1ないし5のいずれかに記載のカーペット。
【0014】
[7]前記可塑剤はパラフィン系、ナフテン系、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィンの中から選択される1種又は2種以上のものからなる前項6に記載のカーペット。
【0015】
[8]前記パイル糸と前記基布がポリエステル樹脂繊維からなり、前記パイル糸がポリエステルマルチフィラメントであり、前記基布がポリエステルスパンボンド不織布であることを特徴とする前項1ないし7のいずれかに記載のカーペット。
【0016】
[9]前記裏打ち層の裏面に、多数の滑り止め用突起が分散状態に一体形成されてなる前項1ないし8のいずれかに記載のカーペット。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、本発明のカーペットの裏打ち層を構成する成分としてポリスチレン系熱可塑性エラストマーが樹脂成分20〜100重量%で構成される樹脂組成物であるために、適度な柔軟性が得られ、良好な敷設安定性のある、即ち凹凸のある表面を有する床面にもフィットし、床面との滑りもなく、端部のめくれもなく外観的に収まりも良好で、マットに好適に使用できるカーペットとなる。
【0018】
また、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として成形されているために、廃棄後、回収し溶融させることによって、新たなマットの裏打ち層としての原材料として再利用することのできるリサイクルが可能なカーペットとなる。
【0019】
[2]の発明では、前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブチレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEPS)の中から選択される1種又は2種からなるために、適度な柔軟性やクッション性を有し、耐久性のある力学強度や硬度に優れるカーペットとなる。
【0020】
[3]の発明では、本発明のカーペットの裏打ち層を構成する樹脂組成物に、ポリプロピレンまたはプロピレンを主体とする共重合体からなる樹脂成分が60重量%以下含まれるために、適度な硬度、力学強度、成形時の粘度が得られることにより、特に屋外で使用され、耐久性のある形状保持が要求されるマットに好適に使用できるカーペットとなる。
【0021】
[4]の発明では、本発明のカーペットの裏打ち層を構成する樹脂組成物に、無機充填剤が80重量%以下含まれるために剛性や増量効果を高め、経済的効果の有するカーペットとなる。
【0022】
[5]の発明では、前記無機充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化チタン及びガラス粉末の中から選択される1種又は2種以上のものからなるために、経済性及び成形加工性の良好なカーペットとなる。
【0023】
[6]の発明では、本発明のカーペットの裏打ち層を構成する樹脂組成物に、可塑剤が30重量%以下含まれるために適度な柔軟性を有するカーペットとなる。
【0024】
[7]の発明では、前記可塑剤はパラフィン系、ナフテン系、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィンの中から選択される1種又は2種以上のものからなるために、柔軟性及び成形加工性の良好なカーペットとなる。
【0025】
[8]の発明では、パイル糸と基布がポリエステル樹脂繊維からなり、分別しなくてもそのまま溶融することによって新たなマットの原材料として再利用することのできるリサイクルが可能なカーペットとなる。また、前記パイル糸がポリエステルマルチフィラメントであので、防汚性と耐久性に優れ遊び毛のない、カーペットとすることができる。さらに前記基布がポリエステルスパンボンド不織布であるので、耐熱性がよく加工寸法の安定したカーペットとすることができる。
【0026】
[9]の発明では、本発明のカーペットの裏打ち層の裏面に、多数の滑り止め用突起が分散状態に一体形成されてなるために、局部的に大きな荷重が作用するような踏み方をした場合にも床面とのずれのないカーペットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。本発明のカーペットは、前記カーペットの裏打ち層がポリスチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として成形されたカーペットで、その柔軟性により、凹凸のある表面を有する床面にも、優れたフィット性を示すことができる。さらに、パイル糸と基布がポリエステル樹脂繊維から成形されたカーペットで、使用後は廃棄回収した後、そのまま溶融することによって新たなマットの原材料としてリサイクルすることができるカーペットである。
