説明

カーボンナノチューブの改善されたオゾン分解

単層及び多層カーボンナノチューブをオゾンで処理する方法が提供される。カーボンナノチューブは、そのカーボンナノチューブをオゾンと0℃から100℃までの温度範囲において接触させることにより処理され、未処理カーボンナノチューブに比べて重量の大きな官能化されたナノチューブを生成する。本発明の方法により処理されたカーボンナノチューブは、改善された電気化学キャパシタの製造用電極を形成するために利用することのできる三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体などの複雑な構造体を調製するために使用することができる。有用な触媒担体は、カーボンナノチューブ凝集体、三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体などのカーボンナノチューブ構造体をオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において接触させることにより調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
技術分野
本発明は、単層及び多層カーボンナノチューブの表面をオゾンで処理する方法に関する。本発明は、さらに、オゾン処理ナノチューブの凝集体を作る方法、及び前記凝集体を使用する方法も包含する。本発明は、さらに、互いにリンクされたそのようなオゾン処理カーボンナノチューブを含む三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体などの複雑な構造体を作る方法に関する。本発明は、さらに、オゾン処理された凝集体、三次元ネットワーク、又は剛性多孔質構造体から触媒担体を作る方法も含む。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
カーボンナノチューブ
本発明は、一般にナノチューブと呼ばれる、サブミクロンのグラファイト状カーボンフィブリルの分野におけるものである。カーボンフィブリルは、直径が1.0μ未満、好ましくは0.5μ未満、なおいっそう好ましくは0.2μ未満のバーミキュラカーボン堆積物である。カーボンナノチューブは、多層(つまり、ナノチューブ軸上に複数のグラファイト層を持つ)又は単層(つまり、ナノチューブ軸上に単一グラファイト層のみを持つ)のいずれかとすることができる。他の種類のカーボンナノチューブも以下で説明する。
【0003】
本出願で教示されているように処理することができるカーボンナノチューブは、市販の連続カーボンファイバーと区別することができる。アスペクト比(L/D)が少なくとも10、多くの場合10以上の繊維の場合、カーボンフィブリルは、望ましくは大きな、ただし不可避的に有限な、アスペクト比を持つ。連続繊維の直径もまた、フィブリルの直径よりもかなり大きく、常に>1.0μであり、典型的には5から7μである。
【0004】
カーボンナノチューブは、補強材として市販されている連続カーボンファイバーと物理的にも化学的にも異なり、また標準のグラファイト及びカーボンブラックなどの他の炭素の形態とも異なる。標準のグラファイトは、その構造のため、酸化作用を受け、ほぼ完全な飽和状態に至りうる。さらに、カーボンブラックは、不規則な核の周りにある複数のカーボン層であるグラフェン構造を持つ、一般的に回転楕円体粒子の形態の無定形炭素である。これらの違いにより、グラファイトとカーボンブラックは、カーボンナノチューブ化学の予測にはあまり役立たない。
【0005】
カーボンナノチューブは、さまざまな形態で存在し、金属表面におけるさまざまな炭素含有気体の触媒分解により調製されてきた。このようなバーミキュラカーボン堆積物は、電子顕微鏡の出現直後から観察されてきた。(Baker and Harris,Chemistry and Physics of Carbon,Walker and Thrower ed.,Vol.14,1978,p.83、Rodriguez,N.,J.Mater.Research.Vol.8,p.3233(1993))。
【0006】
1976年に、参照により本明細書の記載の一部とするEndoらの論文(Oberlin,A.and Endo,M.,J.of Crystal Growth,Vol.32(1976),pp.335−349を参照)において、このようなカーボンフィブリルが成長する基本的なメカニズムが解明された。これらは、金属触媒粒子に由来すると見られ、炭化水素含有気体の存在下で、カーボン中に過飽和する。円筒型秩序グラファイトコアが押し出し成形され、Endoらによれば、熱分解堆積グラファイトの外層で直にコーティングされる。熱分解オーバーコートを持つこれらのフィブリルの直径は、典型的には0.1μを超え、より典型的には0.2から0.5μである。
【0007】
1983年に、参照により本明細書の記載の一部とする、Tennentの米国特許第4,663,230号において、連続熱カーボンオーバーコートを含まず、フィブリル軸に実質的に平行な複数のグラファイト外層を持つカーボンフィブリルが記載されている。すなわち、これらは、c軸を持ち、これらの軸は、実質的に円筒軸に垂直な、グラファイトの湾曲した層の接線に垂直であるものとして特徴付けることができる。これらは、一般に、直径が0.1μ以下であり、長さ対直径の比は少なくとも5である。望ましくは、これらは、連続熱カーボンオーバーコート、つまり、調製のために使用される供給ガスの熱分解から生じる熱分解堆積カーボンを実質的に含まない。したがって、Tennentの発明では、直径のより小さな、典型的には35から700Å(0.0035から0.070μ)のフィブリルを利用する方法をもたらし、また規則正しい「成長したままの」グラファイト表面を利用する方法がもたらされた。一体性が低いが、熱分解カーボン外層を持たない構造の繊維状炭素も成長した。
【0008】
参照により本明細書の記載の一部とするTennentらの米国特許第5,171,560号は、熱オーバーコートのない、またフィブリル軸に実質的に平行なグラファイト層を持ち、前記フィブリル軸上への前記層の射影が少なくともフィブリル直径2つ分の距離だけ伸びるカーボンフィブリルを記載している。典型的には、このようなフィブリルは、実質的に一定の直径を有する実質的に円筒形のグラファイトナノチューブであり、c軸が円筒軸に実質的に垂直な円筒形グラファイトシートを含む。これらは、熱分解堆積カーボンを実質的に含まず、直径は0.1μ未満であり、長さ対直径の比は5よりも大きい。これらのフィブリルは、本発明の方法により酸化させることができる。
【0009】
ナノチューブ軸上へのグラファイト層の投影がナノチューブ直径2つ分未満の距離だけ伸びる場合、グラファイトナノチューブのカーボン平面は、断面については、ニシン骨状の形をとる。これらは、フィッシュボーンフィブリルと呼ばれる。参照により本明細書の記載の一部とするGeusの米国特許第4,855,091号は、熱分解オーバーコートを実質的に含まないフィッシュボーンフィブリルを調製する手順を示している。これらのカーボンナノチューブは、本発明を実施する際にも有用である。
【0010】
上述の触媒成長フィブリルに類似の形態を有するカーボンナノチューブは、高温炭素アーク(Iijima,Nature 354,56,1991)で成長させていた。現在一般に受け入れられているのは(いずれも参照により本明細書の記載の一部とする、Weaver,Science 265,1994及びde Heer,Walt A.、「ナノチューブと応用事例探求(Nanotubes and the Pursuit of Applications)」、MRS Bulletin,April,2004)、アーク成長ナノチューブは、Tennentの初期の触媒成長フィブリルと同じ形態を持つという点である。アーク成長カーボンナノファイバーは、「バッキーチューブ」と口語的に呼ばれることも多く、本発明においても有用である。
【0011】
有用な単層カーボンナノチューブ及びそれらを形成するプロセスは、例えば、いずれの論文も参照により本明細書の記載の一部とする「直径1nmの単一シェルカーボンナノチューブ(Single−shell carbon nanotubes of 1−nm diameter)」、S Iijima and T Ichihashi Nature,vol.363,p.603(1993)及び「単原子層壁を持つカーボンナノチューブのコバルト触媒成長(Cobalt−catalysed growth of carbon nanotubes with single−atomic−layer walls)」、D S Bethune,C H Kiang,M S DeVries,G Gorman,R Savoy and R Beyers Nature,vol.363,p.605(1993)で開示されている。
【0012】
単層カーボンナノチューブは、参照により本明細書の記載の一部とする、Moyらの米国特許出願第6,221,330号でも開示されている。Moyは、まず、それぞれ1から6個の炭素原子及びヘテロ原子としてH、O、N、S、又はClのみを含む1つ又は複数のガス状炭素化合物を任意選択的に水素と混合して含む気相混合カーボン供給原料ガス、並びに前記分解の反応条件下では不安定であり、反応条件下で分解触媒として作用する金属含有触媒を形成する、気相金属含有化合物を形成し、次いで分解反応条件下で前記分解反応を実施し、それにより前記ナノチューブを生産することにより、1つ又は複数のガス状炭素化合物の触媒分解により中空の単層カーボンナノチューブを生産するプロセスを開示した。本発明は、気相金属含有化合物が、ガス状炭素源も含む反応混合物内に導入される気相反応に関する。炭素源は、典型的には、任意選択的に水素と混合された、ヘテロ原子としてH、O、N、S、又はClを有するCからC化合物である。一酸化炭素又は一酸化炭素と水素が、好ましい炭素供給源である。約400℃から1300℃までと高温の反応帯温度及び約0から約100p.s.i.g.までの範囲内の圧力は、気相金属含有化合物を金属含有触媒に分解すると考えられている。分解は、原子金属へ分解であるか、又は部分分解された中間化学種への分解でもよい。金属含有触媒は、(1)CO分解を触媒し、(2)SWNT形成を触媒する。
【0013】
米国特許第6,221,330号の発明は、いくつかの実施形態において、金属含有触媒のエアロゾルが反応混合物に導入されるエアロゾル技術を使用することができる。SWNTを生産するエアロゾル法の利点は、均一なサイズの触媒粒子を生産し、効率的な連続的商業又は工業生産を行うそのような方法を設計することが可能であるという点である。すでに説明されている電気アーク放電及びレーザー蒸着法は、そのような商業又は工業生産のために経済的にスケールアップすることができない。本発明で有用な金属含有化合物の例としては、金属カルボニル、金属アセチルアセトナート、及び分解条件下で蒸気として導入され分解して非担持金属触媒を形成する他の物質がある。触媒活性金属には、Fe、Co、Mn、Ni、及びMoがある。モリブデンカルボニル及び鉄カルボニルは、反応条件下で分解され気相触媒を形成することができる好ましい金属含有化合物である。これらの金属カルボニルの固体形態は、前処理帯に送られ、そこで、蒸発し、それにより触媒の気相前駆物質となるようにできる。非担持触媒上にSWNTを形成するために2つの方法を使用できることがわかった。
【0014】
第1の方法は、揮発性触媒を直接注入することである。直接注入法は、参照により本明細書の記載の一部とする、米国特許第6,696,387号に記載されている。揮発性触媒前駆物質の直接注入では、結果としてモリブデンヘキサカルボニル[Mo(CO)]及び二コバルトオクタカルボニル[Co(CO)]触媒を使用してSWNTを形成することになることがわかっている。両物質とも、室温において固体であるが、周囲温度又は周囲温度に近い温度では昇華し、モリブデン化合物は、少なくとも150°では熱的に安定しており、コバルト化合物は、分解とともに昇華する(「金属カルボニルを介した有機合成(Organic Syntheses via Metal Carbonyls)」、Vol.1,I.Wender and P.Pino,eds.,Interscience Publishers,New York,1968,p.40)。
【0015】
米国特許第6,221,330号に記載されている第2の方法では、気化器を使用して、金属含有化合物を導入する(米国特許第6,221,330号の図1を参照)。この発明の好ましい一実施形態では、米国特許第6,221,330号の図2に示されている気化器10は、底部から約1インチのところにシール24を備え第2の区画を形成する石英サーモウェル20を備える。この区画は、反応ガスに対し開かれ、露出されている2つの1/4インチの孔26を持つ。触媒を、この区画に入れ、次いで、気化器加熱炉32を使用して所望の温度で蒸発させる。この加熱炉は、第1の熱電対22を使用して制御される。金属含有化合物、好ましくは金属カルボニルは、その分解温度よりも低い温度で蒸発し、反応ガスCO又はCO/Hの吹き込みで、前駆物質を反応帯34に送り、反応帯は、反応帯加熱炉38と第2の熱電対42により別々に制御される。出願人は、特定の動作理論に限定することを望んでいないが、反応器温度において、金属含有化合物は、部分的に中間化学種に分解されるか、又は完全に金属原子に分解されると考えられる。これらの中間化学種及び/又は金属原子は、合体して、実際の触媒である、より大きな凝集体粒子になる。粒子は、次いで、適正なサイズにまで成長し、COの分解の触媒作用とSWNT成長の促進の両方を行う。米国特許第6,221,330号の図1の装置では、触媒粒子及びその結果として得られる炭素形態は、石英ウールプラグ36上に集められる。粒子の成長速度は、気相金属含有中間化学種の濃度に依存する。この濃度は、気化器内の蒸気圧(及びしたがって温度)により求められる。この濃度が高すぎる場合、粒子成長は速すぎ、SWNT以外の構造が成長する(例えば、MWNT、無定形炭素、オニオンなど)。米国特許第6,221,330号の内容は、そこで説明されている例を含めて、すべて、参照により本明細書の記載の一部とする。
