説明

カーボンナノ流体を調製する方法およびカーボンナノ流体

【課題】カーボンナノチューブを流体内へ均等に分散させる。
【解決手段】本発明は、カーボンナノ流体の調製方法を提供する。この方法は、ベース流体を準備する過程、多くのカーボンナノチューブを準備する過程、カーボンナノチューブをベース流体と混合する過程、物理的攪拌動作によりカーボンナノチューブをベース流体中に実質的に均等に分散させる過程、および、その物理的攪拌操作中に、物理的攪拌操作を実行している系を冷却する過程を含んでいる。また、本発明は、熱伝達流体として役立ち得るカーボンナノ流体を提供する。カーボンナノ流体は、体積でおよそ99.8〜98%のベース流体と、ベース流体中に実質的に均等に分散された、体積でおよそ0.2〜2.0%の官能化されたカーボンナノチューブを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノテクノロジーに関するものであり、とくに熱伝導率が向上したカーボンナノ流体を調製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱伝達流体の熱伝導率は、エレクトロニクス、加熱、通気、空調、冷却、および輸送を含む技術分野におけるエネルギー効率のよい熱伝達装置の開発において重要な役割を果たしている。高度な熱伝達流体の開発は、従来の熱伝達流体の有効な熱伝達作用の改善に不可欠なことは明白である。低熱伝導率は、多くの産業上の利用に必要なエネルギー効率のよい熱伝達流体の開発にとり、主要な制限となっている。
【0003】
セガル(Segal)に係る特許文献1は、電磁装置内部で大きな電流密度と大きな代替電流(AC)電圧を用いる結末として発熱してしまう電磁装置を、絶縁し、かつ冷却するための、キャリヤ流体内に金属粒子を有する、コロイド状の流体を開示している。また、新種の熱伝達流体は、チョイ(Choi)他に係る特許文献2に開示されているように、液体内に金属粒子あるいは金属酸化物粒子を懸濁させることにより開発された。金属粒子あるいは金属酸化物粒子は、加熱された基板付近にある液体薄膜を通過する間に、真空内で生成され、分散される。
【特許文献1】米国特許第6,221,275号明細書
【特許文献2】米国特許第5,863,455号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新興技術であるカーボンナノテクノロジーは、工学的応用分野の多くの態様で有望である。近年、カーボンナノチューブは、向上した熱伝導率を有する安定したナノ材料として、人気をますます高めて提案されてきた。しかしながら、カーボンナノチューブは、強くて、フレキシブルであるが、非常に凝集性がある。これが、エネルギー管理において有効な熱伝達物質を提供するために、カーボンナノチューブを流体内へ均等に分散させることを困難にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一例は、向上した熱伝導率ないしは熱伝導度を有する、カーボンナノ流体(carbon nanofluid)を調製ないしは製造する方法を提供する。この方法は、ベース流体(base fluid)を準備、調製ないしは提供する(provide)過程(ないしはステップ)、多くのないしは複数のカーボンナノチューブ(carbon nanotube)を準備する過程、カーボンナノチューブをベース流体と混合ないしは結合させる(combine)過程、および、物理的攪拌操作(physical agitation operation)によりカーボンナノチューブをベース流体中に実質的に均等に分散させる過程、および、その物理的攪拌操作中に物理的操作を行っている系(system)を冷却する過程を含んでいる。
【0006】
本発明の他の例は、熱伝達媒体(heat transfer agent)として用いる(serve as)ことができる流体を調製する方法を提供する。この方法は、官能化ないしは官能基化された(functionalized)カーボンナノチューブを生成ないしは調製するためにカーボンナノチューブ上へ多くのないしは複数の官能基を導入する(introduce)過程、ベース流体を準備する過程、官能化されたカーボンナノチューブをベース流体と混合ないしは結合させる過程、および、超音波処理操作(ultrasonication operation)によりカーボンナノチューブをベース流体中に実質的に均等に分散させる過程、その超音波処理操作中に超音波処理操作を行っている系を冷却する過程を含んでいる。
【0007】
さらに他の例では、本発明は、熱伝達流体として用いることができるカーボンナノ流体を提供する。カーボンナノ流体は、体積でおよそ99.8〜98%のベース流体と、ベース流体中に実質的に均等に分散された、体積でおよそ0.2〜2.0%の官能化されたカーボンナノチューブを含んでおり、このカーボンナノ流体は、カーボンナノチューブを全く有しないベース流体に比べて、少なくとも1.3倍は高い熱伝導率を有している。
【0008】