【0028】
本発明では、カーペットの裏打ち層として熱可塑性エラストマーを用いることを前提とし、適度な粘着性を有し、軟性と強度に富み、およびクッション性に優れたカーペットを提供するためにポリスチレン系熱可塑性エラストマー
を使用したところに最大の特徴を有する。
【0029】
本発明のカーペットの裏打ち層に用いる熱可塑性エラストマーについて説明する。熱可塑性エラストマーは、常温でゴム弾性を示し、高温では可塑化されて一般の熱可塑性樹脂用の成形機によって成形可能なものであり、本発明のカーペットの裏打ち層に用いる熱可塑性エラストマーとしては、特に弾性や強度に優れるポリスチレンなどのビニル芳香族系の重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとのブロック共重合体を水素添加した水添ブロック共重合体を主体とした組成物が好適な材料としてあげられる。
【0030】
前記ビニル芳香族系の重合体ブロックは、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、弾性や強度、および他の樹脂との親和性等の観点からスチレンおよびメチルスチレンが好ましい。ビニル芳香族化合物は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0031】
また、前記共役ジエン重合体ブロックは、例えば、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性の観点からイソプレン、ブタジエンまたはこれらの混合物が好ましい。前記共役ジエン重合体ブロックは、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0032】
前期水添ブロック共重合体とは、分子中にポリスチレンからなる重合体ブロックを2個以上有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックを1個以上有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であり、水添ブロック共重合体においては、得られるポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなる裏打ち層の柔軟性、成形性、力学強度の観点から、スチレンの含有率は5〜50重量%の範囲が好ましい。この割合が5%より小さいとシートの機械的性質が不十分となり逆に50%を超えると成形加工時の粘度が著しく高くなる場合がある
【0033】
前期水添ブロック共重合体は、スチレンを主成分とする重合体ブロックを有しているものであれば特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有するブロック共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等のいずれも選択可能であるが制振性や柔軟性の観点からトリブロック共重合体が好ましい。
【0034】
したがって、本発明のカーペットの裏打ち層に用いる熱可塑性エラストマーの成分となる水添ブロック共重合体としては、スチレン-ブチレン-スチレン型トリブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体が挙げられ、一般家屋内の玄関、キッチン、浴室、トイレなどに用いられる小サイズのマット等には、適度な柔軟性やクッション性を有するスチレン-ブチレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEBS)が好適であり、屋外で使用されるダストコントロールマットや自動車車内で使用されるフロアマット等は、耐久性のある力学強度や硬度に優れるスチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEPS)が好適である。
【0035】
本発明のカーペットの裏打ち層に用いる熱可塑性エラストマーは、裏打ち層を構成する樹脂組成物中に、20〜100重量%含有させる必要があり、望ましくは、含有率の下限値を45重量%以上にするのが良い。すなわちこの含有率が少過ぎると、カーペットとして良好な弾性及び強度が得られず好ましくない。
【0036】