【0016】
参照により本明細書の記載の一部とする、Bethuneらの米国特許第5,424,054号には、炭素蒸気をコバルト触媒に接触させることにより単層カーボンナノチューブを生産するプロセスが記載されている。炭素蒸気は、無定形炭素、グラファイト、活性若しくは脱色炭、又はこれらの混合物である、固体炭素の電気アーク加熱により発生される。炭素加熱の他の技術、例えば、レーザー加熱、電子ビーム加熱、及びRF誘導加熱について検討されている。
【0017】
参照により本明細書の記載の一部とする、Smalley(Guo,T.,Nikoleev,P.,Thess,A.,Colbert,D.T.,and Smally,R.E.,Chem.Phys.Lett.243:1−12(1995))には、グラファイト棒及び遷移金属を、高温レーザーにより同時に蒸発させる、単層カーボンナノチューブを生産する方法が記載されている。
【0018】
参照により本明細書の記載の一部とする、Smalley(Thess,A.,Lee,R.,Nikolaev,P.,Dai,H.,Petit,P.,Robert,J.,Xu,C,Lee,Y.H.,Kim,S.G.,Rinzler,A.G.,Colbert,D.T.,Scuseria,G.E.,Tonarek,D.,Fischer,J.E.,and Smalley,R.E.,Science,273:483−487(1996))にも、少量の遷移金属を含むグラファイト棒が約1200℃の温度のオーブン内でレーザー蒸発される、単層カーボンナノチューブを生産するプロセスについて記載されている。単層ナノチューブの生産収量は70%を超えると報告されている。
【0019】
SWNTを形成するための担持金属触媒も知られている。参照により本明細書の記載の一部とする、Smalley(Dai.,H.,Rinzler,A.G.,Nikolaev,P.,Thess,A.,Colbert,D.T.,and Smalley,R.E.,Chem.Phys.Lett.260:471−475(1996))には、多層ナノチューブと単層ナノチューブの両方をCOから成長させる担持Co、Ni、及びMo触媒、及びそれらの形成に対して提案されているメカニズムについて記載されている。
【0020】
参照により本明細書の記載の一部とする、Smalleyらの米国特許第6,761,870号(なおWO00/26138でもある)は、予熱した(例えば、約1000℃まで)高圧(例えば、30大気圧)CO及び触媒前駆物質分解温度以下に保たれている、CO中の触媒前駆物質ガス(例えば、Fe(CO))を混合帯に供給するプロセスを開示している。この混合帯では、触媒前駆物質は、(1)前駆物質分解、(2)適切なサイズの活性触媒金属原子クラスタの形成、及び(3)触媒クラスタ上へのSWNTの好ましい成長をもたらすと報告されている温度まで素早く加熱される。
【0021】
カーボンナノチューブを生産する他の方法は、両方とも参照により本明細書の記載の一部とする、Resascoらの「二元金属Co−Mo触媒上のCOの触媒分解による単層カーボンナノチューブの制御された生産(Controlled production of single−wall carbon nanotubes by catalytic decomposition of CO on bimetallic Co−Mo catalysts)」Chemical Physics Letters,317(2000)497−503及びResascoらの米国特許第6,333,016号で開示されている。それらにおいては、カーボンナノチューブは、炭素含有ガスを金属触媒粒子に接触させることにより生産される。
【0022】
カーボンナノチューブの凝集体及び集合体
生産時に、カーボンナノチューブは、分離した別個のナノチューブ、ナノチューブの凝集体、又はその両方の形態で存在しうる。
【0023】
ナノチューブは、ランダムに互いに絡み合い鳥の巣(「BN」)類似の絡み合った玉を形成する、さまざまな形態(走査電子顕微鏡法により決定される)を持つ凝集体として、又は実質的に同じ相対的配向を持つまっすぐ乃至わずかに曲がっている、又はよじれたカーボンナノチューブの束からなる、コーマ糸(「CY」)の外観を有する、例えば、それぞれのナノチューブの長手方向軸(個々の曲がり又はよじれにも関わらず)が束の中の周囲ナノチューブのと同じ方向に伸びる、凝集体として、又は互いに緩く絡み合い「オープンネット」(「ON」)構造を形成するまっすぐ乃至わずかに曲がっている、又はよじれのできているナノチューブからなる凝集体として、調製される。オープンネットの構造では、ナノチューブの絡み合いの程度は、コーマ糸凝集体で観察される程度よりも大きく(個々のナノチューブは実質的に同じ相対的配向を持つ)、鳥の巣の程度よりも低い。他の有用な凝集構造としては、綿菓子(「CC」)構造がある。
【0024】
凝集体の形態は、触媒担体の選択により制御される。球状担体は、ナノチューブを四方八方に成長させ、鳥の巣凝集体を形成する。コーマ糸及びオープンネット凝集体は、1つ又は複数の容易に開裂可能な平面を持つ担体、例えば、1つ又は複数の容易に開裂可能な表面及び少なくとも1平方メートル/グラムの表面積を持つ担体物質上に堆積された、鉄若しくは鉄含有金属触媒粒子を使用して調製される。参照により本明細書の記載の一部とする、「カーボンフィブリルの製造のための改善された方法及び触媒(Improved Methods and Catalysts for the Manufacture of Carbon Fibrils)」という表題の1995年6月6日に出願されたMoyらの米国特許第6,143,689号には、様々な形態を有する凝集体として調製されたナノチューブが記載されている(走査電子顕微鏡方法によって決定される)。
【0025】
カーボンナノチューブ凝集体の形成に関する更なる詳細は、Tennentの米国特許第5,165,909号、Moyらの米国特許第5,456,897号、Snyderらの1991年5月1日に出願された米国特許第5,707,916号、及び1989年1月28日に出願されたPCT出願第US89/00322号(「カーボンフィブリル(Carbon Fibrils)」)、WO89/07163、及び1994年8月2日出願されたMoyらの米国特許第5,456,897号及び1990年9月27日に出願されたPCT出願第US90/05498号(「電池(Battery)」)、WO91/05089、及び1995年6月7日に出願されたMandevilleらの米国特許第5,500,200号及び1994年8月2日に出願された米国特許第5,456,897号及び1994年10月11日に出願されたMoyらの米国特許第5,569,635号の開示で説明されており、これらすべては本発明と同じ譲受人に譲渡されており、参照により本明細書の記載の一部とする。
【0026】
ナノチューブマット又は集合体は、水性又は有機媒体中にカーボンナノチューブを分散させ、次いで、ナノチューブを濾過してマット又は集合体を形成することにより調製された。また、マットは、流体、例えば、プロパンなどの有機溶媒中にナノチューブのゲル又はペーストを形成し、次いで、そのゲル又はペーストを媒体の臨界温度よりも高い温度に加熱し、超臨界液を取り除き、最後に、プロセスが実施された容器から結果として得られた多孔性マット又はプラグを取り出すことにより調製された。参照により本明細書の記載の一部とする、1997年11月25日に米国特許第5,691,054号として発行された、Tennentらの「ランダムに配向されたカーボンフィブリル及びこれを含有する複合物質の三次元巨視的集合体(Three−Dimensional Macroscopic Assemblages of Randomly Oriented Carbon Fibrils and Composites Containing Same)」という表題の米国特許出願第08/428,496号を参照のこと。
【0027】
カーボンナノチューブの酸化
上記の特許及び特許出願において説明されているように、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブの凝集体には多くの用途が見つかっているが、ナノチューブ表面が酸素含有部分で官能化された場合に、まだ多くの異なる、重要な用途が開発されうることがすでに知られている。カーボンナノチューブを官能化するために使用される方法の1つは、硝酸又は過酸化水素などの液体酸化剤による酸化反応によるものである。酸化により、官能化されたナノチューブとさまざまな基質との相互作用を行わせ、独自の特性を持つ物質の独自の組成物を形成することができ、またカーボンナノチューブの表面上の官能部位の間の結合に基づいてカーボンナノチューブの構造の創成を可能にする。
【0028】
しかし、よくある望ましくない副作用は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ構造体自体の同時破壊である。そのため、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ構造体の強度及び一体性が損なわれるだけでなく、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ構造体上に堆積させることができる酸素含有部分の量に関する制約限度もある。すなわち、カーボンナノチューブ表面上の酸素含有部分の濃度を高めつつ、同時にカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ構造体の破壊度を低減する、カーボンナノチューブを官能化する改善された方法の必要性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の要約
本発明は、単層又は多層カーボンナノチューブを、元のカーボンナノチューブよりも重い、官能化されたナノチューブを形成するのに十分な条件下で0℃から100℃までの温度範囲においてオゾンで処理する方法を提供する。好ましくは、ナノチューブは、室温で、又はほぼ室温で、オゾンと接触させる。より好ましくは、ナノチューブは、0℃から60℃の温度範囲、最も好ましくは20℃から50℃の温度範囲でオゾンと接触させられる。
【0030】
オゾンは、ガス状又は液状媒体を介してカーボンナノチューブと接触させることができる。処理されるカーボンナノチューブは、個々の形態、又は綿菓子、鳥の巣、コーマ糸若しくはオープンネットの形状に類似する巨視的形態を有する凝集体のようなカーボンナノチューブ構造体の形態とすることができる。他のカーボンナノチューブ構造体としては、マット、集合体、三次元ネットワーク、剛性多孔質構造体などがある。好ましい多層カーボンナノチューブは、直径が1ミクロン以下であり、好ましい単層カーボンナノチューブは、直径が5nm未満である。
【0031】
オゾン処理カーボンナノチューブは、さらに、二次処理工程を施すことができ、それにより、オゾン処理ナノチューブの酸素含有部分は、適当な反応物質と反応し、少なくとも二次基を処理済みナノチューブの表面上に加える。
【0032】
オゾン処理カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブのネットワーク、剛性多孔質構造体を調製する際に、又は電気化学キャパシタで使用される電極の出発物質としても有用である。
【0033】
触媒担体は、0℃から100℃までの温度範囲においてカーボンナノチューブ凝集体、三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体をオゾンに接触させるか、若しくは処理することにより調製されるのが好ましい。好ましくは、凝集体、三次元ネットワーク、又は剛性多孔質構造体は、室温で、又はほぼ室温で、オゾンと接触させる。より好ましくは、凝集体、三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体は、0℃から60℃の温度範囲、最も好ましくは20℃から50℃の温度範囲でオゾンと接触させる。オゾンを使用して官能化された触媒担体構造体は、より高い酸滴定濃度を示し、そのため、触媒充填量を増やし、元の担体構造体及び一体性の保持を高めることができる。
【0034】
本発明のオゾン処理カーボンナノチューブから作られた電極から組み立てられた電気化学キャパシタは、比容量などの増強された電気化学的特性を示す。
【0035】
要約すると、本発明は、互いに絡み合った多数のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ構造体を含み、前記構造体は、滴定時、1から2meq/gの酸滴定濃度を示すということである。カーボンナノチューブ構造体は、綿菓子、鳥の巣、コーマ糸及びオープンネット凝集体からなる群より選択される形状に類似する巨視的形態を有するカーボンナノチューブの凝集体の形態とすることができる。カーボンナノチューブ構造体は、三次元ネットワーク、カーボンナノチューブマット若しくは集合体、剛性多孔質構造体、又は他のカーボンナノチューブ構造体とすることもできる。
【0036】
本発明は、滴定時に、1.6から2.2meq/gの範囲内、又は2meq/gよりも大きい、又は2.5から3.5meq/gの範囲内の酸滴定濃度を示すカーボンナノチューブを更に含む。また、本発明は、非オゾン処理カーボンナノチューブの酸滴定濃度と比較したときに、滴定時、少なくとも1.5meq/g、又は少なくとも2meq/g、又は1.5meq/gから3meq/gの範囲内の酸滴定濃度増大を示す、オゾン処理カーボンナノチューブを含む。
【0037】
本発明が提供する従来技術に対するその他の改善は、本発明の好ましい実施形態を述べた以下の説明の結果として認識される。説明は、決して、本発明の範囲を制限することを意図しておらず、むしろ、本発明の好ましい実施形態を実施する例のみを提供するものである。本発明の範囲は、添付の請求項によって指摘される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
定義
