説明

カーボンブラック、その製造方法並びにその使用

【課題】本発明の課題は、低いPAK値を有し、かつ、場合により950℃での揮発性成分の高含有量を有する低表面積カーボンブラック及びその製造方法並びにその使用を提供することである。
【解決手段】本発明の課題は、22PAK法により測定した重縮合した芳香族炭化水素の含有量が5ppm未満であり、STSA表面積<90m2/gであることを特徴とするカーボンブラック、電磁線を用いて出発カーボンブラックを処理することを特徴とするカーボンブラックの製造方法、ゴム、プラスチック、印刷インキ、インク、インクジェットインク、トナー、ラッカー、着色剤、接着剤、バッテリー、ペースト、紙、燃料電池、ビチューメン、コンクリート及び他の建材におけるカーボンブラックの使用により解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック、その製造方法並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは黒色顔料として並びに強化剤及び充填剤として広い分野で使用される。これは様々な方法により異なる特性を有して生産される。最も頻度が高いのは、炭素含有カーボンブラック原料の酸化的熱分解による製造である。ここでカーボンブラック原料は高温で酸素の存在下で不完全に燃焼される。このカーボンブラック製造法の分類には例えばファーネスブラック法、ガスブラック法、ランプブラック法(Flammruss-Verfahren)が属する。他の方法は例えばアセチレン法、サーマルブラック法及びプラズマ法である。
【0003】
炭素含有カーボンブラック原料としては主として芳香族カーボンブラック油が使用される。酸化的熱分解の生成物流は、水素及び一酸化炭素を含有する排ガス及びこの中に懸濁された微粒状のカーボンブラックからなり、これはフィルター装置中で排ガスから分離される(ウルマンの工業化学百科事典(Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie)第4版、第14巻、633〜649頁)。
【0004】
製造方法及びプロセス条件に応じてカーボンブラックは少量の有機化合物で汚染されている可能性がある。この有機化合物は炭素骨格からなることができ、これは再度重縮合した芳香族系から構成されている。この骨格は、具体的な化合物に応じて更に分枝又は置換されていることができる。
【0005】
炭素骨格が実質的に重縮合した芳香族系からなる化合物は大抵は重縮合した芳香族炭化水素(PAK、英語でPAH)と呼ばれる。PAKは、健康を害する化合物と考えられている(Sudip K. Samanta, Om V. Singh and Rakesh K. Jain: "Polycyclic aromatic hydrocarbons: environmental pollution and bioremediation"、 TRENDS in Biotechnology Vol.20 No.6 2002年6月、243〜248頁)。
【0006】
PAKは、カーボンブラックが固くマトリックス中に結合しているか又はヒトとの接触が可能でない系において大抵問題を示さない一方で、幾つかの適用領域についてはPAKによるその健康の脅威のために極めて低含有量の重縮合した芳香族炭化水素(PAK)を有するカーボンブラックのみが使用可能である。これは例えば食品と接触する適用におけるカーボンブラックの使用に関する。したがって、例えばアメリカ食品医薬品局は食品接触を伴うカーボンブラックについてのPAK含有量を0.5ppmに限定している(Code of Federal Regulations、タイトル21、第3巻、170−190部、§ Colorants for Polymers、High purity Furnace Blacks、372〜376頁;CITE 21CFR178.3297)。
【0007】
所定の範囲ではPAK含有量は、既にこの製造の間に、例えばファーネスブラックの場合には反応器中で影響を及ぼすことが可能である。高温及び/又は後の急冷によりPAK含有量は例えば100〜150ppmから25〜40ppmに減少されることができる(US4,138,471号)。
【0008】
しかしながら、反応器運転方式により特に少ないPAK含有量を達成することができない場合には、存在するPAKの除去のためにカーボンブラックを後処理することができる。
【0009】
