カーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法
【課題】 カーボンナノチューブのハンドリング性を向上させ、カーボンナノチューブを含む電子デバイスや機能材料、およびその他構造材料などの、広範なカーボンナノチューブの応用を実現し得るカーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 複数の物体4相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブ8を会合させることにより、カーボンナノチューブ8を構造化して配置することを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法、およびカーボンナノチューブ構造体である。
【解決手段】 複数の物体4相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブ8を会合させることにより、カーボンナノチューブ8を構造化して配置することを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法、およびカーボンナノチューブ構造体である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーボンナノチューブを含むデバイスや機能材料、およびその他構造材料などに利用可能なカーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法に関する。本発明は、広範なカーボンナノチューブの応用に展開可能なものである。
【0002】
【従来の技術】繊維状のカーボンを一般的にカーボンファイバーと呼んでいるが、直径数μm以上の太さの構造材料として用いられるカーボンファイバーは、従来から何種類もの製法が研究されて来ている。その中で現在ではPAN(ポリアクリロニトリル)系やピッチ系の原料から作製する製法が主流を占めている。
【0003】この製法の概略は、PAN繊維や等方性ピッチ、メソフェーズピッチから紡糸した原料を不融化、耐炎化し800〜1400℃で炭素化し、そして1500〜3000℃で高温処理する方法である。こうして得られたカーボンファイバーは強度や弾性率等の機械的特性に優れ、かつ軽量なのでスポーツ用品や断熱材、航空宇宙関連や自動車関連の構造材等に複合材料としても利用されている。
【0004】これとは別に、近年発見されたカーボンナノチューブは直径1μm以下の太さのチューブ状材料であり、理想的なものとしては炭素6角網目の面がチューブの軸に平行になって管を形成し、さらにこの管が多重になることもある。このカーボンナノチューブは炭素でできた6角網目の繋り方や、チューブの太さにより金属的あるいは半導体的なることが理論的に予想され、将来の機能材料として期待されている。
【0005】カーボンナノチューブの合成には、アーク放電法を利用するのが一般的になっているが、この他、レーザー蒸発法や熱分解法、プラズマ利用等が近年研究されてきている。ここで近年開発されたカーボンナノチューブについて概説する。
【0006】(カーボンナノチューブ)直径がカーボンファイバーよりも細い1μm以下の材料は、通称カーボンナノチューブと呼ばれ、カーボンファイバーとは区別されているが、特に明確な境界はない。狭義には、炭素の6角網目の面が軸とほぼ平行である材料をカーボンナノチユーブと呼び、カーボンナノチューブの周囲にアモルファス的なカーボンが存在する場合もカーボンナノチューブに含めている(なお、本発明においてカーボンナノチューブとは、この狭義の解釈が適用される。)。
【0007】一般的に狭義のカーボンナノチューブは、さらに分類され、6角網目のチューブが1枚の構造のものはシングルウォールナノチューブ(以下、「SWNT」と略称する)と呼ばれ、一方、多層の6角網目のチューブから構成されているものはマルチウォールナノチューブ(以下、「MWNT」と略称する)と呼ばれている。どのような構造のカーボンナノチューブが得られるかは、合成方法や条件によってある程度決定されるが、同一構造のカーボンナノチューブのみを生成することは未だにできていない。
【0008】カーボンファイバーは径が大きく、軸に平行で円筒状の網目構造が発達しない。触媒を利用した気相熱分解法では、チューブの中心付近に軸に平行でかつチューブ状の網目構造があるが、その周囲に乱れた構造の炭素が多く付着している場合が多い。
【0009】(カーボンナノチューブの応用)次にカーボンナノチューブの応用についての従来技術を説明する。現時点では、カーボンナノチューブの応用製品は出ていないが、応用化へ向けた研究活動は活発である。その中で代表的な例を以下に簡単に説明する。
【0010】(1)電子源カーボンナノチューブは先端が先鋭で、且つ電気伝導性があるため電子源としての研究例が多い。W.A.deHeerらは、“Science”(Vol.270,1995,p1179)で、アーク放電法で得られたカーボンナノチューブを精製しフイルターを通して基板上に立て電子源としている。この報告では電子源はカーボンナノチューブの集団となっているが、1cm2の面積から700Vの電圧の印加により100mA以上の放出電流が安定して得られたと示されている。
【0011】また、A.G.Rinzlerらは、“Science”(Vol.269,1995,p1550)にて、アーク放電法で得られたカーボンナノチューブの1本を電極に取り付けて特性を評価したところ、約75Vの電圧印加により先端の閉じたカーボンナノチューブからは約1nA、先端の開いたカーボンナノチューブからは約0.5μAの放出電流が得られたと示されている。
【0012】(2)STM、AFMH.Daiらは、“Nature”(384,1996,p.147)においてカーボンナノチューブのSTM、AFMへの応用について報告している。ここで用いられているカーボンナノチューブは、アーク放電法で作製されたもので、先端部分は直径約5nmのSWNTになっている。チップ(tip)が細く、しなやかであるため、試料の隙間部分の底でも観察でき、先端のチップクラッシュ(tip crash)のない理想的なチップ(tip)が得られるといわれている。
【0013】(3)水素貯蔵材料A.C.Dillonらは、SWNTを用いることにより、ピッチ系の原料から生成したカーボンと比較して数倍の水素分子が貯蔵できることを“Nature”(Vol.386,1997,p377〜379)に報告している。まだ応用への検討が始まったばかりではあるが、将来的には水素自動車等の水素貯蔵材料として期待されている。
【0014】上記のカーボンナノチューブの製法として、現在は主に3種類用いられている。具体的には、カーボンファイバーを製造するための気相成長法と類似の方法(触媒を用いる熱分解法)、アーク放電法、およびレーザー蒸発法である。またこの上記3種類以外にもプラズマ合成法や固相反応法が知られている。
【0015】ここでは代表的な3種類について以下に簡単に説明する。
(1)触媒を用いる熱分解法この方法は、カーボンファイバーを製造するための気相成長法とほぼ同じである。このような製法の詳細は、C.E.SNYDERらによるInternational PatentのWO89/07163(International Publication Number)に記載されている。反応容器の中にエチレンやプロパンを水素と共に導入し、同時に金属超微粒子を導入するが、原料ガスはこれ以外にもメタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素やエチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン等の不飽和炭化水素、アセトン、メタノール、一酸化炭素等の酸素を含む原料でもかまわないと示されている。
【0016】また、原料ガスと水素の比は1:20〜20:1が良好であり、触媒はFeや、FeとMo、Cr、Ce、Mnの混合物が推奨されており、それをヒュームド(fumed)アルミナ上に付着させておく方法も提唱されている。反応容器は550〜850℃の範囲で、ガスの流量は1インチ径当り水素が100sccm、炭素を含む原料ガスを200sccm程度に調節することが好ましく、微粒子を導入して30分〜1時間程度でカーボンナノチューブが成長する。
【0017】こうして得られるカーボンナノチューブの形状は、直径が3.5〜75nm程度であり、長さは直径の5〜1000倍に達する。炭素の網目構造はチューブの軸に平行になり、チューブ外側の熱分解カーボンの付着は少ない。
【0018】また生成効率はよくないものの、Moを触媒核にし、一酸化炭素ガスを原料ガスにして1200℃で反応させるとSWNTが生成されることが、H.Dai(“Chemical Physics Letters”260,1996,p.471〜475)らによって報告されている。
【0019】(2)アーク放電法アーク放電法は、Iijimaにより最初に見出され、詳細は、Nature(Vol.354,1991,p56〜58)に記載されている。アーク放電法とは、アルゴン約13300Pa(100Torr)の雰囲気中で炭素棒電極を用いて直流アーク放電を行うという単純な方法である。カーボンナノチューブは負電極の表面の一部分に5〜20nmの炭素微粒子と共に成長する。このカーボンナノチューブは直径4〜30nmで長さ約1〜50μmのチューブ状の炭素の網目が重なった層状構造であり、その炭素の網目構造は、軸に平行に螺旋状に形成されている。
【0020】螺旋のピッチは、チューブごと、またチューブ内の層ごとに異なっており、多層チューブの場合の層間距離は0.34nmとグラファイトの層間距離にほぼ一致する。チューブの先端は、やはりカーボンのネットワークで閉じられている。
【0021】またT.W.Ebbesenらはアーク放電法でカーボンナノチューブを大量に生成する条件を“Nature”(Vol.358,1992,p220〜222)に記載している。具体的な条件としては、陰極に直径9mm、陽極に直径6mmの炭素棒を用い、チャンバー中で1mm離して対向するように設置し、ヘリウム約66500Pa(500Torr)の雰囲気中で約18V、100Aのアーク放電を発生させる。
【0022】66500Pa(500Torr)よりも圧力が低いとカーボンナノチューブの割合は少なく、66500Pa(500Torr)より圧力が高くても全体の生成量は減少する。最適条件の66500Pa(500Torr)では生成物中のカーボンナノチューブの割合は75%に達する。投入電力を変化させたり、雰囲気をアルゴンにしてもカーボンナノチューブの収集率は低下する。なお、カーボンナノチューブは、生成したカーボンロッドの中心付近に多く存在する。
【0023】(3)レーザー蒸発法レーザー蒸発法はT.Guoらにより、“Chemical PhysicsLetters”(243,1995,p.49〜54)に報告されて、さらにA.Thessらが、“Science”(vol.273,1996,p.483〜487)にレーザー蒸発法によるロープ状SWNTの生成を報告している。この方法の概略は以下のとおりである。
【0024】まず、石英管中にCoやNiを分散させたカーボンロッドを設置し、石英管中にArを66500Pa(500Torr)満たした後、全体を1200℃程度に加熱する。そして石英管の上流側の端からNdYAGレーザーを集光してカーボンロッドを加熱蒸発させる。そうすると石英管の下流側にカーボンナノチューブが堆積する。この方法はSWNTを選択的に作製する方法としては有望であり、また、SWNTが集まってローブ状になり易い等の特徴がある。
【0025】上記、従来技術のカーボンナノチューブの構成や製法では、得られるカーボンナノチューブは太さも方向もかなりランダムなものであり、また成長直後ではカーボンナノチューブに電極は接合されていない。すなわちカーボンナノチューブは利用に際して、合成後に回収して精製し、さらに利用する形態に合わせて特定の形状に形成しなければならない。
【0026】例えば、カーボンナノチューブを電気回路に利用しようとする場合には、カーボンナノチューブが非常に微細であるためにハンドリングが困難であり、集積回路(IC)のような高密度配線を作製する手法は未だ提案されておらず、Nature vol.397、1999、p.673〜675に示されているように、微細電極をあらかじめ作製し、その位置にカーボンナノチューブが配置してできる単一構造の微細素子を評価するのみであった。また、カーボンナノチューブは非常に高価であり、ロスの無いように効率的に電子回路内部に組み込ませたい。これらハンドリングの困難さ、および高価であることの問題は、具体的なデバイス化に大きな障害となっている。
【0027】その1つの打開策として、従来の電子回路デバイスとは異なる生物の脳に類似させた電気信号処理を考えることができる。カーボンナノチューブはこれまでの電気配線とは異なり、非常に細く、指向性も高いため、脳内のニューロンのような多重配線を実現し、従来の計算処理とは異なる非ノイマン型の処理機構を具現化できる可能性がある。しかしながら、これまでにカーボンナノチューブの組織構造体による信号伝達、信号処理に関する報告は無い。
【0028】また、電子源として利用しようとする場合、A.G.Rinzlerらは、“Science”(Vol.269,1995,p.1550〜1553)に示されているようにカーボンファイバーの1本を取り出し、片方を電極に接着する必要があるとしている。また、Walt A.de Heerらは、“Science”(Vol.270,1995,p.1179〜1180)および“Science”(Vol.268,1995,p.845〜847)に示されるように、アーク放電で作製したカーボンナノチューブを精製した後、セラミックフィルターを用いて基板上にカーボンナノチューブを立たせる工程が必要であるとしている。この場合には積極的に電極とカーボンナノチューブを接合してはいない。また、利用するカーボンナノチューブは相互に複雑に絡み合い易く、個々のカーボンナノチューブの特性を十分発現できるデバイスではなかった。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な問題に鑑みなされたものであり、カーボンナノチューブのハンドリング性を向上させ、カーボンナノチューブを含む電子デバイスや機能材料、およびその他構造材料などの、広範なカーボンナノチューブの応用を実現し得るカーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、<1> 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、前記カーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0031】<2> 前記複数の物体が、複数の微小体であることを特徴とする<1>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<3> 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いことを特徴とする<2>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0032】<4> 前記複数の微小体の球相当平均径が、10nm以上1000μm以下であることを特徴とする<2>または<3>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<5> 前記複数の微小体が、複数のポリマー製の微小体であることを特徴とする<2>〜<4>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0033】<6> 前記複数の微小体と、前記複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることを特徴とする<2>〜<5>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<7> 液架橋部の形成後、さらに前記液体を蒸発させることにより、前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させるとともに、前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることを特徴とする<6>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0034】<8> 前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることにより、前記複数の微小体が最密充填された状態となることを特徴とする<7>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<9> 前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することにより、前記液架橋部に会合させるカーボンナノチューブの量を制御することを特徴とする<6>〜<8>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0035】<10> 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させ、前記複数の微小体を溶解させ再度固化させることでマトリックスとし、該マトリックスに前記カーボンナノチューブが構造化して配置されることで、構造体として固定化することを特徴とする<6>〜<9>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<11> 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させることを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0036】<12> さらに、前記複数の物体を消失させることで、中空部分を有するように構造化して配置されたカーボンナノチューブ構造体を得ることを特徴とする<11>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<13> 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記物体の複数の部位における間隙の最短離間距離よりも長いことを特徴とする<1>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0037】<14> 前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる際に、さらに他の物体を存在させ、該他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とする<1>〜<13>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<15> 前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置する際に、前記他の物体の少なくとも一部を、カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることを特徴とする<14>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0038】<16> 前記他の物体の少なくとも一部が、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有することを特徴とする<15>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<17> 前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体として固定化することを特徴とする<16>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0039】<18> 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に形成される液架橋部の形状に、会合された複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とするカーボンナノチューブ構造体である。
<19> マトリックス中に、前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とする<18>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
【0040】<20> 中空部分を有するように構造化して配置されてなることを特徴とする<18>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
<21> さらに他の物体が、カーボンナノチューブ相互の間隙および/またはその近傍に配置されてなることを特徴とする<18>〜<20>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
【0041】<22> カーボンナノチューブ相互が前記他の物体により緊結され、構造体として固定化されてなることを特徴とする<21>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
<23> <1>〜<17>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法により製造されてなることを特徴とする<18>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
【0042】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
<本発明の作用機構>まず、本発明の作用機構について説明する。本発明においては、複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成するが、この「液架橋」とは、一般に「メニスカス」とも呼ばれ、物体相互の間隙、あるいは、物体の複数の部位における間隙(以下、単に「物体相互の間隙等」と略す場合がある。)が十分に小さく、かつその間隙にある程度の液体が存在する場合に、その液体の凝集力と、該液体−前記物体間の付着力と、の関係により前記物体と接触する部分の液面が高く、その中間に位置する部分は低くなる、すなわち凹部を形成する現象のことを言い、物体相互の間隙等に形成される液面が液体の表面張力に由来する曲面形状を形成している。また、毛細管現象も上記現象と類似した現象であるが、本発明において、「液架橋」と言う場合には、物体相互の間隙等において、毛細管現象により形成された液体の状態を区別することなく含むものとする。
【0043】複数の物体を相互に近接させて間隙を形成し、ここに液体を存在させると、以上のような液架橋が起こる。図1に、複数の物体として球形の粒子を用い、該球形の粒子と液体とにより液架橋が生じた状態を拡大模式断面図で示す。図1に示すように、粒子4相互の間隙を十分に少なく取り、ここに液体2を存在させると、液架橋力により液面形状が凹化した液架橋部a1〜a4が、粒子4相互の間隙に形成される。この液架橋部a1〜a4に、複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、当該カーボンナノチューブを構造化して配置することが本発明の特徴である。
【0044】本発明の作用を、図面を用いてより具体的に説明する。図2は、本発明の作用を時系列的に説明するための拡大模式断面図である。カーボンナノチューブ8はチューブ状の細長い形状を有するものであるが、図2R>2において、カーボンナノチューブ8は、その断面が示されているため、円形に描かれている。
【0045】まず、図2(a)に示すような、基板6の表面に粒子4が固定され、カーボンナノチューブ8が分散された液体で、粒子4が満たされた状態を想定する。この状態から、液体2の液面が粒子4の高さになるまで、液体2を蒸発させた状態が図2(b)である。さらに液体2を蒸発させると、図2(c)に示すように、各粒子4相互の間隙に液架橋部a1〜a4が形成される。このとき、カーボンナノチューブ8は、該液架橋部a1〜a4に引き寄せられるような行動をとる。ここからさらに液体2を蒸発させると、図2(d)に示すように、カーボンナノチューブ8は、液架橋部a1〜a4において会合し、構造化されて配置された状態となる。
【0046】図2(d)の状態における平面図(図2(d)の矢印X方向から見た図)を図3に示す。複数のカーボンナノチューブ8が会合して構造化して配置されていることがわかる。このようにして得られたカーボンナノチューブ構造体の電子顕微鏡拡大写真を図4に示す。図4において、円形状の物体は、前記複数の物体としてのラテックス粒子であり、該粒子相互の間隙に白く直線状に存在するのが、カーボンナノチューブである。
【0047】以上のように、本発明によればカーボンナノチューブを液架橋を利用することにより、構造化して配置することができ、容易にカーボンナノチューブ構造体を製造することができる。すなわち、カーボンナノチューブを含む液体を液架橋部に存在させると、カーボンナノチューブは液架橋部に集まり、カーボンナノチューブの濃度が高まり、カーボンナノチューブを容易に、かつ適切に構造化することができる。また、液架橋部を形成するための複数の物体の種類、形状、大きさ、密度、両者の間隙の大きさ等を調整することにより、カーボンナノチューブ構造体の構造を適切に制御することができる。
【0048】なお、本発明において「複数の物体(または、複数の微小体)相互の間隙」、あるいは、「物体の複数の部位における間隙」という場合の間隙の程度としては、当該間隙が、液架橋が生じる程度の大きさであれば問題無い。例えば、液架橋に用いる液体の表面張力が大きい場合や、後述の如く当該液体中のカーボンナノチューブの濃度が高い場合には、当該間隙を大きくとることができる。また、「複数の物体(または、複数の微小体)」相互、あるいは、「物体の複数の部位」相互に、ある程度の間隙を有していることを必須とする意味ではなく、例えば前記相互間が完全に接触している箇所を有していても、その近辺に液架橋構造を形成し得る場合には、当該両者間の関係も「相互に間隙」を有しているものとして、本発明においては取り扱う。
【0049】また、本発明において「物体の複数の部位における間隙」という場合、物体の複数の部位において、液架橋を形成し得る所定の間隙を有しているもの全てが概念に含まれ、詳細には、物理的に「物体の複数の部位」に液架橋を形成し得る間隙を有する場合の他、物体の表面性状を調整し、該調整された表面の部位相互の間に液架橋を形成し得る場合の当該間隙も、「物体の複数の部位における間隙」の概念に含まれる。
