カーボンナノファイバーの硝酸蒸気による変性及び官能基化のための高効率気相法
本発明は、カーボンファイバーの硝酸蒸気による官能基化のための方法、かかる方法により変性されたカーボンファイバーおよびその使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンファイバーの硝酸蒸気による官能基化のための方法、かかる方法により変性されたカーボンファイバーおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術によれば、カーボンナノファイバーは主に、3および100nmの間の直径および該直径の数倍の長さを有する円筒状カーボンチューブであると理解される。該チューブは、配向炭素原子の1以上の層からなり、異なった形態のコアを有する。また、該カーボンナノファイバーは、例えばカーボンフィブリルまたは中空カーボンファイバーとして既知である。
【0003】
カーボンナノファイバーは、専門文献において長い間知られている。Iijima(出版物:S.Iijima、Nature 354、第56〜58頁、1991年)は、ナノチューブの発見者として通常記載されるが、これらの物質(特に、多数のグラファイト層を有する繊維状グラファイト物質)は、1970年代または1980年代初期から知られている。TatesおよびBaker(GB 1469930A1、1977年およびEP 56004 A2)は、炭化水素の触媒破壊からの極めて微細な繊維状炭素の堆積物を最初に記載した。しかしながら、短鎖状炭化水素から製造された炭素フィラメントは、その直径についてさらに詳細に特徴付けられていない。
【0004】
従来法によるこれらのカーボンナノファイバーの構造は、円筒型である。円筒構造のうち、単壁モノカーボンナノチューブと多壁円筒状カーボンナノチューブとの間で区別される。その製造のための通例の方法として、例えば、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学蒸着(CVD)法および触媒化学蒸着法(CCVD)が挙げられる。
【0005】
アーク放電法を用いて、2以上のグラフェン層からなり、途切れのない円筒状に丸まり、および互いにネスト化されたカーボンファイバーを形成することは、Iijima、Nature 354、1991年、第56〜58頁から既知である。回転ベクトルに応じて、キラル配置およびアキラル配置がカーボンファイバーの縦軸に関して可能である。
【0006】
単一連続グラフェン層(スクロール型)または不連続グラフェン層(オニオン型)がナノチューブの構造のための基礎を形成するカーボンファイバー構造は、Bacon等、J.Appl.Phys.34、1960年、第283〜90頁により最初に記載された。該構造は、スクロール型として既知である。次いで、対応する構造がまた、Zhou等(Science、第263巻、1994年、第1744〜47頁)により、およびLavin等(Carbon 40、2002年、第1123〜30頁)により見出された。
【0007】
カーボンナノファイバーの不活性および疎水性の特性に起因して、表面変性および官能基化は、その使用のために、特に触媒作用において必要である(Toebes,M.L.等、J.Catal. 214:第78〜87頁(2003年)、de Jong K.P.、Geus J.W.、Catal.Rev.−Sci.Eng.42:第481〜510頁(2000年)、Serp P.等、Appl. Catal. A 253:第337〜58頁(2003年)、Nhut、J.M等、Appl.Catal.A 254:第345〜63頁(2003年))。一方では、酸化によりカーボンナノファイバーは親水性になるので、その結果、水性触媒調製が向上した湿潤特性のため可能となる。一方で、表面上に生じた酸素含有官能基は、触媒前駆錯体のためのアンカーポイントとして働くことができる。ここでは、カルボキシル基が重要な役割を果たす(Boehm、H.P.、Carbon 32:759:69(1994年))。
【0008】
カーボンナノファイバーの処理のための多くの方法は、文献に記載されている。該方法として、酸素(Morishita,K.、Takarada T.、Carbon 35:第977〜81頁(1997年)、Ajayan,P.M.等、Nature 362:第522〜5頁(1993年)、Ebbesen,T.W.等、Nature 367:第519〜9頁(1997年))、オゾン(Byl,O.等、Langmuir 21:第4200〜4(2005年))、二酸化炭素(Tsang,S.C.等、Nature 262:第520〜2頁(1993年)、Seo,K.等、J.Am.Chem.Soc.125:第13946〜7頁(2003年))、水(Xia,W.等、Mater 19:第3648〜52頁(2007年))、過酸化水素(Xu,C.等、Adv.Engineering Mater 8:第73〜77頁(2006年))およびプラズマ処理(Bubert,H等、Anal.Bioanal.Chem.374:第1237〜41頁(2002年))、ならびに全ての中で最も頻繁に使用される硝酸処理(Lakshminarayanan、P.V.等、Carbon 42:第2433〜42頁(2004年)、Darmstadt,H.等、Carbon 36:第1183〜90頁(1998年)、Darmstadt,H等、Carbon 35:第1581〜5頁(1997年))が挙げられる。二酸化窒素は、通常の炭素材料、例えば非晶質炭素またはカーボンブラック(Jacquot,F等、40:第335〜43頁(2002年);Jeguirim、M.等、Fuel 84:第1949〜56頁(2005年)等を処理するために用いられる。かかる処理の1つの目的は、カーボンナノファイバーをきれいにし、細かく刻みおよび広げるためであってもよい(Liu,J.等、280:第1253〜6頁(1998年))。
【0009】
とりわけ多量のカルボキシル基が必要である場合、高度な酸化剤、例えば硝酸または硝酸および硫酸の混合物等のみを、攻撃的な反応条件下で、酸素含有官能基を製造するために効果的に用いることができる(Toebes,M.L.等、Carbon 42:第307〜15頁;Ros、T.G.等、8:第1151〜62頁、(2002年))。しかしながら、腐食性酸による酸化は、液相中において、カーボンナノファイバーへの構造的損傷を生じさせ留ことが多く(Ros,T.G.等、8:第1151〜62頁(2002年);Zhang,J.等、J.Phys.Chem.B 107:第3712〜8頁(2003年))、その少なくとも一部は、還流および撹拌に起因する機械応力により生じる。さらに、とりわけ小さい直径のカーボンナノファイバーについて、処理カーボンナノファイバーを酸から分離することは困難である。しかしながら、分離は、通常、ろ過により、カーボンナノファイバーの実質的な量を失いながら行われる。さらに、その後の乾燥工程は、カーボンナノファイバーの凝集を頻繁に生じさせ、これは、その有用性に影響を与える。
【0010】
気相処理は、これらの問題を避けるために魅力的な代替手段であるように見える。しかしながら、従来法による空気、オゾン、酸素またはプラズマによる気相処理は、通常、硝酸による処理よりもあまり効果的ではない(Ros,T.G.等、8:第1151〜62頁(2002年))。WO06/135439では、XPSにより測定された0.069の酸素の最大表面濃度が、用いる種々の酸化法により得られる。また、カルボキシル基よりも多くのカルボニル基が、水の不足のためにこれらの方法により形成されることが知られており、このことは、カーボンナノファイバーがあまり効果的に官能基化されないことを意味する。
【0011】
水溶液中における腐食性酸による酸化処理は、通常、最も効果的な方法である。最も大きい欠点は以下のとおりである:
1.撹拌および還流により引き起こされる機械応力は、カーボンナノファイバーへの構造的な損傷について少なくとも部分的な原因となる。
2.酸処理カーボンナノファイバー、特に小径のナノ繊維のろ過による分離は、高い損失を伴う。
3.引き続きの乾燥工程はまた、その有用性を低減させるカーボンナノファイバーの凝集を生じさせる。
【0012】
気相法は、上記の問題を避ける場合、従来法による処理法について魅力的な代替手段である。しかしながら、従来法による気相処理(オゾン、空気およびプラズマ等)は、硝酸による処理と比べてあまり効果的ではない。また、今日までに、水の不足は、カルボニル基を優先的に形成し、カルボキシル基をあまり優先的に形成しないことを意味することが知られている。
【0013】
US04/0253374には、ヘリウムを担体ガスとして流動床反応器において400℃の温度で用いる、予備処理希釈水性硝酸溶液によるカーボンナノファイバーをきれいにし、および強化するための方法が記載され、ニトロ基が表面で形成される。この方法の欠点は、カーボンナノファイバー凝集体を懸濁液中で維持するのに必要な多量のヘリウムの使用、および担体ガスにより行われるカーボン粒子の互いの摩擦により形成される粉塵である。
【0014】
WO02/45812A2には、カーボンナノファイバーのための洗浄方法が記載され、蒸気は、該ファイバーが処理される前に凝縮されるので、その結果、該ファイバーはろ過されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】英国特許出願公開第1469930号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第56004号明細書
【特許文献3】国際公開第06/135439号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第04/0253374号明細書
【特許文献5】国際公開第02/45812A2号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】S.Iijima、「Nature 354」、1991年、第56〜58頁、
【非特許文献2】Bacon等、「J.Appl.Phys.」、1960年、第34巻、第283〜90頁
【非特許文献3】Zhou等、「Science」、1994年、第263巻、第1744〜47頁
【非特許文献4】Lavin等、「Carbon」、2002年、第40巻、第1123〜30頁
【非特許文献5】Toebes,M.L.等、「J.Catal.」、2003年、第214巻、第78〜87頁
【非特許文献6】de Jong K.P.、Geus J.W.、「Catal.Rev.−Sci.Eng.」、2000年、第42巻、第481〜510頁
【非特許文献7】Serp P.等、「Appl.Catal.A」、2003年、第253巻、第337〜58頁
【非特許文献8】Nhut、J.M等、「Appl.Catal.A」、2003年、第254巻、第345〜63頁
【非特許文献9】Boehm、H.P.、「Carbon」、1994年、第32巻、第759〜69頁
【非特許文献10】Morishita,K.、Takarada T.、「Carbon」、1997年、第35巻、第977〜81頁