カーボンブラックに対する重縮合した芳香族炭化水素が、流動床中での少なくとも10%の酸素の存在下でのペレット化したファーネスブラックの熱処理により減少されることが知られている(US4,138,471号)。この場合には、化合物ベンゾ(a)ピレン、ジベンズ(a,h)アントラセン又は7,12−ジメチルベンズ(a)アントラセンについてそれぞれ2ppb未満の量を達成できる。
【0010】
さらに、炭素ナノ材料に対する重縮合した芳香族炭化水素を溶媒を用いた抽出により少なくさせることが知られている(WO03/021017号)。
【0011】
さらに、特に、ナフタレン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、ベンゾ(a)アントラセン、クリセン、ベンゾ(b)フルオランテン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(k,j)フルオランテン、ジベンゾ(a,h)アントラセン、インデノ(1,2,3−cd)ピレン及びベンゾ(g,h,l)ペリレンについてのPAKの含有量10ppm未満を有するカーボンブラックを含有するトナーが知られている(US6,440,628号)。
【0012】
さらに、比表面積13〜19m2/g及び重縮合した芳香族炭化水素0.25〜0.28質量%を有するカーボンブラック(SU899589号)又は比表面積50〜57m2/g及び重縮合した芳香族炭化水素0.21〜0.23質量%を有するカーボンブラック(SU899589号)を含有するゴム混合物が知られている。
【0013】
さらに、EP1102127号からは、15ppm未満のPAK含分、例えば化合物、例えばベンズピレン、アントラセン−ベンゾピレン、フェナントレン、ピレン及び類似物を有するカーボンブラックを含有するトナーが知られている。
【0014】
さらに、US6,087,434号からは、10ppm未満のPAK含分、例えば化合物、例えばナフタレン、フルオラテン、フルオラチン、ピレン、クリセン、ベンゾピレン及び類似物を有するカーボンブラックを含有し、相対酸素含有量0.2〜0.4mg/m2を示す顔料調製物が知られている。
【0015】
さらに、US6,599,496号からは、PAK含有量が0.5ppm未満であることが記載されている炭素顔料を含有する医薬的造影剤が知られている。
【0016】
WO2008/058114号においては、熱処理又は抽出によりPAK含有量が1〜20ppmの値又は≦10ppmの値に低下できたカーボンブラックが記載されている。
【0017】
既知のカーボンブラックの欠点は、健康を害する重縮合した芳香族炭化水素の高い割合である。
【0018】
カーボンブラックを熱処理する際の特別な更なる欠点は、酸化度の、又は950℃での揮発性成分の比較的強力な低下及びこれと関連した、カーボンブラック表面上の官能基の減少であり、この結果、特に酸化された出発カーボンブラックでは所望される表面基が部分的に又は完全に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】US4,138,471号
【特許文献2】WO03/021017号
【特許文献3】US6,440,628号
【特許文献4】SU899589号
【特許文献5】SU899589号
【特許文献6】EP1102127号
【特許文献7】US6,087,434号
【特許文献8】US6,599,496号
【特許文献9】WO2008/058114号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】ウルマンの工業化学百科事典、第4版、第14巻、633〜649頁
【非特許文献2】Sudip K. Samanta, Om V. Singh and Rakesh K. Jain: "Polycyclic aromatic hydrocarbons: environmental pollution and bioremediation"、 TRENDS in Biotechnology Vol.20 No.6 2002年6月、243〜248頁
【非特許文献3】Code of Federal Regulations、タイトル21、第3巻、170−190部、§ Colorants for Polymers、High purity Furnace Blacks、372〜376頁;CITE 21CFR178.3297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、低いPAK値を有し、かつ、場合により950℃での揮発性成分の高含有量を有する低表面積カーボンブラックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一主題は、22PAK法により測定した重縮合した芳香族炭化水素の含有量が5ppm未満、有利には0.5ppm未満、特に有利には0.4ppm未満、特にとりわけ有利には0.2ppm未満であり、かつ、ASTM D−6556により測定したSTSA表面積が<90m2/g、有利には≦80m2/g、特に有利には30〜80m2/g、特にとりわけ有利には55〜80m2/gであることを特徴とするカーボンブラックである。