【0050】表面性状の調整とは、すなわち、物体の表面に前記液体に対して親和性の低い部位(液体が水の場合には、疎水性の部位)と、親和性の高い部位(液体が水の場合には、親水性の部位)とが生じるように表面性状を調整することをいい、前記液体に対して親和性の低い部位を間に挟んで、複数の親和性の高い部位が存在し、かつ、該複数の親和性の高い部位相互の間隙が十分に小さければ、当該間隙には液架橋部が形成される。つまり、本発明においてカーボンナノチューブを会合させる液架橋部は、必ずしも物体あるいは部位相互の物理的な間隙に形成されるものではない。
【0051】表面性状の調整方法としては、例えば物体の表面に分子膜を形成することにより実現できる。分子膜の形成方法としては、具体的にはラングミュア−ブロジェット(LB)法や、シランカップリング剤などの表面改質剤を使用する方法等が挙げられる。
【0052】<カーボンナノチューブ構造体の構造制御>本発明のカーボンナノチューブ構造体の製造方法によれば、カーボンナノチューブ構造体の構造を適切に制御することができるが、その具体的手法について以下に述べる。
【0053】(液体中のカーボンナノチューブの濃度)上記のように前記複数の物体として、複数の微小体を用いた場合には、該複数の微小体と、複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることでカーボンナノチューブ構造体が得られる。また、前記複数の物体が微小体であるか否かにかかわらず、前記複数の物体を予め微小な間隙を有するように配列して固定しておき、ここに複数のカーボンナノチューブが分散された液体を存在させる(例えば、微小な間隙を有する前記複数の物体が固定された箇所を、複数のカーボンナノチューブが分散された液体で満たし、さらにある程度液体を蒸発させる。)ことでもカーボンナノチューブ構造体が得られる。上記いずれの場合においても、前記液体中のカーボンナノチューブは、液架橋部に均等に分配されるため、前記液体中のカーボンナノチューブの総量は、前記液架橋部において会合するカーボンナノチューブの数に相当する。つまり、前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することにより、前記液架橋部に会合させるカーボンナノチューブの量を制御することができる。
【0054】すなわち、前記液体中のカーボンナノチューブの量を少なく(濃度を低く)すれば、液架橋部に会合し構造化されるカーボンナノチューブの量も少なくなり、逆に前記液体中のカーボンナノチューブの量を多く(濃度を高く)すれば、液架橋部に会合し構造化されるカーボンナノチューブの量も多くなる。このように、本発明によれば、前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することで、得られるカーボンナノチューブ構造体の構造を適切に制御することができる。
【0055】図4に示したカーボンナノチューブ構造体は、これを製造するに供した液体中のカーボンナノチューブの量が比較的少ないため、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの量もかなり少なくなっている。これに対して、前記液体中のカーボンナノチューブの量を極めて多くして製造した場合のカーボンナノチューブ構造体の電子顕微鏡拡大写真を図5に示す。図5の電子顕微鏡拡大写真では、粒子相互の間隙に存在するカーボンナノチューブが極めて大量であり、写真上、チューブとして認識できないほどに会合して構造化されていることがわかる。
【0056】(複数の微小体の最密充填化)また、前記複数の物体として、複数の微小体を用いた場合には、該複数の微小体と、複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることでカーボンナノチューブ構造体が得られる。
【0057】前記液体の蒸発過程の中で、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列するが、さらに前記液体を蒸発させると、前記複数の微小体相互の間隙を近接化させる、言い換えれば、前記複数の微小体を再配列することができる。このとき前記複数の微小体を完全に自由な状態としておけば、前記近接化により前記複数の微小体は規則正しく配列され、最密充填された状態となる。前記複数の微小体が最密充填された状態となれば、前記複数の微小体相互の間隙も極めて近接した状態となり、規則正しく配列された状態となるため、カーボンナノチューブを極めて密接に、かつ規則正しく会合させることができる。
【0058】なお、本発明において「最密充填」と言うときは、微小体相互の関係として、最も近接した状態、乃至、極めて近接した状態に配列されることを意味し、必ずしも正確に最密充填されることを意味するものではない。また、当該「最密充填」を考えるに際しては、微小体相互の間隙に存在するカーボンナノチューブや、後述するその他の物体を考慮に入れて考えるものとする。これらの存在により、勿論一般に言われる「最密充填」の状態を取ることは通常困難であるが、微小体以外のこれらの存在を前提に、微小体相互が、最も乃至極めて近接した状態を、本発明における「最密充填」と定義づける。したがって、既に示した図3や、図4および図5の電子顕微鏡拡大写真における微小体の状態は、いずれも「最密充填」の概念に含まれる。
【0059】言い換えれば、本発明において、少なくとも複数の微小体および複数のカーボンナノチューブが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させ、さらに前記液体を蒸発させ前記複数の微小体を近接化させることとすれば、前記複数の微小体は「最密充填」した状態に再配列されることとなる。勿論、複数のカーボンナノチューブが分散された液体の中で、複数の微小体を沈殿状態としておき、該複数の微小体を可動状態としておくことでも、前記複数の微小体を近接化させ、「最密充填」した状態に再配列することができる。
【0060】(他の物体の添加)前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる際に、さらに他の物体を存在させ、該他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置することもできる。具体的には、前記複数のカーボンナノチューブ、および必要に応じて複数の微小体が分散された、液架橋を形成するための液体に、さらに他の物体を存在させておくと、前記複数のカーボンナノチューブの会合の際に、前記他の物体が取り込まれた状態で前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置される。
【0061】このとき特に、前記他の物体を、液架橋に供する前記複数の物体、あるいは、物体の複数の部位(以下、単に「複数の物体等」と略す場合がある。)に捕獲されないようにしておけば、前記他の物体は、前記カーボンナノチューブ相互の間隙および/または近傍に配置させて構造化することができる。また、前記他の物体を、液架橋に供する前記複数の物体等に捕獲されるようにしておけば、前記他の物体は、前記複数の物体等と前記カーボンナノチューブとの間に配置させて構造化することができる。
【0062】前記他の物体を、液架橋に供する前記複数の物体等に捕獲されるようにするか、捕獲されないようにするかは、例えば、■分子や原子のイオン化した状態など正や負に電荷が偏ったものを付加しておき、電気的な引力や斥力を利用する場合、■親水性や親油性など、化学的に相反する親和性を有するものの組み合わせを利用する場合、■微小体の表面に凹凸構造を付加しておき、その凹凸に接合しやすいあるいは絡みつきやすいような前記他の物体の一部形状を付加する場合、■リガンド−レセプター対などにみられる分子相互の認識機能を付加する場合、等により捕獲の可否が決定付けられる。
【0063】前記他の物体を前記カーボンナノチューブ相互の間隙および/または近傍に配置させて構造化することで、得られるカーボンナノチューブ構造体に種々の機能を付与することができる。ナノチューブを構造化した後に何らかの方法(例えば、■真空蒸着など物質の蒸気にさらす方法、■染色のように目的物質を含む溶液の滴下、あるいはその溶液中への含侵する方法、■温度を繰り返し上昇下降させて、熱膨張係数の違いにより微細な亀裂を生じさせて、その部分に浸透させる方法、■電子、原子、イオン、分子、粒子を加速して打ち込む方法)によって、前記他の物体を前記カーボンナノチューブ相互の間隙および/または近傍に配置させてもよい。
【0064】前記他の物体としては、例えば、原子、分子、イオン、粒子、ポリマー、生物体から抽出された分子や組織などが挙げられ、その性質としては、絶縁性、導電性、半導電性、吸光性、発光性、発色性、伸縮性、発電性、光電性などの特性を有するものが挙げられる。これら特性が、温度や湿度や雰囲気ガスによって変化するものであってもよい。
【0065】また、機能性分子や機能微粒子など、設計された機能を有するものでもよい。近年、分子や微粒子の多くには半導電性が多く見出されており、スイッチング機能やメモリー機能などを、カーボンナノチューブの接触部分あるいは凝集部分に付与することができる。
【0066】機能性分子としては、分子内部に電荷のかたよりのある分子が好ましく、電荷供与性のある分子種と、電荷受容性のある分子種とを組み合わせた分子、対称的な分子に電荷供与性あるいは電荷受容性のある分子種を組み合わせた分子、それらの繰り返しからなる巨大分子、あるいはそれら分子の集合により機能させられる分子集合体等が挙げられる。なお、上記電荷供与性および電荷受容性は、電子親和力やイオン化ポテンシャルの値で定義することができる。また、DNA、コラーゲンなどの生体分子、あるいは生体に模倣した人工分子を使用してもよく、生体に類似した機能を付加することが可能となる。
【0067】機能微粒子としては、金などの金属微粒子、ZnO2、TiO2などの金属酸化物微粒子、合金からなる金属間化合物微粒子、フラーレン等の炭素原子の組織体、フラーレンの誘導体、ポリマー粒子、溶液中のミセル構造体、コロイド粒子、脂質からなるベシクル、セラミックス、デンドリマー等が挙げられ、用途に応じてそれらの複合体あるいはそれらに処理を施したものを使用できる。
【0068】例えば、機能微粒子として金のナノ粒子を用いた場合、カーボンナノチューブによる導電性ネットワークの特性改善を図ることができる。機能性分子や機能微粒子としての粒子は、カーボンナノチューブと必要に応じて添加される微小体との分散液に添加しておけばよい。機能性分子や機能微粒子は、非常に小さいためハンドリングが困難であり、その正確な配置に関しては、化学官能基による修飾などにより、相互認識的に適切な配置を取り得るように設計することが好ましい。
【0069】前記他の物体としては、その少なくとも一部を、カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることが望ましい。カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることで、既述の如き機能性の付与が適切に為される。このとき、前記他の物体の少なくとも一部が、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有することも望ましい態様である。すなわち、前記他の物体によりカーボンナノチューブ相互を橋渡しすることで、カーボンナノチューブの構造体を、全体として1つの分子構造に似た状態とすることができ、既述の機能性が全体として高い次元で付与されるほか、前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体としてカーボンナノチューブ構造体を強固に固定化することができる。
【0070】架橋機能に関しては、カーボンナノチューブと接合して離れにくくなる特性の部位を2つ以上有する原子、分子、イオン、粒子、繊維であればよい。カーボンナノチューブ自体にも処理を施しておくとより好ましい。例えば、カーボンナノチューブを強酸溶液で処理すると、カルボニル基(COOH)を有するカーボンナノチューブとなるが、この場合には、水酸基(OH)やアミノ基(NH2)やチオール基(SH)などのカルボニル基と反応しやすい官能基を含む分子により、容易に架橋させることができる。
【0071】また、このカルボニル基など水溶性の官能基を含むカーボンナノチューブは、水溶液中でイオン化状態にでき、多価のイオンにより架橋構造を導入することができる。例えば、カルボン酸をイオン化させた状態(COO-)に対してはカルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、アルミニウムイオン(Al3+)などを利用することができる。
【0072】<複数の物体およびその配置による液架橋の具体例>以下に、いくつかの具体例を挙げて、液架橋の態様を説明する。図6は、上記複数の物体として2個の球体を用いた例を示す模式平面図である。2個の球体10の間隙に、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2からなる液架橋部a5が形成され、カーボンナノチューブは、液架橋部a5において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体10を除去すれば、カーボンナノチューブ構造体のみを入手することができる。得られたカーボンナノチューブ構造体は、その電気特性を利用した電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0073】図7は、上記複数の物体として、基板上に載置された球体を用いた例を示す模式断面図である。すなわち、当該例においては、球体10と基板12とが「複数の物体」となる。球体10は基板12上に載置されるが、図7に示すようにその接点の両側には微細な間隙が形成される。当該間隙に、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2からなる液架橋部a6が形成され、カーボンナノチューブは、液架橋部a6において会合し、構造化される。この場合、基板12の表面には、会合したカーボンナノチューブが、円形に構造化されて配置された状態となる(不図示)。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体10を除去すれば、円形に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、カーボンナノチューブの電気特性を利用した円形状の電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、球体10を除去した際の円形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0074】図8は、上記複数の物体として、基板上に載置された球体を4個用い、これが一直線状に並んだ例を示す模式平面図であり、図8(a)は、液架橋に供する液体2の量が少ない場合を、図8(b)は、該液体2の量がそれよりも多い場合を表す。
【0075】図8(a)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量がわずかであるため、球体14相互の間隙にわずかな液架橋部a7のみが形成され、各液架橋部a7において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、各液架橋部a7の液体2は基板12まで達しており、すなわち、球体14相互間の他、基板12との間隙にも液架橋部a7が形成されている。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体14を除去すれば、会合した3つのカーボンナノチューブ構造体を基板12表面に同時に形成することができ、カーボンナノチューブの電気特性を利用した3つの電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0076】一方、図8(b)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量が図8(a)の場合よりも多いため、球体14相互の間隙のみならず、球体14の周りにも液架橋部a8が形成される。すなわち、液架橋部a8は、基板12と球体14との臨界部に形成され、リングを4つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a8において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体14を除去すれば、4つの円形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した円形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、球体14を除去した際の円形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0077】図9は、上記複数の物体として、基板上に載置された三角柱体を5個用い、これが一直線状に並んだ例を示す模式平面図であり、図9(a)は、液架橋に供する液体2の量が少ない場合を、図9(b)は、該液体2の量がそれよりも多い場合を表す。
【0078】図9(a)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量がわずかであるため、三角柱体16相互の間隙にわずかな液架橋部a9のみが形成され、各液架橋部a9において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、各液架橋部a9の液体2は基板12まで達しており、すなわち、三角柱体16相互間の他、基板12との間隙にも液架橋部a9が形成されている。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により三角柱体16を除去すれば、直線状でかつ相互に角度を有する、会合した4つのカーボンナノチューブ構造体を基板12表面に同時に形成することができ、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した4つの電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0079】一方、図9(b)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量が図9(a)の場合よりも多いため、三角柱体16相互の間隙のみならず、三角柱体16の周りにも液架橋部a10が形成される。すなわち、液架橋部a10は、基板12と三角柱体16との臨界部に形成され、三角形を5つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a10において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により三角柱体16を除去すれば、5つの三角形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した三角形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、三角柱体16を除去した際の三角形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0080】図10は、上記複数の物体として、基板上に載置された立方体を4個用い、これが一直線状に並んだ例を示す模式平面図であり、図10(a)は、液架橋に供する液体2の量が少ない場合を、図10(b)は、該液体2の量がそれよりも多い場合を表す。
【0081】図10(a)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量がわずかであるため、立方体18相互の間隙にわずかな液架橋部a11のみが形成され、各液架橋部a11において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、各液架橋部a11の液体2は基板12まで達しており、すなわち、立方体18相互間の他、基板12との間隙にも液架橋部a11が形成されている。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により立方体18を除去すれば、直線状でかつ相互に平行に、会合した3つのカーボンナノチューブ構造体を基板12表面に同時に形成することができ、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した3つの電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0082】一方、図10(b)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量が図10(a)の場合よりも多いため、立方体18相互の間隙のみならず、立方体18の周りにも液架橋部a12が形成される。すなわち、液架橋部a12は、基板12と立方体18との臨界部に形成され、四角形を4つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a12において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により立方体18を除去すれば、4つの四角形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した四角形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、立方体18を除去した際の四角形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0083】以上説明した各種例において、「複数の物体」は、1〜5個の例を挙げて説明したが、勿論、より多くの数が配列されていても構わない。例えば、「複数の物体」を基板上に1層配置して、2次元的な平面状のカーボンナノチューブ構造体を得ることもできるし、数層に重ねて配置してフィルム状のカーボンナノチューブ構造体を得ることもできる。さらに「複数の物体」を積層すれば、カーボンナノチューブ構造体は、全体として3次元的な立体構造、すなわち塊状となる。本発明によれば、このようにカーボンナノチューブ構造体全体としての構造を制御することもできる。
【0084】以上説明した球体、三角柱体および立方体の大きさとしては、特に限定されるものではないが、平面状、フィルム状あるいは塊状のカーボンナノチューブ構造体を得るためには、微小体であることが望ましい。微小体の好ましい大きさとしては、後述する。
【0085】さらに、以下に他の液架橋の態様を、具体例を挙げて説明する。図11は、上記複数の物体として、板状の部材を用いた例を示す模式断面図である。図1111(a)においては、板状部材20aに、他の板状部材20bが垂直に当接して固定された状態の「複数の物体」における、板状部材20aと板状部材20bとの臨界部に液架橋部a13が形成される。図11(b)は、図11(a)と同様の液架橋部a13が形成されるが、「複数の物体」としてT字型の板状部材20cを用いている点が異なる。板状部材20cは一つの部材ではあるが、液架橋の対象となる物体の部分として、板状部材20cには、平底部20c’と垂直部20c”との2つの部位があり、図11(b)は、既述の如き「複数の物体」が1つの物体からなる例の一つである。
【0086】図11(a)において形成される液架橋部a13において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このようにして板状部材20bまたは垂直部20c”における、板状部材20aまたは平底部20c’との付け根部分にカーボンナノチューブ構造体が形成される。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、そのままで、あるいは所望により板状部材20bまたは垂直部20c” を除去すれば、直線状でかつ相互に平行に、会合した2つのカーボンナノチューブ構造体を同時に形成することができ、板状部材20a(あるいはさらに板状部材20b)または板状部材20c表面に、かかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した2つの電気素子として利用することができる。なお、板状部材20bまたは垂直部20c”を除去した際の、2つのカーボンナノチューブ構造体相互の直線状の間隙は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0087】一方、図11(c)においては、板状部材20aに当接して固定される、他の板状部材20bが5つある例であり、板状部材20b相互の間隙が微小で、当該間隙にも液架橋が形成され得るようになっている。すなわち、図11(a)同様、板状部材20aと両端の板状部材20bとの臨界部に液架橋部a14が形成されるとともに、さらに、板状部材20b相互の間隙にも液架橋部a14’が形成される。図11(d)は、図11(c)と同様の液架橋部a14,a14’が形成されるが、「複数の物体」として櫛型の板状部材20dを用いている点が異なる。板状部材20dは一つの部材ではあるが、液架橋の対象となる物体の部分として、板状部材20dには、平底部20d’と5つの垂直部20d”との6つの部位があり、図11(d)は、既述の如き「複数の物体」が1つの物体からなる例の一つである。
【0088】図11(c)において形成される液架橋部a14,a14’において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このようにして板状部材20bまたは垂直部20c”における、板状部材20aまたは平底部20d’との付け根部分にカーボンナノチューブ構造体が形成される。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、そのままで、あるいは所望により板状部材20bまたは垂直部20d”を除去すれば、直線状でかつ相互に平行に、会合した6つのカーボンナノチューブ構造体を同時に形成することができ、板状部材20a(あるいはさらに板状部材20b)または板状部材20d表面に、かかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した6つの電気素子として利用することができる。なお、板状部材20bまたは垂直部20d”を除去した際の、6つのカーボンナノチューブ構造体相互の直線状の間隙は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0089】上記図11(c)あるいは図11(d)に示す板状部材を用いて液架橋を形成するには、図11(e)に示すように、板状部材20dを天地逆転させて、垂直部20d”の先端部分にのみ、液架橋部a15を4つ形成してもよい。かかる液架橋部a15において、カーボンナノチューブが会合し、構造化されれば、平底部20d’から離れた部位にカーボンナノチューブ構造体を形成することができる。なお、図11(e)では、図11(d)に示す板状部材20dにより説明したが、図11(c)に示す板状部材20aおよび板状部材20bにおいても同様である。