【非特許文献11】Ajayan,P.M.等、「Nature」、1993年、第362巻、第522〜5頁
【非特許文献12】Ebbesen,T.W.等、「Nature」、1997年、第367巻、第519〜9頁
【非特許文献13】Byl,O.等、「Langmuir」、2005年、第21巻、第4200〜4
【非特許文献14】Tsang,S.C.等、「Nature」、1993年、第262巻、第520〜2頁
【非特許文献15】Seo,K.等、「J.Am.Chem.Soc.」、2003年、第125巻、第13946〜7頁
【非特許文献16】Xia,W.等、「Mater」、2007年、第19巻、第3648〜52頁、
【非特許文献17】Xu,C.等、「Adv.Engineering Mater」、2006年、第8巻、第73〜77頁
【非特許文献18】Bubert,H等、「Anal.Bioanal.Chem.」、2002年、第374巻、第1237〜41頁
【非特許文献19】Lakshminarayanan、P.V.等、「Carbon」、2004年、第42巻、第2433〜42頁
【非特許文献20】Darmstadt,H.等、「Carbon」、1998年、第36巻、第1183〜90頁
【非特許文献21】Darmstadt,H.等、「Carbon」、1997年、第35巻、第1581〜5頁
【非特許文献22】Jeguirim、M.等、「Fuel」、2005年、第84巻、第1949〜56頁
【非特許文献23】Toebes,M.L.等、「Carbon」、第42巻、第307〜15頁
【非特許文献24】Zhang,J.等、「J.Phys.Chem.B」、2003年、第107巻、第3712〜8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、可能な限り簡単な高効率の気相法を提供することであり、かかる気相法は、カーボンファイバーの変性および官能基化を構造変化および形態変化を伴わずに可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1実施態様では、本発明の目的は、
a)カーボンファイバー1を、入口3および出口4を有する反応器2中に設置し、
b)反応器2を125〜500℃の範囲の温度に過熱し、
c)硝酸5からの蒸気を反応器2へ通過させ、および
d)次いで、処理カーボンファイバーを乾燥させる、
カーボンファイバーの官能基化のための方法により達成される。
【0019】
本発明の意味の範囲内での「硝酸」は、例えば水により希釈し、または硫酸と組み合わせて用いる可能性を排除しない。
【0020】
従って、ろ過による問題のある分離を防止する、硝酸蒸気での処理によるカーボンファイバーの官能基化のための簡単かつ高効率な方法を提供する。
【0021】
従来法による湿潤HNO3処理と比べて、著しくより多量の酸素種を、X線光電子分光法(XPS)によって表面上で検出することができる。該処理は、形態または凝集度を損なわない。
【0022】
従って、カーボンナノファイバーの酸化および官能基化のための新規な気相法を提供する。硝酸蒸気による処理は、例えば液体硝酸による従来法と比べて、カーボンナノファイバー表面上で酸素含有官能基を製造するより効果的な方法であり、形態および凝集度は低減されず、処理温度を自由に選択することができる。さらに、HNO3気相処理の使用により、ろ過、洗浄および乾燥工程が回避されるのでより有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、硝酸蒸気によるカーボンナノファイバーの処理のための配置の概略図を示す。マルチチューブ固定床反応器を抵抗過熱テープにより過熱し、丸底フラスコを油浴により過熱する。
【図2】図2は、次のXPSスペクトルを示す:(a)XPS概観スペクトル、15時間HNO3蒸気で種々の温度で処理したカーボンナノファイバーのXPスペクトル(b)C 1sおよび(c)O 1s。液体HNO3による120℃での従来法により1.5時間処理したカーボンナノファイバーのO 1sスペクトルは、比較のために(d)に示す。
【図3】図3は、HNO3蒸気で種々の時間および様々な温度で処理されたカーボンナノファイバーの原子表面濃度(XPS)から誘導された炭素に対する酸素の割合を示す。従来法による処理後の酸素/炭素の割合も比較のために示す。
【図4】図4は、未処理カーボンナノファイバー(a)およびHNO3蒸気により15時間200℃で処理された未処理カーボンナノファイバーのSEM像を示す。
【図5】図5は、ガス状HNO3、NO2、NO2:O2(1:1)および液体HNO3で処理した際のTPD脱離プロファイルの比較を示す。全ての処理は3時間行った。グラフは全て1gのカーボンファイバーについて標準化されている。
【図6】図6は、カーボンナノファイバーの種々の化学結合酸素含有基の概観を示す。
【図7】図7は、HNO3による200℃で15時間の気相処理の例を用いるTPDプロファイル((a)COプロファイル、(b)CO2プロファイル)のためのピークフィッティングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
カーボンナノファイバーは、カーボンファイバー、特に3〜500nmの範囲の外径を有するカーボンファイバーとして有利に用いられる。直径は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて決定することができる。好ましい範囲未満の直径を有するカーボンファイバーを用いる場合には、カーボンファイバーは処理中に破壊されるか、または少なくともその機械的特性は低下する。好ましい範囲を越える外径を有するカーボンファイバーを用いる場合には、BET比表面積が、特定の用途、例えば触媒作用等にとって非常に小さい場合がある。
【0025】
本発明の意味の範囲内のカーボンナノファイバーは、全ての円筒型またはスクロール型の、またはオニオン状構造を有する単一壁または多壁カーボンナノチューブである。円筒型またはスクロール型またはその混合物の多壁カーボンナノチューブを好ましく用いる。5を越える、好ましくは100を越える長さと外径の比を有するカーボンナノファイバーを特に好ましく用いる。
【0026】
カーボンナノファイバーを凝集体の形態で特に好ましく用い、該凝集体は、特に0.05〜5mm、好ましくは0.1〜2mm、特に好ましくは0.2〜1mmの範囲での平均径を有する。
【0027】
好ましくは、用いるカーボンナノファイバーは、実質的に、3〜100nm、特に好ましくは5〜80nm、特に好ましくは6〜60nmの平均径を有する。
【0028】
単一連続または不連続のグラフェン層を有する初めに記載したスクロール型の既知のCNTとは異なり、互いに積み重なりおよび丸まった幾つかのグラフェン層からなるCNT構造(マルチスクロール型)はまた、本出願人により見出された。これらのカーボンナノチューブおよびこれから形成されたカーボンナノチューブ凝集体は、例えば公式出願番号102007044031.8を有する未公開独国特許出願により提供される。CNTおよびその製造に関するその内容はここに本出願の開示として含まれる。かかるCNT構造が単純スクロール型のカーボンナノチューブに関連している方法は、多壁円筒状モノカーボンナノチューブ(円筒状MWNT)の構造が単壁円筒状カーボンナノチューブ(円筒状SWNT)の構造に関連している方法と比較し得る。
【0029】
オニオン型構造とは対照的に、断面から見た場合、個々のグラフェン層またはグラファイト層は、これらのカーボンナノファイバー中で、CNTの中心から中断することなく外縁に連続的に伸びる。これは、例えば、単一スクロール構造を有するCNT(Carbon 34、1996年、第1301〜1303頁)またはオニオン型構造を有するCNT(Science 263、1994年、第1744〜1747頁)と比較してより開放した端が挿入のための入り口帯として利用可能である場合に、他の物質を管状骨格中により良好かつより速い挿入を可能とすることができる。
【0030】
カーボンナノチューブの製造のために今日知られている方法としては、例えば、アーク放電法、レーザーアブレーション法および触媒法が挙げられる。これらの方法の多くにおいて、カーボンブラック、非晶質炭素および大径を有する繊維が副生成物として形成される。触媒法では、担持触媒粒子の堆積物とインサイチュで形成されるナノメーター範囲の直径を有する金属中心の堆積物とを区別することができる(流れ法として知られている)。反応条件下でガス状である炭化水素からの炭素の触媒的堆積による製造について(以下、CCVDと称する;触媒的炭素蒸着)、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼンおよびさらなる炭素含有反応物が可能性のある炭素供与体として挙げられる。従って、触媒法により得られるCNTを好ましく用いる。
【0031】
一般に、触媒は、金属、金属酸化物または分解性もしくは還元性金属成分を含む。例えばFe、Mo、Ni、V、Mn、Sn、Co、Cuおよび他の亜群元素が触媒のための金属として先行技術に記載されている。ほとんどの個々の金属は、カーボンナノチューブの形成を補助する傾向を有するが、高収率および非晶質炭素の低割合が先行技術に従って、上記金属の組合せに基づく金属触媒により有利に達成される。その結果、混合触媒を用いて得られるCNTの使用は、好ましい。CNTを製造するための特に有利な触媒系は、系列Fe、Co、Mn、MoおよびNiからの2以上の元素を含有する金属または金属化合物の組み合わせに基づく。
【0032】
経験から、カーボンナノチューブの形成および形成されたチューブの特性は、触媒として用いられる金属成分または複数の金属成分の組合せ、必要に応じて用いられる触媒担体材料、および触媒と担体との間の相互作用、出発物質ガスおよび分圧、水素またはさらなるガスの添加、反応温度および滞留時間または使用される反応器について複雑な依存性を有することが示された。カーボンナノチューブの製造に用いる特に好ましい方法は、WO2006/050903A2から既知である。
【0033】
種々の触媒系を用いるこれまでに記載の種々の方法では、異なった構造のカーボンナノチューブが生成され、これは、大部分はカーボンナノチューブパウダーとして工程から取り出すことができる。
【0034】
本発明に好適なさらなるカーボンナノチューブは、原理上、以下の文献参照に記載された方法により得られる。
【0035】
100nm未満の直径を有するカーボンナノチューブの製造は、EP205556B1に初めて記載されている。この製造のために、軽質(すなわち、短鎖および中鎖脂肪族または単核または二核芳香族)炭化水素および鉄系触媒が用いられ、これによって炭素担体化合物は800℃超〜900℃の温度にて分解される。
【0036】
WO86/03455A1には、3.5〜70nmの一定直径、100を越えるアスペクト比(長さと直径の比)およびコア領域を有する円筒構造を有するカーボンフィラメントの製造が記載されている。これらのフィブリルは、多くの配向炭素原子の連続層からなり、これらはフィブリルの円筒軸の周りに同心円上に配置されている。これらの円筒状ナノチューブは、CVD法によって炭素含有化合物から金属含有粒子を用いて850℃〜1200℃の温度で製造された。