【0023】
22PAK法の重縮合した芳香族炭化水素の含有量は、以下の化合物の合計から計算される:ナフタレン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオラテン、ピレン、ベンゾ(ghi)フルオランテン、シクロペンタ(cd)ピレン、クリセン、ベンゾ(e)ピレン、ペリレン、ベンゾ(ghi)ペリレン、アントラトレン、コロネン、ベンズ(a)アントラセン、ベンゾ(k)フルオランテン、ジベンズ(ah)アントラセン、ベンゾ(a)ピレン、インデノ(1,2,3−cd)ピレン、ベンゾ(b)フルオランテン及びベンゾ(j)フルオランテン、その際、ベンゾ(b)フルオランテン及びベンゾ(j)フルオランテンは1つとして数えられる。
【0024】
22PAK法ではカーボンブラックはソックスレー装置を用いて抽出され、この検出はガスクロマトグラフィを用いて実施され、この計算は前述の22PAKsを考慮して行われる(「Determination of PAH content of carbon black」、Cabot Corporation、Docket 95F−01631、1994年7月8日、アメリカ食品医薬局(FDA)により分類(Code of "Federal Regulations、タイトル21、第3巻、170−199部、§Colorants for Polymers、High purity Furnace Blacks、372−376頁;CITE 21CFR178.3297))。
【0025】
本発明によるカーボンブラックは15PAK法により測定した重縮合した芳香族炭化水素の含有量5ppm未満、有利には1ppm未満、特に有利には0.7ppm未満、特にとりわけ有利には0.12ppm未満を有することができる。
【0026】
15PAK法の重縮合した芳香族炭化水素の含有量は、以下の化合物の合計から計算される:
ベンズ(a)アントラセン、ベンゾ(k)フルオランテン、ジベンズ(ah)アントラセン、ベンゾ(a)ピレン、インデノ(1,2,3−cd)ピレン、ベンゾ(b)フルオランテン及びベンゾ(j)フルオランテン、ジベンズ(ah)アクリジン、ジベンズ(aj)アクリジン、7H−ジベンゾ(cg)カルバゾール、ジベンゾ(ae)ピレン、ジベンゾ(ah)ピレン、ジベンゾ(ai)ピレン、ジベンゾ(al)ピレン及び5−メチルクリセン、その際、ベンゾ(b)フルオランテン及びベンゾ(j)フルオランテンはそれぞれ単独で数えられる(8th report on carcinogens、US Department of Health and Human Services、III−869頁)。
【0027】
本発明によるカーボンブラックはBET表面積(ASTM D6556)10〜1000m2/g、有利には20〜120m2/gを有することができる。
【0028】
本発明によるカーボンブラックはDBP表面積(ASTM D−2414)10〜200ml/100g、有利には20〜120ml/100gを有することができる。
【0029】
本発明によるカーボンブラックは、96%より高い、有利には99%より高い透過度(ASTM D−1618)を有することができる。
【0030】
本発明によるカーボンブラックは、0.04%未満、有利には0.03%未満のトルエン抽出物(ASTM D−4527)を有することができる。
【0031】
カーボンブラックは、DE19521565号及びDE19839925号から知られたファーネスブラック、ガスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、プラズマブラック(Plasmaruss)、インバージョンブラック(Inversionsruss)、WO98/45361号又はDE19613796号から知られたSi含有カーボンブラック、又はWO98/42778号から知られた金属含有カーボンブラック、アークカーボンブラック(Lichtbogenruss)及び化学的製造プロセスの副産物であるカーボンブラックであることができる。
【0032】
本発明によるカーボンブラックは、pH値(ASTM D−1512)7未満、有利には6未満、特に有利には5未満、特にとりわけ有利には3.5未満を有することができる。