「ナノチューブ」、「ナノファイバー」、及び「フィブリル」という用語は、単層又は多層カーボンナノチューブを意味し、相互交換的に使用される。それぞれ、好ましくは断面積(例えば、エッジを有する角のあるファイバー)又は直径(例えば、丸形)が1ミクロン未満(多層ナノチューブの場合)又は5nm未満(単層ナノチューブの場合)である細長い構造をいう。「ナノチューブ」という用語は、「バッキーチューブ」、及びフィッシュボーンフィブリルも含む。
【0039】
本明細書で使用される「多層ナノチューブ」は、実質的に一定の直径を持つ実質的に円筒形のグラファイトナノチューブであるカーボンナノチューブを指し、例えばTennentらの米国特許第5,171,560号に記載されているような、c軸が実質的に円筒軸に垂直である円筒型グラファイトシート又は層を含む。
【0040】
本明細書で使用される「単層ナノチューブ」は、実質的に一定の直径を持つ実質的に円筒形のグラファイトナノチューブであるカーボンナノチューブを指し、例えばMoyらの米国特許第6,221,330号に記載されているような、c軸が実質的に円筒軸に垂直である単一円筒型グラファイトシート又は層を含む。
【0041】
「官能基」という用語は、それらが結合している化合物又は物質に、特徴的な化学的及び物理的特性を付与する原子団をいう。
【0042】
「官能化された」表面とは、化学基が吸着又は化学的に結合した炭素表面をいう。
【0043】
「グラフェン状」炭素は、炭素原子がそれぞれ六角形縮合環を形成する、本質的に平面をなす層の他の3つの炭素原子に結合している炭素の一形態である。その層は、直径わずか数環分の小板状体であるか、又は長さは多数の環に相当するが幅は数環分であるリボンであってもよい。
【0044】
「グラファイト状」炭素は、本質的に互いに平行で、上下の間隔が3.6Å以下であるグラフェン層からなる。
【0045】
「凝集体」という用語は、絡み合うカーボンナノチューブを含む密な微視的粒子構造をいう。
【0046】
「ミクロ細孔」という用語は、直径が2ナノメートル未満の微細孔をいう。
【0047】
「メソ細孔」という用語は、断面積が2ナノメートルよりも大きく、50ナノメートルよりも小さい微細孔をいう。
【0048】
「表面積」という用語は、BET技術により測定可能な物質の全表面積をいう。
【0049】
「接触可能表面積」という用語は、ミクロ細孔に起因しない表面積をいう(つまり、直径又は断面積が2nm未満である細孔)。
【0050】
「等方性」という用語は、測定の方向に依存しない、構造の平面又は体積内の物理的特性のすべての測定結果が、定数値であることを意味する。このような非固体組成物の測定は、空きスペースの平均値が考慮に入れられるように、構造の代表的標本について行われなければならないことは理解される。
【0051】
「オゾン処理」カーボンナノチューブ、凝集体、又は他のカーボンナノチューブ構造体と比較して使用される場合の「未処理」という用語は、カーボンナノチューブ、凝集体、又は構造体が、オゾンで特に処理されていないことを意味する。これは、オゾンで処理する前に他の非オゾン処理が施されているカーボンナノチューブ、凝集体、又は構造体を除外しない。
【0052】
オゾンでカーボンナノチューブを処理する方法
本発明では、カーボンナノチューブの表面性質及び特性は、好ましい実施形態によりそれらにオゾンによる処理を施すことにより修飾される。好ましい実施形態によりフィブリルを処理する望ましい結果の1つは、フィブリルの表面が酸素含有部分により官能化されることである。
【0053】
また、得られるオゾン処理ナノチューブは、有機溶媒及び無機溶媒の両方に、特に水に容易に分散させることができる。オゾン処理ナノチューブは、プラスチックなどの他の物質のマトリックス内に入れるか、又は触媒作用、クロマトグラフィ、濾過システム、電極、キャパシタなどに有用な構造体に作ることができる。さらに、オゾン処理ナノチューブは、後の節で検討されるように、他の有用なカーボンナノチューブ構造体を形成するために使用することもできる。
【0054】
好ましい実施形態では、カーボンナノチューブは、直径が実質的に一定の、実質的に円筒形のグラファイトカーボンフィブリルであり、熱分解堆積カーボンを実質的に含まない。ナノチューブは、少なくともナノチューブの直径2つ分の距離だけ伸びているナノチューブ上にグラファイト層を射影することによる長さ対直径の比が5よりも大きいものを含む。
【0055】
本発明の方法に有用な単層及び多層カーボンナノチューブは、「カーボンナノチューブ」という先の見出しのところで詳しく説明した。好ましい一実施形態では、多層ナノチューブは、両方とも参照により本明細書の記載の一部とする、Tennentらの特許第5,171,560号、又はMoyらの米国特許第6,696,387号により調製される。多層カーボンナノチューブの直径は、好ましくは1ミクロン以下、より好ましくは0.2ミクロン以下である。なおいっそう好ましいのは、直径が2から100ナノメートル、最も好ましくは3.5から75ナノメートルまでの範囲内である多層カーボンナノチューブである。
【0056】
或いは、好ましい単層カーボンナノチューブは、参照により本明細書の記載の一部とする、Moyらの米国特許第6,211,330号で開示されているように調製される。単層カーボンナノチューブの直径は、好ましくは5ナノメートル以下、より好ましくは0.6から5ナノメートルまでの範囲内である。
【0057】
カーボンナノチューブを処理するために使用されるオゾンは、ガス状オゾン、液体状オゾン、又は水などの水性溶媒中に溶解されているオゾンの形態で供給することができる。オゾン含有ガスは、任意選択的に、酸素、空気、窒素、希ガス及びそれらの混合物などのガスで希釈することができる。従来から利用できる、又は市販のオゾン発生器は、オゾン又はオゾン含有ガスを発生させるために使用することができる。オゾン又はオゾン含有ガスを生成するために、オゾン発生器に、空気又は純酸素などのガスを供給することができる。供給ガスとして空気を使用すると、多くの場合、水などの媒体と反応して硝酸を形成しうる、窒素の酸化物も含有するオゾン含有ガスを生成することになる。オゾン含有ガス中の窒素又は硝酸副産物のこのような余剰酸化物は、カーボンナノチューブの所望の官能化に影響を及ぼす可能性がある。他方で、純酸素を供給ガスとして使用すると、より純粋なオゾン含有ガスを生成するとともに、カーボンナノチューブの所望の官能化に影響を及ぼす可能性のある窒素の酸化物などの余計な副産物を全く発生しないが、又はその発生量がかなり少ない。
【0058】
一実施形態では、オゾンは、250mg/時の速度でカーボンナノチューブに導入することができる。好ましくは、オゾンは、200から300mg/時の速度でカーボンナノチューブに導入される。当業者であれば、オゾン含有ガスの実際の流量は、ガス内のオゾンの量及び処理するカーボンナノチューブの量に左右されることを理解するであろう。
【0059】
オゾンは、垂直管型反応器、充填床、流動床などを使用することのような、垂直反応器を使用することを含む、公知慣用の反応器、プロセス、又は方法を使用してカーボンナノチューブに導入することができる。非垂直又は水平反応器も使用することができる。例えば、オゾンは、スパージャーを通して、カーボンナノチューブを収納する容器が回転され、カーボンナノチューブのオゾンへの曝露がより均一に分配され、その結果カーボンナノチューブの官能化がさらに均一化される転動式反応器又は回転ドラム式反応器内に供給することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、カーボンナノチューブは、0℃から100℃までの温度範囲においてオゾンで処理される。好ましくは、ナノチューブは、室温で、又はほぼ室温で、オゾンと接触させられる。より好ましくは、ナノチューブは、0℃から60℃の温度範囲、最も好ましくは20℃から50℃の温度範囲でオゾンと接触させられる。
【0061】
例示的な実施形態では、好ましい温度でのこのオゾン分解は、24時間かけて実施することができる。好ましくは、反応は、3から8時間の間、又は10から45時間の間、より好ましくは15から25時間の間続けることができる。当業者であれば、このプロセスの実施時間は、反応器のサイズ及び温度、処理に必要なカーボンフィブリルの量、フィブリルに導入されるオゾンの速度、オゾンがフィブリルに導入される形態(つまり、ガス状又は液体状媒体)、望ましい酸性度などの因子に依存することを理解するであろう。
【0062】
この好ましい実施形態に従って処理されるカーボンナノチューブは、多数の予期し得ない利点を結果する。
【0063】
好ましい実施形態のオゾン処理カーボンナノチューブが、酸化剤でカーボンナノチューブを処理した場合に予想された重量損ではなく、重量増を生じることが意外にも見いだされた。重量増加は1%よりも多く、好ましくは5%よりも多い。一実施形態では、好ましい実施形態のオゾン処理カーボンナノチューブは、5から20%までの重量増、より好ましくは10から15%までの重量増を示す。
【0064】
理論に束縛されるわけではないが、この全体的な重量増は、より高い温度において他の酸化剤(例えば、硝酸−凝集体を分解し、風化ロープ構造を形成する)を用いるときではより典型的であるアンキャッピング反応、ストリッピング反応又は縮まり反応(それにより炭素質量の損失を最小にするか、又は測定可能な若しくは目に見える損失をなくす)に関与するのとは逆に、カーボンナノチューブ表面の表面処理(それによりカーボンナノチューブ及び凝集体の表面上への官能基の付着、形成、置換又は堆積を引き起こす)に優先的に関与する、記載した温度範囲のオゾンに起因しうると考えられる。より原子的なレベルでは、好ましい実施形態による中温度でのオゾン処理は、オゾンが二重結合表面炭素原子と五員「オゾニド」環を形成し、次いでそれがCOOHとC=Oに分解する付加反応を経由して進行すると考えられている。この結果は驚くべきことである。というのは、オゾンは温度が高いほど強力な酸化剤であり、したがって、硝酸などの他の強酸化剤の場合と同様、強力にカーボンナノチューブのアンキャッピング、ストリッピング、又は縮め反応を引き起こすことが予想されていたからである。オゾン分解のメカニズムは、参照により本明細書の記載の一部とする、Murray,Robert W.、「オゾン分解のメカニズム(The Mechanism of Ozonolysis)」、Accounts of Chemical Research,Volume 1,pp.313−320(October,1968)に記載されている。
【0065】
重量増と一致する形で、好ましい実施形態によるオゾンでのカーボンナノチューブの処理では、他の酸化剤を使用した処理に比べてナノチューブ表面上の官能基(特に酸性基)の量が増えることが発見され、これも予想外であった。(その結果、明細書及び特許請求の範囲では、「官能化された」ナノチューブという用語は、ナノチューブがオゾンで処理された「オゾン処理カーボンナノチューブ」と相互交換的に使用することができる)。具体的には、オゾンで処理されたカーボンナノチューブは、硝酸及び過酸化水素などの他の酸化剤で処理されたものに比べて高い酸滴定濃度に達する(つまり、多くの酸性基を持つ)ことができる。酸滴定濃度は、実施例の節の「滴定濃度を測定する方法」という表題の節で説明されている方法など、本出願の中で説明されている方法を使用して測定することができる。
【0066】
好ましい実施形態のオゾン処理カーボンナノチューブは、2meq/gを超える酸滴定濃度に達し、好ましくは1.6から2.2meq/gの範囲内に達することができる。或いは、オゾン処理カーボンナノチューブは、0.0040〜0.0080meq/mの範囲内の酸滴定濃度に達することができる。酸滴定濃度測定結果は、カーボンナノチューブ上に堆積されたCOOH、フェノール性OH、ラクトンなどの酸素含有部分と反応する酸の量の尺度であるので、非常に高い酸滴定濃度に達した場合、好ましい実施形態の方法におけるオゾンは、カーボンナノチューブの表面側壁と反応し、エンドキャップだけと反応するわけではない。
【0067】
また、好ましい実施形態に従ってオゾンを使用し、他の酸化剤によりすでに酸化又は官能化されているカーボンナノチューブを更に処理することができることも判明している。例えば、無定形炭素を含む単層又は多層カーボンナノチューブ混合物は、まず、慣用の方法を使用して硝酸で酸化し、特に、混合物を精製する(つまり、酸化を介して無定形炭素を取り除く)ことができる。これらの酸化されたカーボンナノチューブは、したがって、いくつかの酸素含有部分で官能化され、そうして、滴定時、低い酸滴定濃度を得る。好ましい実施形態に従ってこれらの酸化されたカーボンナノチューブをオゾンでさらに処理すると、オゾン処理カーボンナノチューブは、滴定時、少なくとも1.5meq/gだけ、好ましくは2meq/gよりも大きな酸滴定濃度の増大を示すことが発見された。例えば、酸滴定濃度の増大は、1.5meq/gから3meq/gまで、又は2meq/gから2.5meq/gまでの範囲とすることができる。(これらの酸滴定濃度の増加は、予め酸化剤で処理されていない未処理のカーボンナノチューブと比較したときにオゾン処理カーボンナノチューブにも当てはまる)。最終のオゾン処理カーボンナノチューブは、それら自体、滴定時に、2.5meq/gよりも大きい、又は2.5meq/gから3.5meq/gの範囲内の酸滴定濃度を示すことができる。
【0068】
さらに、記載されている温度範囲においてオゾンを使用してカーボンナノチューブを処理した場合も、硝酸又は過酸化水素で酸化したカーボンナノチューブと比較して表面酸性基の生成効率が高くなる(割合が高くなる)。記載されている温度範囲においてオゾンで処理されたカーボンナノチューブは、硝酸又は過酸化水素で酸化されたものと比べて酸素含有量が高い。好ましい実施形態のオゾン処理カーボンナノチューブの表面において、酸素含有量は4%よりも高く(例えば、4〜10%)、好ましくは6%よりも高くてよい(例えば、6〜10%)。オゾン処理から得られる好ましい官能基は、カルボキシル、無水物、及びケトンを含む。
【0069】
さらに、好ましい実施形態によるカーボンナノチューブのオゾン処理では、さらに、他の酸化剤に比べてカーボンナノチューブ自体への破壊度は低くなることが発見されている。図4A及びBに示されているものなどの実験データ及び走査電子顕微鏡写真から、オゾン処理カーボンナノチューブ自体からの炭素質量の損失が最小であるか、さもなければ測定可能な若しくは目に見える損失がないことは明らかである。