本発明においては、裏打ち層を構成する樹脂組成物中に、耐久性、力学強度及び経済性等の向上を目的に、プロピレン系樹脂からなる樹脂成分を配合するのが好ましい。前記プロピレン系樹脂からなる樹脂成分としては、ポリプロピレンまたはプロピレンを主体とする共重合体が挙げられ、ホモタイプのポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとのブロックタイプ、ランダムタイプのいずれかの共重合体から選ばれる1種または2種以上が好適に用いられる。中でもホモタイプのポリプロピレン樹脂が好適である。
【0037】
このプロピレン系樹脂からなる樹脂成分、特にホモタイプのポリプロピレン樹脂樹脂は、裏打ち層を構成する樹脂組成物に対する配合比率を、60重量%以下、好ましくは下限値を3重量%以上、上限値を50重量%以下に設定するのが良い。この配合比率が多過ぎると、裏打ち層として十分な柔軟性を得ることができず、カーペットとしての敷設安定性等に問題が生じることがある。なおこの配合比率が少過ぎる場合、あるいは配合されない場合には、プロピレン系樹脂からなる樹脂成分の配合による効果、すなわち裏打ち層の強度を向上させるという効果が認められない場合がある。
【0038】
本発明においては、剛性や増量効果を高めるために、裏打ち層を構成する樹脂組成物中に無機充填剤を配合することができる。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化チタン、ガラス粉末等を好適なものとして例示でき、これらの中から1種のものを単独で使用しても、2種以上を併用して使用しても良い。なお上記の好適例の中でも特に、経済性及び成形加工性の観点から炭酸カルシウムを使用するのが良い。
【0039】
無機充填剤を配合する場合、その配合比率は、裏打ち層を構成する樹脂組成物中において80重量%以下、好ましくは下限値を10重量%以上、上限値を60重量%以下とするのが良い。すなわち無機充填剤の配合比率が少過ぎる場合、あるいは配合されない場合には、カーペットとしての性能には特に問題は生じないが、経済性の面で不利益が生じる恐れがあり、また配合量が多過ぎると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなって、成形加工が困難になるとともに、裏打ち層表面に肌荒れが生じる場合があり、好ましくない。
【0040】
また無機充填剤を配合する場合、平均粒子径が5〜500μmのもの、好ましくは10μm以上、100μm以下のものを使用するのが良い。すなわち粒子径が小さ過ぎるものを使用すると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形加工が困難になる場合があり、逆に大き過ぎるものを使用すると、裏打ち層表面に肌荒れが生じる場合があり、好ましくない。
【0041】
本発明においては、弾性や硬度を調整するために、裏打ち層を構成する樹脂組成物中に可塑剤を配合することができる。可塑剤としてはパラフィン系、ナフテン系、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられ、中でもパラフィン系、ナフテン系等のプロセスオイルが特に好ましい。これらは1種または2種以上が用いられる。オイルの重量平均分子量は300〜2000が好ましい。この範囲であれば成形品におけるオイルのブリードが極めて少ない。
【0042】
可塑剤を配合する場合、その配合比率は、裏打ち層を構成する樹脂組成物中において30重量%以下とするのが良い。30重量%を超えると軟化剤のブリードアウトが発生する傾向があり、力学強度や耐摩耗性が著しく低下する。
【0043】
本発明においては、上記の樹脂成分及び充填剤や可塑剤以外に、他の添加剤を必要に応じて適宜配合することも、もちろん可能である。例えば裏打ち層表面の粘着性を低減させてカーペットの取扱性を向上させるために、シリコーンオイル、シリカ、ステアリン酸及びその誘導体、ワックス等の粘着防止剤を、裏打ち用樹脂組成物に対し、10重量%以下の割合で配合しても良い。ただしシリコーンオイルやステアリン酸及びその誘導体の配合量が多過ぎる場合には、裏打ち層にブリード現象が生じ易くなり、ワックスが多過ぎると、強度が低下する。更にシリカが多過ぎる場合には、裏打ち用樹脂組成物の溶融粘度が増大して、成形加工性の低下を招くとともに、裏打ち層の強度も低下する恐れがある。なお粘着性除去効果が実質的に認められる配合量は、シリコーンオイルでは、0.01重量%以上、シリカでは0.1重量%以上である。
【0044】
更に上記樹脂組成物には、顔料等の着色剤を、直接あるいはマスターバッチとして、配合しても良く、付与すべき色調の顔料を着色度及び経済性等を考慮して0.1〜5重量%の割合で配合するのが良い。
【0045】