【0033】
本発明によるカーボンブラックは、950℃での揮発性成分の含有量(DIN 53552)>0.6%、有利には>2%、特に有利には>4.5%、とりわけ有利には>12%を有することができる。本発明によるカーボンブラックは、酸化されたカーボンブラック、有利には酸化されたガスブラックであることができる。
【0034】
本発明の更なる一主題は、22PAK法により測定した重縮合した芳香族炭化水素の含有量5ppm未満、有利には0.5ppm未満、特に有利には0.4ppm未満、特にとりわけ有利には0.2ppm未満を有するカーボンブラックの製造方法において、出発カーボンブラックを電磁線、有利にはUV線、例えば遠UV線、VIS線、IR線、例えば遠IR線、ラジオ波線、例えばUSW線、又はマイクロ波線、特に有利には0.9〜140GHzを有するマイクロ波線、特に有利には2.45GHzを有するマイクロ波線で処理することを特徴とする製造方法である。
【0035】
出発カーボンブラックはSTSA表面積(ASTM D−6556)<90m2/g、有利には≦80m2/g、特に有利には30〜80m2/g、特にとりわけ有利には55〜80m2/gを有することができる。
【0036】
出発カーボンブラックはBET表面積(ASTM D−6556)10〜1000m2/g、有利には20〜120m2/gを有することができる。
【0037】
出発カーボンブラックはDBP値(ASTM D−2414)10〜200ml/100g、有利には20〜120ml/100gを有することができる。
【0038】
出発カーボンブラックは、96%より高い、有利には99%より高い透過度(ASTM D−1618)を有することができる。
【0039】
出発カーボンブラックは、0.04%未満、有利には0.03%未満のトルエン抽出物(ASTM D−4527)を有することができる。
【0040】
出発カーボンブラックは、粉末、湿式又は乾式ペレット化(geperlt)カーボンブラックであることができる。出発カーボンブラックは、DE19521565号及びDE19839925号から知られたファーネスブラック、ガスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、プラズマブラック、インバージョンブラック、WO98/45361号又はDE19613796号から知られたSi含有カーボンブラック、又はWO98/42778号から知られた金属含有カーボンブラック、アークカーボンブラック及び化学的製造プロセスの副産物であるカーボンブラックであることができる。出発カーボンブラックは、先行する反応、例えば酸化、例えばオゾン、硝酸、窒素酸化物又は次亜塩素酸塩での酸化により活性化されていることができる。
【0041】
出発カーボンブラックはゴムブラック(Gummiruss)又は着色ブラック(Farbruss)であることができる。
【0042】
更なる出発カーボブラックは次のものであることができる:導電性カーボンブラック、UV安定化のためのカーボンブラック、系中、例えばゴム、ビチューメン又はプラスチック中の充填剤としてのカーボンブラック、金属学における還元剤としてのカーボンブラック。
【0043】
有利には、出発カーボンブラックは、ガスブラック、有利には酸化されたガスブラックであることができる。
【0044】
有利には、電磁線を用いた処理は不活性雰囲気下で行うことができる。
【0045】
不活性雰囲気は、窒素、希ガス、空気−水蒸気混合物、水蒸気又は窒素−水蒸気混合物により生じさせることができる。処理は常圧、軽正圧(leichte Ueberdruck)又は真空下で実施できる。
【0046】
電磁線エネルギーの伝達は接触無しに及びキャリア媒体無しに行うことができる。
【0047】
出発カーボンブラックの負荷の5%未満へのPAKsの減少化は可能であってよい。マイクロ波(MW−)で処理した試料は、滞留時間の増加と共により低いPAK濃度を達成できる。
【0048】
有利な一実施態様において、出発カーボンブラックはマイクロ波線、特に有利には0.9〜140GHzを有するマイクロ波線、とりわけ有利には2.45GHzを有するマイクロ波線で不活性雰囲気下で処理される。
【0049】
本発明による方法により製造されたカーボンブラックはSTSA表面積<90m2/g、有利には≦80m2/g、特に有利には30〜80m2/g、とりわけ有利には55〜80m2/gを有することができる。
【0050】
本発明による方法により製造されたカーボンブラックはBET表面積(ASTM−D6556)10〜1000m2/g、有利には20〜120m2/gを有することができる。