もう1つのさらに他の例では、本発明は、官能化されたカーボンナノチューブを準備(ないしは、調製、提供)するために、カーボンナノチューブ上へ多くのないしは複数の官能基を導入し、ベース流体を準備し、官能化されたカーボンナノチューブをベース流体と混合させ、さらに超音波処理操作によりカーボンナノチューブをベース流体中に実質的に均等に分散させ、その超音波処理操作中に超音波処理操作を行っている系を冷却する処理により製造されたカーボンナノ流体を提供する。
【0009】
上記の本発明の概要は、以下に続く本発明のより詳細な説明と同じく、添付図面と関連付けて読まれるならば、さらによく理解されるであろう。本発明を示す目的のために、現時点で好適な実施例が図示されている。しかしながら、本発明が、図示された正確な配置と手段に限定されないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで、添付図面に例が示された、本発明の本実施例を詳細に参照する。図面全部にわたり、可能ならばどこであれ、同一部分あるいは類似部分に同じ参照番号が使われる。
【0011】
本発明は、カーボンナノ流体の調製方法を提供する。この方法は、ベース流体を準備ないしは調製すること、多くのカーボンナノチューブを準備ないしは調製すること、カーボンナノチューブをベース流体と混合ないしは結合させること、および、物理的攪拌操作によりカーボンナノチューブをベース流体内へ実質的に均等に分散させること、および、その物理的攪拌操作中に物理的攪拌操作を行っている系を冷却することを含んでいる。
【0012】
本発明で説明するカーボンナノチューブは、その上に複数の官能基を有する、単層壁、二層壁及び多層壁カーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0013】
したがって、本願明細書における「官能化する」ないしは「官能基化する」という用語は、水溶液、無機溶液、有機溶液内におけるカーボンナノ材料の熱伝導率ないしは熱伝導度と、溶解度を向上させる酸性処理などの化学修飾(chemical modification)により、カーボンナノ材料の表面に複数の官能基を導入することを意味する。
【0014】
本発明の1つの実施例では、COOHを含む官能基の各々は、カーボンナノチューブを、HSO、HNO、HC1およびCHCOOHのうちの少なくとも1つを含む酸性溶液で処理することにより導入される。官能化されたカーボンナノチューブは、ベース流体と混合ないしは結合され、その後、物理的攪拌操作でベース流体中に実質的に均等に分散される。冷却動作は、物理的攪拌操作の間、物理的攪拌操作を実行している系を冷却するために適用可能である。
【0015】
本発明の他の実施例では、カーボンナノチューブをHS0とHNOを含む酸性溶液で処理することにより、カーボンナノチューブは表面修飾され(surface-modified)、あるいは官能化される。結果として、COOHを含む官能基は、カーボンナノチューブの表面上へ導入される。官能化されたカーボンナノチューブは、官能化されたカーボンナノチューブから非結合酸混合物を分離するために、高速遠心分離にかけることにより、さらに精製ないしは純粋化することが可能である。続いて、精製ないしは純粋化されたカーボンナノチューブは、ベース流体と混合(combine with)ないしは結合され、かつベース流体中に分散される前に、ベース流体で洗浄される。官能化されたカーボンナノチューブは、ベース流体と混合され、その後、磁力攪拌動作、または超音波処理操作などの物理的攪拌操作により、ベース流体で分散される。冷却操作は、物理的攪拌操作中に、物理的攪拌操作を実行している系を冷却するために実行される。
【0016】
本発明のさらなる実施例では、カーボンナノチューブは、HSOとHNOを約3:1の比率で含む酸性溶液でカーボンナノチューブを処理することにより、表面修飾され、あるいは官能化される。官能化されたカーボンナノチューブは、官能化されたカーボンナノチューブから非結合酸混合物を分離するために、高速遠心分離を施すことにより、さらに精製、純粋化ないしは浄化する(purify)ことが可能である。続いて、精製されたカーボンナノチューブは、ベース流体と混合され、かつベース流体内へ分散される前に、ベース流体で洗浄される。浄化ないしは精製されたカーボンナノチューブは、続いてベース流体と混合され、超音波処理操作により、ベース流体内へ分散される。冷却動作は、超音波処理操作中に、超音波処理操作を実行している系を冷却するために実行される。1つの例によると、超音波処理操作は、超音波ホモジナイザを冷却するために、超音波ホモジナイザに隣接して配置された冷却システムと共に、超音波ホモジナイザを使用することで実行可能である。
【0017】
上の実施例で説明したように、カーボンナノチューブは、酸性溶液により官能化されるが、本発明はこの特定の技術を用いてカーボンナノチューブを官能化させることに限定されない点に留意される。カーボンナノチューブ上への官能基の添加あるいは導入を引き起こす、他の表面修飾技術が採用されてもよい。