【0090】図12は、上記複数の物体として2個の長尺状の角柱体を用いた例を示す模式図である。2個の角柱体22の長手方向の間隙に、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2からなる液架橋部a16が形成され、カーボンナノチューブは、液架橋部a16において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により角柱体22のどちらか一方もしくは双方を除去すれば、角柱体22の間隙あるいは表面に形成されたカーボンナノチューブ構造体を、もしくはカーボンナノチューブ構造体のみを入手することができる。得られたカーボンナノチューブ構造体は、導線として利用できる他、その電気特性を利用した電気素子としても利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0091】図13は、上記複数の物体として、基板上に載置された球体を5個あるいは6個用い、2つの電極端子をつなぐ状態で配置された例を示す模式平面図であり、図13(a)では、電極端子24aおよび電極端子24bが基板12の対向した位置にあり、これを一直線で結ぶように球体14が配置され、図13(b)では、電極端子24aおよび電極端子24bが基板12の略対角線の位置にあり、これを曲線で結ぶように球体14が配置されている。
【0092】いずれの例においても、液架橋部a17,a18は、球体14相互の間隙および基板12と球体14との臨界部に形成される。すなわち、図13(a)では、液架橋部a17は直線状にリングを5つ連ねた状態となり、図13(b)では、液架橋部a18は曲線状にリングを6つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a8において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体14を除去すれば、5つまたは6つの円形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残り、電極端子24aと電極端子24bとの間をつなぐ状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した円形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、球体14を除去した際の、5つまたは6つの円形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0093】図14は、上記複数の物体として、2本の針状体を用いた例を示す模式図である。2本の針状体26としては、例えばマニピュレーターを用いることができる。針状体26の先端を近接させた状態で、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体の中に浸漬させて取り出すことで、針状体26の先端に液架橋部a20を形成することができる。カーボンナノチューブは、液架橋部a20において会合し、構造化される。そのまま液体2を蒸発させれば、針状体26の先端をつないだ状態で構造化されたカーボンナノチューブ構造体が形成され、針状体26として通電可能なものを使用していれば、カーボンナノチューブ構造体の電気特性を測定することができ、また、針状体26を端子とする、カーボンナノチューブの電気特性を利用した電気素子として利用することができる。さらに、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0094】図15は、上記複数の物体として、上記例同様2本の針状体を用い、かつこれを基板に当接させた例を示す模式図である。上記例同様2本の針状体26としては、例えばマニピュレーターを用いることができる。針状体26の先端を近接させた状態で、基板12に当接させた上で、当該先端部にカーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2により液架橋部a21が形成される。液架橋部a21は、例えば、上記図14で示される例における液架橋部a20が形成された針状体26の先端を、基板12に当接させることで形成することができる。
【0095】基板12の表面には、針状体26の先端のみが中空となる2つの円形状(8の字型)の液架橋部a21が形成され、該液架橋部a20において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、針状体26の先端の距離を離したり近づけたりすることで、カーボンナノチューブ構造体の形状を制御することができる。図16(a)は針状体26の先端の距離を近づけた状態を示す模式図であり、図16(b)は、このとき基板12の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体28の平面図である。一方、図17(a)は針状体26の先端の距離を離した状態を示す模式図であり、図17R>7(b)は、このとき基板12の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体28の平面図である。液体2を蒸発させ、針状体26を基板12から離すことで、図16R>6(b)や図17(b)に示されるようなカーボンナノチューブ構造体28が基板12の表面に形成される。得られたカーボンナノチューブ構造体28は、その電気特性を利用した電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、針状体26を基板12から離した際、基板12表面における針状体26の先端が元々存在していた部分は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0096】<各構成要素の詳細>(カーボンナノチューブ)本発明において使用するカーボンナノチューブとしては、SWNTでもMWNTでもよい。一般に、SWNTのほうがフレキシブルであり、MWNTになるとSWNTよりはフレキシブルさが失われ、多層になればなるほど剛直になる傾向にある。SWNTとMWNTとは、その性質を考慮して、目的に応じて使い分けることが望ましい。
【0097】前記複数の物体として複数の微小体を用いた場合には、該複数の微小体相互の間隙に形成される液架橋部で会合するカーボンナノチューブは、他のいくつかの複数の微小体相互の間隙に形成される液架橋部にも、同時に捕らえられる(以下、単に「複数液架橋部への捕獲」という。)ようになり、複数の微小体相互の間隙(液架橋部)を橋渡しするように構造化される(図3参照)。これは、カーボンナノチューブが柔らかい細い線状の構造を有しているため生じる特異的な現象であり、かかる場合にはSWNTを用いることが好ましいが、例えば一辺がカーボンナノチューブよりも長い物体等にカーボンナノチューブが構造化される場合や、前記複数の微小体が格子を組んでいるような場合には、カーボンナノチューブはほぼ直線状態で配置されるため、SWNTおよびMWNTのいずれを用いても構わない。
【0098】適用可能なカーボンナノチューブの長さや直径(太さ)は、特に限定されるものではないが、長さとしては、一般的に10nm〜1000μmの範囲のものが用いられ、100nm〜100μmの範囲のものが好ましく用いられる。また、前記複数の物体として複数の微小体を用いた場合には、カーボンナノチューブの長さが、前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いことが好ましい。前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いカーボンナノチューブを用いることで、複数液架橋部への捕獲が実現でき、複数の微小体相互の間隙(液架橋部)を橋渡しするようにカーボンナノチューブを構造化することができる。なお本発明において、「球相当平均径」とは、前記複数の微小体の形状が球体である場合には勿論、当該球の平均径(数平均)を言うが、球体でなくても、それと同一体積の球体を見立てた場合における当該球の平均径(数平均)を言う。前記複数の微小体の好ましい球相当平均径については、後述する。
【0099】一方、カーボンナノチューブが、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成する場合には、前記複数のカーボンナノチューブの長さとしては、前記物体の複数の部位における間隙の最短離間距離よりも長いことが好ましい。かかる長さのカーボンナノチューブを用いることで、前記複数のカーボンナノチューブは効果的に液架橋部に会合し捕獲される。なお、ここで言うカーボンナノチューブの長さとは、液架橋部での会合前に、分散液中でそれ自身単独で存在している場合にはそれ自体の長さであり、複数のカーボンナノチューブが束ねられた状態(バンドル状態)で存在している場合には、そのバンドル状態の全長として定義される。
【0100】カーボンナノチューブの直径(太さ)としては、特に限定されるものではないが、一般的に1nm〜1μmの範囲のものが用いられ、カーボンナノチューブに適度なフレキシブルさが望まれる用途に対しては、3nm〜500nmの範囲のものが好ましく用いられる。
【0101】カーボンナノチューブは、製造したままの状態では、アモルファスカーボンや触媒等の不純物が混在するため、これらを精製して取り除いておくことが好ましい。ただし、本発明は、不純物の存在によって、その効果が制限されるものではない。
【0102】(液架橋に供する間隙を形成する複数の物体、および、液架橋に供する間隙を形成する複数の部位を有する物体)液架橋に供する間隙を形成する前記複数の物体、および、液架橋に供する間隙を形成する複数の部位を有する物体(以下、単に「間隙形成物体」という場合がある。)としては、既述の如く、微小体の場合と微小体以外の場合とがある。いずれの場合においても、前記複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋を形成する必要があり、その意味で液架橋に供される液体との親和性の高い材料を用いることが望ましい。液架橋部においては、液体を構成する分子同士の凝集力と、該分子が前記複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙における間隙形成物体表面に付着しようとする付着力と、が作用し、液架橋部の液面は凹部を形成する。しかし、間隙形成物体と液架橋に供される液体との親和性が小さ過ぎると、前記付着力が十分に働かず、液架橋が起こらない。
【0103】液架橋に供される液体との親和性の高い材料としては、前記液体の種類により異なるが、前記液体として水を用いた場合、例えば、金属、ガラス、金属酸化物、セラミックス、それら物質を表面にコーティングあるいは添加してあるものなど、水と接触させて水がはじかれることなく水になじむものが選択できる。また、水に界面活性剤や水溶性有機溶剤(例えばアルコールやエーテル等)等の濡れ性向上剤を添加したり、前記液体として水溶性有機溶剤を用いた場合、例えば、各種ポリマー(樹脂)、それらポリマーを表面にコーティングあるいは添加してある粒子、生物の一部組織などを用いることができる。さらに、間隙形成物体は、その表面を物理的あるいは化学的に処理を施しておくことによって、液架橋部を形成する液体との親和性を向上させることができ、ナノチューブ構造体を良好に作製することができる。逆に、物理的あるいは化学的に施す処理の種類によっては、液架橋部を形成する液体との親和性を低くすることが可能であり、選択的に液架橋を形成しない部分を形成することもできる。
【0104】さらに、カーボンナノチューブは液架橋部で会合する際に、液架橋を形成する溶液に追随して動くため、間隙形成物体表面の性状としては、カーボンナノチューブが固着し難い性質のものであることが好ましい。ただし、カーボンナノチューブの固着は、間隙形成物体表面の性状よりも形状に左右されやすく、前記複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙の近傍における表面の形状として、より平滑であることが望ましい。
【0105】間隙形成物体のうち、前記複数の物体の形状としては、特に限定されるものではなく、少なくとも前記複数の物体相互に、液架橋が形成され得るような微小な間隙を形成し得る形状であれば、如何なる形状のものでも用いることができる。具体的には、微小体や針状体、基板上に形成される凹凸パターン等が挙げられる。針状体としては、先端が細く針として機能するものであればよい。材料としては、各種金属、ガラス、カーボンナノチューブ等が挙げられ、これらには、用途に応じて被覆膜が施してあってもよい。
【0106】前記複数の物体として複数の微小体を用いる場合、該微小体としては、該微小体相互の間隙に液架橋が形成され得るものであれば、特に制限は無く、例えば、粒子、繊維、結晶、凝集体等が挙げられる。前記複数の微小体として利用可能な粒子としては、ポリマーなどの有機物、セラミックスや金属などの無機物、あるいはその双方を含む複合物質等が挙げられる。また、粉砕で砕かれることで製造されるものでも、物理的あるいは化学的に制御することで大きさを制御して製造されるものでも、どちらもその目的に応じて使用することができる。前記複数の微小体として利用可能な繊維としては、ポリエステルやナイロンなどの人工繊維、綿など自然繊維、くもの糸などの生体の繊維等が挙げられる。
【0107】前記複数の微小体として利用可能な結晶としては、微細な分子や原子や粒子が充填した内部構造のものや、規則正しく配列した構造のもの等が挙げられる。具体的には、具体的には、金属結晶、非金属結晶、イオン結晶、分子性結晶、粒子結晶等が挙げられ、自然界に安定に存在し得るものであれば用いることができる。前記複数の微小体として利用可能な凝集体としては、原子が凝集したアモルファス、分子が凝集した分子凝集体、粒子が凝集した粒子凝集体、とそれらの複数種類が凝集した複合凝集体等が挙げられるが、これらは微細な分子や原子や粒子が集合した状態であり、内部の配列規則は特定できない。
【0108】既述の如く、微小体の形状としては、得ようとするカーボンナノチューブ構造体の構造制御を目的として、各種形状のものが選択される。各種形状のものを容易に作製可能で、かつ、構造体形成後に溶融させて消去あるいは再度固化させてマトリックスを形成すること(後述)が可能な、ポリマー製の微小体が好ましい。特に、市場から容易に入手可能であり、その大きさや形状を制御しやすい、ラテックス製の微小体を用いることが好ましい。ラテックス製の微小体は、化学的に合成して製造されるものであるため、化学的に表面修飾させやすく、カーボンナノチューブ構造体としたときに所望の特性に制御しやすいといったメリットもある。
【0109】ポリマー製の微小体におけるポリマーとしては、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。複数の微小体としては、上記の如く、各種形状を取ることが可能であり、また、カーボンナノチューブ構造体の構造制御のため各種形状を選択することとなるが、カーボンナノチューブが固着し難い形状とするためは、球形であることが好ましい。
【0110】前記複数の微小体の球相当平均径としては、10nm以上1000μm以下であることが好ましく、20nm以上100μm以下であることがより好ましく、50nm以上10μm以下であることがさらに好ましい。前記複数の微小体の球相当平均径が10nmよりも小さいと、カーボンナノチューブ同士の反発力が、前記複数の微小体相互の間隙に形成される液架橋により発生する引力よりも強くなりやすく、良好な構造化が望めない場合がある。また、カーボンナノチューブ自体が保持している液体により発生する液架橋の影響が避けられなくなり、前記微小体がカーボンナノチューブに付着する現象が見られるようになる。
【0111】一方、前記複数の微小体の球相当平均径が100μmを超えると、現存するカーボンナノチューブの大半のものは100μm以下であるため、カーボンナノチューブの複数液架橋部への捕獲が困難となり、液架橋部内でカーボンナノチューブが自己凝集してしまう場合がある。さらに、カーボンナノチューブを含むデバイスや機能材料および構造材料などの応用では、100μm以下の微細構造が望まれており、100μmを越える大きさの構造体では、実用性に欠ける。
【0112】(液体)液架橋部を形成する液体としては、前記複数の物体およびカーボンナノチューブを溶解してしまうことの無い液体であれば、特に制限は無く、また、カーボンナノチューブは有機溶剤不溶性であるため、前記複数の物体に応じて選択すればよい。前記複数の物体として、ラテックスを用いる場合には、水、界面活性剤を含む水溶液、イオンを含む水溶液、アルコール、または、それらの混合溶液等を用いることが好ましい。
【0113】前記液体としては、液架橋を良好に形成するため、適度な表面張力を有する液体を用いることが望ましい。当該液体にカーボンナノチューブ等を分散させた後の表面張力としては、0.0001mN/m以上10000mN/m以下の範囲から選択することが好ましく、0.001mN/m以上1000mN/m以下の範囲から選択することがより好ましい。
【0114】液架橋部を形成する液体には、当該液体の粘度を調整できる物質、液体の表面エネルギーを調整できる物質を添加しておくことが好ましい。液体の粘度を調整できる物質としては、水溶液に対して具体的には、■水分子と親和性が高いエチレングリコールのように、溶液分子の流動を抑制するもの、■溶解した水溶性ポリマーや水溶性分子を物理的あるいは化学的に架橋させた状態のものにより、水分子集合体からなる溶液流動を抑制するもの、■粒子や繊維状の物体を混合することによって、粒子間や繊維間の摩擦による反発力で溶液流動を抑制するもの、等が挙げられる。液体の表面エネルギーを調整できる物質、水溶液に対して具体的には、界面活性剤、金属塩の溶解、アルコールなどの有機溶媒の混合等が挙げられる。
【0115】<カーボンナノチューブ構造体の態様>以上のように構造化されたカーボンナノチューブは、以下のいくつかの態様で各種カーボンナノチューブ構造体として用いることができる。
■ 液体を存在させた、そのままの状態。
■ 液体を蒸発させ(消失させ)、複数の物体は残した状態。
■ 液体を蒸発させ(消失させ)、複数の物体も消失させて、カーボンナノチューブの構造体のみとした状態。
■ 液体を蒸発させ(消失させ)、複数の物体を溶解させ再度固化させることによりマトリックスとし、該マトリックスにカーボンナノチューブが構造化して配置され、カーボンナノチューブの構造体が骨組みとなったマトリックス体の状態。
【0116】上記いずれの態様においても、得られるカーボンナノチューブ構造体の構造としては、複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に形成される液架橋部の形状に、会合された複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなるものであると言える。前記液架橋部の形状としては、具体的には、液架橋部の上面における凹部の形状にカーボンナノチューブが配置する形状と見ることができる。上記各態様について、それぞれ説明する。
【0117】■ 液体を存在させた、そのままの状態:液架橋部において会合し構造化されたカーボンナノチューブは、液架橋部の液体が存在する状態のままでは不安定であるが、目的に応じて、そのままの状態でカーボンナノチューブ構造体として用いることができる。この場合、外部から電位勾配をかけると、カーボンナノチューブを電気泳動させることができ、局所的にカーボンナノチューブの数量の多い液架橋部やその逆に少ない液架橋部を形成すること、あるいは、特定の液架橋部に多方向からのカーボンナノチューブが集合するようにすることなどが可能となる。このとき、信号伝達経路となるカーボンナノチューブ配線の太い主軸と細い枝軸、信号伝達の分岐数などを制御できるようになり、単純な周期配列では不可能な高次の信号処理を行わせることができるようになる。
【0118】また全体を傾けることにより重力を利用すると、平均的な流動場が発生するため、不均質に存在していたカーボンナノチューブを均等に再配置させることができる。これは、カラムクロマトグラフィーと同様の原理である。さらに、これを継続的に行うことによれば、特定の長さや太さのカーボンナノチューブを選択的に配置したり、抽出したりすることができるようになる。
【0119】■ 液体を蒸発させ(消失させ)、複数の物体は残した状態:液架橋部において会合し構造化されたカーボンナノチューブは、液架橋部の液体を完全に蒸発させることで、強固な構造体となる。特に、前記複数の物体として複数の微小体を用いた場合、カーボンナノチューブの強固なネットワークが形成される。この状態で、前記複数の物体は残した状態で、カーボンナノチューブ構造体として用いることができる。かかるカーボンナノチューブ構造体は、そのままカーボンナノチューブの電気特性を利用した電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化し、カーボンナノチューブ相互の間隙および/またはその近傍に配置しておけば、配置される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。さらに、残存する前記複数の物体に、所望の機能を予め付与しておいてもよい。
【0120】■ 液体を蒸発させ(消失させ)、複数の物体も消失させて、カーボンナノチューブの構造体のみとした状態:液架橋部において会合し構造化されたカーボンナノチューブは、液架橋部の液体を完全に蒸発させることで、強固な構造体となる。そのため、例えば、前記複数の物体として複数の微小体を用いた場合、全体を超音波振動器にかけることで、カーボンナノチューブのネットワーク中に存在する複数の微小体を、容易に脱落させることができる。また、例えば前記複数の物体として熱溶融性樹脂を用いた場合には、加熱溶融させることでも容易に脱落させることができる。このようにして得られたカーボンナノチューブ構造体の電子顕微鏡拡大写真を図18に示す。図18において、白く蜂の巣状に存在するのが、カーボンナノチューブであり、構造化されてカーボンナノチューブ構造体が形成されていることがわかる。
【0121】このように、前記複数の物体を除去した(消失させた)カーボンナノチューブ構造体は、それのみでも強固な構造体であり、そのままカーボンナノチューブの電気特性を利用した電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化し、カーボンナノチューブ相互の間隙および/またはその近傍に配置しておけば、配置される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。さらに、前記他の物体の少なくとも一部として、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有するものを用い、カーボンナノチューブの構造体を、全体として1つの分子構造に似た状態とすることで、既述の機能性が全体として高い次元で付与されるほか、前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体としてカーボンナノチューブ構造体を強固に固定化することができる。つまり、前記他の物体がカーボンナノチューブ相互間の接着剤の如き働きを担い、カーボンナノチューブのみからなるカーボンナノチューブ構造体の強靭性をより一層高めることができる。
【0122】前記複数の物体として複数の微粒子を用いて得られた本例のカーボンナノチューブ構造体は、中空の構造でありながら極めて強固であるため、カーボンナノチューブの電気特性を利用した電子素子として用いることができるほか、その導電性、耐腐食性を利用して電極として用いることもできるし、電子的応用を離れて、その強靭性を利用して各種構造物(シャーシー、フレーム、その他機械的な部品等)として用いることもできる。この場合、中空の構造ゆえ密度が小さく、したがって極めて軽量かつ強靭な構造物とすることができる。さらに、中空部分に他の物質を流し込み、その流し込む物質によりカーボンナノチューブ構造体の特性をさらに制御することもできる。
【0123】■ 液体を蒸発させ(消失させ)、複数の物体を溶解させ再度固化させることによりマトリックスとし、該マトリックスにカーボンナノチューブが構造化して配置され、カーボンナノチューブの構造体が骨組みとなったマトリックス体の状態:前記複数の物体として、特に熱可塑性樹脂等のポリマー製の微小体を用いた場合、加熱等することによって前記微小体を溶解し、再度固化することで、マトリックスとし、該マトリックスにカーボンナノチューブが構造化して配置され、カーボンナノチューブの構造体が骨組みとなったマトリックス体となる。上記のように、カーボンナノチューブ構造体はそれのみでも極めて強固であり、また、樹脂の充填剤として一般にフィラーを分散させることで当該樹脂の塊の強靭性を高めることが行われており、以上のようなカーボンナノチューブの構造体が骨組みとなったマトリックス体は、極めて高い強靭性を発揮する。また、溶解し再度固化する際に、所望の形状とすることもでき、例えば、フィルム状にすることができる。このとき、構造化されたカーボンナノチューブはその構造を保持させることができ、カーボンナノチューブ自体の力学構造を強化したり、追加積層などの複合デバイス設計など、広範な応用が可能になる。
【0124】本例においては、カーボンナノチューブの電気特性を利用した電子素子として用いることができるほか、上記■の例と同様、その導電性、耐腐食性を利用して電極として用いることもできるし、電子的応用を離れて、その極めて高い強靭性を利用して各種構造物(シャーシー、フレーム、その他機械的な部品等)として用いることもできる。
【0125】<カーボンナノチューブ構造体の製造方法>本発明のカーボンナノチューブ構造体は、複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、前記カーボンナノチューブを構造化して配置して、製造することができる。すなわち、少なくとも1)複数の物体相互の間、および/または、物体の複数の部位の間に微小な間隙を形成し、2)当該間隙に液架橋部を形成し、3)該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させること、で本発明のカーボンナノチューブ構造体が製造される。