【0051】
本発明による方法により製造されたカーボンブラックはDBP値(ASTM D−2414)10〜200ml/100g、有利には20〜120ml/100gを有することができる。
【0052】
本発明による方法により製造されたカーボンブラックは、96%より高い、有利には99%より高い透過度(ASTM D−1618)を有することができる。
【0053】
本発明による方法により製造されたカーボンブラックは、トルエン抽出物(ASTM D−4527)0.04%未満、有利には0.03%未満を有することができる。
【0054】
電磁線を用いた処理は、150〜600℃、有利には300〜400℃の温度で実施できる。
【0055】
電磁線を用いた処理は、1〜120分間、有利には5〜30分間の反応時間において実施できる。
【0056】
本発明による方法は、その反応器壁、反応器壁の一部又はウィンドウが使用される電磁線のために透明である反応器からなる装置中で実施できる。
【0057】
使用される電磁線のために透過性の壁又はウィンドウは、ガラス、石英ガラス又は密に焼結されたAl23を含むことができる。反応器壁温度は、生成物温度を顕著に下回ることができる。
【0058】
使用される電磁線のために透明なウィンドウはガラスウィンドウであることができる。照射されたカーボンブラックにおける温度は0〜1000℃であることができる。
【0059】
カーボンブラックは、浮遊化装置(Levitator)(誘導(Induktion)、光、音)又はガス流(流動層)を用いて浮遊状態(in Schwebe)に維持することができる。
【0060】
反応器の材料は、放射線透過性に関して相応して適合させることができる。
【0061】
電磁性放射体供給源、有利にはマグネトロンは、生成物から保護されることができ、例えば放射線透過性領域の領域中にある反応器壁の外側に配置されていることができる。
【0062】
放射エネルギーは狙いを定めてかつ焦点を絞って高出力密度でもって反応器中にあるカーボンブラックに対して無接触状態で、すなわち、キャリア媒体無しに伝達されることができる。
【0063】
エネルギー導入はコントロール及び制御できる。
【0064】
放射体供給源としては次のものを使用できる:NIR線供給源、IR線供給源(波長λ=500μm〜750nm)、例えば電気ランプ又はセラミック放射体、ガス加熱した触媒的又は表面放射体(Katalyt oder Oberflaechenstrahle)、又は、ガス/オイル加熱した孔燃焼器(Porenbrenner)、VISランプ(波長λ=380nm〜750nm)、UVランプ(波長λ=380nm〜172nm)又はマイクロ波放射体(周波数ω=900MHz〜140GHz)、例えばマグネトロン及びジャイロトロン。
【0065】
反応器としては、カーボンブラック及びPAK物質又はこの物質混合物により腐食的に攻撃され、この製造された生成物のコンタミネーションを生じる可動部を有しない反応器タイプが使用できる。
【0066】
反応器としては、常圧、正圧及び負圧のための反応器を使用でき、その際反応器中には定義されたガス雰囲気(例えば不活性ガス)が調節可能である。
【0067】
反応器は、混合及び運搬のための外部装置を有する管型反応器、例えば混合のための機械的装置を有する反応器、例えば振動−/揺動装置、回転管、振動コンベアー又はスクリューであることができる。
【0068】
反応器は、流動層反応器、固体床反応器又は気泡塔(Blasensaeule)反応器であることができる。反応器には、使用物質又は使用物質混合物(出発カーボンブラック)の混合のための装置が備え付けられていることができる。混合は、物質又は物質混合物の反応器中での貫流を用いて行うことができ、例えば連続フロー反応器(Durchflussreaktor)、充填体あり又はなしの気泡塔、細流床反応器(Rieselbettreaktor)、流動層反応器又は落下塔(Fallturm)を用いることができる。
【0069】
反応器は電磁線の他に、熱導入のための更なる装置を含むことができる(ハイブリッド反応器)。
【0070】
本発明による方法によれば、エネルギーは狙いを定めて高エネルギー密度でもって、かつキャリア媒体無しに生成物中に導入(einkoppeln)されることができ、その際、生成物中の電磁線のエネルギー散逸によりこれは内側で加熱される。これにより、本発明により短期間の反応が実現される。
【0071】
本発明による方法により、不純物が極めて少ない生成物が製造される。
【0072】