【0070】
カーボンナノチューブ自体に対する表面及び構造上の利点に加えて(つまり、官能基が多く、炭素破壊が小さい)、好ましいオゾン処理を使用する他の利点として、室温などの低い温度範囲においてオゾン酸化処理を実施できる結果としてもたらされる省エネとコスト節減が挙げられる。したがって、他の酸化プロセスと比較して、追加の加熱機器が必ずしも必要ではない。
【0071】
オゾン処理カーボンナノチューブ構造体−概要
これらの利点はすべて、カーボンナノチューブ構造体(例えば、フィブリル凝集体、マット、集合体、三次元ネットワーク、剛性多孔質構造体など)をオゾンで処理する場合に当てはまることも発見された。オゾン処理構造体は、表面酸化度が高くても損なわれることがなく、上記の重量増、酸素含有量及び酸滴定濃度特性のすべても同様に当てはまる。
【0072】
さらに、後の節で説明されるように、これらのオゾン酸化カーボンナノチューブから作られるカーボンナノチューブ構造体に関しても同様の利点が得られる。
【0073】
カーボンナノチューブ構造体は、以下に限定されるわけではないが、以下の群、すなわち、凝集体、集合体、ネットワーク及び剛性多孔質構造体を含む。
【0074】
a.凝集体は、絡み合ったカーボンナノチューブの密な微視的粒子構造体であり、鳥の巣、綿菓子、コーマ糸又はオープンネットの形態に類似している場合がある。
【0075】
b.集合体は、三次元集合体の一次元軸だけ、好ましく二次元軸及び最も望ましくは三次元軸において相対的に一様な特性を持つカーボンナノチューブ構造体である。(例えば、参照により本明細書の記載の一部とする、米国特許第5,691,054号)。一般に、集合体は、カーボンナノチューブ凝集体構造体を脱凝集し、次いでそれらを組立て直して集合体を形成することにより形成される。
【0076】
c.ネットワークは、カーボンナノチューブの表面に位置する官能化された基の間で結合分子を使用することにより個々の官能化されたカーボンナノチューブを結合して1つにすることで形成される。(例えば、参照により本明細書の記載の一部とする、PCT/US97/03553又はWO 97/32571)。
【0077】
d.剛性多孔質構造体は、結合分子を使用せずに個々の官能化されたカーボンナノチューブを1つに結合するか、又はカーボンナノチューブ凝集体構造を接着剤により接着することにより形成される。(例えば、参照により本明細書の記載の一部とする、米国特許第6,099,965号)。
【0078】
好ましい実施形態では、オゾン処理カーボンナノチューブ構造体は、まずそれぞれの構造体を形成し、次いで、上の「オゾンでカーボンナノチューブを処理する方法」の節で説明されているようにオゾン処理をその構造体に施すことにより作ることができる。或いは、オゾン処理カーボンナノチューブ構造体は、オゾン処理カーボンナノチューブ自体から形成することができる。
【0079】
オゾンでカーボンナノチューブの凝集体を処理する方法
また、カーボンナノチューブの改善された凝集体は、好ましい実施形態に従ってオゾンで処理することにより形成することができることも発見されている。すでに定義されているように、凝集体は、絡み合うカーボンナノチューブの密な微視的粒子構造体であり、「カーボンナノチューブ及び集合体の凝集体」という表題の節で、すでに説明されているか、又は参照により記載の一部とされている手順のいずれかを使用して作ることができる。好ましい凝集体の直径は、50ミクロン未満である。
【0080】
上述のカーボンナノチューブの非破壊的処理に対応して、カーボンナノチューブの改善された凝集体は、記載されているオゾン処理カーボンナノチューブから形成できることが更に発見されている。或いは、カーボンナノチューブの改善された凝集体は、好ましい実施形態によるオゾン処理を未処理凝集体に施すことにより形成することができる。
【0081】
オゾン処理カーボンナノチューブからカーボンナノチューブの凝集体を形成する場合、個々のカーボンナノチューブは、まず、前の節「オゾンでカーボンナノチューブを処理する方法」で開示されているようにオゾン処理が施され、オゾン処理カーボンナノチューブを形成する。次いで、オゾン処理カーボンナノチューブは、「カーボンナノチューブ及び集合体の凝集体」という表題の前の節で、参照により本明細書の記載の一部とする参考文献に開示されている任意の方法を使用してカーボンナノチューブのオゾン処理凝集体に形成される。
【0082】
或いは、未処理カーボンナノチューブの凝集体がすでに形成されている場合には、それらの未処理凝集体は、前節「オゾンでカーボンナノチューブを処理する方法」に記載されているのと同じ方法及び条件下でオゾン処理を施すことができる。
【0083】
いずれの実施形態においても、カーボンナノチューブのオゾン処理凝集体は、オゾン処理カーボンナノチューブと類似の多数の利点を有することが発見された。例えば、オゾン処理凝集体は、カーボンナノチューブの未処理凝集体と比べて予想外の重量増を示す。カーボンナノチューブのオゾン処理凝集体の重量増加は、カーボンナノチューブの未処理凝集体と比較して、1%超大きく、好ましくは5%以上大きくすることができる。一実施形態では、好ましい実施形態のオゾン処理カーボンナノチューブ凝集体は、5から20%までの重量増、より好ましくは10から15%までの重量増を示す。
【0084】
さらに、意外にも、好ましい実施形態によるオゾン処理では、他の酸化剤を使用した処理に比べてナノチューブ表面上の官能基(特に酸性基)が多いカーボンナノチューブの凝集体が生成されることが見出された。特に、カーボンナノチューブのオゾン処理凝集体は、硝酸及び過酸化水素などの他の酸化剤で処理されたものに比べて高い酸滴定濃度に達する(つまり、より多くの酸性基を持つ)ことができる。カーボンナノチューブのオゾン処理凝集体は、1meq/gから2meq/gの範囲内の酸滴定濃度に達することができる。
【0085】
なおいっそう驚くべきことは、カーボンナノチューブのオゾン処理凝集体が、元の未処理凝集体の構造を実質的に保持しつつ、1meq/gから2meq/gの範囲内の酸滴定濃度に達する、という発見である。構造のこのような実質的保持は、ここでもまた、好ましい実施形態により使用された場合にオゾンの非破壊的効果の確認となっている。硝酸などの他の酸化剤による処理を施されたカーボンナノチューブの凝集体は、これらの酸化剤がカーボンナノチューブ上でのアンキャッピング、ストリッピング及び縮まり反応に関与し、それにより、凝集体構造体が分解し、バラバラになるため、そのように高い酸滴定濃度に達することができない。
【0086】
実験の結果、記載されている温度範囲においてオゾンを使用してカーボンナノチューブの凝集体を処理した場合に、硝酸又は過酸化水素で酸化させたカーボンナノチューブと比較して表面酸性基の生成効率が高くなる(割合が高くなる)ことが更に確認される。カーボンナノチューブのオゾン処理凝集体は、硝酸又は過酸化水素で酸化されたものと比べて酸素含有量が高い。カーボンナノチューブのオゾン処理凝集体の表面において、酸素含有量は4%よりも高く(例えば、4〜10%)、好ましくは6%よりも高くすることができる(例えば、6〜10%)。実験の結果でも、オゾン処理から得られる好ましい官能基は、カルボキシル、無水物及びケトンであることがわかった。
【0087】
オゾンで他のカーボンナノチューブ構造体を処理する方法
「オゾンでカーボンナノチューブの凝集体を処理する方法」という表題の前節に一致した形で、他の改善されたカーボンナノチューブ構造体は、オゾン処理カーボンナノチューブから形成することができる。或いは、未処理カーボンナノチューブ構造体は、好ましい実施形態によるオゾン処理を施すことができる。オゾン処理は、気相又は液相で実施することができる。
【0088】
オゾン処理カーボンナノチューブは、少量の水溶性結合剤を使用することにより形成することができる高品質押し出し成形物を官能化するために使用することもできる。押し出し成形物の調製の際に、ナノチューブの官能化された表面により、混合段階において結合剤分散を改善し、後の加熱工程において結合剤の分離を最小限に抑えることができる。
【0089】
カーボンナノチューブのネットワークを生成する方法は、カーボンナノチューブの表面を官能化するのに十分な時間をかけてオゾンでカーボンナノチューブを処理し、オゾン処理カーボンナノチューブを、二次官能基をカーボンナノチューブの表面に付加するのに適する反応剤と接触させ、さらに、二次処理ナノチューブを、カーボンナノチューブのネットワークを生成するのに有効な架橋剤と接触させることを含む。好ましい架橋剤は、ポリオール、ポリアミン又はポリカルボン酸である。有用なポリオールはジオールであり、有用なポリアミンはジアミンである。
【0090】
本発明の一側面では、カーボンナノチューブのネットワークは、まず生成されたままのカーボンナノチューブをオゾンで酸化させ(或いは、液相オゾンを使用することもできる)、その後、該オゾン処理ナノチューブを、架橋を助長する条件下に供することにより得られる。例えば、オゾン処理ナノチューブを180℃から650℃の温度範囲内で加熱することで、オゾン処理ナノチューブを架橋でつなぎ、それとともに、オゾン処理ナノチューブの酸素含有部分を取り除く。
【0091】
本発明は、好ましい実施形態のオゾン処理ナノチューブを結合することにより形成される三次元ネットワークも含む。これらの複合体は、直接結合又は化学部分を含む1つ又は複数のリンカーにより結合される少なくとも2つの表面修飾ナノチューブを含む。これらのネットワークは、著しく一様な均等な細孔サイズの多孔質媒体を含む。これらは、吸着剤、触媒担体及び分離媒体として有用である。
【0092】
メソ細孔及びマクロ細孔(>2nmの細孔)を持つ安定した多孔質三次元ネットワーク又は構造体は、触媒又はクロマトグラフィー担体として非常に有用である。ナノチューブは、個別化ベースで分散させることができるため、架橋により安定化されている十分に分散された試料であれば、そのような担体を構築することができる。オゾン処理ナノチューブは、水性又は極性媒体中に容易に分散され、酸化されたナノチューブ上に存在する酸素含有部分は、架橋点を持つため、この用途には理想的である。それに加えて、酸素含有部分は、触媒又はクロマトグラフ部位を担持するための点も提供する。最終的に得られる結果、剛性のある三次元構造体であり、その全表面積は、活性剤を担持する二次基部位と利用可能である。
【0093】
これらのナノチューブ間の間隔はサイズも形状も不規則であるが、これらは細孔と考えられ、多孔質媒体を特徴付けるために使用される方法により特徴付けることができる。このようなネットワーク内の間隔のサイズは、ナノチューブの分散の濃度及びレベル、並びに架橋剤の濃度及び鎖長より制御することができる。このような物質は、構造化された触媒担体として作用することができ、特定のサイズの分子を除外したり包含したりするように設計することができる。従来の工業用触媒とは別に、これらは、生体触媒用の大きな細孔担体として特別な用途を有する。
【0094】
触媒作用におけるこれらの担体の典型的な用途としては、含浸により担持される金属触媒、例えば、貴金属水素化触媒の高多孔質担体としての用途がある。さらに、二次基を介した担体へのつながりにより分子触媒を固定することができるため、構造体の非常に高い多孔性とあいまって、不均一法で均一系反応を実施することができる。繋留された分子触媒は、均一系反応器と同様に、連続液相において本質的にぶら下がった状態であり、均一系反応と並行する選択性及び速度の利点を利用することができる。しかし、固相担体に繋留されることで、活性があり、多くの場合、非常に高価な触媒を容易に分離し、回収することができる。
【0095】
これらの安定した、剛性構造体では、適当な鏡像異性触媒又は選択的基材を担体に付着させることにより、不斉合成又は親和性クロマトグラフィーなどのこれまで非常に困難であった反応を実施することができる。剛性ネットワークは、さらに、分子認識用生体模倣系におけるバックボーンとして使用することもできる。このような系については、米国特許第5,110,833号及び国際特許出願公開第WO93/19844号に記載されている。架橋剤及び錯化剤を適当に選択することで、特定の分子構成を安定化することができる。
【0096】
オゾン処理剛性多孔質構造体を調製する方法
剛性多孔質構造体は、まず、上述のようにオゾン処理ナノチューブを調製し、それらを媒体中に分散させて懸濁液を形成し、その媒体を懸濁液から分離して多孔質構造体を形成することにより調製され、オゾン処理ナノチューブは、さらに、相互接続されて、剛性多孔質構造体を形成する。これはすべて、参照により本明細書の記載の一部とする、1997年5月15日に出願された「剛性多孔質炭素構造体、これを使用する方法、及びこれを含む生成物(Rigid Porous Carbon Structures,Methods of Making,Methods of Using and Products Containing Same)」という表題の米国特許第6,099,965号でより詳細に説明されている方法による。
【0097】
堅い高多孔質構造体は、カーボンナノチューブ又はナノチューブ凝集体から形成することができる。ナノチューブ構造体の安定性を高めるために、構造体の交差部分にポリマーを堆積させることも可能である。これは、集合体に低分子量ポリマーセメント(つまり、約1,000MW未満)の希釈溶液を浸潤させ、溶媒を蒸発させることにより実現できる。毛管力により、ポリマーがナノチューブ交差部分で濃縮される。構造体の剛性及び一体性を実質的に改善するために、ナノチューブ交差部分の少部分をセメントで固定するだけでよいことは理解される。
【0098】
ナノチューブは、構造体全体にわたって又は凝集粒子の形態で一様に、また均一に分配され、構造体を形成することができる。前者が望ましい場合、ナノチューブは、媒体内に完全に分散され、個々のナノチューブの分散物を形成する。後者が望ましい場合、ナノチューブ凝集体が媒体中に分散されてスラリーを形成し、該凝集粒子は、接着剤でつなぎ合わされ前記構造体を形成する。