【0126】この3つの製造工程からなる基本工程1)〜3)に加えて、4)前記他の物体を添加する工程や、5)液架橋部の液体をさらに蒸発させる工程や、6)前記複数の物体を消失させる工程を適宜付加することで、所望の構造に制御されたカーボンナノチューブ構造体を製造することができる。
【0127】また、上記基本工程1)〜3)は、必ずしも別個の工程として実施される必要は無く、その態様により、1)と2)、2)と3)、あるいは1)〜3)が組み合わされて、同時に実施されてもよい。以下に、本発明のカーボンナノチューブ構造体の具体的な製造の手順の例を挙げて説明する。
【0128】(製造手順の例1)複数の物体を用意し、これを所望の位置に配置して微小な間隙を形成する。1の物体を任意の手段により成形して、微小な間隙を形成してもよい[以上、工程1)]。一方、液体にカーボンナノチューブを分散させた分散液を調製する。また、前記他の物体をも構造化させたい場合には、当該他の物体もこの分散液に添加する[工程4)]。このとき、カーボンナノチューブや前記他の物体の凝集が起こらないよう、回転式攪拌装置や超音波分散器等を用いることで、均一に攪拌しておくことが望ましい。
【0129】前記複数の物体により形成された微小な間隙に、上記得られた分散液を供給する。供給の方法としては、前記複数の物体により形成された微小な間隙に前記分散液を直接滴下する方法、および、前記分散液の中に、微小な間隙が形成された前記複数の物体全体を浸漬させる方法等が挙げられる。
【0130】供給された分散液から液体をある程度蒸発させることで、前記複数の物体により形成された微小な間隙に、前記分散液の濃縮液からなる液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる[以上、工程2)および工程3)]。
【0131】(製造手順の例2)複数の物体として複数の微小体を用意し、これとカーボンナノチューブとを適当な液体に分散させて、分散液を調製する。また、前記他の物体をも構造化させたい場合には、当該他の物体もこの分散液に添加する[工程4)]。
【0132】このとき、カーボンナノチューブや前記他の物体の凝集が起こらないよう、均一に攪拌しておくことが望ましいが、あまり強い攪拌を分散液に与えると、カーボンナノチューブが前記複数の微小体に付着してしまう現象が見られる。特に球形の微小体を用いると、カーボンナノチューブが前記複数の微小体に巻き付くように付着してしまう場合がある。
【0133】したがって、前記複数の微小体およびカーボンナノチューブの双方の分散性を良好に保つため、予め別の液体にそれぞれを分散させ、回転式攪拌装置や超音波分散器等を用いることで、双方とも均一に攪拌しておき、得られた2つの分散液を混合することで、前記複数の微小体とカーボンナノチューブとが分散された分散液を調製することが望ましい。このとき、前記他の物体を添加する場合には、前記他の物体も予め別の液体に分散させておき、これを前記2つの分散液の混合時に一緒に混合してもよいし、カーボンナノチューブあるいは前記複数の微小体の分散液調製時に、これらのいずれか一方もしくは双方に添加しておいてもよいし、前記複数の微小体とカーボンナノチューブとが分散された分散液が調製された後に、最後に添加してもよい。
【0134】上記得られた分散液を所定の位置に配する。具体的には、上記分散液を、所定の位置に塗布したり、あるいは、所定の容器に収容する。塗布する場合の塗布方法としては、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、浸漬塗布法、噴霧法、滴下法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法等が挙げられる。
【0135】この状態で液体をある程度蒸発させることで、上記分散液中の前記複数の微小体が沈殿し、微小な間隙が形成され、該微小な間隙に、前記分散液の濃縮液からなる液架橋部が形成され、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブが会合する[以上、工程1)〜工程3)]。
【0136】前記複数の微小体の比重がカーボンナノチューブに比べて大きい場合には、液体の蒸発に先立ち、予め静置しておくことも有効である。静置しておくことで、比重の大きい前記複数の微小体が先に沈殿し、分散液底部で前記複数の微小体相互の間隙が形成される[以上、工程1)]。その後、前記分散液から液体をある程度蒸発させることで、前記複数の微小体により形成された微小な間隙に、前記分散液の濃縮液からなる液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる[以上、工程2)および工程3)]。
【0137】上記いずれの製造手順の例においても、カーボンナノチューブ(および必要に応じて前記他の物体)を分散させた分散液においては、十分に分散させておくことが望まれ、超音波などの物理的力や分散液のpH、界面活性剤等の分散剤の添加、温度などは、できる限り分散性が高められるように調整される。具体的には、超音波はカーボンナノチューブ同士の絡み合いを解し、アモルファスカーボンなどの不純物をカーボンナノチューブから引き剥がす条件に設定することが好ましく、超音波出力は高く設定するとよい。しかしながら、超音波は同時に分散液の温度を上昇させてしまうため、過度の出力は、分散液温度を上昇させてしまい、分散液中の分散剤を変質させ、カーボンナノチューブの凝集体を増加させてしまうことがあるので、注意が必要である。
【0138】また界面活性剤などの分散剤は、溶解物を適度に溶解し得る濃度であるCMC(臨界ミセル濃度)、CAC(臨界凝集濃度)などを指標に設定することができる。ただし、市販されているカーボンナノチューブは、長さや太さが多種多様であるため、前記濃度から大きく外れた条件が好ましい結果となることがあり、複数条件での検査により最適条件を見出す必要がある。
【0139】分散液のpHやイオン濃度に関しては、分散液中の電気的な引力−斥力のバランスを支配する因子であり、その値や濃度に対して界面活性剤の分散液中での安定性が大きく左右され、カーボンナノチューブの分散性に強い影響を与える。さらに、強酸溶液などで処理を施したカーボンナノチューブはそれ自体が溶解しやすい状態になっているため、分散剤を必ずしも使用する必要はないが、官能基が付加していることから、pHやイオン濃度に強く影響を受けることは明白であり、より正確な最適条件を見出す必要がある。
【0140】分散性を向上させるために、粘度を高める手法も選択できるが、不純物の多く含まれているカーボンナノチューブでは、不純物も同様に分散されてしまい、それを除去し難くなってしまうことから、なるべく粘度は低く抑えておくことが好ましい。逆に、あらかじめ精製しておけば、粘度を高めて分散状態を安定化させることができる。
【0141】また、前記複数の微小体(および必要に応じて前記他の物体)を分散させた分散液においても、上記カーボンナノチューブを分散させた分散液ほどではないものの、十分に分散させておくことが望まれ、超音波などの物理的力や溶液のpH、界面活性剤等の分散剤の添加、温度などは、適度な分散性が得られるように調整される。具体的には、コロイドと呼ばれる分散状態にしておくことが好ましい条件であり、カーボンナノチューブの分散液との混合によっても分散が壊れないような分散剤を選定するとよい。分散性を向上させるために、粘度を高める手法も選択できるが、カーボンナノチューブの分散液との混合において、速やかに混ざり合うようにするため、なるべく粘度は低く抑えておくことが好ましい。
【0142】一方、既述の如く前記複数の微小体およびカーボンナノチューブ(および必要に応じて前記他の物体)においては、カーボンナノチューブと前記複数の微小体との付着の問題から、あまり強い攪拌を与えないようにすることが望まれる。具体的には、常温で保持してマグネチックスターラーや攪拌羽で攪拌するのが好ましく、超音波分散器は使用しないほうがよい。超音波分散器を使用したり、分散液の温度を上昇させてしまうと、カーボンナノチューブは微小体に付着しやすくなり、複数の微小体にカーボンナノチューブが絡みつく凝集を引き起こしてしまう場合がある。
【0143】前記他の物体をも構造化させたい場合には、カーボンナノチューブ(および必要に応じて前記他の物体)を分散させた分散液において、超音波ホモジナイザー等の超音波分散器で、予めカーボンナノチューブの束を解いて、液体中に分散しておくことが望ましい。予めカーボンナノチューブの束を解いておくことで、液架橋部においてカーボンナノチューブが会合して束を再形成するときに、前記他の物質をカーボンナノチューブ相互の間隙に取り込ませることができる。このとき、分子が結晶化するときのように、前記他の物質を排除するような作用が生じることも予想されるが、液架橋部の液体を適度に(より具体的には、速く)蒸発させることで、液体を除去すれば、前記他の物質はカーボンナノチューブ相互の間隙に挿入された状態で残すことができる。そのため、液架橋部の液体をより速く蒸発することを企図して、液架橋部を加熱することが望ましく、当該加熱温度としては、液体として水溶液を使用した場合、2〜95℃の範囲が好ましく、5〜80℃の範囲がより好ましい。
【0144】液架橋部の液体の蒸発速度を補うために、基板側に微細な穴を開けておいて、前記液体を急速に減らすことも可能である。この際、市販されているフィルターを使用することもでき、あるいは、電子線リソグラフィーやレーザーリソグラフィー、あるいは電気化学エッチングなどにより細孔を形成することもできる。また同様の加工法により、溝を作製しておき、溝を伝って前記液体が排出されるようにすることも可能であり、このことによって、液架橋部の液体を急速に除去することができる。
【0145】<本発明のカーボンナノチューブ構造体の用途>以上のようにして得られた本発明のカーボンナノチューブ構造体は、極めて広範な技術分野への応用が期待される。具体的な用途について、以下に列記する。勿論、本発明のカーボンナノチューブ構造体の具体的な構造により特に適した用途が考えられる。
【0146】1)エレクトロニクス分野既述の如く、電極、導線、電気配線、電子素子として利用することができる。また、よく知られているように、カーボンナノチューブは、一般に非常に高い電気伝導性を有しており、分子エレクトロニクス用に設計された分子を前記他の物体として、カーボンナノチューブ相互の間隙に挿入することで、分子スイッチ、分子メモリ、分子プロセッサーなどを実現できるようになる。本発明のカーボンナノチューブ構造体により実現されるこれらデバイスは、従来法によるシリコンデバイスに比べ、基板に固定化された配線でなく、デバイス中の配線としてのカーボンナノチューブが柔らかく、これを自由に近づけたり離したりできること、リソグラフィの分解能よりも細い径のカーボンナノチューブ配線であること、化学結合を用いて配線ができること、など多くの優れた利点を有する。これらの利点により、例えば5nm以下ほどの小さな分子サイズに対して、直接的にアクセスできる。そのため、本発明のカーボンナノチューブ構造体を用いれば、大規模の電子集積回路を、低コストで、簡単に、そして高密度に作製できるようになる。
【0147】2)各種構造物既述の如く、本発明のカーボンナノチューブ構造体は、、その強靭性を利用して各種構造物(シャーシー、フレーム、その他機械的な部品等)として用いることもできる。特に、前記複数の物体として複数の微粒子を用い、かつ、該複数の微粒子を除去した、中空部分を有するカーボンナノチューブ構造体は、軽量かつ強靭であることから、軽量性および強靭性が求められる各種分野における構造物に好適に応用することができる。
【0148】一方、一般的に樹脂にフィラーを分散させるだけでも高い強靭性が得られるとされているが、マトリックス(樹脂)中に、前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなるカーボンナノチューブ構造体は、フィラーに相当するカーボンナノチューブがマトリックス中で強固な構造体を形成しており、全体として極めて高い強靭性を発揮する。そのため、従来金属、特にチタン等の軽量かつ高強度の貴金属が用いられていた構造物についても、その代用材料として好ましく適用することができる。
【0149】
【実施例】<実施例1>後述する(工程1)〜(工程3)の各工程を実施することにより、下記組成からなる分散液を調製し、かつ該分散液からカーボンナノチューブ構造体を製造した。
a)単層カーボンナノチューブ(平均長さ:約10μm、平均直径:約2.5nm)・・・0.01gb)界面活性剤(和光純薬社製、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))0.001質量%の水溶液・・・0.5gc)ラテックス粒子(ポリスチレン、平均粒径0.3μm、球形)3質量%の水溶液(コロイド溶液)・・・1.0g
【0150】(工程1)上記b)の水溶液2.0g中にa)を混入させ、出力3Wの超音波にてよく分散させカーボンナノチューブの分散液を得た。
【0151】(工程2)(工程1)で得られたカーボンナノチューブの分散液と、C)のラテックス粒子の水溶液(コロイド溶液)1.0gとを混合攪拌して、カーボンナノチューブとラテックス粒子とが分散された分散液を得た。得られた分散液の表面張力は、75mN/mであった。
【0152】(工程3)スピンコーター(回転成膜装置)を用いて、雲母基板の片面に(工程2)で得られた分散液を成膜した。このとき、スピンコーターの回転数を適切に調整することにより、雲母基板上の余分な分散液を除去することができる。そして、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0153】<実施例2>後述する(工程1)〜(工程3)の各工程を実施することにより、下記組成からなる分散液を調製し、かつ該分散液からカーボンナノチューブ構造体を製造した。
a)単層カーボンナノチューブ(平均長さ:約10μm、平均直径:約2.5nm)・・・0.01gb)界面活性剤(和光純薬社製、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))0.001質量%の水溶液・・・2.0gc)ラテックス粒子(ポリスチレン、平均粒径0.3μm、球形)3質量%の水溶液(コロイド溶液)・・・1.0g
【0154】(工程1)上記b)の水溶液0.5g中にa)を混入させ、出力3Wの超音波にてよく分散させカーボンナノチューブの分散液を得た。
【0155】(工程2)(工程1)で得られたカーボンナノチューブの分散液と、C)のラテックス粒子の水溶液(コロイド溶液)1.0gとを混合攪拌して、カーボンナノチューブとラテックス粒子とが分散された分散液を得た。得られた分散液の表面張力は、80mN/mであった。
【0156】(工程3)スピンコーター(回転成膜装置)を用いて、雲母基板の片面に(工程2)で得られた分散液を成膜した。このとき、スピンコーターの回転数を適切に調整することにより、雲母基板上の余分な分散液を除去することができる。そして、実施例1と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。得られたカーボンナノチューブ構造体は、実施例1のよりも太くなっていた。
【0157】<実施例3>後述する(工程1)〜(工程3)の各工程を実施することにより、下記組成からなる分散液を調製し、かつ該分散液からカーボンナノチューブ構造体を製造した。
a)単層カーボンナノチューブ(平均長さ:約10μm、平均直径:約2.5nm)・・・0.01gb)界面活性剤(和光純薬社製、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))0.001質量%の水溶液・・・2.0gc)ラテックス粒子(ポリスチレン、平均粒径0.3μm、球形)3質量%の水溶液(コロイド溶液)・・・1.0g
【0158】(工程1)上記b)の水溶液2.0g中にa)を混入させ、出力3Wの超音波にてよく分散させカーボンナノチューブの分散液を得た。
【0159】(工程2)(工程1)で得られたカーボンナノチューブの分散液と、C)のラテックス粒子の水溶液(コロイド溶液)1.0gとを混合攪拌して、カーボンナノチューブとラテックス粒子とが分散された分散液を得た。得られた分散液の表面張力は、Pa・sであった。
【0160】(工程3)(工程2)で得られた分散液を用いて、雲母基板の片面にディップコーティング法(引き上げ法)により成膜した。実施例1と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0161】<実施例4>実施例3の<工程3>において、ディップコーティング法(引き上げ法)に代えて、スプレーガンを用いた噴霧法により成膜を行ったことを除き、実施例3と同様にして(工程2)で得られた分散液を成膜した。実施例3と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0162】<実施例5>実施例3の<工程3>において、ディップコーティング法(引き上げ法)に代えて、雲母基板上に(工程2)で得られた混合溶液を滴下して、自然乾燥により成膜を行ったことを除き、実施例3と同様にして成膜した。実施例3と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0163】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、カーボンナノチューブのハンドリング性を向上させ、カーボンナノチューブを含む電子デバイスや機能材料、およびその他構造材料などの、広範なカーボンナノチューブの応用を実現し得るカーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 複数の物体として球形の粒子を用い、該球形の粒子と液体とにより液架橋が生じた状態を拡大模式断面図である。
【図2】 本発明の作用を時系列的に説明するための拡大模式断面図であり、(a)は基板の表面に粒子が固定され、カーボンナノチューブが分散された液体で、前記粒子が満たされた状態を表し、(b)はそこから液体の液面が粒子の高さになるまで、液体を蒸発させた状態を表し、(c)はさらに液体を蒸発させて、各粒子相互の間隙に液架橋部が形成された状態を表し、(d)はそこからさらに液体を蒸発させて、カーボンナノチューブが、液架橋部において会合し、構造化されて配置された状態を表す。
【図3】 図2(d)の状態における平面図であり、カーボンナノチューブが、液架橋部において会合し、構造化されて配置された状態を表す拡大模式平面図である。
【図4】 本発明のカーボンナノチューブ構造体の一例を示す電子顕微鏡拡大写真である。
【図5】 本発明のカーボンナノチューブ構造体の他の一例を示す電子顕微鏡拡大写真である。
【図6】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2個の球体間に形成される液架橋状態の一例を示す模式図である。
【図7】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、球体と基板との間に形成される液架橋状態の一例を示す模式図である。
【図8】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために形成される液架橋状態の一例を示す模式平面図であり、(a)は液架橋部を形成する液体の量が少ない場合、(b)は液架橋部を形成する液体の量が多い場合を、それぞれ表す。
【図9】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために形成される液架橋状態の他の一例を示す模式平面図であり、(a)は液架橋部を形成する液体の量が少ない場合、(b)は液架橋部を形成する液体の量が多い場合を、それぞれ表す。
【図10】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために形成される液架橋状態のさらに他の一例を示す模式平面図であり、(a)は液架橋部を形成する液体の量が少ない場合、(b)は液架橋部を形成する液体の量が多い場合を、それぞれ表す。
【図11】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、板状の部材を用いて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図であり、(a)は板状部材に、他の板状部材が1つ垂直に当接して固定された状態を表し、(b)は(a)と同様の形状のものを1の部材で成形した状態を表し、(c)は板状部材に、他の板状部材が5つ垂直に当接して固定された状態を表し、(d)は(c)と同様の形状のものを1の部材で成形した状態を表し、(e)は(c)と同様の形状の部材を用い、天地逆転させて用いた状態を表す。
【図12】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2個の長尺状の角柱体を用いて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図である。
【図13】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、一対の電極端子をつなぐように基板上に配列されて載置された複数の球体により形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図であり、(a)は一対の電極端子が基板の対向した位置にあり、これを一直線で結ぶように球体が配置された状態を表し、(b)は一対の電極端子が基板の略対角線の位置にあり、これを曲線で結ぶように球体が配置されている状態を表す。
【図14】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2本の針状体を用いて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図である。
【図15】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2本の針状体を用い、かつこれを基板に当接させて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図である。
【図16】 (a)は図15における針状体の先端の距離を近づけた状態を示す模式図であり、(b)は、このとき基板の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体の平面図である。
【図17】 (a)は図15における針状体の先端の距離を離した状態を示す模式図であり、(b)は、このとき基板の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体の平面図である。
【図18】 本発明のカーボンナノチューブ構造体のさらに他の一例を示す電子顕微鏡拡大写真である。
【符号の説明】
2 液体
4 粒子(複数の物体)
6 基板
8 カーボンナノチューブ
10、14 球体(複数の物体)
12 基板(複数の物体)
16 三角柱体(複数の物体)
18 立方体(複数の物体)
20a 、20b、20c、20d 板状部材(物体)
22 角柱体(複数の物体)
24a、24b 電極端子
26 針状体(複数の物体)
28 カーボンナノチューブ構造体
a1〜a21 液架橋部
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーボンナノチューブを含むデバイスや機能材料、およびその他構造材料などに利用可能なカーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法に関する。本発明は、広範なカーボンナノチューブの応用に展開可能なものである。
【0002】
【従来の技術】繊維状のカーボンを一般的にカーボンファイバーと呼んでいるが、直径数μm以上の太さの構造材料として用いられるカーボンファイバーは、従来から何種類もの製法が研究されて来ている。その中で現在ではPAN(ポリアクリロニトリル)系やピッチ系の原料から作製する製法が主流を占めている。
【0003】この製法の概略は、PAN繊維や等方性ピッチ、メソフェーズピッチから紡糸した原料を不融化、耐炎化し800〜1400℃で炭素化し、そして1500〜3000℃で高温処理する方法である。こうして得られたカーボンファイバーは強度や弾性率等の機械的特性に優れ、かつ軽量なのでスポーツ用品や断熱材、航空宇宙関連や自動車関連の構造材等に複合材料としても利用されている。
【0004】これとは別に、近年発見されたカーボンナノチューブは直径1μm以下の太さのチューブ状材料であり、理想的なものとしては炭素6角網目の面がチューブの軸に平行になって管を形成し、さらにこの管が多重になることもある。このカーボンナノチューブは炭素でできた6角網目の繋り方や、チューブの太さにより金属的あるいは半導体的なることが理論的に予想され、将来の機能材料として期待されている。
【0005】カーボンナノチューブの合成には、アーク放電法を利用するのが一般的になっているが、この他、レーザー蒸発法や熱分解法、プラズマ利用等が近年研究されてきている。ここで近年開発されたカーボンナノチューブについて概説する。
【0006】(カーボンナノチューブ)直径がカーボンファイバーよりも細い1μm以下の材料は、通称カーボンナノチューブと呼ばれ、カーボンファイバーとは区別されているが、特に明確な境界はない。狭義には、炭素の6角網目の面が軸とほぼ平行である材料をカーボンナノチユーブと呼び、カーボンナノチューブの周囲にアモルファス的なカーボンが存在する場合もカーボンナノチューブに含めている(なお、本発明においてカーボンナノチューブとは、この狭義の解釈が適用される。)。
【0007】一般的に狭義のカーボンナノチューブは、さらに分類され、6角網目のチューブが1枚の構造のものはシングルウォールナノチューブ(以下、「SWNT」と略称する)と呼ばれ、一方、多層の6角網目のチューブから構成されているものはマルチウォールナノチューブ(以下、「MWNT」と略称する)と呼ばれている。どのような構造のカーボンナノチューブが得られるかは、合成方法や条件によってある程度決定されるが、同一構造のカーボンナノチューブのみを生成することは未だにできていない。
【0008】カーボンファイバーは径が大きく、軸に平行で円筒状の網目構造が発達しない。触媒を利用した気相熱分解法では、チューブの中心付近に軸に平行でかつチューブ状の網目構造があるが、その周囲に乱れた構造の炭素が多く付着している場合が多い。
【0009】(カーボンナノチューブの応用)次にカーボンナノチューブの応用についての従来技術を説明する。現時点では、カーボンナノチューブの応用製品は出ていないが、応用化へ向けた研究活動は活発である。その中で代表的な例を以下に簡単に説明する。