本発明による方法の実施のためには、図1に示した赤外線(IR)−運搬管(Foerderrhor)−反応器又は図2中に示したマイクロ波−固体床/流動層−反応器が使用できる。
【0073】
IR−運搬管−反応器のための符号の列記(図1):
1.出発カーボンブラック計量供給
2.ロック(Schleuse)
3.IR透明反応器
4.熱処理のためのカーボンブラック
5.輸送ガス流
6.振動駆動系
7.生成物−排出
8.8aの1以上のIR透明なウィンドウを有するIR放射体モジュール(IR-Strahlermodule)
9.IR放射体モジュールのための電気制御
10.トレース加熱(Begleitheizung)
11.排ガス流。
【0074】
図1によれば、出発カーボンブラック又は出発カーボンブラック混合物は計量供給装置1を用いてロック2を介して反応器3に計量供給される。これは固体粉末又はグラニュール4としてPAK減少化のために反応器3の底部に落下し、振動コンベアー6により生成物−排出7へと輸送される。通常は加熱されたガス流5は付加的に反応器を通じて排出され、ガス状生成物、主としてPAK及びその分解生成物の搬出のために利用されることができる。
【0075】
反応器を通じた計量供給されたカーボンブラックの輸送の間に、カーボンブラックの精製が、装置9を介して電気制御されるIR−放射体モジュール8により行われる。IR線はIR線透明なウィンドウ8aを介して反応器中に導入され、次いでカーボンブラック中の迅速な加熱を生じる。ガス流11は、反応器からのトレース加熱された輸送ライン10を介して排出される。
【0076】
マイクロ波−固体床/流動層−反応器のための符号の列記(図2):
12.出発カーボンブラック計量供給
13.ロック
14.MW透明反応器
15.固体床、流動層又は気泡塔としての熱処理のためのカーボンブラック
16.輸送ガス流
17.インフロー底部(Anstroemboden)
18.生成物−排出
19.19aの1以上のMW透明なウィンドウを有する共振器
20.マイクロ波供給源
21.トレース加熱
22.排ガス流。
【0077】
図2によれば、出発カーボンブラック又は出発カーボンブラック混合物は計量供給装置12を用いてロック13を介してマイクロ波反応器14に計量供給される。この出発材料は、PAK精製のための物質又は物質混合物として固体床、流動層又は気泡塔15を用いて輸送ガス流16に対抗してインフロー底部17に落下し、その際カーボンブラック15の過剰量の要求の場合には排出装置18を介して排出されることができる。
【0078】
カーボンブラック15は、輸送ガス流16を用いてマイクロ波電場(Mikrowellenfeld)−マイクロ波−放射体−供給源20及び共振器19により引き起こされる−の方向に運ばれかつ/又は可動状態に維持される。この場合にマイクロ波線はほぼ損失無しにウィンドウ19aを通じて反応器中に入り込む。
【0079】
反応器を通じた計量供給されたカーボンブラックの輸送の間に、マイクロ波照射処理を用いたカーボンブラックの精製が行われる。
【0080】
ガス流22は、反応器からのトレース加熱された輸送ライン21を介して排出される。
【0081】
ガスとして不活性ガス、窒素又は窒素/水蒸気−混合物が装置中で使用できる。
【0082】
本発明の更なる一主題は、充填剤、強化剤充填剤、UV安定化剤、導電性カーボンブラック又は顔料としての本発明によるカーボンブラックの使用である。
【0083】
本発明によるカーボンブラックは、ゴム、プラスチック、印刷インキ、インク、インクジェットインク、トナー、ラッカー(Lack)、着色剤、接着剤、バッテリー、ペースト(Paste)、紙、燃料電池、ビチューメン、コンクリート及び他の建材において使用できる。これは、金属学における還元剤及び導電カーボンブラック(Leitruss)として適用できる。
【0084】
本発明によるカーボンブラックは特に、食品接触を伴う材料における適用のために、包装印刷インキのために、トナー適用のために、又はインクジェットインクのために使用できる。
【0085】
本発明の更なる一主題は、少なくとも1種のプラスチック及び本発明によるカーボンブラックを含有することを特徴とするプラスチック混合物である。
【0086】