【0099】
使用される媒体は、水及び有機溶媒からなる群より選択することができる。好ましくは、媒体は、アルコール、グリセリン、界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン及びポリプロピレングリコールからなる群より選択された分散剤を含む。
【0100】
媒体は、(1)凝集体中に粘着剤を微細分散させることができ、(2)また、混合物が乾くときに凝集体の内部構造が潰れてしまわないようにする鋳型剤として作用するものが選択されなければならない。
【0101】
好ましい一実施形態では、分散媒体として水又はアルコールに溶解させたポリエチレングリコール(PEG)及びグリセロール、並びに低MWフェノールホルムアルデヒド樹脂又は他の炭化可能ポリマー若しくは炭水化物(デンプン又は砂糖)などの炭化可能物質の組合せを使用する。剛性多孔質構造体が調製された後、例えば、電気化学キャパシタで使用するための準備として、好ましい実施形態に従い、オゾンで処理することができる。
【0102】
つまり、好ましい一実施形態は、カーボンナノチューブを含む剛性多孔質構造体を形成する工程と、前記剛性多孔質構造体よりも重量が重い官能化された剛性多孔質構造体を形成するのに十分な条件下で前記剛性多孔質構造体を0℃から100℃の温度範囲においてオゾンと接触させる工程とを含む、触媒担体を形成する方法を含む。
【0103】
他の実施形態では、オゾン処理カーボンナノチューブ又は凝集体が剛性多孔質構造体を形成するために使用される場合、該ナノチューブは、媒体中に分散させるのに先立って好ましい実施形態に従いオゾンで処理され、ナノチューブ交差部分で結合させることにより剛性構造体を形成する自己付着性である。この構造体は、その後熱分解により酸素を除去することができる。有用な熱分解温度範囲は、約200℃から約2000℃まで、好ましくは約200℃から約900℃までの範囲内である。
【0104】
他の実施形態によれば、ナノチューブは、粘着剤とともに前記懸濁液中に分散され、粘着剤は、前記ナノチューブを結合し、前記剛性構造体を形成する。好ましくは、粘着剤は、炭素を含み、なおいっそう好ましくは、粘着剤は、熱分解されたときに、炭素のみを残す物質から選択される。したがって、このような粘着剤で形成された構造体は、その後熱分解させることで、粘着剤を炭素に転換することができる。剛性多孔質構造体を形成するための追加の方法及び詳細は、参照により本明細書の記載の一部とする、米国特許第6,099,965号で説明されている。
【0105】
好ましくは、粘着剤は、アクリルポリマー、カルボン酸ポリマー、セルロース、炭水化物類、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル/アルコールエマルション又は樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂からなる群より選択される。
【0106】
本発明の他の実施形態によれば、分離する工程は、懸濁液を濾過すること又は媒体を前記懸濁液から蒸発させることを含む。
【0107】
さらに他の実施形態によれば、懸濁液は、流体中のナノチューブを含むゲル又はペーストであり、その分離は、
(a)圧力容器中のゲル又はペーストを流体の臨界温度よりも高い温度に加熱する工程と、
(b)圧力容器から超臨界流体を取り出す工程と、
(c)圧力容器から構造体を取り出す工程とを含む。
【0108】
粘着剤を含む溶媒/分散剤混合液中のナノチューブ凝集体の等方性スラリー分散物は、凝集体を壊すことなくワーリングブレンダー又はニーダーを使用して完成することができる。ナノチューブ凝集体は、樹脂粒子を捕捉し、分散状態に保つ。
【0109】
これらの混合物は、そのまま使用することができる、又は濾過して、溶媒を十分に除去し、高ナノチューブ含有量(乾燥重量基準で5〜20%)のケーキを得ることができる。ケーキは、鋳型成形するか、押し出し成形するか、又はペレット化することができる。鋳型成形形状は十分に安定しており、形態を押しつぶすことなく更に乾燥させることができる。溶媒を取り除くと、分散剤分子は、粘着剤の粒子とともに、濃縮され、ナノチューブ凝集体内と、凝集体の外縁のところの両方のナノチューブ交差点に集まる。混合液をさらに乾燥し、最終的に炭化させると、凝集体内のナノチューブ糸及び凝集体自体は、接触点のところで1つに接着される。凝集体構造体は潰れないので、比較的堅く、多孔性の高い、低密度粒子が形成される。次いで、得られる剛性多孔質構造体は、「オゾンでカーボンナノチューブを処理する方法」に記載したのと同じ方法及び条件下でオゾン処理に供することができる。
【0110】
上述のように、剛性多孔質構造体は、粘着剤あり、又はなしで、オゾン処理ナノチューブを使用して形成することもできる。カーボンナノチューブは、オゾンにより酸化された後、自己付着性となる。非常に堅く、密度の高いマットは、酸化されたナノチューブを(個々の糸として)高度に分散させ、濾過し、乾燥させることによりフォームとする。乾燥マットは、酸素含有量に応じて、1〜1.2g/ccの範囲の密度を有し、研磨でき、篩いでサイズを選別できる十分な硬さを持つ。測定された表面積は、約275m/gである。
【0111】
オゾン処理ナノチューブは、粘着剤とともに使用することもできる。オゾン処理ナノチューブは、粘着剤と鋳型剤の両方をくっつける付着点を持つため、良好な出発物質である。後者は、乾燥する際に粒子又はマットの内部構造を保持するために役立ち、それにより、元のナノチューブ凝集体の高い多孔性及び低い密度を保存する。オゾン処理ナノチューブをポリエチレンイミンセルロース(PEI Cell)などの物質でスラリー化することにより良好な分散物が得られ、塩基性イミン官能基は、カルボン酸官能化フィブリルとの強い静電相互作用を形成する。混合物は濾過され、マットを形成する。マットを不活性雰囲気中、650℃を超える温度で熱分解することにより、PEI Cellを、ナノチューブ凝集体を融合して堅い構造体にする作用を持つ炭素に転換する。その結果、剛性のある、実質的に純粋なカーボン構造体が得られ、これは更にその後、所望によりオゾンで再び処理することができる。
【0112】
構造体の形成に先立って、添加剤とナノチューブ分散物とを混合することにより、固形成分を構造体内に組み込むこともできる。乾燥構造体中の他の固形物の含量は、ナノチューブ1部当たり固形物50部と高くすることができる。
【0113】
好ましい一実施形態によれば、ナノチューブは、高剪断ミキサー、例えば、ワーリングブレンダーにより、高い剪断で分散される。その分散物は、水、エタノール、ミネラルスピリットなどの中で0.01から10%と広い範囲にわたるナノチューブを含むことができる。この手順では、ナノチューブ束、つまり、ナノチューブのきつく巻かれた束を適宜開き、ナノチューブを分散させ、濾過し乾燥させた後に自己支持マットを形成する。高剪断混合の適用は、最大数時間かかる場合がある。しかし、この方法で調製されたマットでは、凝集体はなくなっていない。
【0114】
高剪断手順の後に超音波処理が続く場合、分散が改善される。0.1%以下への希釈は、超音波処理を補助する。そのため、例えば、0.1%のフィブリル200ccは、Bronson Sonifier Probe(電源450ワット)により、5分以上の間音波処理することで、分散をさらに改善することができる。
【0115】
高度の分散を達成するために、つまり、ナノ凝集体を含まないか、又は実質的に含まない分散物を得るために、音波処理は、適合する液体中で非常に低濃度、例えば、エタノール中で0.001%から0.01%の濃度で実施するか、又は界面活性剤、例えば、Triton X−100を約0.5%の濃度で加えておいた水中でより高濃度、例えば0.1%において実施しなければならない。その後形成されるマットは、順次水を加えることにより、界面活性剤をなくすか、又は実質的になくすようにすすぎ、次いで真空濾過することができる。こうして形成されたマットは、次いで、好ましい実施形態に従い、オゾンで処理することができる。
【0116】
MnO(電池用)及びAl(高温ガスケット用)などの粒子状固体をオゾン処理ナノチューブ分散物中に添加し、その後、ナノチューブ1部当たり添加固体50部までの割合でマット形成できる。
【0117】
補強ウェブ及びスクリムを、形成時にマット上に又はマット内に組み込むことができる。例は、ポリプロピレンメッシュ及び膨張ニッケルスクリーンである。
【0118】
触媒担体
カーボンナノチューブ凝集体、三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体などのカーボンナノチューブ構造体は、以下に限定されるわけではないが、カーボンナノチューブの形成を触媒する触媒の触媒担体を含む、触媒担体として使用することができる。これらの選択肢のうち、剛性多孔質構造体は、触媒担体として、サイズ、強度及び表面積の好ましい組合せを提供する。
【0119】
そのため、好ましい実施形態は、オゾンによる処理を経由して凝集体、剛性多孔質構造体又は三次元ネットワークなどのカーボンナノチューブ構造体を官能化することにより触媒担体を形成することを含む。凝集体は、参照により本明細書の記載の一部とする、Tennentの米国特許第5,165,909号、Moyらの米国特許第5,456,897号、Snyderらの1991年5月1日に出願された米国特許第5,707,916号、及び1989年1月28日に出願されたPCT出願第US89/00322号(「カーボンフィブリル(Carbon Fibrils)」)、WO89/07163、及び1994年8月2日に出願されたMoyらの米国特許第5,456,897号及び1990年9月27日に出願されたPCT出願US90/05498号(「電池(Battery)」)、WO91/05089、及び1995年6月7日に出願されたMandevilleらの米国特許第5,500,200号及び1994年8月2日に出願された米国特許第5,456,897号及び1994年10月11日に出願されたMoyらの米国特許第5,569,635で開示されているものを含む、すでに検討されている任意の方法により調製することができる。
【0120】
剛性多孔質構造体は、参照により本明細書の記載の一部とする、Tennentらの米国特許第6,432,866号で開示されているものを含む、すでに検討されている任意の方法を使用して作ることができる。つまり、上述のもの又は米国特許第6,432,866号に記載されているものなどの剛性多孔質構造体は、典型的には、ナノチューブを酸化し、次いで加熱して、ナノチューブ間に架橋を生じさせることにより調製されるか、又はナノチューブと粘着剤とを混合し、加熱して粘着剤を炭化することにより調製される。三次元ネットワークは、参照により本明細書の記載の一部とする、Tennentらの米国特許第5,968,650号に開示されている任意の方法を使用して作ることができる。
【0121】
触媒担体の重要な一側面は、担体は、化学結合であろうと、接着であろうと、又は触媒を担体自体の上に保持することを可能とするいかなる他の力であろうと、触媒反応の過程において触媒上に保持できなければならないことである。触媒と担体との間の安定、かつ十分な結合を助長するために、担体自体が多数の官能基を、触媒が結合するか又は反応することになる表面上に含み、触媒と担体との間の望ましい結合を確立することが好ましい。
【0122】
触媒担体の他の重要な側面は、担体は、劣化したり、バラバラになる代わりに、反応の過程でその構造を維持できることである。
【0123】
好ましい実施形態では、触媒担体は、カーボンナノチューブ凝集体、三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体などのカーボンナノチューブ構造体を、0℃から100℃の温度範囲、好ましくは0℃から60℃の温度範囲、最も好ましくは20℃から50℃の温度範囲又はほぼ室温においてオゾンで処理するか、又はオゾンと接触させることにより生成される。オゾンは、架橋、接着又はそれらの構造体をつなぎ留める他の力若しくは結合を弱めるか、又は破壊することなく(つまり、構造体に観察可能な変化がない)、カーボンナノチューブ構造体上に官能基を付加することが発見されているため、特に好ましい。
【0124】
硝酸などの他の強酸化剤も、これらの構造体の表面上に官能基を付加するために使用することができるが、硝酸は、架橋された結合を加水分解するか、又は接着結合を溶解するか、又は他の結合力を減少させ、元の担体構造体の一体性を弱める可能性が高いことが発見されている。逆に、過酸化水素などの弱酸化剤は、担体構造体の一体性を弱めないかもしれないが、商業上実用になるように担体表面に十分な官能基を付加しない(つまり、低酸滴定濃度)。
【0125】
こうして、十分な構造一体性及び十分な官能基を有する触媒担体構造体を得るために、カーボンナノチューブ凝集体、三次元ネットワーク又は剛性多孔質構造体などのカーボンナノチューブ構造体を好ましい酸化剤としてオゾンと接触させることにより触媒担体構造体を調製することが好ましいが、それは、他の酸化剤でそれらの構造体を処理する場合に比べて、より高濃度の官能基(つまり、高い酸性滴定濃度、したがって触媒の保持能力が良好)、より強い構造一体性を持つ触媒担体が得られるからである。
【0126】
好ましい触媒担体は、滴定時、1から2meq/gのように1meq/gよりも大きい酸滴定濃度を示すオゾン処理カーボンナノチューブ構造体を含む。これらのオゾン処理カーボンナノチューブ構造体は、さらに、元の未処理カーボンナノチューブ構造体と比較して構造の観察可能な変化を示さない。オゾン処理カーボンナノチューブ構造体は、1%を超える重量増、好ましくは5から20%までの重量増、より好ましくは10から15%までの重量増を示すことも可能である。すでに説明されているような他の酸滴定濃度、酸素含有量、及び重量増特性は、触媒担体と同様に、使用される官能化された構造体にも当てはまる。
【0127】
電気化学キャパシタ