【0010】(1)電子源カーボンナノチューブは先端が先鋭で、且つ電気伝導性があるため電子源としての研究例が多い。W.A.deHeerらは、“Science”(Vol.270,1995,p1179)で、アーク放電法で得られたカーボンナノチューブを精製しフイルターを通して基板上に立て電子源としている。この報告では電子源はカーボンナノチューブの集団となっているが、1cm2の面積から700Vの電圧の印加により100mA以上の放出電流が安定して得られたと示されている。
【0011】また、A.G.Rinzlerらは、“Science”(Vol.269,1995,p1550)にて、アーク放電法で得られたカーボンナノチューブの1本を電極に取り付けて特性を評価したところ、約75Vの電圧印加により先端の閉じたカーボンナノチューブからは約1nA、先端の開いたカーボンナノチューブからは約0.5μAの放出電流が得られたと示されている。
【0012】(2)STM、AFMH.Daiらは、“Nature”(384,1996,p.147)においてカーボンナノチューブのSTM、AFMへの応用について報告している。ここで用いられているカーボンナノチューブは、アーク放電法で作製されたもので、先端部分は直径約5nmのSWNTになっている。チップ(tip)が細く、しなやかであるため、試料の隙間部分の底でも観察でき、先端のチップクラッシュ(tip crash)のない理想的なチップ(tip)が得られるといわれている。
【0013】(3)水素貯蔵材料A.C.Dillonらは、SWNTを用いることにより、ピッチ系の原料から生成したカーボンと比較して数倍の水素分子が貯蔵できることを“Nature”(Vol.386,1997,p377〜379)に報告している。まだ応用への検討が始まったばかりではあるが、将来的には水素自動車等の水素貯蔵材料として期待されている。
【0014】上記のカーボンナノチューブの製法として、現在は主に3種類用いられている。具体的には、カーボンファイバーを製造するための気相成長法と類似の方法(触媒を用いる熱分解法)、アーク放電法、およびレーザー蒸発法である。またこの上記3種類以外にもプラズマ合成法や固相反応法が知られている。
【0015】ここでは代表的な3種類について以下に簡単に説明する。
(1)触媒を用いる熱分解法この方法は、カーボンファイバーを製造するための気相成長法とほぼ同じである。このような製法の詳細は、C.E.SNYDERらによるInternational PatentのWO89/07163(International Publication Number)に記載されている。反応容器の中にエチレンやプロパンを水素と共に導入し、同時に金属超微粒子を導入するが、原料ガスはこれ以外にもメタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素やエチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン等の不飽和炭化水素、アセトン、メタノール、一酸化炭素等の酸素を含む原料でもかまわないと示されている。
【0016】また、原料ガスと水素の比は1:20〜20:1が良好であり、触媒はFeや、FeとMo、Cr、Ce、Mnの混合物が推奨されており、それをヒュームド(fumed)アルミナ上に付着させておく方法も提唱されている。反応容器は550〜850℃の範囲で、ガスの流量は1インチ径当り水素が100sccm、炭素を含む原料ガスを200sccm程度に調節することが好ましく、微粒子を導入して30分〜1時間程度でカーボンナノチューブが成長する。
【0017】こうして得られるカーボンナノチューブの形状は、直径が3.5〜75nm程度であり、長さは直径の5〜1000倍に達する。炭素の網目構造はチューブの軸に平行になり、チューブ外側の熱分解カーボンの付着は少ない。
【0018】また生成効率はよくないものの、Moを触媒核にし、一酸化炭素ガスを原料ガスにして1200℃で反応させるとSWNTが生成されることが、H.Dai(“Chemical Physics Letters”260,1996,p.471〜475)らによって報告されている。
【0019】(2)アーク放電法アーク放電法は、Iijimaにより最初に見出され、詳細は、Nature(Vol.354,1991,p56〜58)に記載されている。アーク放電法とは、アルゴン約13300Pa(100Torr)の雰囲気中で炭素棒電極を用いて直流アーク放電を行うという単純な方法である。カーボンナノチューブは負電極の表面の一部分に5〜20nmの炭素微粒子と共に成長する。このカーボンナノチューブは直径4〜30nmで長さ約1〜50μmのチューブ状の炭素の網目が重なった層状構造であり、その炭素の網目構造は、軸に平行に螺旋状に形成されている。
【0020】螺旋のピッチは、チューブごと、またチューブ内の層ごとに異なっており、多層チューブの場合の層間距離は0.34nmとグラファイトの層間距離にほぼ一致する。チューブの先端は、やはりカーボンのネットワークで閉じられている。
【0021】またT.W.Ebbesenらはアーク放電法でカーボンナノチューブを大量に生成する条件を“Nature”(Vol.358,1992,p220〜222)に記載している。具体的な条件としては、陰極に直径9mm、陽極に直径6mmの炭素棒を用い、チャンバー中で1mm離して対向するように設置し、ヘリウム約66500Pa(500Torr)の雰囲気中で約18V、100Aのアーク放電を発生させる。
【0022】66500Pa(500Torr)よりも圧力が低いとカーボンナノチューブの割合は少なく、66500Pa(500Torr)より圧力が高くても全体の生成量は減少する。最適条件の66500Pa(500Torr)では生成物中のカーボンナノチューブの割合は75%に達する。投入電力を変化させたり、雰囲気をアルゴンにしてもカーボンナノチューブの収集率は低下する。なお、カーボンナノチューブは、生成したカーボンロッドの中心付近に多く存在する。
【0023】(3)レーザー蒸発法レーザー蒸発法はT.Guoらにより、“Chemical PhysicsLetters”(243,1995,p.49〜54)に報告されて、さらにA.Thessらが、“Science”(vol.273,1996,p.483〜487)にレーザー蒸発法によるロープ状SWNTの生成を報告している。この方法の概略は以下のとおりである。
【0024】まず、石英管中にCoやNiを分散させたカーボンロッドを設置し、石英管中にArを66500Pa(500Torr)満たした後、全体を1200℃程度に加熱する。そして石英管の上流側の端からNdYAGレーザーを集光してカーボンロッドを加熱蒸発させる。そうすると石英管の下流側にカーボンナノチューブが堆積する。この方法はSWNTを選択的に作製する方法としては有望であり、また、SWNTが集まってローブ状になり易い等の特徴がある。
【0025】上記、従来技術のカーボンナノチューブの構成や製法では、得られるカーボンナノチューブは太さも方向もかなりランダムなものであり、また成長直後ではカーボンナノチューブに電極は接合されていない。すなわちカーボンナノチューブは利用に際して、合成後に回収して精製し、さらに利用する形態に合わせて特定の形状に形成しなければならない。
【0026】例えば、カーボンナノチューブを電気回路に利用しようとする場合には、カーボンナノチューブが非常に微細であるためにハンドリングが困難であり、集積回路(IC)のような高密度配線を作製する手法は未だ提案されておらず、Nature vol.397、1999、p.673〜675に示されているように、微細電極をあらかじめ作製し、その位置にカーボンナノチューブが配置してできる単一構造の微細素子を評価するのみであった。また、カーボンナノチューブは非常に高価であり、ロスの無いように効率的に電子回路内部に組み込ませたい。これらハンドリングの困難さ、および高価であることの問題は、具体的なデバイス化に大きな障害となっている。
【0027】その1つの打開策として、従来の電子回路デバイスとは異なる生物の脳に類似させた電気信号処理を考えることができる。カーボンナノチューブはこれまでの電気配線とは異なり、非常に細く、指向性も高いため、脳内のニューロンのような多重配線を実現し、従来の計算処理とは異なる非ノイマン型の処理機構を具現化できる可能性がある。しかしながら、これまでにカーボンナノチューブの組織構造体による信号伝達、信号処理に関する報告は無い。
【0028】また、電子源として利用しようとする場合、A.G.Rinzlerらは、“Science”(Vol.269,1995,p.1550〜1553)に示されているようにカーボンファイバーの1本を取り出し、片方を電極に接着する必要があるとしている。また、Walt A.de Heerらは、“Science”(Vol.270,1995,p.1179〜1180)および“Science”(Vol.268,1995,p.845〜847)に示されるように、アーク放電で作製したカーボンナノチューブを精製した後、セラミックフィルターを用いて基板上にカーボンナノチューブを立たせる工程が必要であるとしている。この場合には積極的に電極とカーボンナノチューブを接合してはいない。また、利用するカーボンナノチューブは相互に複雑に絡み合い易く、個々のカーボンナノチューブの特性を十分発現できるデバイスではなかった。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な問題に鑑みなされたものであり、カーボンナノチューブのハンドリング性を向上させ、カーボンナノチューブを含む電子デバイスや機能材料、およびその他構造材料などの、広範なカーボンナノチューブの応用を実現し得るカーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、<1> 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、前記カーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0031】<2> 前記複数の物体が、複数の微小体であることを特徴とする<1>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<3> 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いことを特徴とする<2>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0032】<4> 前記複数の微小体の球相当平均径が、10nm以上1000μm以下であることを特徴とする<2>または<3>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<5> 前記複数の微小体が、複数のポリマー製の微小体であることを特徴とする<2>〜<4>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0033】<6> 前記複数の微小体と、前記複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることを特徴とする<2>〜<5>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<7> 液架橋部の形成後、さらに前記液体を蒸発させることにより、前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させるとともに、前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることを特徴とする<6>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0034】<8> 前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることにより、前記複数の微小体が最密充填された状態となることを特徴とする<7>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<9> 前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することにより、前記液架橋部に会合させるカーボンナノチューブの量を制御することを特徴とする<6>〜<8>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0035】<10> 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させ、前記複数の微小体を溶解させ再度固化させることでマトリックスとし、該マトリックスに前記カーボンナノチューブが構造化して配置されることで、構造体として固定化することを特徴とする<6>〜<9>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<11> 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させることを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0036】<12> さらに、前記複数の物体を消失させることで、中空部分を有するように構造化して配置されたカーボンナノチューブ構造体を得ることを特徴とする<11>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<13> 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記物体の複数の部位における間隙の最短離間距離よりも長いことを特徴とする<1>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0037】<14> 前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる際に、さらに他の物体を存在させ、該他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とする<1>〜<13>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<15> 前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置する際に、前記他の物体の少なくとも一部を、カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることを特徴とする<14>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0038】<16> 前記他の物体の少なくとも一部が、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有することを特徴とする<15>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
<17> 前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体として固定化することを特徴とする<16>に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法である。
【0039】<18> 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に形成される液架橋部の形状に、会合された複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とするカーボンナノチューブ構造体である。
<19> マトリックス中に、前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とする<18>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
【0040】<20> 中空部分を有するように構造化して配置されてなることを特徴とする<18>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
<21> さらに他の物体が、カーボンナノチューブ相互の間隙および/またはその近傍に配置されてなることを特徴とする<18>〜<20>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
【0041】<22> カーボンナノチューブ相互が前記他の物体により緊結され、構造体として固定化されてなることを特徴とする<21>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
<23> <1>〜<17>のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法により製造されてなることを特徴とする<18>に記載のカーボンナノチューブ構造体である。
【0042】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
<本発明の作用機構>まず、本発明の作用機構について説明する。本発明においては、複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成するが、この「液架橋」とは、一般に「メニスカス」とも呼ばれ、物体相互の間隙、あるいは、物体の複数の部位における間隙(以下、単に「物体相互の間隙等」と略す場合がある。)が十分に小さく、かつその間隙にある程度の液体が存在する場合に、その液体の凝集力と、該液体−前記物体間の付着力と、の関係により前記物体と接触する部分の液面が高く、その中間に位置する部分は低くなる、すなわち凹部を形成する現象のことを言い、物体相互の間隙等に形成される液面が液体の表面張力に由来する曲面形状を形成している。また、毛細管現象も上記現象と類似した現象であるが、本発明において、「液架橋」と言う場合には、物体相互の間隙等において、毛細管現象により形成された液体の状態を区別することなく含むものとする。
【0043】複数の物体を相互に近接させて間隙を形成し、ここに液体を存在させると、以上のような液架橋が起こる。図1に、複数の物体として球形の粒子を用い、該球形の粒子と液体とにより液架橋が生じた状態を拡大模式断面図で示す。図1に示すように、粒子4相互の間隙を十分に少なく取り、ここに液体2を存在させると、液架橋力により液面形状が凹化した液架橋部a1〜a4が、粒子4相互の間隙に形成される。この液架橋部a1〜a4に、複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、当該カーボンナノチューブを構造化して配置することが本発明の特徴である。
【0044】本発明の作用を、図面を用いてより具体的に説明する。図2は、本発明の作用を時系列的に説明するための拡大模式断面図である。カーボンナノチューブ8はチューブ状の細長い形状を有するものであるが、図2R>2において、カーボンナノチューブ8は、その断面が示されているため、円形に描かれている。
【0045】まず、図2(a)に示すような、基板6の表面に粒子4が固定され、カーボンナノチューブ8が分散された液体で、粒子4が満たされた状態を想定する。この状態から、液体2の液面が粒子4の高さになるまで、液体2を蒸発させた状態が図2(b)である。さらに液体2を蒸発させると、図2(c)に示すように、各粒子4相互の間隙に液架橋部a1〜a4が形成される。このとき、カーボンナノチューブ8は、該液架橋部a1〜a4に引き寄せられるような行動をとる。ここからさらに液体2を蒸発させると、図2(d)に示すように、カーボンナノチューブ8は、液架橋部a1〜a4において会合し、構造化されて配置された状態となる。
【0046】図2(d)の状態における平面図(図2(d)の矢印X方向から見た図)を図3に示す。複数のカーボンナノチューブ8が会合して構造化して配置されていることがわかる。このようにして得られたカーボンナノチューブ構造体の電子顕微鏡拡大写真を図4に示す。図4において、円形状の物体は、前記複数の物体としてのラテックス粒子であり、該粒子相互の間隙に白く直線状に存在するのが、カーボンナノチューブである。
【0047】以上のように、本発明によればカーボンナノチューブを液架橋を利用することにより、構造化して配置することができ、容易にカーボンナノチューブ構造体を製造することができる。すなわち、カーボンナノチューブを含む液体を液架橋部に存在させると、カーボンナノチューブは液架橋部に集まり、カーボンナノチューブの濃度が高まり、カーボンナノチューブを容易に、かつ適切に構造化することができる。また、液架橋部を形成するための複数の物体の種類、形状、大きさ、密度、両者の間隙の大きさ等を調整することにより、カーボンナノチューブ構造体の構造を適切に制御することができる。
【0048】なお、本発明において「複数の物体(または、複数の微小体)相互の間隙」、あるいは、「物体の複数の部位における間隙」という場合の間隙の程度としては、当該間隙が、液架橋が生じる程度の大きさであれば問題無い。例えば、液架橋に用いる液体の表面張力が大きい場合や、後述の如く当該液体中のカーボンナノチューブの濃度が高い場合には、当該間隙を大きくとることができる。また、「複数の物体(または、複数の微小体)」相互、あるいは、「物体の複数の部位」相互に、ある程度の間隙を有していることを必須とする意味ではなく、例えば前記相互間が完全に接触している箇所を有していても、その近辺に液架橋構造を形成し得る場合には、当該両者間の関係も「相互に間隙」を有しているものとして、本発明においては取り扱う。
【0049】また、本発明において「物体の複数の部位における間隙」という場合、物体の複数の部位において、液架橋を形成し得る所定の間隙を有しているもの全てが概念に含まれ、詳細には、物理的に「物体の複数の部位」に液架橋を形成し得る間隙を有する場合の他、物体の表面性状を調整し、該調整された表面の部位相互の間に液架橋を形成し得る場合の当該間隙も、「物体の複数の部位における間隙」の概念に含まれる。
【0050】表面性状の調整とは、すなわち、物体の表面に前記液体に対して親和性の低い部位(液体が水の場合には、疎水性の部位)と、親和性の高い部位(液体が水の場合には、親水性の部位)とが生じるように表面性状を調整することをいい、前記液体に対して親和性の低い部位を間に挟んで、複数の親和性の高い部位が存在し、かつ、該複数の親和性の高い部位相互の間隙が十分に小さければ、当該間隙には液架橋部が形成される。つまり、本発明においてカーボンナノチューブを会合させる液架橋部は、必ずしも物体あるいは部位相互の物理的な間隙に形成されるものではない。
【0051】表面性状の調整方法としては、例えば物体の表面に分子膜を形成することにより実現できる。分子膜の形成方法としては、具体的にはラングミュア−ブロジェット(LB)法や、シランカップリング剤などの表面改質剤を使用する方法等が挙げられる。
【0052】<カーボンナノチューブ構造体の構造制御>本発明のカーボンナノチューブ構造体の製造方法によれば、カーボンナノチューブ構造体の構造を適切に制御することができるが、その具体的手法について以下に述べる。
【0053】(液体中のカーボンナノチューブの濃度)上記のように前記複数の物体として、複数の微小体を用いた場合には、該複数の微小体と、複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることでカーボンナノチューブ構造体が得られる。また、前記複数の物体が微小体であるか否かにかかわらず、前記複数の物体を予め微小な間隙を有するように配列して固定しておき、ここに複数のカーボンナノチューブが分散された液体を存在させる(例えば、微小な間隙を有する前記複数の物体が固定された箇所を、複数のカーボンナノチューブが分散された液体で満たし、さらにある程度液体を蒸発させる。)ことでもカーボンナノチューブ構造体が得られる。上記いずれの場合においても、前記液体中のカーボンナノチューブは、液架橋部に均等に分配されるため、前記液体中のカーボンナノチューブの総量は、前記液架橋部において会合するカーボンナノチューブの数に相当する。つまり、前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することにより、前記液架橋部に会合させるカーボンナノチューブの量を制御することができる。
【0054】すなわち、前記液体中のカーボンナノチューブの量を少なく(濃度を低く)すれば、液架橋部に会合し構造化されるカーボンナノチューブの量も少なくなり、逆に前記液体中のカーボンナノチューブの量を多く(濃度を高く)すれば、液架橋部に会合し構造化されるカーボンナノチューブの量も多くなる。このように、本発明によれば、前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することで、得られるカーボンナノチューブ構造体の構造を適切に制御することができる。
【0055】図4に示したカーボンナノチューブ構造体は、これを製造するに供した液体中のカーボンナノチューブの量が比較的少ないため、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの量もかなり少なくなっている。これに対して、前記液体中のカーボンナノチューブの量を極めて多くして製造した場合のカーボンナノチューブ構造体の電子顕微鏡拡大写真を図5に示す。図5の電子顕微鏡拡大写真では、粒子相互の間隙に存在するカーボンナノチューブが極めて大量であり、写真上、チューブとして認識できないほどに会合して構造化されていることがわかる。
【0056】(複数の微小体の最密充填化)また、前記複数の物体として、複数の微小体を用いた場合には、該複数の微小体と、複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることでカーボンナノチューブ構造体が得られる。
【0057】前記液体の蒸発過程の中で、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列するが、さらに前記液体を蒸発させると、前記複数の微小体相互の間隙を近接化させる、言い換えれば、前記複数の微小体を再配列することができる。このとき前記複数の微小体を完全に自由な状態としておけば、前記近接化により前記複数の微小体は規則正しく配列され、最密充填された状態となる。前記複数の微小体が最密充填された状態となれば、前記複数の微小体相互の間隙も極めて近接した状態となり、規則正しく配列された状態となるため、カーボンナノチューブを極めて密接に、かつ規則正しく会合させることができる。