【0037】
円筒構造を有する従来法によるカーボンナノチューブの製造に適している触媒の製造のための他の方法がWO2007/093337A2から知られ始めている。この触媒を固定床において用いることにより、5〜30nmの範囲での直径を有する円筒形カーボンナノチューブの高い収率が生じる。
【0038】
円筒カーボンナノファイバーの完全に異なった製造方法は、Oberlin、EndoおよびKoyamによって記載されている(Carbon 14、1976年、第133頁)。この方法では、芳香族炭化水素、例えばベンゼン等を、金属触媒により反応させる。形成されるカーボンナノチューブは、あまりグラファイト的に配向していない炭素がさらに存在する、ほぼ触媒粒子の直径を有する明確なグラファイト中空コアを有する。チューブ全体は、高温(2500℃〜3000℃)での処理によってグラファイト化することができる。
【0039】
現在、上記の方法(アーク放電、噴霧熱分解またはCVD)のほとんどは、カーボンナノチューブの製造に用いられる。しかしながら、単壁円筒カーボンナノチューブの製造は、装置について極めて複雑であり、既知の方法により、極めて遅い形成速度で、しばしば多くの二次反応をも伴って進行し、これは、高い割合の望ましくない不純物を生じさせ、すなわち、このような方法からの収率は比較的低い。このため、このようなカーボンナノチューブの製造は今日でも極めて技術的に複雑であり、従って、これらは主に、少量で非常に専門の用途に用いられる。しかしながら、本発明のためのその使用は考えられるが、円筒またはスクロール型の多壁CNTの使用より好ましくない。
【0040】
現在、多壁カーボンナノチューブの製造は、ネスト化された途切れのない円筒ナノチューブの形態またはスクロールまたはオニオン構造の形態で、商業的に大部分は触媒法を用いて比較的多くの量で行われている。これらの方法は、通常、上記のアーク放電法および他の方法より高い収率を示し、現在、キログラム規模(世界的に1日あたり数百キロ)で通常行われている。このようにして製造されるMWカーボンナノチューブは、概して、単壁ナノチューブよりもいくぶん高価でなく、従って、他の物質中で、例えば性能強化添加剤として用いられる。
【0041】
従って、10〜500m2/gの範囲、特に20〜200m2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンファイバーを好ましく用いる。BET比表面積は、例えば、DIN66131に従ってPorotec Sorptomatic 1990を用いて決定することができる。好ましい範囲未満のBET比表面積を有するカーボンファイバーを用いる場合、このことは、既に記載の通り、カーボンファイバーが特定の用途、例えば触媒作用にもはや適さないことを意味することがある。好ましい範囲を超えるBET表面積を有するカーボンファイバーを用いる場合、このことは、カーボンファイバーが硝酸蒸気による処理中に非常に激しく攻撃されるかまたは破壊されることを意味することがある。
【0042】
本発明による方法では、凝縮器6を反応器出口4の後に設置し、凝縮物のための出口7を、戻り配管8により硝酸5のための貯蔵容器9に接続する。これは、液体状態での凝縮硝酸が反応器中に存在するカーボンファイバーを湿潤させること防ぐ。特に、硝酸の蒸気相における処理は、カーボンファイバーの表面を、液体相中における処理よりも実質的により良好に酸素で変性することを可能とする。
【0043】
特に油浴10で過熱されるガラスフラスコは、硝酸のための貯蔵容器9として好ましく用いる。貯蔵容器9は、反応器2の下に有利に設置する。このようにして、硝酸からの蒸気は、ガラスフラスコ中で油浴により過熱される場合、反応器入り口によりカーボンファイバーと接触させるようにすることができる。従って、反応器は、好ましくは、垂直に設置し、硝酸蒸気のための入り口をカーボンファイバーの下に設置し、出口をカーボンファイバーの上に設置する。従って、蒸気は、その後に硝酸を凝縮し、貯蔵容器に戻す場合には、反応器を通過させておよび反応器出口を通過させて凝縮器中に流すことができる。反応器2は、例えば加熱器11により過熱する。
【0044】
工程b)の後、反応器は、3〜20時間の範囲で、特に5〜15時間の範囲での期間、この温度で放置する。より短い時間の場合には、表面変性は、非常に僅かになる。上記の好ましい範囲を超える場合、表面変性におけるさらなる向上は見られない。特に、処理期間のための温度を250℃未満の温度に、およびそれとは独立して150℃を越える温度に設定する。温度は、酸素によるカーボンファイバーの表面変性に特に適していると証明されている。
【0045】
乾燥段階である工程(c)は、好ましくは0.5〜4時間の範囲での期間を越えて、およびそれとは独立して80〜150℃の範囲の温度で好ましく実施する。乾燥は、貯蔵容器中の硝酸の過熱をさらなる蒸気が生成されないように停止することにより最も簡単に行うことができる。
【0046】
カーボンファイバーは、蒸気流中に、反応器中で保持装置12により設置することができる。該保持装置は、例えばスクリーン、グリッドまたはグレートであってよい。
【0047】
液体硝酸による通常の処理と比べて、125℃での硝酸による5時間処理は、例えば含浸により適用することができる、カーボンナノファイバーを触媒のための支持体として用いるための効率的な方法であるように見える。
【0048】
さらなる実施態様では、本発明の目的は、XPSで計測された原子表面濃度から誘導される炭素原子に対する酸素原子の割合が0.18を越えることを特徴とするカーボンファイバーにより達成される。
【0049】
既知の方法により、上記のような高い酸素の表面濃度を有するカーボンファイバーを製造することは可能ではなかった。従って、意外にも、これらのカーボンファイバーは初めて利用可能になった。既知の表面変性カーボンファイバーと比べて、本発明によるカーボンファイバーは、有機分子でのさらなる表面変性により新規な応用の分野全体を広げる材料を提供する。
【0050】
従って、XPSにより計測された原子表面濃度から誘導された炭素原子に対する酸素原子の割合が0.2を越える上記のカーボンファイバーは、特に好ましい。本発明では、XPSはX線光電子分光法を表す。
【0051】
官能化カーボンナノファイバーの引き続きの使用のため、硝酸気相処理によりカーボンナノファイバーの表面で生成される官能基が、さらなる反応工程のために可能な限り反応性であることが望ましい。できるだけ多くの数で含まれるべきフリー非エステル化カルボキシル基またはカルボン酸基、ならびに適切な反応性を有するカルボン酸無水物基は、特に反応性である。
【0052】
意外にも、カルボン酸基の特に高い割合を有するカーボンファイバーは初めて、新規な酸化法の使用により得られた。このため、化学結合形態で炭素1gあたり合計400μmolを越えるカルボン酸基およびカルボン酸無水物基を含有するカーボンファイバーもまた好ましい。化学結合形態で炭素1gあたり合計350μmolを越えるカルボン酸基を含有する上記のカーボンファイバーが特に好ましい。
【0053】
TPD分析において可能な限り低い出口温度は、その後の反応について脱離する官能基の可能な限り良好な反応性の確かな兆候である。CO2は、大部分は、COより低い温度で脱離し、45%を越える化学結合酸素がTPD分析においてCO2として脱離するカーボンナノファイバーが好ましい。CO2脱離基またはCO2脱着基に結合した酸素を、CO脱離基に結合した酸素より多く含有するカーボンファイバーが、極めて特に好ましい。
【0054】
さらなる実施態様では、本発明の課題は、本発明による方法により得られるカーボンファイバーにより達成される。
【0055】
さらなる実施態様では、本発明の目的は、複合材料中における、エネルギー貯蔵における、センサーとして、吸着剤として、不均一系触媒のための支持体としてまたは触媒活性材料として本発明によるカーボンファイバーの使用により達成される。
【0056】
表1は、CO2脱離についてのTPD計測からの種々の官能基の定量化のための値を示す。該量は、μmol/g(10−6mol/g)において示される。
【0057】
表2は、CO脱離についてのTPD測定からの種々の官能基の定量化のための値を示す。該量は、μmolg(10−6mol/g)において示される。
【実施例】
【0058】
用いたHNO3気相処理配置を図1に示す。通常、200mgのカーボンナノファイバー1(50〜200nm直径、Applied Sciences、オハイオ州、米国)を反応器2に設置し、種々の実験において、125℃、150℃、175℃、200℃、250℃の温度に過熱した。頂上に設置した向流凝縮器6を排気ガスへ接続した。5時間、10時間および15時間の定められた時間後に、油浴10の過熱を停止し、反応器1の過熱をさらに2時間110℃で処理カーボンナノファイバーを乾燥させるために維持した。次いで、カーボンナノファイバー1を広範囲にわたって特性化した。用いた配置は、凝縮器内の凝縮液体硝酸が試料を越えて逆流するのを効率的に防いだ。それに応じて、液体硝酸でのカーボンナノファイバーの湿潤を避ける場合、気相条件下で完全に処理を行った。X線光電子分光法(XPS)を、超高真空装置においてGammadata Scienta SES 2002分析器を用いて行った。可能性のある帯電効果を低速電子源により弱めた。結合エネルギーは、主カーボン信号(C 1s)の位置に284.5eVで較正した。
【0059】
XP分光法は、酸素含有官能基を特性化するための証明法である。異なった酸素含有基は、C 1sスペクトルおよびO 1sスペクトル(Okpalugo,T.I.T.等、Carbon 43:第153〜61頁 (2005年)、 Martinez, M. T.等、Carbon 41:第2247〜56 (2003年))を用いて区別することができる。例として、XPスペクトルを、15時間種々の温度で処理したカーボンナノファイバーについてここに示す。図2(a)は、種々の温度で15時間HNO3気相処理後のカーボンナノファイバーのXPS概観スペクトルを示す。C 1s、O 1sおよびO KLL領域における信号を明確に視認できる。窒素の存在は、弱いN 1s信号により約400eVで示される。O 1s信号の強度は、温度上昇として増加するのに対し、C 1s信号の強度は対応して減少する。
【0060】
C 1s領域における信号の割り当ては、以下の文献により行われる(Lakshminarayanan,P.V.等、Carbon 42:第2433〜42頁(2004年)、Okpalugo,T.I.T.等、Carbon 43:第153〜61頁(2005年)):284.5eVでグラファイト中において炭素、286.1eVでフェノールおよびエーテル中において酸素に単一結合した炭素(C−O)、287.5eVでケトンおよびキノン中において酸素に二重結合した炭素(C=O)、288.7eVでカルボキシル基、カルボン酸無水物およびエステル中において2つの酸素原子に結合した炭素、(−COO)および190.5eVでの芳香族化合物中の特性「振動」ライン(n→n*遷移)。15時間HNO3気相処理後のC 1sスペクトルを、図2(b)に示す。284.5eVでのC 1s主信号のより高い結合エネルギーでの温度上昇としての肩の増加規模を、信号対称性を比較することにより見ることができる。−COO基の量における鋭い上昇を示す288.7eVでの信号の強度成長は、さらにより明確である。これらは、主にカルボキシル基および無水物であり、種々の用途のための炭素表面上での最も重要な酸素含有官能基である。