カーボンナノチューブは、導電性である。カーボンナノチューブ及び/又は官能化されたカーボンナノチューブを含む電極、及び電気化学キャパシタにおけるその使用は、1997年5月15日に出願され、参照により本明細書の記載の一部とする、「電気化学キャパシタにおけるグラファイトナノファイバー(Graphitic Nanofibers in Electrochemical Capacitors)」という表題の米国特許第6,031,711号に記載されている。
【0128】
触媒成長カーボンナノチューブに基づく電気化学キャパシタに関する更なる詳細は、参照により本明細書の記載の一部とする、Chumming Niuら、「カーボンナノチューブ電極に基づく高出力電気化学キャパシタ(High Power Electrochemical Capacitors based on Carbon Nanotube Electrodes)」、in Applied Physics Letters 70(11),pp.1480−1482,March 17,1997に開示されている。
【0129】
薄板電極の品質は、電極の微細構造、電極の密度、電極表面の官能性及び電極構造の機械的一体性に依存する。
【0130】
電極の微細構造、つまり、細孔サイズ及びサイズ分布は、電極における電解質のイオン抵抗性を決定する。マイクロ細孔内にある表面積(細孔直径<2nm)は、二重層(2)を形成するうえで利用不可能であると考えられる。他方で、分布する細孔サイズ、複数細孔幾何学的形状(デッドエンド細孔、スリット細孔、円筒型細孔など)及び表面特性は、通常、分布時定数を生じさせる。分布時定数を持つ電極に蓄積されるエネルギーは、異なる率でしか利用することができない。パルス電力に必要な急速放電は、このような電極では実現不可能である。
【0131】
電極の密度は、その体積比容量を決定する。密度が0.4g/cc未満の電極は、実際のデバイスには実用的でない。単に、低密度電極は、必要な電解質が多すぎ、デバイスの体積比容量も、重量比容量も減らすことになる。
【0132】
カーボンナノチューブの表面は、電解質に面した電極の濡れ特性に関係する。生産されたときのままの触媒成長カーボンナノチューブの表面は、疎水性である。生成されたままのカーボンナノチューブの疎水性表面特性は、好ましい実施形態に従い生成されたままのカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの凝集体をオゾン処理することにより親水性に変えることができる。さらに、容量は、カーボンナノチューブの表面に酸化還元基をさらに付着させることにより高めることができる。
【0133】
最後に、電極の構造的一体性は、デバイスの再現性及び長期的安定性にとって極めて重要である。カーボンナノチューブを組み込んだ電極の機械的強度は、カーボンナノチューブの絡み合いの程度及び電極内のカーボンナノチューブ間の結合により決まる。絡み合いの程度及びカーボンナノチューブの結合力が高いと、電極の出力性能にとって重要な、導電性も改善できる。気相処理フィブリルから作られた電極の比容量(D.C.容量)は、約40F/gであった。
【0134】
本発明の一側面は、オゾン処理カーボンナノチューブから電極及び電気化学キャパシタを調製することに関する。広い意味で、調製されたままのカーボンナノチューブは、好ましい実施形態に従ってオゾンで処理され、本発明の電極の調製に使用することができる、表面酸化された、単層又は多層カーボンナノチューブを提供した。
【0135】
本発明の他の側面では、オゾン処理ナノチューブは、さらに、酸化されたナノチューブ上に存在する分子部分と反応するのに適している反応剤で処理され、その表面上に、本発明の電極を調製するのに有用でもある、二次基を有するナノチューブを形成することができる。
【0136】
電極は、オゾン処理ナノチューブのスラリーを単純に濾過することで形成される。厚さは、密度は経験に基づいて予想されていると仮定して、使用される材料の品質及び幾何学的形状により制御される。自己支持性フェルトを得るために、厚さを調節する必要がある場合がある。
【0137】
電極は、サイクリックボルタンメトリー、導電性、及びDC容量測定により特徴付けるのが有利である。
【実施例】
【0138】
以下の例は、本発明をさらに理解するために使用されるが、いかなる形であっても、本発明の有効範囲を制限することは意図するものではない。
【0139】
滴定濃度を測定する方法
まず最初に、酸滴定濃度の測定は、さまざまな方法で実施することができる。一実施形態では、フィブリル0.10gを、D.I.水の350〜400CCを含む実験用ワーリングブレンダーに移す。フィブリルは、水相内のすべてのフィブリルが均一に黒く見えるまで10〜15分間遅い速度でブレンドする。標準0.10N水酸化ナトリウム溶液10CCを、細かいフィブリルスラリーを含むブレンダーに加え、再び、4〜5分間ブレンドする。次いで、スラリーを、攪拌棒とpH電極を入れたビーカーに移す。次いで、強度の知られている塩酸の溶液を徐々に加えて、フィブリルスラリーをpH7.0に中和する。フィブリルスラリーを中和するために使用する塩酸の量を記録し、フィブリルのmeq/gの計算で使用する。滴定濃度測定の結果は、ナノチューブ重量当たりのミリグラム当量(つまり、meq/g)又はナノチューブ表面積当たりのミリグラム当量(つまり、meq/m)で表すことができる。
【0140】
(例1)
オゾンは、250mg/時の速度でオゾンを発生することができるDel Industry社(カリフォルニア州サンルイスオビスポ)が製造する空気清浄機により生成した。次いで、オゾンと空気の混合気(0.29%オゾン)を1200mL/分の流速で、乾燥した、手を加えていないフィブリルを充填した1インチ(OD)反応器管に通した。オゾン処理の前後のフィブリルの重量を記録した。反応は、室温で、3から45時間の間、進行させた。
【0141】
別の実験では、手を加えていないフィブリル20グラムを、30%又は60%の硝酸500mLを含むフラスコ内に入れた。次いで、反応フラスコを、4〜6時間の間、95〜120℃の還流温度に加熱した。反応が停止した後、フィブリルを室温まで冷まし、濾過し、中性になるまで水で洗浄した。もう1つの別の実験では、手を加えていないフィブリル20グラムを、モル比1:2の30%のH 376.2グラムを含むフラスコ内に入れた。温度は、35℃付近に来るように設定したが、すぐに還流温度まで上昇した。湯浴を使用し、反応温度を30℃に保持した。2時間の反応後、残留Hがすべて取り除かれるまで、スラリーを濾過し、洗浄した。
【0142】
結果を以下に報告する。
【表1】

【0143】
実験データから、硝酸又は過酸化水素などの他の酸化剤と比べて室温でオゾンを使用するカーボンナノチューブの酸化の場合、最終生成物の重量に驚くべき違いが現れることが確認された。つまり、室温でオゾン処理を施されたカーボンナノチューブは、他の酸化処理を施されたカーボンナノチューブと比較して、重量損ではなく、著しい重量増を示したのである。これは、オゾンが強力な酸化剤なのであるから、驚くべきことである。
【0144】
酸化剤として硝酸を使用することに関して、硝酸の強度及び反応条件は、重量損の程度に影響を及ぼした。重量損は、炭素が酸化されてCO又はCOを形成し、それらが反応系から放出されることに起因する。
【0145】
(例2)
乾燥フィブリル3グラムを垂直反応器内に入れ、オゾン含有空気を室温でその中に通した。反応器は、1時間おきに定期的に遮断し、フィブリルに反応器管を加えた総重量を電気天秤で測定した。次いで、反応時間に対するフィブリルの重量増を、反応器重量を差し引いた後に得た。
【0146】
この測定結果は、図7に示されており、これは、試料の重量が、反応過程で増大し、約15時間の反応時間の経過後に一定になったことを示している。
【0147】
(例3)
試料1〜3及び5〜7などの例1の方法により調製されたさまざまな酸化フィブリルを測定し、滴定を通して酸性基の相対量を求めた。それぞれの試料0.25グラムを、D.I.水300mLが入っているフラスコに入れ、そのスラリーを0.1N NaOHで滴定した。NaOHの消費量は、全表面酸性基の量にmeq/gとして換算された。
【表2】

【0148】
表3に示されているように、室温においてオゾンで酸化された場合のほうが、硝酸又は過酸化水素などの他の酸化剤を使用した場合よりも、より多くの酸性基をカーボンナノチューブの表面に堆積させることができる。つまり、室温においてオゾンでカーボンナノチューブを処理すると、他の酸化剤による処理で得られるナノチューブよりも、高い滴定濃度(つまり、酸性基の指標)を持つナノチューブが得られる。
【0149】
さらに、硝酸で処理されたカーボンナノチューブはオゾン処理により得られた最低滴定濃度の範囲内の滴定濃度に到達できたとしても、そのような硝酸処理ナノチューブは、そのような滴定濃度範囲を伴う著しい重量損によりある種の用途には不適当となり得る。
【0150】
表3では、さらに、室温におけるオゾン処理により、過酸化水素又は希釈硝酸などの弱酸によるものと比べて著しく酸性度が高いカーボンナノチューブが得られることが確認される。
【0151】
(例4)
酸化処理によるカーボンナノチューブ表面に生じる損傷の程度を比較するために、Autosorb−1計測器を使用して処理済みフィブリルの表面積を測定した。室温でのオゾン酸化フィブリルの場合、−196℃の平均BET表面積は、すべて240〜250m/gの範囲内にあったが、これは、手を加えていない未処理フィブリルに極めて近い。他方、硝酸で処理された酸化フィブリルの平均BET表面積(196℃で測定)は、250m/gから341m/gに増大した。
【表3】

【0152】
表面積のこのような増大は、層のストリッピング又はナノチューブのアンキャッピングにより生じるものと考えられる。したがって、室温によるオゾン処理中にカーボンナノチューブの表面には、最低限の損傷が生じたか、又は測定にかかる損傷が生じなかった。
【0153】
(例5)
XPS(X線光電子分光法)を使用して、単なる未処理フィブリル凝集体と比べて、硝酸、過酸化水素、ガス状オゾン(すべてすでに説明されているとおり)、及び液体状オゾン(後述)を使用して処理したフィブリル凝集体のフィブリル表面を特徴付けた。
【0154】
表面酸素の原子濃度、炭素官能性及び酸素官能性という3組の特性を測定した。
【表4】


【表5】

【0155】
予想通り、単なるフィブリルでは、表面の酸素の量は最も少なく、調製後に空気に曝されて生成するのが一般的である。表4Aでは、さらに、酸化が行われると、酸化剤で処理されたすべてのフィブリルにおいて酸素含有量が増大するので、フィブリル表面上により多くの酸素含有基が得られることが確認される。表4A及び4Bの両方において、室温でガス状オゾン処理カーボンナノチューブ中に最も高い酸素含有量が示されたことが確認される。
【0156】
表4Bは、さらに、フィブリル表面上の酸素処理含有量の内訳を示しており、これにより、異なる酸化剤により異なる量の異なる官能基が得られることが確認される。例えば、H処理で処理したカーボンナノチューブは、より多くの−OH基を生成したが、硝酸は、生成された全官能基の割合増加として、より多くの−COOHを生成した。室温においてガス状オゾンで処理されたフィブリルでは、最大の−COOH増加となった。
【0157】
フィブリルの表面官能基に関するより多くの情報を決定するための酸素含有量に関する更なる分析は、表4C及び図8に示されている。図8は、1s領域の酸素スペクトルを示した。生データは、プロットされているドットで表されているが、当てはめデータ及び解析(deconvoluted)信号は、実線で表されている。531eV、533eV、及び535eVにおけるピークは、C−O、C=O、及びHO立体配置に帰属する。図8のデータは、以下の表4Cにまとめられている。
【表6】

【0158】
表4Cに示されているように、単なるフィブリルの酸素基は、一般に、単結合「O−」配座にある。H酸化されたフィブリルでは、−OH及びC=Oの形態のさらに多くの酸素基を生成した。しかし、単結合−O立体配座はそれでも支配的なので、このことは、過酸化水素で処理されたナノチューブのより低い滴定濃度結果を説明するかもしれない。
【0159】
他方、硝酸又はオゾン酸化では、表面酸素基が主に単結合−O立体配座から主に二重結合=O立体配座に変わったカーボンナノチューブを生成した。さらに、気相オゾン処理に供されたフィブリルは、水分も減った。
【0160】
(例6)
SEMを使用して、室温でオゾン処理されたフィブリルを調べた。図9に示されているような走査電子顕微鏡の下でフィブリル凝集体構造体を分析したところ、フィブリル凝集体構造体は、室温でオゾン処理した後も変化がないことが確認された。
【0161】
(例7)
未処理フィブリル凝集体、硝酸で酸化されたフィブリル凝集体、オゾンで酸化されたフィブリル凝集体の違いは、以下の検査で実証された。3組のフィブリル凝集体を同じ方法で調製した。第1のフィブリル凝集体は、調製した後、未処理のままにした。第2のフィブリル凝集体は、その後、室温で硝酸により処理された。第3のフィブリル凝集体は、その後、室温でオゾンにより処理された。この3組のフィブリル凝集体は、水中に分散され、以下の違いが観察された。
【表7】

【0162】
したがって、オゾンで処理したフィブリル凝集体は、未処理フィブリル凝集体とは異なる特性を有する(つまり、親水性かつ湿潤性に対して疎水性かつ非湿潤性)だけでなく、硝酸などの強酸化剤で処理したフィブリル凝集体とも異なる特性を有する(つまり、構造を保持するのに対してバラバラになる)。
【0163】
(例8)
以下の実験は、加熱テープなどの加熱デバイスが1インチの反応器管に適用されたこと以外は、例1で説明されているのと同じ手順を使用して実施された。乾燥フィブリル凝集体のオゾン処理は、室温及び少し高い温度で実施された。以下のデータが得られた。
【表8】

【0164】
これらの実験により、温度及び反応時間などの条件は、カーボンナノチューブに対するオゾン処理結果に影響を及ぼす可能性があることが確認される。0℃から100℃までの温度範囲で反応が実施されると、フィブリル凝集体全体の破壊を結果として引き起こすことなく、豊富な表面官能基を効率よく発生させる。実験を長時間にわたり100℃以上で実施すると、炭素とオゾン間のより実質的反応が導かれ、CO及びCOが形成され、フィブリル凝集体質量の損失を招き得る。