【0058】なお、本発明において「最密充填」と言うときは、微小体相互の関係として、最も近接した状態、乃至、極めて近接した状態に配列されることを意味し、必ずしも正確に最密充填されることを意味するものではない。また、当該「最密充填」を考えるに際しては、微小体相互の間隙に存在するカーボンナノチューブや、後述するその他の物体を考慮に入れて考えるものとする。これらの存在により、勿論一般に言われる「最密充填」の状態を取ることは通常困難であるが、微小体以外のこれらの存在を前提に、微小体相互が、最も乃至極めて近接した状態を、本発明における「最密充填」と定義づける。したがって、既に示した図3や、図4および図5の電子顕微鏡拡大写真における微小体の状態は、いずれも「最密充填」の概念に含まれる。
【0059】言い換えれば、本発明において、少なくとも複数の微小体および複数のカーボンナノチューブが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させ、さらに前記液体を蒸発させ前記複数の微小体を近接化させることとすれば、前記複数の微小体は「最密充填」した状態に再配列されることとなる。勿論、複数のカーボンナノチューブが分散された液体の中で、複数の微小体を沈殿状態としておき、該複数の微小体を可動状態としておくことでも、前記複数の微小体を近接化させ、「最密充填」した状態に再配列することができる。
【0060】(他の物体の添加)前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる際に、さらに他の物体を存在させ、該他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置することもできる。具体的には、前記複数のカーボンナノチューブ、および必要に応じて複数の微小体が分散された、液架橋を形成するための液体に、さらに他の物体を存在させておくと、前記複数のカーボンナノチューブの会合の際に、前記他の物体が取り込まれた状態で前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置される。
【0061】このとき特に、前記他の物体を、液架橋に供する前記複数の物体、あるいは、物体の複数の部位(以下、単に「複数の物体等」と略す場合がある。)に捕獲されないようにしておけば、前記他の物体は、前記カーボンナノチューブ相互の間隙および/または近傍に配置させて構造化することができる。また、前記他の物体を、液架橋に供する前記複数の物体等に捕獲されるようにしておけば、前記他の物体は、前記複数の物体等と前記カーボンナノチューブとの間に配置させて構造化することができる。
【0062】前記他の物体を、液架橋に供する前記複数の物体等に捕獲されるようにするか、捕獲されないようにするかは、例えば、
【0063】前記他の物体を前記カーボンナノチューブ相互の間隙および/または近傍に配置させて構造化することで、得られるカーボンナノチューブ構造体に種々の機能を付与することができる。ナノチューブを構造化した後に何らかの方法(例えば、
【0064】前記他の物体としては、例えば、原子、分子、イオン、粒子、ポリマー、生物体から抽出された分子や組織などが挙げられ、その性質としては、絶縁性、導電性、半導電性、吸光性、発光性、発色性、伸縮性、発電性、光電性などの特性を有するものが挙げられる。これら特性が、温度や湿度や雰囲気ガスによって変化するものであってもよい。
【0065】また、機能性分子や機能微粒子など、設計された機能を有するものでもよい。近年、分子や微粒子の多くには半導電性が多く見出されており、スイッチング機能やメモリー機能などを、カーボンナノチューブの接触部分あるいは凝集部分に付与することができる。
【0066】機能性分子としては、分子内部に電荷のかたよりのある分子が好ましく、電荷供与性のある分子種と、電荷受容性のある分子種とを組み合わせた分子、対称的な分子に電荷供与性あるいは電荷受容性のある分子種を組み合わせた分子、それらの繰り返しからなる巨大分子、あるいはそれら分子の集合により機能させられる分子集合体等が挙げられる。なお、上記電荷供与性および電荷受容性は、電子親和力やイオン化ポテンシャルの値で定義することができる。また、DNA、コラーゲンなどの生体分子、あるいは生体に模倣した人工分子を使用してもよく、生体に類似した機能を付加することが可能となる。
【0067】機能微粒子としては、金などの金属微粒子、ZnO2、TiO2などの金属酸化物微粒子、合金からなる金属間化合物微粒子、フラーレン等の炭素原子の組織体、フラーレンの誘導体、ポリマー粒子、溶液中のミセル構造体、コロイド粒子、脂質からなるベシクル、セラミックス、デンドリマー等が挙げられ、用途に応じてそれらの複合体あるいはそれらに処理を施したものを使用できる。
【0068】例えば、機能微粒子として金のナノ粒子を用いた場合、カーボンナノチューブによる導電性ネットワークの特性改善を図ることができる。機能性分子や機能微粒子としての粒子は、カーボンナノチューブと必要に応じて添加される微小体との分散液に添加しておけばよい。機能性分子や機能微粒子は、非常に小さいためハンドリングが困難であり、その正確な配置に関しては、化学官能基による修飾などにより、相互認識的に適切な配置を取り得るように設計することが好ましい。
【0069】前記他の物体としては、その少なくとも一部を、カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることが望ましい。カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることで、既述の如き機能性の付与が適切に為される。このとき、前記他の物体の少なくとも一部が、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有することも望ましい態様である。すなわち、前記他の物体によりカーボンナノチューブ相互を橋渡しすることで、カーボンナノチューブの構造体を、全体として1つの分子構造に似た状態とすることができ、既述の機能性が全体として高い次元で付与されるほか、前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体としてカーボンナノチューブ構造体を強固に固定化することができる。
【0070】架橋機能に関しては、カーボンナノチューブと接合して離れにくくなる特性の部位を2つ以上有する原子、分子、イオン、粒子、繊維であればよい。カーボンナノチューブ自体にも処理を施しておくとより好ましい。例えば、カーボンナノチューブを強酸溶液で処理すると、カルボニル基(COOH)を有するカーボンナノチューブとなるが、この場合には、水酸基(OH)やアミノ基(NH2)やチオール基(SH)などのカルボニル基と反応しやすい官能基を含む分子により、容易に架橋させることができる。
【0071】また、このカルボニル基など水溶性の官能基を含むカーボンナノチューブは、水溶液中でイオン化状態にでき、多価のイオンにより架橋構造を導入することができる。例えば、カルボン酸をイオン化させた状態(COO-)に対してはカルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、アルミニウムイオン(Al3+)などを利用することができる。
【0072】<複数の物体およびその配置による液架橋の具体例>以下に、いくつかの具体例を挙げて、液架橋の態様を説明する。図6は、上記複数の物体として2個の球体を用いた例を示す模式平面図である。2個の球体10の間隙に、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2からなる液架橋部a5が形成され、カーボンナノチューブは、液架橋部a5において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体10を除去すれば、カーボンナノチューブ構造体のみを入手することができる。得られたカーボンナノチューブ構造体は、その電気特性を利用した電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0073】図7は、上記複数の物体として、基板上に載置された球体を用いた例を示す模式断面図である。すなわち、当該例においては、球体10と基板12とが「複数の物体」となる。球体10は基板12上に載置されるが、図7に示すようにその接点の両側には微細な間隙が形成される。当該間隙に、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2からなる液架橋部a6が形成され、カーボンナノチューブは、液架橋部a6において会合し、構造化される。この場合、基板12の表面には、会合したカーボンナノチューブが、円形に構造化されて配置された状態となる(不図示)。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体10を除去すれば、円形に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、カーボンナノチューブの電気特性を利用した円形状の電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、球体10を除去した際の円形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0074】図8は、上記複数の物体として、基板上に載置された球体を4個用い、これが一直線状に並んだ例を示す模式平面図であり、図8(a)は、液架橋に供する液体2の量が少ない場合を、図8(b)は、該液体2の量がそれよりも多い場合を表す。
【0075】図8(a)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量がわずかであるため、球体14相互の間隙にわずかな液架橋部a7のみが形成され、各液架橋部a7において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、各液架橋部a7の液体2は基板12まで達しており、すなわち、球体14相互間の他、基板12との間隙にも液架橋部a7が形成されている。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体14を除去すれば、会合した3つのカーボンナノチューブ構造体を基板12表面に同時に形成することができ、カーボンナノチューブの電気特性を利用した3つの電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0076】一方、図8(b)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量が図8(a)の場合よりも多いため、球体14相互の間隙のみならず、球体14の周りにも液架橋部a8が形成される。すなわち、液架橋部a8は、基板12と球体14との臨界部に形成され、リングを4つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a8において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体14を除去すれば、4つの円形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した円形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、球体14を除去した際の円形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0077】図9は、上記複数の物体として、基板上に載置された三角柱体を5個用い、これが一直線状に並んだ例を示す模式平面図であり、図9(a)は、液架橋に供する液体2の量が少ない場合を、図9(b)は、該液体2の量がそれよりも多い場合を表す。
【0078】図9(a)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量がわずかであるため、三角柱体16相互の間隙にわずかな液架橋部a9のみが形成され、各液架橋部a9において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、各液架橋部a9の液体2は基板12まで達しており、すなわち、三角柱体16相互間の他、基板12との間隙にも液架橋部a9が形成されている。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により三角柱体16を除去すれば、直線状でかつ相互に角度を有する、会合した4つのカーボンナノチューブ構造体を基板12表面に同時に形成することができ、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した4つの電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0079】一方、図9(b)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量が図9(a)の場合よりも多いため、三角柱体16相互の間隙のみならず、三角柱体16の周りにも液架橋部a10が形成される。すなわち、液架橋部a10は、基板12と三角柱体16との臨界部に形成され、三角形を5つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a10において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により三角柱体16を除去すれば、5つの三角形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した三角形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、三角柱体16を除去した際の三角形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0080】図10は、上記複数の物体として、基板上に載置された立方体を4個用い、これが一直線状に並んだ例を示す模式平面図であり、図10(a)は、液架橋に供する液体2の量が少ない場合を、図10(b)は、該液体2の量がそれよりも多い場合を表す。
【0081】図10(a)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量がわずかであるため、立方体18相互の間隙にわずかな液架橋部a11のみが形成され、各液架橋部a11において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、各液架橋部a11の液体2は基板12まで達しており、すなわち、立方体18相互間の他、基板12との間隙にも液架橋部a11が形成されている。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により立方体18を除去すれば、直線状でかつ相互に平行に、会合した3つのカーボンナノチューブ構造体を基板12表面に同時に形成することができ、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した3つの電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0082】一方、図10(b)の場合、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2の量が図10(a)の場合よりも多いため、立方体18相互の間隙のみならず、立方体18の周りにも液架橋部a12が形成される。すなわち、液架橋部a12は、基板12と立方体18との臨界部に形成され、四角形を4つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a12において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により立方体18を除去すれば、4つの四角形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残った状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した四角形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、立方体18を除去した際の四角形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0083】以上説明した各種例において、「複数の物体」は、1〜5個の例を挙げて説明したが、勿論、より多くの数が配列されていても構わない。例えば、「複数の物体」を基板上に1層配置して、2次元的な平面状のカーボンナノチューブ構造体を得ることもできるし、数層に重ねて配置してフィルム状のカーボンナノチューブ構造体を得ることもできる。さらに「複数の物体」を積層すれば、カーボンナノチューブ構造体は、全体として3次元的な立体構造、すなわち塊状となる。本発明によれば、このようにカーボンナノチューブ構造体全体としての構造を制御することもできる。
【0084】以上説明した球体、三角柱体および立方体の大きさとしては、特に限定されるものではないが、平面状、フィルム状あるいは塊状のカーボンナノチューブ構造体を得るためには、微小体であることが望ましい。微小体の好ましい大きさとしては、後述する。
【0085】さらに、以下に他の液架橋の態様を、具体例を挙げて説明する。図11は、上記複数の物体として、板状の部材を用いた例を示す模式断面図である。図1111(a)においては、板状部材20aに、他の板状部材20bが垂直に当接して固定された状態の「複数の物体」における、板状部材20aと板状部材20bとの臨界部に液架橋部a13が形成される。図11(b)は、図11(a)と同様の液架橋部a13が形成されるが、「複数の物体」としてT字型の板状部材20cを用いている点が異なる。板状部材20cは一つの部材ではあるが、液架橋の対象となる物体の部分として、板状部材20cには、平底部20c’と垂直部20c”との2つの部位があり、図11(b)は、既述の如き「複数の物体」が1つの物体からなる例の一つである。
【0086】図11(a)において形成される液架橋部a13において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このようにして板状部材20bまたは垂直部20c”における、板状部材20aまたは平底部20c’との付け根部分にカーボンナノチューブ構造体が形成される。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、そのままで、あるいは所望により板状部材20bまたは垂直部20c” を除去すれば、直線状でかつ相互に平行に、会合した2つのカーボンナノチューブ構造体を同時に形成することができ、板状部材20a(あるいはさらに板状部材20b)または板状部材20c表面に、かかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した2つの電気素子として利用することができる。なお、板状部材20bまたは垂直部20c”を除去した際の、2つのカーボンナノチューブ構造体相互の直線状の間隙は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0087】一方、図11(c)においては、板状部材20aに当接して固定される、他の板状部材20bが5つある例であり、板状部材20b相互の間隙が微小で、当該間隙にも液架橋が形成され得るようになっている。すなわち、図11(a)同様、板状部材20aと両端の板状部材20bとの臨界部に液架橋部a14が形成されるとともに、さらに、板状部材20b相互の間隙にも液架橋部a14’が形成される。図11(d)は、図11(c)と同様の液架橋部a14,a14’が形成されるが、「複数の物体」として櫛型の板状部材20dを用いている点が異なる。板状部材20dは一つの部材ではあるが、液架橋の対象となる物体の部分として、板状部材20dには、平底部20d’と5つの垂直部20d”との6つの部位があり、図11(d)は、既述の如き「複数の物体」が1つの物体からなる例の一つである。
【0088】図11(c)において形成される液架橋部a14,a14’において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このようにして板状部材20bまたは垂直部20c”における、板状部材20aまたは平底部20d’との付け根部分にカーボンナノチューブ構造体が形成される。本例の場合、例えば液体2を蒸発させ、そのままで、あるいは所望により板状部材20bまたは垂直部20d”を除去すれば、直線状でかつ相互に平行に、会合した6つのカーボンナノチューブ構造体を同時に形成することができ、板状部材20a(あるいはさらに板状部材20b)または板状部材20d表面に、かかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した6つの電気素子として利用することができる。なお、板状部材20bまたは垂直部20d”を除去した際の、6つのカーボンナノチューブ構造体相互の直線状の間隙は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0089】上記図11(c)あるいは図11(d)に示す板状部材を用いて液架橋を形成するには、図11(e)に示すように、板状部材20dを天地逆転させて、垂直部20d”の先端部分にのみ、液架橋部a15を4つ形成してもよい。かかる液架橋部a15において、カーボンナノチューブが会合し、構造化されれば、平底部20d’から離れた部位にカーボンナノチューブ構造体を形成することができる。なお、図11(e)では、図11(d)に示す板状部材20dにより説明したが、図11(c)に示す板状部材20aおよび板状部材20bにおいても同様である。
【0090】図12は、上記複数の物体として2個の長尺状の角柱体を用いた例を示す模式図である。2個の角柱体22の長手方向の間隙に、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2からなる液架橋部a16が形成され、カーボンナノチューブは、液架橋部a16において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により角柱体22のどちらか一方もしくは双方を除去すれば、角柱体22の間隙あるいは表面に形成されたカーボンナノチューブ構造体を、もしくはカーボンナノチューブ構造体のみを入手することができる。得られたカーボンナノチューブ構造体は、導線として利用できる他、その電気特性を利用した電気素子としても利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0091】図13は、上記複数の物体として、基板上に載置された球体を5個あるいは6個用い、2つの電極端子をつなぐ状態で配置された例を示す模式平面図であり、図13(a)では、電極端子24aおよび電極端子24bが基板12の対向した位置にあり、これを一直線で結ぶように球体14が配置され、図13(b)では、電極端子24aおよび電極端子24bが基板12の略対角線の位置にあり、これを曲線で結ぶように球体14が配置されている。
【0092】いずれの例においても、液架橋部a17,a18は、球体14相互の間隙および基板12と球体14との臨界部に形成される。すなわち、図13(a)では、液架橋部a17は直線状にリングを5つ連ねた状態となり、図13(b)では、液架橋部a18は曲線状にリングを6つ連ねた状態となる。カーボンナノチューブは、液架橋部a8において会合し、構造化される。したがって、例えば液体2を蒸発させ、さらに所望により球体14を除去すれば、5つまたは6つの円形が連なった状態に構造化されたカーボンナノチューブのみが基板12表面に残り、電極端子24aと電極端子24bとの間をつなぐ状態となり、基板12表面にかかる形状の配線を施すことができ、あるいは、カーボンナノチューブの電気特性を利用した円形状の電気素子が連なったデバイスとして利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、球体14を除去した際の、5つまたは6つの円形の内部は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0093】図14は、上記複数の物体として、2本の針状体を用いた例を示す模式図である。2本の針状体26としては、例えばマニピュレーターを用いることができる。針状体26の先端を近接させた状態で、カーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体の中に浸漬させて取り出すことで、針状体26の先端に液架橋部a20を形成することができる。カーボンナノチューブは、液架橋部a20において会合し、構造化される。そのまま液体2を蒸発させれば、針状体26の先端をつないだ状態で構造化されたカーボンナノチューブ構造体が形成され、針状体26として通電可能なものを使用していれば、カーボンナノチューブ構造体の電気特性を測定することができ、また、針状体26を端子とする、カーボンナノチューブの電気特性を利用した電気素子として利用することができる。さらに、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。
【0094】図15は、上記複数の物体として、上記例同様2本の針状体を用い、かつこれを基板に当接させた例を示す模式図である。上記例同様2本の針状体26としては、例えばマニピュレーターを用いることができる。針状体26の先端を近接させた状態で、基板12に当接させた上で、当該先端部にカーボンナノチューブ(不図示)が分散された液体2により液架橋部a21が形成される。液架橋部a21は、例えば、上記図14で示される例における液架橋部a20が形成された針状体26の先端を、基板12に当接させることで形成することができる。