一方、本発明において、カーペットを構成するパイル糸としては、ポリエステル樹脂を原料とするのであれば、そのパイル形態に限定されることは無く、カットパイルであったり、ループパイルであったり、カットパイルとループパイルの組み合わせたものであってもよい。糸の形態も、撚り糸であったり、無撚糸であってもよいが、ポリエステルマルチフィラメントであるのが、防汚性と耐久性に優れ、遊び毛がなく、タフテッドカーペットのマットとしては好適である。
【0046】
また、本発明において、カーペットを構成する基布としては、ポリエステル樹脂を原料とするのであれば、形態に限定されることは無く、織布であったり、不織布であってもよいが、ポリエステルスパンボンド不織布が寸法の安定性がよく好適に使用される。
【0047】
なお、前記基布、パイル糸には必要に応じて静電気防止剤、消臭剤、防炎剤、防虫剤、抗菌剤、芳香剤等の各種添加剤を配合しても良い。
【0048】
本発明において、パイル層を形成する方法、即ち前記パイル糸を前記基布に植設する方法として、タフティングマシンによりパイル糸を植毛してパイル層を形成する手段を用いることができる。
【0049】
なお本発明において、柔軟性や良好な敷設安定性を考慮すると、ポリエステルスパンボンド等のポリエステル繊維不織布からなる基布に、ポリエステルマルチフィラメントからなるパイル糸が植毛されたものを好適に使用することができる。この場合、基布としては、目付が70〜280g/m2 程度のもの、好ましくは下限値が90g/m2以上、上限値が180g/m2 以下のもの、パイル層としては、目付が400〜1300g/m2 程度のもの、好ましくは下限値が600g/m2 以上、上限値が1000g/m2 以下のものを使用するのが良い。
【0050】
本発明においては、必須成分である前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなる樹脂成分の他、必要に応じて添加される充填剤及び添加剤を配合した樹脂組成物を、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー等の適当な混合機で混合して溶融コンパウンドを得、そのコンパウドを成形材料としたり、あるいはそのコンパウンドをペレット化したものを成形材料とする。又は、上記各樹脂成分からなるペレットと、充填剤及び添加剤等をタンブラブレンド等の撹拌機で均一に混合したドライブレンドペレットを成形材料とする。
【0051】
そして、前記成形材料をカレンダー成形機、またはコートハンガーダイ等を取り付けた単軸もしくは2軸の押出機を用い、130〜220℃の温度で、幅400〜2000mm、厚さ0.5〜3mmの裏打ち層用成形シートを成形して、そのシートを冷却固化する前に、圧着ロール等により、前記前記パイル糸を植設した基布の裏面に連続的に裏打ち層として被覆し、カーペットを得る。もしくは成形された裏打ち層用シートを冷却固化した後、そのシートをカーペット基材の裏面に接着剤等により接着することにより、カーペットを得る。
【0052】
ここで本発明において、裏打ち層は、その塗布量を300〜800g/m2 程度、好ましくは下限値を400g/m2 以上、上限値を600g/m2 以下にするのが良い。
【0053】
また本発明のカーペットにおいては、床面との滑り止めを図るために、裏打ち層の裏面に、多数の突起を分散状態に一体形成するのが良い。この滑り止め用突起は、滑り防止効果と踏み心地との観点から、突出長さを0.5〜2.0mm、形成数を8400〜11000個/m2 に設定するのが良い。
【0054】
この滑り止め用突起は、例えば押出成形された裏打ち用シートを圧着ロール等によりカーペット基材に被覆する際に、エンボスロールを通過させることにより形成することができる。
【0055】
本発明のカーペットにおいては、カーペットを構成する裏打ち層がポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなっており、他の構成要
素であるパイル糸と基布がポリエステル樹脂繊維と、裏打ち層の熱可塑性成分と同系統の熱可塑性成分からなっているので、全体を、即ち裏打ち層及びパイル糸と基布を共に、溶融することにより、新たな裏打ち層の原材料として使用可能となる。従って、本発明のマットは、裏打ち層の原材料として、分別工程無しに、容易にリサイクルできる。
【0056】
しかも、裏打ち層が弾性粒子を含有した熱可塑性成分からなっているので、裏打ち層及びパイル糸と基布を共に溶融し、適宜に、弾性粒子や熱可塑性成分を加えることにより、所望の物性を備えた裏打ち層を得ることができる。例えば、本発明のカーペットとして、パイル、基布、及び裏打ち層の量的割合が異なっている複数種のマットがある場合において、それら全てを溶融し、適宜に、弾性粒子や熱可塑性成分を加えれば、所望の物性を備えたマット裏打ち層を得ることができる。