本発明によるプラスチック混合物は、このプラスチック混合物に対して40〜99.9質量%、有利には90〜98質量%のプラスチックを含有できる。本発明によるプラスチック混合物は、このプラスチック混合物に対して0.1〜60質量%、有利には1.5〜3質量%の本発明によるカーボンブラックを含有できる。このプラスチックは熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性エラストマー、有利にはポリオレフィン、特に有利にはポリエチレン及びポリプロピレン、ポリビニルクロリド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、エポキシド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリラート、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート又はアクリルニトリルブタジエンスチレン−ポリマー並びに前述の成分からの混合物又はコポリマーであることができる。
【0087】
本発明の更なる一主題は、5質量%未満の結合剤、少なくとも1種の保湿剤、溶媒及び本発明によるカーボンブラックを含有することを特徴とするインクである。
【0088】
本発明によるインクは、このインクに対して5〜95質量%、有利には30〜80質量%の溶媒を含有できる。本発明によるインクは、このインクに対して0.1〜10質量%、有利には1〜5質量%の本発明によるカーボンブラックを含有できる。溶媒は、水、アルコール、ケトン、エステル、脂肪族又は芳香族炭化水素であることができる。
【0089】
本発明の更なる一主題は、少なくとも1種の結合剤、溶媒及び本発明によるカーボンブラックを含有することを特徴とする印刷インキである。
【0090】
本発明による印刷インキは、印刷インクに対して10〜30質量%の結合剤を含有することができる。本発明による印刷インキは、この印刷インクに対して10〜75質量%の溶媒を含有できる。本発明による印刷インキは、印刷インキに対して本発明によるカーボンブラック3〜40質量%を含有できる。溶媒は、水、アルコール、ケトン、アセタート又は全ての種類の油、又は、この少なくとも1種の成分を有する混合物であることができる。
【0091】
本発明の更なる一主題は、少なくとも1種の流動剤、プラスチック及び本発明によるカーボンブラックを含有することを特徴とするトナーである。
【0092】
本発明によるトナーは、このトナーに対して30〜95質量%、有利には60〜90質量%のプラスチックを含有できる。本発明によるトナーは、このトナーに対して1〜20質量%、有利には2〜15質量%の本発明によるカーボンブラックを含有できる。プラスチックは、ポリエステル樹脂、スチレン−コポリマー又はシクロオレフィン−コポリマーであることができる。流動剤は、シリカ(Kieselsaeure)、有利には熱分解シリカ又はカーボンブラックであることができる。
【0093】
本発明によるカーボンブラックの利点は、害のある重縮合した芳香族炭化水素の低含有量である。
【0094】
本発明によるカーボンブラックが減少したPAKsにかかわらず950℃での揮発性成分として測定した比較的高い酸化度を有することが更なる利点である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、赤外線(IR)−運搬管−反応器を示す図である。
【図2】図2は、マイクロ波−固体床/流動層−反応器を示す図である。
【実施例】
【0096】
製造されたカーボンブラックのカーボンブラック分析特性は以下の規定により算出される:
STSA表面積: ASTM D−6556
BET表面積: ASTM D−6556
DBP吸収: ASTM D−2414。
【0097】
実施例における出発カーボンブラックとしては、STSA表面積83m2/g及び油値(流動点法DIN EN ISO 787−5による)460g/100gを有するペレット化出発カーボンブラックAが使用される。
【0098】
実施例1:
重縮合した芳香族炭化水素(PAKs)の含有量を減少させるために、図1中に示されるようなIR−パイロット装置(IR-Pilotanlage)中でペレット化したカーボンブラックを処理する。この滞留時間及び温度は表1に記載されている。
【0099】
出発カーボンブラックとして出発カーボンブラックAを使用する。ここで記載する試験系列においては、22PAK法及び15PAK法に基づいてPAK含有量を試験する(表1)。
【0100】
表1:
【表1】

【0101】
PAKに関する出発負荷の1%未満への減少が可能であることが明らかである。
【0102】
実施例2:
重芳香族炭化水素(PAKs)の含有量を減少させるために、図2中に記載されるようなマイクロ波装置中でペレット化したカーボンブラックを処理する。この滞留時間及び温度は表2に記載されている。
【0103】