【0018】
また、本発明は、熱伝達物質として役立ち得る流体を調製する方法を提供する。この方法は、官能化されたカーボンナノチューブを提供するためにカーボンナノチューブ上へ多くの官能基を導入するステップ、ベース流体を準備するステップ、官能化されたカーボンナノチューブをベース流体と混合するステップ、および超音波処理操作によりカーボンナノチューブをベース流体中に実質的に均等に分散させるステップ、およびその超音波処理操作中に超音波処理操作を実行している系を冷却するステップを含んでいる。
【0019】
同様に、単層壁、二層壁、多層壁カーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブは、HSOとHNOを約3:1の比率で含む酸混合物でカーボンナノチューブを処理することにより、官能化される。官能化されたカーボンナノチューブは、官能化されたカーボンナノチューブから非結合酸混合物を分離する高速遠心分離により、さらに精製ないしは純粋化することが可能である。続いて、精製ないしは純粋化されたカーボンナノチューブは、ベース流体と混合され、かつベース流体内へ分散される前に、洗浄されてもよい。精製ないしは純粋化されたカーボンナノチューブは、続いてベース流体と混合され、超音波処理操作により、ベース流体中に実質的に均等に分散される。そして、超音波処理操作中に、冷却操作は、超音波処理操作を実行する系を冷却するよう適用される。
【0020】
1つの好適な実施例では、官能基(functional group)は、図1に示した実験室装置(laboratory apparatus)により、HSOとHNOを約3:1の比率で含む酸混合物で処理することにより、カーボンナノチューブに導入される。実験室装置1は、ビーカー10、ビーカー10に結合された還流システム11、および加熱テーブル12を含んでいる。ビーカー10内の混合物は、加熱テーブル12上で加熱され、攪拌される。液体が気化(ないしは沸騰)する沸点を超えて加熱されると、還流システム11は、気化したガスを液体の小滴へ凝縮させ、それをビーカー10内へ再循環させる。続いて、官能化されたカーボンナノチューブは、官能化されたカーボンナノチューブから非結合酸混合物(unbound acidic mixture)を分離する高速遠心分離(high speed centrifugation)により、さらには精製ないしは純粋化することが可能である。精製ないしは純粋化されたカーボンナノチューブは、ベース流体と混合され、かつベース流体内へ分散される前に、ベース流体で洗浄される。
【0021】
超音波処理操作は、ベース流体を冷却するために、超音波ホモジナイザ2により生成される熱を効率的に消散させる(dissipate)、2重管式熱交換器3(dual tube heat exchanger)に隣接して配置された、超音波ホモジナイザ2を用いて実行される。図2を参照すると、超音波ホモジナイザ2は、超音波プローブ20、および超音波プローブ20へ接続した、超音波処理操作に必要な電力を供給する電源21を含んでいる。超音波プローブ20は、超音波プローブ20の先端20aが、分散をもたらすよう、ベース流体内へ浸される形で配置される。2重管式熱交換器3は、ベース流体を受ける内側部分ないしは内側チューブ30(inner tube)、および内側チューブ30を囲む外側部分ないしは外側チューブ31(outer tube)を有している。外側チューブ31は、超音波プローブ20により発生する熱を消散させ、あるいは取り除く流体で満たされている。外側チューブ31は、図2に示したように、底部終端に配置された注入口311と、頂部終端端に配置された排出口312を有しており、流体は注入口311を通って外側チューブ31に入り、超音波ホモジナイザ2を冷却するために排出口312を通って排出される。したがって、ある期間にわたって超音波プローブ20に供給された実質的にハイパワーにより超音波プローブ20が過熱された結果として、超音波処理動作が中断されることはない。これにより、超音波処理動作中ハイパワーの一定出力が、最適の分散効果を達成することを確実にする。
【0022】
本発明の他の好適な実施例によると、冷却システムは、図2に示したような2重管式熱交換器3、および冷却循環システム4を含んでいる。図3を参照すると、2重管式熱交換器3は、外側チューブ31から流出する流体が、熱を消散させるよう、パイプ40を通して外側チューブ31へ戻ることで再循環される形で、冷却循環システム4に接続されている。さらに、パイプ40は、流体が2重管式熱交換器3の外側チューブ31に戻るよう向け直される前に、パイプ40内にある流体をさらに冷却するために、冷却槽41へ接続されていてもよい。このように、図3に示した冷却システムにより、流体は、過度に多量の流体を浪費することなく、熱の消散、あるいは超音波ホモジナイザの冷却を実現するよう、効率的に再循環される。したがって、ナノ流体の調製にかかるコストの総額は、効果的に減少する。
【0023】