【実施例】
【0057】
以下本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>パイル糸として、総繊度が2800デシテックス(1400dtex/2p、撚り数60回/m)、単繊維繊度が25デシテックスのポリエステル原着糸を、5/32インチゲージカットのタフティング機に仕掛け、基布としてポリエステルスパンボンド不織布(目付100g/m)を用い、ステッチ7.5/インチ、パイル長8mmのカットパイルのタフテッドカーペット基材を準備した。次に裏打ち層を構成する樹脂組成物としてポリスチレン系熱可塑性エラストマー(商品名セプトン2002 クラレ株式会社製)、ポリプロピレン(商品名グランドポリプロB221グランドポリマー製)可塑剤(商品名ダイアナプロセスオイルPW−380出光興産製)、充填剤(商品名ホワイトンSB白石カルシウム製)を用いて、それぞれ表1に示すように配合したものをニーダーにより混合撹拌して、混合物を得た。そしてその混合物を、カレンダー成形機を用い、200℃の温度で溶融混練し、前記タフテッドカーペット基材の裏面に連続的に裏打ち層として塗布量500g/m2 で被覆して、樹脂が冷却固化する前に、突出長さを1.0mm、形成数を9600個/m2 の突起を分散状態で形成されたエンボスロールを通過させ、圧着ローラによって圧着して連続状のカーペットを得、それを切断して500mm×500mmのマット形状のカーペットとしてのサンプルを得た。
【0059】
<実施例2、3>裏打ち層を構成する樹脂組成物として、表1に示すように配合したこと以外は、実施例1と同様にしてマット形状のカーペットを得た。
【0060】
<比較例1>裏打ち層を構成する樹脂組成物として表1に示すように、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの替わりにアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)を配合し、シートプレス加工にてマット形状のカーペットを作成したこと以外は、実施例1と同様にしてマット形状のカーペットを得た。
【0061】
<比較例2>裏打ち層を構成する樹脂組成物として表1に示すように、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの替わりにポリ塩化ビニル(PVC)配合したこと以外は、実施例1と同様にしてマット形状のカーペットを得た。
【0062】
<比較例3>裏打ち層を構成する樹脂組成物として、表1に示すように、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを除いて配合したこと以外は、実施例1と同様にしてマット形状のカーペットを得た。
【0063】
<比較例4>タフテッドカーペット基材を構成するパイル糸として、総繊度が2700デシテックス(1350dtex/2p、撚り数60回/m)、単繊維繊度が20デシテックスのナイロン原着糸をパイル糸としたこと以外は、実施例1と同様にしてマット形状のカーペットを得た。
【0064】
<比較例5>裏打ち層の裏面に、突起を形成せずにフラットにしたこと以外は、実施例1と同様にしてマット形状のカーペットを得た。
【0065】
<特性試験>上記各カーペットに対し、下記の測定を行い、各特性を評価し、結果を表2に示す。
【0066】
〔フィット性〕各カーペットを高低差2mmの凹凸柄があるクッションフロアーの上に敷き、カーペット上を体重約60Kgの人間が同方向に踏みつけて歩行(1回の通過でマットを1回踏むこととし、500回通過する)した際のマットのずれを測定し、フィット性を下記の判断基準で評価した。◎:カーペットのずれが、0.3cm未満でフィット性が良好である。〇:カーペットのずれが、0.3cm以上0.5cm未満でフィット性がやや良好である。△:カーペットのずれが、0.5cm以上3cm未満でフィット性の欠ける。×:カーペットのずれが、3cm以上で床面にフィットしていない。
【0067】
〔強度〕各裏打ち層を構成する樹脂組成物を200℃のホットプレスにより2mm厚のシートに成形し、JIS K6251に準拠し、破断強度(MPa)を測定し、下記の判断基準で評価した。○:破断強度が6.0MPaを超え、耐久性に優れている。△:破断強度が2.0〜6.0と悪いとまでは言えないが不十分。×:破断強度が2.0MPa未満で耐久性が悪い。
【0068】