【0061】
2つの主な寄与は、点線により示され、531.5eVでキノン、ケトンまたはアルデヒド中において炭素に二重結合した酸素原子(C=O)に、および533.eVでエーテル、ヒドロキシル基またはフェノール中において炭素に単一結合した酸素原子(C−O)にそれぞれ割り当てられる(Bubert,H.等、Anal.Bioanal.Chem.374:第1237〜41頁(2002年)、Zhang,J.等、J.Phys. Chem.B 107:第3712〜8頁(2003年))。単一および二重に炭素結合した酸素原子はいずれも、エステル、カルボキシル基、無水物またはピラン中に存在する場合、これらの基の酸素原子はいずれも2つのO 1s信号に寄与する。O 1sスペクトルにおいて、比較的低い処理温度で、主信号がC−O信号結合により支配されることは明らかであり、これは恐らく、低い温度でヒドロキシル基の好ましい形成に起因する。温度が増加する場合、C=O二重結合の形成は、鋭く上昇する。比較のために、従来法によるHNO3処理によるカーボンナノファイバーのO 1sスペクトルを図2(d)に示す。ここでは、533.2eVでの信号への寄与は、531.5eVでの信号への寄与よりも大きく、低い温度でのHNO3気相処理のためのスペクトルに類似する。同様の傾向を示す結果は、従来法による湿潤HNO3法による文献に得られており、すなわち、533.3eVでの信号は531.6eVでの信号より大きかった。従って、HNO3気相処理は、収率を向上させるだけでなく、異なった酸素含有官能基の数をカーボンナノファイバー上でHNO3による従来法と比べて変化させる。異なった酸素種の形成、例えばC=O等は、温度に極めて依存することが知られている。122℃の濃縮HNO3の共沸点限界に起因して、従来法によるHNO3処理を、122℃を越える温度および大気圧で行うことが可能であり、その結果、所定の反応時間内での特定種の製造が制限される。
【0062】
炭素および酸素の原子表面濃度は、XPS計測により決定される(Xia,W.等、Catal.Today 102〜103:第34〜9頁(2005年))。種々の処理後のカーボンナノファイバー中の炭素に対する酸素の割合(O/C)を図3に示す。125℃でのHNO3処理後のO/C割合は、約0.155であることを見ることができ、これは120℃および1.5時間での従来法によるHNO3処理でのO/C割合よりもやや高く、120℃で1.5時間の従来法による混合酸処理(HNO3およびH2SO4)よりもやや低い。該割合は、温度が上昇しおよび処理時間が長くなる場合に増加する。175℃または200℃での処理の15時間後、該割合は、0.21を越える。これらの条件下での、カーボンナノファイバー上の酸素の量は、相関曲線の平坦化により示される通り、飽和限界に達するように見える。
【0063】
HNO3気相処理に次いで、カーボンナノファイバーを、さらなる処理工程、例えばろ過、洗浄または乾燥等なしでさらなる工程に用いることができる。カーボンナノファイバーの嵩密度における変化は処理後に観測されず、SEM像は、処理の結果生じたカーボンナノファイバーに対する形態的変化がないことを裏付ける(図4)。液体HNO3での従来法による処理によって生じた通常存在する凝集は、HNO3気相処理により観測されなかった。さらに、カーボンナノファイバーの形態は、気相処理により変化しない(図3)。種々の炭素基材、例えばグラファイトフィルムまたは炭素繊維上で成長したカーボンナノファイバーの処理も比較された(Briggs,D.等、John Wiley & Sons 第635〜6頁(2004年)、Li,N.等、Adv.Mater.19:第2957〜60頁(2007年))。撹拌HNO3溶液中での1.5時間の還流後、カーボンナノファイバーは、暗色懸濁液を生じさせながら、基材から大部分脱着し始めた。しかしながら、HNO3気相処理後、カーボンナノファイバーは、損傷を受けずに基材上に残存した。この結果は、二次構造が例えば垂直配向カーボンナノファイバーまたは分枝カーボンナノファイバー複合材料中において維持される必要があるカーボンナノファイバー用途について特に重要である。
【0064】
カーボンナノファイバー上で反応した官能基の性質についての情報を得るために、TPD(昇温脱離)測定を行った。
【0065】
上記の目的を達成するために、約150〜200mgの官能基化カーボンナノファイバー(3時間300℃にてHNO3で処理したBaytubes C150P)を、10mm内径を有する水平石英管中に設置し、ヘリウム(99.9999%純度、流速30sccm)を担体ガスとして通過させた。次いで、試料を室温から1000℃に2K/分の過熱速度で過熱し、COおよびCO2の放出量を、オンライン赤外線検出器(Binos)を用いてガス流中で決定した。温度は、試料を室温にまで冷却する前に1000℃にて合計1時間保持した。検出器自体は、最初に、特定の気体で0〜4000ppmの計測範囲について較正した。
【0066】
酸化官能基化の他の方法と比較するために、カーボンナノファイバー(Baytubes C150P)を液相中でHNO3を用いて、ならびに気相中でNO2を用いておよびNO2およびO2の混合物を用いて従来法により処理した。これらの気相処理を、20mmの内径を有する垂直石英管中で行った。ある実験では、NO2(ヘリウム中10体積%)を、カーボンナノファイバーの床へ10sccmの流速で通過させた。NO2+O2による処理のために、酸素(N2中20.5体積%、5sccm)を、NO2/Heガス流中に、1:1のNO2:O2比を担体ガス中で確立させるためさらに通過させた。液相中における処理のために、カーボンナノファイバーを3時間濃縮硝酸(65%、J.T.Baker)中で還流した。
【0067】
結果(図5)は、COおよびCO2の顕著に異なった放出を、異なった官能基化カーボンナノファイバーについての温度の関数として示す。気相中においてHNO3で処理されたカーボンナノファイバーは、酸素含有基で官能基化されたより高い表面全体を示しながら、多量のCOおよびCO2をいずれも放出することが明らかに分かる。さらに、HNO3を用いて気相中で処理された試料は、特にカルボン酸無水物官能基の高い割合を示しながら、COおよびCO2の高い放出速度を約600℃で示す。
【0068】
しかしながら、図5における放出曲線は、COがCO2よりも極めて高い温度で放出されることを示す。このことは、COを脱離する官能基のより高い結合強度に起因する。
【0069】
図6は、酸化カーボンナノファイバー中に通常存在する官能基の概観を提供する。脱離温度のための以下の割り当ては、文献から抜粋することができる。
【0070】
【0071】
これらの割り当てに基づいて、ガウス正規分布での曲線の合計をTPD曲線(図7)に調節し、これから、カーボンナノファイバー中に本来含まれる官能基への量的割り当て(表1および2)を決定した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンファイバーの硝酸蒸気による官能基化のための方法、かかる方法により変性されたカーボンファイバーおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術によれば、カーボンナノファイバーは主に、3および100nmの間の直径および該直径の数倍の長さを有する円筒状カーボンチューブであると理解される。該チューブは、配向炭素原子の1以上の層からなり、異なった形態のコアを有する。また、該カーボンナノファイバーは、例えばカーボンフィブリルまたは中空カーボンファイバーとして既知である。
【0003】
カーボンナノファイバーは、専門文献において長い間知られている。Iijima(出版物:S.Iijima、Nature 354、第56〜58頁、1991年)は、ナノチューブの発見者として通常記載されるが、これらの物質(特に、多数のグラファイト層を有する繊維状グラファイト物質)は、1970年代または1980年代初期から知られている。TatesおよびBaker(GB 1469930A1、1977年およびEP 56004 A2)は、炭化水素の触媒破壊からの極めて微細な繊維状炭素の堆積物を最初に記載した。しかしながら、短鎖状炭化水素から製造された炭素フィラメントは、その直径についてさらに詳細に特徴付けられていない。
【0004】
従来法によるこれらのカーボンナノファイバーの構造は、円筒型である。円筒構造のうち、単壁モノカーボンナノチューブと多壁円筒状カーボンナノチューブとの間で区別される。その製造のための通例の方法として、例えば、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学蒸着(CVD)法および触媒化学蒸着法(CCVD)が挙げられる。
【0005】
アーク放電法を用いて、2以上のグラフェン層からなり、途切れのない円筒状に丸まり、および互いにネスト化されたカーボンファイバーを形成することは、Iijima、Nature 354、1991年、第56〜58頁から既知である。回転ベクトルに応じて、キラル配置およびアキラル配置がカーボンファイバーの縦軸に関して可能である。
【0006】
単一連続グラフェン層(スクロール型)または不連続グラフェン層(オニオン型)がナノチューブの構造のための基礎を形成するカーボンファイバー構造は、Bacon等、J.Appl.Phys.34、1960年、第283〜90頁により最初に記載された。該構造は、スクロール型として既知である。次いで、対応する構造がまた、Zhou等(Science、第263巻、1994年、第1744〜47頁)により、およびLavin等(Carbon 40、2002年、第1123〜30頁)により見出された。
【0007】
カーボンナノファイバーの不活性および疎水性の特性に起因して、表面変性および官能基化は、その使用のために、特に触媒作用において必要である(Toebes,M.L.等、J.Catal. 214:第78〜87頁(2003年)、de Jong K.P.、Geus J.W.、Catal.Rev.−Sci.Eng.42:第481〜510頁(2000年)、Serp P.等、Appl. Catal. A 253:第337〜58頁(2003年)、Nhut、J.M等、Appl.Catal.A 254:第345〜63頁(2003年))。一方では、酸化によりカーボンナノファイバーは親水性になるので、その結果、水性触媒調製が向上した湿潤特性のため可能となる。一方で、表面上に生じた酸素含有官能基は、触媒前駆錯体のためのアンカーポイントとして働くことができる。ここでは、カルボキシル基が重要な役割を果たす(Boehm、H.P.、Carbon 32:759:69(1994年))。