本発明における冷却システムは、上の実施例で説明した特定の装置あるいは手段に限定されない点に留意される。例えば、冷却システムは、超音波プローブと超音波ホモジナイザにおいて同様の冷却効果を達成するよう、熱交換技術に熟練した技術者の知識において、変更され、あるいは改善されてもよい。
【0024】
上述した調製方法の観点から、本発明は、さらに、熱伝達流体として役立ち得るカーボンナノ流体を提供する。カーボンナノ流体は、体積でおよそ99.8〜98%のベース流体、およびベース流体内へ実質的に均等に分散された、体積でおよそ0.2〜2.0%のカーボンナノチューブを含んでおり、このカーボンナノ流体は、カーボンナノチューブを全く有しないベース流体に比べて、少なくとも1.3倍は高い熱伝導率を有している。
【0025】
本発明はさらに、官能化されたカーボンナノチューブを提供するためにカーボンナノチューブ上へ多くの官能基を導入し、ベース流体を準備ないしは調製し、官能化されたカーボンナノチューブをベース流体と混合し、さらに超音波処理動作によりカーボンナノチューブをベース流体中に実質的に均等に分散させ、その超音波処理動作中に超音波処理動作を実行している系を冷却する処理により製造されたカーボンナノ流体を提供する。
【0026】
本発明によると、ベース流体は、熱伝達物質として役立つよう、カーボンナノチューブを実質的に均等に分散させる、有機溶剤、無機溶剤、および水溶液を含むが、これらに限定されない。さらに、実際のアプリケーションに応じて、ベース流体は、エチレングリコール、水およびオイルのうちの少なくとも1つを含んでいる。また、本発明は、界面活性剤または分散剤と混合されたカーボンナノ流体と、その調製方法を含んでいるが、高い熱伝導率にマスクし、または減少させるために、カーボンナノチューブを閉じ込め、またはコーティングする、界面活性剤または分散剤を添加することなく、流体複合体(fluid complex)やカーボンナノ流体を調製するのがより好ましい。
【0027】
ここで、本発明は、以下の、特定の非限定例をさらに詳細に説明する。
【0028】
カーボンナノ流体の調製
単層壁、二層壁、多層壁カーボンナノチューブは、市販されており(ナノテクポート(Nanotech Port)社、シェンチェン(shenzhen)、中国)、粉体の形で購入された。カーボンナノチューブは、図1に示した実験室装置で、およそ3:1の比率でHSOとHNOを含む酸性溶液で処理することにより、官能化され、または、表面修飾された。続いて、官能化されたカーボンナノチューブは、官能化されたカーボンナノチューブから非結合酸混合物を分離する高速遠心分離により、さらに精製ないしは純粋化することが可能である。精製ないしは純粋化されたカーボンナノチューブは、超音波処理によりベース流体内へ分散される前に、作動流体で洗浄された。
【0029】
超音波処理プロセスは、超音波処理プロセスにより発生する熱を消散可能な、図3に示した2重管式熱交換器などの冷却システムが存在する場合、超音波ホモジナイザを用いて実行された。したがって、カーボンナノチューブが、超音波処理によりベース流体内へ分散されると、超音波プローブによって発生した熱は、流体が外側チューブを通して流れた結果として、即座に消散させることができた。これにより、超音波処理動作中に、超音波プローブへ、およそ300〜600Wのハイパワーがある期間にわたって供給されたとしても、超音波ホモジナイザの安定稼働を確実にした。したがって、超音波処理操作の間、カーボンナノチューブを、実質的に均等にベース流体内へ分散させるために、実質的にハイパワーの一定出力が供給された。
【0030】
熱伝導率の測定
カーボンナノ流体の熱伝導率(k)は、(リー(Lee)他、熱伝達ジャーナル(Journal of Heat Transfer)第121巻280ページ(1999))で説明されているように、特に設計されたコンピュータ制御設備で測定された。熱伝導率は、室温で、ナノチューブ体積含有率の関数として測定された。熱伝導率測定において、カーボンナノ流体は、過渡的ホットワイヤシステムの、垂直で筒状のガラス製容器内に満たされた。この長いガラス製容器は、19mmの内径と240mmの長さを有している。過渡的ホットワイヤシステム内では、カーボンナノ流体内に、およそ76.2μmの直径を有するプラチナワイヤが浸された。プラチナワイヤは、ヒーターとして、かつカーボンナノ流体用の電気抵抗温度計として、同時に使用された。プラチナワイヤの表面は、プラチナワイヤが短絡するのを防ぐために、薄い電気絶縁エポキシによりコーティングされていた。プラチナワイヤの温度変化は、経時的な電気抵抗の変化の結果として取得された。その後、フーリエの法則から、熱伝導率が推定された。カーボンナノ流体の熱伝導率は、プラチナワイヤの温度対時間応答の傾きに逆比例していた。過渡的ホットワイヤシステムは、室温で、脱イオン水とエチレングリコールを用いて較正された。測定の不確実性は2%未満であった。
【0031】
例1:ナノ流体A(カーボンナノチューブ/エチレングリコール)
【0032】