〔柔軟性〕各裏打ち層を構成する樹脂組成物を200℃のホットプレスにより2mm厚のシートに成形し、JIS K6251に準拠し、100%モジュラス(MPa)を測定し、下記の判断基準で評価した。○:100%モジュラスが5.0MPaを下回り、柔軟性が優れている。△:100%モジュラスが5.0〜10.0と悪いとまでは言えないが不十分。×:100%モジュラスが10.0MPaを超え、柔軟性が悪い。
【0069】
〔燃焼性〕各各カーペットに対し、NBS(National Bureau ofStandards)燃焼性試験に準拠する燃焼試験を行い、発生した煙の種類や量等を確認した。そしてその結果に基づき、燃焼性が良好なものを「○」、悪いものを「×」、悪いとまでは言えないが不十分のものを「△」として評価した。
【0070】
〔リサイクル性〕各カーペットを、通行人数2000人/日の場所に3日間敷設した後に回収し、洗浄して汚れを取り除き、粉砕してニーダーにより220℃で15分間混合撹拌して混合物を得、そしてその混合物を、二軸押出機を用いてペレット化ができるかどうかを確認した。そして、相容性がよく容易にペレット化することができるもののを「○」、できないものを「×」、できないとまでは言えないが不十分のものを「△」として評価した。
【0071】
〔押出成形性〕一般に、裏打ち用原材料をニーダーで撹拌する際の平均所要トルク(kg・cm)が大きいものほど、押出成形性に劣り、逆に小さいものほど押出成形性に優れている。このため、上記の平均所要トルクを測定し、その測定値から判断して、押出成形性が良好なものを「○」、悪いものを「×」、悪いとまでは言えないが成形が困難なものを「△」として評価した。
【0072】
<表1>

【0073】
<表2>

【0074】
上表から明らかなように、本発明に関連した実施例のものは、いずれの特性にも良好な結果が得られ、中でも好適成分を好適量で配合した実施例1〜3ものは、一段と優れた特性が得られており、マットとして好適に使用できるカーペットであることが判る。これに対し、本発明の要旨を逸脱する比較例のものは、いずれかの特性に劣っており、マットとして好適に使用できるカーペットとして利用できないのが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル糸と、前記パイル糸を植設した基布と、前記パイル糸と基布を固定する裏打ち層とからなるタフテッドカーペットにおいて、前記裏打ち層が、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなる樹脂成分が20〜100重量%を含む樹脂組成物をもって構成されてなることを特徴とするカーペット。
【請求項2】
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブチレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体(SEPS)の中から選択される1種又は2種からなる請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記樹脂組成物に、ポリプロピレンまたはプロピレンを主体とする共重合体からなる樹脂成分が60重量%以下含まれてなる請求項1又は2に記載のカーペット。
【請求項4】
前記樹脂組成物に、無機充填剤が80重量%以下含まれてなる請求項1又は3に記載のカーペット。
【請求項5】
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化チタン及びガラス粉末の中から選択される1種又は2種以上のものからなる請求項4に記載のカーペット。
【請求項6】
前記樹脂組成物に、可塑剤が30重量%以下含まれてなる請求項1ないし5のいずれかに記載のカーペット。
【請求項7】
前記可塑剤はパラフィン系、ナフテン系、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィンの中から選択される1種又は2種以上のものからなる請求項6に記載のカーペット。
【請求項8】
前記パイル糸と前記基布がポリエステル樹脂繊維からなり、前記パイル糸がポリエステルマルチフィラメントであり、前記基布がポリエステルスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のカーペット。
【請求項9】
前記裏打ち層の裏面に、多数の滑り止め用突起が分散状態に一体形成されてなる請求項1ないし8のいずれかに記載のカーペット。

【公開番号】特開2010−125057(P2010−125057A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302842(P2008−302842)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】