【0095】基板12の表面には、針状体26の先端のみが中空となる2つの円形状(8の字型)の液架橋部a21が形成され、該液架橋部a20において、カーボンナノチューブが会合し、構造化される。このとき、針状体26の先端の距離を離したり近づけたりすることで、カーボンナノチューブ構造体の形状を制御することができる。図16(a)は針状体26の先端の距離を近づけた状態を示す模式図であり、図16(b)は、このとき基板12の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体28の平面図である。一方、図17(a)は針状体26の先端の距離を離した状態を示す模式図であり、図17R>7(b)は、このとき基板12の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体28の平面図である。液体2を蒸発させ、針状体26を基板12から離すことで、図16R>6(b)や図17(b)に示されるようなカーボンナノチューブ構造体28が基板12の表面に形成される。得られたカーボンナノチューブ構造体28は、その電気特性を利用した電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化しておけば、添加される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。なお、針状体26を基板12から離した際、基板12表面における針状体26の先端が元々存在していた部分は、何も存在しない状態、すなわち中空部分となる。
【0096】<各構成要素の詳細>(カーボンナノチューブ)本発明において使用するカーボンナノチューブとしては、SWNTでもMWNTでもよい。一般に、SWNTのほうがフレキシブルであり、MWNTになるとSWNTよりはフレキシブルさが失われ、多層になればなるほど剛直になる傾向にある。SWNTとMWNTとは、その性質を考慮して、目的に応じて使い分けることが望ましい。
【0097】前記複数の物体として複数の微小体を用いた場合には、該複数の微小体相互の間隙に形成される液架橋部で会合するカーボンナノチューブは、他のいくつかの複数の微小体相互の間隙に形成される液架橋部にも、同時に捕らえられる(以下、単に「複数液架橋部への捕獲」という。)ようになり、複数の微小体相互の間隙(液架橋部)を橋渡しするように構造化される(図3参照)。これは、カーボンナノチューブが柔らかい細い線状の構造を有しているため生じる特異的な現象であり、かかる場合にはSWNTを用いることが好ましいが、例えば一辺がカーボンナノチューブよりも長い物体等にカーボンナノチューブが構造化される場合や、前記複数の微小体が格子を組んでいるような場合には、カーボンナノチューブはほぼ直線状態で配置されるため、SWNTおよびMWNTのいずれを用いても構わない。
【0098】適用可能なカーボンナノチューブの長さや直径(太さ)は、特に限定されるものではないが、長さとしては、一般的に10nm〜1000μmの範囲のものが用いられ、100nm〜100μmの範囲のものが好ましく用いられる。また、前記複数の物体として複数の微小体を用いた場合には、カーボンナノチューブの長さが、前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いことが好ましい。前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いカーボンナノチューブを用いることで、複数液架橋部への捕獲が実現でき、複数の微小体相互の間隙(液架橋部)を橋渡しするようにカーボンナノチューブを構造化することができる。なお本発明において、「球相当平均径」とは、前記複数の微小体の形状が球体である場合には勿論、当該球の平均径(数平均)を言うが、球体でなくても、それと同一体積の球体を見立てた場合における当該球の平均径(数平均)を言う。前記複数の微小体の好ましい球相当平均径については、後述する。
【0099】一方、カーボンナノチューブが、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成する場合には、前記複数のカーボンナノチューブの長さとしては、前記物体の複数の部位における間隙の最短離間距離よりも長いことが好ましい。かかる長さのカーボンナノチューブを用いることで、前記複数のカーボンナノチューブは効果的に液架橋部に会合し捕獲される。なお、ここで言うカーボンナノチューブの長さとは、液架橋部での会合前に、分散液中でそれ自身単独で存在している場合にはそれ自体の長さであり、複数のカーボンナノチューブが束ねられた状態(バンドル状態)で存在している場合には、そのバンドル状態の全長として定義される。
【0100】カーボンナノチューブの直径(太さ)としては、特に限定されるものではないが、一般的に1nm〜1μmの範囲のものが用いられ、カーボンナノチューブに適度なフレキシブルさが望まれる用途に対しては、3nm〜500nmの範囲のものが好ましく用いられる。
【0101】カーボンナノチューブは、製造したままの状態では、アモルファスカーボンや触媒等の不純物が混在するため、これらを精製して取り除いておくことが好ましい。ただし、本発明は、不純物の存在によって、その効果が制限されるものではない。
【0102】(液架橋に供する間隙を形成する複数の物体、および、液架橋に供する間隙を形成する複数の部位を有する物体)液架橋に供する間隙を形成する前記複数の物体、および、液架橋に供する間隙を形成する複数の部位を有する物体(以下、単に「間隙形成物体」という場合がある。)としては、既述の如く、微小体の場合と微小体以外の場合とがある。いずれの場合においても、前記複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋を形成する必要があり、その意味で液架橋に供される液体との親和性の高い材料を用いることが望ましい。液架橋部においては、液体を構成する分子同士の凝集力と、該分子が前記複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙における間隙形成物体表面に付着しようとする付着力と、が作用し、液架橋部の液面は凹部を形成する。しかし、間隙形成物体と液架橋に供される液体との親和性が小さ過ぎると、前記付着力が十分に働かず、液架橋が起こらない。
【0103】液架橋に供される液体との親和性の高い材料としては、前記液体の種類により異なるが、前記液体として水を用いた場合、例えば、金属、ガラス、金属酸化物、セラミックス、それら物質を表面にコーティングあるいは添加してあるものなど、水と接触させて水がはじかれることなく水になじむものが選択できる。また、水に界面活性剤や水溶性有機溶剤(例えばアルコールやエーテル等)等の濡れ性向上剤を添加したり、前記液体として水溶性有機溶剤を用いた場合、例えば、各種ポリマー(樹脂)、それらポリマーを表面にコーティングあるいは添加してある粒子、生物の一部組織などを用いることができる。さらに、間隙形成物体は、その表面を物理的あるいは化学的に処理を施しておくことによって、液架橋部を形成する液体との親和性を向上させることができ、ナノチューブ構造体を良好に作製することができる。逆に、物理的あるいは化学的に施す処理の種類によっては、液架橋部を形成する液体との親和性を低くすることが可能であり、選択的に液架橋を形成しない部分を形成することもできる。
【0104】さらに、カーボンナノチューブは液架橋部で会合する際に、液架橋を形成する溶液に追随して動くため、間隙形成物体表面の性状としては、カーボンナノチューブが固着し難い性質のものであることが好ましい。ただし、カーボンナノチューブの固着は、間隙形成物体表面の性状よりも形状に左右されやすく、前記複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙の近傍における表面の形状として、より平滑であることが望ましい。
【0105】間隙形成物体のうち、前記複数の物体の形状としては、特に限定されるものではなく、少なくとも前記複数の物体相互に、液架橋が形成され得るような微小な間隙を形成し得る形状であれば、如何なる形状のものでも用いることができる。具体的には、微小体や針状体、基板上に形成される凹凸パターン等が挙げられる。針状体としては、先端が細く針として機能するものであればよい。材料としては、各種金属、ガラス、カーボンナノチューブ等が挙げられ、これらには、用途に応じて被覆膜が施してあってもよい。
【0106】前記複数の物体として複数の微小体を用いる場合、該微小体としては、該微小体相互の間隙に液架橋が形成され得るものであれば、特に制限は無く、例えば、粒子、繊維、結晶、凝集体等が挙げられる。前記複数の微小体として利用可能な粒子としては、ポリマーなどの有機物、セラミックスや金属などの無機物、あるいはその双方を含む複合物質等が挙げられる。また、粉砕で砕かれることで製造されるものでも、物理的あるいは化学的に制御することで大きさを制御して製造されるものでも、どちらもその目的に応じて使用することができる。前記複数の微小体として利用可能な繊維としては、ポリエステルやナイロンなどの人工繊維、綿など自然繊維、くもの糸などの生体の繊維等が挙げられる。
【0107】前記複数の微小体として利用可能な結晶としては、微細な分子や原子や粒子が充填した内部構造のものや、規則正しく配列した構造のもの等が挙げられる。具体的には、具体的には、金属結晶、非金属結晶、イオン結晶、分子性結晶、粒子結晶等が挙げられ、自然界に安定に存在し得るものであれば用いることができる。前記複数の微小体として利用可能な凝集体としては、原子が凝集したアモルファス、分子が凝集した分子凝集体、粒子が凝集した粒子凝集体、とそれらの複数種類が凝集した複合凝集体等が挙げられるが、これらは微細な分子や原子や粒子が集合した状態であり、内部の配列規則は特定できない。
【0108】既述の如く、微小体の形状としては、得ようとするカーボンナノチューブ構造体の構造制御を目的として、各種形状のものが選択される。各種形状のものを容易に作製可能で、かつ、構造体形成後に溶融させて消去あるいは再度固化させてマトリックスを形成すること(後述)が可能な、ポリマー製の微小体が好ましい。特に、市場から容易に入手可能であり、その大きさや形状を制御しやすい、ラテックス製の微小体を用いることが好ましい。ラテックス製の微小体は、化学的に合成して製造されるものであるため、化学的に表面修飾させやすく、カーボンナノチューブ構造体としたときに所望の特性に制御しやすいといったメリットもある。
【0109】ポリマー製の微小体におけるポリマーとしては、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。複数の微小体としては、上記の如く、各種形状を取ることが可能であり、また、カーボンナノチューブ構造体の構造制御のため各種形状を選択することとなるが、カーボンナノチューブが固着し難い形状とするためは、球形であることが好ましい。
【0110】前記複数の微小体の球相当平均径としては、10nm以上1000μm以下であることが好ましく、20nm以上100μm以下であることがより好ましく、50nm以上10μm以下であることがさらに好ましい。前記複数の微小体の球相当平均径が10nmよりも小さいと、カーボンナノチューブ同士の反発力が、前記複数の微小体相互の間隙に形成される液架橋により発生する引力よりも強くなりやすく、良好な構造化が望めない場合がある。また、カーボンナノチューブ自体が保持している液体により発生する液架橋の影響が避けられなくなり、前記微小体がカーボンナノチューブに付着する現象が見られるようになる。
【0111】一方、前記複数の微小体の球相当平均径が100μmを超えると、現存するカーボンナノチューブの大半のものは100μm以下であるため、カーボンナノチューブの複数液架橋部への捕獲が困難となり、液架橋部内でカーボンナノチューブが自己凝集してしまう場合がある。さらに、カーボンナノチューブを含むデバイスや機能材料および構造材料などの応用では、100μm以下の微細構造が望まれており、100μmを越える大きさの構造体では、実用性に欠ける。
【0112】(液体)液架橋部を形成する液体としては、前記複数の物体およびカーボンナノチューブを溶解してしまうことの無い液体であれば、特に制限は無く、また、カーボンナノチューブは有機溶剤不溶性であるため、前記複数の物体に応じて選択すればよい。前記複数の物体として、ラテックスを用いる場合には、水、界面活性剤を含む水溶液、イオンを含む水溶液、アルコール、または、それらの混合溶液等を用いることが好ましい。
【0113】前記液体としては、液架橋を良好に形成するため、適度な表面張力を有する液体を用いることが望ましい。当該液体にカーボンナノチューブ等を分散させた後の表面張力としては、0.0001mN/m以上10000mN/m以下の範囲から選択することが好ましく、0.001mN/m以上1000mN/m以下の範囲から選択することがより好ましい。
【0114】液架橋部を形成する液体には、当該液体の粘度を調整できる物質、液体の表面エネルギーを調整できる物質を添加しておくことが好ましい。液体の粘度を調整できる物質としては、水溶液に対して具体的には、
【0115】<カーボンナノチューブ構造体の態様>以上のように構造化されたカーボンナノチューブは、以下のいくつかの態様で各種カーボンナノチューブ構造体として用いることができる。
【0116】上記いずれの態様においても、得られるカーボンナノチューブ構造体の構造としては、複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に形成される液架橋部の形状に、会合された複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなるものであると言える。前記液架橋部の形状としては、具体的には、液架橋部の上面における凹部の形状にカーボンナノチューブが配置する形状と見ることができる。上記各態様について、それぞれ説明する。
【0117】
【0118】また全体を傾けることにより重力を利用すると、平均的な流動場が発生するため、不均質に存在していたカーボンナノチューブを均等に再配置させることができる。これは、カラムクロマトグラフィーと同様の原理である。さらに、これを継続的に行うことによれば、特定の長さや太さのカーボンナノチューブを選択的に配置したり、抽出したりすることができるようになる。
【0119】
【0120】
【0121】このように、前記複数の物体を除去した(消失させた)カーボンナノチューブ構造体は、それのみでも強固な構造体であり、そのままカーボンナノチューブの電気特性を利用した電気素子として利用することができる。また、既述の如く、前記他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化し、カーボンナノチューブ相互の間隙および/またはその近傍に配置しておけば、配置される前記他の物体に応じた各種特性を有するカーボンナノチューブ構造体とすることができる。さらに、前記他の物体の少なくとも一部として、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有するものを用い、カーボンナノチューブの構造体を、全体として1つの分子構造に似た状態とすることで、既述の機能性が全体として高い次元で付与されるほか、前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体としてカーボンナノチューブ構造体を強固に固定化することができる。つまり、前記他の物体がカーボンナノチューブ相互間の接着剤の如き働きを担い、カーボンナノチューブのみからなるカーボンナノチューブ構造体の強靭性をより一層高めることができる。
【0122】前記複数の物体として複数の微粒子を用いて得られた本例のカーボンナノチューブ構造体は、中空の構造でありながら極めて強固であるため、カーボンナノチューブの電気特性を利用した電子素子として用いることができるほか、その導電性、耐腐食性を利用して電極として用いることもできるし、電子的応用を離れて、その強靭性を利用して各種構造物(シャーシー、フレーム、その他機械的な部品等)として用いることもできる。この場合、中空の構造ゆえ密度が小さく、したがって極めて軽量かつ強靭な構造物とすることができる。さらに、中空部分に他の物質を流し込み、その流し込む物質によりカーボンナノチューブ構造体の特性をさらに制御することもできる。
【0123】
【0124】本例においては、カーボンナノチューブの電気特性を利用した電子素子として用いることができるほか、上記
【0125】<カーボンナノチューブ構造体の製造方法>本発明のカーボンナノチューブ構造体は、複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、前記カーボンナノチューブを構造化して配置して、製造することができる。すなわち、少なくとも1)複数の物体相互の間、および/または、物体の複数の部位の間に微小な間隙を形成し、2)当該間隙に液架橋部を形成し、3)該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させること、で本発明のカーボンナノチューブ構造体が製造される。
【0126】この3つの製造工程からなる基本工程1)〜3)に加えて、4)前記他の物体を添加する工程や、5)液架橋部の液体をさらに蒸発させる工程や、6)前記複数の物体を消失させる工程を適宜付加することで、所望の構造に制御されたカーボンナノチューブ構造体を製造することができる。
【0127】また、上記基本工程1)〜3)は、必ずしも別個の工程として実施される必要は無く、その態様により、1)と2)、2)と3)、あるいは1)〜3)が組み合わされて、同時に実施されてもよい。以下に、本発明のカーボンナノチューブ構造体の具体的な製造の手順の例を挙げて説明する。
【0128】(製造手順の例1)複数の物体を用意し、これを所望の位置に配置して微小な間隙を形成する。1の物体を任意の手段により成形して、微小な間隙を形成してもよい[以上、工程1)]。一方、液体にカーボンナノチューブを分散させた分散液を調製する。また、前記他の物体をも構造化させたい場合には、当該他の物体もこの分散液に添加する[工程4)]。このとき、カーボンナノチューブや前記他の物体の凝集が起こらないよう、回転式攪拌装置や超音波分散器等を用いることで、均一に攪拌しておくことが望ましい。
【0129】前記複数の物体により形成された微小な間隙に、上記得られた分散液を供給する。供給の方法としては、前記複数の物体により形成された微小な間隙に前記分散液を直接滴下する方法、および、前記分散液の中に、微小な間隙が形成された前記複数の物体全体を浸漬させる方法等が挙げられる。
【0130】供給された分散液から液体をある程度蒸発させることで、前記複数の物体により形成された微小な間隙に、前記分散液の濃縮液からなる液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる[以上、工程2)および工程3)]。
【0131】(製造手順の例2)複数の物体として複数の微小体を用意し、これとカーボンナノチューブとを適当な液体に分散させて、分散液を調製する。また、前記他の物体をも構造化させたい場合には、当該他の物体もこの分散液に添加する[工程4)]。
【0132】このとき、カーボンナノチューブや前記他の物体の凝集が起こらないよう、均一に攪拌しておくことが望ましいが、あまり強い攪拌を分散液に与えると、カーボンナノチューブが前記複数の微小体に付着してしまう現象が見られる。特に球形の微小体を用いると、カーボンナノチューブが前記複数の微小体に巻き付くように付着してしまう場合がある。
【0133】したがって、前記複数の微小体およびカーボンナノチューブの双方の分散性を良好に保つため、予め別の液体にそれぞれを分散させ、回転式攪拌装置や超音波分散器等を用いることで、双方とも均一に攪拌しておき、得られた2つの分散液を混合することで、前記複数の微小体とカーボンナノチューブとが分散された分散液を調製することが望ましい。このとき、前記他の物体を添加する場合には、前記他の物体も予め別の液体に分散させておき、これを前記2つの分散液の混合時に一緒に混合してもよいし、カーボンナノチューブあるいは前記複数の微小体の分散液調製時に、これらのいずれか一方もしくは双方に添加しておいてもよいし、前記複数の微小体とカーボンナノチューブとが分散された分散液が調製された後に、最後に添加してもよい。
【0134】上記得られた分散液を所定の位置に配する。具体的には、上記分散液を、所定の位置に塗布したり、あるいは、所定の容器に収容する。塗布する場合の塗布方法としては、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、浸漬塗布法、噴霧法、滴下法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法等が挙げられる。
【0135】この状態で液体をある程度蒸発させることで、上記分散液中の前記複数の微小体が沈殿し、微小な間隙が形成され、該微小な間隙に、前記分散液の濃縮液からなる液架橋部が形成され、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブが会合する[以上、工程1)〜工程3)]。
【0136】前記複数の微小体の比重がカーボンナノチューブに比べて大きい場合には、液体の蒸発に先立ち、予め静置しておくことも有効である。静置しておくことで、比重の大きい前記複数の微小体が先に沈殿し、分散液底部で前記複数の微小体相互の間隙が形成される[以上、工程1)]。その後、前記分散液から液体をある程度蒸発させることで、前記複数の微小体により形成された微小な間隙に、前記分散液の濃縮液からなる液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる[以上、工程2)および工程3)]。
【0137】上記いずれの製造手順の例においても、カーボンナノチューブ(および必要に応じて前記他の物体)を分散させた分散液においては、十分に分散させておくことが望まれ、超音波などの物理的力や分散液のpH、界面活性剤等の分散剤の添加、温度などは、できる限り分散性が高められるように調整される。具体的には、超音波はカーボンナノチューブ同士の絡み合いを解し、アモルファスカーボンなどの不純物をカーボンナノチューブから引き剥がす条件に設定することが好ましく、超音波出力は高く設定するとよい。しかしながら、超音波は同時に分散液の温度を上昇させてしまうため、過度の出力は、分散液温度を上昇させてしまい、分散液中の分散剤を変質させ、カーボンナノチューブの凝集体を増加させてしまうことがあるので、注意が必要である。
【0138】また界面活性剤などの分散剤は、溶解物を適度に溶解し得る濃度であるCMC(臨界ミセル濃度)、CAC(臨界凝集濃度)などを指標に設定することができる。ただし、市販されているカーボンナノチューブは、長さや太さが多種多様であるため、前記濃度から大きく外れた条件が好ましい結果となることがあり、複数条件での検査により最適条件を見出す必要がある。
【0139】分散液のpHやイオン濃度に関しては、分散液中の電気的な引力−斥力のバランスを支配する因子であり、その値や濃度に対して界面活性剤の分散液中での安定性が大きく左右され、カーボンナノチューブの分散性に強い影響を与える。さらに、強酸溶液などで処理を施したカーボンナノチューブはそれ自体が溶解しやすい状態になっているため、分散剤を必ずしも使用する必要はないが、官能基が付加していることから、pHやイオン濃度に強く影響を受けることは明白であり、より正確な最適条件を見出す必要がある。
【0140】分散性を向上させるために、粘度を高める手法も選択できるが、不純物の多く含まれているカーボンナノチューブでは、不純物も同様に分散されてしまい、それを除去し難くなってしまうことから、なるべく粘度は低く抑えておくことが好ましい。逆に、あらかじめ精製しておけば、粘度を高めて分散状態を安定化させることができる。
【0141】また、前記複数の微小体(および必要に応じて前記他の物体)を分散させた分散液においても、上記カーボンナノチューブを分散させた分散液ほどではないものの、十分に分散させておくことが望まれ、超音波などの物理的力や溶液のpH、界面活性剤等の分散剤の添加、温度などは、適度な分散性が得られるように調整される。具体的には、コロイドと呼ばれる分散状態にしておくことが好ましい条件であり、カーボンナノチューブの分散液との混合によっても分散が壊れないような分散剤を選定するとよい。分散性を向上させるために、粘度を高める手法も選択できるが、カーボンナノチューブの分散液との混合において、速やかに混ざり合うようにするため、なるべく粘度は低く抑えておくことが好ましい。
【0142】一方、既述の如く前記複数の微小体およびカーボンナノチューブ(および必要に応じて前記他の物体)においては、カーボンナノチューブと前記複数の微小体との付着の問題から、あまり強い攪拌を与えないようにすることが望まれる。具体的には、常温で保持してマグネチックスターラーや攪拌羽で攪拌するのが好ましく、超音波分散器は使用しないほうがよい。超音波分散器を使用したり、分散液の温度を上昇させてしまうと、カーボンナノチューブは微小体に付着しやすくなり、複数の微小体にカーボンナノチューブが絡みつく凝集を引き起こしてしまう場合がある。
【0143】前記他の物体をも構造化させたい場合には、カーボンナノチューブ(および必要に応じて前記他の物体)を分散させた分散液において、超音波ホモジナイザー等の超音波分散器で、予めカーボンナノチューブの束を解いて、液体中に分散しておくことが望ましい。予めカーボンナノチューブの束を解いておくことで、液架橋部においてカーボンナノチューブが会合して束を再形成するときに、前記他の物質をカーボンナノチューブ相互の間隙に取り込ませることができる。このとき、分子が結晶化するときのように、前記他の物質を排除するような作用が生じることも予想されるが、液架橋部の液体を適度に(より具体的には、速く)蒸発させることで、液体を除去すれば、前記他の物質はカーボンナノチューブ相互の間隙に挿入された状態で残すことができる。そのため、液架橋部の液体をより速く蒸発することを企図して、液架橋部を加熱することが望ましく、当該加熱温度としては、液体として水溶液を使用した場合、2〜95℃の範囲が好ましく、5〜80℃の範囲がより好ましい。
【0144】液架橋部の液体の蒸発速度を補うために、基板側に微細な穴を開けておいて、前記液体を急速に減らすことも可能である。この際、市販されているフィルターを使用することもでき、あるいは、電子線リソグラフィーやレーザーリソグラフィー、あるいは電気化学エッチングなどにより細孔を形成することもできる。また同様の加工法により、溝を作製しておき、溝を伝って前記液体が排出されるようにすることも可能であり、このことによって、液架橋部の液体を急速に除去することができる。
【0145】<本発明のカーボンナノチューブ構造体の用途>以上のようにして得られた本発明のカーボンナノチューブ構造体は、極めて広範な技術分野への応用が期待される。具体的な用途について、以下に列記する。勿論、本発明のカーボンナノチューブ構造体の具体的な構造により特に適した用途が考えられる。