【0008】
カーボンナノファイバーの処理のための多くの方法は、文献に記載されている。該方法として、酸素(Morishita,K.、Takarada T.、Carbon 35:第977〜81頁(1997年)、Ajayan,P.M.等、Nature 362:第522〜5頁(1993年)、Ebbesen,T.W.等、Nature 367:第519〜9頁(1997年))、オゾン(Byl,O.等、Langmuir 21:第4200〜4(2005年))、二酸化炭素(Tsang,S.C.等、Nature 262:第520〜2頁(1993年)、Seo,K.等、J.Am.Chem.Soc.125:第13946〜7頁(2003年))、水(Xia,W.等、Mater 19:第3648〜52頁(2007年))、過酸化水素(Xu,C.等、Adv.Engineering Mater 8:第73〜77頁(2006年))およびプラズマ処理(Bubert,H等、Anal.Bioanal.Chem.374:第1237〜41頁(2002年))、ならびに全ての中で最も頻繁に使用される硝酸処理(Lakshminarayanan、P.V.等、Carbon 42:第2433〜42頁(2004年)、Darmstadt,H.等、Carbon 36:第1183〜90頁(1998年)、Darmstadt,H等、Carbon 35:第1581〜5頁(1997年))が挙げられる。二酸化窒素は、通常の炭素材料、例えば非晶質炭素またはカーボンブラック(Jacquot,F等、40:第335〜43頁(2002年);Jeguirim、M.等、Fuel 84:第1949〜56頁(2005年)等を処理するために用いられる。かかる処理の1つの目的は、カーボンナノファイバーをきれいにし、細かく刻みおよび広げるためであってもよい(Liu,J.等、280:第1253〜6頁(1998年))。
【0009】
とりわけ多量のカルボキシル基が必要である場合、高度な酸化剤、例えば硝酸または硝酸および硫酸の混合物等のみを、攻撃的な反応条件下で、酸素含有官能基を製造するために効果的に用いることができる(Toebes,M.L.等、Carbon 42:第307〜15頁;Ros、T.G.等、8:第1151〜62頁、(2002年))。しかしながら、腐食性酸による酸化は、液相中において、カーボンナノファイバーへの構造的損傷を生じさせ留ことが多く(Ros,T.G.等、8:第1151〜62頁(2002年);Zhang,J.等、J.Phys.Chem.B 107:第3712〜8頁(2003年))、その少なくとも一部は、還流および撹拌に起因する機械応力により生じる。さらに、とりわけ小さい直径のカーボンナノファイバーについて、処理カーボンナノファイバーを酸から分離することは困難である。しかしながら、分離は、通常、ろ過により、カーボンナノファイバーの実質的な量を失いながら行われる。さらに、その後の乾燥工程は、カーボンナノファイバーの凝集を頻繁に生じさせ、これは、その有用性に影響を与える。
【0010】
気相処理は、これらの問題を避けるために魅力的な代替手段であるように見える。しかしながら、従来法による空気、オゾン、酸素またはプラズマによる気相処理は、通常、硝酸による処理よりもあまり効果的ではない(Ros,T.G.等、8:第1151〜62頁(2002年))。WO06/135439では、XPSにより測定された0.069の酸素の最大表面濃度が、用いる種々の酸化法により得られる。また、カルボキシル基よりも多くのカルボニル基が、水の不足のためにこれらの方法により形成されることが知られており、このことは、カーボンナノファイバーがあまり効果的に官能基化されないことを意味する。
【0011】
水溶液中における腐食性酸による酸化処理は、通常、最も効果的な方法である。最も大きい欠点は以下のとおりである:
1.撹拌および還流により引き起こされる機械応力は、カーボンナノファイバーへの構造的な損傷について少なくとも部分的な原因となる。
2.酸処理カーボンナノファイバー、特に小径のナノ繊維のろ過による分離は、高い損失を伴う。
3.引き続きの乾燥工程はまた、その有用性を低減させるカーボンナノファイバーの凝集を生じさせる。
【0012】
気相法は、上記の問題を避ける場合、従来法による処理法について魅力的な代替手段である。しかしながら、従来法による気相処理(オゾン、空気およびプラズマ等)は、硝酸による処理と比べてあまり効果的ではない。また、今日までに、水の不足は、カルボニル基を優先的に形成し、カルボキシル基をあまり優先的に形成しないことを意味することが知られている。
【0013】
US04/0253374には、ヘリウムを担体ガスとして流動床反応器において400℃の温度で用いる、予備処理希釈水性硝酸溶液によるカーボンナノファイバーをきれいにし、および強化するための方法が記載され、ニトロ基が表面で形成される。この方法の欠点は、カーボンナノファイバー凝集体を懸濁液中で維持するのに必要な多量のヘリウムの使用、および担体ガスにより行われるカーボン粒子の互いの摩擦により形成される粉塵である。
【0014】
WO02/45812A2には、カーボンナノファイバーのための洗浄方法が記載され、蒸気は、該ファイバーが処理される前に凝縮されるので、その結果、該ファイバーはろ過されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】英国特許出願公開第1469930号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第56004号明細書
【特許文献3】国際公開第06/135439号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第04/0253374号明細書
【特許文献5】国際公開第02/45812A2号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】S.Iijima、「Nature 354」、1991年、第56〜58頁、
【非特許文献2】Bacon等、「J.Appl.Phys.」、1960年、第34巻、第283〜90頁
【非特許文献3】Zhou等、「Science」、1994年、第263巻、第1744〜47頁
【非特許文献4】Lavin等、「Carbon」、2002年、第40巻、第1123〜30頁
【非特許文献5】Toebes,M.L.等、「J.Catal.」、2003年、第214巻、第78〜87頁
【非特許文献6】de Jong K.P.、Geus J.W.、「Catal.Rev.−Sci.Eng.」、2000年、第42巻、第481〜510頁
【非特許文献7】Serp P.等、「Appl.Catal.A」、2003年、第253巻、第337〜58頁
【非特許文献8】Nhut、J.M等、「Appl.Catal.A」、2003年、第254巻、第345〜63頁
【非特許文献9】Boehm、H.P.、「Carbon」、1994年、第32巻、第759〜69頁
【非特許文献10】Morishita,K.、Takarada T.、「Carbon」、1997年、第35巻、第977〜81頁
【非特許文献11】Ajayan,P.M.等、「Nature」、1993年、第362巻、第522〜5頁
【非特許文献12】Ebbesen,T.W.等、「Nature」、1997年、第367巻、第519〜9頁
【非特許文献13】Byl,O.等、「Langmuir」、2005年、第21巻、第4200〜4
【非特許文献14】Tsang,S.C.等、「Nature」、1993年、第262巻、第520〜2頁
【非特許文献15】Seo,K.等、「J.Am.Chem.Soc.」、2003年、第125巻、第13946〜7頁
【非特許文献16】Xia,W.等、「Mater」、2007年、第19巻、第3648〜52頁、
【非特許文献17】Xu,C.等、「Adv.Engineering Mater」、2006年、第8巻、第73〜77頁
【非特許文献18】Bubert,H等、「Anal.Bioanal.Chem.」、2002年、第374巻、第1237〜41頁
【非特許文献19】Lakshminarayanan、P.V.等、「Carbon」、2004年、第42巻、第2433〜42頁
【非特許文献20】Darmstadt,H.等、「Carbon」、1998年、第36巻、第1183〜90頁
【非特許文献21】Darmstadt,H.等、「Carbon」、1997年、第35巻、第1581〜5頁
【非特許文献22】Jeguirim、M.等、「Fuel」、2005年、第84巻、第1949〜56頁
【非特許文献23】Toebes,M.L.等、「Carbon」、第42巻、第307〜15頁
【非特許文献24】Zhang,J.等、「J.Phys.Chem.B」、2003年、第107巻、第3712〜8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、可能な限り簡単な高効率の気相法を提供することであり、かかる気相法は、カーボンファイバーの変性および官能基化を構造変化および形態変化を伴わずに可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1実施態様では、本発明の目的は、
a)カーボンファイバー1を、入口3および出口4を有する反応器2中に設置し、
b)反応器2を125〜500℃の範囲の温度に過熱し、
c)硝酸5からの蒸気を反応器2へ通過させ、および
d)次いで、処理カーボンファイバーを乾燥させる、
カーボンファイバーの官能基化のための方法により達成される。
【0019】
本発明の意味の範囲内での「硝酸」は、例えば水により希釈し、または硫酸と組み合わせて用いる可能性を排除しない。
【0020】
従って、ろ過による問題のある分離を防止する、硝酸蒸気での処理によるカーボンファイバーの官能基化のための簡単かつ高効率な方法を提供する。
【0021】
従来法による湿潤HNO3処理と比べて、著しくより多量の酸素種を、X線光電子分光法(XPS)によって表面上で検出することができる。該処理は、形態または凝集度を損なわない。
【0022】
従って、カーボンナノファイバーの酸化および官能基化のための新規な気相法を提供する。硝酸蒸気による処理は、例えば液体硝酸による従来法と比べて、カーボンナノファイバー表面上で酸素含有官能基を製造するより効果的な方法であり、形態および凝集度は低減されず、処理温度を自由に選択することができる。さらに、HNO3気相処理の使用により、ろ過、洗浄および乾燥工程が回避されるのでより有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、硝酸蒸気によるカーボンナノファイバーの処理のための配置の概略図を示す。マルチチューブ固定床反応器を抵抗過熱テープにより過熱し、丸底フラスコを油浴により過熱する。
【図2】図2は、次のXPSスペクトルを示す:(a)XPS概観スペクトル、15時間HNO3蒸気で種々の温度で処理したカーボンナノファイバーのXPスペクトル(b)C 1sおよび(c)O 1s。液体HNO3による120℃での従来法により1.5時間処理したカーボンナノファイバーのO 1sスペクトルは、比較のために(d)に示す。