ナノ流体Aは、エチレングリコール内に多層壁カーボンナノチューブを分散することにより調製された。ナノ流体Aにはいかなる界面活性剤も添加されなかった。さらに、カーボンナノチューブは、およそ1時間にわたる600Wでの超音波処理操作により、エチレングリコールと混合され、かつ、エチレングリコール内に分散された。超音波処理操作中に、冷却操作は、超音波ホモジナイザにより実行された超音波処理動作中にナノ流体Aを冷却するよう、図2に示したように、2重管式熱交換器を用いて適用された。
【0033】
次に、ナノ流体Aは、上述したように熱伝導率測定にかけられた。下掲の表1に記載されているように、熱伝導率(k値で示される)は、エチレングリコールのみの場合と比較すると、カーボンナノチューブ/エチレングリコールの懸濁液では、0.01(1体積パーセント(vol.%))の体積部分で12.4%増加した。したがって、本発明により分散された小量のカーボンナノチューブは、ベース流体の熱伝導率をかなり増加させた。
【表1】

表 1
【0034】
例2:ナノ流体B(カーボンナノチューブ/水)
【0035】
ナノ流体Bは、水内に多壁カーボンナノチューブを分散させることにより調製された。ナノ流体Bにはいかなる界面活性剤も添加されなかった。さらに、およそ1時間にわたる600Wでの超音波処理動作により、カーボンナノチューブは水と混合され、かつ、水内に分散された。超音波処理動作中に、冷却動作は、超音波ホモジナイザにより実行された超音波処理動作中にナノ流体Bを冷却するよう、図2に示したように、2重管式熱交換器を用いて適用された。
【0036】
次に、ナノ流体Bは、上述したように熱伝導率測定にかけられた。下掲の表2に記載されているように、熱伝導率は、水のみの場合と比較すると、カーボンナノチューブ/水の懸濁液では、0.015(1.5体積パーセント(vol.%))の体積部分で17.8%増加した。したがって、本発明により分散された小量のカーボンナノチューブは、作動流体の熱伝導率をかなり増加させた。
【表2】

表 2
【0037】
例3:ナノ流体C(カーボンナノチューブ/合成エンジンオイル)
【0038】
ナノ流体Cは、合成エンジンオイル内へ多壁カーボンナノチューブを分散させることにより調製された。N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)がナノ流体Cに添加された。さらに、およそ1時間にわたる600Wでの超音波処理操作により、カーボンナノチューブは合成エンジンオイルと結合され、かつ、合成エンジンオイル内に分散された。超音波処理操作中に、冷却操作は、超音波ホモジナイザにより実行された超音波処理操作中にナノ流体Cを冷却するよう、図2に示したように、2重管式熱交換器を用いて適用された。
【0039】
次に、ナノ流体Cは、上述したように熱伝導率測定にかけられた。下掲の表3に記載されているように、熱伝導率は、オイルのみの場合と比較すると、カーボンナノチューブ/合成エンジンオイルの懸濁液では、0.02(2.0体積パーセント(vol.%))の体積部分で30.3%増加した。したがって、本発明により分散された少量のカーボンナノチューブは、作動流体の熱伝導率をかなり増加させた。
【表3】

表 3
【0040】
上の実施例にもかかわらず、本発明で説明したカーボンナノ流体と調製方法の見地から、当技術分野の当業者であるなら、官能化されているか否かに関係なく、内部へカーボンナノ材料を分散させる他のベース流体が本発明の範囲内に入り得るのが理解される。本発明の他の実施例は、当技術分野の当業者にとっては、明細書の考慮と本願明細書に開示される本発明の実施から明白である。明細書と例は典型的なものに過ぎず、あくまでも、本発明の本当の範囲と趣旨は、特許請求の範囲で示されていると考慮されるのを意図している。
【0041】
当業者であれば、説明した実施例に対して、本発明の広義の概念から逸脱することなく、変更を加え得ることが理解される。したがって、本発明が、開示した特定の実施例に限定されないが、特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨と範囲内での変更をカバーすることを意図しているのが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の1つの実施例に係る、官能化されたカーボンナノチューブを生成する実験装置を示す概略図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る、2重管式熱交換システムに隣接して配置された、超音波ホモジナイザを示す概略図である。
【図3】本発明のさらなる実施例に係る、2重管式ブ熱交換システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 実験室装置、2 超音波ホモジナイザ、3 2重管式熱交換器、4 冷却循環システム、10 ビーカー、11 還流システム、12 加熱テーブル、20 超音波プローブ、21 電源、30 内側チューブ、31 外側チューブ、40 パイプ、41 冷却槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ流体を調製する方法であって、