【0165】
(例9)
0.93meq/gの滴定濃度を示す硝酸処理フィブリル1グラムに対し、5時間の間、室温で、オゾン処理を施した。この処理は、例1に記載したのと同じ手順に従った。得られた物質は10.6%の重量増を示し、その滴定濃度は、1.84meq/gに改善された。この滴定濃度レベルは予想外であり、驚くべきことである。というのは、これは、カーボンナノチューブ構造体を実質的に損傷し、分解することなく、硝酸酸化で達成することはできなかったからである。
【0166】
(例10)
単層カーボンナノチューブと無定形炭素の不純な混合物に、硝酸による選択的酸化処理を施し、すす及び無定形炭素を低減した。得られた酸化された混合物は、電子顕微鏡写真により分析したところ、約20〜50%の不純物を含み、滴定時、0.9meq/gの酸滴定濃度を示した。例1に記載した手順を使用して、酸化された混合物に、約5時間の間、室温で、オゾン処理を施した。このオゾン処理混合物は、滴定時、2.86meq/gの酸滴定濃度を示した。
【0167】
(例11)
さらに、オゾン処理フィブリルを、水とブレンドし、15〜25%の固形分を含むスラリーを形成し、次いで、1/8インチダイを通して押し出し成形した。酸化フィブリルの円筒形押し出し成形物が得られ、12時間かけて180℃で乾燥させた。押し出し成形物は、硝酸酸化フィブリルで生成されたものに非常によく似ているように見えた。豊富な表面官能基が架橋し、剛性多孔質構造体を自己組織化するものと考えられる。手を加えていないフィブリルは、適切な結合材料を用いなければ、このタイプの構造体を形成することはできない。
【0168】
(例12)
手を加えていないCCナノチューブ20グラムをワーリングブレンダーに入れた。水溶液中の10%のポリマー、例えば、ポリアクリル酸(MW=15000)を含む粘着剤60グラムをカーボンナノチューブ中に加え、その混合物を均一になるまでブレンドした。次いで、得られた物質をBrabender押し出し成形機を介して1/8インチのダイに押し通し、その後、乾燥させ、アルゴン中で、300から600℃の温度範囲で焼成した。次いで、得られた押し出し成形物を、例1に記載した手順を使用して、20時間オゾンで処理した。オゾン処理後、押し出し成形物は、0.79〜0.93の酸滴定濃度を示した。
【0169】
(例13)
手を加えていないフィブリル10グラムを反応フラスコ内のシクロヘキサンに入れた。次いで、オゾン含有ガスを、よくかきまぜながらスラリーに通した。反応は、周囲条件下で、8〜10時間かけて進行させた。反応後、フィブリルを濾過し、洗浄し、乾燥させた。好適な液体媒体は、以下に限定されるわけではないが、水、飽和アルコール、飽和炭化水素又は環状炭化水素などとすることができる。反応は、さらに、超臨界条件までの高温及び高圧で実施することもできる。
【0170】
(例14)
1/16インチのカーボンナノチューブ押し出し成形物を、回転ドラム式反応器に入れた。オゾン発生器への純酸素供給ガスから生成されたオゾン含有ガスは、スパージャーを経由して、1L/分及び2.5L/分の速度で回転ドラム式反応器内に導入した。選択された時刻におけるそれぞれの反応器からの2つの試料を滴定し、官能化一様性が比較した。次のような結果が得られた。
【表9】


【表10】

【0171】
使用された用語及び表現は、制限ではなく、説明の用語として使用され、そのような用語又は表現を使用する際に、一部として示され、説明されている特徴の均等物を除外する意図はなく、さまざまな修正形態は、本発明の範囲内で可能であることは認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】例2の結果に基づくオゾン処理の間の反応時間の関数としてのフィブリル重量のプロットである。
【図2】例5によるさまざまなフィブリル試料の複数の酸素1sスペクトルを示す図である。
【図3】例6によるオゾン処理フィブリルの電子顕微鏡写真である。
【図4A】オゾンによる処理前及び処理後のフィブリルを示すTEM顕微鏡写真である。
【図4B】オゾンによる処理前及び処理後のフィブリルを示すTEM顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを官能化する方法であって、
カーボンナノチューブをオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記カーボンナノチューブよりも重量の大きい官能化されたナノチューブを形成する工程を含む方法。
【請求項2】
前記温度範囲は、0℃から60℃までである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度範囲は、20℃から50℃までである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブは、0.1ミクロン未満の直径を有する多層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、5ナノメートル未満の直径を有する単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記官能化されたナノチューブの表面は、4パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記官能化されたナノチューブの表面は、6パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記官能化されたナノチューブは、滴定時、2meq/gを超える酸滴定濃度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記官能化されたナノチューブは、滴定時、1.6から2.2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記官能化されたナノチューブは、滴定時、2.5から3.5meq/gまでの酸滴定濃度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記官能化されたナノチューブは、滴定時、前記カーボンナノチューブの酸滴定濃度よりも少なくとも1.5meq/g高い酸滴定濃度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記官能化されたナノチューブは、滴定時、前記カーボンナノチューブの酸滴定濃度よりも少なくとも2meq/g高い酸滴定濃度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記官能化されたナノチューブは、滴定時、前記カーボンナノチューブよりも1.5meq/gから3meq/g高い酸滴定濃度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記官能化されたカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブと比較して、5%よりも多い重量増を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記官能化されたカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブと比較して、5%から20%までの重量増を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記官能化されたカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブと比較して、10%から15%までの重量増を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記官能化されたカーボンナノチューブを、前記官能化されたカーボンナノチューブの分子部分と反応させるのに適した反応剤で処理し、それにより、少なくとも二次基を前記官能化されたナノチューブの表面上に付加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記付加的二次基は、アルキル又はアリールシラン(前記アルキルはCからC18を有し、前記アリールはCからC18を有する)、CからC18アルキル又はCからC18アラルキル基、CからC18ヒドロキシル基、及びCからC18アミン基からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記付加的二次基はフルオロカーボンである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記官能化されたカーボンナノチューブを液体媒体中に分散させて混合物を形成することと、
前記媒体を濾過して、官能化されたカーボンナノチューブの残留物を回収することと、
前記残留物を乾燥させてマットを形成することと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記マットを200℃から900℃の温度範囲に加熱することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マットを電極に形成することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記カーボンナノチューブは、綿菓子、鳥の巣、コーマ糸及びオープンネット凝集体からなる群より選択される形状に類似する巨視的形態を有する凝集体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記凝集体は、50ミクロン未満の平均直径を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
カーボンナノチューブのネットワークを生成する方法であって、
(a)カーボンナノチューブをオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記カーボンナノチューブよりも重量の大きい官能化されたナノチューブを形成する工程と、
(b)前記官能化されたナノチューブを必要な条件に供し、架橋を起こす工程と
を含む方法。
【請求項26】
前記温度範囲は0℃から60℃までである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記温度範囲は20℃から50℃までである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記架橋を引き起こすのに必要な条件は、前記官能化されたナノチューブを空気中で200℃から600℃までの温度範囲において加熱することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記架橋を引き起こすのに必要な条件は、前記官能化されたナノチューブを不活性雰囲気中で200℃から2000℃までの温度範囲において加熱することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
官能化されたカーボンナノチューブのネットワークを生成するための方法であって、
(a)カーボンナノチューブをオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記カーボンナノチューブよりも重量の大きい官能化されたナノチューブを形成する工程と、
(b)前記官能化されたナノチューブを、前記官能化されたカーボンナノチューブの分子部分と反応させるのに適した反応剤で処理し、それにより、少なくとも二次基を前記官能化されたナノチューブの表面上に付加する工程と、
(c)二次基の付いた前記ナノチューブを有効量の架橋剤と更に接触させる工程と
を含む方法。
【請求項31】
前記温度範囲は0℃から60℃までである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記温度範囲は20℃から50℃までである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記架橋剤は、ポリオール又はポリアミンからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリオールはジオールであり、前記ポリアミンはジアミンである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
剛性多孔質構造体を調製する方法であって、
(a)カーボンナノチューブをオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記カーボンナノチューブよりも重量の大きい官能化されたナノチューブを形成する工程と、
(b)前記官能化されたナノチューブを媒体中に分散させて懸濁液を形成する工程と、
(c)前記媒体を前記懸濁液から分離して、絡み合った官能化されたナノチューブの多孔質構造体を形成し、そのナノチューブは相互接続されて剛性多孔質構造体を形成する工程と
を含む方法。
【請求項36】
前記温度範囲は0℃から60℃までである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記温度範囲は20℃から50℃までである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記カーボンナノチューブは、綿菓子、鳥の巣、コーマ糸及びオープンネット凝集体からなる群より選択される形状に類似する巨視的形態を有する凝集体の形態である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記懸濁液を空気中で約200℃から約600℃までの範囲の温度に加熱し、それにより前記剛性多孔質構造体を形成することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記懸濁液を不活性ガス中で約200℃から約2000℃までの範囲の温度に加熱し、それにより前記剛性多孔質構造体を形成することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記媒体は水又は有機溶媒である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記媒体は、アルコール、グリセリン、界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される分散剤を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記懸濁液は、セルロース、炭水化物、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド及びフェノール樹脂からなる群より選択される粘着剤を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