【0146】1)エレクトロニクス分野既述の如く、電極、導線、電気配線、電子素子として利用することができる。また、よく知られているように、カーボンナノチューブは、一般に非常に高い電気伝導性を有しており、分子エレクトロニクス用に設計された分子を前記他の物体として、カーボンナノチューブ相互の間隙に挿入することで、分子スイッチ、分子メモリ、分子プロセッサーなどを実現できるようになる。本発明のカーボンナノチューブ構造体により実現されるこれらデバイスは、従来法によるシリコンデバイスに比べ、基板に固定化された配線でなく、デバイス中の配線としてのカーボンナノチューブが柔らかく、これを自由に近づけたり離したりできること、リソグラフィの分解能よりも細い径のカーボンナノチューブ配線であること、化学結合を用いて配線ができること、など多くの優れた利点を有する。これらの利点により、例えば5nm以下ほどの小さな分子サイズに対して、直接的にアクセスできる。そのため、本発明のカーボンナノチューブ構造体を用いれば、大規模の電子集積回路を、低コストで、簡単に、そして高密度に作製できるようになる。
【0147】2)各種構造物既述の如く、本発明のカーボンナノチューブ構造体は、、その強靭性を利用して各種構造物(シャーシー、フレーム、その他機械的な部品等)として用いることもできる。特に、前記複数の物体として複数の微粒子を用い、かつ、該複数の微粒子を除去した、中空部分を有するカーボンナノチューブ構造体は、軽量かつ強靭であることから、軽量性および強靭性が求められる各種分野における構造物に好適に応用することができる。
【0148】一方、一般的に樹脂にフィラーを分散させるだけでも高い強靭性が得られるとされているが、マトリックス(樹脂)中に、前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなるカーボンナノチューブ構造体は、フィラーに相当するカーボンナノチューブがマトリックス中で強固な構造体を形成しており、全体として極めて高い強靭性を発揮する。そのため、従来金属、特にチタン等の軽量かつ高強度の貴金属が用いられていた構造物についても、その代用材料として好ましく適用することができる。
【0149】
【実施例】<実施例1>後述する(工程1)〜(工程3)の各工程を実施することにより、下記組成からなる分散液を調製し、かつ該分散液からカーボンナノチューブ構造体を製造した。
a)単層カーボンナノチューブ(平均長さ:約10μm、平均直径:約2.5nm)・・・0.01gb)界面活性剤(和光純薬社製、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))0.001質量%の水溶液・・・0.5gc)ラテックス粒子(ポリスチレン、平均粒径0.3μm、球形)3質量%の水溶液(コロイド溶液)・・・1.0g
【0150】(工程1)上記b)の水溶液2.0g中にa)を混入させ、出力3Wの超音波にてよく分散させカーボンナノチューブの分散液を得た。
【0151】(工程2)(工程1)で得られたカーボンナノチューブの分散液と、C)のラテックス粒子の水溶液(コロイド溶液)1.0gとを混合攪拌して、カーボンナノチューブとラテックス粒子とが分散された分散液を得た。得られた分散液の表面張力は、75mN/mであった。
【0152】(工程3)スピンコーター(回転成膜装置)を用いて、雲母基板の片面に(工程2)で得られた分散液を成膜した。このとき、スピンコーターの回転数を適切に調整することにより、雲母基板上の余分な分散液を除去することができる。そして、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0153】<実施例2>後述する(工程1)〜(工程3)の各工程を実施することにより、下記組成からなる分散液を調製し、かつ該分散液からカーボンナノチューブ構造体を製造した。
a)単層カーボンナノチューブ(平均長さ:約10μm、平均直径:約2.5nm)・・・0.01gb)界面活性剤(和光純薬社製、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))0.001質量%の水溶液・・・2.0gc)ラテックス粒子(ポリスチレン、平均粒径0.3μm、球形)3質量%の水溶液(コロイド溶液)・・・1.0g
【0154】(工程1)上記b)の水溶液0.5g中にa)を混入させ、出力3Wの超音波にてよく分散させカーボンナノチューブの分散液を得た。
【0155】(工程2)(工程1)で得られたカーボンナノチューブの分散液と、C)のラテックス粒子の水溶液(コロイド溶液)1.0gとを混合攪拌して、カーボンナノチューブとラテックス粒子とが分散された分散液を得た。得られた分散液の表面張力は、80mN/mであった。
【0156】(工程3)スピンコーター(回転成膜装置)を用いて、雲母基板の片面に(工程2)で得られた分散液を成膜した。このとき、スピンコーターの回転数を適切に調整することにより、雲母基板上の余分な分散液を除去することができる。そして、実施例1と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。得られたカーボンナノチューブ構造体は、実施例1のよりも太くなっていた。
【0157】<実施例3>後述する(工程1)〜(工程3)の各工程を実施することにより、下記組成からなる分散液を調製し、かつ該分散液からカーボンナノチューブ構造体を製造した。
a)単層カーボンナノチューブ(平均長さ:約10μm、平均直径:約2.5nm)・・・0.01gb)界面活性剤(和光純薬社製、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))0.001質量%の水溶液・・・2.0gc)ラテックス粒子(ポリスチレン、平均粒径0.3μm、球形)3質量%の水溶液(コロイド溶液)・・・1.0g
【0158】(工程1)上記b)の水溶液2.0g中にa)を混入させ、出力3Wの超音波にてよく分散させカーボンナノチューブの分散液を得た。
【0159】(工程2)(工程1)で得られたカーボンナノチューブの分散液と、C)のラテックス粒子の水溶液(コロイド溶液)1.0gとを混合攪拌して、カーボンナノチューブとラテックス粒子とが分散された分散液を得た。得られた分散液の表面張力は、Pa・sであった。
【0160】(工程3)(工程2)で得られた分散液を用いて、雲母基板の片面にディップコーティング法(引き上げ法)により成膜した。実施例1と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0161】<実施例4>実施例3の<工程3>において、ディップコーティング法(引き上げ法)に代えて、スプレーガンを用いた噴霧法により成膜を行ったことを除き、実施例3と同様にして(工程2)で得られた分散液を成膜した。実施例3と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0162】<実施例5>実施例3の<工程3>において、ディップコーティング法(引き上げ法)に代えて、雲母基板上に(工程2)で得られた混合溶液を滴下して、自然乾燥により成膜を行ったことを除き、実施例3と同様にして成膜した。実施例3と同様に、雲母基板上で単層に並んだラテックス粒子の層と、当該ラテックス粒子相互の間隙に形成された液架橋部において、会合し構造化されたカーボンナノチューブ構造体と、が得られた。
【0163】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、カーボンナノチューブのハンドリング性を向上させ、カーボンナノチューブを含む電子デバイスや機能材料、およびその他構造材料などの、広範なカーボンナノチューブの応用を実現し得るカーボンナノチューブ構造体、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 複数の物体として球形の粒子を用い、該球形の粒子と液体とにより液架橋が生じた状態を拡大模式断面図である。
【図2】 本発明の作用を時系列的に説明するための拡大模式断面図であり、(a)は基板の表面に粒子が固定され、カーボンナノチューブが分散された液体で、前記粒子が満たされた状態を表し、(b)はそこから液体の液面が粒子の高さになるまで、液体を蒸発させた状態を表し、(c)はさらに液体を蒸発させて、各粒子相互の間隙に液架橋部が形成された状態を表し、(d)はそこからさらに液体を蒸発させて、カーボンナノチューブが、液架橋部において会合し、構造化されて配置された状態を表す。
【図3】 図2(d)の状態における平面図であり、カーボンナノチューブが、液架橋部において会合し、構造化されて配置された状態を表す拡大模式平面図である。
【図4】 本発明のカーボンナノチューブ構造体の一例を示す電子顕微鏡拡大写真である。
【図5】 本発明のカーボンナノチューブ構造体の他の一例を示す電子顕微鏡拡大写真である。
【図6】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2個の球体間に形成される液架橋状態の一例を示す模式図である。
【図7】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、球体と基板との間に形成される液架橋状態の一例を示す模式図である。
【図8】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために形成される液架橋状態の一例を示す模式平面図であり、(a)は液架橋部を形成する液体の量が少ない場合、(b)は液架橋部を形成する液体の量が多い場合を、それぞれ表す。
【図9】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために形成される液架橋状態の他の一例を示す模式平面図であり、(a)は液架橋部を形成する液体の量が少ない場合、(b)は液架橋部を形成する液体の量が多い場合を、それぞれ表す。
【図10】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために形成される液架橋状態のさらに他の一例を示す模式平面図であり、(a)は液架橋部を形成する液体の量が少ない場合、(b)は液架橋部を形成する液体の量が多い場合を、それぞれ表す。
【図11】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、板状の部材を用いて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図であり、(a)は板状部材に、他の板状部材が1つ垂直に当接して固定された状態を表し、(b)は(a)と同様の形状のものを1の部材で成形した状態を表し、(c)は板状部材に、他の板状部材が5つ垂直に当接して固定された状態を表し、(d)は(c)と同様の形状のものを1の部材で成形した状態を表し、(e)は(c)と同様の形状の部材を用い、天地逆転させて用いた状態を表す。
【図12】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2個の長尺状の角柱体を用いて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図である。
【図13】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、一対の電極端子をつなぐように基板上に配列されて載置された複数の球体により形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図であり、(a)は一対の電極端子が基板の対向した位置にあり、これを一直線で結ぶように球体が配置された状態を表し、(b)は一対の電極端子が基板の略対角線の位置にあり、これを曲線で結ぶように球体が配置されている状態を表す。
【図14】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2本の針状体を用いて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図である。
【図15】 本発明のカーボンナノチューブ構造体を製造するために、2本の針状体を用い、かつこれを基板に当接させて形成される液架橋状態の一例を示す模式断面図である。
【図16】 (a)は図15における針状体の先端の距離を近づけた状態を示す模式図であり、(b)は、このとき基板の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体の平面図である。
【図17】 (a)は図15における針状体の先端の距離を離した状態を示す模式図であり、(b)は、このとき基板の表面に形成されるカーボンナノチューブ構造体の平面図である。
【図18】 本発明のカーボンナノチューブ構造体のさらに他の一例を示す電子顕微鏡拡大写真である。
【符号の説明】
2 液体
4 粒子(複数の物体)
6 基板
8 カーボンナノチューブ
10、14 球体(複数の物体)
12 基板(複数の物体)
16 三角柱体(複数の物体)
18 立方体(複数の物体)
20a 、20b、20c、20d 板状部材(物体)
22 角柱体(複数の物体)
24a、24b 電極端子
26 針状体(複数の物体)
28 カーボンナノチューブ構造体
a1〜a21 液架橋部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、前記カーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項2】 前記複数の物体が、複数の微小体であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項3】 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いことを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項4】 前記複数の微小体の球相当平均径が、10nm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項5】 前記複数の微小体が、複数のポリマー製の微小体であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項6】 前記複数の微小体と、前記複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項7】 液架橋部の形成後、さらに前記液体を蒸発させることにより、前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させるとともに、前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることを特徴とする請求項6に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項8】 前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることにより、前記複数の微小体が最密充填された状態となることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項9】 前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することにより、前記液架橋部に会合させるカーボンナノチューブの量を制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項10】 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させ、前記複数の微小体を溶解させ再度固化させることでマトリックスとし、該マトリックスに前記カーボンナノチューブが構造化して配置されることで、構造体として固定化することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項11】 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項12】 さらに、前記複数の物体を消失させることで、中空部分を有するように構造化して配置されたカーボンナノチューブ構造体を得ることを特徴とする請求項11に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項13】 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記物体の複数の部位における間隙の最短離間距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項14】 前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる際に、さらに他の物体を存在させ、該他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項15】 前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置する際に、前記他の物体の少なくとも一部を、カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることを特徴とする請求項14に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項16】 前記他の物体の少なくとも一部が、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有することを特徴とする請求項15に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項17】 前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体として固定化することを特徴とする請求項16に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項18】 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に形成される液架橋部の形状に、会合された複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とするカーボンナノチューブ構造体。
【請求項19】 マトリックス中に、前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とする請求項18に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項20】 中空部分を有するように構造化して配置されてなることを特徴とする請求項18に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項21】 さらに他の物体が、カーボンナノチューブ相互の間隙および/またはその近傍に配置されてなることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項22】 カーボンナノチューブ相互が前記他の物体により緊結され、構造体として固定化されてなることを特徴とする請求項21に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項23】 請求項1〜17のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法により製造されてなることを特徴とする請求項18に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項1】 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることにより、前記カーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とするカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項2】 前記複数の物体が、複数の微小体であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項3】 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記複数の微小体の球相当平均径よりも長いことを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項4】 前記複数の微小体の球相当平均径が、10nm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項5】 前記複数の微小体が、複数のポリマー製の微小体であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項6】 前記複数の微小体と、前記複数のカーボンナノチューブとが分散された液体から、該液体をある程度蒸発させることにより、前記複数の微小体が相互間に間隙を有しつつ配列し、かつ、液架橋部を形成し、該液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項7】 液架橋部の形成後、さらに前記液体を蒸発させることにより、前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させるとともに、前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることを特徴とする請求項6に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項8】 前記複数の微小体相互の間隙を近接化させることにより、前記複数の微小体が最密充填された状態となることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項9】 前記液体中のカーボンナノチューブの濃度を調節することにより、前記液架橋部に会合させるカーボンナノチューブの量を制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項10】 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させ、前記複数の微小体を溶解させ再度固化させることでマトリックスとし、該マトリックスに前記カーボンナノチューブが構造化して配置されることで、構造体として固定化することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項11】 前記液架橋部を形成する液体を、さらに完全に蒸発させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項12】 さらに、前記複数の物体を消失させることで、中空部分を有するように構造化して配置されたカーボンナノチューブ構造体を得ることを特徴とする請求項11に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項13】 前記複数のカーボンナノチューブの長さが、前記物体の複数の部位における間隙の最短離間距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項14】 前記液架橋部に複数のカーボンナノチューブを会合させる際に、さらに他の物体を存在させ、該他の物体とともに前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項15】 前記複数のカーボンナノチューブを構造化して配置する際に、前記他の物体の少なくとも一部を、カーボンナノチューブ相互の間隙に配置させることを特徴とする請求項14に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項16】 前記他の物体の少なくとも一部が、カーボンナノチューブ相互を橋渡しする架橋機能を有することを特徴とする請求項15に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項17】 前記他の物体の有する架橋機能により、構造化して配置されたカーボンナノチューブ相互を緊結し、構造体として固定化することを特徴とする請求項16に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法。
【請求項18】 複数の物体相互の間隙、および/または、物体の複数の部位における間隙に形成される液架橋部の形状に、会合された複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とするカーボンナノチューブ構造体。
【請求項19】 マトリックス中に、前記複数のカーボンナノチューブが構造化して配置されてなることを特徴とする請求項18に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項20】 中空部分を有するように構造化して配置されてなることを特徴とする請求項18に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項21】 さらに他の物体が、カーボンナノチューブ相互の間隙および/またはその近傍に配置されてなることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項22】 カーボンナノチューブ相互が前記他の物体により緊結され、構造体として固定化されてなることを特徴とする請求項21に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項23】 請求項1〜17のいずれか1に記載のカーボンナノチューブ構造体の製造方法により製造されてなることを特徴とする請求項18に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図14】
【図4】
【図5】
【図11】
【図12】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図10】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2002−264097(P2002−264097A)
【公開日】平成14年9月18日(2002.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−59055(P2001−59055)
【出願日】平成13年3月2日(2001.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年9月18日(2002.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年3月2日(2001.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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