ベース流体を準備する過程と、
多くのカーボンナノチューブを準備する過程と、
上記カーボンナノチューブを上記ベース流体と混合する過程と、
物理的攪拌操作により、上記カーボンナノチューブを上記ベース流体中に、実質的に均等に分散させる過程と、
上記物理的攪拌操作中に、該物理的攪拌操作を行っている系を冷却する過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記物理的攪拌操作が超音波処理を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記カーボンナノチューブが、その上に導入された複数の官能基を有する、単層壁、二層壁および多層壁のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記官能基の各々がCOOHを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記ベース流体が、エチレングリコール、水およびオイルのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
熱伝達媒体として用いることができる流体を調製する方法であって、
官能化されたカーボンナノチューブを生成するために、カーボンナノチューブ上に多くの官能基を導入する過程と、
ベース流体を準備する過程と、
上記の官能化されたカーボンナノチューブを上記ベース流体と混合する過程と、
超音波処理操作により上記カーボンナノチューブを上記ベース流体中に、実質的に均等に分散させる過程と、
超音波処理操作中に、該超音波処理操作を行っている系を冷却する過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
上記の官能基を導入する過程が、HSOとHNOを約3:1の比率で含む酸性溶液で処理する過程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記カーボンナノチューブを上記ベース流体と混合する前に、高速遠心分離により、上記の官能化されたカーボンナノチューブを精製する過程をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記カーボンナノチューブが、単層壁、二層壁および多層壁のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記官能基の各々がCOOHを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
上記ベース流体が、エチレングリコール、オイルおよび水のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
熱伝達流体として用いることができるカーボンナノ流体であって、
(a)体積でおよそ99.8〜98%のベース流体と、
(b)ベース流体中に実質的に均等に分散された、体積でおよそ0.2〜2.0%の官能化されたカーボンナノチューブとを含んでいて、
カーボンナノチューブを全く有しないベース流体に比べて、少なくとも1.3倍は高い熱伝導率を有していることを特徴とするカーボンナノ流体。
【請求項13】
上記の官能化されたカーボンナノチューブが、多くの官能基がその上に導入された、単層壁、二層壁および多層壁のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項12に記載のカーボンナノ流体。
【請求項14】
上記ベース流体が、エチレングリコール、水およびオイルのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項12に記載のカーボンナノ流体。
【請求項15】
官能化されたカーボンナノチューブを生成するために、カーボンナノチューブ上に多くの官能基を導入する過程と、
ベース流体を準備する過程と、
上記の官能化されたカーボンナノチューブを上記ベース流体と混合する過程と、
超音波処理操作により、上記カーボンナノチューブを上記ベース流体中に実質的に均等に分散させる過程と、
超音波処理操作中に、該超音波処理操作を行っている系を冷却する過程とを含む方法により製造されたカーボンナノ流体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−297261(P2007−297261A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277651(P2006−277651)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(593132010)インダストリアル・テクノロジー・リサーチ・インスティテュート (32)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】