(a)前記剛性多孔質構造体をマットに形成する工程と、
(b)前記マットを電極に形成する工程と
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の方法により調製された官能化されたカーボンナノチューブを含む少なくとも1つの電極を有する電気化学キャパシタ。
【請求項46】
電気化学キャパシタであって、
(a)カーボンナノチューブの凝集体をオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記カーボンナノチューブよりも重量の大きい官能化されたナノチューブの凝集体を形成する工程と、
(b)前記工程(a)で調製された官能化されたナノチューブの凝集体を液体媒体中に分散させてスラリーを形成する工程と、
(c)前記スラリーを濾過し、乾燥させて、官能化されたカーボンナノチューブのマットを形成する工程と、
(d)前記マットを必要な条件に供し、前記官能化されたカーボンナノチューブの架橋を起こす工程と
を含む方法により調製される少なくとも1つの電極を有する電気化学キャパシタ。
【請求項47】
工程(a)における前記温度範囲は0℃から60℃までである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程(a)における前記温度範囲は20℃から50℃までである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記工程(d)の条件は、前記マットを180℃から350℃までの範囲の温度に加熱することを含む、請求項46に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項50】
電気化学キャパシタであって、
(a)カーボンナノチューブの凝集体を液体媒体中に分散させてスラリーを形成する工程と、
(b)前記スラリーを濾過し、乾燥させて、カーボンナノチューブのマットを形成する工程と、
(c)前記マットをオゾンで0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で処理し、前記カーボンナノチューブのマットよりも重量の大きい官能化されたカーボンナノチューブのマットを形成する工程と
を含む方法により形成される少なくとも1つの電極を有する電気化学キャパシタ。
【請求項51】
滴定時、2meq/gよりも大きい酸滴定濃度を示す、オゾン処理カーボンナノチューブ。
【請求項52】
滴定時、1.6から2.2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、オゾン処理カーボンナノチューブ。
【請求項53】
滴定時、2.5から3.5meq/gまでの酸滴定濃度を示す、オゾン処理カーボンナノチューブ。
【請求項54】
滴定時、1meq/gよりも大きい酸滴定濃度を示し、互いに絡み合った複数のカーボンナノチューブを含む、オゾン処理カーボンナノチューブ構造体。
【請求項55】
前記構造体は、綿菓子、鳥の巣、コーマ糸及びオープンネット凝集体からなる群より選択される形状に類似する巨視的形態を有するカーボンナノチューブの凝集体の形態である、請求項54に記載のオゾン処理カーボンナノチューブ構造体。
【請求項56】
元の未処理カーボンナノチューブ構造を実質的に保持する、請求項54に記載のオゾン処理カーボンナノチューブ構造体。
【請求項57】
滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、請求項54に記載のオゾン処理カーボンナノチューブ構造体。
【請求項58】
触媒担体を形成するための方法であって、
カーボンナノチューブの凝集体を形成する工程と、
前記凝集体をオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記凝集体よりも重量の大きい官能化された凝集体を形成する工程と
を含む方法。
【請求項59】
前記温度範囲は0℃から60℃までである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記温度範囲は20℃から50℃までである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記カーボンナノチューブは、0.1ミクロン未満の直径を有する多層カーボンナノチューブである、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記カーボンナノチューブは、5ナノメートル未満の直径を有する単層カーボンナノチューブである、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記官能化された凝集体の表面は、4パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記官能化された凝集体の表面は、6パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記官能化された凝集体は、滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示し、前記カーボンナノチューブの凝集体の構造を保持する、請求項58に記載の方法。
【請求項66】
前記官能化された凝集体は、滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、請求項58に記載の方法。
【請求項67】
前記官能化された凝集体は、前記カーボンナノチューブの凝集体と比較して、5%よりも多い重量増を示す、請求項58に記載の方法。
【請求項68】
前記官能化された凝集体は、前記カーボンナノチューブの凝集体と比較して、5%から20%までの重量増を示す、請求項58に記載の方法。
【請求項69】
前記官能化された凝集体は、前記カーボンナノチューブの凝集体と比較して、10%から15%までの重量増を示す、請求項58に記載の方法。
【請求項70】
請求項58に記載の方法により形成される触媒担体。
【請求項71】
請求項58に記載の方法により形成される触媒担体であって、前記官能化された凝集体は、滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、触媒担体。
【請求項72】
請求項58に記載の方法により形成される触媒担体であって、前記官能化された凝集体は、滴定時、1meq/gよりも高い酸滴定濃度を示し、前記カーボンナノチューブの凝集体の構造を保持する、触媒担体。
【請求項73】
触媒担体を形成するための方法であって、
カーボンナノチューブのネットワークを形成する工程と、
前記カーボンナノチューブのネットワークをオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記カーボンナノチューブのネットワークよりも重量の大きい官能化されたネットワークを形成する工程と
を含む方法。
【請求項74】
前記温度範囲は0℃から60℃までである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記温度範囲は20℃から50℃までである、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記カーボンナノチューブは、0.1ミクロン未満の直径を有する多層カーボンナノチューブである、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記カーボンナノチューブは、5ナノメートル未満の直径を有する単層カーボンナノチューブである、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記官能化されたネットワークの表面は、4パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記官能化されたネットワークの表面は、6パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項73に記載の方法。
【請求項80】
前記官能化されたネットワークは、滴定時、1meq/gよりも高い酸滴定濃度を示し、前記カーボンナノチューブのネットワークの構造を保持する、請求項73に記載の方法。
【請求項81】
前記官能化されたネットワークは、滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記官能化されたネットワークは、前記カーボンナノチューブのネットワークと比較して、5%よりも多い重量増を示す、請求項73に記載の方法。
【請求項83】
前記官能化されたネットワークは、前記カーボンナノチューブのネットワークと比較して、5%から20%までの重量増を示す、請求項73に記載の方法。
【請求項84】
前記官能化されたネットワークは、前記カーボンナノチューブのネットワークと比較して、10%から15%までの重量増を示す、請求項73に記載の方法。
【請求項85】
請求項73に記載の方法により形成される触媒担体。
【請求項86】
請求項73に記載の方法により形成される触媒担体であって、前記官能化されたネットワークは、滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、触媒担体。
【請求項87】
請求項73に記載の方法により形成される触媒担体であって、前記官能化されたネットワークは、滴定時、1meq/gよりも高い酸滴定濃度を示し、前記カーボンナノチューブのネットワークの構造を保持する、触媒担体。
【請求項88】
触媒担体を形成するための方法であって、
カーボンナノチューブを含む剛性多孔質構造体を形成する工程と、
前記剛性多孔質構造体をオゾンに0℃から100℃までの温度範囲において必要な条件下で接触させ、前記剛性多孔質構造体よりも重量の大きい官能化された剛性多孔質構造体を形成する工程と
を含む方法。
【請求項89】
前記温度範囲は0℃から60℃までである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記温度範囲は20℃から50℃までである、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記カーボンナノチューブは、0.1ミクロン未満の直径を有する多層カーボンナノチューブである、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記カーボンナノチューブは、5ナノメートル未満の直径を有する単層カーボンナノチューブである、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記官能化された剛性多孔質構造体の表面は、4パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記官能化された剛性多孔質構造体の表面は、6パーセントよりも高い酸素含有量を有する、請求項88に記載の方法。
【請求項95】
前記官能化された剛性多孔質構造体は、滴定時、1meq/gよりも高い酸滴定濃度を示し、前記カーボンナノチューブを含む剛性多孔質構造体の構造を保持する、請求項88に記載の方法。
【請求項96】
前記官能化された剛性多孔質構造体は、滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、請求項88に記載の方法。
【請求項97】
前記官能化された剛性多孔質構造体は、前記カーボンナノチューブを含む剛性多孔質構造体と比較して、5%よりも多い重量増を示す、請求項88に記載の方法。
【請求項98】
前記官能化された剛性多孔質構造体は、前記カーボンナノチューブを含む剛性多孔質構造体と比較して、5%から20%までの重量増を示す、請求項88に記載の方法。
【請求項99】
前記官能化された剛性多孔質構造体は、前記カーボンナノチューブを含む剛性多孔質構造体と比較して、10%から15%までの重量増を示す、請求項88に記載の方法。
【請求項100】
請求項88に記載の方法により形成される触媒担体。
【請求項101】
請求項88に記載の方法により形成される触媒担体であって、前記官能化された剛性多孔質構造体は、滴定時、1から2meq/gまでの酸滴定濃度を示す、触媒担体。
【請求項102】
請求項88に記載の方法により形成される触媒担体であって、前記官能化された剛性多孔質構造体は、滴定時、1meq/gよりも高い酸滴定濃度を示し、前記カーボンナノチューブを含む剛性多孔質構造体の構造を保持する、触媒担体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2008−517863(P2008−517863A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538119(P2007−538119)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/038116
【国際公開番号】WO2006/135439
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(593169485)ハイピリオン カタリシス インターナショナル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】