【図3】図3は、HNO3蒸気で種々の時間および様々な温度で処理されたカーボンナノファイバーの原子表面濃度(XPS)から誘導された炭素に対する酸素の割合を示す。従来法による処理後の酸素/炭素の割合も比較のために示す。
【図4】図4は、未処理カーボンナノファイバー(a)およびHNO3蒸気により15時間200℃で処理された未処理カーボンナノファイバーのSEM像を示す。
【図5】図5は、ガス状HNO3、NO2、NO2:O2(1:1)および液体HNO3で処理した際のTPD脱離プロファイルの比較を示す。全ての処理は3時間行った。グラフは全て1gのカーボンファイバーについて標準化されている。
【図6】図6は、カーボンナノファイバーの種々の化学結合酸素含有基の概観を示す。
【図7】図7は、HNO3による200℃で15時間の気相処理の例を用いるTPDプロファイル((a)COプロファイル、(b)CO2プロファイル)のためのピークフィッティングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
カーボンナノファイバーは、カーボンファイバー、特に3〜500nmの範囲の外径を有するカーボンファイバーとして有利に用いられる。直径は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて決定することができる。好ましい範囲未満の直径を有するカーボンファイバーを用いる場合には、カーボンファイバーは処理中に破壊されるか、または少なくともその機械的特性は低下する。好ましい範囲を越える外径を有するカーボンファイバーを用いる場合には、BET比表面積が、特定の用途、例えば触媒作用等にとって非常に小さい場合がある。
【0025】
本発明の意味の範囲内のカーボンナノファイバーは、全ての円筒型またはスクロール型の、またはオニオン状構造を有する単一壁または多壁カーボンナノチューブである。円筒型またはスクロール型またはその混合物の多壁カーボンナノチューブを好ましく用いる。5を越える、好ましくは100を越える長さと外径の比を有するカーボンナノファイバーを特に好ましく用いる。
【0026】
カーボンナノファイバーを凝集体の形態で特に好ましく用い、該凝集体は、特に0.05〜5mm、好ましくは0.1〜2mm、特に好ましくは0.2〜1mmの範囲での平均径を有する。
【0027】
好ましくは、用いるカーボンナノファイバーは、実質的に、3〜100nm、特に好ましくは5〜80nm、特に好ましくは6〜60nmの平均径を有する。
【0028】
単一連続または不連続のグラフェン層を有する初めに記載したスクロール型の既知のCNTとは異なり、互いに積み重なりおよび丸まった幾つかのグラフェン層からなるCNT構造(マルチスクロール型)はまた、本出願人により見出された。これらのカーボンナノチューブおよびこれから形成されたカーボンナノチューブ凝集体は、例えば公式出願番号102007044031.8を有する未公開独国特許出願により提供される。CNTおよびその製造に関するその内容はここに本出願の開示として含まれる。かかるCNT構造が単純スクロール型のカーボンナノチューブに関連している方法は、多壁円筒状モノカーボンナノチューブ(円筒状MWNT)の構造が単壁円筒状カーボンナノチューブ(円筒状SWNT)の構造に関連している方法と比較し得る。
【0029】
オニオン型構造とは対照的に、断面から見た場合、個々のグラフェン層またはグラファイト層は、これらのカーボンナノファイバー中で、CNTの中心から中断することなく外縁に連続的に伸びる。これは、例えば、単一スクロール構造を有するCNT(Carbon 34、1996年、第1301〜1303頁)またはオニオン型構造を有するCNT(Science 263、1994年、第1744〜1747頁)と比較してより開放した端が挿入のための入り口帯として利用可能である場合に、他の物質を管状骨格中により良好かつより速い挿入を可能とすることができる。
【0030】
カーボンナノチューブの製造のために今日知られている方法としては、例えば、アーク放電法、レーザーアブレーション法および触媒法が挙げられる。これらの方法の多くにおいて、カーボンブラック、非晶質炭素および大径を有する繊維が副生成物として形成される。触媒法では、担持触媒粒子の堆積物とインサイチュで形成されるナノメーター範囲の直径を有する金属中心の堆積物とを区別することができる(流れ法として知られている)。反応条件下でガス状である炭化水素からの炭素の触媒的堆積による製造について(以下、CCVDと称する;触媒的炭素蒸着)、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼンおよびさらなる炭素含有反応物が可能性のある炭素供与体として挙げられる。従って、触媒法により得られるCNTを好ましく用いる。
【0031】
一般に、触媒は、金属、金属酸化物または分解性もしくは還元性金属成分を含む。例えばFe、Mo、Ni、V、Mn、Sn、Co、Cuおよび他の亜群元素が触媒のための金属として先行技術に記載されている。ほとんどの個々の金属は、カーボンナノチューブの形成を補助する傾向を有するが、高収率および非晶質炭素の低割合が先行技術に従って、上記金属の組合せに基づく金属触媒により有利に達成される。その結果、混合触媒を用いて得られるCNTの使用は、好ましい。CNTを製造するための特に有利な触媒系は、系列Fe、Co、Mn、MoおよびNiからの2以上の元素を含有する金属または金属化合物の組み合わせに基づく。
【0032】
経験から、カーボンナノチューブの形成および形成されたチューブの特性は、触媒として用いられる金属成分または複数の金属成分の組合せ、必要に応じて用いられる触媒担体材料、および触媒と担体との間の相互作用、出発物質ガスおよび分圧、水素またはさらなるガスの添加、反応温度および滞留時間または使用される反応器について複雑な依存性を有することが示された。カーボンナノチューブの製造に用いる特に好ましい方法は、WO2006/050903A2から既知である。
【0033】
種々の触媒系を用いるこれまでに記載の種々の方法では、異なった構造のカーボンナノチューブが生成され、これは、大部分はカーボンナノチューブパウダーとして工程から取り出すことができる。
【0034】
本発明に好適なさらなるカーボンナノチューブは、原理上、以下の文献参照に記載された方法により得られる。
【0035】
100nm未満の直径を有するカーボンナノチューブの製造は、EP205556B1に初めて記載されている。この製造のために、軽質(すなわち、短鎖および中鎖脂肪族または単核または二核芳香族)炭化水素および鉄系触媒が用いられ、これによって炭素担体化合物は800℃超〜900℃の温度にて分解される。
【0036】
WO86/03455A1には、3.5〜70nmの一定直径、100を越えるアスペクト比(長さと直径の比)およびコア領域を有する円筒構造を有するカーボンフィラメントの製造が記載されている。これらのフィブリルは、多くの配向炭素原子の連続層からなり、これらはフィブリルの円筒軸の周りに同心円上に配置されている。これらの円筒状ナノチューブは、CVD法によって炭素含有化合物から金属含有粒子を用いて850℃〜1200℃の温度で製造された。
【0037】
円筒構造を有する従来法によるカーボンナノチューブの製造に適している触媒の製造のための他の方法がWO2007/093337A2から知られ始めている。この触媒を固定床において用いることにより、5〜30nmの範囲での直径を有する円筒形カーボンナノチューブの高い収率が生じる。
【0038】
円筒カーボンナノファイバーの完全に異なった製造方法は、Oberlin、EndoおよびKoyamによって記載されている(Carbon 14、1976年、第133頁)。この方法では、芳香族炭化水素、例えばベンゼン等を、金属触媒により反応させる。形成されるカーボンナノチューブは、あまりグラファイト的に配向していない炭素がさらに存在する、ほぼ触媒粒子の直径を有する明確なグラファイト中空コアを有する。チューブ全体は、高温(2500℃〜3000℃)での処理によってグラファイト化することができる。
【0039】
現在、上記の方法(アーク放電、噴霧熱分解またはCVD)のほとんどは、カーボンナノチューブの製造に用いられる。しかしながら、単壁円筒カーボンナノチューブの製造は、装置について極めて複雑であり、既知の方法により、極めて遅い形成速度で、しばしば多くの二次反応をも伴って進行し、これは、高い割合の望ましくない不純物を生じさせ、すなわち、このような方法からの収率は比較的低い。このため、このようなカーボンナノチューブの製造は今日でも極めて技術的に複雑であり、従って、これらは主に、少量で非常に専門の用途に用いられる。しかしながら、本発明のためのその使用は考えられるが、円筒またはスクロール型の多壁CNTの使用より好ましくない。
【0040】
現在、多壁カーボンナノチューブの製造は、ネスト化された途切れのない円筒ナノチューブの形態またはスクロールまたはオニオン構造の形態で、商業的に大部分は触媒法を用いて比較的多くの量で行われている。これらの方法は、通常、上記のアーク放電法および他の方法より高い収率を示し、現在、キログラム規模(世界的に1日あたり数百キロ)で通常行われている。このようにして製造されるMWカーボンナノチューブは、概して、単壁ナノチューブよりもいくぶん高価でなく、従って、他の物質中で、例えば性能強化添加剤として用いられる。
【0041】
従って、10〜500m2/gの範囲、特に20〜200m2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンファイバーを好ましく用いる。BET比表面積は、例えば、DIN66131に従ってPorotec Sorptomatic 1990を用いて決定することができる。好ましい範囲未満のBET比表面積を有するカーボンファイバーを用いる場合、このことは、既に記載の通り、カーボンファイバーが特定の用途、例えば触媒作用にもはや適さないことを意味することがある。好ましい範囲を超えるBET表面積を有するカーボンファイバーを用いる場合、このことは、カーボンファイバーが硝酸蒸気による処理中に非常に激しく攻撃されるかまたは破壊されることを意味することがある。
【0042】
本発明による方法では、凝縮器6を反応器出口4の後に設置し、凝縮物のための出口7を、戻り配管8により硝酸5のための貯蔵容器9に接続する。これは、液体状態での凝縮硝酸が反応器中に存在するカーボンファイバーを湿潤させること防ぐ。特に、硝酸の蒸気相における処理は、カーボンファイバーの表面を、液体相中における処理よりも実質的により良好に酸素で変性することを可能とする。
【0043】
特に油浴10で過熱されるガラスフラスコは、硝酸のための貯蔵容器9として好ましく用いる。貯蔵容器9は、反応器2の下に有利に設置する。このようにして、硝酸からの蒸気は、ガラスフラスコ中で油浴により過熱される場合、反応器入り口によりカーボンファイバーと接触させるようにすることができる。従って、反応器は、好ましくは、垂直に設置し、硝酸蒸気のための入り口をカーボンファイバーの下に設置し、出口をカーボンファイバーの上に設置する。従って、蒸気は、その後に硝酸を凝縮し、貯蔵容器に戻す場合には、反応器を通過させておよび反応器出口を通過させて凝縮器中に流すことができる。反応器2は、例えば加熱器11により過熱する。