出発カーボンブラックとして出発カーボンブラックAを使用する。ここで記載する試験系列においては、22PAK法及び15PAK法に基づいてPAK含有量を試験する(表2)。
【0104】
表2
【表2】

n.d.=検出可能でない。
【0105】
マイクロ波で処理した試料では、PAKsの、出発負荷の0.1%への極めて強力な減少が達成される。
【0106】
実施例3
図2に記載されるようなマイクロ波装置中では、約80gの量の出発カーボンブラックAが充填される。マイクロ波反応器を窒素(5l/h)で試験開始前に洗浄し、引き続きマイクロ波を照射し、試験終了後に窒素下で温度<120℃に冷却する。
【0107】
滞留時間及び温度が1〜20分間及び400〜600℃に変動する。この時間を目的温度の達成後に測定する。
【0108】
温度記録はPCを介して行う。
【0109】
表3中では様々なパラメーターが変動する。
【0110】
表3:
【表3】

【0111】
本発明によるカーボンブラックではPAKsが顕著に減少される。600℃ではPAKsは0.4ppm未満に減少される。
【0112】
実施例4:
乾燥棚中での単純な温度処理についての比較例
STSA表面積75m2/g及び油価(流動点法DIN EN ISO787−5による)460g/100gを有する出発カーボンブラック100gを、ステンレス鋼片に30×30cmの面積に分散させる。窒素下で乾燥棚中で1時間300℃で温度処理する。
【0113】
表4:
【表4】

【0114】
乾燥棚中での温度処理(表4)は、本発明による方法を用いて製造されたカーボンブラックに対するPAKsのより少ない減少を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
22PAK法により測定した重縮合した芳香族炭化水素の含有量が5ppm未満であり、STSA表面積<90m2/gであることを特徴とするカーボンブラック。
【請求項2】
重縮合した芳香族炭化水素の含有量が0.5ppm未満であることを特徴とする請求項1記載のカーボンブラック。
【請求項3】
950℃での揮発性成分の含有量が>0.6%であることを特徴とする請求項1又は2記載のカーボンブラック。
【請求項4】
950℃での揮発性成分の含有量が>2%であることを特徴とする請求項3記載のカーボンブラック。
【請求項5】
トルエン抽出物が0.04%未満であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載のカーボンブラック。
【請求項6】
電磁線を用いて出発カーボンブラックを処理することを特徴とする、22PAK法により測定した重縮合した芳香族炭化水素の含有量5ppm未満を有するカーボンブラックの製造方法。
【請求項7】
電磁線としてマイクロ波線を使用することを特徴とする請求項6記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項8】
不活性雰囲気を使用することを特徴とする請求項6又は7記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項9】
出発カーボンブラックとしてガスブラックを使用することを使用することを特徴とする請求項6から8までのいずれか1項記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項10】
ゴム、プラスチック、印刷インキ、インク、インクジェットインク、トナー、ラッカー、着色剤、接着剤、バッテリー、ペースト、紙、燃料電池、ビチューメン、コンクリート及び他の建材における請求項1又は2記載のカーボンブラックの使用。
【請求項11】
少なくとも1種のプラスチック及び請求項1記載のカーボンブラックを含有することを特徴とするプラスチック混合物。
【請求項12】
5質量%未満の結合剤、少なくとも1種の保湿剤、溶媒及び請求項1記載のカーボンブラックを含有することを特徴とするインク。
【請求項13】
少なくとも1種の流動剤、プラスチック及び請求項1記載のカーボンブラックを含有することを特徴とするトナー。
【請求項14】
少なくとも1種の結合剤、溶媒及び請求項1記載のカーボンブラックを含有することを特徴とする印刷インキ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−68892(P2011−68892A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216534(P2010−216534)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】