【0044】
工程b)の後、反応器は、3〜20時間の範囲で、特に5〜15時間の範囲での期間、この温度で放置する。より短い時間の場合には、表面変性は、非常に僅かになる。上記の好ましい範囲を超える場合、表面変性におけるさらなる向上は見られない。特に、処理期間のための温度を250℃未満の温度に、およびそれとは独立して150℃を越える温度に設定する。温度は、酸素によるカーボンファイバーの表面変性に特に適していると証明されている。
【0045】
乾燥段階である工程(c)は、好ましくは0.5〜4時間の範囲での期間を越えて、およびそれとは独立して80〜150℃の範囲の温度で好ましく実施する。乾燥は、貯蔵容器中の硝酸の過熱をさらなる蒸気が生成されないように停止することにより最も簡単に行うことができる。
【0046】
カーボンファイバーは、蒸気流中に、反応器中で保持装置12により設置することができる。該保持装置は、例えばスクリーン、グリッドまたはグレートであってよい。
【0047】
液体硝酸による通常の処理と比べて、125℃での硝酸による5時間処理は、例えば含浸により適用することができる、カーボンナノファイバーを触媒のための支持体として用いるための効率的な方法であるように見える。
【0048】
さらなる実施態様では、本発明の目的は、XPSで計測された原子表面濃度から誘導される炭素原子に対する酸素原子の割合が0.18を越えることを特徴とするカーボンファイバーにより達成される。
【0049】
既知の方法により、上記のような高い酸素の表面濃度を有するカーボンファイバーを製造することは可能ではなかった。従って、意外にも、これらのカーボンファイバーは初めて利用可能になった。既知の表面変性カーボンファイバーと比べて、本発明によるカーボンファイバーは、有機分子でのさらなる表面変性により新規な応用の分野全体を広げる材料を提供する。
【0050】
従って、XPSにより計測された原子表面濃度から誘導された炭素原子に対する酸素原子の割合が0.2を越える上記のカーボンファイバーは、特に好ましい。本発明では、XPSはX線光電子分光法を表す。
【0051】
官能化カーボンナノファイバーの引き続きの使用のため、硝酸気相処理によりカーボンナノファイバーの表面で生成される官能基が、さらなる反応工程のために可能な限り反応性であることが望ましい。できるだけ多くの数で含まれるべきフリー非エステル化カルボキシル基またはカルボン酸基、ならびに適切な反応性を有するカルボン酸無水物基は、特に反応性である。
【0052】
意外にも、カルボン酸基の特に高い割合を有するカーボンファイバーは初めて、新規な酸化法の使用により得られた。このため、化学結合形態で炭素1gあたり合計400μmolを越えるカルボン酸基およびカルボン酸無水物基を含有するカーボンファイバーもまた好ましい。化学結合形態で炭素1gあたり合計350μmolを越えるカルボン酸基を含有する上記のカーボンファイバーが特に好ましい。
【0053】
TPD分析において可能な限り低い出口温度は、その後の反応について脱離する官能基の可能な限り良好な反応性の確かな兆候である。CO2は、大部分は、COより低い温度で脱離し、45%を越える化学結合酸素がTPD分析においてCO2として脱離するカーボンナノファイバーが好ましい。CO2脱離基またはCO2脱着基に結合した酸素を、CO脱離基に結合した酸素より多く含有するカーボンファイバーが、極めて特に好ましい。
【0054】
さらなる実施態様では、本発明の課題は、本発明による方法により得られるカーボンファイバーにより達成される。
【0055】
さらなる実施態様では、本発明の目的は、複合材料中における、エネルギー貯蔵における、センサーとして、吸着剤として、不均一系触媒のための支持体としてまたは触媒活性材料として本発明によるカーボンファイバーの使用により達成される。
【0056】
表1は、CO2脱離についてのTPD計測からの種々の官能基の定量化のための値を示す。該量は、μmol/g(10−6mol/g)において示される。
【0057】
表2は、CO脱離についてのTPD測定からの種々の官能基の定量化のための値を示す。該量は、μmolg(10−6mol/g)において示される。
【実施例】
【0058】
用いたHNO3気相処理配置を図1に示す。通常、200mgのカーボンナノファイバー1(50〜200nm直径、Applied Sciences、オハイオ州、米国)を反応器2に設置し、種々の実験において、125℃、150℃、175℃、200℃、250℃の温度に過熱した。頂上に設置した向流凝縮器6を排気ガスへ接続した。5時間、10時間および15時間の定められた時間後に、油浴10の過熱を停止し、反応器1の過熱をさらに2時間110℃で処理カーボンナノファイバーを乾燥させるために維持した。次いで、カーボンナノファイバー1を広範囲にわたって特性化した。用いた配置は、凝縮器内の凝縮液体硝酸が試料を越えて逆流するのを効率的に防いだ。それに応じて、液体硝酸でのカーボンナノファイバーの湿潤を避ける場合、気相条件下で完全に処理を行った。X線光電子分光法(XPS)を、超高真空装置においてGammadata Scienta SES 2002分析器を用いて行った。可能性のある帯電効果を低速電子源により弱めた。結合エネルギーは、主カーボン信号(C 1s)の位置に284.5eVで較正した。
【0059】
XP分光法は、酸素含有官能基を特性化するための証明法である。異なった酸素含有基は、C 1sスペクトルおよびO 1sスペクトル(Okpalugo,T.I.T.等、Carbon 43:第153〜61頁 (2005年)、 Martinez, M. T.等、Carbon 41:第2247〜56 (2003年))を用いて区別することができる。例として、XPスペクトルを、15時間種々の温度で処理したカーボンナノファイバーについてここに示す。図2(a)は、種々の温度で15時間HNO3気相処理後のカーボンナノファイバーのXPS概観スペクトルを示す。C 1s、O 1sおよびO KLL領域における信号を明確に視認できる。窒素の存在は、弱いN 1s信号により約400eVで示される。O 1s信号の強度は、温度上昇として増加するのに対し、C 1s信号の強度は対応して減少する。
【0060】
C 1s領域における信号の割り当ては、以下の文献により行われる(Lakshminarayanan,P.V.等、Carbon 42:第2433〜42頁(2004年)、Okpalugo,T.I.T.等、Carbon 43:第153〜61頁(2005年)):284.5eVでグラファイト中において炭素、286.1eVでフェノールおよびエーテル中において酸素に単一結合した炭素(C−O)、287.5eVでケトンおよびキノン中において酸素に二重結合した炭素(C=O)、288.7eVでカルボキシル基、カルボン酸無水物およびエステル中において2つの酸素原子に結合した炭素、(−COO)および190.5eVでの芳香族化合物中の特性「振動」ライン(n→n*遷移)。15時間HNO3気相処理後のC 1sスペクトルを、図2(b)に示す。284.5eVでのC 1s主信号のより高い結合エネルギーでの温度上昇としての肩の増加規模を、信号対称性を比較することにより見ることができる。−COO基の量における鋭い上昇を示す288.7eVでの信号の強度成長は、さらにより明確である。これらは、主にカルボキシル基および無水物であり、種々の用途のための炭素表面上での最も重要な酸素含有官能基である。
【0061】
2つの主な寄与は、点線により示され、531.5eVでキノン、ケトンまたはアルデヒド中において炭素に二重結合した酸素原子(C=O)に、および533.eVでエーテル、ヒドロキシル基またはフェノール中において炭素に単一結合した酸素原子(C−O)にそれぞれ割り当てられる(Bubert,H.等、Anal.Bioanal.Chem.374:第1237〜41頁(2002年)、Zhang,J.等、J.Phys. Chem.B 107:第3712〜8頁(2003年))。単一および二重に炭素結合した酸素原子はいずれも、エステル、カルボキシル基、無水物またはピラン中に存在する場合、これらの基の酸素原子はいずれも2つのO 1s信号に寄与する。O 1sスペクトルにおいて、比較的低い処理温度で、主信号がC−O信号結合により支配されることは明らかであり、これは恐らく、低い温度でヒドロキシル基の好ましい形成に起因する。温度が増加する場合、C=O二重結合の形成は、鋭く上昇する。比較のために、従来法によるHNO3処理によるカーボンナノファイバーのO 1sスペクトルを図2(d)に示す。ここでは、533.2eVでの信号への寄与は、531.5eVでの信号への寄与よりも大きく、低い温度でのHNO3気相処理のためのスペクトルに類似する。同様の傾向を示す結果は、従来法による湿潤HNO3法による文献に得られており、すなわち、533.3eVでの信号は531.6eVでの信号より大きかった。従って、HNO3気相処理は、収率を向上させるだけでなく、異なった酸素含有官能基の数をカーボンナノファイバー上でHNO3による従来法と比べて変化させる。異なった酸素種の形成、例えばC=O等は、温度に極めて依存することが知られている。122℃の濃縮HNO3の共沸点限界に起因して、従来法によるHNO3処理を、122℃を越える温度および大気圧で行うことが可能であり、その結果、所定の反応時間内での特定種の製造が制限される。
【0062】
炭素および酸素の原子表面濃度は、XPS計測により決定される(Xia,W.等、Catal.Today 102〜103:第34〜9頁(2005年))。種々の処理後のカーボンナノファイバー中の炭素に対する酸素の割合(O/C)を図3に示す。125℃でのHNO3処理後のO/C割合は、約0.155であることを見ることができ、これは120℃および1.5時間での従来法によるHNO3処理でのO/C割合よりもやや高く、120℃で1.5時間の従来法による混合酸処理(HNO3およびH2SO4)よりもやや低い。該割合は、温度が上昇しおよび処理時間が長くなる場合に増加する。175℃または200℃での処理の15時間後、該割合は、0.21を越える。これらの条件下での、カーボンナノファイバー上の酸素の量は、相関曲線の平坦化により示される通り、飽和限界に達するように見える。
【0063】
HNO3気相処理に次いで、カーボンナノファイバーを、さらなる処理工程、例えばろ過、洗浄または乾燥等なしでさらなる工程に用いることができる。カーボンナノファイバーの嵩密度における変化は処理後に観測されず、SEM像は、処理の結果生じたカーボンナノファイバーに対する形態的変化がないことを裏付ける(図4)。液体HNO3での従来法による処理によって生じた通常存在する凝集は、HNO3気相処理により観測されなかった。さらに、カーボンナノファイバーの形態は、気相処理により変化しない(図3)。種々の炭素基材、例えばグラファイトフィルムまたは炭素繊維上で成長したカーボンナノファイバーの処理も比較された(Briggs,D.等、John Wiley & Sons 第635〜6頁(2004年)、Li,N.等、Adv.Mater.19:第2957〜60頁(2007年))。撹拌HNO3溶液中での1.5時間の還流後、カーボンナノファイバーは、暗色懸濁液を生じさせながら、基材から大部分脱着し始めた。しかしながら、HNO3気相処理後、カーボンナノファイバーは、損傷を受けずに基材上に残存した。この結果は、二次構造が例えば垂直配向カーボンナノファイバーまたは分枝カーボンナノファイバー複合材料中において維持される必要があるカーボンナノファイバー用途について特に重要である。
【0064】
カーボンナノファイバー上で反応した官能基の性質についての情報を得るために、TPD(昇温脱離)測定を行った。
【0065】
上記の目的を達成するために、約150〜200mgの官能基化カーボンナノファイバー(3時間300℃にてHNO3で処理したBaytubes C150P)を、10mm内径を有する水平石英管中に設置し、ヘリウム(99.9999%純度、流速30sccm)を担体ガスとして通過させた。次いで、試料を室温から1000℃に2K/分の過熱速度で過熱し、COおよびCO2の放出量を、オンライン赤外線検出器(Binos)を用いてガス流中で決定した。温度は、試料を室温にまで冷却する前に1000℃にて合計1時間保持した。検出器自体は、最初に、特定の気体で0〜4000ppmの計測範囲について較正した。
【0066】
酸化官能基化の他の方法と比較するために、カーボンナノファイバー(Baytubes C150P)を液相中でHNO3を用いて、ならびに気相中でNO2を用いておよびNO2およびO2の混合物を用いて従来法により処理した。これらの気相処理を、20mmの内径を有する垂直石英管中で行った。ある実験では、NO2(ヘリウム中10体積%)を、カーボンナノファイバーの床へ10sccmの流速で通過させた。NO2+O2による処理のために、酸素(N2中20.5体積%、5sccm)を、NO2/Heガス流中に、1:1のNO2:O2比を担体ガス中で確立させるためさらに通過させた。液相中における処理のために、カーボンナノファイバーを3時間濃縮硝酸(65%、J.T.Baker)中で還流した。
【0067】
結果(図5)は、COおよびCO2の顕著に異なった放出を、異なった官能基化カーボンナノファイバーについての温度の関数として示す。気相中においてHNO3で処理されたカーボンナノファイバーは、酸素含有基で官能基化されたより高い表面全体を示しながら、多量のCOおよびCO2をいずれも放出することが明らかに分かる。さらに、HNO3を用いて気相中で処理された試料は、特にカルボン酸無水物官能基の高い割合を示しながら、COおよびCO2の高い放出速度を約600℃で示す。
【0068】
しかしながら、図5における放出曲線は、COがCO2よりも極めて高い温度で放出されることを示す。このことは、COを脱離する官能基のより高い結合強度に起因する。
【0069】
図6は、酸化カーボンナノファイバー中に通常存在する官能基の概観を提供する。脱離温度のための以下の割り当ては、文献から抜粋することができる。
【0070】
【0071】
これらの割り当てに基づいて、ガウス正規分布での曲線の合計をTPD曲線(図7)に調節し、これから、カーボンナノファイバー中に本来含まれる官能基への量的割り当て(表1および2)を決定した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンファイバー(1)の官能基化のための方法であって、
a)カーボンファイバー(1)を、入り口(3)および出口(4)を有する反応器(2)中に設置し、
b)該反応器(2)を125〜500℃の範囲の温度に過熱し、
c)硝酸(5)からの蒸気を、反応器(2)へ通過させ、および
d)次いで、処理カーボンファイバー(1)を乾燥させる、
前記方法。
【請求項2】
カーボンナノファイバー、特に3〜500nmの範囲の外径を有するカーボンナノファイバーを、カーボンファイバー(1)として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
10〜500m2/gの範囲、特に20〜200m2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンファイバーをカーボンファイバー(1)として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
凝縮器(6)を反応器出口(4)の後に設置し、凝縮物のための凝縮器出口(7)を、戻り配管(8)により硝酸のための貯蔵容器(9)に接続することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ガラスフラスコを、特に油浴(10)により過熱する硝酸のための貯蔵容器(9)として用いることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程b)後に、反応器(2)を、前記温度で、3〜20時間の範囲、特に5〜15時間の範囲の間、保持することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程c)を、0.5〜4時間の範囲の間にわたって、およびこれとは独立して80〜150℃の範囲の温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
XPSにより計測された原子表面濃度から誘導される炭素原子に対する酸素原子の割合は、0.18を越えることを特徴とする、カーボンファイバー。
【請求項9】
化学結合形態で炭素1gあたり350μmolを越えるカルボン酸基を含有することを特徴とする、カーボンファイバー。
【請求項10】
化学結合形態で炭素1gあたり合計400μmolを越えるカルボン酸基およびカルボン酸無水物基を含有することを特徴とする、請求項9に記載のカーボンファイバー。
【請求項11】
45%を越える化学結合酸素を、TPD分析においてCO2として脱離することを特徴とする、請求項9または10に記載のカーボンファイバー。
【請求項12】
繊維は3〜500nmの平均径および少なくとも5:1の長さと直径の割合を有することを特徴とする、請求項8に記載のカーボンファイバー。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により得られる、請求項8〜12のいずれかに記載のカーボンファイバー。
【請求項14】
複合材料における、エネルギー貯蔵における、センサーとしての、吸着剤としての、不均一触媒のための担体としての、または触媒活性材料としての請求項8〜13のいずれかに記載のカーボンファイバーの使用。
【請求項1】
カーボンファイバー(1)の官能基化のための方法であって、
a)カーボンファイバー(1)を、入り口(3)および出口(4)を有する反応器(2)中に設置し、
b)該反応器(2)を125〜500℃の範囲の温度に過熱し、
c)硝酸(5)からの蒸気を、反応器(2)へ通過させ、および
d)次いで、処理カーボンファイバー(1)を乾燥させる、
前記方法。
【請求項2】
カーボンナノファイバー、特に3〜500nmの範囲の外径を有するカーボンナノファイバーを、カーボンファイバー(1)として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
10〜500m2/gの範囲、特に20〜200m2/gの範囲のBET表面積を有するカーボンファイバーをカーボンファイバー(1)として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
凝縮器(6)を反応器出口(4)の後に設置し、凝縮物のための凝縮器出口(7)を、戻り配管(8)により硝酸のための貯蔵容器(9)に接続することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ガラスフラスコを、特に油浴(10)により過熱する硝酸のための貯蔵容器(9)として用いることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程b)後に、反応器(2)を、前記温度で、3〜20時間の範囲、特に5〜15時間の範囲の間、保持することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程c)を、0.5〜4時間の範囲の間にわたって、およびこれとは独立して80〜150℃の範囲の温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
XPSにより計測された原子表面濃度から誘導される炭素原子に対する酸素原子の割合は、0.18を越えることを特徴とする、カーボンファイバー。
【請求項9】
化学結合形態で炭素1gあたり350μmolを越えるカルボン酸基を含有することを特徴とする、カーボンファイバー。
【請求項10】
化学結合形態で炭素1gあたり合計400μmolを越えるカルボン酸基およびカルボン酸無水物基を含有することを特徴とする、請求項9に記載のカーボンファイバー。
【請求項11】
45%を越える化学結合酸素を、TPD分析においてCO2として脱離することを特徴とする、請求項9または10に記載のカーボンファイバー。
【請求項12】
繊維は3〜500nmの平均径および少なくとも5:1の長さと直径の割合を有することを特徴とする、請求項8に記載のカーボンファイバー。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により得られる、請求項8〜12のいずれかに記載のカーボンファイバー。
【請求項14】
複合材料における、エネルギー貯蔵における、センサーとしての、吸着剤としての、不均一触媒のための担体としての、または触媒活性材料としての請求項8〜13のいずれかに記載のカーボンファイバーの使用。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2011−526331(P2011−526331A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515218(P2011−515218)
【出願日】平成21年6月27日(2009.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004664
【国際公開番号】WO2010/000424
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月27日(2009.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004664
【国際公開番号】WO2010/000424
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】
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